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<title>清らかな音のなかで</title>
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<description>この世界は何も変わっていないのに、あなただけが私のとなりからいなくなってしまった。神様、愛する人を失うことは何故こんなにも辛くて苦しいのでしょう．．．</description>
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<title>美歌の恋の行方</title>
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<![CDATA[ <p>１１月になるとヨーロッパではクリスマスムードが高まり、私の住む街でもオーナメントやリースなどを見かける機会が多くなりました。</p><p>今月の半ばからは「クリスマス市」が始まり、街の広場では大きなクリスマスツリーもお目見え予定。</p><p>ご近所のアパートは大家さんがイベント好きな方らしく、早速きれいなイルミネーションを飾っています。</p><br>学園祭の当日は朝から青空が広がり、二日前まで降っていた雨も乾いたようでした。校門をくぐると色とりどりの風船やチラシを持った学生がすでに客引きをしていて、ほんの100ｍ歩いたら両手がいっぱいです。 <p>さて、親友の美歌から強制的に（？）学園祭で模擬店を手伝うよう頼まれた私は準備のため控え室へ向かいました。</p><p>教室の机を後ろに寄せて作った控え室では、テーブルやメニューのセッティングに早く来ていた美歌が待ってい</p><p>るはずです。</p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p><p><font color="#ff00ff">「おはようございます、水川です」</font></p><p>ノックをして中に入ると、ブルーのメイド服に身を包んだ女の子の後姿が飛び込んできました。</p><p>「あ、詩音。おはよう」</p><p>元気な声でふり返った美歌は髪を一つにまとめ白いリボンを結んでいます。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌、どうし．．．」</font></p><p>何故そんな格好をしているのか聞こうとした私を遮り、早口で話し出しました。</p><p>「だって、私もウェイトレスやるに決まってるじゃん？詩音だけに頼むわけないよ～！」</p><p>先日の衣装合わせの際も美歌は見ているだけだったので、てっきりキッチンやお会計を担当するのだと思っていたのです。</p><p>「それより、詩音。早く着替えないと時間ないから。あ、こないだ渡したメニュー表は目を通してくれた？」</p><p>メニューを覚えていないとオーダーが取れないからと、2週間ほど前にもらっていました。</p><p><font color="#ff00ff">「うん、ドリンク種類が多いんだね」</font></p><br><p>コーヒーやココア、ジュースに加えフレーバーティーまであります。ケーキとクッキー、サンドイッチはキッチン担当のひとが手作りするということでした。</p><p>「最初はお客さん少ないと思うし大丈夫だよ。午後になっても増えなければ詩音には休んでもらえるし」</p><p>私は午前10時からお昼まで、午後は2時から4時までの予定です。こんな格好を見られたくないのでお客さんが少ない方がいいけれど、あまり来ないのも何だか複雑な気分。</p><p>そんなことを考えている間にオープンの時間は刻一刻と迫ってきているのでした。</p><br><p>用意を終えて美歌と一緒にカフェとなる教室へ行くと、教壇や机は全て運び出され真っ白なクロスのかかったテーブルが並んでいます。</p><p>私たちの他に蝶ネクタイをつけたウェイターが2人なので、1人が5つのテーブルを担当しなくてはなりません。</p><p>誰がどこを担当するか決めているところへ、海原先輩がヴァイオリンやフルートを持った人たちと入ってきまし</p><p>た。</p><br><p>「水川さん、朝早くから来てくれてありがとう。今日から3日間よろしくお願いします」</p><p>ドリンクを頼むと前方のステージでリクエスト曲を演奏するので、レッスン室で調整をしていたのでしょう。</p><p><font color="#ff00ff">「いえ、お役に立てるか分からないですけど．．．がんばります」</font></p><p><font color="#000000">内心はどうかお客さんが来ませんようにと願いつつ答えます。</font></p><p>「うちはメンバーが少ないから本当に助かるよ。青木が水川さんたちを紹介してくれなかったら」</p><p>水川さんたち．．．？美歌は私のほかにも誰か紹介したのでしょうか。</p><p><font color="#ff00ff">「私以外にもサークルのメンバーじゃないけれど、お手伝いに来る方がいるんですか？」</font></p><p>海原先輩はうなずきます。</p><p>「うん、ウェイターをやってくれる男の子を紹介してくれたんだ。青木は1年生なのに助けてもらってばかりで」</p><p>もともと美歌は正義感が強く頼りになる性格ですが、相手が海原先輩だからこそ一生懸命なんじゃないかと思います。</p><p><font color="#ff00ff">「そうなんですか、夏休み明けから準備も忙しかったみたいですし大変だったんですね」</font></p><p>すると、海原先輩はウェイターの男の子たちと何か話をしている美歌の方へ視線を向けました。</p><p>「青木の明るさに励まされたら本番までやってこれたのかな．．．あ、オープン前に実行委員の本部行かないといけないんだ。とにかく、よろしくお願いします」</p><p>時計を確かめると、慌しく教室を出て行ってしまいました。そんな後ろ姿を眺めながら、私は美歌の恋が叶いそうな予感に思わず笑みが零れていたようです。</p><p><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#000000"><br></font><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10054679382.html</link>
