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<title>日常まとめ</title>
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<description>海外旅行１０カ国　貯金３０００万を目指したい</description>
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<title>異邦人</title>
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<![CDATA[ 「それでね　柳君たらステージでね」<br>私が楽しそうにアイドルの話をするのを従妹はうんうんと頷きながら聞いていた。<br>親族が集まった結婚式で私は仲の良い従妹とたわいのないおしゃべりを楽しんでいた。<br>地方の寂れた田舎町。私は父の故郷でもある街に久しぶりに来ていた。<br><br>「こらこら　走り回らないの」<br>従妹はいつの間にか2人の子持ちになっていた。<br>５歳になる子どもの世話にいつも悪戦苦闘している。<br>「もう一人は？」<br>「預けてきたから　まだ2歳だし」<br>従妹はそういって笑った。<br>私と従妹は同い年だった。だが東京で暮らす私は３０過ぎても相変わらず独身というのに<br>従妹は既に結婚して2人の子持ち。３人目も妊娠しているという。<br>「凄いね。少子化問題解決に貢献してるね」<br>「美咲ちゃんは少子化推進に貢献してるよね」<br>従妹はいたずらっぽくいう。私は呆れながらも半ば従妹の意見に頷くしか無かった。<br>「東京は30過ぎても40過ぎても独身って女性が多いから」<br>私は言い訳がましく言った。<br>「雑誌で◯◯女子とか言って40過ぎてあれ痛いよね　こっちじゃ笑われるわよ」<br>「独身女性の財布狙ってるのよ」<br><br>東京で育ち大学を出て出版社に勤務した私は２５を過ぎて憧れのファション業界に携わるポジションに配置された。それからは徹夜続きの毎日。家に帰れない日々が続いた。<br>一方従妹はこの街で育ち短大を出ると介護施設で働いて25で結婚、妊娠した。<br><br><br>「美咲ちゃんは凄いよね　バリバリのキャリアウーマンっていう感じで憧れる」<br>従妹はキラキラした目で見る。私は何故か照れてしまった。<br>「でも　子ども産んできちんと子育てしてる人の方が偉いよ」<br>「子育てなんて誰でも出来るもの」<br>従妹はこともなげに言った。私は出来るのだろうか。<br><br>「そうなんですよ　美咲のやつ３０過ぎても独りで困ってるんですよ」<br>振り返ると父が何やら話している。私は溜息をついた。<br>「そりゃ大変だ　美咲ちゃんこっちで結婚しなよ　相手探してあげるから」<br>親戚も口々に大げさに心配する。こちらでは３０過ぎて結婚しないのは奇人扱いなのだ。<br>私は奇人。東京では一般的なのに。<br><br>私は気まずくなりそそくさと帰ろうとした。<br>東京に戻ろう。私は所詮此所の人間ではない。私は異邦人の気分だった。<br><br>明日は仕事に復帰しないといけない事を理由に、私は2次会も行かず、親戚に挨拶をそそくさと終えると<br>帰路につこうとした。<br><br>「美咲　送っていこうか」<br>振り返ると父が居た。どうやら私のためにお酒を飲まなかったらしい。<br>私は頷く。２０分程運転すると最寄りの駅に到着した。<br>ひなびた田舎のローカル線　私は駅のロータリーに降り立った。ここから乗り継いで新幹線で東京に帰る。<br>明日の出勤は早い。<br>父は車を止めると少し煙草を吸いながら私に話しかける。<br>「この駅から夜汽車に乗って東京まで行ったんだ」<br>「夜汽車？」<br>「夜行列車だ　もう走ってないがな」<br>父は東京の大学に進学するため此所を出た。東北の田舎町。辺鄙で閉鎖的で老人しか居ない。若い世代は都会に次々と旅立っていく。高齢者だけが取り残される。従妹の様な人間はまれだ。彼女は一生此所で暮らすのだろう。<br><br>「お前の祖母さんが駅まで見送ってくれた。小さな傘をさしながら」<br>「へー　そうなの」<br>父が亡くなった祖母の話をするのは久しぶりだった。