<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>時空を繋ぐ鐘の音</title>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/risakuro9608/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>講義棟から対直線決して狭くない中庭と静まり返った図書館を過ぎる歩いているのは私ぐらいじゃなかろうかそれほどまでに誰もいないこんにちは高校の時より返す声はだいぶ増えたクラブ棟二階の端っこにて文芸部は今日も活動しています</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>part 40 幼馴染親友上司</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「ふぅっ……」<br>　パイプの煙が上がって消えた。<br>　アルバートは図書館の陰に隠れてそれを吸っていた。ロドルはまだ館内にいる。返し終わって館長と話しているはずだ。<br>　ふぅ、と息を吐くと独特な香りがする。<br>「最近、止めたけど、今だけは許せ。ジャック」<br>　独り言は、悪魔のくせに退魔術式を使う親友には届かない。<br>　元はと言えばあいつが、この煙が嫌いだからやめたのだ。一緒に住んでいた時に、文句を言われたから。さんざんコケに使いやがって今更何を言うか。悪魔め！　自分も同類だけど、あいつほど性格が悪魔な奴は他に知らない。<br>「アルバぁー！　お待たせぇ」<br>「このクソ悪魔め。……あの、その本は」<br>「これね！？　これがずっと借りたかったんだよ！　二百年ぐらい前に予約してた『魔術新論改訂版』！　本当に予約取れなくって、取れなくて、なかなか借りられなかったのが、ようやくようやく貸出し順が回ってきたんだよぉ！　もう、学術的に新論じゃないけど、ここにしか載ってない術式試してみたくってさぁ！　知り合いの研究者のみんなに聞いても、この本は異世界の扉の奥に紛れ込んでしまったのだとか狂気的なコレクターに持ち去られてしまったのだ、とか色々説が浮上していたんだけど、ついに！　ついに！　僕の手に来たんだよ！」<br>「分かった、分かったから耳元で大声出すな！　興奮しているのか！？」<br>　お前が狂気的なコレクター、その人じゃないか。<br>「僕はこの時のためだけに生きてきたと言っても過言ではないよ！」<br>「……いや、お前死んでるし」<br>「そんな事、どうでもいい！」<br>　ぴょんぴょん飛び跳ねて体全体で喜びを表現するロドルを見て、アルバートは彼の頭に手を乗せた。<br>「なんで、ポンポン頭を撫でるんだ？」<br>「……ガキだなぁって」<br>「僕、そんな年じゃない」<br>「ガキはガキだよ」<br>　訝しげに首を傾げるロドル。アルバートはその顔を見て、吹き出した。こいつはあの時から変わっちゃいない。<br>「帰るんだろ？　――……執事長」<br>「うん？　帰るけど、頭ポンポンするのやめて」<br>「ガキはガキらしく、暗くなる前に帰らなくちゃねぇ」<br>「だからポンポンするのやめてと」<br>　ロドルがそろそろイラっとした口調になったので、アルバートは彼の頭から手を離した。彼は、自分を愛玩動物のように扱うなと怒っているのだろう。<br>　アルバートは通りの向こうを見て、指をさした。<br>「俺、あそこ寄りたいな」<br>「ん？　どれどれ」<br>　ロドルがその先を見つめる。<br>「ほらあそこの」<br>「……あぁ、あそこ……って。バーじゃないか！　お酒飲むつもりか！？」<br>「いいじゃん。お前に三日も用事を付き合ったんだぞ？　少しぐらい飲も？」<br>「僕は飲まないぞ」<br>「お前もビールくらいは店で飲んでも平気だと思うんだけどぉ。本当に飲まない？　美味しいよ？」<br>「……美味しいのは知ってるけど……。あと、アルバ煙臭い。煙草やめてって言ったじゃないか」<br>「お子ちゃまはこの煙好きじゃないよなぁ」<br>「うん。煙草イヤ」<br>　首を振って嫌がるロドルを見て、アルバートはバーの方を見た。<br>　年齢制限。少しだけ考えて、ロドルのこの見た目は引っかかる年ギリギリなのではないかと。<br>　この国では十八からお酒が飲めるのだが、ロドルは十六で見た目の年は止まっている。このあたりの国では一番酒が飲める年が低いのはカポデリスである。他の国は独自のルールがあり、確かノービリスでは――。<br>「あぁー、でも今の時代だとお前の年齢って引っかかるのか？　お前は童顔だしなぁ、チビだから……いや、それでも大人がいればギリギリ飲める年か」<br>　アルバートはふうっと煙を吐く。パイプの煙は辺りに充満する。ロドルは鼻を摘んでいた。<br>「バー、行くのか？」<br>「アルバが行くなら……」<br>「よし、決定だな」<br>　こうして二人の有給休暇は幕を閉じる。ロドルが酔い潰れ、アルバートが彼をおんぶして魔王城まで帰ったのはこの後のお話。三日も魔王城を開け、ゼーレにこっぴどく怒られたのもこの後の話だ。<br>　今回はそんな二人のお話。<br>　たまの休みの、社畜の彼らのお話。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418895731.html</link>
<pubDate>Sun, 25 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 39 過去未来数百年Ⅳ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「証明証は」<br>「はい、これですね。師匠も出して」<br>　ロドルは堂々とその闇市落札の曰く付き違法取引物を役人に出す。アルバートもそそのかされ出した。<br>「確かに拝見しました。では、お気をつけて」<br>「有り難うございますー」<br>　ロドルは手を振って関所を抜けた。<br>　鉄壁の守備により、魔族の侵入を許さない。これを掲げるノービリスだが、ちょくちょくこうして関所の抜ける魔族がいることを国民は知らない。<br>「生きた心地がしない」<br>「僕が全部受け答えしたじゃんか」<br>「お前はやっぱりすごいよ」<br>「挙動不審よりも堂々としていた方が怪しまれないのは当然だろ？」<br>　ロドルがアルバートの顔を見上げた。そうだな、とアルバートは笑いかける。<br>「公爵閣下、まずはどこに行くんだ」<br>「その呼び方やめてよ。もう図書館に行ってしまおう。昼は適当に食べたいところだけど、この国の物価は高い」<br>　周りを見渡すがこの国というのは、大きい邸宅に豪華な馬車に、超高級レストランなど高そうなものばかりだ。<br>「そうだな、公爵閣下」<br>「だからその呼び方やめて」<br>　アルバートは肩を竦ませる。<br>　しばらく歩くと道が開けた。ロドルはそこを突っ切り真正面から入る。<br>「お客様、この図書館に入る時は証明証をご提示願います」<br>「あぁ、ごめんね。これを」<br>　ロドルはついに最終兵器を取り出す。<br>「公爵様でしたか！　……分かりました、お入りくださいまし」<br>「今日は本を返しに来たんだけど、館長はいる？」<br>「館長は書庫でございます。お呼びいたしましょうか？」<br>「あぁいいよ。僕が行くから」<br>「……そんな！　公爵様のお手数をおかけするわけには！」<br>「大丈夫、大丈夫。それより、本を返すんだけど館長に会うまでタイトルの表紙は見ないで運んでくれないか？　四十冊くらい、外の馬車に積んであるんだ」<br>　ロドルは事務員たちを外に出す。