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<title>panarukuのブログ</title>
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<title>ツメ ーHWG 2ndステージ(3)ー</title>
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<![CDATA[ 6月6日 19:13<br><br>「ぎゃあああああ・・・・いやああああ・・・」<br>耳障りな女の叫び声が廊下にこだまする。こんな声を聞いていたら1日で気が狂いそうだと感じた。<br>「あなた達の秘密はもう分かった！観念してここを開けて！」<br>扉に椅子を投げては拾い、投げては拾いを繰り返していた。木で出来ている椅子は所々に傷が出来たが安物ではないようでまだまだやれそうだった。<br>本当は窓からシーツを繋げて下まで降りる方法をBMより伝授され身につけた物の為自身にぴったりだが、部屋にあるものだけで頑丈に閉ざされた窓は壊せなかった。そうなると残されたのは部屋のドア。鎖で巻かれている為簡単に脱出出来ないことは明白だった。しかし、簡単にドアが開く訳もないためこの部屋で見つけた『秘密』を振りかざせばほんの少しでも糸口くらいは見つかるとふんだ。<br>「もっと、もっとだよ！叫べ！泣き喚け！あはははは・・」<br>春海は自信が叫びながらバンバンと壁を叩いた。<br>HWGに勝つためには手段など選ばない。それが例え一つの夫婦を崩壊させることになっても構わないと思った。<br>「オラァ！オイッ！ジジイ、ババア共！さっさとここ開けろや！聞いてんのかっ！？」<br>「・・・十二分に聞こえているよ。でも君はここにいないといけない存在だ。私達夫婦が築き上げた名誉の為にも。」<br>「そんなみみっちい名誉なんか誰も望んじゃいないし、気にもとめてない！なぜならあんた達の娘は最初からいないんだよ！！」<br>ぎゃあぎゃあ喚いていた女の叫び声がピタリとやみ急に静かになった。そしてドアノブに巻きついていたであろう鎖を外す音が聞こえ鍵を開け、ギィという鈍い音を立てながらドアが開いた。春海は脱出したいという気持ちを抑えまずは来るべき人物を待った。<br>ドクンドクンと波打つ心臓の音を感じ、静かに呼吸をしていた所に突然電気を消され部屋の中は再び真っ暗になり春海は視界を奪われた。明るい所に目が慣れていた為、直ぐには対応できなかった。ペタペタというスリッパの音が聞こえ部屋に入ってきたというのは分かった。自分の前に立っているという気配も。そこでなにやらゴソゴソしたかと思うと電気を点けて。と言う声が聞こえ部屋は明るさを取り戻した。<br>春海は小さく「ヒッ！」と声を上げた。女は不気味に微笑んでいたが、左手にはアイスピックが突き刺さり巻かれていた白い包帯がじわじわと赤く染まっていった。<br>「最初からいない・・・・ですって？・・・バカおっしゃい」<br>持ち手を利き手でを握りしめたままアイスピック突き刺したままグリグリ回し始めた。<br>「やっと戻ってきた娘・・・みすみす逃す訳にはいかないのよ。<br>くぁら～っ！！」<br>雄叫びをあげながらアイスピックを抜き何度も何度も左手へ突き刺した。包帯は血を吸いきれなくなりポタポタと床へ流れた。春海は静止を求め叫ぶが聞く耳はない。<br>やがて呼吸を乱しながらを部屋を歩き、飾ってある白いクマのぬいぐるみを手にとった。<br>血だらけの手でそれを握り赤く染め、そしてまた雄叫びを上げながらアイスピックを突き刺した。縫い目は破れ綿が溢れ出た。そのぬいぐるみを力強く春海へと投げつけた。<br>「もう止めて！！」<br>「何を？<br>それはあなたが一番好きなぬいぐるみでしょ？久しぶりの再会をなぜ喜ばないの？」<br>「再会？バカ言わないで。もう知ってるって言ったでしょ！元々娘なんかいない。いたかもしれないけど、あの時期じゃ性別なんて分かんないでしょ？」<br>「君！それ以上は言うな！」<br>「現実から遠ざかっているんじゃ何も進まない！！<br>初期に流産したんだから子供は産まれてな・・・」<br>お腹に女の拳が入り痛みでその場に蹲った。やはり触れてはいけない事実だったようだ。<br>「ー知ってるのはあなただけね。じゃあ消えてもらうわ。私達と一緒に！！」<br>春海の頭上目指しアイスピックを力一杯に振り下ろしたが間一髪春海は転げ回り避けた。<br>「あっぶなぁ～い！<br>その頭じゃ何を言っても届かないだろうけどヤりたきゃどうぞ！」<br>「私がHWGにあなたの死という結末を捧げてあげる。だって今日があなたの命日で、あの子が戻ってきた素敵な日ですもの！！」<br>女はアイスピックと腕に付いた自身の血を舌を這わしすーっと舐めた。<br>「なら私は、生まれてもいない子があたかも存在したように妄想し、勝手に発狂しあの手この手で欺いている救いようのない夫婦に終止符を捧げる日にするわ！」<br>女は素早い動作でアイスピックを振り回し春海の間合いへグイグイ入り込んできた。春海はただ、イカれているだけの女だと思っていた為予想以上に早い女の動きにたじろぎ間合いを維持するのが精一杯だった。ふところに飛び込みたかったがアイスピックが邪魔をしていてチャンスすら見つからない。更に、アイスピックを気にするあまり部屋の隅や壁へ追い詰められないか後ろも気にしなくてはならないし、男が襲ってくる場合も考えると下手に動けなかった。3方向に意識を配り、尚且つ反撃の手段を考えるのは少しだけ、5秒でもいいから時間が欲しかった。<br><br>眼に映る空間が急に回った。<br><br>床に叩きつけられて初めて足を攻撃されたことを認識した。足払いでも受けたのだろう。春海は仰向けになり女は馬乗りになりアイスピックを春海の左目に向かい振り下ろした。何とか両手でそれをふさいだが全体重を使っているのでジリジリと確実に目に近づいてきていた。<br>「ただのイカれた女だと思った？余裕で勝てると思った？そんな訳ないわよ！！」<br>春海は右手に力をおもいっきりこめて顔を左に向け目に突くのを避けようとした。それでも止めない女に春海は一瞬だけ自分の方へ引き寄せた。女は一瞬だけ隙きができた。春海はその一瞬を使い的を自分から完全に逸らしアイスピックを床に突き刺す事に成功した。<br>が、アイスピックを諦めた女は尽かさず首を絞めにかかった。両手で女の手首を引っ掻くもさらに強く締めらていき春海の白く細い首は女の血が染め始めた。<br><br>「                                                 」<br><br>言葉にならない声が口から漏れた。<br><br><br>春海は力なくゆっくりと女の顔に左手を伸ばした。<br>ビクッとした後、女は春海の首から両手を離した。<br><br><br>「大丈夫か！？おまえ！」<br>今まで傍観者だった男が女に駆け寄った。<br>「いたい・・・いたーっ。あつっ、あつー。」<br>血に染まった包帯で巻かれた手で右目を抑えうずくまり床を転げ回った。春海は苦しみから解放されたが息は荒いままだったが言葉を発するため息を整え始めた。<br>「お・・女ってほ、ほんっとーに・・・便利！この爪だ・・・って鋭く研いだのに・・あ、あなたは私が女の子だから爪が・・伸びてて、あたりまえ・・みたい・・に見えたかもしれない。だけど、だけど、そこが、文字通りツメが甘かったようね！」<br>「とんでもない女だな！やっぱり君はここにいてもらわないと！」<br>隠し持っていた小型のナイフを振り回しながら走り寄ってきた。<br>春海は平手でナイフを持った右手を払いのけ男のみぞおちに左足でケリをお見舞いした。お腹を抑え込むように崩れ落ち唸り声をあげた。<br>「意識・・落としたつもり・・・だったのに体力ないか・・・ら残っちゃったか・・。」<br>逃げる際に追いかけて来ないようきちんと意識を落としてもらう為に春海は右腕を振り下ろした。<br><br>「もう、今日はここまででいいわ」<br><br>振り下ろした腕を止めるようにいずみが手首を下から抑えた。<br>「よくやったわ。まだ時間はあるけど先を急ぎましょう。」<br>「・・・いずみさん。遅いよ・・」<br>「ごめんなさい。全て私の責任です。」<br>いずみは春海と同じように腕を振りかざし男の意識を落とした。春海はここでやっと涙を1つ流した。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038335.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Aug 2017 08:20:03 +0900</pubDate>
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<title>どうしよう</title>
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<![CDATA[ 普通のはなし<br><br>このブログを開設しておよそ１０年くらいです。ほぼほぼ放置ですが。<br><br>当時は辛い事があったら好きな人にメールしてました。<br>返事は一切なかったです。噂によれば心を少々病んでいるとかで。後で聞いた話は交通事故に合い携帯が壊れていたというのが真相でした。<br>返事があった日は12月26日。フレンチレストランで働いていた私にやっと休日が来た日でした。<br>年が明け一度会い、しばらくメールして2月26日に再度会った時に付き合うことになりました。数年後同棲して何年か後の12月26日に入籍しました。<br>翌年の2月に妊娠が分かり10月に出産。しかし妊娠中に大問題が発覚し和解したがついには和解の意味もなく信用が無くなり出産のおよそ１年後離婚しました。<br>今は実家に身を寄せ派遣もしましたが父の病気をキッカケに辞めて近くの会社に去年の10月から正社員として勤めています。<br><br>今は実家の両親とも仲が悪く、仕事も上手く出来なくて吐き出す場所もないです。<br><br>私には居場所がない。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038334.html</link>
<pubDate>Wed, 06 Jan 2016 12:52:11 +0900</pubDate>
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<title>No.6ーHWG 2ndステージ(2)ー</title>
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<![CDATA[ 6月6日 17:29<br><br>「社長！後は我々がやりますからモニタールームへお戻りください！社長！」<br>「黙って見ているだけなんて出来ないの。私も自分で、あなた達に教えていない別のアプローチをするから付いてこないでちょうだい」<br>「それは出来ません！お手伝いします！」<br>いずみは小走りになり秘書も続いた。社長室のセキュリティーゲートまでたどり着いた後、秘書の方へ振り向いた。右手でドアを指差した。<br>「付いてきた事には目を瞑るけど今日はここから先は私の領域よ。<br>私には私の仕事が。あなたにはあなたの仕事が、やるべきことがあるんじゃないの？」<br>いずみはそれ以上の言葉は言わずに目で示した。秘書は一呼吸置いて瞬きをして答え深々とお辞儀をし元来た道へ帰った。<br><br><br><br>事の始まりは今から3時間程前だった。<br>前回のように社内スタッフはモニタールームに集まりHWGの様子を伺っていた。滞りなく春海は目的地である教会へ向かっていた。しかし3重に組まれていた護衛部隊へ突如一斉襲撃が行なわれ春海はあっさり誘拐されてしまった。現場は全員プロで構成されていたにも関わらずほぼ壊滅された。それでもゲーム前に飲ませた24時間後に消える体に害のないGPSを頼りに春海の居場所を特定しようとした時だった。<br>GPSを起動させるにはトップの、いずみの承認が必要だった。その時の回線コードはNo.5と伝えられていたが、いずみのみ意図的によりNo.6と聞かされていた為いずみはNo.6の暗証番号を入力し、大規模なシステム障害が発生した。システムは万が一に備え当然バックアップ機能が付いていた。他の回線もすぐに使えるようになっていた。しかし、その機能ですら障害が起きていた。