<br><br>「そういえば、お前は少し祖母さんに似てきたな」<br>父は私の方を向いてぽつりという。<br>「そうかな　そうだといいんだけど」<br>私はそういって答えた。父はタバコの火を消すとまた次の煙草を吸い始める。<br>「お前も自立したし父さん定年になったら此所に戻ろうと思うんだ。此所には古くからの友人も居るし。祖母さんが死んで父さんが家を守らないといけない」<br>「そうなんだ。でも母さんが承知するかな」<br>「なにそのうち慣れるさ　住めば都だ」<br>母は都会の空気というものに慣れすぎていた。ここに居たら窒息するのではないだろうか。そんな気がした。<br>「仕事はどうだ」<br>父は煙草の吸い殻を灰皿に捨てると言った。<br>「うん　順調。偉そうなこと言えないけど」<br>「そうか　それは良かった」<br>父は笑顔になった。そして少し無口になる。多分結婚はまだか。とも言いたいのだろうが、私に遠慮して言えない。<br>そろそろ出発の時間が迫っている。<br>「じゃ行くから」<br>「うん元気でな　たまには家に帰ってこい」<br>「分かった」<br>父は手を振ると車を走らせて去っていく。ローカル線の駅のホームには私だけが残された。３０分に一本程列車が走る鄙びたローカル鉄道。<br>父はここから東京に旅立った。祖母に見送られ、夜行列車に乗って。そして大学に進み就職し母と結婚して私が生まれた。父がこちらに戻ったら私は頻繁に会いにいくのだろうか。<br><br><br>少し寒気がしてくる。秋のローカル線の駅で私は一人きりだった。<br>
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<link>https://ameblo.jp/ryuno-sukee/entry-12099241423.html</link>
<pubDate>Tue, 24 Nov 2015 22:42:21 +0900</pubDate>
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<title>海の上の介護士１</title>
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<![CDATA[ <br>白い綺麗な建物の眼下には綺麗な海辺が広がっている。<br>さわやかな海風が吹き抜けていく。<br>僕はしばらくぶりの安らぎを感じていた。<br><br>介護施設の前に行くと一人の美しい女性が老人を車椅子に乗せて居るのが見える。<br>僕の姿を見ると彼女はそっと笑いかけてきた。<br>僕は近寄ると挨拶をした。<br>「初めまして　今日からお世話になります」<br>「この方はね　柳井さん　こちらで働いてくださる人なのよ」<br>そうやって彼女は老人に僕を紹介する。老人は僕に笑顔を見せた。<br><br>介護施設は電車で１時間程の距離に有った。潮の匂いがする<br>海辺の近くの小さな介護施設。３０人程の入居者と少数のスタッフが居る。<br><br>「ようこそ　海の見える介護施設へ　よろしくね」<br>彼女はそういって微笑んだ。<br>「よろしく御願いします　良子さん」<br>良子さんは２６歳ながら介護施設の責任者を任されていた。　<br><br>「明日から少しずつ仕事をお願いね」<br>「わかりました」<br>「ここは重度の生活困難を抱える方はいらっしゃらないから。安心して。　学校の代わりだと思って頑張ってね」<br>良子さんは施設内を案内しながら言った。<br>はいと言いながら笑顔で頷こうとするが巧く笑えない。<br>そんな様子を見て少し心配そうに良子さんは僕の顔を覗き込んだ。<br>「大丈夫です」<br>僕は言った。少しめまいがしただけだから。そう言うと良子さんは微笑んだ。<br><br><br><br><br>高校に行けなくなったのは高校２年のゴールデンウイーク明けだった。<br>徐々に高校に行くのが苦痛になっていた。<br>特に理由があった訳ではない。明確な理由が。<br><br>ただ　元々人見知りの上に集団にも慣れない方だったのだが<br>気がつくとクラス内で孤立し居場所がいつの間にか無くなっていたのだ。<br>それはたいそう応える出来事だった。