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<title>400kmの遠距離恋愛</title>
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<description>400kmの遠距離恋愛になるまで</description>
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<title>午前8時10分</title>
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<![CDATA[ 午前8時10分。スーツを用意する。箪笥の中のほとんどのスーツは数年前に購入したものばかりで、どれも時代遅れの代物ばかり。給料が減り、生活に余裕がないとこんなところにしわ寄せがくるから、ほとほと嫌になる。うんざりしながらもう一本タバコを吸う。<br><br>僕と彼女のブログを介して、二人の会話が始まったのはそれからだった。僕は読者になってくれた方全てのブログを読んでいたが、彼女のブログは特に念入りに読んだ。必ずと言っていいほど僕はコメントを書き込み、翌日は彼女が僕のブログに書き込んだ。そんな具合に匿名ではあるけれど公開しているある種の文通のようなものが始まった。それは僕に、フォーマルを装いながら自分を知ってもらうという複雑な芸を強いるものだった。今までは誰のために書いているわけでもなかったが、その頃から僕は彼女の顔を勝手に思い浮かべながら文章を綴った。<br>見知らぬ人を感じながらその人のために文章を書くという体験は、不思議なものだ。厳密にいうならば、結局、僕は誰のためにも書いていなかった。もはや自分のためにさえ書いていないのだろう。彼女からの連絡を待つために、僕は書きたいのではなく、誰かが僕のために言葉を投げ掛けてくれるのをじっと待つために、書いていた。彼女からのコメントを待ちわび続けた。
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007298685.html</link>
<pubDate>Wed, 21 Dec 2005 23:05:21 +0900</pubDate>
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<title>午前8時5分</title>
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<![CDATA[ 午前8時5分。歯を磨く時間はいつも5分間。口の中から歯を一本一本出して磨くというわけにはいかないが。その間、ベッドに寝転がりテレビの時計を見入る。一日で一番、テレビを熱心に見る時間だ。<br><br>アート・テイタムだけでなく、彼女はビリー・ホリデーについて、ビル・エバンスについても書いていた。村上春樹の好きな人ならジャズ好きであっても不思議ではない。村上春樹の作品には多くの音楽の話題が取り上げられる。また重要な場面場面ではかならず音楽についての話がでてくるから。ノルウェイの森を読んで以来、彼の作品には親しんできた。だから、彼女が彼の作品について書いていたことを僕はまるで誰かと話でもするかのように読んだ。<br>こうして、彼女の文章を読んでいると、どこか寂しさを包み隠すかのような気持ちが所々に見えてしまった。それは僕の錯覚かも知れないが。この人はなぜか、理由は分からないけれどどこか哀しい心を抱え込んでいるんだなと。<br>普段はとても社交的な人だろう。それは書かれている内容から、分かる。よき母親であり、よき主婦でもあるだろう。だが……。そう彼女について……。<br>後日、彼女と初めて会った時、僕の直感は当たっていた事を僕は知る事となる。<br>
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007263126.html</link>
<pubDate>Tue, 20 Dec 2005 20:30:20 +0900</pubDate>
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<title>午前8時00分</title>
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<![CDATA[ 午前8時。テレビ番組が変わった。８時という時間は一日の始まりをもっとも感じさせる。これが9時だともう完全に仕事場にいるから逃れようがない。だが、8時は……。まだひょっとして、この時間のどこかに逃げ道があるんじゃないかという、そんなありえない期待の欠片がとうとう頭の隅っこに払われる時間だ。<br><br>彼女のブログを読んで驚いた。彼女は絶対に独身であると勝手に決めつけていたのだが、ある日のブログには娘さんについて書かれていた。それは、ほほ笑ましい家族の肖像とでもいうべき光景が描かれていた。僕は失望したわけでない。が、自分がなぜそんな決めつけをしていたのか、分からなかった。