直ぐにSEが電源室に入るも原因不明、全復旧には5時間かかるとのことだった。<br>モニタールームに残ったスタッフには見えない苛立ちを隠しきれなかった。誰が社長に嘘のコードを教えたのか？本当に社長は知らされたコードを入力したのだろうか？<br>答えの出ない疑心暗鬼がしたが社長の手前爆発させるわけも出来なく重苦しい空気のみが流れていた。タブレット操作していたいずみは空気を察知し、モニタールームを出た。そして今に至った。<br><br><br>社長室の本棚「ま行」に置いてある黒い本を取り出した。真ん中が全てくり抜かれておりケースに入った鍵を取り出した。「り行」にある赤い本を取り出し壁に埋め込まれている鍵穴に鍵を刺した。「あ行」にある白い本を取り出し静脈認証、虹彩認識を済ませ床下を開け14・5階へ移動した。いずみの身長に合わせた高さで部屋の作りは6畳程。WiFi、携帯電話回線、無線、パソコン等、ありとあらゆる機器とトップシークレットの書物が置いていた。豆電球をつけ、とあるファイルを取り出した。パラパラめくり無線機のダイヤルを動かした。パソコンは2台置いてあり一台はモニタールームと電源室の音声と映像を監視、録画、盗聴を始めた。もう一台はとある機器と接続を始めスキャンと計算を開始した。<br>いずみは紙とペンを取り出し同じように計算を始めた。<br>「この計算があっていればまだ望みはある。守るだけじゃダメ。攻めて行かなきゃ。アレは以外とでごわかった。このままならBMは負ける！」<br>いずみの計算は終わった。パソコンのカーソルが点滅していた。後は計算を残すのみだった。力強くエンターキーを叩いた。<br>画面にはいずみが導き出した答えと同じだった。立ち上がり左側の壁に体ごと突っ込んだ。軸回転扉の先には衝撃を吸収する為のマットがあり華麗に着地した。その先にある専用エレベーターの箱の上に乗り、遠隔操作で下階へ降りた。天井の蓋を開け箱の中に下り、エナメルのつなぎに着替えバイク車庫で特殊改造したハーレーにまたがりビルから離れた。<br><br>「どうか社長ご無事で」<br>秘書は3階からその様子を見ていた。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038333.html</link>
<pubDate>Sat, 29 Nov 2014 13:38:21 +0900</pubDate>
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<title>家族ーHWG 2ndステージ(1)ー</title>
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<![CDATA[ 6月6日<br><br>春海は強力な眠気からなんとか目覚めた。動き出せそうな気は毛頭起きず、今にも瞑りそうな目をゆっくりパチパチさせた。それでも言うことを聞かない体と頭を力任せで動かしたらなぜかびくともせず、逆に反動で後頭部を軽くぶつけた。驚いて動かなかった体の一部を急いで確認した。<br>「やられた！！」<br>左手は手錠がかかりもう片方はおそらく鉄で出来た柱に更に鎖を巻いてひっかけられていた。もう一度力任せで引っ張ったが当然びくともしなかった。右手で手錠の鎖を持ち左足を軸にし柱と平行に全身の力を集中させて引っ張ったがやはり無駄だった。<br><br>ーダメなら次の行動を直ぐさまとる。いくつもの予測を建てる。できる限り手を尽くすー<br><br>BM関係者に教わったことだ。HWGに入る前に研修と称して様々な体験をさせられた。監禁や誘拐、閉じ込め、拷問・・・。それらに対処する技を短期間で習得させられた。手錠に関してもだった。辺りを見回したがカバンは当然無かった。カバンは取られることも想定内のため頼りにはならない。もちろん携帯も。以前のようにボタンやヘアアクセに見立てた小型盗聴器なども全て取られていた。破壊されたとみなしても問題はなかった。<br>不意にふっ！と何かを思い出し胸のあたりを洋服の上からバン、バンと触りだした。首回りから右手を入れて直に弄りだした。やがて探していた物を取り出した。<br>「これが欲しかったの。女って本当に便利！」<br>ブラジャーのワイヤー代わりに仕込んでおいた先端が細く鋭く尖った特殊な金具を手錠の鍵穴に入れて外そうと試みた。BMで習った通りに。<br>「無理だよ。そんなにちゃっちいものじゃない。」<br>声に驚き金具をフローリングに落とした。甲高い金属音が部屋に響いた。<br>「一通り調べたけどまだ残っていたのか。女の子だから体の中は調べられなかった。油断したね。これは私が預かっておく。」<br>そう言って中年の細い男は金具を拾い上げてポケットにしまい込んだ。<br>「あなた誰？ここはどこ？」<br>「私はただの一般人。ここはゴールの教会から約1キロくらいの場所だよ。」<br>男は金具を入れた別のポケットから鍵を取り出して手錠を外した。<br>「手錠は外します。妻が食事を作りました。どうぞ温かい内に召し上がってください。」<br>「どうして外したの？私、逃げるよ」<br>「ここからは逃げられないよ。君はここで私達の娘として暮らすからね」<br>男はドア付近まで歩き部屋の電気をつけた。急に明るくなったせいで目が慣れてなかった。やがて一つの光景が目に入った。<br>「お帰りなさい。」<br>無表情でドアの隙間から見え隠れする女性が低い声で続けて言った。<br>「初めてあなたをテレビで見たときから娘が帰ってきたと主人と二人で喜んだわ。あなたは誰にも渡さない。」<br>女は春海に近づいて来た。右目に眼帯をし、包帯が巻かれた左手で春海の頬に触れた。<br>「あの子よりちょっと痩せているけどいいわ。また、美味しいごはん作ってあげるわ。ほら。オムライス、好きだったでしょ？」サイドテーブルからお皿を持ってきて目の前に差し出した。<br>「あなたデミグラスソースよりケチャップが好きだっていうから・・・・・。はい。これ持って？」<br>春海は様子を伺うように両手を差し出し皿を持った。女はエプロンのポケットからケチャップを取り出して絞り出した。<br>ぶじゅう、ぶじゅう・・・ぶぴゅ、ぶぴゅ・・・ぶじゅう・・・・びちゃ、びちゃ・・・・ブブッ！<br>跳ねたケチャップが二人の顔と手と服を汚した。先程封が切られたばかりのケチャップはずさんに使い果たされ、空の容器は床に投げ捨てられた。女はオムライスかけられた大量のケチャップの中に手を入れてグチャグチ言わせながらかんだ。それを春海の口周りにベタベタ擦りつけた。<br>「もう！美味しいからって急いで食べ過ぎよ！直ぐ吹いてあげるわね！」<br>ポケットから薄ピンクのハンカチを取り出し春海の口を拭こうとした。春海はお皿をわざと女のエプロンに付けるようにひっくり返し右手で女の手を強く掴んだ。<br>「私はあなたたち子供の代わりじゃない。HWGに戻らなきゃ私は松本家の嫁になるだけ。監禁したって直ぐに国家を挙げて捜索されるわ。そしたら良くて国外追放、下手すりゃ命ごと持っていかれるわよ。」<br>「娘の所に行けるならそれも本望よ。」<br>「家族っていうものは誰よりも深い絆で結ばれているものだ。君なら分かるだろう？」<br>つかんでいた女の手を払いのけた。<br>「安っぽい絆ね！娘が死んだからみんな死ぬの！？違うでしょ！！遺されたものは最期まで生きぬかなきゃいけないの！それが亡くなった人への弔いになるの！死にたいなら勝手に二人で死ねばいいわ。でも命を粗末にするなら娘に会えないわよ！そして私を巻き込まないで！！私は野島春海よ！」<br>二人を押し退けドアから逃げようとしたが力が入らなかった。二人の残像が目に残る。春海は足元からその場に崩れ落ちた。<br>「薬を嗅がせてからまだ数時間しか経っていない。歩くだけでこの様。体力が戻るまでまだまだ時間かかるよ。君はおとなしく私達のいうことを聞いてればいいんだ。」<br>錯乱しそうな女を優しく抱き寄せながら男は部屋を去った。ドアの鍵がかかる音がし、続いて鎖を巻き付いていさせているような音がした。静かになった廊下は二人の歩く音が響いた。<br> <br>食事はすべてひっくり返した。何かを盛られている可能性があったからだ。唯一水は市販のペットボトルで提供されたため、開封の跡がないか、どこかに何かを混入させた形跡を調べてた。なんとか何も細工はされていないようだった。しかし飲み干せるわけではなかった。即効性の毒物がないだけで後々効いてしまったら奴らの思うツボだ。一口飲んで蓋をした。<br>改めて部屋を見渡した。時間がわかるものは何もなく、外の光や音、外気すら感じさせなかった。わかるのは先ほど言っていた「娘」の部屋であるということ。その娘はおそらく亡くなっているとのこと。そしてこの家。都内にある家としてはかなり大きな建物だ。家具ひとつとっても古い時代の貴族をテーマにした映画に出てくるようなものばかりに思えた。亡くなってからも出入りをしていたようで丁寧に掃除が行き届いているように思えた。難を言えば昔はあったであろう窓が塞がれていること。そのせいで埃っぽい感じがした事だった。<br>春海は壁にそって置かれていた机に向かった。国語辞典、漢字辞典、英和、和英辞書・・・それに教科書やノートがあり、キャラクターのついたペン立てに定規、女の子らしい色とり彩りのカラーペン、ハサミやホチキスなどが綺麗にしまわれていた。<br>春海は教科書と同じ立てにあった一冊の厚めの花柄のノートらしきものを手元に引き寄せた。表紙には赤い文字で「diary」と記載されていた。<br>「やっぱり日記帳だった。まだノートに書く子もいるのね」<br>娘が書いている所を想像し、こんな状況にも関わらず笑みがでた。軽く手で表面の埃を払いごめんなさい。と、言いながら中身を確認した。1ページ、2ページ・・・と読み進めていった。後半部分は何かがこびりついていて開かなかった。ページが合わさっている部分を見た時、息を飲んだ。コーヒーなどのシミ、それとは明らかに違うものがついていた。おそらく血。しかも一滴、二滴というレベルではない。そして日記の内容の不自然さ。春海は日記帳をテーブルの上に置き不謹慎かと思ったがクローゼットを開けた。3、4畳ほどの場所に幼稚園から高校までの制服と洋服が並べられていた。全てにカバーが掛けられていた。高校生くらいの洋服は何度か来たような形跡はあったがそれより小さいものは封すら開いていなかった。他にもスニーカーやパンプス、ローファーもあったが全て綺麗なまま箱に入れられていた。そして奥にはベビー用品が大量にあった。<br>「これって・・・」<br>クローゼットの扉を静かに閉めた。部屋を歩きまわり何か武器になりそうなものを探した。役に立ちそうなのは分厚い教科書、ハサミと太めのマジックペンくらいだった。それから脱出用のシーツとカバー。手芸用の紐がいくつかあった。塞がれた窓に穴さえ開ければ逃げ出せると思った。耳をすませたら微かに車の音が聞こえたからだ。3階建てくらいなら逃げれるように訓練された。5階までなら骨折などはするが逃げれる。それ以上は鍛錬しないとできないと教わった。約束の場所に行けるなら手足の1本くらいくれてやる覚悟は出来た。後は飲み込んだGPSが領域に入ればBMが拾ってくれるだろう。<br>春海は何だかワクワクしながら白くてピンクの花がついた可愛らしい椅子を頭上まで持ち上げ雄叫びとともに塞がれた窓めがけ、やり投げ選手の様に放り投げた。<br>「女神様が待っている！さぁ！HWGに戻らなくちゃ！！」
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038329.html</link>
<pubDate>Wed, 26 Nov 2014 10:33:31 +0900</pubDate>
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<title>嘘</title>