<br>ただひたすら日々が過ぎるのを待っていたが<br>そのうち足が学校から遠のくようになった。<br><br>起きれなくなり　そして　部屋で一日中過ごすようになった。<br><br>学校という居場所が無くなった僕は毎日熱が出るようになる。<br>病人のように日々寝込んでいた。今までの疲れがどっと出たのかもしれない。<br><br>学校に行かなくなった<br>僕はカウンセリングに通う事になった。狛江にあるカウンセリング施設<br>だった。<br><br>「学校に行かなくなったんだって」<br>「はい　休学してます　退学も時間の問題だと」<br>「何か他人事だね」<br>カウンセラーは笑った。<br>少し僕はむっとした。正直このカウンセラーは好きになれそうになかった。<br>「それで　君は何を悩んでいるのかな」<br>そういって初老のカウンセラーは僕の話に耳を傾ける。<br>「まあ色々と」<br>「学校に居場所が無い　それが問題なのかな」<br><br>まあそうですね。と僕は言う。<br>「これからどうするつもりなのかな」<br>カウンセラーはそう言うと僕の言葉を待った。<br><br>でも僕は一向に離し始めない。話題が無いからだ。気まずい時間が流れる。<br>「いえ　なんと言いますか」<br>「なんだね」<br><br>そうやって沈黙だけで１時間が経過した。<br>「君もう少し心を開かないと」<br>帰り際に初老のカウンセラーが言った。<br>「分かりました　善処します」<br>僕は少し投げやりに言った。<br><br>次のカウンセリングの予約を僕はすっぽかした。<br>「もういきたくないんだ　あんな所には」<br>親に言うとやれやれと溜息をついた。<br>「あのね　社会との接点は持たないといけないのよ」<br>「分かってる」<br><br>そのまま下を向く僕を見て母はまた溜息をついた。<br>「そうだ　伯母さんがね　介護施設をやっているんだけど<br>そこで少し働いてみないかな　どう」<br><br>そういうわけで<br>体力を再び付けるためにも僕に両親は叔母が経営している介護施設を紹介してくれた。<br>そこで一夏の間通うようにそこで働くようにという事らしい。<br>僕には拒否する権利も無い。<br><br>世間では夏休みの季節に入っていた。<br><br>介護施設は海の近くにあった。<br>久しぶりに海の香りに僕は少し元気を取り戻した。<br>駅から１０分程歩いた小高い丘の上にその介護施設は有った。<br><br>「見晴らしが良いですねえ」<br><br>僕は思わず行った　女性職員も満足そうにうなずく<br><br>介護施設では　叔母と良子さんが出迎えてくれた。<br><br>「いつもは良子に任せているんだけどね」<br>叔母は言った。<br><br><br>介護視察はこじんまりとした作りだった。　<br>「ここではね。自分達の力で生活出来ない高齢者の方の介護をする施設なの<br>３０人程の入居者がいらっしゃる。」　良子さんは言った。<br>「明日から来れる？　よろしくね」　<br><br><br><br><br><br>次の日から僕は小高い高台にある高齢者施設に通う事となった。<br><br>　<br><br>僕はいくつかの仕事を任された。<br>やる事は掃除洗濯　食事補佐と言った雑務で少しずつ仕事をこなす。<br><br>「中々良くやってるわね　真面目なのね」<br>ある日良子さんに声をかけられた。<br>「ありがとうございます」<br>「ただちょっと笑顔が足りないな」<br>「笑顔ですか」<br>僕は一瞬きょとんとする。だが確かに顔がこわばり笑顔を忘れていたかもしれない。<br>「そ笑顔。私はね　入居者の笑顔が全てなの　この施設は私の全て」<br>良子さんは笑顔で言った。<br><br>確かに介護施設の中で良子さんはひまわりの様な笑顔を見せていた。<br>彼女の周りは皆が笑顔だ。あれほど僕の前では無愛想だった老人が彼女の前では<br>にっこりと微笑む。それが不思議だった。<br>「だからね　もっと高齢者の方達に心を開いて。そうすれば相手にも伝わるわ。」<br>しばらくすると　少しずつでは有るが僕も笑顔が戻ってきた。<br>気がつくと入居者の方達にも笑顔で接するようになっている。<br>無愛想だった老人も手を振ってくれるようになった。