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<title>呆けたポアロのブログ</title>
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<title>東ドイツ秘密警察は 何を暴こうとしたのか あるいは隠そうとしたのか</title>
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<![CDATA[ David Young の “Stasi Child”<br><br>年明け早々、香港の出版関係者数名の行方が、わからなくなったことが報じられた。この書店は、中国政府に批判的な書物を出版していたようでる。<br><br>また、この事件を報じたNHKのTV放送が、中国では途中でカットされたという。<br><br>本件について、中国政府は関与については否定している。真偽の程はわからない。しかし全く無関係とは考え難い。<br><br>言論の自由が、政府権力によって強圧されるのは、大変気味が悪い。そんな社会では、人間の精神・行動が萎縮する。社会の活力が失われてしまう。冒険心のかわりに，猜疑心が横行する。<br><br>ひるがえって、日本の場合は、言論の自由というよりは、むしろ野方図と、いいたいくらいである。例えば、現政権にたいして、言いたい放題である。<br><br>安保関連法の審議のときは酷かった。罵詈雑言とも言えるほどの言葉が飛び交っていた。大学教授と言われる人の中にも、どうかと思われるものがあった。言論の自由という前に、人間の品性を疑いたくなるようであった。<br><br>問題はあるにせよ、日本のこの現状は、言論の弾圧より遥かにいい。日本のように有難い国は、そんなに沢山あるわけでないことを十分承知しておきたいものだ。<br><br>北朝鮮は論外としても、韓国だって、日本と同じではない。中近東、アフリカ、南アメリカ等、言論の自由が保証されていない国々は、数えあげればきりがないのではないか。<br><br>日本も、戦前、戦時中の一時期は、言論の自由は著しく阻害されていた。いまの中国以上、むしろ、北朝鮮並みであったろう。<br><br>当時のことを、曲がりになりにも理解できたかも知れない、最低の年代を、仮に、10歳、小学校上級生くらいとしよう。彼等は既に８０歳。日本人の平均寿命は８０歳強だから、当時のことを体感している人間は、もう殆ど存在していないことになる。<br><br>同じ敗戦国のドイツはどうか。<br>ベルリンの壁が取り払われたのは、ほぼ四分の一世紀前に過ぎない。それまでは、東側の人たちは、ロシアの支配下で、厳しい言論弾圧を受けていたのである。そのための政府機関が、本書の題名となっているStasi、簡単に言えば秘密警察である。前記と同じ計算を適用すると、すくなくとも、３５歳以上の人は、当時の状況を体感しているといえる。社会で活躍している人の殆どが該当する。<br><br>彼等は、ああいう社会は、こりごりだと思っていることだろう。同時に、権力で他人を押さえ付ける快感を、懐かしがっている人もいるかもしれない。<br><br>わずか四分の一世紀前に、一国としての言論の自由を獲得したドイツは、今やEUのリーダーである。その統治のために、採られる手段は、勿論、言論の弾圧を含む強権ではない。それに代わるのは、複雑な、数々の規制である。これは恐らく、ドイツは大変得意な分野だ。<br><br>イギリスは、規制だらけのEUのあり方に、疑問を呈している。国家運営の自由が阻害されているという。現状が改善されなければ、国民投票に付したのちに、EUを脱退する覚悟があると公約している。<br><br>イギリスの改革案は、ある程度受け入れられるのではなかろうか。ドイツ以外の国々は、ドイツがあまりにも強力になることを、望んでいないだろう。ドイツを牽制する力のあるイギリスを、EUの中に留めておきたいと望むに違いない。これは、極東の一暇老人の予想に過ぎない。<br><br>そのイギリスだが、昨年、中国との関係で，二つの大きな出来ごとがあった。<br>一つは、いち早く、AIIBへの参加を表明したこと。もう一つは、異常とも言えるほどの周主席の歓迎である。<br><br>中国の金に目がくらんでしまった。かっての大英帝国の矜持は何処へ、という気持ちにさせられた。イギリスにはイギリスの事情があるのだから、日本の期待が裏切られたといって、責めることはできないのにも拘らず。<br><br>この問題に、ドイツという補助線を引いてみると、少し違った風景が見えるように思う。<br>ドイツは、中国と非常に親密な関係を保っている。メルケル首相は，毎年のように、大規模な代表団を引き連れて、北京詣でをしている。日本へは７年ぶりに来たに過ぎなかったが。<br><br>ドイツは、中国と手を結ぶことによって、ユーラシア大陸の覇者たらんとする野望があるのではないだろうか。この国には、自己膨張力のようなものがある。覇者にならなければ、気が休まらないところがあるように思える。二度に及ぶ世界大戦が、そのことを証明している。<br><br>今や、第三次大戦の準備が進んでいる、といえるのではなかろうか。ただし，今度は武力ではなく，中国と手を携えた経済力で。<br>もともと、中国は、マルクスの思想を根底においた、共産主義の国だ。マルクスはドイツ人。両国の間には、精神的な縁戚関係があるといえなくもないのである。<br><br>イギリスは、このドイツの覇権主義に、危機感を持っているのではないか。イギリスは、正面から、ドイツと二度の大戦を戦った唯一の国である。その経験から、ドイツに対する、根強い不信感があるように思う。<br><br>ドイツが中国と手を結び、ユーラシア大陸の覇者として、イギリスを睥睨するようなことになる事態は、避けたいと思っているだろう。そのためには、イギリスとしても，中国との関係を強める必要がある、中国のヨーロッパに対する関心を、ドイツに集中させておきたくない、と考えているのではなかろうか。当面の経済的メリットの追求の底には、そんな意識も窺えるように思える。<br><br><br>本書は、ベルリンの壁崩壊前の、東ベルリンが舞台である。若いイギリス人による作品だ。<br><br>どうして、この時代を、作者は選んだのか。読んだ限りでは、作者に、現在の世界情勢について、格別、強い政治的な関心があるようには思えなかった。面白い小説を書くために，誰もが手をつけていない舞台を選んだに過ぎないのかもしれぬ。<br><br>あるいは、出版社には、イギリスにおいて、ドイツへの関心が高まってくるという予感があるのか。ともあれ、これからの、ドイツとイギリスを中心とする、ヨーロッパの動きには目が離せない。加えて、移民問題が大きなインパクトを与えそうである。<br><br>私は、近いうちに、ユーラしア大陸におけるドイツの動きをテーマにした、スパイ小説が書かれるのではないかと、勝手に想像している。<br><br><br>さて、小説のほうである。<br>舞台は1975年の東ベルリン。<br>東西ベルリンを隔つ壁の東側で，一人の少女の射殺された死体が発見された。死体の位置、銃弾の痕などから判断すると、西側から、東へ逃亡しようとして，西側の衛兵に射殺されたものと思われた。<br><br>事件を担当するのは、中年へさしかかりの女性刑事。彼女は、一見したところ明らかなように見えるこの事件に不審なものを感じる。そもそも西側から東側へ逃亡する者があるだろうか。<br><br>東ドイツの秘密警察Stasiからも、この事件を極秘裏に捜査して欲しい、との要請があった。秘密警察が関心を持つのはなぜか。なにか、国家的陰謀が絡んでいるのか。主人公には、それは謎のままである。<br><br>現場を精査した結果、残っていた自動車のタイヤ痕から、それは高級なリムジンのものであることがわかった。東側にはないタイプの車である。刑事は西ベルリンへ行って捜査を続ける。<br><br>警察の活動と併行して，ある児童矯正施設の状況が描かれる。この施設は、社会に不適応な行動のあった少年少女を、矯正するのが目的。かれらは、毎日，厳しい監視のもとで、家具製造等の仕事に従事している。その中には、ひそかに脱走の計画を練っている者達がいる。<br><br>二つの舞台は、はじめは無関係のようであるが、だんだんとそれらが一つになっていく。<br>矯正施設の舞台は、全く冒険小説風である。本書は、警察小説と、冒険小説の二本立てと言えばよいだろう。警察小説の場面では、少しずつ真相が明らかになっていく過程に、サスペンスを感じる。冒険小説の場面では、脱走を企てる少年達の運命に、はらはらさせられる。一冊で二度楽しめるという趣向である。<br><br>秘密警察が権力を恣にする社会の怖さを描くことには、作者は、あまり熱心ではないように見受た。前記のように、作者は、政治的アピールよりも、ともかく、面白いエンターテインメント作品を書きたかったのだろう。<br><br>作者の意図は十分に達せられている。面白かった。<br><br>ただし、主人公の個人的な背景が、事件に深い関わりを持っているという設定には、やや，不自然なものを感じた。偶然がかさなり過ぎている。作者の力量なら、そんなものに頼らなくてもいい。惜しいと思う。本書は、作者のデビュー作である。偶然に頼るメロドラマ的な趣向を、次作ではできるだけ排除してほしいものである。期待して待つことにする。<br><br>作者David Youngの生年などは不詳。写真でみると３０台後半の感じ。若い。ロンドン市立大学で、犯罪小説について学位を得たとある。この道に進むことを計画していたようである。<br><br>なお題名にいうStasiは、東ドイツ国家警察の略。前記のように、秘密警察と理解しておけばよさそうだ。秘密警察の子供とは、何を意味するか。それは読んでから判るとしておいたほうがいいだろう。<br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12119212293.html</link>
<pubDate>Tue, 19 Jan 2016 13:22:13 +0900</pubDate>
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<title>アイスランドの漁村に起きた警察官狙撃事件</title>