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<![CDATA[ 5月31日 12:48<br><br>「今日から春海さんは仕事に戻りました。取り乱したりするなどの問題行動はないとの報告を受けています。」<br>いずみの秘書は電話でそう伝えた。<br>「そう。ありがとう。今日はそっちに寄れないから帰りはウチに寄るように伝えておいて。」<br>スマートフォンの画面から切断を選び自動ドアのボタンを押し中へ戻った。<br>今日は都内の外れにある看板すら出していない、患者の紹介制度でしか入れない産婦人科へ不妊治療の為に夫と来ていた。完全予約制で個室での待機など隅々までがっつりプライベートが管理されていて微妙な立場にあるいずみにはぴったりの病院だった。検査の結果原因はいずみにあり自然妊娠は無理だろうと言われていた。あと3年治療しダメだったら子供は諦めようと話をしていて今年がその最終年だった。<br>待合室にある個室のドアを開け2人掛けのオフホワイトのソファへ腰を下ろした。夫はまだ戻って来ない。エナメル質の黒いカバンからタブレットを取り出しここでも出来る仕事を始めた。明日から始まるジューンブライドの最終準備。それにおける予算の最終承認。各機関に散らばっている「イヌ」達からのメールチェック・・・・。山のように仕事はあった。とりあえずイヌ達からのメールチェックからしないと大事な事を見逃してしまうのでメールアプリを起動した。もっとも最重要項目については別の方法で伝えるようになっていたが。一人ひとりじっくりメールを読んでいたが喉の渇きを覚え目は文面に置いたまま右手をテーブルへ伸ばした。ペットボトルがなかなか掴めず何度か手を泳がせた。やがて手にぴったり合って引き寄せ蓋を開け数口飲んだ所で目を離した。<br>「いず、帰ろうか。お腹空かない？何か食べて帰ろう。」<br>どうやら診察も会計も済まし部屋に戻った様子で個室に帰ってきていた。<br>「あぁ！え！？い、いつからそこに居たの！？」<br>「いずがソファに座ったくらいから。集中してたから声かけ辛かった。会計の声も聞こえていないみたいだったしペットボトル取ったのも俺だって気づいてないだろ？」<br>「あ・・・の。全く気づかなかった。ごめんなさい。確認しなきゃいけない事が沢山あって。えっと、ゴハンよね？どこで食べようか？」<br>いずみはあたふたしながらタブレットの電源を直ぐに切りカバンの中へ突っ込み立ち上がった。二人順番に個室を出て地下駐車場へ言葉を発する事なく向かった。車に乗ってからは優斗が運転しいずみは後部座席は座った。これも万が一を想定しての事だった。今の日本じゃ拳銃など一般人でも少しお金を払えば容易く手に入った。防弾ガラス仕様に施し特殊なシートを張り打ち込まれても傷一つ付けないようにした。さらにそのシートは透明ながら外から覗いても中にいる人物が誰か分からない作りになっていた為見た目はそこらの車と変わらなかった。<br>車内も広い作りになっていてひとりで座るにはかなりゆったりしていた。仕事の続きをしたかったが、なんとなくやる気も先ほどの出来事で削がれてしまい、シートに深く座りながら過ぎてゆくいつもの景色をなんとなく眺めていた。<br>15分くらい走った所で車は止まり、行きつけの鳥料理屋へ着いた。駐車場からダイレクトに部屋へ行け、全て個室。各界のVIP御用達のお店との事だった。掘りごたつ式になっている座席へ向かい合わせに座り親子丼ランチセットと鳥もも肉のわさびじょうゆ焼きランチセットを注文した。運ばれてきた急須に入った温かいお茶をいずみが注ぎお互い口をつけた。<br>「祥子。俺に気にせず仕事をしても構わないよ。」<br>いずみは顔を上げた。いくら夫婦だとしても外はもちろん、家の中でさえ偽名で呼ばれていた。ただ、こうやって本名を出す時は決まって本音を言った時だけだった。いずみは照れくさくなりながら答えた。<br>「ありがとう。でも、今はやめておくわ。あなたとの時間大事にしたいから。」<br>白い歯をみせながらはにかんだ。<br>運ばれてきた食事を取りながらお互いの料理を少し分けて食べ比べをしたりし、しばし失われていた夫婦の時間を過ごした。<br>食事も終わり、この店こだわりの庭園でコーヒーを飲むため個室を出て渡り廊下を前後に歩いた所で笑い声が漏れ聞こえる黒山の人だかりとすれ違った。<br>「おやまぁ。こんなところで会うのは奇遇ですなぁ」<br>人だかりの中央部から太い声がいずみの背中を叩いたような気がした。<br>「小谷だ。衆議院議員最大派閥小谷派のトップ」<br>いずみは誰だっけ？と思ったがそれを察知してすぐに悠斗が小さく耳打ちした。<br>「おや。わざわざご紹介ありがとうございます。このようにお話しするのは初めてですなぁ。この前お見かけはしてたんですよ？対象者の式に参列していましたから。いゃあ～あれは見事な手腕でした。なぁ？皆の衆！」<br>取り巻き達が小谷議員の発言に身振り手振り大袈裟に同意した。<br>「小谷さんも大きな派閥を長らく率いて素敵な手腕をお持ちではないでしょうか？時期総理というお噂は常々聞きしますよ？」<br>「いやはや。参りましたなぁ。わはははは・・・」<br>独特な笑い声が周囲を包みいずみは作り笑いが引きつりそうになった。お世辞だと分かっていないのだろうか？それともわざとやっているのか？どちらにしろ、気分が悪いもので一刻も早く立ち去りたかった。小谷はドヤ顔でニヤリとした。<br>「党としてはHWGは成功して頂きたいんですよ。でも私個人としては失敗して貰いたい！<br>今や総理交代の要因としてHWGの失敗も加わったんだ。今回は成功率の高いBMがバックに付いているだろ？これはもう負けちゃうんじゃないかってねぇ。へへっ。<br>いゃあ、実を言うと先ほどまでこの話題だけで2時間過ぎたんだ。すごいだろ？」<br>話しながら次々と表情を変えていく様は人間百面相だ。もしくは狸の化け合戦と言った方が正しいかもしれない。<br>「と、言っても私はもう歳だ。総理になれない場合もある故、後進に道を譲ることも考えておるぞ！おい、大治朗！大治朗はどこた！？」<br>トタトタと小さな足音がして後方から周りと比べて若い男が現れた。<br>「あ、お父さん！何か呼びましたか？」<br>ひょうきんそうで全く知性の欠片もないような人間がヘラヘラしながらダラんとつっ立っていた。戦闘をしたら片手で潰せそうな、そして無駄に暑苦しそうな男だ。<br>「相変わらず自覚がないじゃないか！しゃんとせい！<br>あ、これね。当選回数2回のひよっ子、大治朗だ。今は妻の選挙区から出ているが何れは鞍替えし私の選挙区から出てもらうようになるんだよ。鞍替えした後、私の票が出て行かんようにしているんだが、なかなか難しいもんだなぁ？」<br>「いゃあ～。そ～っすねぇ。お父さんのようになれるよう頑張ります！！その前に、この人達誰でしたっけ？」<br>「話を聞いとらんのか？馬鹿ものめ！彼らはHWGを阻止するBMの代表だよ」<br>「BM？あぁ、はいはいはい。大体分かりました。あれを、あれする団体ですね！」<br>絶対にわかっていないという表情をしていたのは誰の目にも明らかだったが、政界の大物の息子という肩書きが恐ろしいのか誰一人振れようようとしなかった。<br>「ご興味がある様でしたらHPご覧になってくださいね。拙い派遣会社のものしか存在しませんけど。でも人材は選りすぐりで豊富。多彩な言語に精通する通訳。ウグイス嬢から選挙運動員、サクラ、経理、事務、秘書に運転手、果てはボディーガードまで多岐多様に。それから多少値は張りますが、幾つかの力を併せ持った人材もおります。如何なる場所や状況でも直ぐに即戦力になりますわ。いつでもご用命下さいね。」<br>いずみはバッグから名刺入れを取り出し名刺を1枚ずつ笑顔で二人に渡した。大治朗はまじまじと名刺に釘付けとなっていた。小谷は名刺を受け取った後は見向きもせず秘書と思わしき人へ流した。<br>「ー浜田さん。前から疑問だったんだが何故アンタは結婚しないのかね？君はHWG初の成功者。お金も、地位も、権利もある。派遣会社も大成功。仕事も大事だが女の幸せも欲しくないのかね？この際誰かに譲ったらどうだ？結婚は何時でも出来るが出産には期限があるんだよ。確かいい年齢だったよねぇ？」<br>いずみの全身を汚ない舌で舐め回すような目をしながらいずみの周りをゆっくり歩き出し、自身の左手でいずみのお尻を触り出した。この地位になるまでこの程度のセクハラは受けてきた。<br>「・・・あまり出会いも有りませんし、何よりこの仕事を理解し尚且つ夫になる覚悟のある人間は一握りではないでしょうか？」<br>あまり好きではない話題だ。いつものように伏し目がちになり、困惑する振りをしながら一言、一語、一音、言葉を選びながら答えた。<br>「出産はどうするんだ！いくら大不況だからと言いオンナにはバンバン産んで貰わないとな！次々と流れ作業の工場みたく！君は金があるんだし精子でも買ったらいい。それとも君は吹き飛ばされた売り物にならない不良品かい？何ならワシが買ってやってもいいぞ！なかなか良いケツと胸をしとるからな。」<br>小谷はお尻を鷲掴みした後、右手でジャケットの繋ぎ目に人差し指を掛け中を覗こうとした。いずみは怒りで右手を動かそうとしたが、悠斗が腕を引き静止させた。<br>「小谷様。私どもの取締役にこのような事はおやめ下さい。BMは政府と対峙しておりますが、浜田個人としては衆議院議長とは旧知の仲。これ以上の行為はあなた様と御子息の進退に関わります。」<br>優斗の言葉にいずみは気を取り直し怒りを鎮めた。しかし発している気は只ならぬ雰囲気を醸し出し小谷達は全員が得体の知れぬ恐怖に包まれるような感覚に襲われていた。<br>「ーー失礼を無礼で申し上げるのならそういう所が何時までも総理になれない理由ではないんでしょうか？ご後進がいらっしゃるなら潔く道をお譲りするべきでは？わたくしならそうします。」<br>「・・・本当に失礼な発言だな。でもやはり君に説得力はない。ただ、ご立派な君の言う事は頭の片隅にでも置いといておくよ。総理になった暁には思い出すかもし・・・ぶぶーっ！」<br>語尾を言うまでもなく吹き出しまた下品な笑いで小谷一派は騒いだ。笑いながらも幹事らしき人物は二次会は◯◯で行いまぁ～す！15時半まで集合～！会費はタダで～す！税金じゃぶじゃぶ使っちゃいましょ～！なんて酔っ払いよろしくのごとく、最後まで下品な集団のままズカズカその場を通り過ぎて行った。いずみ達も一通り会釈をしてすれ違ったが返すものなど当然一人もいなかった。<br>「どう足掻いても救いようのない連中だ。祥子は何も間違った事はしてないんだから堂々としてれば良かったんだ。」<br>「ダメよ。こんなトコで本名出したら！それに私、悪い事2つしたわ。1つは未遂だったけど」<br>「殴ろうとした時か？あれは女性に限らず手をあげたくなる場面だったろ。あとは何だ？」<br>「未婚って言った。夫が後ろにいるのに嫌な妻ね」<br>「別にいいさ。付き合う時も結婚する時も最低限の人達にしか伝えてこなかった。それに俺も君も偽名を持つ人間だ。知らなくて当然。これは祥子を守るための策だ。君は妻として立派な働きをしてくれている。だから俺はHWGが無くなるまで、BMが要らなくなる日まで共に生きる。それ俺に与えられた職務であり、生きがいだ。」<br>優斗がいずみの手を握りしめた。いずみも握り返した。言葉は発さず、庭園には向かわず、優斗が前になりただ車へ向かうために歩いた。個室のドアに手をかけた際にこちらへ向かってくる足音が聞こえ、優斗は扉を素早く開けいずみを中に入れ自分は扉の前に立ちはだかった。向かってきた男、小谷大治朗は一礼をした。<br>「先ほどは父が失礼な態度をとり申し訳ない。実は私はHWGに強い興味を持っているんです。議員になったのも父が指名したからという事とHWGを潰したかったからなんです。僕に任して下さい！必ずあなた達のお役に立てます！」<br>話を聞いていたいずみは部屋から出て目の前にいた大治朗と目を合わせた。<br>「熱意は多いに結構！しかしあなたの力を借りる程BMは弱小じゃない。お引き取り下さい」<br>いずみが静かだけど恐ろしく放つ強い気にまたしてもやられたような気になり、大治朗はよろめいて後ろへしゃがみこんだ。優斗はいずみを通り過ぎ部屋に入ると奥の扉を開け駐車場へ向かった。<br>「ーそれでもあなたが何かを変えたいというのであるなら、まずは自分の力であなたの周りを変えなさい。議員を集め反HWG派を作って。それから新党を作り選挙で与野党で第一党になり政権を取ってきて。」<br>「そんな事無理ですよ！」<br>両手を広げ左右に振りながら早口で即座に否定した。<br>「今の悪しき政治を断ち切ることが出来ないならHWGの転覆はあり得ない。<br>ーあなたの立場なら尚更難しいでしょうね。だからちゃんと考えてから動いてちょうだい。検討を祈るわ。」<br>いずみは少しだけニヤッと笑い扉を閉めて駐車場へ向かった。来た時と同じようように後部座席へ座りそれをバックミラーで確認した優斗はギアチェンジをして店を後にした。<br><br><br><br>「・・・別に期待も何もしてないんだろ？」<br>しばらく走った後にいずみに尋ねた。<br>「あなたには期待でるような人物に見えたかしら？」<br>クスクス笑いながら答えた<br>。