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<title>(物語)そして、誰もいなくなった</title>
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<description>恋愛に溺れ、共依存に陥った女の子、そんな彼女に恋し破れストーカーとなった男の子。同じ部活内、この泥沼に底はあるのか。明るい未来は見えない。</description>
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<title>M4　前夜</title>
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<![CDATA[ <p>年末合宿は大晦日の昼に解散する日程で３泊４日だ。</p><p>あの日、僕と西条が同じ布団で寝た時から僕は彼女のことが気になって仕方がなかった。</p><p>そうだ、僕はもう彼女に恋をしている。これだけは、間違いないだろう。</p><p>友達だった人のことを急に好きになるということはよくあることだと聞く。</p><p>僕もそのパターンなのだろうか。</p><p>&nbsp;</p><p>あの日、布団の中で西条が、寒いし、私、冷え性だからと言って僕の手を握ってきた。</p><p>彼女の手のひらは、彼女のボーイッシュな見た目からは考えられないほど柔らかくてまるでマシュマロみたいだった。</p><p>僕は、決定的に彼女が好きになってしまった。</p><p>&nbsp;</p><p>朝、同じアラームで目を覚ますまでその手は繋がれたままだった。</p><p>&nbsp;</p><p>彼女は僕のことをどう思っているのだろうか。</p><p>どんな思いで、僕の手を握って生きたのだろうか。</p><p>ひょっとして、僕のこと………</p><p>頭の中にいろいろな考えが巡っては消えてゆく。</p><p>その中心には常に西条がいた。</p><p>&nbsp;</p><p>そして、明日から年末合宿だ。</p><p>僕は、いつも通り、彼女にこうメールしていた。</p><p>「合宿の前日の晩、泊めてもらえるかな？」</p><p>そして、いつもと同じ返事かかえってくるだろう、ほら</p><p>「いいよ！」</p><p>僕はバイトをしていたから、彼女の家に着くのは大体23時くらいになる。</p><p>行き道のコンビニで弁当を買って彼女の家の電子レンジで温める。</p><p>ずうずうしくもシャワーまで借りる。</p><p>まったく、自分でもよくわからない関係だ。と思う。</p><p>僕がシャワーから出てくると、彼女はパソコンに向かっていた。</p><p>無表情でキーボードを叩いている。</p><p>「忙しそうだね、宿題？」</p><p>濡れた髪の毛を手で乾かしながら僕は西条に問いかけた。</p><p>「うん、レポート書いてるの。大晦日までに先生に送らないとなんだけど、合宿中はこんなことやってる時間ないだろうから今晩中に終わらそうと思って」</p><p>「へー偉いね。僕なら諦めちゃうけどな、提出」</p><p>「そういうわけにはいかないよ。単位落として留年しちゃったら大変でしょ」</p><p>「留年かー。確かに留年を繰り返して人生狂っちゃう人もいるもんな」</p><p>「うん。だからできることは頑張らないと」</p><p>西条はキーボードから手を放し、僕の顔を見つめながら言った。</p><p>同じ同級生なのここまで意識の違いを見せつけられると、さすがに参ってしまう。</p><p>僕は話を合宿のことに逸らした。</p><p>「でも明日、朝早いよ。大丈夫なの？」</p><p>「大丈夫じゃないかも、私が起きなかったら全力で起こしてね。物部こそ今日は早く寝なさいよ。物部、朝弱いんだから。」</p><p>「うん、了解。じゃあお先に寝ようかな」</p><p>「うん。あそこに敷いてある布団使っていいよ。電気はこのリモコン使って消せるから。おやすみ」</p><p>こうして、僕は西条よりも先に寝ることになった。</p><p>布団に寝転んでリモコンで電気を消すと、パソコンの明かりに照らされた西条がぼんやりと見える。</p><p>部屋にはキーボードのカタカタという音だけが響いている。</p><p>僕は西条を横目に見た。</p><p>これが僕の好きな人か。と頭の中で思った。</p><p>一緒の部屋にいるだけでなんだか幸せな気持ちになる。</p><p>僕はいつの間にか眠りについていた。</p><p>今日が西条の部屋に遊びに行く最後の日になるということも知らずに。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12293751794.html</link>