アルバートは少し不満げな顔でロドルに見合っている。<br>「お前、馬車ってそんなのないぞ」<br>「今のうちに入るんだよ！　書庫まで行けば、森に置いた魔法陣から本をこっちに取り寄せられる。関所をあの禁書を持って通過できるもんか！　だから森の中の空き家に置いたんだよ！」<br>　そういうことか、アルバートは理解する。ロドルはこの図書館の内装を覚えているのか、書庫まで数分で辿り着いた。書庫の開けた空間で蝋石を取り出し、床に魔法陣を描く。<br>「これでよし」<br>「へぇ。これで繋いだのか？」<br>　真っ赤な光が溢れ出しそこにあったのは四十冊の本だった。<br>「これを館長に返すだけだけど、館長はどこかなぁ」<br>「あぁ、あの爺さんか」<br>「アルバは会ったことあるよね？　僕がこれらの本を借りられるのは館長のお陰だよ。館長が……」<br>　ロドルが言うとコツコツと足音がした。真っ暗な書庫を灯りもなしに歩く影。ロドルはそれを見て声をかけた。影は振り返り、にこりと笑う。<br>「ジャックお坊っちゃま。ご機嫌麗しゅう。ようこそ、遥々お越しくださいました」<br>　上等な使用人服に身を包んだ老執事は、ロドルを見てお辞儀をした。<br>「館長も変わらないね」<br>「お坊っちゃまもお姿が変わりませんね。元気していましたか？」<br>「僕は元気だよ」<br>「お坊っちゃまがここに来たのは何年前でしたっけ？」<br>「そんなに前じゃないよ。先月も来たよ」<br>「そうでしたね。お変わりないはずです」<br>　アルバートは思う。死なないし、年を取らないアンデッド同士が、何故姿が変わらないことを話しているのか。変わらないに決まっているだろうに。<br>「私も幽霊になって早、千年あまりですねぇ。地下しか歩けないのが不便ですが、お坊っちゃまがこうして遊びにきてくれるのは嬉しいことです」<br>　足元が透けたこの地下書庫の幽霊の名を、ブライアン・アンヴィルという。フェレッティ家の執事であった彼は、生前から図書室に籠るのが好きで、死後も本に取り憑き、今でもここにいるのである。ちなみに彼が死んだのはロドルがフェレッティ家に来る以前であり、ロドルが生きている時にはもう既に死んでいた。<br>　つまり、その頃から幽霊だったのだ。</p><p>「お坊っちゃまは何の本をお返しに？」<br>「この前、借りたやつだよ」<br>「拝見致します」<br>　館長はそれを受け取り眺めた。灯りも少ないこの地下書庫で、広げられる禁書はかなり不気味である。<br>「ブライアンさん、ここって灯りとかないの？」<br>「蝋燭ならありますよ。ですが、ここは書庫です。本が燃えると困るので、お気をつけてお使いください」<br>　真っ黒で何も見えないアルバートはそう聞いた。ここにずっといるブライアンは暗闇に慣れているらしい。ロドルは目がいいので普通に見えるらしい。<br>　見えないのは自分だけ。<br>　ロドルは暗闇で目が見えないアルバートを不憫に思ったのか、こう言った。<br>「アルバ、これ持ってなよ。これなら火を使ってないし、明るいから」<br>　首にかけていたそれをロドルは渡す。それは昨日作った月光瓶だった。月光瓶は、ぼんやり光を放ち辺りを照らす。<br>「使ってもいいのか？」<br>「いいよ。でも、僕のそばから離れないで。僕が黒猫に戻っちゃう」<br>　ぱぁっと光は本を照らした。<br>　アルバートはここで初めて図書館の中を見渡した。ぎっちりと本が詰まった本棚。細かな装飾品。壁や天井に描かれた絵画や宗教画。石像、彫刻。そして、何百年も前の写本や魔導書、歴史書、召喚術書……。<br>「お坊っちゃま、まずは本を元に戻しましょう」<br>「アルバも手伝え」<br>　そう一方的に言われては従うしかない。<br>「本の場所が分からなかったら、ブライアンさんか、僕に聞け。表紙に十字架が書いてある時だけ僕を呼べ」<br>「……？　でも、俺、お前のそばから離れられないんだけど」<br>「なんでだ？」<br>　アルバートは首を傾げるロドルを唖然とした表情で見た。<br>「月光瓶がないと俺、この暗闇で動けない……、お前は確かに目が良いから見えるけど、俺は見えねぇぞ」<br>　ロドルは「あぁ！」と手を叩いた。<br>「じゃあ僕の手伝いをしてくれ。簡単なことだから、心配しなくても良い。というかむしろアルバートじゃなきゃできないかも」<br>　ロドルはそういうと二十冊分の本を指差した。アルバートは少し嫌な予感がする。<br>「……これをどうするんだ」<br>「アルバは中世恐れられた最強魔族の一つ、レヴァナントだけどぉ。一つだけ苦手なことがあるよね。僕が一つ一つ術式を試すから実験台になって？」<br>　ニコッとロドルは笑う。<br>　やっぱりこいつ、悪魔だった……。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418895397.html</link>
<pubDate>Sat, 24 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 38 過去未来数百年Ⅲ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「アルバート」<br>「なんだ？」<br>「……お前って結界の中に入れるのかな。レヴァナントだろ？　魔法系に特に嫌われてる魔族じゃないか。十字架を見られない魔族がいないわけじゃないけど、警戒はした方がいいかなって」<br>　ロドルは不意に振り返る。<br>　アルバートは少し嫌な予感がした。<br>「昔はまだ結界がそんなに強固じゃなかったから入れたよ。でも、今はどうかなって。だから少しごめんよ」<br>　アルバートの嫌な予感は的中する。<br>「……魔力あんまり使いたくないからちょこっとだけね」<br>　そう言うとロドルはちょろっと舌を出したあどけない表情で――、何もない空中から出現させた真っ黒な長剣を、地面に突き刺す。アルバートの足元には大きな魔法陣。<br>　あらかじめ彼が描いたか、今描いたか。後者ならそうとうな早業だ。前者なら頭が回りすぎる。<br>　真っ赤な光が上がる時、自分の身体の上に重しが乗ったのかと思う程に重くなる。<br>「閉じ込めたけど、自力で出られそう？」<br>「出れるかボケ！」<br>「やっぱり無理かぁ。悪魔の僕がする退魔術式をこうも易々受けるくらいだもんなぁ。アルバートと出かける時はなるべくエクソシストと会わないようにしているんだけど、ノービリスの中なんてエクソシストだらけだしなぁ。どうしようかなー。アルバートが祓われても困るんだよ。どうするかな」<br>　どこか他人事のような、そんな言葉にアルバートはイライラとする。<br>「早く出せ！」<br>「出す。出すよ。僕がここで悪魔祓いしようものなら、アルバートはチリに帰っちゃうもんねー」<br>「早く出せよ！」<br>　分かったよ、と言いたげに肩を竦ませるロドル。ロドルが魔法陣の外側の膜を触ると、途端にそれは壊れた。<br>「グッ……生きた気がしねぇ」<br>「死んでるでしょ？」<br>　その返しには飽き飽きしている。<br>「どうするんだ？　俺が結界に入れるのか」<br>「いや、これは正面突破しかないんだ。下手な工作よりも一番手っ取り早くことが進むさ。とりあえず、アルバにはこれを」<br>　ロドルがアルバートに渡したのはあのロケットペンダント。<br>「十字架が入ってるんだろ？」<br>「よく見てみなよ。それは十字架であって十字架じゃない。僕が少し手を加えて、十字架の十字の部分に線を一つ加えてみたんだよ。よく見ないと分からないぐらい細い加工さ」<br>　確かにロドルが言うように加工がされていた。