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<![CDATA[ Ragnar Jonasson の “Nightblind” <br><br>今朝の日経新聞に、魚の需給バランスについて、識者のコメントが、大きくのっていた。<br><br>漁獲量の減小傾向が続いている。消費量は、増加の一途。このままでは、漁獲禁止期間をもうけなければならなくなるだろうと、警鐘をならしている。<br><br>田舎者としては、マグロが食べられなくても、平気だが、サバやアジがなくなるのは大変である。問題解決のための、関係者の努力を期待するばかりである。<br><br>おせち調理の準備で，デパートが忙しい。昔は、それぞれ自分の家で作ったものだが。<br>子供の頃の記憶だと、おせち料理を詰めた重箱の最下段は、数の子だった。そう沢山食べれるものではない。安価だから沢山作ったこともあるだろう。これが一番最後まで残ったものである。<br><br>数の子が黄色いダイヤとよばれるようになったのは、戦後10年ぐらいしてからろうか。日本でニシンが穫れなくなったのは、乱獲が原因とされた。ニシン成金という言葉ができたほどである。随分乱獲されたのだろう。<br><br>あれだけ豊富にあった数の子を、元旦に、一切れか二切れ、食べるだけがせいぜいということになってしまった。現在は，大分安価なっている。これまで外国では棄てていたものを、日本向けに供給できる体制が整ったのだろうか。<br><br><br>本書の舞台は、アイスランドの小さな漁村シグルフィヨルズ。ニシン漁で栄えたところである。それが急に急にとれなくなったのだそうである。日本の北海道で穫れなくなったのと同じ頃だろうか。ここでは、必ずしも乱獲が原因だとは、考えられなかったようではあるが。<br><br>もともと、魚には、魚の行動原理がある。人間に利用されるために行動しているわけではない。いろんな原因によって食料が減ったとか、それなりの理由があったのだろう。楽観的に考えれば、北海道にまたニシンが帰ってくる日がくるかもしれない。<br><br><br>本書は、アイスランドのミステリー界のプリンスと言われた、作者の第二作。第一作はSnowblind。これは以前にとりあげた。三作目Blackoutも近く刊行される予定。作者は、これらをDark Iceland三部作と考えているとのことである。<br><br>本書の主人公は、前作と同じ。アイスランドの首都レイキャビクからやってきた、大学で論理学を学んだ青年。前作からもう５年経過している。依然として下っ端の警官のままである。<br><br>しかし，私生活では大きな変化があった。前作で不仲になった、医学を勉強していた女性と、どういういきさつがあったのか、現在は結婚している。すでに一歳の男の子がある。<br><br>彼女は近くの町、アークレイリーで病院勤務。ここは首都に次ぐアイスランド第二の都会。飛行場もある。といっても人口２万人足らず。シグルフィヨルズから、車で一時間ほどのところにある。<br><br>彼女は、子供が生まれたばかりだというのに、何故か、主人公に不満を感じている。病院の同僚の男性に、心が揺らぐのを感じている。彼女と主人公の関係がどうなるのか、この小説ものう一つのテーマとなっている。<br><br>シグルフィヨルズの町は、５年前とくらべ、外部と町を通ずる新しいトンネルが通じたことが、大きな変化である。古いトンネルより、幅が広く、長い。主人公が、初めてこの町へ来た時に、古いトンネルの中で、閉所恐怖症に襲われる場面が印象的であった。<br><br>新しいトンネルができたことによって、町には、夏期のリゾート地、冬季のスキー場としての顔が、現れ始めている。不動産商売も、久しぶりに、かなりの活況を呈している。<br><br>主人公の上司、警察署長が夜間パトロール中に、猟銃で狙撃される事件が発生した。署長は、意識不明の重体である。これは本来なら主人公の職務だった。彼がインフルエンザで休んでいたために、署長が代行していた時の出来ごとであった。<br><br>狙撃された場所は、ある空家の前庭。空家になる前には、双子の兄弟が住んでいた。うち一人がテラスから墜落死。そのうちにもう一人の方も病死。以来ずっと、空家になったままの状態が続いている。<br><br>この空家では、麻薬の取引が行われているという噂があった。<br><br>主人公は、町長の補佐役を勤める女性が、この空家での薬の取引に参加をしていたという情報を得た。<br><br>彼女は町長とは以前からの友人。町長が就任した時に、首都から呼び寄せたのである。<br><br>彼女には、暴力を振るうパートナーがいた。彼女は、その男から逃げ出し、名前を母の性に変えて、この街にきたのであった。今回事件の関係者であることが公になれば、パートナーがそれを知り、この町へやってくるおそれがある。<br><br>アイスランドでは、麻薬の問題はあまり大きなことではない。それでも小規模のマリファナの栽培が行われており、また、違法な薬も作られているという。<br><br>ドメスティックバイオレンスは、かなり深刻な問題のようだ。インターネットの記事を拾い読みしたところ、EUのデータがあった。それによると、加盟国では、ノールウエイ、フィンランド、スエーデンが、ドメスティックバイオレンスによる被害者の数でトップスリー。<br><br>アイスランドはEU非加盟国だから、この資料には載っていない。別の資料（アイスランドの公式資料と思われる）では、アイスランドがこれらの国と比べ，被害が少ないという根拠はない、と書いたものがあった。殺人事件の半数以上は、ドメスティックバイオレンスによるという記事もあった。<br>この種の犯罪が多いのは、冬が暗く、長い国ならではの現象なのだろうか。<br><br>主人公は、麻薬取引の線で捜査を始める。なかなか決め手がない。<br>彼の活動と併行して、精神病院にいるとおぼしい、ある青年の日記のような文章が、読者に呈示される。イタリックで描かれている。一見よくある手法である。通常の例だと、この文章を書いているのは、関係者のうちの誰かだということが、何となくわかるようになっている。本書の場合でも、最初のうちは、またかと思って、これを読むのが煩わしかった。<br><br>ところが、読み進むうちに、だんだんとサスペンスが生まれて来た。筆者が誰かがさっぱりわからないように、作者は書いている。読者にしてみれば、それを推理するのが，大きな課題とならざるをえないわけである。<br><br>ある読者の批評の中に、本書を星印２個と評価したものあのがあった（最高は５個）。ありきたりの警察小説だと結論していた。<br>私見では、星印は、少なくとも３と４の間だ。警察小説としてもユニークである。<br><br>何者の手によるともしれない手記の扱い方が、読者を迷わせる。作者はアガサクリステーの大フアンで、10册ばかり訳本を出している。本書は、その流れをくむ本格的なミステリーだ。読後、作者の意図が、極めてクリアーに判る。作者は、ストーリーの根幹を先ずしっかりと考え、それに枝葉をつけて、小説に仕上げている。<br><br>主人公は、試行錯誤しながら、最後になって、事件の解決の糸口となる、いろんな出来ごとや、関係者の発言を思いだして，やっと真相に迫る。作者は、読者も同じことが出来るでしょうと、いいたげだ。私には、出来なかった。近い所まではいったが。<br><br>作者がDark Iceland三部作という場合、Darkには、平和な国と言われるアイスランドの影の部分を描こうという気持ちがあるのだろう。<br>次作の題名は「停電」。暗い夜しかない冬の間に停電が起こったら、一体どんな事件が起きるのか。<br><br>ここ二年足らずの間に、アイスランドのミステリーを10冊近く読んだ。すっかりファンになっている。首都の名前を言えるようになった。先日ある映画で，アイスランドの場面があった。なんとなく懐かしい感じがした。活字の旅行も満更ではないようである。作者については、別項に譲る。<br><br><font color="#FF0000"><font color="#FF1493">お願い！</font><br><br>このブログを始めて、一年半経ちました。一つの区切りとして、私自身の参照に便利なように、これまで書いたものに下記の変更を加えて、自費出版することとしました。今月中には出来上がる予定です。<br><br>１：主な舞台となった国別にまとめた。<br>２：横書きを縦書きとした。<br>３：書名、著者名別の索引を付けた。<br>４：誤字等を可能な限り修正した（自分一人で校正しました。まだ多数見落としがあるかもしれません）<br><br>A５版で、上下二冊（夫々約４００頁）。私がパソコンで作った原稿を、製本してもらいます。簡略なもので、素人細工に近いだろうと思います。題名を「活字の中の旅行者：ミステリーを読んで世界を回る」としました。<br><br>これまで、ブログを読んで頂いた方に、お礼の印に、少数ですが、贈呈させて頂こうと考えています。<br>もしご希望があれば、ブログのコメント欄に、ご自分のメールアドレスを書いてください。この欄は私にしか読めないようになっている筈です。私のアドレスに直接ご連絡頂くことも考えてみました。ところが私のメールソフトは、大抵のメールを迷惑メールとして処理してしまいます。それを修正する能力はありません。折角連絡頂いても、見過ごす可能性が大きいので、先ずは、上記の方法によることとしました。<br><br>当面はアドレスだけで結構です。本が出来た時に、連絡しますので、そのときは、郵送先の住所名前を知らせてください。ただし、私は金持ちではありませんので、作成部数はごく少数です。仮に希望される方が多い場合には、ご希望に添えない場合もでてくるおそれもなしとしません。その節はご了解ください。<br><br>なお、アドレスや住所について悪用することは、絶対にいたしません。勿論、経済的な負担をかけることはありません。</font><br><br><br>
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<pubDate>Sun, 13 Dec 2015 20:07:45 +0900</pubDate>
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<title>パリの老女達は 何故殺されねばばらなかったのか？</title>