<pubDate>Tue, 18 Jul 2017 16:52:13 +0900</pubDate>
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<title>W3　ゆけむり</title>
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<![CDATA[ <p>佐伯くんと別れた私は自分のアパートに直行した。</p><p>別れ際、佐伯君はとびっきりの笑顔で「よいお年を」と言った。</p><p>顔中が火照って真っ赤にいるのを気づくのに少し時間がかかった。</p><p>そして私は、強く思った、やっぱりこの人のことが好きなんだと。</p><p>そうだ、それが一番大切ではっきりしていることなんだ。</p><p>「よいお年を」</p><p>たったこれだけの言葉で人間ってここまで幸せな気持ちになれるんだ。</p><p>私は、彼が、佐伯くんが私と同じ時間、世界、場所にいてくれることを感謝したくてどうしようもなかった。</p><p>彼の両親に、神様に。</p><p>&nbsp;</p><p>真冬の真夜中。家路。自転車を漕ぎながらの吐息は雪のように真っ白だった。</p><p>冷え切った体に急き立てられるように私はお風呂に入った。</p><p>あたたかな湯船に浸かると体が冷えているせいかいつもより熱く感じた。</p><p>私はお湯の中で無意識に髪の毛を触っていた。今でこそショートカットにしているが、実は高校時代はロングだった。肩のあたりでカールするくせっ毛が自分でも気に入っていたのだが、アルバイトの時、邪魔になるし束ねるのもだるいからという理由でばっさり切ってしまったのだ。</p><p>今も楽だからショートにしている。</p><p>「そういえば佐伯くんはロングの方が好きだったんだっけ。髪、伸ばしてみようかな。そっちの方が女の子らしいよね。」</p><p>なんて考えた。ボーイッシュな自分が少しコンプレックスに感じてきた。</p><p>でも今はこんなコンプレックスのことなんて気にならなかった。</p><p>体と同じくらい心もぽかぽかしている。</p><p>定食屋での佐伯くんとの会話が今でも、耳の奥のカタツムリ的なところに残っている。</p><p>佐伯くんの残像が目の奥の奥に残っている。</p><p>佐伯くんのことを思い出すと、体中がぞくぞくして、顔が自然とにやける。私って危ない人なのかな、と思いながら「佐伯くん」と小さな声でつぶやいた。</p><p>その声はアパートの狭い風呂場の中で反響してゆけむりの中へと消えていった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12293259142.html</link>
<pubDate>Sun, 16 Jul 2017 23:24:57 +0900</pubDate>
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<title>W2　くる年</title>
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<![CDATA[ <p>私の日常は何の問題もなく過ぎていった。</p><p>軽音楽部の練習も順調で、クリスマスなんかは私の家でパーティーを開いたりした。</p><p>「酔っぱらうのはいいけど、私の家でゲロはいたら出入り禁止だからね」</p><p>なんて忠告したけど、みんなと飲む酒は美味しくて楽しくて、ペースをわきまえず飲み続けた結果、一番にはいてしまったのは私だった。</p><p>でも、トイレまで間に合ってよかった。佐伯くんの前ではいていたら私…。</p><p>性格が合わない人も中にはいたが、まったく不満じゃなかった。</p><p>メンバーと一緒にいることはとても楽しいし、私は仲の良いバンドメンバーが誇りでもあり大好きだった。</p><p>&nbsp;</p><p>そんなある日のこと。</p><p>年末が近づいていた。</p><p>今年最後の練習が長引いて中々家に帰れなかった。</p><p>というのも、完璧主義でボーカルの金田が</p><p>「今年最後の練習なんだからミスがなくなるまで返さないからな」</p><p>なんて言い出したからだ。