<pubDate>Fri, 09 Nov 2007 18:04:56 +0900</pubDate>
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<title>先生の反応は</title>
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<![CDATA[ <p>美歌の恋に協力するため（?）、半ば無理矢理参加することとなった学園祭。</p><p>キャンパスは日に日に慌しい雰囲気に包まれ、正門や中庭を色とりどりの看板が飾っています。</p><p>もともと正式なサークルのメンバーでない私は当日の手伝いをお願いされていましたが、本番まで2週間となった昼休み美加と一緒に部室を訪れました。</p><p>使用するコスチュームが届いたから一度試着してほしいということです。部室はダンボールやガムテープが散らばっていて、足の踏み場もありません。</p><p> </p><p>メイドさんといえば映画やドラマに出てくるような、黒いワンピースに真っ白なエプロンの印象が強いです。</p><p>しかし奥から衣装を手に近付いてくる美歌を見て正直、泣きたくなってしまいました。</p><p>「はい、詩音。これ着てみて？サイズ少し大きいかな．．．私は外にいるから準備整ったら呼んでね」</p><p>何事もないかのように手渡され呆然とする私を置き去りにして、さっさと出て行っていこうとします。</p><p><font color="#ff00ff">「ちょっと、美歌！これ何でピンク色なの？普通メイドさんていえば黒じゃない」</font></p><p>先日の一件で言い争っても勝てないことは分かっていますが、抗議せずにはいられません。</p><p>「最近はピンクとかブルーとはカワイイメイド服が増えてるんだよ。ほら、早くしないと昼休み終わっちゃうよ」</p><p>多分、いえ絶対に私がこれ以上何か言っても無駄です。ため息をつきながらコスチュームに袖を通しました。</p><p>サイズはぴったりなのですが、袖と胸元についているリボンが気になります。</p><p>「詩音、よく似合ってるよ～！後このレースのカチューシャを付けてね」</p><p>部室に鏡がないため自分では見られないのですが、できることなら一生見たくないと思ってしまいました。</p><p> </p><p>その日の夜、夕食の片付けをしながら桜井先生にどう話そうか考えていたらタイミング良く電話が鳴っています。</p><p>あわてて手を拭きながら液晶画面を確認すると先生の名前が。テレパシーが通じたようでびっくりです。</p><p><font color="#ff00ff">「もしもし、響一さん？」</font></p><p>ようやく私も名前を呼ぶことに慣れた気がします。</p><p><font color="#0000ff">「もしもし、詩音。ヴァイオリンの練習してた？」</font></p><p>10月に入って委員会や会議が続いた先生は忙しそうでしたが、そろそろ落ち着いたでしょうか。</p><p><font color="#ff00ff">「ううん、荒いものしてたの。響一さんは帰って来たばかり？」</font></p><p>先生から聞いて初めて知ったのですが、長い会議になると4時間以上かかることも珍しくないそうです。</p><p><font color="#0000ff">「今日は委員会に提出する書類が溜まってて、ひたすら机に向かってたよ。学園祭が始まってくれると授業がないから少し休めるんだけどな」</font></p><p><font color="#000000">私よりも早く先生から学園祭の話題がでました。</font></p><p><font color="#ff00ff">「疲れてるみたいだけど大丈夫？あまり無理しないでね。もう、ご飯は食べた？」</font></p><p>こないだ忙しいと昼食が取れないと聞いたので心配になります。</p><p><font color="#0000ff">「大丈夫だよ、夕食も済ませてきたしね。詩音こそ学園祭の準備が忙しいんじゃないのか？」</font></p><p><font color="#000000">少し前に美歌のサークルが主催する模擬店を手伝うとは話したのですが、そのときは時間がなく詳しい話ができませんでした。</font></p><p><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#ff00ff">「手伝うことになったのは当日だけなの。カフェをやるからウェイトレスを頼まれててね」</font></p><p>昼休みに試着したコスチュームが頭に浮かんできます。</p><p><font color="#0000ff">「そうか、人数の少ない団体は手が足りなくて一日中店番したなんていう話を聞くよ。ほどほどにお客さんが来るといいね。毎年ジャズ喫茶とか色々あるけど、普通のカフェなの？」</font></p><p>いいえ、全く普通ではありません。しかしこのまま黙っているわけにもいかず、意を決して口を開きました。</p><p><font color="#ff00ff">「．．．．．．．あのね、カフェはカフェなんだけどメイド＆執事カフェなんだって。一応、音大だから生演奏なんかもやるらしいんだけど」</font></p><p>どうやら1年生は全員ウェイトレスかウェイター、上級生が生演奏を担当するらしいのです。</p><p><font color="#0000ff">「メイド＆執事カフェ．．．？」</font></p><p>電話の向こうで先生が沈黙しています。</p><p><font color="#ff00ff">「うん、私ウェイトレスはいやだって断ったんだけど。美歌にどうしても人手が足りないから助けてほしいって．．．」</font></p><p>経緯を手短に話す間も先生は何も言いません。どれくらい時間が経ったのでしょうか、唐突に先生が話し始めました。