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<title>鷲爪伝　―毛利元就の家督相続に関わる陰謀と謀略の物語―</title>
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<description>「無明堂」で公開中の自作歴史小説を、読みやすい分量にして日々配信中。　　毛利家の家譜から抹消された悲劇の武将 毛利元綱（相合四郎）。歴史の闇に葬られた、毛利元就の家督相続に関わる陰謀と謀略の物語。</description>
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<title>鷲爪伝　３６６　あとがき</title>
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　いきなり個人的な思い出話で恐縮だが、現在（いま）(2014年)から二年ほど前、僕は広島県安芸高田市の相合地区を訪ね、「相合四郎（・・）の墓」に墓参したことがある。　事前に下調べなどもしていたのだが、土地勘のまったくない僕は、とりあえず郡山の南麓にある歴史民俗資料館に寄ることにした。そこで受付の職員の方に「相合元綱（・・）の墓」への行き方を訊ねたわけだが、僕の唐突な問いはあまり一般的な質問ではなかったらしく、首をかしげられた。「元就の弟の墓が相合の方にあるはずなんですが――」　と付け加えると、わ
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<dc:date>2014-08-05T18:25:06+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６５　エピローグ（２）</title>
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　まず、俺が船山砦で戦っている頃に、吉田では福原氏の兵によって坂広秀が討たれていた。　広秀の本拠は向原の日下津城であり、このとき吉田の装束屋敷に詰めていた家来はわずか十数人に過ぎなかったであろう。襲撃をまったく予期してなかった広秀は、ほとんど為すところがなく、腹を切る間もなく討ち殺されたようだ。　夜明けを待たず、郡山城から複数の早馬が飛び出して、主立つ家臣の元にそれぞれ走った。緊急の評定をすべく、兄が重臣を召集したのである。　夜中に叩き起こされた重臣たちが、おっとり刀で登城した頃には、すでに坂広
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<dc:date>2014-08-04T18:17:08+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６４　エピローグ（１）</title>
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　べん――　平家琵琶の音がした。　べべべん――　それは夢のなかで響いた音だった。　いや、本当に夢であるのかどうか。ここはすでに死後の世界で、六道（りくどう）で言うところの修羅道というヤツではないか――とも俺は思った。　じゃんじゃんじゃんじゃんじゃん――　激しくかき鳴らされる琵琶が間断なく鳴き続けている。　視界は薄暗く、遠近（おちこち）で松明の炎が燃え、その揺れる火明かりのなかで無数の武者たちが殺し合いをしていた。　近くにいる武者は俺にも次々と群がり襲って来る。　俺はそれをひたすら討ち払い続けてい
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<dc:date>2014-08-03T12:05:50+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６３　新たなる船出（２５）</title>
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　時間をわずかに遡る。　志道広良の軍勢が天神山の山すそで三百あまりの松明に火をつけたころ、相合の元綱の屋敷に忍び入ったひとつの影があった。　鉢屋の蓮次（れんじ）である。　今宵、この屋敷に残っていたのは女子供と老人だけであり、それを知っている蓮次にとって、忍び込むのは造作もない。低い芝土居を越えて裏庭に下りると、躊躇なく中庭を突っ切り、濡れ縁から寝静まった母屋にあがり、足音も立てずに廊下を奥へと進む。　母屋の大まかな間取りと夫婦の寝室の位置は市兵衛翁からあらかじめ聞いてある。迷うことなく目指す部屋
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<dc:date>2014-08-02T18:40:01+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６２　新たなる船出（２４）</title>
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　郡山を黒々と覆う森の闇のなかを三百五十余の影が出陣した。　この集団は先頭を行く者が松明を持つほかは無灯火である。縄を使って前の者が後ろの者を牽引する形で、ぞろぞろと一列縦隊で進んでゆく。兵たちは、槍や薙刀、熊手といった長柄（ながえ）をそれぞれ杖代わりにし、その背には弓矢を背負い、あるいは矢楯をかついでいる。馬は一頭もいない。むろん私語は禁じてあるから誰も声を立てない。粛々とした無音の行軍であった。　広良がみずから率いたこの軍勢は志道家の私兵を除けば即席の混成部隊で、その意味で精鋭とは呼べないが