</p><p>みんな不満たらたらだったが、特に佐伯にはこたえていたようで、彼はめんどくさいオーラを全身にまとっていた。</p><p>「佐伯くん、今年最後なんだから頑張ろうよ！ミスしなかったら帰れるんだからね」</p><p>と励ました。</p><p>佐伯もよし分かった。とすぐに機嫌を戻した。</p><p>素直だ、素直すぎる。私は貴方のそんなところが好き。</p><p>練習中、時々佐伯くんと目が合った。</p><p>そのたび、笑いかけてくれた。</p><p>そして練習を終えた。</p><p>&nbsp;</p><p>「よいお年を～」なんて言って別れて、自分の家に着いたのは深夜の1時だった。</p><p>実は、みんなと別れた後、佐伯くんが私を追いかけてきて、ご飯に誘ってくれた。</p><p>大学近くにある定食屋だ。</p><p>「私、から揚げ定食にする」</p><p>「じゃあ俺も」</p><p>と、注文を済ませ、席に着いた。</p><p>私たち以外に客はおらず、厨房の調理音だけが店内に響いた。</p><p>「ねえ、佐伯くんは将来どうするの？」</p><p>「うーん、特に何も決めていないんだ。将来何をしたいのかもよくわかんない。西条さんは？」</p><p>「私もよくわかんない。親からは公務員になればいいんじゃないって言われているけど、いまいちパっと来ないの」</p><p>「へー西条さんもなんだ。」</p><p>「もってどういう意味？」</p><p>「西条さん、全然迷いなんてないように見えるから」</p><p>「え、そんなことないよー。迷ってばっかり、余裕ないの」</p><p>将来佐伯くんにもお嫁さんができるんだろうな。佐伯くんには幸せになってほしい。だって好きなんだから。でもその幸せの隣にいることができたら、私は世界で一番幸せな人になるだろうな。なんて思いをめぐらした。</p><p>その時、注文したから揚げ定食が運ばれてきた。</p><p>揚げたてのから揚げはほかほかだった。</p><p>佐伯くんと二人きりのご飯はとても幸せだった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12292853319.html</link>
<pubDate>Sat, 15 Jul 2017 16:07:28 +0900</pubDate>
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<title>M3　ORION</title>
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<![CDATA[ <p>その夜、僕と西条は一緒の布団で寝た。</p><p>僕たちの町では珍しく氷点下の夜だった。</p><p>&nbsp;</p><p>布団に入る前、僕は窓越しに夜空を見た。</p><p>冬の田舎の夜空はとても美しい。しかし、今日はやけに外が暗い気がした。</p><p>「今日は新月だったかな」</p><p>空をなめるように見渡すと、明るい星が３つ並んでいた。オリオン座だ。</p><p>僕が独り言を言っていると西条が近づいてきて空に見えるオリオン座の神話を教えてくれた。</p><p>ポセイドンの息子オリオンは強い力を持っていたが、その驕りから、大地の女神ガウスによって殺されるという悲しい話だ。</p><p>「へえ、西条は物知りさんだね」</p><p>僕は感心して言った。僕は今の今まで神話なんて興味を持ったことがない。</p><p>「そんなことないよ。ただ知ってただけ。電気消すから、もう寝ようよ」</p><p>「うん、そうだね」</p><p>僕たちは一緒に寝た。</p><p>西条は酔いが入っていたからかすぐに眠りについた。</p><p>その時間は今までに感じたことがない幸福感に満ちていた。</p><p>眠るとき、誰かが隣でいてくれる安心感。こんな感覚、大学生になって荒んだ僕はとうに忘れていた。</p><p>彼女は暖かかった。</p><p>この時からだろうか、僕は彼女とすっと一緒にいたいを思った。</p><p>今ある、人間関係、学歴、アルバイト、何もかも彼女のためなら捨てることができると感じた。</p><p>いつかそんな日が来るのだろうか。僕は目線を窓の外にやった。</p><p>アパートの目の前にある交差点の信号が赤と黄色の点滅を繰り前していた。</p><p>ススメ、トマレ。まるで人生のようだと僕は思った。</p><p>僕は安心しきって眠っている西条の顔を見ながら眠った。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12292502172.html</link>