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<![CDATA[ Anna Jaquiery の "The Lying Down Room"<br><br>オバマ大統領の，中東に対する姿勢が弱腰だと批判する声がある。その姿勢が、中東の無秩序とISISの増長を招いたという。共和党の大統領候補に名乗りを上げている、トランプ議員が、批判勢力の代表的存在だ。<br><br>弱腰化どうかはさておき、大統領の姿勢が、彼の生い立ちの影響をうけていることは明らかだと思える。<br>周知のように、彼は、ケニアの男性と、白人のアメリカ女性との間に生まれた。この両親は，後に離婚し、母親は，今度はインドネシアの男性と結婚する。彼は、母親と共にインドネシアへ移住し、そこで中等教育を受けた。<br><br>実の父親は、イスラム教徒だった。養父がどうだったかは判らないが、インドネシアは、イスラム教徒が大多数を占める国である。<br><br>大統領自身は、キリスト教徒とのことであるが、このような生い立ちは、彼のイスラム教徒に対する姿勢に、大きな影響を与えている筈である。イスラム教徒に理解があるからこそ、対話路線を優先したのだろう。話せば判ると思っていただろう。WASP系の白人大統領と、政策の基本的スタンスが違っていて不思議はない。<br><br>この問題に対する、日本の有識者の多くは、話し合い優先のようである。大統領の肩を持ったわけでもなかろうが。テロへの報復は避けるべきとの議論が多いようである。白刃を持って殺し合いの喧嘩をしている二人の横で、話し合いをしろといってるようなものではないか。自分の身の危険も覚悟の上で、現場に割り込む覚悟が無いと、一人よがりに過ぎないように思える。<br><br>ある高名なニュースキャスターが、ISISへの空爆は，テロと同じだと発言したそうだ。高見の見物をしながら，格好いいことを言おうとしているとしか思えない。自分の言動が多くの人の目に触れるのだという、責任ある立場の人間としては、いかがなものかと思う。少なくとも、相手国のある国際的問題については、より慎重な姿勢であってほしいものである。<br><br>日本の論壇がどういおうと、中東の紛争は，簡単には解決しそうにない。だんだんと、白人対非白人、キリスト教徒対イスラム教徒の闘いの様相すら見せるようになってきた。<br><br>国際社会で、とかく衝突することの多いアメリカとロシアが、同じ旗の下に立つというのである。相手が非白人の異教徒となると、かくも団結できるものか。まるで、かっての十字軍である。<br><br>ロシアの宗教の主流は、ロシア正教といわれるものである。これは、カトリック、プロテスタントと並ぶキリスト教の有力な宗派である。正教と呼ぶからには、キリストの教えに尤も忠実であると考えられているのだろうか。私には違いがよくわからない。<br><br>本書の述べるところによると、ロシア正教は、共産党政権の時代に激しく弾圧されたために、その勢力は、現在では随分弱くなっているそうである。代わって、プロテスタントのパプチスト派が力をましているとのこと。この会派は、浸礼教会といわれ、洗礼のときに、全身を水の中に沈める儀式が特徴らしい。<br><br>プロテスタントは、英米で有力な宗派である。資本主義は、プロテスタントの倫理に基づいて発展したと説いた学者もある。共産主義から、資本主義への仲間入りをしたロシアにとって、プロテスタントの理念は、望ましいものと見えているのかもしれない。<br><br>本書の登場人物の一人は、若い頃に、モスコーでフランス語の教師をしたことになっている。その時に知り合った女性と、パプチストの教会へ行く場面がある。そこで布教するのは、アメリカからやって来た牧師であった。宗教の浸透していく力は強い。英米ロの三国が、世界の代表的なプロテスタントの国家となる時代がこないとも限らない。<br><br><br>さて、本書の主人公は、パリ警察の警部、中年の男性である。母親はカンボジア人、父親はフランス人。母親がパリへ音楽の勉強に来たときに、二人は知り合って結婚したもの。母親は死亡しているが、姉と妹がいる。彼は父親と二人で住んでいる。父親に痴呆の気配がでてきたのが心配の種。<br><br>彼は、かって一緒に暮らしていた女性への、断ち切れない想いがある一方、ある金持ちの人妻と親しい関係にある。さすがはフランス人である。<br><br>仕事については優秀。人間に対する洞察力に優れたものがある。作者は、それは彼が東洋人との混血であるからだといいたいかのようである。<br><br>一番の部下は若い女性。抜群の頭脳を誇る。ときに周囲と衝突するが、警部のよき片腕である。ただし二人が恋愛関係になる気配はない。これは老読者にとっては有難い。<br><br><br>パリの暑い夏の日。あるマンションの一室で、一人の老女性が死体で発見された。死体には厚化粧がしてあり、金髪の鬘を付けていた。死体を発見した女性の証言によると、CDプレイヤーに音楽がかかっていたという。それはフオーレのレクイエムだった。<br><br>検査の結果、死因は溺死だと判明した。バスタブで溺死させられ、ベッドに運び込まれたものと考えられた。警察は殺人事件として捜査を開始する。<br><br>金品は盗られていない。彼女は人付き合いも少なく、誰かの恨みをかうことがあったとは思えない。比較的近所に住んでいる息子は、少しよそよそしい態度が見られるものの、格別の問題があったようすはない。息子の嫁とは、随分親しくしていた。<br><br>唯一の手がかりは、机の上に置かれていた、キリスト教会の宣伝パンフレットだった。数日前に、中年の男性が一人の男の子を連れて、その宣伝に回っているところを見たという証言があったのである。この二人連れが、事件に何かの関係があるとみて捜査をするが、行方は杳として知れない。<br><br>やがて第二の事件が！<br>被害者はまたしても、独り住まいの老女性。現場の状況も全く同じだった。<br><br>警察の活動と併行して、ある男のことが描かれる。読者は，彼が犯人だろうと思って読み進むことになる。しかし彼が犯人であるかどうか、それにしても犯行の動機は何か。最後まで明らかにされない。私は、緊張感を持って読むことができた。<br><br>作者は４０歳くらいの女性。理知的で、優しい感じのする美人である。<br>母親はマレーシア人。父親はフランス人、外交官だったようである。こういう彼女の生い立ちが、主人公の警部に反映されている。<br><br>本書を読みながら、穏やかで、優しいところのある小説だと感じていた。悪人らしい悪人は全くでてこない。作者もあるインタビュー記事で、善と悪は簡単に分けられるものではないといっている。仮に善人であっても、ある条件下では、悪に走ることがあるのだと考えているようだ。<br><br>混血とはいえ、アジアの人間が書いたミステリーを読んだのはこれが初めてだ（日本人は除いて）。<br><br>登場人物は少ないし、派手なトリックや、緻密なアリバイ崩しもない。ミステリーとしては、普通の出来である。しかし読後の感慨には、どこか温かいものがある。東洋人の血がなせるものか。これは貴重である。本書は第一作（別に詩集があるようだが）。次作がすでに出版されている。カンボジアが舞台とのこと。近いうちに読むつもりである。<br><br><br>お願い！<br><br>このブログを始めて、一年半経ちました。一つの区切りとして、私自身の参照に便利なように、これまで書いたものに下記の変更を加えて、自費出版することとしました。今月中には出来上がる予定です。<br><br>１：主な舞台となった国別にまとめた。<br>２：横書きを縦書きとした。<br>３：書名、著者名別の索引を付けた。<br>４：誤字等を可能な限り修正した（自分一人で校正しました。まだ多数見落としがあるかもしれません）<br><br>A５版で、上下二冊（夫々約４００頁）。私がパソコンで作った原稿を、製本してもらいます。簡略なもので、素人細工に近いだろうと思います。題名を「活字の中の旅行者：ミステリーを読んで世界を回る」としました。<br><br>これまで、ブログを読んで頂いた方に、お礼の印に、少数ですが、贈呈させて頂こうと考えています。<br>もしご希望があれば、ブログのコメント欄に、ご自分のメールアドレスを書いてください。この欄は私にしか読めないようになっている筈です。私のアドレスに直接ご連絡頂くことも考えてみました。ところが私のメールソフトは、大抵のメールを迷惑メールとして処理してしまいます。それを修正する能力はありません。折角連絡頂いても、見過ごす可能性が大きいので、先ずは、上記の方法によることとしました。<br><br>当面はアドレスだけで結構です。本が出来た時に、連絡しますので、そのときは、郵送先の住所名前を知らせてください。ただし、私は金持ちではありませんので、作成部数はごく少数です。仮に希望される方が多い場合には、ご希望に添えない場合もでてくるおそれもなしとしません。その節はご了解ください。<br><br>なお、アドレスや住所について悪用することは、絶対にいたしません。勿論、経済的な負担をかけることはありません。<br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12103643337.html</link>
<pubDate>Mon, 07 Dec 2015 09:25:35 +0900</pubDate>