<br><br>「最近いい笑顔になったね」<br>「そうですか　ありがとうございます」<br>良子さんは鼻歌を歌いながら食事の支度をしている。<br>僕はテーブルの上に食器を並べていた。<br>「最初来た時はどうなるかと思ったけど　これなら安心だわ」<br>「料理もね丹誠込めて作ると高齢者の方にも伝わるのよ　たとえ認知症だとしても」<br>「そうなんですか」<br>「大切なのは　笑顔と思い遣り　それがあればきっとうまくいくわ」<br>そう言ってシチューをかき混ぜる。僕は頷いた。<br><br><br>「よし　今日は皆で海辺に行きましょう」<br>ある日　外出可能な高齢者とスタッフに良子さんは提案した。<br>歓声が上がる。僕らはそろって海辺に出かけ、皆で海岸を探索していた。<br>「そういえば　そろそろ約束の期限ね。これからどうするの」<br>車椅子を押しながら良子さんは聞いてきた。　約束の時間は過ぎようとしていた。<br>「通信の高校に行こうかと思うんです」<br>「そう　いいと思う」<br>「大学にも行きたいし　でも……」<br><br>何も言わない僕に良子さんは言った。<br><br>「ね　きっと　居場所は見つかると思う。社会は広いしこの海の向こうにも<br>居場所が有るかもしれない。もちろんないかもしれない。それは誰にも分からない。<br><br>でもここに居る高齢者の方達だって多かれ少なかれ<br>自分の居場所が無いと思ってる。家族と過ごしたいと。それでも色んな理由でここに居るの。<br>だから代わりに私が居場所になってるつもり。代わりになってるかどうか知らないけど<br>あなたも居場所が見つからなかったらまたここに来ればいい　待ってるから」<br><br>良子さんの帽子が風に飛ばされた。波打ち際を転々とする帽子を捕まえようと必死になるが中々捕まらない。<br>その様子は少し滑稽で皆が笑う。<br>笑いながら、僕はそっと涙を拭った。　
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<pubDate>Sat, 01 Aug 2015 09:18:19 +0900</pubDate>
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<title>檸檬の行方</title>
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<![CDATA[ 江戸時代　享保元年の頃。<br>江戸の小伝馬町辺り。<br><br>少女は両親と共に長屋暮らしをしていた。年は数えでⅠ４、５と言った所か。<br>彼女の親は小さな呉服屋を営んでいた。<br>貧しいながらも幸せな家庭だった。<br><br>「悪いがこれを柳さんのところへ」<br><br>少女は着物を渡されて頷いた。いつものようにお使いに出かける。<br>「あれ　お父さんにお使いでも頼まれたのかい　大変だね」<br>少女は長屋の住人に声をかけられる。<br>「ええ　慣れてますから」<br>長屋を出るときに一人の長髪の青年とすれ違った。<br>少女は何回か青年を見かけた事はあるけれども話を交わした事は無い。<br><br><br>青年は不思議な人間だった。<br>年は２２、３と言った所。<br>日中は何をするまでもなくブラブラとしてたまに部屋で絵を描いている。<br>夜になるとどこかに出かけていく。遊郭に入り浸っているという話だった。<br>何を生業としているのかよくわからず長屋連中はあれこれと噂をした。<br><br>両親は言った。<br>「あの男には近寄るんじゃないよ　お前はおぼこな娘だから」<br>少女はこくりと頷いた。<br><br>ある日少女が青年の部屋を通り過ぎると青年は何かを描いている。<br>黄色い丸い食物のようだ。何か良いにおいがする。<br>青年はそれを台の上に置きひたすら描いていた。<br>少女はその様子をひたすら見ていた。動こうとするが動けない。<br>青年は少女が見ているのを知ってか知らずかただひたすら描いていく。<br><br>「何か用かな」<br>青年は口を開く。低いドスの利いた声だった。<br>「いえ　失礼しました　ただ」<br>少女は顔を赤らめて言う。<br>「それは何ですか」<br>台の上にのせられた黄色い物をさす。<br>「これ？　