</p><p><font color="#0000ff">「．．．．．きっとお客さんがたくさん来るだろうな。行列ができるかもしれないよ」</font></p><p>そんなに来るとは思えません。できれば人が来なくてひまだから手伝いが要らなくなったと言われたいです。</p><p><font color="#ff00ff">「どうだろう？他にも色々な模擬店あるし、私はあんまり忙しくない方がいいなぁ」</font></p><p><font color="#000000">しかし先生は断言します。</font></p><p><font color="#0000ff">「絶対に大繁盛するよ。それにしても実行委員会がよく許可したな。大変だろうけど、友達のためにがんばって」</font></p><br><p>最後に先生は学園祭中も研究室で仕事をする予定だと聞いて電話を切りました。</p><p>授業がないこの期間を利用してデスクワークを片付ける先生は多いそうです。</p><p>窓を開けると頬を冷たい風が掠めます。澄んだ空に輝く星を見つつ、こうなったら美歌には海原先輩との恋を成就してもらわなければと決意する私でした。</p><br><p><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#0000ff"><br></font></p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10051644166.html</link>
<pubDate>Fri, 19 Oct 2007 03:29:31 +0900</pubDate>
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<title>美歌の恋のお手伝い．．．？</title>
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<![CDATA[ <p>夏休みが終わり秋の気配が色濃くなる頃、キャンパスも普段の喧騒を取り戻していました。</p><p>学内のいたるところで11月に行われる学園祭の準備が進められているようで、授業中もそわそわと落ち着かない雰囲気が漂っているのが分かります。</p><p>部活やサークルに所属していない私とは対照的に、美歌は連日サークルの集まりで忙しそうでした。</p><p>授業が終わると文化祭の準備のためかすぐに教室を飛び出して行ってしまい、昼休みも一緒に過ごせないことが多く私は自然と図書館や練習室へ足を向ける回数が多くなります。</p><p>そんな日が2週間近く続いたとき美歌からメールをもらいました。</p><br><p>『詩音、今日のお昼休み時間あるかな～？ちょっと聞いてほしい話があるんだ。</p><p>サークル関係なんだけど、ちょっと困ってて．．．詳しくは後で話すからお願い！！』</p><p>特に何か用事があるというわけではないので大丈夫です。しかし、サークル関係で私が役に立つのか少し不思議に思ったものの返信しました。</p><p><font color="#ff00ff">『いいよ、お昼休みね。私が手助けになるか分からないけど、美歌の頼みなら力になりたいし。</font></p><p><font color="#ff00ff">2限がいつもオーバーして終わるから少し遅くなるかもしれないから、先に学食で待ってて？』</font></p><p>2限の教室を出て時計を確認すると予想通り終了時間を10分も過ぎ、構内は学生でにぎわっています。</p><p>急いで学食へ向かったのですが、すでに大混雑。午前は授業がない美歌が先に席を取っておいてくれるので、姿を捜しながら奥の方へ向かいました。</p><br><p>すると右手から「詩音、こっちこっち！」と呼ぶ声が聞こえ、狭いテーブルの間をすり抜けるようにして進みます。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌、ごめんね。待たせちゃって」</font></p><p>壁際の席で手を振っている美歌が目に入り呼びかけた瞬間、隣の席に座っている男性が私の方へ会釈しました。</p><p>他に誰か来るとは知らなかったので怪訝に思いつつ、空いている席に座ります。美歌とその男性はまだ注文していないのか、何も置かれていません。</p><p><font color="#ff00ff">「先に食べててもらえば良かったね。あの．．．」</font></p><p>そこまで言ったとき男性が立ち上がりました。</p><p>「食券を買っておいたんです。オムライスなんですけど大丈夫ですか？」</p><p>オムライスは学食で一番人気にメニューで一日50食限定です。以前から食べてみたかったのですが、昼休みが始まる前には売切れてしまうためお目にかかれずにいました。</p><p><font color="#ff00ff">「あ、はい。すいません．．．」</font></p><p>注文口に向かう男性に美歌が声をかけています。</p><p>「海原先輩、3個も一人で持つの大変ですから私も一緒に行きますよ」</p><p>しかし大丈夫だと言われ、すぐに席へ戻ってきました。私は今さっき名前を知ったばかりの人が誰なのか聞こうと早速口を開きます。</p><br><p><font color="#ff00ff">「ちょっと、美歌。他にも人がいるなんて知らなかったよ。先輩って呼んでたけど、同じサークルの人なの？」</font></p><p>矢継ぎ早に話す私に向かって美歌は「ごめん」と手を合わせる仕草をしました。</p><p>「うん、サークルの部長でピアノ科3年生の海原先輩。ね、詩音。私、先輩のこと好きなの。協力して！！」</p><p>もちろん、美歌の恋に協力したいところですが初めて会ったばかりの人です。第一、まだ何に困っているのかも分かりません。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌に協力するけど、どうしたの突然？サークル関係で聞いてほしい話っていうのは？」</font></p><p>私が本来の要件を確認しようとした瞬間、美歌がなぜか気まずそうな表情に変わります。真意が分からずもう一度聞こうとしたのですが、両手にトレーを抱えた海原先輩が戻ってきてしまいました。