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<title>ロンドンの奇妙な犯罪事件簿ーある魔女の死（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ Christopher Fowler の "The Invisible Code"<br><br>物語は、こんな場面から始まる。<br><br>ロンドンの、とある公園の中で、10歳くらいの女の子と男の子が、なにやらヒゾヒゾと、話し合っている。<br><br>女の子がいう。<br>「あのベンチに座って，本を読んでいる若い女の人が怪しい。きっと魔女に違いないわ」<br>男の子がいう。<br>「よし、僕が行って調べてこよう」<br>男の子は、ボールを捜す振りをして、女の人の側まで行き、帰って来ていう。<br>「魔女に間違いないよ。赤ちゃんを料理する本を読んでいるんだもの」<br><br>彼女が読んでいたのは、アイラ・レビンの「ローズマリーの赤ちゃん」だったののだが。ローズマリーを香辛料のことだと思ったのだろう。<br><br>本を読んでいた女性は、ベンチを離れて、近くの教会へ入って行く。子供二人も後を付ける。<br><br>教会の中には、だれもいない。子供達は、ひそかに、魔女を殺す呪文を称える。<br>すると、椅子に座っていた女性は、バッタリと、倒れてしまった。子供達は、びっくりして逃げ出した。<br><br>やがて、彼女は、死んでいることが発見された。<br>死体には、苦しんだ様子はない。なにかの病気の発作とは見えない。かといって、誰かによって、殺されたとする証拠もない。<br><br>まことに奇妙な事件である。国家保安部の下部機関である「奇妙な犯罪捜査局」の面々は、自分たちにピッタリの事件だと考えた。しかし所管の関係で、扱わせて貰えない。（蛇足ながら，「奇妙な犯罪捜査局」とは、全く架空の存在である）<br><br>そのかわり、国家保安部の責任者から、ある仕事を頼まれた。彼の妻が、何者かに付き纏われているという。妻は，精神不安定となった。実際にどんな問題が生じているのか、調べて欲しいというわけである。<br><br>「奇妙な犯罪捜査局」は、教会内の不審死事件を担当することを条件に、責任者の妻について、事情調査に乗り出す。<br>責任者の妻の身辺を調査するうちに、この問題は、教会内の不審死事件と関係があることが明らかになってくる。<br><br>次いで、責任者の妻と親しいと噂されていた、カメラマンが、刺殺されるという事件が生じた。<br>さらに、責任者の妻にも、危険が迫ってくる・・・・<br><br><br>まことに、遊び心が一杯のミステリー小説である。<br>「奇妙な犯罪捜査局」の顧問をしているのは、83歳の老人。彼は，ロンドンの歴史に詳しい。しかも、犯罪とか，魔術といった、闇の歴史を自家薬籠中のものにしている。<br><br>彼は、現在生じた犯罪には、必ず過去の歴史が絡んでいるという観点から、事件の謎を解き明かしていく。老人とはいえ、彼が実際的には、この捜査局のリーダーなのである。<br><br>まるでシャーロックホームズが、年を取って、現代にタイムスリップしてきたかのように、ストーリーは展開する。<br><br>教会内の不審死女性の死因について、最後に謎解きが行われる。少々眉唾めいた感じがある。しかし、ホームズの例えば「まだらの紐」事件だって似たようなものだ。<br><br>不可思議な事件が発生し、超自然的な世界へ、引き込まれ、最後には鮮やかな合理的解決にいたる。まさに，コナンドイルの再来である。<br><br><br>また、本書は、ロンドンのいろんな場所へ案内してくれる。<br>その一つが、ロンドン中心部の、ホルボーン地区にある、サー・ジョン・ソーンズ美術館だ。<br>ホルボーン地区は、大英博物館や，ロンドン大学のある、閑静なところ。<br><br>この美術館は、18世紀から19世紀にかけ活躍した、建築家サー・ジョン・ソーンズの邸宅を利用したものである。彼が蒐集した美術品が展示されている。<br><br>外見は、当時一般的だった建築様式である。入り口も狭く、美術館らしくない。中も狭いので、一度に入館できるのは、15人前後に制限されている。<br><br>美術館の目玉となる展示品は、ホガースによる8点の連作油絵「放蕩一代記」である。<br><br>絵画ギャラリーの壁には、折りたたみのパネルがある。それぞれに絵が架けてあるから、通常の３倍の作品が展示されていることになる。パネルを開くのは、係員に頼まなければならない。<br><br>本書の登場人物の一人が、この展示室の中で死んでいるのが発見される。死体の手の指先が、絵のどれかを指しているように思えたものの、一体三つの絵のどれだったのか。警察官達が悩む場面が描かれている。<br><br><br>作者のChristopher Fowlerは、1953年、ロンドンのグルニッジの生まれ。現在は、同じくロンドンの繁華街である、キングスクロスに住む。<br>多くの怪奇小説や、犯罪物語を書いている。代表作は、「奇妙な犯罪捜査局」シリーズ。数作ある。まだ和訳は出版されたことがないようである。<br><br><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12078368003.html</link>
<pubDate>Mon, 28 Sep 2015 21:32:26 +0900</pubDate>
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<title>19世紀バンクーバー島の 野蛮な殺人事件（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ Seán Haldane  の “The Devil's Making “<br><br>これは、19世紀後半の，カナダ・バンクーバー島における、野蛮な殺人事件の物語である。<br><br>バンクーバー島は、1849年にイギリスの植民地となった。本書の時代背景は、それから２０年経った、1869年である。<br>イギリスの入植民と、先住民であるカナダ・インディアンとの棲み分けは、落ち着きを見せている。野蛮と文明が、棲み分けられている地域であった。<br><br>この２０年の間に、本書で描かれる事件に関係のある、二つの大きな出来ごとがあった。いずれも植民地化10年後の1959年のことである。<br><br>第一は，ダーウインの「種の起原」の刊行である。<br><br>進化論の考え方は，世界中に大きな反響を起こした。植民地の原住民に対する考え方にも、影響をあたえたようである。彼は、野蛮人と，文明人との違いは，野生動物と飼いならされた動物との違いと同じだといった。<br><br>人間の祖先が猿であるのなら、先住民と文明人との違いは、どこにあるのか、という意識が生まれても不思議ではない。<br><br>本書の登場人物の一人が，昔ローマがイギリスを侵略したとき、原始イギリス人は、顔に絵の具を塗っていたと指摘する場面もある。<br><br>主人公は、ダーウインに傾倒している。先住民族と、自分たちとの間に、感情を表現するのに、共通の要素があると考えて、それを確かめるために、ダーウインへ手紙を書くところがある。ダーウインからは、主人公の観察を評価する旨の返書を得たことになっている。<br><br>二番目は、ブタ戦争といわれる、イギリスとアメリカとの間の国境紛争である。<br><br>バンクーバー島と、北アメリカ大陸との間にある、サンフアン諸島は，当時の地図が不正確だったこともあって、アメリカ、イギリス双方とも、その領有権を主張していた。<br><br>その最中、イギリスのある港湾会社は、サンフアン島をヒツジの放牧場にする事業に着手した。<br>その一方で、数十人のアメリカ人がサンフアン島に移住してきていた。<br><br>ある日のこと、アメリカ人農夫の一人が、ブタが彼の庭を荒らしているのを見つけた。彼は腹を立て、ブタを撃ち殺した<br><br>そのブタは、イギリスの港湾会社のヒツジ牧場で働いた、アイルランド人の所有物であった。<br><br>ブタの損害賠償を巡って、二人は争い、結局，両国の争いにまで発展した。<br><br>アメリカ側は、まず、サンフアン島へのイギリス人の上陸を阻止するため、兵を派遣した。<br>イギリスは、軍艦を送り、両軍の対峙が続いた。<br><br>しかし、両軍は、罵声を浴びせあって相手を刺激し、先に発砲させようとしたが、両軍の規律は保たれ、発砲されることはなかった。<br><br><br>やがて、両国政府による交渉の結果、双方は島を共同で軍事占領することで合意した。本書の登場人物の一人は、このイギリス軍基地における兵士である。<br>共同軍事占領中、サンフアン島の両軍は、非常に友好的な関係を築いた。<br><br>この状態は、その後12年続いた。<br>1872年になって、ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世の調停によって、サンフアン諸島に関する、アメリカの領有権が認められた。両軍の軍隊は撤退した。<br><br>戦争とはいいながら、流された血は、結局ブタ一頭の者に終わったのである。<br><br>さて，物語は・・・・<br><br>本書の主人公は、イングランド生まれ23歳の青年。オックスフォードで法律を学び、新天地に職を求めて、バンクーバー島へやってきた。<br><br>しかし、島は不況で、彼が望む仕事はない。オックスフォード時代の友人の紹介で、やっと、警察官の仕事を得た。<br><br>酔っぱらいの喧嘩の始末や、こそ泥の逮捕に追われる日々であったが，ある日、ある野蛮な殺人事件に遭遇した。<br><br>被害者は，４０歳前後の白人男性。インディアンのキャンプ地の側を流れる，渓流のほとりで殺害されていた。鋭利な刃物であちこちを刺されており，出血多量による死と思われた。<br><br>奇妙なのは、腕などに人間によって噛まれたような跡があること、さらに男性器官が切り取られ、それを自分の手に握っていたことであった。<br><br>野蛮な手口から判断して、警察は、インディアンの犯行ではないかと考えた。キャンプ地にいた、部族のリーダー格である青年を逮捕した。<br><br>主人公は、このインディアンの青年を犯人とする具体的な証拠がないと考えた。すべて状況証拠ばかりである。そのことを署長に進言し、独自で捜査をすることとなった。<br><br>被害者は、アメリカ人の精神科医であることが判明した。<br><br>彼はいろんな所に出入りしていた。その一つが，美貌の未亡人の経営する果樹園の茶会だった。彼女の夫は、インディアンに殺されたのだった。夫人には三人の年頃の娘がいた。<br><br>茶会に出席する定例のメンバーは、殺された医者のほか、次のような面々である。<br>夫人との結婚を望んでいる港湾会社の経営者。<br>主人公の友人。<br>近くの教会の牧師補。<br>サンフアン島のイギリス海兵隊の下士官。<br>主人公も、友人の紹介で茶会へ出席することになる。<br><br>また、殺された医者は、売春目的のダンスホールの常連でもあった。さらに、女性患者に対して、動物の磁力を利用したと称する怪しげな治療を行っていた。<br><br>一方、主人公は、投獄されたインディアンの青年の妻と思われる、インディアンの美しい女性に強く惹かれるようになっていた。<br><br>主人公は、方の正義を守るために，真犯人を捜さなければならないと思う一方、そうなれば、インディアンの青年は釈放され、あの女性と逢えなくなってしまう、と悩むばかりであった。<br><br>真犯人が存在するのか？<br>その動機は何か？<br>白人の青年が、インディアンの女性と、結ばれることができるのだろうか・・・・<br><br><br>時代背景と、場所が克明に描かれている。カナダの歴史にも地理にも疎い私には、とてもいい勉強になった。