十字の部分に線が一つ加えられて縦線一本に対して、横線が二本になっている。<br>「こんなんで誤魔化せるのか？」<br>「現に目が焼けないだろ？」<br>「そうだけど」<br>「僕だって十字架が苦手で怖いのに、頑張って加工したんだよ。封印は解いといたから、持てると思う。それに、悪魔や魔族が十字架を持つなんて人間が想像できると思う？　一種の「悪魔や魔族は十字架が苦手だ」の常識を裏切らなきゃ、僕たちがあの国に入れるわけないだろ」<br>　それもそうだった。<br>「堂々として入れ。僕達は本部に呼ばれたエクソシスト。何もお咎めを受けることはない。堂々としていろ」<br>「……お前は元々演技上手いから出来るだろうけど」<br>　ロドルは帽子を深く被った。黒い髪を隠すための、その帽子はかなりの年季ものである。<br>「さて行くぞ」<br>「うわぁっ、ちょっと待てって！」<br>　二人は歩き出す。森を出て見上げるはノービリスの関所とそこを囲う結界の膜。薄いセロファンみたいに国全体を覆うもの。<br>　ロドルは少し慣れた調子ながら、アルバートは戸惑い気味。<br>「お兄さん、何用で？」<br>「本部に呼ばれていまして。僕はカポデリスのエクソシストです。ほら、リリスのはずれにある街って小さい町なんですが、知っていますか？」<br>　ロドルはにっこり笑って関所の役人に話しかけている。<br>「お連れは？」<br>「あぁ、僕の師匠なんです。僕、見た目からしてまだまだ修行中の身でして、師匠が本部に呼ばれたと聞いてどうしてもついて行きたかったんです」<br>　受け答えはさすがというか、成り切りの演技力は上手い。そして、ここでアルバートは自分がロドルの師匠にされていることを知る。どうしてもロドルの見た目は少年にしか見えないので、そう説明するほかなかったのだろう。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418895269.html</link>
<pubDate>Fri, 23 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 37 過去未来数百年Ⅱ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　さて、二人がこの家から出たのはそのすぐ後のことだ。ナンシーに小言をもらい二人は店を出る。アンジェリカが投げキッスするのを、アルバートは手で払いのける。<br>「アルバさぁ、アンジュに好かれてるよね。なんでだろ？」<br>「しらねぇよ」<br>「僕は可愛い可愛い言われるけど……アルバはなんというか妙に色っぽい目で見ている気がする……アンジュに昔なんかしたの？」<br>「してねぇよ！　むしろされる方だよ！　初めっからディープなやつ仕掛けてきたんだよ！？」<br>　ロドルは意味深に顎に手を乗せる。<br>「アンジュのタイプのど真ん中なのかな。そういえば、ゼウス様ってアルバートに顔少し似ている気が」<br>「俺もう、顔を覚えてないぞ」<br>「顔はゼーレ様によく似ているよ。背が高くて若干目が切れ長で……。うーん。そう考えてみるとアルバとあんまり似てないかも」<br>　ロドルはまた考える。<br>「そういえばアンジュ、僕にアルバートへの贈り物をあげてって言ってたんだよ。これなんだけど」<br>「なにこれ」<br>「僕は、お酒あんまり知らないから分からないけど、結構いいやつっぽい」<br>「……ウィスキーだ」<br>　バトラーであるアルバートには一目で分かった。相当高そうなもの。<br>「これ、くれるのか？」<br>「うん。飲んでって」<br>「ありがたいな」<br>　なかなか手に入らないものだ。<br>　アルバートは家に着いてまず、受け取ったそれを自分の荷物のところに置いた。少々買収された気がしてならないが、酒に罪はない。<br>　自分たちが次にすべきこと――。<br>　何故、カポデリスに来たのかを、この大荷物を見て思い返す。<br>「お前さ、一回リアヴァレトに戻って月光瓶の調子を整えた方がよくないか？　猫になったらどうする？　俺はもうあの店に行きたくないぞ」<br>「大丈夫。月光瓶は十分溜まってる。だから今日一日は平気なはずだよ。それに、今、リアヴァレトに帰ってもね」<br>　ロドルは暗い顔をした。アルバートはそれが心配で声をかける。何かあるのだろうか、と。<br>「何かあるのか？」<br>「二日、仕事をしないで有給取ったことになっているんだぞ。しかも、ゼーレ様の嫌いな人間がいるカポデリスで遊び呆けていると知れたらどんな仕置きをされると思う？　僕は、尻打ちはもう覚悟している。せめて、仕事の為に外出していたということにしたいんだ。だから、溜まった本が多すぎて三日も休みましたという体裁にしたい。刑罰を受けるのは嫌だ。痛い思いはしたくない」<br>「そ、そうだな。俺も料理長に怒られる。酒の管理は俺の仕事なのに」<br>　アルバートはそれ以上、聞くのをやめた。<br>「僕、ゼーレ様に怒られるのだけは嫌だ」<br>「俺も嫌だよ」<br>　ロドルとアルバートは喋りながら本を積み上げる。<br>「この本をノービリスの手前の森まで送るんだ。そこからは関所を通る。ノービリスの結界には魔法陣で入れないから、その方法を取るしかない」<br>「魔法陣は」<br>「今から描こう。アルバは本を積み上げといて」<br>　ロドルが指示するので、アルバートはそれに従った。作業は着々と進められ、三十分くらいで完了する。<br>「さて、出来た。準備はいい？」<br>「大丈夫だぞ。いつでも来い！」<br>　ロドルが頷き、魔法陣を発動させる。赤い光が吹き上がるのは彼の魔法の特徴。アルバートには光が眩しすぎるので、彼はいつも目を瞑っている。<br>「着いたよ。アルバート」<br>「あぁ」<br>　アルバートが目を開けると、見たことがない場所にいた。<br>「ここがノービリス？」<br>「そうさ。正確にはノービリスの手前の森だよ。《《アウリッシュの森》》という。聖戦時に逃げた貴族王族が数年潜んだ森と言われている。確かにその通りで僕はあの時、皆にここに潜むように言ったんだ。だからこの辺りに空き家がたくさんあってね」<br>「皆」<br>　アルバートはそれ以上を聞けなかった。ロドルはふいっと話をずらし、森の奥に入る。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418895127.html</link>
<pubDate>Thu, 22 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 36 過去未来数百年Ⅰ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　暗闇の中で様々な声がした。<br>　怒る声、叫ぶ声。心配する声、慰める声。僕は首の痛みと共に目を覚ます。ズキズキと痛む頭を押さえて起き上がった。<br>「頭痛い」<br>　僕が目を覚ますと、彼がそばにいる。<br>「これ飲めよ」<br>「なんだこれ」<br>「――ホットワイン。アルコールは飛ばしてあるから酔わないとは思うけど」<br>「……味がしない」<br>「まぁ、それは仕方ないな」<br>　アルバートはロドルの様子を見ていた。その目は悲しい。温かいことは分かる。しかし、味はしない。甘いとか、甘くないとか、そういうことではない。白湯のように何の味もしない。<br>　ロドルは葡萄酒の味が分からない。<br>「俺も飲むか」<br>　アルバートも持ってきていたそれを飲む。<br>　本来なら、甘い葡萄の味がするそれを――。<br>「何時？」<br>「九時。お前、一時間も寝てたんだ」<br>「うぅ……、頭痛い」<br>「血を吸われたからな。