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<title>アンシエッタの創作ページ</title>
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<description>イエズス会神父アンシエッタが目にしたこと、感じたことを小説の形で書き綴っていきます。</description>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第１０章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　<font size="3">第１０章<strong></strong></font><br><br>「あっ、眩しい．．．」<br>　正午の日差しが、青年に容赦なく降り注いだ。<br>「でも、暖かいなあ．．．。この間、体を駆け巡っていた悪寒が嘘のようだ．．．」<br>　不治の病を患っているにも拘らず、軽い足取りで石畳の大通りを歩いて行く。通りで行き交う人々は心なしか、「ホッ」としたような安堵感を漂わせている。通りは緩い上り坂になっているのに、咳き込むこともなく、中途で足を止める必要もなかった。<br>「何とも清々しい気分だ．．．」<br>　自分の前を通り過ぎて行く人々は、軽くこちらに会釈する。一体、どうしたことか？　あっ、そうか！　この服のせいだな．．．。でも、僕自身、それらの会釈に対して、微笑みで応じているのには驚いた。何ということだ！　あれほど世の中に対して、社会に対して、人々に対して仇のごとき憎悪の眼差しを向けて、それら全てを呪詛していたというのに．．．。<br>「何とも、驚きだ！．．．」つい、口から言葉が漏れた。<br>　やがて眼前に、視界を圧するがごとくモニュメンタルな存在、大聖堂の伽藍が目に飛び込んで来た。こう威圧するかのように、人間を睥睨するがごとく聳え立つ塔、そしてまた塔．．．。自然と頭が下がる思いで、その巨大建造物に静々と近づいて行った。<br>　大聖堂の前の広場では、大勢の種々雑多な生き物で溢れ返っていた。ものを売る者たち、買い物かごを担ぐお手伝いたち、赤子を抱える乳母、鎖で繋がれた黒人奴隷たち、病気なのか毛が全て抜け落ちたガリガリに痩せた野良犬がここ、あそこに、ツバ付き帽子を持ち上げ挨拶を交わす紳士たち、裾を少し引き上げ腰を屈めて、それに応える淑女たち、彼らの馬車への乗り降りを助ける御者たち、疲弊した馬たち．．．。まさにそこは、富める者たちから貧しき者たちが混ざり合い、カオス的様相を呈していた。<br>「あの女性はどこだ．．．。こんなに沢山の人がいては、見つけるのは難しい．．．」<br>　青年は数日前、乞食女を見かけた、あの場所、大聖堂のファサードの方へと歩を進めて行った。そこにも、色々な身なりの人々が群れ、立ち話をしていた。<br>「旦那．．．、どうぞ、お恵みを．．．。この子の為にも．．．」<br>　あっ、あの声は．．．！　青年はその声がする方へと視線をキョロキョロと走らせた。その声の主は一体、どこから．．．。あっ！　うら若き、ボロを身に纏った少女が、赤子を胸にかき抱き、自分の目の前に立っているではないか。<br>「神父様、どうか．．．、どうか、お願い致します．．．。私共はもう3日も何も食べていないのです．．．。ですから、この我が娘に与えるお乳も出ません．．．。どうか．．．、どうか．．．」<br>　その幼い乞食女はそう言うと、ヘタヘタと地面に座り込んでしまった。赤子はそんな母親の気苦労も知らず、すやすやと寝息をたてて眠っている。まさに天使だ！　青年は優しく、慈しむように、女の両肩に手を置くと、口を開いた。<br>「さあ、もう心配はいらない。ここにお弁当があるから、お腹いっぱい食べなさい。いやいや、私はもう済ませてあるから、遠慮はいらない。でも、私のことを気遣ってくれて、ありがとう。さあ、あっちのベンチに行って座ろう。お話をしながら食べた方が、もっと美味しくなるから．．．」<br>　青年はその女の片手を握り、立ち上がるのを助けた。何とも氷のように冷たく、痩せ細った手だろう．．．。そして、日溜まりの空いているベンチへと手を引き、誘って行った。