</p><p>「詩音、お願い。詳しい話は後でするから、ここは私のためにね？」</p><p>素早く私に耳打ちをすると立ち上がり先輩が持っているトレーを一つ受け取っています。私もお礼を言ってオムライスのお皿を前にしたのですが結局、美歌の言葉が気になり味わう余裕がありませんでした。</p><br><p>ある程度食べ終えたころ、海原先輩が口を開きました。</p><p>「水川さん、時間作ってくれてありがとう。青木に聞いて早く会ったほうがいいと思って。もう大体の話は青木がしてるみたいだけど、どうかな？」</p><p>一体全体、私には訳が分かりません。あわてて美歌の方へ視線をむけると、首を縦に振るジェスチャーをしています。</p><p><font color="#ff00ff">「．．．．．あ、はい。そうですね、大まかにですけど」</font></p><p><font color="#000000">とりあえず返事をしたものの、海原先輩は完全に私が把握している前提で話を進めていきます。</font></p><p>「まだ決まっていない部分なんかもあるし、水川さんには当日だけ参加してもらっても構わないから」</p><p>ますます混乱してきました。どうやら学園祭に関わる内容なのでしょうが、いつの間にか私も参加する予定になっています。</p><p><font color="#ff00ff">「え？ちょっと、よく．．．」</font></p><p><font color="#000000">しかし私の疑問の声は美歌にさえぎられてしまいました。</font></p><p>「先輩、詩音は当日の参加は大丈夫だって言ってたんで後はまた決まってからでも」</p><p>こちらへ小さく手を合わせながら早口で話します。すると海原先輩もうなずく仕草を見せました。</p><p>「そうだね、じゃあ水川さんには手伝ってもらえるということで。よろしくお願いします」</p><p>最後まで肝心な部分を聞くことができず、話はまとまに入っています。美歌はといえば指で「ｏｋ」のサインを出していました。</p><p>そして畳み掛けるように続けます。</p><p>「詩音そろそろ授業始まるし行こうか。返事はもちろんｏｋだよね？」</p><p>ここで私が「いいえ」と言いだす雰囲気ではなく、半ばあきらめに似た気分でした。</p><p><font color="#ff00ff">「う、うん。それじゃあ、また何か決まったら教えてください」</font></p><p>3限がないという海原先輩にオムライスをご馳走になったお礼をして、美歌の腕をつかんで学食を後にします。</p><br><p><font color="#ff00ff">「ちょっと、美歌！学園祭を手伝うとか私ぜんぜん聞いてないよ。もう、どういうつもり？」</font></p><p>いつもより心なしか声が大きくなります。しかし美歌は相変わらずニコニコしたまま話し始めました。</p><p>「実はね、うちのサークルで学園祭に模擬店を出すことになったんだ。けれど、ウェイトレスが足りなくて困ちゃって。ほら、サークル立ち上げて2年目だから先輩が少ないし」</p><p>私は他に参加するわけではないのでウェイトレスくらい構いませんが、どうして最初から話してくれなかったのか引っかかります。</p><p><font color="#ff00ff">「それは大丈夫だけど、何でいきなり？わざわざ部長さんまで来るなんて、ただのウェイトレスなんでしょう？」</font></p><p>すると美歌はさきほど見せた気まずそうな表情になり、黙ってしまいました。いよいよ気になります。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌？」</font></p><p><font color="#000000">少しだけ迷う素振りをしましたが、またいつもの笑顔に戻った美歌は意を決したのか一息に言いました。</font></p><p>「うん、ウェイトレスはウイートレスだよ。コスチュームはメイドだけどね」</p><p>コスチュームがメイド．．．．．？そうです、何と学園祭でメイドカフェをやることにしたらしいのです。</p><p><font color="#ff00ff">「メイドって、私いやだよ！？第一そんなの学園祭実行委員会が許可しないんじゃない？」</font></p><p>しかし私の抵抗はあっさり打ち砕かれてしまいました。</p><p>「実行委員会の許可は下りてるよ～！ほらジャズ喫茶とかクラシック喫茶は毎年あるけど、メイド＆執事カフェは初めてだって。あ、もちろん音大なんだからお客様のリクエストに答えて演奏もするし」</p><p>実行委員会は何を考えているのかと思いつつ、さらに抵抗を続けます。</p><p><font color="#ff00ff">「やだ、私は絶対に行かないよ。もう、最初から変だと思ってたんだ。申し訳ないけど、海原先輩に伝えておいて」</font></p><p>これくらいで美歌がめげるはずもなく、私の肩をぽんぽん叩きながらニコニコしています。</p><p>「ね、私の恋に協力すると思って？もちろん売り上げが良かったらお礼もするし、準備なんかはしなくて大丈夫だから」</p><p>さらに絶句している私に畳みかけてきました。</p><p>「メイドカフェを言い出したのは海原先輩の親友なんだけど、準備は全然手伝ってくれなくて。キッチンやお会計、呼び込みなんかにも人員がいるから本当に人手が足りないんだよ。海原先輩があまりにも困ってたから、ウェイトレスを手伝ってくれる友達を紹介しますって言っちゃったんだもん。」</p><p>好きな人の力になりたい気持ちは分かりますが、いくらなんでも無茶苦茶です。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌、キッチンや呼び込みなら手伝うよ？」</font></p><p>正直、料理の腕には自信ありませんがウェイトレスに比べれば手伝えます。</p><p>「キッチンは男子でもできるけど、ウェイトレスは女子がいないと。詩音、私の一生のお願いだから」</p><p>結局この後3限の授業を忘れて延々、美歌の説得は続き遂に私は了承させられたのでした。</p><br><p>本当に美歌には勝てません。普通なら怒るような話でも、なぜか美歌が相手だと最後には許してしまうのです。</p><p>こうして思いがけず参加することになった学園祭。私は桜井先生にどう話そうか迷いつつ、次の授業へ向かおうと歩きだしました。</p><p>先生は、私がメイドさんのコスチュームを着ると知ったら何て言うでしょうか．．．？</p>