いや、それは自分に毎日毎日コメントを送ってくれる人妻がいるなんて想像できなかったからだ。<br>僕は相変わらずゴッホの手紙を読んでは感想を書きなぐり、宮沢賢治を読んでは彼の人生の足跡とでもいうものを手紙から拾いだしていた。<br>そんな文章を読むのは、きっと孤独な人だと決めていたのだろう。僕は、静かに彼女の昨夜の2時に書き込まれた記事を3回読み返し、コメントを書いた。それは僕も大好きなピアニスト、アート・テイタムについて書かれたものだった。 <br><br>-------------------------------------<br>ジャズピアニストのテディ・ウィルソンは彼を評して「ゴルファーにたとえれば、クラブを振るたびにホール・イン・ワンを出す神業の持ち主」といい、ファッツ・ウォーラーは彼を「神」と呼び、デイヴ・ブルーベックは「テイタムのような天才は、モーツアルトが2度現れることがないように、2人とでてこない」と言ったと言うから彼の天才ぶりについての言辞はそれだけで言い尽くされていることだろう。<br>1910年10月13日オハイオ州に生まれるが、先天的白内障で片目が全盲で、もう片方の目は強盗に殴られるというアクシデントに見舞われ視力がかなり失われたと言うから、幼い頃からハンディキャップを背負うことになった。しかし記憶力は抜群で、絶対音感があったというから生まれながらの演奏者であった。1929年ラジオ局のハウスピアニストとしての演奏が全米に中継され評判を高めた。1935年からはシカゴのスリー・デューセズの専属ピアニストとなる。1956年のハリウッド・ボウルでは16000人もの聴衆の前で演奏したと言うから大変なものだ。1956年11月5日尿毒症で死去。享年46歳。<br>------------------------------------<br>
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007232658.html</link>
<pubDate>Mon, 19 Dec 2005 20:56:16 +0900</pubDate>
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<title>午前7時55分</title>
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<![CDATA[ 午前7時55分という時間は、僕に仕事を思い起こさせる。8時だともう仕事という気分が固まるが、その5分前はまだ眠りの時間に自分の体がいるからだ。その境が7時55分。タバコを灰皿に押し付けて火を消すと、出勤の準備が始まる。<br><br>彼女のブログを見るようになったのは、その翌日からだった。コメントを書き込んだ日に、僕は彼女の書いた過去の記事を読もうとは思わなかった。理由があったわけではないが、人と交流するために僕はブログを書き始めたわけでなかったからだろう。いや、時折、コメントをくれる人にはできるだけ丁寧にお礼を書き、その方のブログの最新の記事を念入りに読み、僕なりの感想を書き込んだ。だからといって定期的に意見をやりとりする気分には、その頃の僕はどうしてもなれなかった。<br>ただ文章でも書いていれば、気分が落ち着いたから。<br>その翌日も彼女は僕のブログにコメントを送ってくれた。<br>そしてまた次の日も。<br>そんなことが一週間ほど続いたある日、僕は彼女の書いた記事の全てを最初から読んでみようと思った。何か彼女の文章に惹かれるものがあった。それが何か僕には分からなかったし、今でも分からないけれど。 <br>
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007201407.html</link>
<pubDate>Sun, 18 Dec 2005 20:47:15 +0900</pubDate>
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<title>午前7時50分</title>
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<![CDATA[ タバコの箱を手に取り、ライターを探す。タバコを一本吸う時間は5分ほど。テレビ画面は八時から始まる番組にバトンタッチする段取りを始めている。煙を吐き、紅茶をすする。頭の中は、まだ現実に戻っていない。夢心地から目覚めてまだ10分足らず。ついさっきから復帰した現実の世界に馴染むまでまだ時間がかかりそうだ。<br><br>その書評を書いていたのも、その頃、僕があまりに退屈だったからということもあるが、一度、自分が読んできた本をこのあたりで整理したいという意味もあった。一回につき800字程度の書評をブログに書きつづるうちに、僕の書く文章を読んでくれる人が毎日増え始めた。<br>そんなことをひと月ほど続けていたある日。いつもと同じ、昼過ぎに目覚めた僕は、パソコンのパワーキーを押し自分のブログを見た。数通のコメントが来ていた。その中に君のコメントがあった。<br>「いつも楽しく読ませてもらっています……」ではじまる君のコメントは、他の人が送ってくれるコメントと特に変わったものではなかった。僕は君へ返事を書いた。<br>「毎日楽しみに読んでくれるなんて、ありがとうございます。これからも……」。当たり障りのない返信を書いたわけだ。<br>ついでに君が書いているブログを覗いてみる事にした。<br>村上春樹とジャズが好き。どんな仕事をしているか分からないが、とにかく毎日、仕事は忙しい。関西弁で書かれた文章があるから、どうやら西日本の方らしい。そんなことしか分からなかった。僕は、彼女のブログにコメントを書き込んだ。<br>「村上春樹とジャズは僕も大好きで……」。<br>