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12149446976.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Apr 2016 11:56:02 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第９章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<font size="3">第９章<strong></strong></font><br><br>　その同じ日、朝食を、いやまだ食事といえるものは口にできなかったが、何とか緑色のドロドロの液体を無理矢理、喉に流し込んで、ホッと一息ついた時、僕は一つ心に気にかかっているものがある、ということを発見した。<br>　ああ、一つだけやっておかなければ、そう一つだけ行っておかなければならない場所がある。僕は昼食の準備をしているロウレンソ修道士を呼んだ。<br>「はい！　ちょっと待ってくださいね．．．」<br>　エプロン姿の修道士が、台所と部屋を分かつ扉から、赤らむ顔を覗かせた。<br>「すみませんが、少し体を動かそうと思いまして．．．。少しばかり外の空気が吸いたいなあと．．．」<br>「ああ、そうですか。それは良い考えです。そのようにお考えでしたら、昼食はお弁当になさったらいかがでしょうか？　早速、そのように準備しますので、今しばらくお待ちください」<br>「ああ．．．、申し訳ありませんが、どうぞお願いします」<br>「ところで、あなたのお召し物は、そのテーブルの上に準備してありますので、どうぞ。もし、着られないようでしたら、私に一声おかけください」<br>　修道士は軽い足取りで、そそくさと台所へと消えて行った。僕はベッドからヨロヨロと立ち上がると、自分の服があるであろうテーブルへと近づいて行った。そして、それを目にした途端、「あっ！」と、驚嘆の声を上げた。何と、これは．．．。その時、扉のところで声がした。<br>「お気に入り召されたでしょうか？」<br>　声の方を見やると、青年修道士が大きな弁当の包みを抱えて、こちらに満面の笑みを浮かべて立っているではないか。<br>「これは、あなたの．．．。大切な．．．、大切な．．．。こんなこと．．．」<br>「いやいや、それはあなたの為に、私自身、今まで取っておいたものなのです。ですから、全てあなたのものです。神からの贈り物だと考えられては、いかがでしょうか」<br>　相変わらず継ぎ接ぎだらけの僧服を身に纏っているロウレンソ修道士は、はにかみ顔で、頭をゴシゴシと掻きながら、一気にそう言った。<br>「ありがとうございます．．．。どれだけお礼を言ったら良いものやら．．．。ありがとう．．．、ありがとうございます．．．」<br>「さっ、その新しい衣装に袖を通すのをお手伝いします。少しばかり身に付けるのにコツが要りますから。私も最初は苦労しましたよ。全く．．．。師にいつも、「いつまで経っても、お前は半人前だ」と、母親の小言のように繰り返し、叱られましたから」<br>「どうぞ、お願い致します．．．」<br>　僕と修道士。つまり二人の青年は、涙で目を濡らしながら、笑顔で抱き合った。
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12147290358.html</link>
<pubDate>Wed, 06 Apr 2016 11:44:22 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第８章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<font size="3">第８章<strong></strong></font><br><br>　「アーメン」、その言葉を口にした途端、なぜだか分からないが、再び深い眠り落ちて行った。そう、何かこう温かい母の体に抱かれるような感覚の中へと引きづり込まれて行ったのである。6日6晩眠り続け、ロウレンソ修道士がいくら呼びかけても、全くピクリとも動かなかったということである。<br>　その日、鳥の甲高いさえずりで目が覚めた。鎧戸の隙間から、朝の光が差し込み、石床に窓の模様を映し出している。台所の方から、何やらゴソゴソとくぐもった音と共に、人の気配がする。野菜をコトコトと煮込む時に発する、甘い香りが鼻腔をくすぐった。「グーッ」と、お腹が鳴った。<br>「ああ、お腹が．．．空い．．．た．．．」<br>　しかし、僕はどれだけ眠り続けたのだろう。