これは檸檬だよ　江戸の人間は殆どが知らないだろうね。<br>異国の物だから　食べてみるかい」<br>そう言って青年は檸檬を器用に小さく輪切りにした。<br>檸檬は薄く切られて少女の前に差し出された。<br>青年はそれを少女の口に含ませた。<br>少女はその酸っぱさに顔をしかめる。今まで口にした事の無い類いの物だ。<br>青年はそれを見て笑う。<br>「またおいで」<br><br><br>少女はたびたび青年の部屋に訪れるようになっていた。<br><br>青年の描く絵はどこか優しさが有った。少女はその繊細なタッチに見とれる。<br><br>青年のへやには見た事も無い品物がたくさん有った。異国の物らしい。<br>「どこから手に入れるのですか」<br>少女は聞いた。<br>「ルートが有ってね」<br>そういって青年は笑った。すこし悪戯っぽい表情で。<br><br>青年は江戸で暗躍する密輸ルートの元締めをする組織の一員だった。<br>「江戸には金持ちが多くてね　そういった羽振りの良い商人　金貸しや御家人連中にこういった商品を売るのさ　飛ぶように売れる」<br>そういって檸檬をくるくる回した。<br><br>「お役人様に見つかったらどうするんですか」<br>「袖の下を握らせてるから大丈夫だよ　あいつらの扱いには慣れてるから」<br><br>逢瀬の度に青年は檸檬を輪切りにして少女に食べさせた。<br>こうすると躯から良い香りがするだろう。そう言いながら少女の髷から簪を抜く。<br>少女は笑う。体からは檸檬の匂いが抜けなくなっていた。<br><br><br>少女は１６になった。もう嫁入りする年頃である。<br>長屋の人間は少女が美しくなったという。<br>母親は縁談の話を進めている。<br>「好い所に嫁入りをさせてあげるね」と。<br><br><br>今日も少女は青年と逢い引きをしていた。<br>「異国をいつか見てみたいんだ」<br>青年は煙管の灰を灰吹きに落としながら言う。<br>そうして少女を腕の中で抱えながら頬を軽くなでた。<br>「渡航の話も来ている」<br>少女は驚きながら青年の顔を見る。<br>「見つかったら死罪ですよ」<br>「分かってる　覚悟の上だ　このチャンスを逃したら次は無いかもしれない」<br>「では　私も連れて行ってください」<br>「それは駄目だ　君の両親が悲しむ」<br>「私が御嫌いですか」<br>少女の問いに青年は無言のまま、少女を抱き寄せた。少女を抱きながら青年は遠くを見ていた。<br><br>青年が奉行所に連れて行かれたという噂が<br>流れたのはそれから少し後だった。死罪になったとも<br>流刑になったとも云われた。青年の行方は誰にも分からなかった。<br><br><br>少女は泣く。何故私を連れて行かなかったのかと。<br><br><br><br>少女の縁談が決まった。初詣のときに見初められたのだ。<br>相手は向かいの米屋のせがれだった。<br>少女の両親は嫁入り先が定まると満面の笑みでこの縁談を喜んだ。<br><br>祝言の席で少女は顔を上げる。米屋のせがれが少女を見つめる。<br>「あなたは良い香りがしますね　今までかいだ事の無い香りが」<br>米屋のせがれは少女のほほをそっと撫でる。<br>丸顔のせがれを見ながら少女は思う。<br>この人を愛せるのかと。<br><br><br>檸檬の行方は誰も知らない。
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<link>https://ameblo.jp/ryuno-sukee/entry-12034792757.html</link>
<pubDate>Thu, 04 Jun 2015 09:13:47 +0900</pubDate>
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<title>今　ここにいる７</title>