<br>「でも初めてだったわね。あんな事言った政治家。」<br>「あぁ。」<br>「だから今でもどこかで期待しちゃうのかしら。親が敷いた真っ黒に汚れたレールを進まず、真っさらなレールを自ら作って進んで行こうとする人物を。」<br>叶わぬ夢を口に出し、それでもいつか叶うんじゃないかと願う心の奥底にいる幼い頃の少女の自分をいずみは無意識でさらけ出していた。頭を窓ガラスの方にもたれかかり変わりばえのしない空を眺めていた。<br>「家に帰ってコーヒーいれるね。いずみスペシャルブレンド。確か頂いたスコーンもあっ・・・・た・・」<br>鈍い音と共にフロントガラス一面をおそらく人の様なものが被い、耳が痛くなるくらいの音で急ブレーキがかけられた。 優斗は急いでサイドブレーキを引き車外へ飛び出した。運転席と助手席の間から見える限り既に起き上がっている状態から恐らくケガはしていないみたいだ。いずみと優斗はシートベルトをしていたおかげか何ともなかった。<br>「いてーっ！何すんだよ！おっさん！！」<br>若い男性の叫び声が辺りに響いた。どうやら横断歩道もない片側一車線の道路に横断しようとしていたらしい。<br>「あの子。例の子だわ。」<br>直ぐに覚えていた顔と今見た顔が合致した。記憶が確かであれば、あの子はかなり厄介だった。優斗は気付くだろうか。そんな心配をした。<br>「そんなに元気があれば大丈夫だな。ほら立ちな！」<br>「は？訳分かんねぇし！よそ見してたのおっさんだろ！？こっちは骨折れたかもしれねぇんだよ！どーすんだよ！」<br>交通事故と思われる場面に周りがざわざわしだした。近所の人らしき人物も急ブレーキの音を聞いたのか集まり出していた。優斗は深いため息をついた。<br>「君は有名な当たり屋、渋川仁だろ？手口も顔も溜まり場もよく知っているよ。」<br>いずみは出て行こうとしてドアに手だけを掛けていたが元の姿勢に戻した。<br>「はっ？何言ってんの！誰かと勘違いしてね？さっさと警察と救急車呼べよ！他の人！誰でもいいから呼んでくれます？」<br>何人かが携帯電話を操作しだした。連絡しようと迷っている者、携帯で写メやムービーを撮る者、多くは黙って見ているだけの者だった。<br>「呼んでもいいが立場が気まずくなるのは君の方だ。私の車には車載カメラが設置してある。君が目をつぶって体当たりしてくる場面がしっかり録画してあるがそれでもいいか？<br>それに君は示談金をぶんどるつもりだろうがまずムリだ。それどころか私の車の修理費を請求される羽目になる。それでも良いなら好きにすればいい。でも君はそんなに鈍くはない。どうだろう？ここらで改めれば。プラスにはならないがマイナスにもらならないと思わないか？」<br>優斗は仁に手を差し伸べた。仁はその手を強く払いのけた。<br>「チッ！おっさんウゼェ。触んじゃねぇよ！俺はHWGの賞金首狙ってるから当たり屋は小銭稼ぎみたいなもんだよ！！」<br>本性を吐き出したし砂利のついたシャツとジーンズを両手で叩いた。ジーンズは少し破れてしまったようだ。<br>「HWG舐めないでちょうだい。あなたに賞金首は狙わせないわ。後、その能力他に生かしなさいよ。あなたが更生したらウチで雇ってあげるわ」<br>いつの間にか最大限に開いていたパワーウィンドからいずみは名刺を差し出した。その下には幾らかの万札があった。仁は乱暴に名刺を取ってジーンズのポケットに入れた。優斗は仁の肩をポンと叩き運転席に戻った。野次馬達もそれぞれ散った。<br><br>優斗が車内に戻ったのを見計らって戒めるように呟いた。<br>「やっぱり私も大概ヒドイ人間ね。私はお金も時には武力も使う。沢山の血が流れたのも見た。それでもまた新たな血を流そうとしているのね。自分のではない血を。きっと私達に子供が出来ないのは私の行いを天がきちんと見ている報いね。きっと今のも。」<br>「いず。俺は」<br>「祥子。って呼んでくれないのね」<br>それ以降ふたりは一言も交わさなかった。いずみはカバンからタブレットを取り出し仕事の続きをした。しかし車の揺れが心地よく、お腹も満たされていたため初夏の日差しを受けながら自然と目を閉じた。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038328.html</link>
<pubDate>Thu, 23 Oct 2014 20:18:58 +0900</pubDate>
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<title>香り</title>
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<![CDATA[ 5月26日  20:53<br>「奥様、お帰りなさいませ」<br>松本家に勤めている通いのお手伝いさんの一人が満面の笑みを浮かべた絵理花の帰宅を深いお辞儀で迎えた。<br>「遅くなってごめんなさいねぇ。ついお友達と盛り上がっちゃってぇ、すーっかり遅くなっちゃった！あ、これお土産ね。皆で分けてぇ。」<br>「かしこまりました。お夕食はイタリアンですが召し上がりますか？」<br>「んー。サラダとぉ冷たいオードブルなんかある？あとぉビール！ビールも呑みたいな！着替えてくるから用意しておいて！！」<br>「はい。奥様。」<br>細身の中年女性はお土産の紙袋とバッグを預かりスタスタと奥へ消えて行った。<br><br>しばらくして浩也が帰ってきた。<br>「浩也様、お帰りなさいませ」<br>またお手伝いは深いお辞儀をし玄関で迎えた。<br>「ただいま、春日さん。実はお昼きちんと採れなくてお腹すいたからすぐに食事の準備してくれないか？」<br>「すぐにご準備致します。そういえば奥様も先程お帰りになられて今、お部屋にいらっしゃいますよ。」<br>「そうですか・・・。こんな時間まで働かせてしまい済まないな」<br>浩也は左手に持っていた黒のカバンからブランドのお財布を取り出し万札を幾らかお手伝いに握らせた。<br>「迷惑料です。母には黙っておいてください。後、残業代はきちんと請求してくださいね。」<br>お手伝いはペコペコお辞儀をしてお金をズボンのポケットにしまい込んだ。浩也はにっこり笑い自分の部屋へ向かった。<br><br>ベージュを基調としたリビングのテーブルに浩也と絵理花は斜めに向かい合って座った。ふたりのいつもの場所だ。絵理花はグラスに注がれたビールを呑んではつまみがわりにしているオードブルを小さく切り口へ入れた。<br>浩也はお手伝いが手作りしたトマトソースを使ったパスタをフォークでくるくると回し口へ運んだ。それを何度か繰り返した後、グラスに注がれたミネラルウォーターに口を付けた。時々沈黙を破る様に付けられているバラエティ番組をチラチラ見ていた。<br>「ひろちゃん。お行儀が悪いわよ」<br>言葉と同時にリモコンを手に取りブツンと電源を切った。<br>そのまま立ち上がり長年使っているオーディオのスイッチを入れお気に入りのクラシックを流し始めた。いくらかお酒も入り鼻歌が出るほど気分は上々だったが浩也は構わず食事を続けた。絵理花はその態度が気に食わなかった。<br>「ーひろちゃんにとってお母さんは空気なの！？」<br>「・・・・・・・・・・・」<br>「どうして何も答えないのっ！ちゃんと聞こえてる？」<br>浩也は伏し目がちにし、フォークを乱暴に皿に置きミネラルウォーターを飲み干しナフキンで口を拭った。<br>「あなたに答える事は何もありません・・・ご馳走！」<br>「何を怒っているの！？お母さん分からないわよ！」<br>「何も怒っていない！何も！<br>・・・ただ！あなたがいつもの香りを匂わせているだけですよ！それを僕は感じ取っただけです！」<br>「えっ？香り？シャネルの香水の事？おかしいなぁ。いつも使ってるのに。今日は気に入らなかったぁ？」<br>少し語尾が上がったが平静を装った。<br>「違いますよ。やはりあなたは何も分かっていない」<br>キツイ目つきでじっと母親を見て浩也は席を立った。手に残ったままの白いナフキンをテーブルに叩き付けその足でキッチンへ向かった。絵里花の体は一瞬ビクっ！となった。<br>浩也はシャツの袖をまくり素手でグラスにいくつか氷をいれ友人から貰ったウィスキーを注いだ。右手で持ち上げリビングへ向かった。やがてキッチンとリビングの境目に立ちグラスに口を付けた。カランカランという氷の音で絵里花は浩也が後ろに立っている事に気づいた。<br>「ーお風呂先に入る？」<br>話題を逸らそうと絵理花は極めて平静を装い話かけた。<br>「まだ仕事が残っているので部屋で片付けます。貴方こそ早くお風呂へ入るべきでは？それとも、もうどこかで入りましたか？」<br>「？？？」<br>「香水じゃなくてシャンプーの匂いですよ」<br>「え？こ、これ？お友達から分けて貰ったのよ。いい香りでしょ？パリから個人輸入のものらしいわぁ」<br>「へぇ～・・・。<br>僕のお気に入りのホテルと同じシャンプーですね？そこのオーナーと知り合いですがフィレンツェの老舗メーカーがホテルの為にオリジナルを作っているそうですよ？まったくの非売品で。」<br>「その・・・お友達がホテルの支配人、目黒さんよ！前にお泊りした時凄く気に入っちゃって無理言って分けてもらったのよ！あっ。そういえばごめんなさい。パリから個人輸入していたのは香水だったわ。勘違いしちゃった。うふふ。」<br>ホテルの支配人とは本当に知り合いだし、香水も分けてもらっている。本当の中に嘘を紛らわせているから自信を持って答えられた。<br>「そうでしたか。まぁ、あなたには何を言ってもムダだと思いますが。お風呂は後で入りますから先にどうぞ。僕は仕事がありますしシャワルームで済ませますから。」<br>ウィスキーのロックを飲み干しグラスをキッチンのカウンターへ置き部屋に向かった。浩也が見えなくなるまで笑顔でいた絵理花は姿が見えなくなり部屋に入った音を聞いた後、席に着き素手で鴨のパストラミを何枚かつまみ口の中へ放り込みビールを飲み干した。<br>ごぐ、ごぐ、ごぐ、ごぐ、ごきゅ。と音を鳴らした。<br><br><br>「・・・むかつく」<br><br>手に持っていたグラスを口から離しテーブルに戻すことなくて壁に勢い良く投げつけた。ガシャンだのパリンだの破壊された音が聞こえたが気持ちは収まらない。手で口元を拭いグラスが割れた壁まで歩いた。その場でしばらくそのグラスを見つめてスリッパを履いた左足で踏んづけた。メキメキ・・・とまた破壊の音が足裏から頭の先まで伝わりぞくぞくした。やっと体は欲しかった快感を手に入れた。絶頂まではいかないがあの人に愛撫をされたような気分になった。今日だって何度あの人の上や下で絶頂を味わった事だろうか。ほんの数時間前まではあの人が中に入っていたのにまた入れて欲しくて堪らなくなった。じんわり濡れた気がした。<br>気持ちを抑えながらテーブルに置いてあったタバコと携帯電話に手を伸ばした。スリッパのままデッキへ出た。あの人に貰ったライターで火を点け煙を深く吸い深く吐いた。口に咥えながら左手で携帯をいじり通話ボタンを押した。<br>「もしもし？あたし。今日はありがとう。ーうん、そう。まだ帰ってきてないわ。それでね今日言ってたあの話しお願いできないかしら？アレは今でもN.Yよね？費用は出すからこっちに戻してちょうだい。手段は構わないわ。え？いいわよ！別に！！<br>ーえ、やってくれるの？ありがとう！！あなたのそういう所が好きよ！！じゃあまた何かあったらいつでも連絡ちょうだい。じゃあね！！」<br>絵理花はまた深く煙りを吸い吐き出した。<br><br><br><br>同じ頃浩也は自宅のパソコンを立ち上げクラウドを開いていた。消せなかった写真をスライドショーで流していたがベッドに横になり目を閉じていた。ブブブ・・・・。とスマートフォンが響いてベッド脇の棚に手を伸ばした。<br>「ーはい、君か。大丈夫だ。仕事してた所だ。用件は？<br>ーうん、うん・・・。あぁ、6月の事か。明日には概要を知らせることができるさ。大きな準備はない。皆にもそう知らせておけ。ーは？そんな奴いたか？聞いたことなんてないが誰だそれは？・・・ふぅん。念には念をって事か。別に構わない。こっちにリスクはない。期待してるさ。そいつの働きを。」<br>会話を終えてスマートフォンを手から放り投げた。ゴトンと床に落ちた音が響いた。<br>「理乃。俺がどんな状況でもお前をを好きでいたら今、幸せだっただろうか？何故急にいなくなってしまったんだ？理乃。」<br><br>浩也は淡く楽しく、そしてせつなく閉じた過去の思い出に出会いにいくかのようにそのまま目を閉じた。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038326.html</link>