一晩中か、あるいは二日か？　体中が強張って痛い．．．。特に背中は、少しでも力を入れようものなら、ギシギシと軋み、ジーンと痺れるような痺れを感じる。まるで、自分の体とは思えない．．．。<br>　少しずつだが、朝日の照射する角度が変わり、部屋は明るくなって行った。漆喰の壁に、あの奇妙な模様を描く染みが朝日に照らされ、その全貌を徐々に明らかになりつつあった。あれは、もしかしたら“聖杯”の形に似てはいまいか．．．。まさにそう考えた瞬間だった。<br>「ああ、ジョゼさん、おはようございます！」<br>「ああー、．．．あなたは．．．」<br>　まるで言葉を知らない赤子のように、言葉を何とか継ぎたいと思うのだが、何とも舌が回らなかった。<br>「もうダメかと思いましたよ．．．。神の御胸に抱かれて、行ってしまうのではないかと．．．」<br>「では．．．僕は．．．。ずっと．．．、眠って．．．いたのです．．．か．．．？」<br>　言葉がスムーズに出ず、何とももどかしい。<br>「ええ、ええー！　もうかれこれ6日間、昏々とお眠りでしたよ。本当に私自身、とても心配で、心配でなりませんでした．．．」<br>　ロウレンソ修道士の瞳は涙で潤んでいた。口許には何とか笑みを浮かべようと努力するのだが、それも叶わず、ヒクヒクと痙攣している。<br>「申し訳．．．あり．．．ませんでした．．．。どうも、．．．ありがとう．．．ございます．．．」<br>「いえいえ、私は何もやっていませんよ。ただ、見守っていただけで．．．。あなたが今のように回復なさったのは、ひとえに神の御意思です。それを私たちそれぞれが確認し合う意味でも、この言葉を私と一緒に唱えましょう．．．。アーメン」<br>「アーメン．．．。どうも、ありがとう．．．ございます．．．」<br>　何ということだろう．．．。かつての僕が、最も忌み嫌い、バカにしていた言葉、そう「何て他力本願な輩で、負け犬が吐く言葉だ！」と思い込み、憎悪していた言葉が、自然に、それも自らの意志とは関係なく、口からこぼれ落ちるとは．．．。<br>「さあ、さあ、お腹がお空きでしょう．．．。いやいや、体を起こす必要はありません。私がここまでお運びしますから。いえいえ、大丈夫ですよ」<br>　修道士は枕を立てると、女性を労るかのように、僕の上半身をそれにもたせかけてくれた。<br>　台所へと吸い込まれて行くロウレンソ修道士の後ろ姿は、心なしか震えていた。一粒の滴が石床に落ち、とても、とても小さな染みができるのを、僕は見逃さなかった。その染みは乾くことなく、朝日を受けてキラキラと輝いている。僕はそれを見て、瞼からこぼれ落ちる涙を押し止めることがでできなかった。
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12145492613.html</link>
<pubDate>Fri, 01 Apr 2016 13:20:07 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第７章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第７章<font size="3"><strong></strong></font><br><br>　「もしもし．．．。もしもしっ！」<br>　ハッと我に返った。ここはどこだ．．．。徐々にだが、目の前が明るくなり、周りのものが形を成し始める。自分はベッドの上にいた。今まで寝たこともない堅いベッドだった。近くの暖炉には、真っ赤に火が熾り、時々、パチッ、パチッと乾いた音を立てて火花がはぜた。外は、未だ雨が降り続いている。そこは、頭板の上には木製の小さな十字架、粗末なテーブルと椅子が2脚、それに窓際には小さな樅の木の鉢植えが一つ切りという、きわめて質素な佇まいであった。暖かい．．．。でも、一体、ここはどこなのか．．。オレは草原に居て、木の幹に寄り掛かるように座った少年が一人．．．。<br>　見慣れない顔の男が口を開いた。<br>「ジョゼさん、大丈夫ですか．．．。酷くうなされていたようで．．．」<br>「なぜ、私の名を．．．？」<br>「いや、先ほど、少し薄目を開けられた時に、お名前を尋ねましたところ、“ジョゼ”だと、お答えになられましたから．．．」<br>「あなたは一体．．．」<br>「私をお忘れですか？　先ほど、お会いしましたが」<br>　全く、見覚えがない．．．。一体、奴は何者なのか．．．？　