<pubDate>Fri, 14 Jul 2017 11:39:20 +0900</pubDate>
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<title>M2　ゆく年</title>
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<![CDATA[ <p>あの時、僕は知っていた。</p><p>西条と佐伯は付き合っている。</p><p>直接彼女から聞いたわけではないのだが、直感がそう叫んでいた。</p><p>時は冬休みまで遡る。</p><p>&nbsp;</p><p>大学の冬休みはそう長くない。クリスマスが終わって、年末年始があるくらいだ。</p><p>普通の大学生は年末年始は帰省などで思い思いの生活を送るだろう。</p><p>アルバイトでお金を稼いだり、家族と一緒に過ごしたり人それぞれだ。</p><p>そんな中、我々軽音部は迷惑なことに年末合宿と称して山奥のロッジを貸し切って3泊4日の練習合宿を組むことになったのだ。</p><p>大学の軽音楽部の合宿と聞いていいイメージを持つ人は少ないだろう。</p><p>申し訳程度の練習をして後は酒を飲んだりみんなで遊んだりと、あとは皆さんの想像通りだ。</p><p>そんな合宿が明後日に迫っていた。</p><p>僕は他のみんなとは違って自宅生だから、合宿当日の朝早い集合時間、今年は部室に6時半だっけ、に間に合わそうと思うと4時半には起きて準備をしないと間に合わない。だから僕はこういう時には大学に一番近い西条さんの家に泊めてもらうことがある。</p><p>別に集合時間が早いときだけというわけではなかった。</p><p>彼女の家に、個人的に遊びに行くときもあったし、バンドメンバーで飲みを開催するときもあった。僕は個人的に遊びに行くといっても、決して友達以上の関係になることはなかった。適当におしゃべりして、眠くなったら寝て、朝起きたら帰るといった感じだ。</p><p>&nbsp;</p><p>一回このようなことがあった。</p><p>&nbsp;</p><p>西条の家に一人で遊びに行った時だ。</p><p>先日行われた西条家飲みで飲みきれなかったお酒を消費したいと彼女が言ってきて、二人でお酒の飲んだ。</p><p>雪は降らなかったが寒さの応える日だった。</p><p>食べ物があまりなかったので宅配ピザを注文することになった。</p><p>実は、僕は宅配ピザのアルバイトをしており、社員割引の制度でピザが半額で食べられるのだ。しかもデリバリーサービス付きで。</p><p>ちびちびと発泡酒に口を付けていると、インターホンが鳴った。ピザが届いたのだろう。</p><p>西条が立ち上がろうとしたとき、社割なのに別の人が出たら驚かれるだろうなと思い</p><p>「あ、俺がでるよ」</p><p>と、財布をもって玄関に出た。</p><p>「こんばんは！ピザお届けに来てやったぞ物部」</p><p>と生意気な口を利くのは、バイト仲間で知り合いの人だったからだ。</p><p>「物部～。誰なんだあの娘は～。ここはワイが半額分出しといてやるから楽しめよ！」</p><p>といって、配達員がピザ代を奢ってくれた。</p><p>あらら、何か勘違いされてるなきっと、と思いながらも厚意は受け取っておくことにした。</p><p>ピザを受け取るときの彼の手の冷たさが、気温の低さを物語っていた。</p><p>「じゃあな！」</p><p>といって彼は去っていった。</p><p>「物部くん、ラッキーだったね」</p><p>と彼女はピザを早く食べたそうに嬉しそうに言った。</p><p>&nbsp;</p><p>僕と彼女はお酒に強い方だったので発泡酒4缶、1Ｌボトルに半分くらい残された梅酒と焼酎をさっさと消費した。</p><p>「物部くーん、もう飲まないのー」</p><p>と彼女はうつろな眼差しで見つめて言ってきた。なんだこの可愛い生命体は。</p><p>彼女は酒は量こそ飲めるが、酔うと近くの相手に対してガンガン甘えてしまうタイプだ。</p><p>すると、突然、西条が隣に座って</p><p>「ほら～これも食べなよー」</p><p>と、ピザを半ば強引に僕の口に入れてきた。</p><p>ピザは到着して時間がたっていたのでもう冷めきっていた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12291515057.html</link>