俺も吸われたし、もうこの家出たいよ。首にガーゼ貼ったけど、これ傍から見たらキス隠しじゃないか。俺嫌ダァ」<br>　ロドルも自分の首を触るが、そこにもガーゼらしきもの。<br>「止血しないと菌が入るから」<br>「あ、ありがと」<br>「ジャック、早くこの家を出よう？　俺もうここで血を吸われるのが嫌だ。首筋に垂れた血を啜られるのも嫌だ。首を触られるのがトラウマになりそう」<br>　アルバートは頭を抱える。ロドルは自分が布団の中にいるのに気付き、辺りを見渡した。<br>「アンジュは」<br>「あのクソババアは店にいるよ」<br>「クソババア」<br>「そ、クソババア」<br>「アルバは本当に、アンジュが嫌いだね」<br>「血を吸われるのが嫌いだから。それ以下でも以上でもない。クソババアはクソババアだよ。現にあの人、何歳だと思ってる？　俺らよりも長く、千年以上も生きてるクソババアだ……よ」<br>　アルバートの声が途切れたのは、後ろに誰かが立っていたからだ。アルバートは彼女の顔を見て顔を青ざめさせ、素早く半歩下がった。<br>　だが、彼女の方が早く、あっという間に取り押さえられる。<br>「アルバちゃん。クソババア、クソババアと何度繰り返せばいいのかしらぁ〜？　そんな悪い子にはお仕置きしないとねぇー？」<br>「ひぃっ、ごめんなさい！　だからやめて、なにするつもりだ、クソババア！」<br>「うぅーん？　何しようかしら〜」<br>　アルバートはアンジェリカに手首を掴まれられて逃げないようにされ、背中を蹴られていた。ぐりぐりと彼女の高いヒールが背中に突き刺さる。<br>「とりあえず、手錠でもして監禁でもする？」<br>「やめろぉっ！」<br>「まだ提案だけじゃないー」<br>　アルバートがどうにかして逃げようとしているのを、ロドルは見ていた。<br>「アンジュ。やめてあげてよ。アルバの口は悪いけど僕のことを思って言ってくれているんだから、悪気はないんだよ。ごめんね。だから離してあげて？」<br>「私の可愛い可愛い、目に入れても痛くないほど可愛い、クリムちゃんが言うんなら離してあげるわ〜」<br>　パッと手が放されアルバートは地面に体を打ち付けた。少し痛そうだが、顔はホッとしている。<br>「もう嫌……、こんな家出て行ってやる」<br>「アルバもそんな反抗期の子どもじゃないんだから。うん。でも長居は無用だね。他の用事もあるし」<br>　ロドルは布団から出て背筋を伸ばした。体は軽い。それは血を吸われてその分の血液が減ったせいか、それとも違う理由か。<br>「あら、もう行っちゃうの？」<br>　アンジェリカは残念そうだ。アルバートはその様子を忌々しそうに見る。アルバートは本当に彼女が嫌いなのである。<br>「アンジュ、ありがとうね」<br>「……ケッ」<br>　ロドルは感謝を。アルバートは軽蔑を。<br>「アルバちゃん。また今度遊びに来てねぇ？　クリムちゃんもまたお茶会に来てねぇ？」<br>　アンジェリカはアルバートの肩に手を回し後ろから彼の顔を押さえた。アルバートはビクッと体を震わせたが、その頃にはもう遅い。足が彼女に踏まれて動かないようにされており、耳にされた口づけを抵抗するもされるがまま。<br>　ロドルはそれを見て怯えた顔をする。それを見た次にアンジェリカがロドルの前に来ており、パクパクと金魚が餌を食べるみたいに口を開けていた。ロドルは彼女にアルバートと同様、足を踏まれて動けなくさせていた。ロドルはそれに気がつくも、顔を上に向けた瞬間に鼻柱にもう口づけをされていた。<br>「じゃあねぇ、ボーヤ。また楽しませてね」<br>　アンジェリカは部屋を出て行った。<br>「……俺、やっぱりあの人嫌いだ」<br>「僕も苦手だ」<br>　純粋無垢な心を弄ばれた気がして妙に落ち着かない。<br>　少年二人はあの手慣れたお姉さまのテクニックに舌を巻くが、それよりも思うのはこんなに弄ばれているのもカンに触るということ。<br>「勝てる気がしない」<br>「俺もそれ思う」<br>　アルバートは耳を、ロドルは鼻を、お互い拭って感触を消し去る。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418894855.html</link>
<pubDate>Wed, 21 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 35 未消滅致命死傷Ⅱ</title>
<description>
<![CDATA[ <div>「意識して変化をするなら、人に戻った後に服を着ているようにするんだけど、今回は事故だからね……。月光瓶を使って戻る時に一応ナンシーさんに、脱衣所に服を持ってきてもらって、そのままシャワーを浴びていたんだよ。猫の時にどうしても本能で身体を舐めちゃうからベッタベダになるし、気持ち悪い」<br>　なるほど。よだれか何かがついているのか。<br>「俺の首から垂れた汗とか舐めてたしな。なるほど。猫ならしょうがないか――」<br>　アルバートはそれとなく呟いたのだが、ロドルはビクッと反応する。アルバートはその顔を見た。怯えたではない、戸惑う顔。<br>　アルバートはニヤリと笑った。<br>「もしかして記憶ない？　俺の首筋、舐めてたの」<br>「な、ない……。ぼ、ぼ、僕っ」<br>「エッチ」<br>「そ、そんなつもりじゃなくって！　へぇっ！？　僕、そんなことを！？」<br>「やめてって言ったよー？　変態め」<br>「そんなつもりじゃないっ！」<br>　彼の怯え慌て戸惑う目に、アルバートは面白いおもちゃを見つけたとばかり追い詰める。<br>「いやぁねぇ、ジャックちゃん。猫だからってしていいことと悪いことがあるでしょー？　ねぇ？」<br>「僕はそんなつもりじゃ……、ううっ」<br>　記憶はないのだろう。だが、慌てているからか「そんなことするわけないだろ！」と突っ張ることはしなかった。それをすればいいだろうに、その考えには及ばないみたいだ。<br>「また弱みが増えたねぇ。君の、はずかちー思い出、俺はたっくさん知ってるんだよぉ〜」<br>「うぅ。僕、もうアルバ嫌い！」<br>「猫の時にすりすり擦り寄ってたのにねぇ。耳の後ろ、撫でられて骨抜きにされてたの覚えてるぅ？」<br>「僕、もうアルバ嫌い！」<br>　ロドルの顔は真っ赤である。<br>　その時、一階から声がした。酔ってべべろけになった女の人の声。アルバートはその声を聞いた時、おちゃらけモードから一転。<br>　警戒心を強める。<br>「ナンシー、帰ったわよぉ〜。上？」<br>　アンジェリカの声だ。<br>「アンジュかな？」<br>「そうみたいだな」<br>　階段を上って、この部屋のドアが開いた。アンジェリカは手前のナンシーを見て、奥の二人を見た。<br>「あらぁ。クリムちゃんじゃない。もう戻っちゃったのぉ？」<br>「アンジュ酒臭い」<br>　ふらふらとアンジェリカはロドルの方に歩き、ロドルに向かって倒れかかった。ロドルは紳士っぽく彼女の身体を受け止めるが、それは彼女の罠であった。<br>「ふふっ……、引っかかった」<br>「ババァてめぇっ！」<br>　近くで見ていたアルバートは気づいたが、もう遅かった。<br>「あらぁ？　シャワー浴びてたの？　髪が濡れてる……」<br>「重いって、ちょっと待って！　ここで血を吸うのだけはやめて！　酔ってるんだろ！？　やめてって！」<br>　押し倒されたロドルは、自身の身体の上に乗りかかるアンジェリカの下から声を出す。<br>「うぅん。そうかもー。ここで吸ったらナンシーに怒られちゃうわねぇ。でも一応、結界は張ったし、貴方の騎士様と幽霊である使用人は入れないはずなのぉ〜」<br>「ぐぅ……、酒臭い。やめろよ！　やめて。やめてください！　お願いだから！　いや！　助けて！」<br>　ジタバタと抵抗するが、どうやっても押し返せない。ロドルは涙目で訴える。泣き叫ぶような悲鳴を上げて――。<br>「お願い、今日だけは見逃して！」<br>「だってぇ。猫の時は可哀想だから見逃していたのよ？　人になったらねぇ。飲みたい。吸いたい。貴方の血を思う存分啜りたい」<br>「ひぃっ、やめろぉっ！」<br>　アンジェリカという吸血鬼は、酔っている時は更に酷い。ロドルはそれを十分承知していた。首に関するトラウマが多いのは、彼女の吸血行為が原因であるものも含まれている。<br>「……ッあぁ……」<br>　一瞬だけ痛みが走り、意識は段々と暗闇になり消えた。親友の声が遠くで聞こえる。堪えようにも無理だった。<br>　力はもう入らない。</div><div>&nbsp;</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418892504.html</link>