オレより若いということは確実だ。所々にまだ、幼さの痕跡が残っているのだから。その男から目を逸らし、疑問に対する答えが何かないか、部屋の中に視線を走らせた。あそこの椅子に掛けられている使い古された黒いローブは．．．。その男の口許には、穏やかな微笑みがたたえられている．．．。そうか！<br>「あなたは、あの時の．．．」<br>「まだ、あれから二時間程しか経っていませんよ。お具合はいかがですか？」<br>「ええ、大丈夫．．．。大丈夫そうです．．．」<br>「あなたに仰った通り、あなたは神の御祝福を受けられたようですね。もう少し遅かったら、「手遅れになっていた」と、医者が申しておりましたから」<br>「では、あなたが僕を．．．」<br>「いや、私ではなく、赤子を抱いた一人のご婦人が、気を失っていらっしゃったあなたを助け上げ、馬車を呼んで、ここまで運んで来てくださったのです」<br>「ええ！　まさか．．．」<br>「いや、本当です。ここまで付き添って来られましたが、あなたをベッドに横たわらせると、名前すら名乗らず、行っておしまいになられました」<br>「どこへ．．．？」<br>「いや、存知上げません。何も仰られませんでしたから。ただ、あなたと近い関係にある者だ、と仰られていましたが．．．」<br>　あの乞食女だ．．．。オレを助けて、ここまで運んで来てくれたのが、あの人々から蔑まれて生きている、あの女だというのか。信じられない．．．。あのような白痴同然の女に、果たして今回のような機転が発揮できようとは．．．。まさか．．．。<br>　枕元のテーブルの上の花瓶には、白い百合の花が一輪生けられている。そして、その花弁から発する甘く強い芳香が部屋中を満たしていた。<br>　オレは意識が無くなる寸前に確か、「お母さん．．．」と、口にしたことをおぼろげながら覚えている。では、オレはあの見るからに薄汚れていて、不潔の、みすぼらしい女を、「お母さん」と、呼んだということなのか．．．。<br>「ところで、あなたのお名前は？」<br>「イエズス会修道士、ロウレンソと申します」<br>「では、ロウレンソ神父様で．．．」<br>「いいえ、まだ見習い修道士の身に過ぎません。あなたは神の深き慈愛を受けられ、お命が救われたのですよ。祝福されし者よ、あなたの為にお祈りさせてください．．．。．．．アーメン」<br>「．．．アーメン」<br>　青年は知らず知らずの内に、「アーメン」、“神の御意思のまにまにに”という意味の言葉を復唱していた。
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12142888387.html</link>
<pubDate>Fri, 25 Mar 2016 08:59:00 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第６章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<strong><font size="3">第６章</font></strong><br><br>　見渡す限り、草原が広がっていた。緑色の、それも目の覚めるような緑色の草々は、そよ風を受けて、軽やかにお辞儀をしている。一陣の風が吹き抜ける度にそれらは、まるで連鎖的にウエーブが起こるかのようにしなやか、かつリズミカルにダンスを繰り返す。遠くに一本の大樹が見える。その樹の根元に腰を下ろし、幹に背をあずけ、両足を前に投げ出し、年季の入った革張りの本のページを繰っているのは誰？　細面の青白い顔で、口許には微かな笑みがはかれている。爪先で足許に咲く白いマーガレットの花を弄んでいる。どこか見覚えのある奴だ。でも、それが誰なのか思い出せない。一体、誰なのか．．．。<br>　その少年はこちらの気配を察してか、ふっと本のページから目を上げた。そして、こちらに向かって手を振った。しかし、実際に手を振ったかどうか分からない。そうしたように思えたのだ。やがて少年は大儀そうに立ち上がり、お尻の土を払い、本を脇に抱えると、こちらに向かってゆっくりとした足取りで近づいて来た。確かに見覚えがある。しかし．．．。徐々にオレと少年を分かつ距離が縮まって来た。あの眼差し．．．、あの口許の微笑み．．．。どこかで．．．、きっとどこかで．．．。次第に少年の顔の輪郭がはっきりと像を結んで来た。まさか、あれは．．．。少年との距離が半歩にも満たなくなった、その時のことである。オレは無意識の内に、「ジョゼ」と、口走っていた。そう、その少年こそ、自分自身であったのである。少年は自分の名前を耳にしても、まったく動ぜず、無反応だった。目の端でさえ、オレを見なかった。前方を睨んだまま、オレの真横をすっと通り過ぎて行った。オレは振り返りざま、叫んだ。<br>「ジョゼーーー！」<br>