<br><br>さらに、野蛮と文明という問題について、考えさせられる内容を含んである。<br><br>ミステリー小説としても、上出来である。捜査の手順が説得力をもって説明される。主人公と同じ立場で捜査に参画しているような気分になれる。性的な問題の説明に、かなり筆が割かれるが，どぎつさはない。<br><br>文章は、読み難いところもあるが、イメージが豊かで、読んでいて飽きがこない。後記のとおり、作者は、現在72歳のはずだが、とても瑞々しい印象を受ける。<br><br><br>本書は、2014年の、アーサー・エリス最優秀作品賞の受賞作である。<br>この賞は、カナダ推理作家協会により、優秀なミステリー小説に贈られるものである。<br>カナダ在住の作家が書いた作品と、海外在住のカナダ人が書いた作品が対象となる。<br><br>賞の名前は、カナダの死刑執行人であった、アーサー・エリスという人物に由来している。 賞と一緒に授与される像は、絞首刑にされる男性の木のモデルで、像の紐が引かれると、腕と脚が動く仕掛けになっているらしい。この賞の受賞作は、あまり日本では紹介されていないようである。<br><br><br>作者Seán Haldaneは、1943年イングランド生まれ。北アイルランドで成長。オックスフォードで英文学を学ぶ。また心理学の博士号も取得。大学卒業後は、カナダに渡り、各地に住む。現在はロンドン在住。詩人であり、精神科医でもある。<br><br>本書は，彼の唯一のミステリー小説である。もっと書いてくれないものか。<br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12077575487.html</link>
<pubDate>Sat, 26 Sep 2015 22:16:48 +0900</pubDate>
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<title>コッツウォルズの古い屋敷に潜む暗い闇（海外みすてりー紹介）</title>
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<![CDATA[ James Marrison の “The Drowning Ground”<br><br>コッツウォルズの名前を，初めて聞いたのは，今から25年以上も前のことだった。<br><br>イギリスへ出張する人に対して，週末の観光先としては、コッツウォルズがいいのではないかと、あるイギリス人が紹介したのである。<br>彼によれば、イギリス人にとって、もっとも人気のある観光スポットの一つだ、ということだった。<br><br>この助言に従って、コッツウォルズへ行った、この人の帰国談は面白かった。クロムウエルも泊まったことのあるという、大変由緒あるホテルに泊まったところが、床がギシギシ鳴る。夜中にトイレにも行くのを、遠慮しなければいけない。すきま風がはいって、暖房がきかなかった。等々、不満が多かったのである。<br><br>今では、日本でも、コッツウォルズは、すっかり有名になった。TVでもよく紹介される。いろんなツアーが用意されている。きっと心地よいホテルも整備されたことだろう。<br><br><br>本書の舞台は、コッツウォルズである。コッツウォルズを舞台にした、ミステリー小説を読むのは、私にとっては、これが初めてである。<br><br>もっとも、コッツウォルズ的な、田舎を舞台にしたミステリーは沢山ある。クリステイーのミスマープルもそうだ。<br><br>本書は、本物のコッツウォルズである。本書のなかで、ふんだんに出てくる地名は，すべて現実のもののようだ。<br><br>コッツウォルズは、羊毛の交易で栄えた、古い歴史を持っている。それだけに、ミステリーの場所としても相応しい、言い伝えや、歴史をもっているようだ。<br><br>例えば、1945年（昭和20年）のバレンタインデーに、ある丘の上で、一人の老農夫が、首を鋤で刺されて殺されるという事件があった。彼の番犬も殺されて，樹の枝に吊り下げられていた。<br>犯人は未だに見付かっていない。魔法使い裁判の生け贄とされた、という風説がうまれている。<br><br>本書は、これと全く同じ状況を、現代に設定して、ストーリーを展開させている。<br><br><br>さて、ストーリーは・・・・<br>古い地主の館の主である、老人が殺された。前述の実話と、全く同じ状況である。<br><br>捜査に当たるのは、イギリス人と、アルゼンチン人との混血の警部。彼は数年前に、老人の二番目の妻の事故死にも、立ち会っていた。彼女は、プールの横で転倒して頭を打ち、プールの中に落ちて、溺死したのであった。<br><br>この事故の後、12、3歳の二人の少女が、相次いで行方不明になる事件があった。老人の館で、少女の一人のものと思われた，髪飾りが発見されたが、証拠不十分で、館の家宅捜索は行われなかった。<br><br>老人には、前の妻との間に、一人の娘がいる。<br><br>この娘には、情緒不安定な面がある。子供の頃、男の子二人と、凍った池の上で遊んでいたところ、氷が割れて溺れてしまった。彼女は一命をとりとめたものの、男の子達は溺れ死んだ。そのことが、トラウマになっているようであった。<br><br>この池も実際に存在するもののようで、魔女をここへ埋めたという、言い伝えがあるらしい。<br><br>娘は、寄宿学校に通っていたが、お金を盗んだということで、退学になり、そのまま、一人でロンドンへ行ってしまった。絵はがきで、数度連絡はあったものの、いつのまにか、行方が知れなくなっていた。<br><br>老人が殺された翌日の夜、館は、火に包まれた。主人公は，火事場の中から，一個の古い遺体を発見した。それが、仮に行方不明になった少女の一人のものであったとすれば、もう一人の遺体も、館のどこかに埋められているのではないか。<br><br>老人は、誰に殺されたのか。殺害現場に近くで白いバンを見たという知らせがあったものの、その持ち主が誰かは判らない。<br><br>それにしても、老人を殺さなければならない動機は、一体何だろうか・・・・<br><br><br>警察の行動が，丁寧に説明されるので、読者にとって，事件の見通しがよい。さもありなんという決着が用意されている。周到に組み立てられた作品だと思う。<br><br>ストーリーの殆どは、主人公の語りで描かれる。ところが、ときどき、主人公が、第三者になった場面が現れる。最初は一寸戸惑った。どうしてこういう書き方にしたのだろうか。外国の読者が、同じ感想を書いていた。困惑したのは、語学力に問題のある、私だけではなかったようだ。それにしても，作者の意図が、よくわからない。<br><br><br>また、アルゼンチン人との混血を、主人公に設定した目的も、よくわからない。火事等の場面で、イギリス人には相応しくないような、無鉄砲な行動をとらせるためか。<br><br>主人公は、アルゼンチンにいる頃に、軍事政権下で、厳しい境遇を送っている。ときどきそれを思いだすが、事件の捜査に影響を及ぼすものではない。今後、この主人公で、シリーズの作品を発表する予定があるのなら、そういう彼の経歴を、直接的に事件と関係させるつもりなのかもしれない。<br><br><br>作者James Marrisonは、ジャーナリスト。スコットランドのエデインバラ大学で歴史を学ぶ。CIAの歴史に詳しいという。<br><br>犯罪実話を、雑誌や新聞に寄稿して来た。<br>“The World's Most Bizarre Murders: True Stories That Will Shock and Amaze You”という著作がある。精神異常者たちによる，異様な殺人事件の実話を集めているようである。<br><br>本書は、小説としての最初の作品。今後、かなり期待できそうだ。<br><br>年齢不詳。写真を見ると、40台の初めか。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスに住む。<br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12074651095.html</link>
<pubDate>Fri, 18 Sep 2015 22:24:39 +0900</pubDate>
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<title>蛾に憑かれた男達の秘密（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ Ann Cleevesの “The Moth Catcher”<br><br>TVドラマになっている、Ann Cleevesの、ヴェラ警部シリーズの最新作（第７作）である。<br><br>舞台は，例によって、ノーサンバーランド (Northumberland) のどこか。<br>ノーサンバーランドは、イングランド最北・東側の地域。北はスコットランドと接し、東は北海と接する。<br><br>古くから、この地を巡って、スコットランドとイングランドが争ったため、城が多い。荒野が開発されないで残っており、景観が維持されている。現在は国立公園として保護されている。イングランドで最も人口のまばらな地域である。<br><br>ヴェラ警部シリーズのTVドラマは、今月(2015.9)、第4シーズンが、AXN海外ミステリーで放映された。<br><br>第4シーズン全4作のうち、最初の作品の原作は、第6作目。<br>これについては、別項で紹介したところ。面白いことに、犯人が原作とは違っていた。こういう解決もあるかな、と思ったが、原作の方が私は好きだ。<br>他の三作は、TV向けオリジナルのようである。<br><br><br>本書について、作者にインタビューした記事が、インターネットに載っていた。概要を記す。<br><br>「私は、小説を書き始める時に、その結末がどうなるか、全く予想していないのです。私が小説を書き始めてから、２０年しか経っていません。ですから、それがとても楽しいのです。もし最初から物語がわかっていたとしたら、その楽しみが失われてしまうではありませんか。<br><br>この小説は，二人の男性が殺される場面からはじまります。<br>女性に対する、サデイステイックで性的な暴力行為を描写するのが、最近の小説の流行です。ステイーグ・ラーソンの「ドラゴン・タトウーの女」の登場以来、この傾向が、ますます強くなってきました。<br><br>私はこういう傾向に反する小説を、書きたいと思っています。