<pubDate>Fri, 26 Sep 2014 13:46:26 +0900</pubDate>
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<title>罪滅ぼし</title>
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<![CDATA[ 5月8日 12:23<br><br>都内の煌びやかで高級感が溢れる外資系ホテルのカフェラウンジに松本絵理花は一人で<br>ブラックコーヒーを飲んでいた。外の景色が見える窓側、3階なのでいい景色。と、まではいかないが読みふけっている小説から一息つく為に見る景色としては、まぁまぁ上出来だった。<br>今日は銀座までいつものハイヤーで送ってもらいアンティークショップで再来週に行なわれるパーティ用のブローチを探した。イメージに沸くようなものは見つからなかった為その足で老舗百貨店へ向かった。食品売り場で幾つか品物を買い、流しのタクシーを拾いここまでやって来た。<br>読みかけのミステリー小説にしおりを挟み本を閉じた。温くなってしまったコーヒーに口をつけて周りを見渡した。お昼時ということもあり食事をとっている人、食後のコーヒーを飲んでいる人・はたまたノートパソコンやタブレットを開いてネットをしたりキーボードを叩いていたりする人。商談をしている人など様々だった。私の主人もこんな風に仕事しているのかしら・・・？なんて思いはこれからひとつもなかった。これから起こる出来事を考えれば今、一番思い出したくもない人間だった。<br><br><br><br><br>和也に出会ったのは先程までいた銀座にあったいわゆる浮遊層専門の有名クラブだった。そこまでに辿り着くには絵理花には険しい道のりがありすぎた。<br><br><br>絵理花は父親を知らない。母も父親は知らないと言った。スナックで働いていた時の客と次々に体の関係を持っていたからだ。妊娠にも気づかずあびるように酒を飲んでいて朝まで路上で寝ていたこともしばしあった。ある朝体調不良を起こし救急車で運ばれてそのまま私を産んだと聞いた。出産後は1歳になるまで実家で子育てをしたが就職の面接に行くといって祖父母に預けたまま音信不通になった。祖父母は絵理花を愛情たっぷりに育てあげた。そして5歳になった時に母は戻ってきた。母は失った時間を取り戻すように一緒に食事をとり、お風呂に入り、スーパーへ行き休日には外食をし遊園地や旅行へ連れて行ってくれた。仕事も順調だと話してくれおもちゃも沢山買ってくれた。ピンクのランドセルも買ってくれた。3月になり卒園し母は一泊2日の温泉旅行へ連れて行ってくれた。その夜、部屋でお酒を飲みながら母はポツリと小さな声で言葉を発した。<br>ー冷たく捨て切れないから結局私は選ばれないのよねー<br>水滴が付いたグラスを飲み干し一筋の涙を流して私の方を向いて笑った。一緒の布団に入り私を寝かしつけた。<br>翌朝太陽の光で目を開けた時に母は一枚のメモを残し、またいなくなってしまった。入学式も運動会も授業参観も祖父母が来たが3年生になり交通事故にあって私だけが生き残ってしまった。身寄りもなく施設に入った。祖父母を亡くした現実を受け入れられず周りと関わるのは止めた。構ってくる時は誰だろうと当たり散らした。学校で新しい服や可愛いペンを持ってくる子達にバカにされ貧しさを憎んだ。口じゃ勝てなかったので物を隠したり体育の時間にこっそり抜け出してハサミで洋服を切ったりした。そんな事を繰り返しているウチに学校にも施設にもバレた。学校や施設がウザかったから次は万引きを始めた。お菓子や文房具から始まりヘアアクセサリーや化粧品に移った頃には中学へ入学した。髪を染めマニキュアを塗り化粧も始めた。施設からもらうおこずかいじゃ足りなくて仲間と一緒にカツアゲもした。施設は何も言ってこなかった。その頃に何度か母と会いご飯を食べたが合う度に違う男を連れていた。服装も派手だし化粧も濃かった。ある日連れてきた男にしつこく誘われて断った。母がそそのかした！と言い放ちそれから母には会っていない。<br>定時制の高校に嫌々通う事になり昼間はバイトを入れた。1・2ヶ月くらい通い行かなくなって退学になった。里親にも勿論巡り会えず施設と口論になり夜中に抜け出した。友達の家を転々とし神待ちサイトで処女を売り、また神待ちサイトで身体を売りまくった。しばらくしてサイトで知り合ったフリーターの家に転がりこんでからウリは止めた。3ヶ月くらいして生理が来ないのに気づき妊娠した。お互い身寄りがなかったから私は16歳でデキ婚した。しかし、彼はバイトを続けて好きな事をしていた。そんな状態になりケンカ。手を出されてお腹を蹴られ赤ちゃんは流産。17歳で離婚した。<br>家が無くなった私はネットカフェで寝泊まりしながら以前の様に神待ちサイトを漁った。その中の一人がアッチ系の人間だった。17歳でも働けるソープを紹介してくれてそこで働き始めた。ワンルームながら部屋もあった。20歳になってすぐ元締めからキャバを紹介されて歌舞伎町で働き始めた。枕は封印し1年半で1位まで上り詰めた。天狗になっていた頃、元キャバ嬢の先輩から銀座をそそのかされあっさり辞めてホステスに移った。<br>最初は直ぐ店には出させてもらえなかった。来るお客様がハイスペックの為に話題についていけないだろうと判断された為だ。そこから必死に勉強し新聞を読みメイクも変えた。給料はソープ時代の1/8まで下がった。高級マンションからオートロックも無いワンルームへ戻った。指名も貰えずヘルプばかりについた。その時にあの人に出会った。No.2の小百合さんの太客。彼はお得意先の接待でお気に入りの店だと言われ連れて来られ一生懸命ヨイショをしてお酒を飲んでいたのを覚えている。飲みっぷりが好まれ商談が成立した。それから付き添いではあるが度々表れて私は毎回ヘルプに付いた。締め日には一人で現れた事もあった。小百合さんがテーブルに着けない時は私が一人で相手をした。忙しくて来れない太客の為に札束を持たされた、と話していた。実はお酒が得意じゃないと打ち明けてくれてからは内緒で水8割お酒2割の水割りを作った。そのうち私は彼から指名を受けた。そして数ヶ月が過ぎ小百合さんは寿退職した。太客も彼もパタリと来なくなった。私は何人かの方に指名をもらっていたので幸い生き抜いていけた。<br>和也と始めて話をしたのはその頃、銀座の老舗百貨店で新しく買ったドレスに合うミュールを選んでいた所だった。太客の息子として店によく2人と他にいつも違う人を引き連れ来店していた。たまにヘルプとして席に着いていたからお互い何と無くは知っていた。だが、太客はママのスポンサーだと知ったのは結婚してから随分経った頃だったろうか。<br>和也とは軽い挨拶と世間話で終わると思った。だか、何を買いに来たのか、何処に住んでいるのか、食事はどうか？と、しつこく訪ねて来た。当時はNo.1のひとみさんに熱を上げていたので私はやんわりとお断りした。姉様形、ましてやNo.1のひとみさんの顧客に手を出すというそんな恐ろしい事は出来なかった。そんな事をまったく無視し和也はずけずけ入り込んで来た。それは直ぐに店じゅうに広まり尾ひれに背ビレまで付けてお客様の耳にまで入ってしまった。指名変えという行為も行われた。それに幾つになってもオンナのイジメはタチが悪かった。銀座に居るのだから仕方のない事だったが。<br>そんな満身創痍になってたあの日にあの人と再会した。お互い嬉しさがこみ上げ直ぐに食事に行ったのは言うまでもなかった。店から遠ざかっていたのは起業していたと聞いた。お互いの無くした時間を一つずつはめているように私達は語り合いそして結ばれた。ホステスと客として始まった2人はひとつになった、なれた。彼に抱かれた夜、既婚者で5歳の子供がいることを知らされた。それでも構わないと伝えた。<br>私はやっと愛し愛される喜びを、女としての幸せを知った。プライベートが充実すると不思議と仕事も上手くいった。つまらない噂は真正面から清くお客様と接する事で潰していき誤解を解いた。地道にやったおかげでNo.5までのし上がった。<br>忘れていた頃和也からHWGの対象者に指名された。なぜ数回しか話した事のない自分を指名したのか訪ねた。あの人は若くて綺麗でスタイルが良かったから公けの場に妻として連れて歩きたかった。始めて会った時から一目惚れだったと証した。跡継ぎを作るだけの・・・綺麗なお飾りにするなら自分の好みの方が良いと。<br>彼が語る愛とは違う愛だった。愛す事が出来ない愛を愛と呼ぶのだろうか？私は呼べないと思った。だから私は逃げる事を決めた。愛の為に<br>鬼ごっこが始まる前は男女間のトラブルなどが起きないよう行動の制限に加え電話やメールのチェックも入った。元々メールや着信履歴は消していたし名前も別名で登録をしておいた。ヒヤヒヤしていたが彼も状況を察知したのだろうか？連絡を一切寄越さなかった。そんな日々を過ごしていたら彼に金で買収されたHWG関係者から密かに手紙を貰った。内容は手引きをするから会おうという事だった。当然二つ返事で受けた。翌日見張りの目を掻い潜り遠く離れた町のホテルで彼に会えた。あの時よりも会えた時が嬉しくて、愛しくて、心も体も彼と混じり合って深く、深く、深く、強く、強く、繋がり続けた。何度も何度も抱かれ絶頂を迎えても体も心も火照りを知らない。頭の先から足の指まで彼の汗を、匂いを、体温を、身体を、存在をまとわりつけた。ここで死んでもいいと思えたのは後にも先にもこの時だけだ。<br>散々愛を貪りあった私達は時間の制約を忘れていたー。<br><br><br><br><br>幼い頃を思い出したのはいつぶりだったろうか？<br>絵理花は外に向けていた視線を左手薬指の指輪に持っていきじっと見つめた。<br>和也には何も感じないが子供達に恵まれた事は幸せだった。値段も気にせず高級ブランド品を買い、高級レストランで食事をし、海外旅行にも数え切れないないくらい行った。勿論専業主婦。家事はお手伝いさんがやってくれてさらには運転手までいる。子供たちも皆、習い事を幾つかさせて英才教育を施し有名私立幼稚園に入れ大学院まで出した。留学もさせた。大手企業や国家公務員一種に就職した。ママ友も出来て優雅にお昼からワインを開けながらランチしたり、週末には家族で集まりホームパーティやバーベキューなどを沢山した。幼い頃と比べてお金に不自由なくやっている。誰もが羨む世界を私は知っている。<br>でも、これは私の罪の証し。「死」がふたりを分かつまで決して離れる事を許されない約束。だから私は罪滅ぼしをするの。罪を冒した事で迷惑をかけた「人」に対して。ずっと、ずぅーっとやってきた事。密やかに・・・穏やかに・・・時に激しく・・・時にせつなく・・・。<br>シンプルなネイルアートが施された指先でこの世で一番うっとおしい存在な指輪を大切に優しく撫で軽くキスをした。その指でカップの取っ手を掴み数口コーヒーを飲みソーサーに戻した。絵理花は優越感を感じ密かに微笑んだ。<br>バッグの中のから振動が伝わった。メールの内容を確認し速やかに会計をし、ラウンジを後にした。大理石のフロアにヒールの音を甲高く響かせ、金色の手すりは使わず赤い絨毯張りの階段を3階から4階まで昇りエレベーターホールへ向かった。ボタンを押して扉が開いた。幸い誰も居なく乗り込む人はいなかった。少し乱れた髪を手ぐしで整え、鏡で化粧の乱れがないかチェックした。自然と隠しきれない笑みがこぼれる。自分はいつまで彼に恋をしているようだ。もうお互いの気持ちは十二分に分かっているのに初恋のような甘酸っぱい気持ちがジンジン混み上げてくる。いつまでもオンナで居られる幸せを感じる。<br>目的の階に着いて部屋を探し当て扉の前に立った。辺りを見回し人の気配がないのを一応確認し軽く握りしめた右手でノックする。直ぐにドアが開き隙間から手が伸びてきて絵理花の右腕を引っ張りゆっくり中へ引きずり込んだ。部屋の中まで進みテーブルに荷物を乱暴に置き、手を彼の背中に回し久し振りの温もりを感じた。幾つもキスを交わした後どちからともなく自然に光が差し込まないベッドルームに入り真っ白いシーツと枕が並び、落ち着いた色で施されたストライプ柄のカバーが掛けてあるクイーンサイズのベッドへと倒れこんだ。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038324.html</link>
<pubDate>Sun, 07 Sep 2014 15:52:46 +0900</pubDate>