<pubDate>Mon, 10 Jul 2017 23:52:16 +0900</pubDate>
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<title>W1　彼女の場合</title>
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<![CDATA[ <p>唐突だが、私には好きな人がいる。こんな経験は生まれて初めてかもしれなかった。</p><p>今まで異性という異性に興味がわかず、高校時代は、そのほとんどの時間をアルバイトをして過ごした。</p><p>彼とは、同じ部活で学年も一緒。</p><p>顔は、まあまあ男前で理想的な男性！……と言いたいところなのだが悪い意味でマイペースな彼は決して仕事を難なくこなすタイプではなく</p><p>「彼は私が面倒を見てあげなきゃ」</p><p>と母性的な何かをくすぐられる。</p><p>彼はとにかく可愛かった。時々構ってあげないと、まるで子どもみたいに拗ねたみたいになって距離を置かれてしまう。</p><p>「もう、佐伯くんってば！」</p><p>可愛くて可愛くてまるで私を癒してくれるためだけに存在するペットみたいだ。</p><p>部活には他に男子はいたが、どうも私の性格と合わないらしく、私は自然に彼の近くにいるようになった。</p><p>話していて楽しい、安心する、幸せだ。彼だけにこんな感情を抱くようになったのはいつからだっけ。</p><p>もう佐伯君さえいればほかの男子のことなんて・・・・・。</p><p>&nbsp;</p><p>私は彼が大好きだ。</p><p>&nbsp;</p><p>季節は真冬、この街には珍しく雪が積もった。外を歩くと、ギュッギュッと気持ちのいい音が鳴る。大学での講義を終えた彼女は部室に足を進めた。</p><p>「お疲れさまです。」</p><p>ドアを開けながら、彼女は挨拶をした。</p><p>「あ！西条おつかれ！」</p><p>先輩があいさつに応えてくれた。</p><p>部室にはもう何人か来ていた。</p><p>コンクリート床の質素な部室には、雪のせいだろうか、いくつもの足跡ができていた。そして部員の靴は雪の水分を吸ってぐっしょりと湿っており、部室の中央に置かれた電気ストーブの前には、いくつかの靴下が並べられ乾燥するのを待っていた。</p><p>私の部活は軽音楽部だ。</p><p>普段の練習は各バンドの裁量に任されており、私のバンドは月水金に練習を行っている。月に一度、土日を利用して軽音楽部全バンドが集まって曲の練習や発表をすることになっている。その日は明日に迫っていた。</p><p>コピー機がせわしなく動いている。スコアの印刷でもしているのだろうか。</p><p>私は、部室に立てかけられた自分のベースを持ち上げようとしたとき、ガラガラとドアが開いた。</p><p>「お疲れさんでーす」</p><p>と、やる気のない風に入ってきたのは物部という男子部員だ。私とは同級生で同じバンド、ドラムを担当している。比較的接しやすい温厚な男の子だ。</p><p>今日楽器を使って練習するのは私たちのバンドだけだ。練習のないバンドのメンバーもちらほらいて、やることがないのか雑談に花が咲いている。</p><p>「佐伯のやつ、遅いな」</p><p>と物部がつぶやいた。</p><p>実は佐伯君も同じバンドでギターを担当している。腕のほうは可もなく不可もなくといったところだ。</p><p>「まあ、いつものことだろ、佐伯が遅れるのは。」</p><p>と言うのは金田だ。金田は高校時代はコーラス部でとてもきれいな声の持ち主。いうまでもなくボーカルだ。</p><p>でも私は金田のことがあんまり好きでない。話が理論的でまるで論文の音読を聞いているようだからだ。価値観の違いもその理由の一つかもしれない。彼はプライドが高く、常に自分が正しいと思っているタイプの人間だ。</p><p>逆に私は、意見が食い違っても、話が長くなるのは面倒だしという理由で特に反論もせず呑み込んでしまう。</p><p>人生損するタイプとは私のことだろう。</p><p>もうお分かりだろうが、佐伯はギターだ。</p><p>「ギターがいないと始まんないじゃん。」</p><p>私が不満を漏らした時だ</p><p>「すみません、遅れましたー」</p><p>「佐伯くん！」</p><p>私は自然と顔が綻んだ。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12291462351.html</link>