<pubDate>Tue, 20 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 34 未消滅致命死傷Ⅰ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「アルバート君。お早うございます」<br>「……うぅ」<br>「窓を開けますけど、アルバート君は眩しいですか？」<br>　ガラッと音がして、溢れんばかりの光が差し込んだ。リアヴァレトはここまで明るくはない。直接目に入ってくる光の眩しさに眼を細める。久しぶりにこんなに明るい陽の光を見た。<br>「お坊ちゃんは朝方にもう起きていらっしゃいます。アルバート君を何度か起こしたと言っていましたが、起きなかったと」<br>　あいつ、起きるのが早いな。アルバートはそう思う。元々早かったっけ、あいつは――。自分は夜型なので朝は辛い。<br>「あいつは？」<br>「お坊ちゃんは服を着替えていらっしゃいます」<br>　服を着替えているということは、どうやら姿が戻ったのだろう。<br>「――へぇ」<br>　アルバートは眠い眼をこすりながら、洗面所の脱衣所に進む。案の定カーテンがかかっていた。その先でもぞもぞする影。アルバートはそのカーテンを勢いよく開けた。<br>「ジャックちゃん、おっはよーっ！」<br>　ズボンは履いていない下着姿で、シャツのボタンを上から閉めているロドルと目が合った。<br>「てっめぇ、服を着替えてるところを覗くんじゃねぇッ！」<br>「相変わらずのチビだなぁ！」<br>「頭を叩くんじゃねぇ！」<br>「なんだよぉ、つれないなぁ。昨日は俺がふうふうしたご飯を食べていただろうが」<br>「僕は！　昨日の記憶を断片的にしか覚えてないんだよ！　自分で変化魔法をかけていたのならまだしも、月光瓶が壊れた変化だと意識もあやふやだからなぁ！」<br>「へぇー、そうなの？　俺の布団で一緒に寝たことも？　ずーっと俺のネクタイを掴んで離さなかったことも？」<br>「それは覚えてるよ……。あーもう、恥ずかしい」<br>「お前の弱みがまた握れて俺は愉しいなぁ。愉しいよ、ジャックちゃん！」<br>　顔を真っ赤にして怒るロドルにアルバートは一言。<br>　慌てて本人は気づいていないだろうが――。<br>「それより服を着なよ」<br>「お前が出て行けェ！」<br>　物が投げられ、アルバートはそれに当たり仰け反った。<br>「ぐふっ」<br>「二度と入ってくんな、バカァ！」<br>　仰け反る瞬間、一瞬だけ見えたあいつの消したい記憶。あいつの足と腹部には消えない傷がある。足は無数の引っ掻き傷。腹部は未だ血を流し続ける致命傷。どちらの傷もあいつは見られるのを嫌がる。だから、俺しか知らない。<br>　どちらの傷も、俺にとっても、忌々しいものだ。<br>「あんなに嫌がらなくてもいいのに」<br>「まぁ、お坊ちゃんも大人の年ですから。羞恥心はあるのでしょうし」<br>　ナンシーはアルバートを見て一言。<br>「アルバート君も服をちゃんと着てくださいね。また寝ながらボタンを取って前がはだけていますよ」<br>「あ、ほんとだ。暑いんだよなぁ」<br>「私はお二人のお世話をしたのでどうとも思わないんですが、それを他の女性の前でするのはやめましょうね」<br>「はーいはい」<br>「アルバート君、『はい』は一回です」<br>　ボタンを閉めながら考える。そういえばなんであいつは……。<br>「ナンシーさん、あいつは服着てなかったの？　なんで、脱衣所で服を着てるんだ？」<br>　アルバートが聞くと不機嫌そうな声が後ろから聞こえた。<br>「……人聞きの悪いこと言うな。僕はシャワーを浴びていただけだよ。猫の時は確かに服を着てないけど、それとこれとは話が別だろう！？」<br>「やっぱり着てないんじゃん。全裸？」<br>「……殺す」<br>「怖いよー、執事長こわぁい」<br>　アルバートが怯えてみせるとロドルは深いため息を吐いた。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418892022.html</link>
<pubDate>Mon, 19 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 33 何故被呪術黒猫Ⅱ</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「ナンシーさんに聞いても良いですか」<br>「なんです？」<br>「あの悪魔は――、こいつにこの呪いをかけて何をするつもりだったのか」<br>　ナンシーはピクッと反応した。包丁の手を止め、アルバートの顔を凝視する。<br>「単純に考えれば、あいつはジャックの眼を潰そうとした。魔力根源である紅い左眼を潰して、魔法を使えなくしようとした。それが出来なかったから黒猫にして魔力を封じた。単純に考えればそうです。でも、その後は？　あいつにとってもこいつが魔法を使えないのは痛手のはず。あの契約を結んでいるんですから、こいつが魔法を使えなければ契約は破綻。意味なんてない。だったらこの呪いはなぜかけたのか。俺は――、他に意味があるのかもしれないと思うんです」<br>　ナンシーが何も言わないので、アルバートはそのまま続ける。<br>「あいつの身体は死体だ。生前の、傷という傷が残ったまま。あいつはズボンで隠して、着替えているところなんて誰にも見せないから――、俺しか知らない。……俺しか知らない、あいつが誰にも見られたくない足の傷も、あの体には残っている。俺はあいつが死んだ十年後にあいつの死体を見ているけど、あれは普通じゃなかった。もしかして、あの悪魔は俺にそれを見せるために、<br>　――……したんじゃないかと」<br>　パリン、と何かが割れた。<br>　アルバートはびっくりしてナンシーを見る。ナンシーの手の中でグラスが粉々になっていた。<br>「……ナンシーさん」<br>「あ、失礼。驚かせてしまいましたね」<br>　ナンシーは砕けた硝子を見た。<br>「ナンシーさん」<br>「あの悪魔はお坊ちゃんをずっと付け狙っているのです。許してはなりません。私は絶対に許しはしません」<br>　それは自分もそうだった。だけれど、ナンシーのこの反応は異常だ。――と、冷静に考えればそうなのだ。<br>「……うぅ」<br>「起きた？」<br>「うん」<br>　ぼんやりと目が開くロドル猫の頭をアルバートは撫でてやる。<br>　ご飯ができたというので、アルバートはテーブルの席に座った。ロドルはテーブルの上に乗せてやる。<br>　お行儀は悪いのだが、ナンシーは地面でロドルにご飯をあげるのを嫌がったのでそうなったのだ。