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<dc:date>2014-08-01T19:04:46+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６１　新たなる船出（２３）</title>
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　志道広良の意識のなかで、元綱は最初から坂広秀の与党である。　坂広秀が元就政権の転覆をたくらむとすれば、現当主の弟であり毛利家嫡流の血を引く元綱を謀反の旗頭としてかつぎ出すことを考えるのは自然であり当然でもあろう。広秀は元綱の義父ということもあり、もともとひとつ穴の狢（むじな）と視ていた。当然ながらこの二人の動静についてはよほど注意を払っていて、坂広秀が、桂広澄や渡辺勝（すぐる）などと密談を重ねているという事実を掴むのにもさして時間は掛からなかった。　桂広澄は坂氏の嫡流であり、坂一門の重鎮と言っ
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<dc:date>2014-07-31T18:27:55+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３６０　新たなる船出（２２）</title>
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　その渡辺勝（すぐる）が、相合の元綱の屋敷に現れたのは、三月の末、そろそろ二更（にこう）（午後十時ごろ）になろうとする時刻であった。　このとき元綱は私室にいて、重蔵を相手に『尉繚子（うつりょうし）』という兵法書の講読をしているところであったが、勝が人払いを願ったので、重蔵を部屋から去らせ、差し向かいで座った。　ゆきを呼んで酒を持って来させ、部屋に誰も近寄らせぬよう言いつける。「これで満足か？　こんな夜中に――まるで密談だな」「かたじけない。ですが、他聞をはばかることでござる。拙者が今夜ここへやっ
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<title>鷲爪伝　３５９　新たなる船出（２１）</title>
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　尼子氏による毛利家の乗っ取りが現実味をもってささやかれ始めていたこの時期――。　元就は苛立ちと苦悩を、元綱は漠然とした不安を、それぞれに感じていたのだが、おそらくこの二人以上に精神的に追い詰められていたのが、坂広秀であろう。　衆議の力によって元就を退隠（たいいん）に追い込み、養子として迎え入れた尼子経久の孫を新たな家督に擁立する。　この陰謀をスムーズに実現させるには、実際に尼子軍が吉田にやって来るまでに、重臣たちの間で一定以上のコンセンサスを得ておかねばならないのである。　なぜと言えば、毛利側
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<dc:date>2014-07-28T18:06:26+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３５８　新たなる船出（２０）</title>
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　広良の真の狙いとその論の正しさを元就は理解したが、無実の罪を着せて家臣を粛清するなどということは、感情がそれを許せない。まして生贄（いけにえ）の祭壇に捧げるべき人間が、血を分けた弟というのでは・・・・。「当家にとって、そして殿にとって、害毒となり得る芽は、早々に摘（つ）んでおくに如（し）かず。それが『転ばぬ先の杖』というものでござる」「そんな杖なら私は要らぬ」　元就は吐き捨てるように言った。　元綱には何の怨みもない。それどころか磊落（らいらく）で爽快なその気質を元就は愛してさえいた。抵抗を感ず
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<dc:date>2014-07-26T18:36:35+09:00</dc:date>
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<title>鷲爪伝　３５７　新たなる船出（１９）</title>
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　大内軍の出陣が近い、という意味のことを、その使者は言った。「様々な筋からもたらされた報せによれば、周防（すおう）の山口では戦さ支度が忙しく、大内はこの春にも大軍を動かす気配であるとのこと。出陣の期日まではハキとはわかりませぬが、先年のように雪解けと共に動くか、遅くとも田植えが終わる頃には、出陣ということになりましょう」「なるほど、ありうべき事だ」　元就は静かにうなずいた。このまま安芸の支配を尼子経久に任せてしまうつもりは、大内義興には微塵もないであろう。奪われた鏡山城を奪回すべく、雪解けと共に
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<dc:date>2014-07-25T18:51:35+09:00</dc:date>
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