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<![CDATA[ あかりの父親はあかリから事の顛末を聞いた。<br>「彼も一つ何かを乗り越えようとしているんだろうな」<br>「宮坂さんの絵って残ってないの？」「お前は知らない方が良いと思ったが　宮坂さんの絵は母さんが全部焼いたんだ　唯一のこった絵<br>があれ　信州での母さんの絵だよ」<br>あかリは驚いて口に手をやった。<br><br>「まあいろいろ有ったんだ　母さん不安定だったし」<br>あかりの父親は言った。<br>「母さんと同じ構図で芸大生は絵を描いてるんだって。まあ時間が<br>かかるんだろうな　そう簡単に出来ないよ。」<br>「そういうものかな」<br>「ずっと時間がかかる　それでも彼はいつかやり遂げるだろう。彼な<br>らいつか宮坂君を超える絵を描けるかもしれないな　彼なりに」<br>あかりの父親は　そういって微笑んだ。<br>「凡人なりに」と付け加えるのも忘れなかった。<br>あかリは苦笑いをした。<br><br><br>夏の日がすぎて　中田は一心不乱に絵を描き続けていた。<br>一頃の不振が嘘のように次々と作品を完成させていく。<br><br>「なにか少しずつ前に進みつつ有る気がする」<br>「そう　良かったですね」<br>あかリは言った。嬉しそうだ。<br>「うん　いや　あかリさんのお陰だよ」<br>あかりは顔が赤くなった。<br>「自分の才能の無さに嘆いてばかりじゃいけないってね」<br>「そうですか」<br>「ようやく　気がついたんだ　自分の絵を描けばいいという事に」<br>中田の目には少し迷いが無くなっている。<br>あかりは大きく頷いた。<br><br><br><br><br><br><br><br>数年後国展の一番良い場所に其の絵は飾られていた　いつか長野<br>で中田があかりを描いた絵だ。<br><br>「ねえ　ママ　これパパの絵？」<br>５歳の娘の手を握りながらあかりが言った。<br><br>「そうよ　パパねえ　１０年かけてこの絵を完成させたの」<br><br>中田は中学の美術の教員をやりながらいくつか絵を完成させていた<br>彼の絵は画壇で少しずつ話題になっていた<br><br>「あかり　あの芸大生は宮坂君に比べれば才能はない。だからお前が<br>高見に導けばいい。お前の母親がそうだったように<br><br>今思えば　宮坂君の圧倒的な才能はあゆみが居てこそだった　あゆみは宮坂君<br>の才能をさらに高める役割をしていた　自分でも気付かないうちに<br>な」<br>あかりの父親はかつてそう言った。　<br><br>あかリはそれを思い出していた.<br><br><br>少しずつではあるが夫は高見にたどり着きつつ有る。人には才能の限<br>界がある　自分のペースでいいのだ　<br>あかりはそう思った。<br>宮坂さんのようにはなれない　でもそれでいい。<br><br>見ると夫があかリの両親と談笑しながらやってくるのが見えた。<br><br><br>娘が３人の方へ駆け出した<br><br>「こらこら走らないの」あかりは笑いながらそう言った。４人が手<br>を振る　あかりは大きく手を振り返した。<br><br><br>終<br>
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<link>https://ameblo.jp/ryuno-sukee/entry-12022961528.html</link>
<pubDate>Tue, 05 May 2015 22:04:10 +0900</pubDate>
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<title>今　ここにいる6</title>
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<![CDATA[ それほど宮坂の絵は迫力が有り心に迫りくるものが有る。見るものを鷲ずかみにし<br>荒々しい迫力で絵の中に引きずり込む。そうしたタイプの絵をこれまで彼は見た事すら無かった。宮坂の絵は圧倒的な力強さ、荒々しさ、そして生々しさが有った。<br>そこにはただ現実が有る。時間軸を超え見ているだけで圧倒的な現実感が有った。<br>中田はただ立ち尽くしていた。<br>声にはならないうめき声を上げながら。<br><br>その側であかりはじっと絵を見つめていた。そこには優しさがあふれていた。<br>２０年前の信州の事だというのに彼女の母親のあゆみがその絵には息ずいている。<br>若い頃のまだ母親ではないあゆみの姿。