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<pubDate>Thu, 18 Oct 2007 00:28:40 +0900</pubDate>
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<title>私の大切な友達</title>
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<![CDATA[ <p>大学の後期が始まるまで2週間となった頃、私は美歌と待ち合わせをした駅ビルをぶらぶら歩いていました。</p><p>先に郵便局で用事を済ませようと早目の外出をしたけれど、予想に反して待ち時間がほとんどなかったのです。</p><p>時計を確認すると約束の時間12時までは、まだ30分以上ありました。平日の空いている店内をいくつか見た後、本屋さんに入り雑誌コーナーをチェックします。</p><p>そこで『絶対に彼が喜ぶ！だれでも作れる簡単スィーツ特集』という文字が目に飛び込んできました。</p><br><p>ふと、一緒に海へ行った時キャラメルフレーバーのアイスクリームを食べていた先生を思い出し雑誌を手にとります。</p><p>チョコレートプリンやシュークリームなどの写真とレシピが掲載され、『お料理が苦手なあなたでも必ず成功』と大きく書かれていました。</p><p>確かにレシピは細かい説明がついていて、これなら料理の腕に自信がない私も挑戦できそうな気がします。</p><p>レシピを見比べ先生はどんなお菓子が好きなんだろうと考えていたら、いきなり後ろから肩を叩かれびっくりしました。</p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p><p>あわてて雑誌を閉じてふり返ると、満面の笑顔を浮かべた美歌が立っていました。夏休みらしくいい色に焼けています。</p><p><font color="#ff00ff">「美歌、ひさしぶり。合宿はどうだった？」</font></p><p>雑誌を棚に戻しながら聞いた私の手元を見逃さなかった美歌は、すかさず同じものを手にとってパラパラ捲り始めました。</p><p>「私も少し早く着いちゃって本屋さんに入ったら、詩音が何か熱心に読んでるの見つけてさ～。どれどれ？」</p><p>そう言いながらも手は的確に私がさっきまで開いていたページで止まり、ニコニコしながら私に視線を投げかけます。</p><p>「『絶対に彼が喜ぶ！だれでも作れる簡単スィーツ特集』だって．．．詩音、もしかして夏休み中に桜井先生と進展！？もう、後でちゃんと聞かせてね」</p><p>さすが、美歌の勘はあなどれません。私が話す前から大体の察しはついているようでした。</p><br><p>美歌がサークルの先輩から聞いたというピザハウスは、かなりの混雑ですが丁度空いた席に座ることができました。</p><p>オーダーを終えると早速、美歌はこちらへ身を乗り出しています。もともと自分から話すつもりでいたのに、改めて言葉にしようとすると出てきません。</p><p><font color="#ff00ff">「あのね、美歌には今日ちゃんと言おうと思ってたの。夏休みにね桜井先生に．．．．．」</font></p><p>今まで恋愛に関する話題とは無縁だったこともあって、どういう風に伝えたらよいのか分かりません。</p><p>「やっぱり桜井先生と何かあったんだ！？早く教えてくれないと、気になって美味しいって評判のピザも味わえない」</p><p>軽くにらむ仕草をしていますが、すぐに笑顔にもどっています。私が先生のことで悩んでいたときも、この笑顔で励ましてくれました。</p><p><font color="#ff00ff">「夏休みに桜井先生に自分の気持ち伝えたの。それで、色々あったけれど先生と付き合うことになって、こないだ．．．」</font></p><p>一緒に海へ行ったと続く言葉より、美歌の声が早く返ってきました。</p><p>「そっか、良かったね詩音。桜井先生と気持ちが通じたんだ。本当に良かったね」</p><p>言いながら私の手をぎゅっと握っています。</p><p><font color="#ff00ff">「7月に落ち込んでたとき美歌が励ましてくれたからだよ。いつも心配してくれてありがとうね。メールしようかなと思ったんだけど会って伝えたかったから」</font></p><p>優しく私の背中を押してくれた美歌の言葉があったから、私は先生に会いに行く勇気を持てたのです。</p><p>「大したことしてないもん。それより、詩音が話してくれて嬉しかったよ！」</p><br><p>この後も美歌は私たちの恋の一番の理解者であり、先生が空の上の住人となってからも私を支えてくれました。</p><p>今は東京とヨーロッパと離れていますが年に一度はこちらへ遊びに来てくれ、本当に私はすばらしい友達に恵まれたなと思います。</p><p>そうそう、私が先生と初めてのケンカをしたときに仲直りのきっかけをくれたのも美歌でした。これはもう少し季節が進んでからになりますが．．．．．</p>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10051378814.html</link>
<pubDate>Wed, 17 Oct 2007 02:35:06 +0900</pubDate>
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<title>ずっと一緒にいたいんだ</title>