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12140517696.html</link>
<pubDate>Fri, 18 Mar 2016 15:59:44 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第５章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<font size="3">第５章<strong></strong></font><br><br>　若い修道士の説法が、微かだが部分的に耳に飛び込んで来た。<br>「何が“祝福”だ！　何が“愛”だ！　悔い改めればだと．．．。一体、何をどのように悔い改めれば良いのだというのだ．．．。全くもって、バカバカしい！」<br>　顔が火照り、胸の奥底から沸々と怒りが込み上げて来た。大聖堂の前で赤子を抱いて物乞いをする一人の乞食女がいた。<br>「旦那様、どうか．．．。どうか、お恵みを」と、手を合わせて、消え入るように震える声で、小銭をせがんで来た。<br>　青年はその乞食女をジロリと睨むと、前をまっすぐ見て、一群の雑踏の中へと、大股で歩き去って行った。何という哀れっぽい目をしているのだろう。それにあの憐憫の情を誘う顔つき、態度はどうだ。あんなに若くして、赤子をこさえて、物乞いにまで身をやつして、よっぽど酷い男に捕まったに違いない。でも、あの赤子はこの先、どうなってしまうのだろうか。可哀想に．．．。いや、可哀想なのは、オレ自身の方だ。そもそも、あの乞食女とオレは生まれも、育った環境も違う。オレの方があんな輩たちよりも、ずっと恵まれていなければならないのだ。オレのような種族は、“社会に有益”であり、奴らみたいに“不利益”をもたらす連中とは、そもそも根本からして違う。“神”という存在やらは、全く、どうしようもないほど不公平だ。あの乞食女の赤く火照った頬と、健康を絵に描いたようなバラ色の顔色はどうだ。その腕の中で、スヤスヤと穏やかな寝息を立てて眠っている赤子は、これから先、自分を待ち受ける未来なぞ知る由もない。対してこのオレは、あの老医師いわく、後、数ヶ月、もしかしたら数週間の命だと、“最後の審判”が下された。一体、このオレが何をやったと言うのだ！　今のような不当な罰を受けるようなことを、オレはやって来たというのか？　いや、オレはこの社会、世界の真理を正すために頑張って来て、その一つの成果として、つい先日、卒業証書、つまり真理探究者として免許皆伝をもらったばかりではないか。オレの道が間違っていない証拠に、裕福な美しい娘との婚礼もトントン拍子に進んで来たではないか。それに対して、あの赤子を抱えた乞食女は“学”もないだろう。親子共々、これから先、碌な人生を送らず、野垂れ死にするのは日の目を見るより明らかだ。あの乞食の女もその子も、そしてこのオレもとどのつまり、“死”という同じ運命にある点、変わりはないが、オレは奴らとは違うのだ。これから、今、この瞬間から、人生を満喫する権利があるのだ。金持ちの美しい女と結婚して、幸せな家庭をつくり、社会からは「あんな理想的な家族はない」と賞賛されるだけの才能と権利が、オレにはある。まあ、あの乞食女は仕方がない。恐らく、身から出た錆で、あのように零落れてしまったのだろう。<br>「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ．．．。うーん、ゴホッ、ゲフッ」<br>　咳の発作を止めようと懸命に口をハンカチで押さえたが、血糊で染まっただけで、全くもって押し止めようがなかった。そして力なく地面に崩れ落ちた。往来を行き交う人々は奇異な目つきで、遠巻きに歩き去って行く。<br>　その時だった。こちらに駈け寄って来る足音が、おぼろげながら耳朶を打ったのは。一人だ．．．。軽やかな足音だ．．．、女か．．．。その足音の主の姿を一瞥した瞬間、「ああーっ、お母さん．．．」と一言呟き、事切れた。<br>