<br><br>暴力的な連続殺人犯人、性格異常者たちが、女性を切り刻むような小説が多過ぎます。統計をみると、無差別な殺人事件の被害者の多くは，若い男性です。女性の事件の場合、多くは身近な人物によって被害にあっています。<br><br>変質者によって、身体に聖書の文句を刻まれたり、舌を抜き取られたりするような例はないのです。<br><br>私は、保護観察管としての経験から、殺人者の殆どは、悲劇的で、環境にうまく適応できない、小心者であることを知っています。<br><br>この小説は、伝統的なイギリスのミステリーです。小さなコミュニティの中で、ある限られた登場人物たちの間で展開していく、友情と、家族内の隠された秘密をめぐる物語です。また最後には、読者の予想を裏切るであろう、意外な結末も用意しています」<br><br><br>本書の舞台は、ノーサンバーランドの田園地帯。その一劃に、古い農家を、早期退職者向けに改造した３軒の山荘がある。そこに住む3組の夫婦と、その関係者たちをめぐる物語である。<br><br>作者によれば、彼女があるパーテイへ出席した時の経験が、この作品を書く引き金になったという。彼女は語る。<br><br>「それは早期退職者達のパーテイでした。出席者達は酔いつぶれ，卑猥な雰囲気がたちこめていました。彼等は自分を見失っているようだったのです。私は彼等のことを，密かに『退職した快楽主義者のグループ』と名付けました」<br><br>さて、ストーリーである。<br><br>退職者山荘に住む、3組の夫妻は、次のとおり。<br><br>地方史に関する本を執筆中の、歴史学者とその妻<br>住宅警備保障事業で産を成した、事業家とその妻。妻は水彩画家。<br>レストランを営業していた夫妻。その一人娘は、暴力行為の罪で刑務所入り。近く出所予定。<br><br>3組の夫妻は、親しく交際している。毎週金曜日は、定例のパーテイが催される。表面的には、何の問題も無いように見える。<br><br><br>近くの農場で、青年の死体が発見された。青年は、この地方の旧地主のお屋敷で、留守番役をしていた。旧地主夫妻は、オーストラリアへ旅行中である。退職山荘の人たちは、彼の顔だけは見知っていた。<br><br>ついで、青年が寝泊まりをしていたお屋敷では、別の中年男性の死体が発見された。<br><br>青年の後頭部には打撲傷があり、中年の男にはいくつかの切傷がある。いずれも他殺と判定された。<br><br>青年は大学では、演劇を専攻。両親は離婚。母親は近く再婚の予定。年の離れた兄が、大学時代に自殺している。青年は最近恋人と喧嘩別れ。<br>いろいろ複雑な事情はあるものの、誰かに恨みを買うような事実はない。<br><br>中年の男性は、もと数学の教師。コンピューターの専門家。独身。精神的に不安定で、入院していたこともある。今は，刑務所からの出所者の面倒をみるNPOで、アルバイト中だった。彼にもまた他人から恨みを受ける要因はない。<br><br>ふたりの間には、なかなか接点が見付からない。しいてあげるとすれば、二人とも、蛾の分類に趣味があることだった。<br><br>二人は、この趣味を通じて知りあいとなったのか？それにしても、この趣味がどうして殺人の原因となりうるのか？<br><br>ヴェラ警部は、何度にも及ぶ関係者達との会話を通じて，友人達の間に潜む葛藤、隠された家族の秘密に迫っていく。<br><br><br>どんな小さなことでも見逃さない、ヴェラ警部の観察力が、大変魅力的である。<br>いろいろな謎が、すこしずつ明らかになって行く過程が、面白い。最後に明かされる真相は、まことに意外である。<br><br>ただし、読者に示すべき、真相解明のための伏線については、いささか不満が残る。意外な結末を読んで、作者にうまく騙されたという爽快な読後感がない。<br><br>真相解明のためのヒントが少ないのである。ただし題名（蛾の蒐集家、あるいは、蛾の捕獲器）には、ヒントが隠されている。<br><br>題名は、殺された二人の趣味に由来することは明らかである。だが、読後しばらくして、もう一つの意味が隠されていることが判った。作者は、ベテランだけあって、巧妙な上手い題名を考えたものと感心する。<br><br><br>作者の小説家としての転機は、2006 年に、シェトランド島シリーズの第一作Raven Blackを発表したときだという。これ以来、彼女は専業作家としての途を歩き始める。<br><br>ヴェラ警部シリーズの第一作The Crow Trapは、1999 年に発表された。男性優位の職場のなかで、強い個性を持つ女性を主人公として設定したものである。<br><br>シリーズ第二作が、TVプロデューサーの目にとまり、TV映画化されることになった。人気作品フロスト警部シリーズの後継番組という位置づけである。すでに第５シーズンの制作にはいっているとのこと。彼女は一躍流行作家の仲間入りをした。<br><br>写真を見ると、明るく，聡明そうで、華奢な感じの老女性である。そのままミス・マープルの約が勤まりそうだ。<br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12073096727.html</link>
<pubDate>Mon, 14 Sep 2015 18:40:41 +0900</pubDate>
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<title>バルト海に浮かぶ二つの島の殺人事件ー特捜部Qシリーズ第6作（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ Jussi Adler-Olsen の “The Hanging Girl”<br><br>バルト海に、ボーンホルム島という、デンマーク領の島がある。<br><br>面積589㎢だから、淡路島と殆ど同じ大きさである。人口は約4万人。淡路島の３分の１以下である。高い山の殆どない、平坦な土地がひろがっているようである。<br><br>デンマーク領とはいいながら、デンマーク本土からは、かなり離れている。むしろスエーデンや，ドイツに近い。スエーデン領だったこともある。<br><br>デンマークの首都コペンハーゲンから、ここへ行く場合、フエリーで７時間もかかる。このため、コペンハーゲンからは、スウェーデンのイースタッド（Ystad）まで行き、そこから高速船で行くのが普通のようである。<br><br>産業は農業。特に畜産が盛んで、良質の乳製品を産する。デンマーク産のブルーチーズの半分は、ボーンホルム産とのこと。<br><br>観光資源は、円形の礼拝堂を持つ教会や，古い要塞跡など。写真で見ると、奇麗な建物が並んでいる。「バルト海の宝石」ともいわれるそうだ。<br><br>本書のもう一つの舞台は、スウェーデンのエーランド島。これについては、別項「エーランド島の幽霊は何を見たのか？」（2015.8）で記したところ。<br>二つの島を直接結ぶ航路はなく、イースタッド経由となるようである。<br><br><br>本書は、デンマークの作家Jussi Adler-Olsen によるシリーズ作品Department Q の最新作（第6作目）である。このシリーズ作品は、特捜部Ｑと題して、第５作まで、邦訳が出版されている。本書もまもなく邦訳されることだろう。<br><br>いずれも、迷宮入りした事件の捜査が、テーマである。未解決の事件を捜査するうち、社会のエスタブリッシュメント層の中に潜む、巨悪の存在に突き当たる、というのが定石のストーリー展開だ。<br><br><br>捜査を担当するのは、はぐれ者の刑事。部下の警官は、シリアからの亡命者（秘密警察出身者らしい）と、多重人格障害を持つ若い女性。3人のやり取りが、ドタバタ喜劇調で描かれるところが面白い。<br>また、未解決事件の真相に迫って行くプロセスは、知的興奮をよぶ。<br><br>私は第3作まで読んだと記憶する。いずれも面白かった。<br>本書は、それらに比べ、面白さが、やや減少したように思う。その原因は、桁はずれの主人公達が、かなり常識人化してしまったところにあるようだ。第一作から、数えて、７年も経つている。いつまでも桁外れ、というわけにはいかないのだろう。<br><br>二人の部下は、極めて優秀な捜査マンとなり、はぐれ刑事は、彼等を巧みに動機づける、立派な管理者である。ドタバタとは縁が遠くなった。<br><br>加えて、今回の悪の代表者は、カルト教団である。といっても、オーム真理教のようなテロ活動、あるいは集団自殺といった過激な行動をとるものではない。太陽を崇め、自然の力を体内にとりいれようとする。その意味では、新興宗教といったほうがいいかもしれない。<br><br>この教団では、女性信者間の激しい愛憎問題はあるものの、社会的に大きな悪をもたらすものとはいい難い。悪役があまり憎らしくないのである。これでは面白さが半減する。<br><br>ただし、ミステリーとしては、うまく考えられている。意外な結末が用意されている。作者は、このシリーズ作品に、本格派ミステリーの性格を、より強めようとしているのかもしれない。次作はどうなるだろうか。<br><br><br>さて，本書のストーリーである。<br><br>ボーンホルム島警察の、ある警官から、特捜部Qに連絡が入った。自分はもう退職する。長年、個人的に捜査してきた事件を、引き取って欲しいというのである。それは、約20年前に、ある女子学生が、自動車のひき逃げ事故にあったというものであった。犯人は見付からないままである。<br><br>主人公は、引き逃げ事故は我々の所管外だからと断った。ところが、電話してきた警官は、自分の退職パーテイーの席上で、拳銃自殺してしまう。未解決事件のことを、苦にしてのものと思われた。<br><br>責任を感じた主人公達は、ボーンホルム島へ渡り、事件の調査に取り組むこととなった。自殺した警官の家は、事件に関係した資料で埋もれていた。警官が偏執狂的に事件を追いかけるのを嫌った、彼の妻と一人息子は、家を出てしまっていたのであった。<br><br>事件は、夏期学習で島にきていた、19歳の女子学生が、自動車にはねられたて死んだというものである。彼女は、はねられた衝撃で、道路脇の樹の枝にぶら下がって死んでいた。題名の由来は、ここにある。<br><br>自殺した警官の残した資料を分析し、関係者の話等から浮かびあがってきたのは、当時、島でヒッピー的な生活をしていた、一人の青年の存在であった。彼は女子学生と恋仲にあったらしい。愛情関係のもつれで、ヒッピー青年が、彼女を殺した疑いがある。事故だったのではないかもしれない。