仮にもこいつは人なのだから地面で飯を食わせることを使用人は嫌だったのだろう。<br>「お坊ちゃん、お食事です」<br>「おかゆ？」<br>「熱いから気をつけろよ」<br>　ペチャペチャ、とそれを舐めて器の中のご飯を食べる。<br>「アツっ」<br>「だから熱いって」<br>「うぅ」<br>　ロドルはアルバートに縋りつく。<br>「お前なぁ、ご飯の邪魔をするなって」<br>「だって」<br>　だってといながらもロドルはアルバートを邪魔するように擦り寄る。<br>「あぁもう！　ナンシーさん、スプーンください！」<br>　ナンシーはアルバートにスプーンを渡す。<br>「俺が冷ましてやるからそれ食べろよ！　残しは許さねぇぞ！」<br>「うん。舌痛い」<br>「赤ちゃんか！」<br>「猫の見た目は一歳のはずだよ？」<br>「分かった子猫なんだな！？」<br>　アルバートはスプーンにすくったそれをふうふう冷ましてから与えてやる。ロドルは素直にそれを食べた。<br>「猫舌のヘタレがぁ！」<br>「アルバ、早いよ。口の中まだ入ってる。うぐっ」<br>「俺も早くご飯食べたいんだよ！　ナンシーさんのご飯久しぶりなんだからさぁ！」<br>「それにしても飲み込む前にお口に突っ込まないで吐いちゃう。むぐっ……」<br>　アルバートは自分のお皿のものを食べつつロドルの口にスプーンを押し付ける。何度か繰り返した後、ロドルのお皿は空になった。<br>「水は飲めるだろ」<br>「うん。僕、飲むのが下手くそだけど」<br>　ペチャペチャ水面を舐める黒猫。確かに下手くそで、水が飛んで口の周りがびしょ濡れになっていた。口の周りを拭いてやっている時、ふとアンジェリカがいないことに気がついた。<br>「そういえばあのクソババアは？」<br>「アンジェリカ様はこの時間ですので向こうのお店じゃないですかね。ノービリスは夜に店を開けることが多いですから」<br>　この店はノービリスとも連携している。<br>「なるほど。俺たちはもう寝ていいの？」<br>「お風呂もありますが、お坊ちゃんは入れませんからね。お布団をご用意しますので、アルバート君はお風呂に入ってきたらどうですか？」<br>「あー。そうか。毛皮だからか」<br>「アルバート君が洗ってもいいんですが、猫は水が苦手ですからお坊ちゃんがそのお姿の時には、お風呂にほとんど入りませんね」<br>「じゃあ俺は風呂いいや。もう寝る」<br>「かしこまりました。準備致します」<br>　パタパタ走ってナンシーは出て行った。しばらく待つことになる。外はもう暗く、寝るにはちょうど良さそうだった。それに昨日はこいつにベッドを貸して、自分は椅子で寝ていたのだ。<br>　今日はよく寝られるだろう。<br>「お前さぁ、俺の布団で寝ない？　お前ふかふかだし抱っこして寝るのが気持ちいんだよなぁ」<br>　冗談だった。仮にもこいつは男であるから、野郎の布団寝はさすがに見るに堪えないものがある。<br>「いいよ」<br>「……本当か？」<br>「寒いもの」<br>　黒猫は体を舐めながら言う。<br>　ナンシーが布団の準備ができたと呼んできたので彼女に連れられ部屋に来た。ふかふかの布団は気持ちよくて、アルバートはシャツのボタンを二、三個外して横になった。被るとロドル猫が布団に潜り込んできた。<br>「なんかお前と寝るの……、久しぶりだなぁ。俺が教会にいる時はいつも隣で寝てたよな。お化けが怖いから、一緒に寝てって言った時もあったなぁ」<br>　幼い時から、魔族や幽霊が視える体質であったロドルは、夜は寝られなくて自分の布団に潜り込んで来た。だからこうしてよく一緒に寝ていた。<br>「……随分昔じゃないか」<br>「そうだな。千年も昔だ」<br>　幼い時の記憶はそんな昔になっても覚えているものだ。<br>「アルバート君、お坊ちゃん。おやすみなさい」<br>「おやすみなさい。ナンシー」<br>「おやすみ、ナンシーさん」<br>　灯りは消され、部屋の中は真っ暗になった。<br>　手を伸ばすとふわふわと柔らかい毛皮が触れた。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418889160.html</link>
<pubDate>Sun, 18 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 32 何故被呪術黒猫Ⅰ</title>
<description>
<![CDATA[ <div>「うぅ」<br>「にゃあ」<br>「ん？」<br>　目が覚めた時、もう辺りは暗かった。<br>「お前」<br>「……にゃあ？」<br>　体を舐めて毛並みを整える黒猫。左目に傷のあるそれは、アルバートのお腹の上に乗っていた。<br>「にゃー」<br>「抱っこか？」<br>「うにゃ」<br>　寝ぼけた頭で考えて、それを胸に抱き抱え、部屋を出て階段を降りた。丁寧に自分の体を舐める黒猫は、間違えてか自分の手もぺろぺろ舐める。ざりざりとした猫の舌はこしょばゆい。<br>　それがくすぐったくて、アルバートはその黒猫の頭を撫でた。<br>「やめろよ、くすぐったい」<br>「にゃ？」<br>「それにお前、俺の手まで舐めるなよ。猫にでもなったわけじゃある……まい……し……」<br>　アルバートはようやく気づいた。<br>「お前、喋れなくなってないか？　にゃあ、じゃなくて、言葉を喋れ！　な？　喋れるだろ？」<br>　アルバートはそれの体を揺さぶるが、黒猫は何も言わない。<br>「にゃん？」<br>「……おいおい、冗談はよしてくれよ……」<br>　アルバートは黒猫の顔を見た。<br>「本当に覚えてないのか！？　お前は黒猫じゃない！　れっきとした人だ。俺の親友のジャックだ！　忘れちまったのかよ！　俺のことも昔のことも、今のことも何もかも！」<br>　それでも黒猫は何も言わなかった。</div><div>　◇◆◇◆◇</div><div>「――……ジャック！　俺は！」<br>「どうしたんだ、アルバ」<br>　跳ね起きて辺りを見渡した。自分の手を舐めているのは確かに左眼に傷がある黒猫。だが、彼は喋っていた。<br>「汗、すごいよ」<br>　ちょこちょこ近づいてくるロドルは、アルバートの首元をクンクン嗅いだ。確かに首筋は汗でびっちょりと濡れている。<br>「しょっぱい」<br>「……舐めるなよ」<br>「あぁ、ごめんつい。猫の本能かな」<br>　ザリッと撫でる舌の感触に背筋が凍った。<br>　寝ている時に手を舐めていたのもこいつなのだろう。毛繕いの中で、寝惚けもあったのか自分の手も舐めていた。<br>　――さっきは悪夢だ。夢だったのだ。<br>「夢でよかった」<br>　ロドルは毛並みを舐めながら変な声を出す。<br>「うぅ？」<br>「ジャック、抱っこするぞ」<br>「お願い」<br>　素直に応じるロドルにアルバートは安心した。<br>「よかった」<br>「……く、苦しい」<br>「ごめん」<br>　潰されたロドル。アルバートはロドルを抱き抱えたまま歩く。廊下をまっすぐ進むとナンシーが夕食の準備をしていた。<br>「アルバート君は何が好きでしたっけ。今日は頑張ってくれたので、ご褒美に好きなものを作ってあげます」<br>「……俺、好きなもの作ってもらえて喜ぶほど子どもじゃないですよ」<br>　ナンシーは手を止めた。<br>「あら？　そうですか？」<br>「……肉」<br>「豚ですか？　牛ですか？」<br>「……豚」<br>「よろしい。作りましょう」<br>　お昼に食べたべーコンと卵サンドを思い出した。あいつは覚えているだろうか。<br>「こいつはどうするの？」<br>「お坊ちゃんのお食事はおかゆ状にしてあげます。