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12139814158.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Mar 2016 16:13:20 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第４章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<strong><font size="3">第４章</font></strong><br><br>　二人は、雨脚が強くなる往来に濡れそぼったまま立ち尽くしていた。二人の後ろを行き来する人々の足並みは速く、皆、身を縮こまらせている。青年は斜に構えて修道士をキッと睨みつけていた。青年と修道士。錯覚に過ぎないかもしれないが、若年の修道士の方が大きく見えた。<br>「あんたは、そしてあんたの神は、オレの苦悩を知っているというのか？」<br>「私には、それがはっきりとは分かりません。私自身、だた神にお仕えする一人の人間に過ぎませんから。しかし、神は全て、“善”も“悪”もお見通しで、そして、さらに言えば、すでにあなた様にお働きなさっていらっしゃいます」<br>　青年はかっと頭に血が上り、その修道士を敵のように睨みつけた。<br>「一体、あんたは何の話をしているんだ！　オレのことをからかっているのか？　オレは不治の病で、今しがた医者から“死の宣告”を突きつけられたのだ！　じゃあ何かい、あんたの神が働いているということは、オレの“死”を早めさせる、そう“死神”のような存在と言うのかい．．．」<br>「あるいはそうかもしれません。しかし、それが神の御意思だとしたら、その通りなのかもしれません。私たち人間は一つの物事、あるいは人であっても、限定的な一面しか見ず、全てを判断する癖があります。人が物事を“悪”と決めつければ、“悪”となりましょう。その逆も全く同じです」<br>「それは屁理屈に過ぎん。オレたちは人間であり、あんたのいう神じゃあないのだから、当然じゃあないか！」<br>「その通りです。ですから、あなた様のご苦悩、ご病気等は神にお任せすれば良いと思います。私は何もそれらの解決を諦めよとは、言っておりません」<br>「本当にあんたはベラベラと喧しい男だ」<br>「仰る通りです。もしあなた様が、その点をお気に召さなかったとしたら、この場でお詫びいたします。すみません、どうぞお赦しください」<br>「全く、あんたは救いようのない人間だ．．．。どうぞ、ご機嫌よう！　せいぜい、あんたの神の為に、頑張ってくれたまえ」<br>「あなた様に、神の御祝福を！」<br>　何とも弁が立つ男だな。本当に口から生まれて来たとは、ああいう奴のことを言うんだ。屁理屈に関しては、オレより奴の方がずっと上だな。それで自分が賢くなったつもりになっているのだから、全く可哀想な奴だ。<br>「神は．．．愛．．．。．．．悔い改めれば．．．王国．．．」
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12139113098.html</link>
<pubDate>Mon, 14 Mar 2016 16:31:46 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第３章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<strong><font size="3">第３章</font></strong><br><br>「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッッ．．．」<br>　何か悪い風邪でも引いたのかな．．．。この前、グロリアと寒い中、通りで来月13日のオレと彼女との新たな門出について長話をしたのが、いけなかったのだろうか．．．。でも、あのグロリアの奴、金持ちのご令嬢だから、身持ちが硬いと思っていたのだが、案外、すんなりと受け入れてくれたよなぁ．．．。ああ、奴の体臭、汗ばみ身悶える四肢、可愛らしい押し殺したような喘ぎ声が．．．。<br>「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ、ゲツッ．．．」<br>　白い陶器の洗面台は、真紅の薔薇の花びらが飛び散るが如く、真っ赤に染まった。<br>「なんだ、これは．．．。一体．．．。どうしたことだ．．．。