<pubDate>Mon, 10 Jul 2017 21:19:28 +0900</pubDate>
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<title>M1　失恋</title>
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<![CDATA[ <p>季節というものは、雨を境にして変わるものだ。昨日の雨が嘘のように今朝は晴れ渡っていた。</p><p>えぇっと……。</p><p>半分寝ぼけた頭で布団から立ち上がった。自分の部屋のカーテンの隙間から柔らかな朝日が差し込んでいた。季節は春だ。春眠暁を覚えずとはよく言ったもので、昨晩はよく眠ることができなかった。体はだるい。朝日を浴びようと僕はカーテンを開いた。僕とは対照的で元気いっぱいな太陽と対峙し思わず目を閉じた。目を閉じると、脳裏にある女の子がふと浮かんだ。女の子は立ち上がり口をパクパクしている。そして僕は思い出した。</p><p>&nbsp;</p><p>昨日、僕は失恋したんだ。</p><p>&nbsp;</p><p>その日の天気は雨だった。僕は大学の部活内のある女の子に恋していた。名前は西条明里。ショートカットの黒髪が良く似合っているごく普通の同級生だ。本人は若白髪を気にしていたらしいが当時の僕にはそんなこと関係なかった。そんなことを気にしている彼女がどうしようもなく愛おしかった。どうして彼女を好きになったのだろうか、理由は分からないが多分中学高校と付き合っていた彼女にどことなく似ていたからなのだろう。なんとも中途半端な理由である。</p><p>そんな雨の日、僕は彼女を呼び出した。昼過ぎから活動があったから一緒にご飯でもどうかと適当な理由を並べて二人きりになるチャンスを作った。そして大学近くの定食屋に足を運んだ。よくよく考えれば定食屋で告白するだなんてばかげていた。ムードの欠片もないじゃないか。</p><p>「………るね。」</p><p>彼女の声が聞こえた気がした。その声は雨が傘に当たる音でかき消されてしまっていた。慌てて聞き返す。</p><p>「ん？なんて言った？」</p><p>「閉まってるねって言ったの。どうしてかな、お昼時でお客さん多いはずなのに。」</p><p>店のドアには準備中の札がかけられていた。この定食屋は老夫婦が切り盛りしており、予告なく不定期に店を閉めることが多かった。旅行にでも出かけているのだろうか。</p><p>「困ったなあ、どこで昼ごはん食べようか。」</p><p>僕は力なくつぶやいた。隙があればこのお店で告白しようと考えていたのだから計画頓挫である。</p><p>「コンビニで何か買って部室で食べようよ。」</p><p>僕は彼女の提案にのって、コンビニで紅茶とのり弁当を買った。彼女はパンだけ買って足早に店を出た。部室までの道の会話は途切れ途切れで何を話したかはよく覚えていない。僕は緊張からか俯いて歩き、彼女は空を見上げて「私、雨嫌い」なんかと独り言を言っていた。</p><p>部室に着いた。活動開始までかなり時間があるからまだだれも来ていなかった。ラッキーっと思った。誰かが来てしまっては告白なんかできるわけない。僕は結論だけを急いでしまった。早く言わないと、この気持ちだけが先走ってしまったのだ。</p><p>「ねー、今日の部活って……」</p><p>と、彼女が言いかけた時、僕は熱いヤカンに触れてしまったときのようは反射で</p><p>「好きです、西条のこと。ずっとずっと好きだった。」</p><p>と言った。</p><p>一瞬の沈黙があった。</p><p>そして急に立ち上がって言うのだった。</p><p>「ごめん……。私、あなたのことそういう感じに見られないの。今日の部活パソコンいるんだったよね、忘れちゃったから取りに帰らなきゃ。」</p><p>といい足早に帰ってしまった。</p><p>でも、不思議だった。何故か、悲しいという感情は湧いてこなかった。</p><p>だって、100％振られるって分かっていたのだから。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/nobody-321/entry-12291211587.html</link>
<pubDate>Sun, 09 Jul 2017 23:59:26 +0900</pubDate>
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