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007172501.html</link>
<pubDate>Sat, 17 Dec 2005 19:51:14 +0900</pubDate>
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<title>午前7時45分</title>
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<![CDATA[ 念入りにヒゲを剃るようになったのも一昨日から。単調なモーターの音。7時45分。テレビのスイッチを入れる。部屋が一瞬明るくなる。ちかちかとする光が部屋に反射する。お天気予報では午前中の降水確率は30％だという。単調なモーターの音。僕は君を思う。<br><br>君を知ったのは、僕があるブログに毎日書き続けていた書評にコメントをくれた時からだった。<br>その頃、僕はとある事情があり仕事を辞めざる得ない状況に追い込まれ、たったひとりきりでいた。夏の始めの頃、僕は昼過ぎに目覚め、夜が白む頃まで眠る事が出来なかった。僕は何を思っていたのか？　僕は何を考えていたのか？　今となってはどんな言葉をここに書きつづっても嘘になるだろう。ただ、その頃の僕は、人と接する事を極度に恐ろしく感じていたということだった。<br>それは今だからそんな言葉として表わす事が出来るけれど。あの頃、手や指ががたがたと震え始めるとそれを止める事ができなくなったり、何かを口に入れて数十分ほどするとそのほとんどを吐きもどてしまったりした。僕は自分の体調が悪いという事さえ分からなかった。<br><br>七年も使い続けている電動カミソリを充電器に戻し、カップに手をかける。片手でタバコの箱に手を伸ばす。<br>
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007146966.html</link>
<pubDate>Fri, 16 Dec 2005 21:25:03 +0900</pubDate>
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<title>午前7時40分</title>
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<![CDATA[ 7時40分に起きる。いつもと同じ時間だ。冷たい部屋の中。布団から出る事が億劫だ。が、テーブルの上に昨夜から置きっぱなしになっているカップにティーバックを入れ、お湯を注ぐ。カーペットの上に静かに置き、携帯で君宛のメールを書く。僕は決まって同じ言葉ばかりを君に送る。挨拶はいつだって同じほうがいいだろう。そんな理由でもあり、今日も昨日と同じ朝である事を自分自身で確認したいからだ。<br><br>この間、君に会ってから二週間。僕と君の間には400kmもの距離があり、それ以外にいくつもの壁がある。<br>距離が縮まれば解決するものでないことが僕たちの間にはある。それはお互いが分かっている。<br><br>君は昨夜も仕事から帰宅するのが遅かったね。メールをもらった時間は12時近かった。その時、僕はひとりベッドの上で腹ばいになり、本を読んでいた。こうしてひとり本を読み続けるのも、読書が好きだという理由ではなく、何もすることがないという理由からだ。<br><br>君と僕の間にある壁についてはひとつひとつ解決しなくてはならないだろう。果たして何から手を付けていいものか？　僕はそれを考えると、少しだけ混乱してしまう。この間、僕たちが出会った時にそれらの問題のひとつを話題にすると、君は俯き加減で僕から視線をそらし、その時僕の手を握っている君の手から少しだけ力が抜けたように僕は感じてしまった。<br><br>今ごろ、君はベッドの上で疲れて眠っているのだろうか？　その傍らには君のご主人がいて。
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<link>https://ameblo.jp/renblo/entry-10007123778.html</link>
<pubDate>Thu, 15 Dec 2005 23:59:17 +0900</pubDate>
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