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<title>輝きを放つ『・・・』</title>
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<![CDATA[ 4月28日  17:37<br>急に耳から音を拾った。すぐに脳に届いた気がして意識がもどった。まだ目は空かない。<br>耳をすまして周りの音を聞く。自分が置かれている状況を考える。車の音は聞こえるけど空気の流れが感じない。手や顔にあたるふわりとした風。おそらく外ではないようだ。<br>ー室内？パタパタという音、キィキィという音、カラカラという音、時折聞こえるキシキシという音。それに交じる静かな呼吸。かすかに臭う鼻を刺す独特な臭い。柔らかいく硬いものに全身を支えられている感覚。そして左手の痛み。間違いない。ここは病院だ。攻撃体制に入っていた体を緩め目をやっとのことで開いた。<br>安心し少しもぞっ。と動いたら直ぐに黒服の女が近づいて来た。<br>「ー春海さん？良かった！<br>ここは病院よ。私はBMの関係者。今、ドクター呼びますね。」<br>おそらく長い髪をきっちり纏めた女がベッド脇にあったナースコールを押した。<br>直ぐに医師とナースが部屋に来た。しっかりとボディーチエックを受け速やかに春海を診察した。医師はナースと女に目配せをし頷いた。<br>「襲われた傷も打撲が多く骨などに異常はありません。この点滴が終わったならお帰り頂いて大丈夫です。お大事になさって下さい。」<br>医師は穏やかに話しナースと共に部屋を出た。<br>「ー終わった後に直ぐ気絶したのよ。覚えて無いでしょうけど。」<br>トイレから脱出した事は覚えていたがそこからは覚えていなかった。が、忘れていなかったことがあった。<br>「HWGの結果は！？アキはどうなったの！？」<br>「カフェの店長に薬物を打たれまだ意識が朦朧としてます。命に別条はありません。ただ、4・5日の入院は必要かと。<br>HWGについては勝利しました。あの状況にも関わらずよく耐えたと代表も喜んでいました。」<br>「・・・そう。勝ったの、私・・・・。」<br>勝利した喜びとまだ続く思いが苦悩となって言葉に現れた。<br>「あなたの残りきっとある人生60年と今日からの11ヶ月を比べたらどちらの苦悩のを選ぶのかしら？BMは、代表はちょっとやそっとの事じゃ対象者なんて助けないって話しあなたも知っているでしょう？そして今日あなたが逃げられたのはBMの力とあなた自身の力です。もう少し自分を大切にしてあげたらどうかな。」<br>物腰は柔らかく真が一本通った黒服の女は立ち上がりドアに手をかけた。<br>「私はボディーガードという職業柄自分を大切にしてるわ。自分がやられたら対象者を守れないから」<br>背を向けて話しドアを開け振り返った。<br>「売店に行って飲み物買って来るわ。ドアの前に見張りかわいるから安心して。」<br>パタンと音がしてドアがしまりカツカツという足音が通り下がっていった。春海はゆっくり目を閉じた。意識は徐々に深く深く落ちていった。<br><br>しばらくして「・・・？！」という微かな声が聞こえたような気がした。はっと意識を取り戻し目を開けたが一瞬動作が遅れた。その間に数人の黒服が入って来た。ボディーガードの女の黒服とはまた違う。ナースコールは宙に浮きゴツゴツした手で口を塞がれて両足を抑えられた。目の前には鈍く輝くナイフが現れた。<br>「命を奪う気はない。念のために手足は縛らせてもらうよ。口も少しチャックだね」<br>素早く革紐ようなものできつく両手足がベッドに結ばれ、ガムテープに口を塞がれた。<br>知らない人ではなかった。むしろ良く知っている人物だった。<br>「HWG、1回目の勝利おめでとう。思わぬ伏兵もいたけど君の逃げっぷりはすごかったよ。」<br>黒いニット帽を被り大きなサングラスをその頭にかけ、エナメル素材の上下のジャージを着込みながら白い歯を剥き出しにしてガチガチ言わせ殺気立つ狂気の笑顔を向けながら春海の上に馬乗りになりながら浩也は言い放った。<br>春海は無表情のままだった。<br>「抵抗しないの？少しは怖がれよ！！」<br>軽く春海は体を揺すった。<br>「なんじゃそら？叫ぶなよ」<br>両手でつかんでいたナイフを左手に持ち替え皮のグローブを歯で挟みながら引き抜き素手になった右手でガムテープを勢い良く引き剥がした。<br>「痛いか？」<br>「当たり前じゃない。それくらい分からないの？あなたSなんじゃないの？」<br>浩也ではない固い手が即座に春海の頬を平手打ちした。<br>「ーそういうプレイがしたいなら他でやってくれない？私Mじゃないのよね・・・。」<br>もう一度平手打ちを喰らった。春海は口の中を切った。血液と唾液が混じったものを平手打ちをお見舞いした男の顔面を目掛け吐きつけ、頬に見事命中した。男は左手で拭い大きな舌打ちをして平手を拳に変えて構えた。それより早く和也が手下に合図を配りその内の一人が腹に拳を喰らわせた。<br>「止めろ。こっから外すぞ！！」<br>空気が痺れるほどの怒号で浩也が一喝し男はヨロヨロと静かに部屋を出た。<br>「ーねぇ。殴られてもナイフ目の前に出されても一言も叫ばなかった。手足の拘束を解いて。出なきゃこの事BMを通じて世間に公表する。あなたの会社は益々傾くわよ！」<br>「いいねぇ。血が騒ぐよ。でもダメだ。春海を捕まえられなかった事で僕はかなり興奮しているんだ。脅しとか、ナイフを突きつけるとかいつも誰かにやらせていたからね。」<br>早口で捲し立ておかしな感じだった掛け布団を捲りあげ床に落とした。先程の拘束の際に抵抗した時のものか、少しはだけた病院着を着ていた春海が露わになった。元に戻そうにも無理な状況だった。<br>和也は春海の髪を撫でながら穏やかに語り始めた。<br>「いつも僕から君にキスをしていたね・・・君からは一度も無かった。」<br>その手は頭から唇へ、頬へ、顎へ、首筋へ、鎖骨へ、そして重なり合っている境目の近くへ辿り着いた。<br>「キスを。キスをしたら反則。今ならBMの人間は私しかいない。ここで止めるなら私は何も言わないわ！」<br>浩也の手は境目から全く動こうともしない。それどころか指を1、2本境目の下に潜らせてきた。<br>さすがの春海も事の次第に先程の冷静さを欠いた。首筋から汗が湧き出す。目が泳ぐ。和也は見逃さなかった。<br>「慌てちゃってるね。僕が『何を』しようとしてるか分かっちゃった？」<br>じゅるりと舌を春海の首筋に這わせた。<br>「やっぱりおいちい 」<br>右手で垂れたよだれを拭った。<br>春海は全身に鳥肌がたった。<br><br>ー気持ち悪いー<br><br>HWGに一度勝利をしてもこんな思いをするのか。私にとっては自分が生きるであろう60年より今日からの11ヶ月の方が何より長く地獄だとすらしか思えなくなった。<br>正面を向いていた顔を背け身体中の力を抜いた。<br>「もう好きにしてよ。ヤりたいなら犯っていいよ。嫁にしたきゃすればいい。」<br>和也はナイフで両手足を拘束していた革紐を切り離した。病院着の蝶々結びのぶふも切った。手下にナイフを渡しまた春海の顔面近くに構えた。左手のグローブを外し床へ投げ捨て病院着の重なり合ったぶぶんを勢いよく左右へ開いた。所々青い痣はあるがしっとり汗をかいた白い肌が露わになった。胸から下の部分を浩也は舌を這わせ時々じゅるじゅると吸い付きながら下がっていった。パンツの部分には振れず通り越し太ももを撫で回しまた舌をぐるぐる這わせた。浩也は手下にナイフをしまうよう目配せで支持をした。<br>苦悶の表情を見せている事に気付いた浩也は体を戻し春海の顎を掴んで顔を正面に戻した。<br>「じゃあまずHWGを終わらせようか。ルールは分かってるよね？春海からキスをするんだ。続きはそれからにしよう。呆れるくらい愛してやるよ。虜にしてやる。気絶するまで抱いてやる・・・」<br>春海の顔と浩也の顔は拳2つ分程の近さまで縮まった。お互いの荒い呼吸が顔にかかる。<br>「私からしないとダメ・・・かしら？鬼ごっこは・・・鬼に捕まる事で・・・ゲームオーバーに・・・なるのよ？私のキスが欲しいなら後で幾らでも・・・あげるわ・・・」<br>「やっぱり春海は可愛いよ、可愛いよ・・・僕がしてあげる・・・」<br>「・・・うん。ねぇ。恥ずかしいから目閉じて？ね？」<br>春海は目を閉じた。<br>「あぁ・・・春海ぃ、あぁ・・・あぁ・・・春海ぃ」<br>浩也は自身の右手と春海の左手を強く絡めながらゆっくりと顔を埋めた。<br><br>春海は更に左手を強く握り締めた。右手は枕の下に伸ばし右膝を無防備な浩也のわき腹<br>に当て自分の体は左に重心を移動させベッドの右側へふたりで滑り落ちた。<br>当然絡み合ってた手は離れ離れになりその隙を見逃さず左肘を突き出し浩也の首へ絡ませ自分の方へ引き寄せた。首には浩也の物とは違い眩しい輝きを放つ長さ10センチのナイフを突きつけた。<br><br>「危なかったぁ！！もうちょっとでキスしそうになっちゃったよぉ！！」<br>「何するっ・・・！？離せっ！」<br>「離す訳ないでしょ！！」<br>明るくいいながら肘を少し締めた。<br>「気持ちいい？これが好みなんでしょ？もしかしてイっちゃった？このドMが！！」<br>またギュギュっと締めた。<br>「殺る気か！？浩也さんを離せ！」<br>手下達が怒鳴りつけながらナイフをかざして近づいてきた。<br>「殺らないわよ。気絶くらいでやめてあげる。私はね、あんた達のナイフをしまって欲しかったのよ。そうして欲しかったから胸を触るくらい、身体中舐めまわされる覚悟なんかとっくにしていたわ。予想通り動いてくれて感謝するわ！！でもそれ以上近づかないで。このナイフの持ち手に紐が付いてるでしょ？これを引いたら直ぐに爆発するわよ。みーんな木っ端微塵！ゲームオーバーよ！！」<br>「下ろ・・・せ、ナイ・・・フを下・・・ろせ」<br>虫が鳴くような声で囁きながら僅かながら右手を動かしていた。<br>「繰り返し言うけど、殺す気はないの。私はただ、あなた達に帰ってもらいたいだけ。覚悟を決めてもこの格好のままいたくもない。やり合う時は次のHWGでいいはずよ？」<br>言い終えた瞬間、腕に重みを感じた。どうやら浩也が気絶したようだ。ナイフを手から離し床に起き、春海の左肘をゆっくり下につけながら床に寝かせるようにした。<br>浩也に背を向け深く一息ついた。<br><br><br><br>「ーそれで終わったつもりかい？」<br>おぞましい声がした。<br>床に置いてあるナイフを素早く部屋の隅まで蹴り飛ばし左手であっさり春海を背中から押し倒した。びたん！という音と同時にまた馬乗りになった。<br>「イチ企業の跡取りだからその類はどうしたら空いてをねじ伏せられるか？、の要領くらいわかるさ。物心ついた時から訓練されてるんだぜ。」<br>うつ伏せで倒された春海の病院着を腰まで上げてブラのホックを外した。上半身を密着させお尻を触りながら<br>「このまま後ろから犯ってあげようか？」<br>と笑った。浩也は腰を浮かし春海を仰向けにした。自ずと手下達が手を押さえつけてきた。誰かがスマホで動画や写真を取り始めた。<br>「嫌ーーーーーーーーーッ！何するの？やだっ！！止めて！止めてよ！離してよ！」<br>身体に纏わり付いてたブラが緩みだし下乳が見えた。浩也も直ぐに気づきニヤニヤしながらブラを右手でめくりピンクの乳首、丸くて日焼けのしていない形の良いの乳房が露わになった。<br>「あっ、あっ、あっ・・・」<br>目から入ってくるはずの情報は涙が滲みまったく分からない。もしかしたら見えているのかも知れないが見たくなくて心で目を綴じてしまっているのかも知れない。ガムテープで塞がれていない口ですら恐怖で言葉が声にならない。全身もぶるぶる震えて何も出来ない。<br>「先程の威勢はどこに行っちゃったのかな。おや？怯えているね。可哀想に・・・。素直に従っていれば今とは正反対の状況にいたのに。」<br>春海は口をパクパクさせた。もう一音すら発せない。<br>「悪い子だ。本当はもっとお仕置きして焦らせてあげたいけど僕はもうパンパンなんだ・・・。ちょっと強引にヤるからね。僕が1回イったらキスしてHWG終わらせてあげるよ。それまでは対処者として逃げ回ればいいよ。このベッドの中で。」<br>春海を地獄へ突き落とす発言だった。キスしてからヤられた方がどんなにマシだったか。<br>浩也はサングラス、ニット帽、上着とTシャツを瞬時に脱いで床へ落とした。<br>「僕は相手や状況によってSやMになれるんだ。」