うっ、まさか．．．。そんなバカな．．．」<br>　青年はヨロヨロとクロゼットに向かい、黒いマントを羽織り、帽子を掴むと、外廊下へと続く重い扉を押した。<br><br>　雨が本降りとなって来た。大粒の冷たい雨粒が容赦なく、青年の頭を体を打ちつける。持てる力を気力を振り絞り、声のする方へと、ヨロヨロした足取りで近づいて行った。<br>　黒い僧衣を、それも着古した僧衣を身に纏った若い青年、それも自分よりも若く、まだあどけなさが残る顔つきの年少修道士だ。青年が纏う衣服は所々すり切れ、継ぎ接ぎが当てられているのだが、そこにみすぼらしさや不潔さが不思議と感じられなかった。<br>「ねえ．．．、あんた．．．」<br>　その若い修道士が、自分の方に向き直った。うっ、何て目をしているんだ。その目は少年のそれではなく、そう、子供の頃見た、そう、毎日曜日、両親に無理矢理連れて行かれた礼拝堂の神父のそれではないか！　同じような服装ゆえに、そのように思えるのかもしれない．．．。しかし．．．。<br>「あなた様に、神の御祝福があらんことを！」<br>　一瞬だが、若い修道士の瞳にさっと暗い陰が宿ったが、努めて確信するかのようにハキハキした口調で、そのフレーズを言い切った。何と楽観的、かつ明るい声音なのだろう。<br>「あんたが言う“神”って、誰のことだい？」<br>「“愛”です」<br>「じゃあ、その“愛”をもって、人々を幸せにするってことかい？」<br>「そうです。神の“愛”に例外はありません」<br>「じゃあ、オレの、今の、この苦しみをあんたの言う神は解決してくれるということになるが．．．」<br>「もちろんですとも。あなたの苦しみ、苦悩を全て取り去っていただけます」<br>　年少修道士が、そうきっぱりと言い切った。
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12137967977.html</link>
<pubDate>Fri, 11 Mar 2016 10:48:47 +0900</pubDate>
</item>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第２章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<strong><font size="3">第２章</font></strong><br><br>　「真理とは．．．。そう、まずは我々が真理と“思われる”ものを挙げてみよう。じゃあ君、そう、そこの黒マントの君．．．、どうだね？」<br>　老哲学教授に指名された青年はすっくと立ち上がると、朗々とした口調できっぱりと言い放った。<br>「“生”と“死”です」<br>　老教授は首を力強く縦に振り、「その通り」と、断じた。<br>「君の言う、その二つこそ、まさに我々の人生の中で根幹にある。そう核心とも言えるものだ。そして、その“生”と“死”から、我々全て、人間は考え、思い悩む命題が導き出され、ディシィプリンが形成されて行く訳だ」<br>　その黒マントの青年は、つい先日、十七歳になったばかりだった。そして、その“生”と“死”こそ青年にとっての最大の関心事であり、それゆえ、「何故、“生と死”が真理と看做されているのか」というテーマで、大学に卒業論文を提出したばかりだった。普段から難解な“謎かけ”をする、あの変人の老教授のことを心から尊敬していたと言ったら、嘘になる。しかし、今日はどうしたことだ？　何とあいつが言っていること、語ることが理解できるばかりか、グイグイと惹きつけられるではないか！　やはり、オレ自身が考えていた“生”と“死”に対する推察の正当性を、あの変人老教授が認めているとは思えまいか。<br>「．．．。ただし、．．．。奢り．．．。色メガネ．．．。曇るということだ。そう．．．。神．．．」<br>　何が“神”だ。やっぱり奴は狂っている。この講義は哲学であって、神学じゃあないのだぞ。バカらしい！　でも、奴が狂っていれば狂っているほど、オレの方もやり易くなる。後、一週間でこことも「おさらば」だ。フフフッ、そうしたらオレ様が、あの老いぼれの代わりに無知なガキどもに“真理”というものを教えて差し上げてやるさ。我が親愛なる老教授よ、遺物の塊よ、心安らかに墓の下で、死者を相手に教鞭をとっていただいて結構。フン、全くもってバカらしい！<br>