<br>恋人を無邪気に見つめるその姿にあかりは魅了された。<br>夏の信州の２０年以上前のまだ恋人同士だった２人。<br>そこには父親の姿は無い。でもあゆみは幸せそうだった。<br>その事に悲しく思う。それでも幸せそうな絵から伝わってくる幸福感にあかリは目を離せずに居た。<br>２人はずっと絵の世界に浸っていた。中田は打ちのめされ、あかりは母親の幸福感と一体となっていた。どれ程絵を見つめていただろう。<br>中田はようやく立ち直り言った。<br>「行こうか」<br>中田が言って二人は美術館の外に出た。帰りの東京に向かう電車の中で<br><br>「宮坂さんの絵は　僕とはレベルが違った。あれ<br>こそが天賦の才能って言うんだろうな僕の技量ではあのレベルには<br>とても到達出来ない。出来れば宮坂さんの作品をもっと見たかった。<br>その才能に打ちのめされたとしても」<br>中田はそういった。<br>「中田先輩も素晴らしい絵が描けるじゃないですか」あかリは励ました。<br>確かに宮坂程ではないにしても中田の世界が有る。<br>あかりは中田の描く絵がただただ好きだった。<br>彼の描く優しい世界。生々しい現実を描き出す宮坂と違って中田の描く絵はうららかな午後の休日を思わせた。彼の絵を見ると人は自然に顔がほころぶ。<br>彼の絵には小さな小さな幸せが存在していた。<br>「いや僕なんてたいした才能じゃないよ。自分が芸大に入ってみて<br>よくわかったんだ。宮坂さんのようにはなれない」<br>中田は全国から集まる才能の固まりのような美大生達と混じっていてずっと悩んでいるようだった。高校時代とは違い彼は絵を描いていても没頭出来なかった。<br>彼の描き出す世界は芸大達の醸し出す才能の荒波の前で吹き飛ばされていった。<br>構築された世界はもろくも崩れていく。中田はそうした現実にただただ呆然とするばかりで絵筆を持つ事すら辛かった。<br>今日宮坂の絵を見るまではそうした現実に何とか目をそらしつつ絵の制作を進める事が出来た。でも宮坂の絵を見て彼はようやく現実に気がついた。<br>薄々判っていたが彼は高校時代のような狭い世界でしか輝けない事を。<br>より広い世界に出たとき彼は無力だった。<br>所詮その程度の才能だったのだ。中田はうめいた。<br><br>そんな中田の姿を見つつもあかりは母親の幸福感を忘れられずに居た。<br>絵の中のあゆみは本当に光り輝き幸せそうだった。<br>恋人と一緒に居る幸福感それはあかリが今まで見た事も無いようなものだった。<br>あかりはようやく母親を許せそうな気がした。<br>自分が味わったものだったから。<br>常磐線に揺られながら中田とあかリは対照的な感情に浸っていた。<br><br>後日　あかりは　あかりの父親に宮坂さんの絵を見に行った事を告げた。<br>しばらく無言だったあかリの父親はぽつりと言った。<br>「絵の中の母さんは仕合せそうだっただろう」<br>あかリは頷いた。<br>「母さんは本当に幸せそうだった。宮坂君と居ると」<br>あかリは何も言えない。<br>「でも母さんを置いて死んでしまった」<br>あかりの父親はそういうと無言になった。しばらく沈黙が続いたがやがて口を開いた。<br><br>「それと彼はショックを受けていただろう」<br>中田の様子を思い出してあかりは無言で頷いた。<br>「あかり　人は圧倒的な才能を前にした時畏怖するしかない。我々のよ<br>うな凡人には天才の持つ才能を理解出来ないだろうからね。あの芸<br>大生もそれを悟ったんだろう。彼にはきつい事かもしれない。自分<br>の才能の限界を知るのは」<br><br>「でも偉大な才能に出会える事もいい事じゃないの」<br>あかリは聞いた。<br>「打ちのめされるのは辛い事なんだよ。でも宮坂君は_キャンバスの<br>前以外では普通の人間だった。だから父さんも普通に付き合えた」<br>「そうなんだ」<br>「あの芸大生は普通の人間だね」そういいあかりの父親は笑った。<br>「ちゃんと才能有るわよ」<br>あかリは不服そうに言った。中田はこの頃悩んでいるようだった　　<br>彼はこのごろ絵を描いては居ない。<br>大学の授業も休みがちだ。<br>あかりが芸大の中田の所を訪れると中田は聞いた。<br>「ああ　あかりさん　君大学は良いの」<br>「文学部は少し休みに入るのが早いんですよ」<br>「そうなんだ」<br>中田は言うがその表情はどこか上の空だ。