猫らしく猫舌ですので冷まさないと食べられそうになさそうですね」<br>　猫である以上そうなのだが、実に不便な身体だなと再確認する。<br>「月光瓶は？」<br>「窓辺に置いてあります。今日は満月ではないので、どこまで溜まるか分かりませんが」<br>　満月の日ではないから月光瓶を使わなければ黒猫に戻るのである。今日は満月の日ではなかった。<br>「こいつ寝てるしなぁ」<br>「疲れたのでしょうね」<br>　猫は一日のほとんどを寝て過ごす。いつの間にかロドルはアルバートに抱きかかえられたまま寝ていた。アルバートは置いてあったソファに腰掛けてロドルを膝に乗せた。<br>「ナンシーさん。こいつ、爪を外さないんですけど」<br>「好かれていますね」<br>「ネクタイがっちり押さえられてる」<br>　力を入れて小さい手を踏ん張って、しがみついている。一歳にしか見えない子猫のロドル猫は、その小さい手の爪でアルバートのネクタイの真ん中を引っ掻け、しっかり握りしめていた。<br>「あの」<br>「そのままにしてあげましょう」<br>「……そう……、ですね」<br>　腑に落ちない。<br>　なんで、こいつはこういう時だけ甘えん坊なのだろう。<br>「本当にこいつ、あの生意気なあいつと同一人物かなぁ。俺、たまに分からなくなるよ。人によって態度が違うっていうかさ」<br>　すうすうと寝息を立てて寝るロドル猫は、ネクタイに爪を立てたまま動こうとはしない。<br>「お坊ちゃんは――」<br>　ナンシーは包丁を扱い、野菜を切る。<br>「……貴方のことは心から信頼しているのでしょうから」<br>「まぁな」<br>「お坊ちゃんのことはお任せします」<br>「……うん」<br>　ロドルは起きる気配がない。ナンシーも手を止める様子はない。<br>「ナンシーさんはさ、こいつに仕えているのって、こいつがあんたの家の主人だから？」<br>「我が家――、アンヴィル家は聖戦の時に没落してしまいましたから、今の私は英雄様の時代からフェレッティ家に仕えていた使用人というわけではありませんね。でも、お坊ちゃんはお坊ちゃんですし、アルバート君はお坊ちゃんのご友人でボディガードです。……それ以外に言うことはありますか？」<br>　ニコッと笑う使用人。アルバートは頭をかいた。</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418888756.html</link>
<pubDate>Sat, 17 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>part 31 夢現黒猫無意識</title>
<description>
<![CDATA[ <p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">どのくらいの時間が経ったのかは知らない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「アルバート君、お疲れ様です」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「……疲れた」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「僕も疲れた」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">薬品だらけの机の上に腕を伸ばすアルバートの上に黒猫が寝転んでいた。お腹を見せて、気持ちよさそうに寝転んでいる。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「重い」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「もふもふでしょ？　癒そうと思って」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「……重い。暑い」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「お疲れ様ぁ」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「肉球を押し付けんな……」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">アルバートの背中をふにふにするロドル猫。ナンシーは戸棚を片付けながら二人に言った。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「あとはこの月光瓶に月の力を貯めれば、お坊ちゃんを元に戻すことができます。一晩、置いておけば十分かと思います」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">アルバートは自分の上で寝転がるロドルを持ち上げて机に下ろした。もふもふとお腹をグシャグシャ撫でる。ロドルはくすぐったくて暴れたが、アルバートはそんなことは知らない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「……疲れた」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「アルバ、上手かったよ。一回苦しくて死ぬかと思ったけど」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">月光瓶は無事に完成した。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">焦ると魔法陣は乱れコントロールが難しくなる。それは、魔法陣が完成に近づいた頃だった。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">もう少しで完成する。安心は一種の油断である。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『うぐっ』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">魔法陣の方に目を向けていなかった。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『うぅ……うわぁぁ！』</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『やっべ』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">アルバートは魔力の吸い上げを緩めた。緩めると月光瓶の方は手薄になる。強欲に吸い上げ続ける魔法陣は止められない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『やっべっ……止まらねぇ！』</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『アルバート君！　お坊ちゃんの方を緩めつつ、月光瓶には魔力を与え続けてください！　でなければ逆流して、お坊ちゃんに被害が及びます！』</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『わ、分かってるって！』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ロドルは苦しそうに顔を歪め、魔法陣の外へ手を伸ばす。だが、外には出られない。魔法陣の境界線には封印がされており、出ようとすると電撃が走る。