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12137316070.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Mar 2016 13:50:48 +0900</pubDate>
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<title>『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』第１章</title>
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<![CDATA[ 　　　　　　　　　　　<strong><font color="#0000FF"><font size="2"><font size="4">『小説ジョゼ・デ・アンシエッタ』</font></font></font></strong><br><br>　　　　　　　　　　<strong>［１５３４－１５５１；ポルトガル／コインブラ］<br><br>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第１章</strong><br><br>　その時、蒼白顔の一人の青年が、医療所の扉から姿を現した。髪は逆立ち、灰色の瞳は心ここにあらずと中空を彷徨い、それらは何も見てはいなかった。まさに、茫然自失の体たらくだった。そして、口から絞り出すように呻いた。<br>「何ということだ．．．。どうして．．．」<br>　ここは、今から遥か昔、ヨーロッパ、それもその西端、「地果て、地始まる」、つまりある意味、世界の西の最果ての国にある、大きな街であり、その地での出来事である。<br>　空は、その青年の気持ちの如くどんよりとかき曇り、今にも雨が落ちて来そうだった。ポッ。あっ、雨が落ちて来たようだ。<br>「何で．．．、このオレが．．．」<br>　青年の瞳は潤み、目の端に一粒の涙が一瞬、現われたかと思うと、コロンと滑り落ち、頬に一筋の線を引いた。それに呼応するかのように、空からポツン、そしてまたポツン、ポツンと雨雫が落ちて来た。<br>「オレが．．．。このオレが．．．。一体．．．。何を．．．。したというのだ．．．」<br>　初老の優しく同情心に満ちた眼差しの、その医師は穏やかに、そして口ごもりながら言った。<br>「胸の病だ．．．。それも、決して楽観できん．．．。残念じゃが．．．。君もその若さで大学を卒業したのだから．．．、分かるじゃろ。うーん、何というか．．．。まあ、分かってくれたまえ．．．。残念じゃが．．．」<br>　そう告げると、医師は青年の目をまっすぐ見つめ、両手を取ると力強く握りしめた。<br>「これで、今生のお別れじゃ．．．。元気で．．．」と、旅立つ者にそうするかのように言い、抱擁した。<br>「何ということだろう．．．。オレは旅立たなければならないのだろうか．．．。でも一体、どこへ．．．」<br>　ちょうどその時、「．．．は、幸いなり．．．」という言葉が耳に飛び込んで来た。ああ、また狂人どもが訳の分からないことを言いふらしてやがる。皆がはたはた迷惑しているってことが分からないとは、本当に愚かな奴らだ。<br>「．．．は、幸いなり、神が．．．」<br>　“神”だって！　もし奴らがいう“神”がいるっていうのなら、このオレを、このオレの病気を、治してくれ。それに、もし“神”がいるのなら、このオレが、“善良な”このオレが、この世の中から「おさらば」しなければならないような病に見舞われるはずがないじゃあないか。<br>「．．．。神は．．．愛．．．」<br>　ふざけんな！　“愛”だって？　もし“愛”だと言うなら、このオレを、そう、この忌々しい病から解放してくれ！　よし、あの気違い野郎に詰め寄って、お前が嘘つきで、お前自身が信じている“神”とやらが、紛い物だってことをはっきりと分からせてやる。<br>
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<link>https://ameblo.jp/padre-anchieta/entry-12136967452.html</link>
<pubDate>Tue, 08 Mar 2016 13:53:55 +0900</pubDate>
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