<br>「あの　長野に行きませんか」あかリは突然言った。<br><br>「長野？」中田は不思議そうに聞いた。あかリは頷いた。<br>「たまには気分転換もいいか」<br>煮詰まった気分も晴れますよ。　あかリは言った。<br>「そうだねいいかもしれない　あかリさんありがとう」<br><br>帰り道には中田は軽口を叩きながら大学の事をいくつか話して聞か<br>せた。あかリは笑いながら耳を傾けていた。<br><br>「夏の信州は格別だな」中田は言った。二人は長野の別荘に来て<br>いた。中田の親戚が所有している。あかリ達は夏の長野を当ても無く歩き続けていた。<br>「ここら辺でスケッチをしようと思うんだけど」<br>何時間か歩き回った末に中田は言った。２人ともいい加減疲れていた。<br>あかリは頷く。その表情はどこか緩んでいる。<br>「気持ちいいですね」<br>いつの間にかあかリは麦わら帽子を取り出して歩き出した_風景画<br>を描いていた中田は思わず筆を止めて其の光景に見入った_<br>「あかりさんそれ」<br><br>あかりの醸し出す情景は　宮坂が描いたあゆみの絵とそっくりだっ<br>た_<br>「ひょっとしてあの絵ここで描いたの」　<br>中田はようやく気がついた。_あかリに先導されてここまで来た事に__<br>「そう　ここいいでしょ　お母さんに聴いたんだ」<br>あかリははにかみながら言った<br>「あかりさん　ちょっと立ち止まってみて」<br>中田はあかリの方を向いて一心にクロッキーをし始めた。あかりは<br>ぼんやりと遠くを見つめるポーズをとったそれは彼女の母親が昔こ<br>こでとったポーズだった。<br>「何か初めて人物画を描いている気がする」中田は言った。<br>あかりはただ遠くを見つめていた。<br><br><br>常磐線を使って　二人はまた宮坂の美術館に来ていた。<br>「やっぱり全然迫力が違うわ」あゆみの絵の前で中田は言った。<br>やはりそこだけ違う時間軸が流れている。２人はこの前の信州での<br><br>「そんな事無いですよ」あかリは言う。<br>「いやまあ　この前の絵は少しずつ完成させるよ　初めて人物画に<br>真っ正面に取り組んだんだ　少し前に進めたと思う」<br>中田は言った。<br>「でも不思議だな　宮坂さんの絵はこの絵以外はスケッチの絵以外<br>残されていないんだよな　残りの絵はどうしたんだろう」<br>「この絵しか生涯完成出来なかったとか」<br>「それはない　宮坂さんは２１の時交通事故で死んだけど_それまで<br>に何枚も完成させていたはずだ」<br>中田は不思議そうに言ったのであかりは首を傾げた。<br>宮坂の絵はそれしか残されてなかった。　<br>残りはどこかに有るのか　<br>それを知る手だては無かった。<br>帰りの電車の中で中田は言った。彼は決心していた。<br>「教職課程の方に進むよ」<br>中学の美術の教師に成ろうと思っていたのだ。<br>「絵の方はいいんですか」<br>「別に教師になりながらでも絵は描き続けられるからね_いつか宮坂<br>さんの領域に近ずきたいんだ」<br>中田はそういって微笑んだ。<br>「中田さんは中田さんなりにやればいいんですよ」<br>あかリは励ました。あかりは中田の絵が好きだった。<br>そこには彼なりの優しさと慈愛が有る。<br>宮坂の絵にはそれは無い。<br>冷徹な現実がそこには有るだけだ。<br>それでもあかりの母親を描く絵には暖かみが有った。<br><br>「そういうものかな」<br>「そうですよ」<br>中田はあかりの方をちらりと見るとまた絵の制作の方に戻った。<br>「きっといつか自分の絵に自信が持てる日がくるのかな」<br>中田はぽつりと呟いた。<br>
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<link>https://ameblo.jp/ryuno-sukee/entry-12022960098.html</link>
<pubDate>Tue, 05 May 2015 22:03:34 +0900</pubDate>
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