<br><br>主人公達は、名前も判らない、この青年の行方を突き止めようと、懸命の努力を続ける。<br><br>一方、本書のなかでは、捜査活動と併行して、このヒッピー青年とおぼしき男の行動が描かれる。読者は，主人公達が知らない事実を知らされるのである。<br><br>男は、今、スウェーデンのエーランド島で、自然の力を吸収するという教団の教祖となっている。教団の中では、彼をめぐって、女性信者間の嫉妬が渦巻き、大きな事件が起ころうとしている。<br><br>主人公達は、いつ、この教団を見つけることができるのだろうか。20年前の事件の真相はどうだったのだろうか・・・・<br><br><br>捜査の過程で，事件の関係者と、ヒッピー青年とを関係づける、一つの歌があることがわかり、捜査に手がかりを与える。<br>カナダの女性シングソングライターJoni MitchellのRiverという作品である。1970年に作られた。<br><br>インターネットに歌詞が載っていた。拙訳を記しておく。今自分がいる所ではない場所、懐かしい場所への憧れ、失われた愛への哀惜の歌のようである。<br><br>川<br><br>もうすぐクリスマス<br>あの人たちは　樹を切り下ろしている<br>トナカイに準備をさせている<br>そして　喜びと平和の歌を歌っている<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br><br>でも　ここでは雪なんか降らない<br>まだ緑がいっぱい<br>お金を沢山儲けよう<br>そして　そして　この狂ったような所から逃げだそう<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br><br>川があったらと　いつも思っている<br>私の足に　飛ぶことを教えてやれるのに<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br>私は　愛しい人を泣かせてしまった<br><br>あの人は　一生懸命に私を助けようとした<br>私を安心させてくれた<br>神様　あの人は私を　無茶苦茶に愛してくれました<br>私の膝から　力が抜けてしまうほどに<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br><br>私はとても扱い難い人間<br>わがままで　泣き虫<br>もう私は去ってしまった　そして一番愛しい人をなくしてしまった<br>今までで一番の　あの愛しい人を<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br><br>川があったらと　いつも思っている<br>私の足に飛ぶことを教えてやれるのに<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br>私は愛しい人に　さよならといわせてしまった<br><br>もうすぐクリスマス<br>あの人たちは　樹を切り下ろしている<br>トナカイに準備をさせている<br>そして　喜びと平和の歌を歌っている<br>ああ　川があったら　私もそこまで滑っていけるのに<br><br><br>ussi Adler-Olsenについては、別項「ドイツ軍の精神病棟に忍び込んだ イギリス空軍パイロットの冒険」に譲る。<br><br><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12071989938.html</link>
<pubDate>Fri, 11 Sep 2015 18:19:05 +0900</pubDate>
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<title>共産主義革命を夢見る青年達と 元ナチ効力者達のオスロ（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ <br>Hans Olav Lahlum の “The Catalyst Killing”<br><br>中国の「抗日戦争勝利７０周年」の記念行事が、無事終わった。国威発揚の目的は、果たされたようである。<br><br>軍隊のパレードで感心するのは、銃を担って行進する兵士達の動作が、実に見事に統一されていることだ。北朝鮮の行進も見事だった。中国の兵士達の方が、やや身長が高く、よりしなやかだったように感じたがどうだろう。<br><br>よく訓練されたものと思う。仮に若い時の私が行進に参加するとすれば、どこかで足や手のバランスが崩れるに違いない。もっとも運動神経の鈍いものは，最初から候補にならないだろうけれど。<br><br>参加国のうち、国家元首クラスが出席した国々の性格を考えるとなかなか面白い。中国と国境を接しているところや、経済的関係の深いところが主だったようだ。<br><br>同時に、社会主義的な政策をとっている国や，反米的な国が、比較的には、多かったように思える。逆に言えば、自由主義経済で、親米的な国があまり参加していないということだろう。<br><br>その中で、韓国は異色の存在だ。この国は、自由主義経済であり、自国内にアメリカ軍の基地を持つ、親米国家である。<br><br>しかし，韓国は、将来かなり様子が変わっていくのではないかと思う。<br><br>先ずは経済について。<br>韓国の経済は、少数の財閥によって牽引されていると言われている。このため経済格差が極めて大きい。<br><br>現在の政権は，これまでのところ、この問題点の解決には成功していないようだ。<br><br>次の選挙では、富の分配に重きを置く、左派的な政党が勝つ可能性があるのではないか。現在の大統領が選ばれたのも僅差だった。また保守党は、高年齢層の支持が大きいという。この層のウエイトはだんだん小さくなるだろう。<br><br>次に親米政策について。<br>朝鮮半島の南北統一を、韓国が真剣に考えているとすれば、中国とロシアおよびアメリカの協力をえることが必須条件だろう。この三国で意見調整ができるだろうか。アメリカが邪魔になるはずである。左派政権が誕生すれば、脱親米政策の方向に舵取りしても不思議はない。<br><br>こう考えてくると、将来的には、同じような傾向を持つ、中国、統一韓国、およびソ連の三か国が、日本列島に覆い被さるかのように存在することになる。まるで猛獣のように。渤海湾はその口であり、朝鮮半島は上あごだ。<br><br>周主席を真ん中にして、両脇で韓国とロシアの首脳が微笑している式典の光景は、日本に対して、「こちらへおいでよ！」と誘っているかのようである。さて日本はどこへ行くのか。<br><br>歴史的に見ても、このような状況はありえないことではない。ロシアが強かった冷戦時代には、ヨーロッパ諸国においても、ロシアに憧れる勢力があった。日本でもそうだった。<br><br>ロシアの凋落に伴って、こういう勢力は弱まった。今度は中国である。中国に憧れる勢力が、世界のいろんなところで、力を増して来るのではないだろうか。<br><br><br>さて、本書の舞台は、約５０年前のオスロである。<br><br>主要登場人物は、ソ連と協力して、ノルウェーに共産主義革命を起こそうと考える青年達のグループである。<br><br>さらに、もう一つのグループがある。彼等は、戦時中ノルウェーがドイツに占領されたとき、その協力者だった。彼等が、ナチに協力した大義名分は、共産主義革命を防ぐことにあった。ノルウェーは王国である。共産主義革命によって、そのアイデンティティが失われるよりは、ナチへの協力を選んだというのである。<br><br>彼等は、戦争犯罪者としての処罰をうけたものの、今は社会復帰している。ノルウェーが、共産主義革命の危険にさらされていることに、危機感を持っている。それを防ぐために、なにかテロ活動をおこそうとしているという噂もある。<br><br><br>共産主義革命を企むグループの中の、一人の若い女性がライフル銃で射殺される、という事件が発生した。<br><br>その約２年前、グループのメンバー達が、殺された女性の父親が所有する別荘で、革命の計画を打ち合わせしていた時のことである。グループのリーダーである青年が、別荘から姿を消し、行方不明になった。殺された女性は、彼の婚約者であった。<br><br>二つの事件には何かの関係があるのだろうか。<br>グループの中に、愛情のもつれがあったのか。思想の違いがうまれたのか。<br><br>主人公のオスロ警察の警官が、事件を調べるうちに、メンバーの一人が、秘密警察への情報提供者だったということを知った。秘密警察が、二つの事件に関与しているのか。<br><br>また、行方不明となったリーダーの青年は、政治学の研究者だった。彼は、研究の過程で、元ナチによる陰謀の存在に気付いていたという。元ナチによる犯罪だったのか。<br><br>主人公は、複雑な様相を呈してくる事件について、例によって、彼の知恵袋である、車椅子の若い女性と相談する。<br><br>そのうちに、思いもよらぬことが起こり、新しい殺人事件に発展する・・・・<br><br><br>本書は、作者による、第三作目。前二作と同様、主人公の警官がワトソン役、車椅子の若い女性が、ホームズ役である。<br><br>主人公が足で稼いだ情報を、彼女が聞いて、適切な方向性を示すという構成になっている。読者は、彼女と同じ条件におかれている。彼女と同じ推理ができるはずだが、なかなか、そうもいかない。<br><br>よく考えられた構成である。しかし、殺人が行われた場面に、たまたま関係者の何人かが居合わせたことなど、こしらえものという性格の強い面がある。<br><br>題名の意味について、作中で、作者が語っている。一つの殺人が、触媒となって、別の大きな事件をもたらすことがあるといいたいようである。<br><br>例としてあげているのは、第一次世界大戦勃発のことである。<br>第一次世界大戦は、サラエボで、オーストリアの皇太子が暗殺されたのが、引き金となった。戦争が始まる要因が積み重なっているところへ、暗殺事件があり、それが触媒となって、戦争がはじまった。<br><br>本書でも、鬱勃としていた状況に、ある女性の殺人事件が、触媒として働き、大きな事件に発展する。<br><br><br>作者は、アメリカのロス・マクドナルドを意識した、と後書に書いている。私の記憶によれば、ロス・マクドナルドは、もっと叙情性の強い作家だった。その点，本書の作者は、あまりそういう感覚がないように思える。<br><br>また、推理を追っていく面白さはあるが、サスペンスにはやや乏しいようである。これまで彼の3作を読んでみての感想では，第一作が。一番出来がいいように思う。<br><br>作者については、別項に譲る。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12070198857.html</link>