<br>ニヤッと笑い乳房へむしゃぶりついた。卑猥な音が部屋中に響いた。春海の顔の左右にはナイフが輝いた。浩也の火照った体を感じた。荒い息遣いが混じるようになった。そしてついに浩也の右手が春海のパンティにかけられた。乳房を必要以上にむしゃぶりながら左手でこねくり回しながら顔を春海に向けた。<br>春海はただただ天井を見つめていた。<br><br><br><br>・・・・・・カツン・・・<br><br><br><br><br>春海は音がしたのを聞き逃さなかった。 身動きひとつせず、脳で音を感じ取った。<br>春海の目に生気が戻ってきたのを浩也は見逃さなかった。<br>「さっきとは目が違うね。陥落して諦めて・・・楽しもうって言う考えになったのかな？良い傾向だ」<br>自分がイク事で頭も体もいっぱいの浩也に春海の真意は伝わらずに済んだ。<br>春海は心の中でカウントダウンを始めた。<br><br><br><br>・・・3・2・1・0！！！！<br><br><br><br><br>静かに病室のドアが開き『あの時』ー教会のチャペルで行われたー の様に黒い小さな弾が部屋の中へ転がってきた。<br><br>パン、パン、パパン、パン、パン、パン・・・・・・！！<br><br>乾いた音が止めどなく響き目を開けられないくらい強い閃光が部屋中を覆った。春海を始め浩也、手下達はその場からまったく動けなくなった。<br>しばらくし、音も光も消え目が開けられる頃にはボディガードの女を含め3人がいて1人が銃を浩也に。他の2人は手下達に銃を向けていた。3人共両手に銃を構えていた。<br>春海には黒いジャケットが掛けられていた。<br>「お楽しみの所悪いんだけど我が社のクライアントに手を出さないで貰えますか？これ以上危害を加えるなら引き金を弾く！！」<br>あと数センチ手前に弾けば今にも弾丸が飛び出しそうな勢いだった。<br>「この状況はあそこのカメラに映っています。直ぐに政府、ネット上に配信できる準備は出来てます。私達は大事にしたくありません。どうかお帰り下さい。」<br>「恐ろしい考えだな。僕が動けば死にゆく体と同じく春海の裸体を世界中に晒す可能性すらあるのに。」<br>上半身を起こしベッドから下りた。<br>「しょうがない。萎えたから帰るよ。今日の所は。」<br>頭を掻きながら床に落とした上着やサングラスを拾い上げ歩き出した。が、立ち止まり振り向いた。<br>「春海の荒い息遣い、白い肌、形の良い胸。全部が可愛かったし身体は甘くて美味しかった。あれは全部僕のものだよ。」<br>春海へ駆け寄り首筋を強く吸った。罪人のマークのような赤い跡が残った。それがキスマークだと脳が分かるのにはそこからさらに2、3秒かかった。刺激を受けた脳が反撃をするのは目にも留まらぬ速さだった。何も考えず赴くまま手の甲で浩也の左手頬を叩いた。ナイフ持っていた手下の<br>1人が春海に襲いかかった。<br>スパッ！と鋭い音がした。<br>「・・・どうか穏便に願います」<br>浩也の正面には春海を守ったあのボディガードが切られたまとめ髪を乱しながら機械のように言葉を発した。<br>「痛かったけど気持ち良かったよ。首筋も美味しかった。しばらくは跡が消えないんだから満足したさ。ーあぁ。君は髪を切られたのか？教育がなっていなかったようだ。すまなかった。」<br>浩也は軽く一礼した。写真や動画はボディガードが確認している目の前で消去させた。手下を引き連れぞろぞろと病室を出た。<br>足音が消え去ったのを確認しボディガード達は銃をしまった。髪を切られたボディガードは小刻みに震えている春海を優しく抱きしめた。<br>「直ぐに帰って来れずに申し訳ありませんでした。外の見張りの人間も一発で急所を狙われていたので侵入を防げませんでした。」<br>「あ、あっ、あ・・・」<br>「何もお答えしなくて大丈夫です。もうここを出ましょう。都内のホテルへ行きましょう。側近は女性の警備で固めます。」<br>優しく答えて揉み合いにより点滴が抜けてしまい血が流れていた左手の止血を始めた。<br><br><br><br>「ちっ！せっかくイイ所だったのによぉ！！動画をオカズに出来たのに！」<br>「オカズ無くてもできるわ。目に焼き付いて離れねぇ。」<br>「ホントだよ！オレの頭の中じゃあのオンナ今頃ヒィヒィ言ってる所だよ！」<br>「オマエ何だよそれ！？でも、マジで超ヤバかった～！出そうだったわ！」<br>「浩也さぁん、またヤリましょうね！その時は俺らにも分けささせて下さいよ！」<br>「カネもオンナも好きなだけあげるさ。仕事を全うしてくれたらな。」<br>手下から歓声や拍手が漏れ出した。浩也は春海の身体の味を思い出し口の中が唾液で溢れた。<br><br><br>『そんなにガッツかなくてもいよ？ねぇ、浩ちゃん、優しくして？私を見てもっと感じさせて・・・』<br>浩也の脳内が急に過去の会話を再生させた。驚き立ち止まった。<br>「浩也さん？」<br>「・・・あぁ。すまなかった。何でもない。」<br>直ぐに現実に引き戻された。一体なぜこのタイミングで思い出したのか浩也には分からなかった。右手をポケットに突っ込みしまっておいたスマートフォンを強く握りしめた。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038323.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Aug 2014 02:48:25 +0900</pubDate>
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<title>物事の本質</title>
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<![CDATA[ 4月28日  15:32<br>新宿駅から徒歩5分のオフィスビルー丸々1棟がいずみの派遣会社のものだった。5年前に建てられたが、清掃などが行き届いていることもあってとてもきれいだった。この15階建ての最上階に社長室はあった。ビル全体は中からは景色が見れるが外からは見れない窓の作りにした。【万が一】に備えてだった。<br>今日のHWGは社内で他の関係者らと現場から送られてくる映像や情報などを共有しながら特別指示は出さずに見守っていた。自分がいなくとも回せるようになってもらいたいが為にだった。<br>予定の時刻通りに終了し、わっ！と言った喜びの声があふれた。<br>終了後はすみやかに社長室へ戻り仕事を再開させた。社員達も持ち場へ戻った。<br><br><br><br>いずみが居る静かな部屋に内線が響いたのは15時半を少し過ぎた時だった。<br>「社長。本日の報告書を統括部から頂きましたのでそちらへ持っていきます」<br>秘書からだった。30秒も経たずにやってきて一つに纏められた厚みのある書類を手渡した。<br>「ありがとう。本日出勤された人は代休を必ず取るように各部長へ支持を。休日手当ても2割増しにしますー、と。」<br>伝えながらいずみは秘書をソファに座るよう促しお茶を入れに向かった秘書を手で制止しながら自分でお茶を入れに向かった。<br>「かしこまりました。」<br>黒い革張りのフカフカのソファに秘書は腰掛けた。<br>棚から白いカップを出しゴールドのアルミ缶からパラパラと茶葉をティーポットに移し、ポットからお湯をコポコポ音を立てて注ぎながらいずみは聞いてみた。<br>「ーあなた、今日のアレどう思う？」<br>「カフェでの一般人参加の襲撃でしょうか？別に珍しい事ではありません。前にも何度かありました。」<br>トレーにティーセットと頂いたお茶菓子を乗せて運んだ。<br>「ーはい、どうぞ。あなたも疲れたでしょ？」<br>微笑みながらいずみは秘書が好きなレモンの入ったティーカップを目の前に置いて向かいのソファーに腰をかけ、続けて口を開いた。<br>「確かに何度かあったわね。さっき警察官のイヌから連絡がはいって、襲撃した老婆とカフェの店長が逮捕されたんだけど、彼らの動機は同情できるかもね。」<br>レモンティーを数口飲み尋ねた。<br>「ーどんなものですか？」<br>「老婆のご主人が病院にいるのは聞いていたわよね？そのご主人は半年ほど前になくなったそうよ。日本では治療の術がもうなかったから20年近く入退院の繰り返しだった。」<br>「日本では・・・・？世界的ならあったんですか？」<br>いずみはシュガーポットから角砂糖を1つ。ポーションミルクを2つ自分のティーカップへ落とし込み静かにティースプーンでくるっと混ぜた後スプーンをソーサーに戻し、右手でティーカップを口につけながらこくん、とうなづいた。<br>「厳密に言うと日本でも治療は出来た。ただ、自費でなら、という制約付きだけど。<br>あなた、TPPはご存知かしら？あれで農業、工業は解禁になったけど医療は結局交渉決裂になった。国民皆保険が崩れるのを恐れて。<br>ーそして農業、工業は当然崩れてそこからこの国は徐々に崩壊していった。まるで縄田で首を絞めていくかのように・・・・。政府やお役人達の政策もことごとく外れてしまった。」<br>「医療が崩壊しなかったのは良い事だったのではないでしょうか？」<br>「確かに制度は『崩壊』はしなかったわね。ただ、手に入るはずだった薬は入らなかった。あなたも知ってるはずよ。海外では普通に使われている薬がこの国では使われていない事。薬の認可に果てしない時間がかかる事を。その間に幾つもの命が消えている事を。」<br>「彼女らは遺族・・・・ですね？同じ病院で知り合ったのでしょうか？」<br>「隣同士のベッドだったそうよ。老婆のご主人が先に亡くなりその後カフェ店長のご主人が・・・・。2ヶ月前に道で偶然出会ったそうよ。<br>店長は一部自費で治療を賄っていたからかなり多額の借金をしていたそうなの。店舗も取られそうなくらいに。そこで老婆はあの話を持ち出したのよ。」<br>「2人共捕まることは恐れなかったんでしょうか？普通は尻込みしそうな事です」<br>「老婆はご主人の定年後世界一周旅行に行く予定を建てていたそうよ。教育者のご主人で、ずっと仕事、仕事の人だったみたい。カフェの店長のご主人は店長とあの店をやるのが夢だったの。だから、ご主人がいない今、お店なんかやっても意味ない。生きる意味がない。ふたり共死んでも構わないと、まで言っていたそうよ」<br>「物事にはメリット、デメリットが必ずつきものです。国民全体を守るか、個々を尊重するか。で、日本は国民全体を守ったつもりでいるんでしょうね。あの人達は自分の事しか、自分にメリットが有るか無いかでしか考えてないのに。それに踊らされて本質を見逃している事に気づいていない。TPPを決めた政府も、役人も、そして私達BMG自身も。」<br>「ー悲しいことね。」<br>秘書は飲み終えたティーカップから輪切りのレモンを指で摘み口へ運び最後まで果汁を吸い取るかのごとく吸い付いた。<br>「・・・・あはは。あなた、見た目も中身もバリッバリのキャリアウーマンなのになぜかその癖はやめなないわね。外では絶対にやらないのに！」<br>いずみは何度もこの光景を見慣れているが毎回笑いがとまらなかった。<br>「社長。ファーストキスはレモン味って話し知ってますか？」<br>吸い付いていたレモンを指で掴みながら口から離しながら尋ねた。<br>「いいえ。知らないわ。」<br>「私は薄荷の味でした。彼が薄荷キャンディー舐めてたおかげです。だからレモンをみたら吸っちゃうんです。自分でも本当に意味分からないです。意中の人に惚れてもらえないからですかね？」<br>「なかなか難しいんじゃない？上手く仕掛けていかないと」<br>「そうですね。例の海外事業部の件も上手く仕掛けていきたいのですが何か問題ありますか？」<br>「ないわよ。コンテンツは魅力だけどこのご時世日本だからという理由で買えないんでしょ？そんなのは想定内だから気にしないでやってちょうだい。」<br>「あの件は？」<br>「あれは勘のいいあなたが気づいた事。任せるわ。報告だけはきちんとちょうだい。場合によっては私も動く。」<br>「ー社長、あなたもしかして？<br>ーいいえ。なんでもありません。お茶ご馳走様でした。」<br>語尾は幕したてそそくさと席を立って社長室のドアに向かった。<br>「社長。社長のファーストキスは何味でしたか？」<br>「唾液よ。唾液。若干タバコも混じってたかな。彼、やんちゃだったしね。」<br>いずみは照れ笑いをしながら答えた。
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<link>https://ameblo.jp/panaruku/entry-12560038321.html</link>