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<![CDATA[ <p>こんばんは、今朝の最低気温は2℃と本格的な冬の訪れを感じる寒さです。厚手のセーターにコート、手袋も欠かせなくなりました。</p><p>吹きつける風が冷たくて反射的に肩を竦め歩調も速くなってしまいます。けれど、寒い外から自分の部屋へ戻ってきてホッと一息つく瞬間は冬も嫌いじゃないなと思ったりします。</p><p>近所の八百屋さんがおまけをしてくれると言うので、多めに買った野菜をたっぷり入れたスープを作り身体の芯から温まったところです。</p><p>でも、やっぱり心のどこかが凍えている．．．あの人が隣にいてくれたとき感じていた温もりがなくなってしまったからでしょうか。</p><br><p>後期の授業が始まるまで2週間半、そろそろ夏休みも終わりが近付いてきました。私は相変わらず平日を練習室で過ごすことが多く、大学受験直前よりも練習しているんじゃないかと言われそうなくらいです。</p><p>大学に入ったばかりの頃、指導教授から「音楽の才能がない」と評価され涙を零したとき桜井先生が励ましてくれ救われた言葉。</p><p><font color="#0000ff">「天才とか世紀の逸材と絶賛された人間がコンクールを一度失敗しただけで音楽をやめてしまうこともある。結局のところ、大切なのは続ける覚悟と音楽を愛する気持ちだよ。それに比べたら才能や運なんておまけみたいなもの」</font></p><p>ヴァイオリンに対する自信を失っていた私ですが、才能がないなら他の人より練習しようと思えるようになりました。</p><p>そして、ピアノとヴァイオリンで楽器はちがうけれど先生にもっと近付きたいと考えるようになったからです。</p><br><p>この日も夕方まで練習室を存分に独占し（夏休みだから人がいなかっただけなんですが）、一人暮らしの部屋へ戻ると急に睡魔が襲ってきました。</p><p>偶然、深夜に放送されていた映画に見入ってしまい寝不足だったため熟睡。携帯電話の着信音に起こされ時計に目をやると2時間近くが経っています。</p><p>自分では30分くらいのつもりだったのでおどろきつつ携帯電話を開くと、美歌からメールが届いたところでした。</p><p>「詩音、夏休み楽しんでる？一昨日サークルの合宿から帰ってきたんだ。東京はやっぱ暑いね。</p><p>軽井沢は涼しくてよかったよ～！！お土産渡したいし、来週でもお昼食べて買い物とか行かない？」</p><p>夏休みに入ってもサークルの集まりや合宿、バイトと忙しそうな美歌とはしばらく会っていません。</p><p>それに夏休み前、先生への気持ちを伝えられずにいた私の背中を優しく押してくれた美歌には先生とのことをきちんと話しておきたいと思っていました。</p><br><p>メールに返信しようと、もう一度液晶画面を確認したときです。着信音と共に大好きな人の名前が表示され、心臓がドキドキと鼓動を立てはじめました。</p><p><font color="#ff00ff">「もしもし、詩音です」</font></p><p>つい2日まえにも電話で話したはずなのに、ずいぶん長い間先生の声を聞いていなかった気がします。</p><p><font color="#0000ff">「もしもし、詩音」</font></p><p>すでに海に行った日から何回となく呼ばれているのに、くすぐったい感じがしてまだ少し慣れません。</p><p><font color="#ff00ff">「先生、今日も暑かったね。練習室への行き帰りだけで日焼けしちゃったよ」</font></p><p>容赦なく照りつける太陽の下を毎日ヴァイオリンを持って歩いたおかげで、日焼けと汗疹の洗礼をあびてしまいました。</p><p><font color="#0000ff">「詩音はもともと色が白い方だから日焼けすると赤くなったりするんじゃないか。冷やして痛みがあるようだったら薬をつけるんだよ」</font></p><p>素直に返事をして、ふとさっき美歌から送られてきたメールのことを思い出しました。</p><p><font color="#ff00ff">「あのね、先生。さっき同じ学科の友達からメールをもらって、来週ひさしぶりに会うことになったんだ」</font></p><p><font color="#000000">そこまで言うと、先生の笑い声が返ってきました。最初どうして笑ってるのか分からなかったのですが、すぐに訂正します。</font></p><p><font color="#ff00ff">「先生じゃなくて、響一さん。また先生って呼んじゃった」</font></p><p>呼ばれるのもですが呼ぶのもまだ慣れません。二人っきりのときは名前でと決めたけれど、反射的に「先生」と口が動いてしまうのです。</p><p><font color="#0000ff">「いいよ、今は先生でも。もう少し時間が経てば自然に名前で呼び合えるようになるなるから」</font></p><br><p><font color="#ff00ff">「あのね、恭一さん。友達に会ったとき先生とのこと友達に話したいなと思って。できるだけ人には知られないほうがいいって分かってるけれど．．．．．」</font></p><p>やはり同じ大学の講師と学生という関係を考えれば仕方ありません。しかし、一瞬の間もなく言葉が返ってきました。</p><p><font color="#0000ff">「僕は詩音が話したいなら話したほうがいいと思ってるよ。詩音には僕とのことで家族や友達に嘘をつかせたくないし、無理して隠し通すのは二人にとってもよくないんじゃないかな」</font></p><p>先生はさらに続けます。</p><p><font color="#0000ff">「もちろん誰にでも正直に話すというわけにはいかないけれど、無理ばかりしていたら辛くなるときがくる。詩音とはずっと一緒にいたいんだ」</font></p><br><p>「ずっと一緒にいたい」と言った先生の声が何度も頭に響いていました。そして「ずっと一緒にいられる」と信じていたのです。</p><p>けれど、永遠の別れは突然やってきて私はこの世に「ずっと」がないことを知りました。そう、この世に「ずっと」なんてない．．．．．</p><p>それでも、これから先も先生を愛する気持ちは「ずっと」変わらないと思っています。</p>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10050967805.html</link>