<pubDate>Sun, 06 Sep 2015 21:27:56 +0900</pubDate>
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<title>レイキャビクのアメリカ空軍基地に隠された秘密とは？（海外ミステリー紹介）</title>
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<![CDATA[ Arnaldur Indridason の '"Oblivion"<br><br>このところ、大分秋めいてきて、台風情報が忙しくなった。<br><br>台風情報を見るたびに思うのは、必ずと言っていいほど、沖縄が台風の通過地となることである。沖縄は、日本本土と比べ、まことに不合理で、不平等な地理的条件にある。<br><br>仮に、台風のエネルギーを吸収して，そのエネルギーを弱めるような装置が開発されたとしよう。その仮想設備は、真っ先に、沖縄のどこかに設置されることだろう。<br><br>同じことが、安全保障の問題についていえるようである。<br><br>中国に対する安全保障のことを考えると、日本の中で沖縄ほど、基地として絶好の地点は無い。この地政学的条件があるため，本土の住民は、沖縄へ過分の負担をけることになってしまう。申し訳ないことである。<br><br>沖縄の基地を県外へ、という要請はもっともだと思うが、果たしてどんな手段があるのか。大きな人工島でも，沖縄県外作らない限り，この問題は解決できそうにない。勿論、日米安保協定を破棄すれば別だが。<br><br>一介の無為老人が心配してもどうにもならないけれども、さわさりながら、現在、県知事が反対している、普天間基地の移設については、その主張の論理に，分かり難いものを感じている。<br><br>沖縄の基地については、二つの問題がある。<br>一つは、あまりにも集中しているという基本的な問題。もう一つは大変危険（含騒音公害）な空港があるということ。<br><br>この危険を避けるための方法が移設である。<br><br>移設では、基本的な問題が解決できないのは当然である。<br>かといって、危険な空港を放置しておくのが妥当なのか。知事が埋め立てを承認しない可能性は強い。そうすれば、法廷での決着ということになるのだろうか。<br><br>結果として，基地の危険な状態は、そのままで、相当期間放置されることになる。<br><br>知事は、「普天間基地が現状のままであれば、必ず大事故が発生する。そうすれば、日米安保条約は吹っ飛んでしまう。基地の存在理由は失せる」と言う趣旨の発言したという記事を見たように思う。誤解かもしれぬ。<br><br>仮にそう考えているとすれば、県民の命を担保にして、基地の撤去を主張していることになる。沖縄の人たちの目は、どう映るだろうか。<br><br>沖縄県が、政府の方針に反し、単独で、基地撤収を合法的にやれるとすれば、それは沖縄を日本から独立させることではないだろうか。日米安保条約の制約はなくなる。沖縄国は，自由にアメリカと交渉できる。<br><br>ひょっとしたら、先だっての、知事のアメリカ渡米は、そのためのシミュレーションだったのかもしれぬ。沖縄でも、スコットランドの独立問題のように、独立の是非を問う国民投票が、行われないとも限らない。大阪都構想どころの騒ぎではない。<br><br><br>まことに、他国の軍事基地を抱えるとは、大変難儀なことである。<br><br><br>本書のテーマの一つは、アイスランドのアメリカ空軍基地の中で起こったと思われる殺人事件である。ただし、時代は1979年のこと。今はもう、基地はなくなっている。<br>当時は、基地設置の是非について、アイスランドでも、意見は賛否拮抗していた。本書の主人公の若い男性刑事は、基地に反対意見の持ち主である。<br><br>アイスランドは、第二次世界大戦では、中立を宣言していたが、1940年に、イギリス軍によって、全土が占拠された。ドイツ軍の先手を打って、要衝の地であるアイスランドを確保するものであった。<br>1941年からはイギリス軍に代わりアメリカ軍が駐留するようになった。<br><br>戦後になると、アイスランドは、NATO加盟国となり、1951年からアメリカ軍がケフラヴィークというところに駐留した。<br><br>2006年になって、アメリカは、戦力再編成の一環として、ケフラヴィーク基地から撤退した。アイスランド側は、駐留費用の全負担を申し出るなど駐留継続を要請していたが、アメリカ側がこれを受け入れなかったといわれている。<br><br><br>本書の背景のもう一つとして、グリーンランドのアメリカ軍基地ニ関連した問題がある。<br>基地は、チューレというところにある。<br><br>冷戦当時、アメリカ軍による、クローム・ドーム作戦という、軍事行動があった。<br>チューレ基地には、北極圏を通過するミサイルを捉えるレーダーなどが配置されていた。ソ連が、米国への核攻撃を行う際は、チューレをまず落とすと考えられていた。<br><br>クローム・ドーム作戦は、基地周辺の上空を、水爆を搭載したB-52爆撃機を、常時飛ばせておくというものであった。ソ連からの攻撃があった場合に、直ちに反撃に移るためである。<br><br>1968年に、チューレ空軍基地近くで、警戒任務についていたB－52が海上に墜落するという事故があった。爆撃機には４個の核爆弾が搭載されていた。核爆弾の周りの爆発物が爆発したため、大規模な放射能汚染を引き起こした。しかし、核爆弾は起爆状態になかったため、爆発は免れたという。<br><br>この事故の後、クロームドーム作戦は、そのリスクが浮き彫りになったため、中止された。<br><br>B-52は、テキサスの空軍基地を出発し，主としてカナダ、アラスカ上空を経てグリーンランドへ飛んだ。給油は海の上空で行われた。<br><br>この小説では、B-52が、秘密裏にアイスランドのアメリカ空軍基地から飛んでいたのではないかという設定になっている。<br><br>もしこのことが事実であり，明るみに出れば，大変な問題になる。核を積載した飛行機が、アイスランドに入る場合は、アイスランド政府の承認が必要とされていたのである。従って、この秘密を知り得たものがあれば、秘密保持のために、殺されてしまうこともありえたわけである。<br><br><br>さてストーリーは・・・<br><br>アイスランドの首都レイキャビク近郊の沼地で、男性の死体が発見された。発見者は、沼地で，皮膚病の治療を試みていた女性である。<br><br>首都レイキャビクの南西約40キロのところに、地熱発電所がある。<br>地熱発電所が流していた温排水中のケイ素成分などが、溶岩土壌の隙間を埋め、自然に泥水温泉ができた。これに入浴したところ、皮膚病の症状が改善したという事実があったらしい。本書はその事実を、物語の材料として、巧みに利用している。<br><br>現在では、この地点は、温浴施設や温泉プールに発展している。年間70万人が訪れる人気の施設で、オーロラと並ぶ有力な観光資源となっているとのこと。<br><br>被害者の身元は、詳細な調査の結果、アメリカ軍基地で働いていた、３０代半ばのアイスランドの青年だと判明した。<br><br>彼は、日常物資に加え，マリファナを、基地から、不法に入手していたことがわかった。それに関連して、何かのトラブルに巻き込まれたのか。マリファナは、白血病を病む妹の病状を和らげるのが目的だったのだが。<br><br>また先述のように、彼は、クローム・ドーム作戦に関する情報を手に入れていた可能性があった。そうすると、アメリカ情報部による暗殺だったのではないか。<br><br>アイスランド警察の刑事達は、占領地区内での困難な捜査に直面する。<br>基地内の、アメリカ軍警察の黒人女性警官の協力が、得られることになったのだが・・・・<br><br>刑事の一人は、この作者の他の作品に共通する主人公である。本書では、彼は未だ若い。３０代半ばだ。<br><br>彼は殺人事件の捜査に加えて、２５年前に起きた、ある少女の失踪事件に強い関心を抱いている。殺人事件の捜査の合間を利用して、古い資料を読み返し、当時の関係者たちを探し出して，事件の真相に迫ろうとする。<br><br>薄紙を一枚ずつ剥がしていくようにして、彼は意外な事実に突き当たる。ひょっとしたら、この事件は、２５年前のアメリカ軍基地で働いていた青年と、関係があるのかもしれない。<br><br>二つの事件は，いずれも、基地があるがための、アイスランドの業（ごう）によるものだったのか・・・・<br><br><br>読者は、二つの異なった事件の観客となる。大変スリリングである。<br><br>本書は作者の最新作。従来の作風とはかなり違った印象だ。彼の作風は、大変陰鬱である。同時に捜査過程の説明が緻密である。知的興奮をもたらす。<br>その例外が、別項でとりあげた、Operation Napoleonだ。これは本書と同じく、アメリカ軍基地を主な舞台としている。ただし、活劇ミステリーである。<br><br>その意味で，本書は，従来タイプの作品に、Operation Napoleonのような活劇の味付けをしたものといえるかもしれない。あるいは、Operation Napoleonの書かれた1999年頃に、本書の素案はできていたのかもしれない。<br><br>何れにしても，大変面白かった。久しぶりに、巻置くあたわざるの思いをした。作者については，別項に譲る。<br>題名のOblivionとは、「忘却、記憶の彼方」等の意味。この人は、スエーデンの大ミステリー作家Henning Mankellに比べると、題名の付け方は、あまり上手でない。小説の面白さには，匹敵するものがあるけれども。<br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mystery79/entry-12065683846.html</link>
<pubDate>Tue, 25 Aug 2015 16:32:47 +0900</pubDate>
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