<pubDate>Mon, 04 Aug 2014 10:31:41 +0900</pubDate>
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<title>基本を忠実にーHWG1stステージ(3)ー</title>
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<![CDATA[ 4月28日  11:01<br><br>ドン、ドン、ドンッ・・・<br>さっきからドアを叩いているがビクともしない。助けを求めているが返事はない。誰もトイレに入って来ようとしない。１分しか経っていないが誰かが来るだろうという考えは諦めることにした。ドアを叩いていたおかげで意識は元に戻った。冷静になり個室をグルグル見渡した。目に入ったのは便器、トイレットペーパー、ベージュで統一された汚物入れと掃除用のブラシ、それから・・・ドアと天上の間の隙間。頭で考えるヒマなどなく体が勝手に動いた。ベージュのような、オフホワイトのような便座のフタを閉めて両足で昇った。座り込んだような状態で襲われたので幸い足にダメージはほぼない。ほんの少しだけ勢いをつけて足とは逆に傷だらけの手をドアの上部を掴んだ。バン！と、大きな音がたち同時に少し頬をぶつけた。スニーカーを壁に押し付けるが思ったより滑った。手はもう限界を迎えていた。<br>ここで・・・終わっちゃうのかな・・・まだ何もしてないのに。悔しい、悔しい！！アイツらな思い通りになんてさせたくない！<br>走っていないが息が荒くなっていた。体が悲鳴を上げているのが1秒ごとにじわじわ身にしみるのがはっきり分かった。<br>「こっ・・・幸運の女神がいるならっ！今、現れてよ！」<br>お腹の底から出てきた思いを口にして右足がつるっ。と滑った。そこからは全てがスローモーションに思えた。<br>滑った右足が何かにあたった。そこを支点にして力をいれると嘘のように左足が壁を滑らず力を入れられた。そして右足が隙間に届き足を引っ掛けられた。後は力の支点を右足にしうかくたまま体を小さく横にスライドして支点を左足にした途端背中から床に落ちた。痛みを感じ、そこでスローモーションは終った。呼吸を忘れていたかのように、<br>・・・っ、はぁっ、はぁっ、はぁ・・・と、息が漏れた。ゆっくりと起き上がり目の前に入口が見えたがそこには向かわず背を向けた。店側もグルだろう。あのドアを開けたら私は捕まる。直感でそう感じた。反対側には身長よりも少し低い所に窓があった。これは簡単に乗り越えられるものだ。・・・分かる。あそこは絶対に開けても大丈夫。「お前ははこっちから出ろ！」と、言わんばかりに【ー呼ばれているー】<br>春海は部屋の空気を入れ替えるように簡単に窓を開け脱出した。<br>時間は11時20分。あと残り20分。もうそろそろこの辺も危ないだろう。どこに逃げればいいんだろう・・・。それより、アキは私をほっといてどこにいるのだろう・・・。<br><br>アキはテラス席ではなくカフェの店内にいた。あまりにも春海が遅すぎてトイレに行き中を確認したが誰もいなかった。それもそのはずだった。このカフェのトイレは男女共用。春海が入ったのは少し前まで使われていた女性用のトイレだった。アキが飲み物をこぼさなければ店員が春海がに飲み物をかけるなどしてトイレに向かわせようとしていた手筈が老婆と取られていた。本当のトイレは観葉植物で隠され春海を誘導した後、観葉植物をフェイクのトイレに移動させて他の客の目を誤魔化した。フェイクのトイレのドアは防音に強化。店内のBGMもいつもより音量を上げて簡易的なスピーカーもフェイクドアの近くに置き徹底的に、計画的に行った。春海が店内にいるだけで起こるパニックを避ける必要といった理由もあったが。もっとも客も一般人ではなくこのカフェの関係者で9割以上席を埋めていたが・・・・・・。<br>と、ここまでは春海のみに効いた。そして最後の仕上げはアキだった。ふたりを引き離す必要があった。春海が閉じ込められるならアキが助けるのは目に見えていた。春海の顔は全国に知れ渡っている。そして少し調べれば保護する側、BM側も分かってしまう。分からない事はHWG側の人間にある程度のお金さえ積めば簡単に情報だって手に入る。老婆はある程度お金を持っていた。景気が底辺をさまよっている時代だからこそなし得た技だった。<br>アキは店内を怪しまれないよう探したが春海の姿を見つける事は出来なかった。周りの客や店員にも聞くことは出来る訳もなく、ここはマニュアル通り対策チームに連絡、指示を仰ぐ事を決めた。左耳を抑えたが相変わらず無線は雑音が続きやはりテラスに戻るしかなかった。<br>「金曜日から新発売になりましたぁ！新茶をふんだんに使用した緑茶ラテのご試飲を行っておりまぁす おひとつどうぞ～！」<br>満面のスマイルをしながら大学生らしき可愛い女の子が小さな白いカップをアキの前に差し出してきたかと思えば無理矢理持たせるように押し付けて来た。<br>「期間限定、初夏シーズン限定のお飲み物です！緑茶ラテは初お目見え！この機会にぜひどうぞ！」<br>ホイップとシロップとソースを多めで注文した、キャラメルラテのように非常に甘ったるい声を出しながらひとつひとつを配って歩いた。仕方なくグイっ！と飲み干しながら歩いた。想像通りの味が口の中に残った。<br><br>「ご試飲ありがとうございます。どうでしたか？新発売の緑茶ラテは。お手数とは思いますがこちらに簡単にアンケートの記入お願いします。」<br>別の店員、おそらく店長らしき人物がバインダーを渡してきた。有無を言わせない態度は先ほどの女子大生と変わらない。アキは仕方なくボールペンを手にアンケートを記入し始めた。HWGのマニュアルの一つにその他大勢の周りに溶け込み当たり前にやることをやる。と、いう決まりがあった。試飲を行った周りはほとんどアンケートに記入していた。拒否する方が目立つためが故の行動だった。<br>ささっと記入を終えごちそうさまでした。と、一言添えてバインダーを店長らしき人物に返した瞬間、どこからか危ないという声が聞こえ店内は大きな音が響きアキは反射的に目をつぶった。ブワッ、と大きな風を一瞬全身に浴びてよろけそうになり、すぐ次にはいくつもの小さい風と何かがあたる感覚がした。<br>しばらくしてだいじょうぶか～？えらいこっちゃあ！という声が聞こえてきてゆっくり目を開けることができた。コテで巻いた髪が大きく乱れていたので両手で髪を整いた。そして、表れた目の前の光景にゴクリと唾を飲み込んだ。先程までふたりで座っていたテラス席はいくつかの鉄の柱によりぺしゃんこになっていた。ガラス張りの壁は時折ヒビが入り一部は割れていた。何人かは破片でケガをしたらしかった。甘ったるい声をしながら試飲を勧めていた女子大生らしき子はトレーをひっくり返し本人も腰を抜かしたらしく右手を汚れてしまった床にベチャっとつけていた。緑茶ラテはヘドロのような色になっていた。<br>「みなさん大丈夫ですか？ケガをされたお客様をどなたか手当てして下さい。それからホウキを。二次被害をさけます。店内にある割れたガラスを始末して下さい。作業中は気を緩めず、危ないと思ったら逃げて下さい。」<br>店長らしき人物は店員にテキパキと指示を出していった。<br><br>ーなんで自分はこんなに冷静に周りが見えるんだろう。あぁ、そうか・・・。こんなことになって店外には出られなくなったから・・・か。時間は？・・・今は11時25分。あと15分。15分で何が出来る？春海の状況が分からない、自分は閉じ込められている、今。何が・・・・・・ー<br><br><br>ガン！ガシャン！<br>ドン、ドン！<br><br><br>「おっ・・・お客様っ！！危ないですよ！？他の方もお下がり下さい！！危険です！」<br>「私は誰よりも先にここから出なきゃいけないの！血だらけになっても！だからほっといて！」<br>「お客様が店内にいる以上、非常時が起きた場合は私達店員に従って下さい！お願いします！」<br>そう言い放ってしっかりした体つきの男性店員は行為をやめさせようとして後ろから腰回りに抱きついてきて羽交い締めにしようとした。<br>「他の人には迷惑かけないから！離して！！」<br>「・・・・分かりました。では、ご希望通りに・・・・。<br>・・・・おやすみなさい・・・・。」<br>店長はポケットから取り出した注射器をアキの腕にプツリと刺した。<br>「な、何する・・・・の」<br>弱々しく最後の抵抗をして崩れ落ちた。<br>「店長・・・・。本当にこれでよかったんですね？」<br>意識のなくなったアキを抱えた男性店員が訪ねた。<br>「ええ。ありがとう。」<br>その言葉を聞き、男性店員はアキの耳についていたイヤフォンを抜き取り自身の黒い靴で力強く踏み潰し破壊した。<br><br><br>11:38<br>春海は数十分前に降りた西口のバスターミナル近くまで来ていた。高架下のアーケードをやはりまた、頬にバンドエイドを貼りながら。<br>カバンの中からブブブとBMから支給されていた携帯電話がなった。振動は緩やかだったが老婆に襲われた時の傷か骨に少し響いた。<br>【西口に襲撃者あり。急いで回避してください。】<br>そのまま携帯をカバンに放り込み急回転した。<br>ズキズキ痛みした痛みが全身を巡るが捕まってはいけない。アキとは離れてしまったが事前に考えられるプランの1つにありシュミレーションは済んでいた。あとは落ち着いて行動するだけだった。改札口近くにある唐揚げ屋まで来て目の前にある横断歩道を渡りファストフード店、ドーナッツ店を過ぎ見渡しの良い公園へ出た。公園の中を斜めに突っ切って小学校前まで来た。おそらく駅へ向かう人や住宅街へ向かう人が道の両端にちらほらいた。その中の集団が全員携帯電話の画面を見たり、目を外したりを繰り返していた。<br>春海はその行動を見逃さなかった。右足を半歩引きその足を軸足にし、また急転回し駆け出した。カバンの中から携帯を取り出しワンプッシュで繋がるようにしていた連絡先へ架けた。<br>「もしもし！教えられた道には一般人参加が！至急っ！至急！！」<br>「・・・・ファストフード店と公園の間の路地へ！そこまでは耐えて！」<br>「・・・・こっ、ここもダメ！一般人参加が！・・・・っ。は、走ります！」<br>携帯を耳から離して疾走した。連休を過ごす人々に散々ぶつかりながらダメだと言わた西口方面へ足は向いていた。背中には賞金首！HWG！野島だ、野島、待て！逃がすか！！と、様々な声が混ざりながら春海を追っていた。あっけにとらわれた歩行者もいれば、ピン！と、きて一緒になり追いかける者まで表れた。目立つなと言う方がおかしいのかもしれなかった。またひとり成人女性を突き飛ばした後、角のコンビニを右に曲がった。後ろの集団も続いた。そして春海は消えていた。すぐ横を猛スピードで1台のスモークを貼ったワゴン車が通り過ぎた。<br>「ちょっと手荒じゃ・・・・ないの！？」<br>春海は一気に叫んだ。<br>「躊躇はできません。彼らはもうこの車に気づいています。なので1・2分走ったら直ぐに降りてもらいます。同じナンバーを付けたダミーを走らせます。なんとかあと7分逃げて下さい。」<br>春海を押し込んだ続いて男性が答えた。<br>「・・・・正直、以前とパターンが違います。こちらも機能出来ない箇所が出てきました。姑息な事は通じないでしょう。ただ、HWGの基本は鬼ごっこ。基本を忠実に、との代表からの命令です。」<br>「あの人らしいわね。分かったわ。もういい。ここで降ろして下さい。適度に楽しんできます。」<br>そう言い放つとすぐにワゴン車は止まり同時にスライドドアが開き軽やかに春海はカバンも持たずに降車して走り出した。<br>ーもう、さっきのような失敗はしない。支えてくれる人の為に諦めない。やりたかった事まで邪魔された。この日のために基礎体力をつけた、走り込んだ、頭に地図も叩き込んだ。今はただ、走るしかない！ー<br>東公園をゴールに決めて力強く走った。<br><br><br>彼らが追ってくる様子もなく東公園手前で終了のサイレンが鳴った。耳に入った途端、春海は痛みを一気に感じて力尽きた。
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<pubDate>Thu, 19 Jun 2014 18:37:06 +0900</pubDate>
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