<pubDate>Sun, 14 Oct 2007 02:33:41 +0900</pubDate>
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<title>星空とあなたの優しさ</title>
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<![CDATA[ <p>こんばんは、しばらく更新が滞ってしまいすみませんでした。その間もこのブログを訪れペタを付けたり、コメントをくれたみなさま本当にありがとうございます。</p><p>ヨーロッパはすでに秋を通り越して初冬に近付きつつあり、毛布を1枚しか掛けずに寝ていたらしっかりと風邪をひいてしまいました。</p><p>今年の風邪はしつこいらしく咳がなかなか治らず、「ゴホゴホ」咳き込むたび友人たちに冷たい視線を向けられています。</p><p>大学では新しい先生に指導してもらうことになり1ヶ月が経ちました。普段は"温厚なおじいちゃん"という雰囲気ながら音楽が関連すると声も低くなり鋭い眼光を投げかけてくる先生に、最近ようやく慣れてきた気がします。</p><p>定期的な更新を目指してがんばろうと思いますので、これからも訪れていただければうれしいです。</p><p> </p><p>日本も秋の気配が増して日の沈むのが早くなったでしょうか。こちらも夏の間は午後8時を過ぎても明るかったのに、6時半ごろには暗くなってしまいます。</p><p>冬の気配を感じる風に吹かれながら星の瞬く夜空を見上げていると、頭に浮かんでくるのは桜井先生との想い出でした。</p><p>あの日、初デートから数日が経った夏の夜。外はまだまだ昼間の熱を残し、時折肌を掠める風が涼しさを運んできます。</p><p>私は大学の練習室を後にしスーパーに寄ろうかどうしようか迷いながら、冷蔵庫に何が残っているかを考えていました。</p><p><font color="#ff00ff">「今日の夕食はどうしよう．．．まだ残っている野菜もそろそろ使いきらないといけないし、一人暮らしって大変」</font></p><p>無意識に零れ出た独り言に気付き苦笑していると、突然カバンの中で携帯電話が震えびっくりさせられます。</p><br><p>もともと友人が少なかった私は携帯電話が苦手で、美歌にもよく「電話したらちゃんと応答してよね！」と怒られていました。</p><p>サークルの合宿を終えた美歌からかなと思い慌ててカバンから携帯電話を取り出し開くと、目に飛び込んできたのは予想外の名前でした。</p><p><font color="#000000">液晶画面で光る名</font><font color="#0000ff">『桜井響一』</font><font color="#000000">の文字を見つめていたら、二人で海へ行った日はつい数日前なのに昔のような気がします。</font></p><p>先生に会いたい気持ちが大きくなるのを意識しながら、通話ボタンを押しました。</p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p><p><font color="#ff00ff">「もしもし、詩音です」</font></p><p>すぐに大好きな優しく響く先生の声が聞こえてきました。</p><p><font color="#0000ff">「もしもし、詩音。今話ししても大丈夫？」</font></p><p>電話を通して初めて聞く先生の声はいつもより少し、ほんの少しだけですが低く感じます。</p><p><font color="#ff00ff">「うん、大丈夫。大学の練習室を出たところで、これから買い物をして帰る途中なの」</font></p><p>先生と話しながら駅へ向かう道をゆっくりと歩きます。墨色に染まった空にはいくつかの星が輝き始めていました。</p><p><font color="#0000ff">「そうか、練習室に行ってたのか。僕もさっき会合が終わって今から地下鉄に乗り換えるところだよ」</font></p><p>大学の先生というのは普段の授業意外にも色々と会議や集まりがあるようで、この日は他の音大で教鞭をとる先生方を交えた交流会のようなものがあったそうです。</p><p><font color="#ff00ff">「お疲れ様、夏休み中なのに大変だね。私、大学の先生ってお休みが多いんだろうなと思ってた」</font></p><p>そう言うと、苦笑交じりの笑い声が伝わってきました。</p><p><font color="#0000ff">「実は時間外労働が多い職業なんだよ。でもこれで後期が始まるまでは会議も委員会もない」</font></p><p><font color="#000000"><br></font></p><p><font color="#000000">私はちょうど駅と学校の中間地点に差しかかり、ふと視界に映った小さな公園で足を止めました。</font></p><p>先生の声をちゃんと聞きたくて誰もいない公園でゆれるブランコに腰をおろそうとした瞬間、墨色の空で光る星がさっきより増えていることに気がつきます。</p><p><font color="#ff00ff">「ねぇ、先生。今、駅と学校の途中にある公園のブランコに座ってるんだけど星がきれい」</font></p><p>何となく口をついて出た言葉で特に深い意味もありません。ただ自分が見ている景色を先生にも伝えたかっただけなのです。</p><p><font color="#0000ff">「公園？あぁ．．．．．．．あのブランコと砂場がある公園か」</font></p><p>そういえば先生は地下鉄に乗り換えるところだと言っていました。そろそろ携帯電話の電波が入らなくなるかもしれません。</p><p><font color="#ff00ff">「先生、電車は大丈夫？」</font></p><p>乗り換えの合間にかけてきたのだから急ぎの用があるのかもしれないと思い直し、聞いたのですが無言のままです。</p><p><font color="#0000ff">「．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．．」