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ビリビリと体は痺れて自由は利かなくなる。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『出して！　出してぇ！』</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『アルバート君！』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">その様子は苦しそうで、コントロールする手にも力が入る。それは尚も、中の魔力源を苦しめることになる。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『クッソ！』</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『アルバート君！』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ナンシーはあわあわしているが、術者に触れることはできない。術者に触れば途端に魔術は失敗することになる。そうなれば魔法陣に囚われているロドルにどんな影響が及ぶか――。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『アルバートォ……』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ロドルの声が弱々しくなる。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">『落ち着け俺！　落ち着け！』</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">どうにかして止めなければ。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">あの時は、それだけを考えていたような気がする。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「良かったよ」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">回想を終え、時間は戻って黒猫は言う。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「魔力は平気か？」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「うん。力は抜けるけど、大丈夫だよ」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ロドル猫はアルバートの手に擦り寄り抱っこをせがんだ。ペタッとアルバートにお腹をつけてグーっと背中を伸ばす。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「僕ねぇ。僕……」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「眠いのか？」</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「ぐすぅ」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ロドル猫はアルバートの胸の中で眠りについた。アルバートは頭を撫でたが起きる気配はない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「ナンシーさん、一晩泊めてくれませんか？　自分の家に戻るにもこいつがこんなんじゃ、いざという時に困るので」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ナンシーはアルバートの方を見て、にこりと笑う。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「そう言うと思って、お坊ちゃんとアルバート君が寝るところは確保してあります。二階に部屋があるのでそこを使ってください」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">ロドルを抱き抱えたままアルバートは店の奥の階段を登り、指示された部屋の前に立った。中にベッドが二つ。アルバートは窓側のベッドにロドルを下ろそうと思った。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">近づいて彼を下ろそうと屈む。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「ん？」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">爪で引っ掻いているのか剥がれない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「はぁ……」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">どうしても離れそうになかった。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「仕方ないか」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">アルバートはその窓側のベッドに横になった。爪でがっちり押さえているロドル猫を潰さないように腕枕をしてやり、天井を見る。抱き抱えていた腕を徐々に外して彼のお腹の上に手を乗せる。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">爪はがっちりネクタイに刺さっていた。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「俺も寝るか」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">魔力を使い疲れはあった。魔力は寝れば回復する。今は夜ではないが、もうすぐ夜になるだろう。</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">それにネクタイにこいつの爪が刺さって剥がれる気がしない。</font></span></p><p style="margin: 0px;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">「ジャックめ……」</font></span></p><p style="margin: 0px; text-indent: 10.5pt;"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;"><font color="#000000">アルバートはロドルの頭を撫でて目を瞑る。ふわふわ触れる本物の猫っ毛が気持ちよくて、すぐに寝てしまった。</font></span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/risakuro9608/entry-12418888319.html</link>
<pubDate>Fri, 16 Nov 2018 16:00:00 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