</font></p><p>もう一度<font color="#ff00ff">「先生？」</font><font color="#000000">と呼びかけると今度は声が返ってきました。</font></p><p><font color="#0000ff">「っ、ごめん。大丈夫だよ」</font></p><p>走ったのでしょうか、息があがっています。</p><p><font color="#ff00ff">「私、後で．．．．」</font></p><p><font color="#ff00ff"><font color="#000000">私の言葉は途中までしか言うことができず、</font>「かけ直そうか」</font><font color="#000000">と続けることはできませんでした。</font></p><p><font color="#0000ff">「地下鉄の改札に向かおうとしたんだけど、今外に出たんだ。詩音が見ているのと同じ空が見たくなったから」</font></p><br><p>こういう先生の優しさが私は大好きでした。そして季節を問わず星空を見上げると必ずこのときを想い出します。</p><p>ずっとずっと何年、何十年と一緒に沢山のものを見ていくんだろうと当たり前のように考えていました。</p><p>でも、もう二人で同じ景色を目にしたり同じ音を耳にする喜びは永遠に感じられません．．．．．</p><p><font color="#ff00ff"><br></font></p>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10050578129.html</link>
<pubDate>Thu, 11 Oct 2007 01:46:28 +0900</pubDate>
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<title>初デート&lt;3&gt;</title>
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<![CDATA[ <p>午後になると夏の日差しは眩しさを増し、海岸沿いに設けられた遊歩道を歩く私と先生に照りつけます。</p><p>それでも時折強く吹いてくる海風と道端に植えられた樹の陰のおかげで、あまり暑さを感じずにきれいな海を堪能できました。</p><p>しばらく歩いたところで先生が足を止め、車道をはさんだ向こう側を見ています。海に訪れる人を相手にしているのでしょう、パラソルの下でペットボトルのジュースやアイスクリームが売られていました。</p><p><font color="#0000ff">「詩音、アイスクリーム食べようか？ちょっと歩き疲れただろう」</font></p><p>そう言った先生の指差す方向には木陰の下に等間隔で並べられたベンチがあり、少し休憩するにはぴったりです。</p><p><font color="#ff00ff">「うん、アイスクリームおいしそう」</font></p><p>バニラやチョコレートなど数種類のフレーバーがあるようで、小さな男の子がどれにしようか真剣に悩んでいます。</p><br><p>私はチョコレートミントを先生はキャラメルを注文しました。大き目のワッフルコーンに盛り付けられたアイスクリームは、早く食べないとすぐに溶けてしまいそうです。</p><p>ふたりでベンチに座って急いで口をつけたのですが、私は手に持ったアイスクリームよりも先生ばかり見ていました。</p><p>私の想像では男の人はあまり甘いものが好きじゃないんだろうなと思っていたので、先生がキャラメルを選んだのがちょっと意外だったのです。</p><p>そんなことを考えていたら手元から注意がそれていたようで、私のアイスクリームは溶け始めていました。</p><p><font color="#0000ff">「詩音、早く食べないとなくなっちゃうよ」</font></p><p>自分のコーンに目をやるとアイスクリームの形は崩れていました。このままでは食べるスピードが追いつきそうもありません。</p><p>すると先生のスプーンが伸びてきて私のコーンからアイスクリームをすくいました。</p><p><font color="#0000ff">「ほら、交換しよう」</font></p><p>先生のコーンにはまだ溶けていないアイスクリームが半分ほど残されています。</p><p><font color="#ff00ff">「でも、私の．．．．．．」</font></p><p>溶けかけを渡すのをためらう私からすばやくコーンを取ると、そのまま何でもないようにスプーンを口に運んでいます。</p><p>結局、私が先生のキャラメルを先生が私のチョコレートミントを最後まで食べたのですが先生が食べたアイスクリームにドキドキして味を楽しむ余裕はありませんでした。</p><br><p>しばらくベンチに座って海を眺めていると、先生が<font color="#000000">思い立ったように</font><font color="#0000ff">「ここで待ってて」</font><font color="#000000">と言い残してアイスクリームを売っていたパラソルの方へ歩いていきます。</font></p><p>どうしたんだろうと不思議に思いながら待っていたのですが、先生はすぐに戻ってきました。手には使い捨てのカメラが握られています。</p><p>そういえばジュースやお菓子に並んでカメラが置いてあったような気がします。海に遊びに来た人が記念に写真を撮るのでしょう。</p><p><font color="#0000ff">「ふたりで写真撮ろう。さっき目に入って詩音との想い出を残しておきたくなったんだ」</font></p><p>私自身、あまり写真が好きではなく旅行先にもカメラを持っていかないほどでした。だけど先生との初デートを私も見える形で手元に置いておきたいし、普段は外で会えないからなおさらです。</p><br><p>風景のいい場所をさがしに海岸へおりてみることにしました。さらさらとした砂が太陽の熱を吸収して焼けるようです。</p><p>なるべく日陰を選びながら歩いたところで、先生がそばを通りかかった男女を呼び止めて写真を撮ってくれるよう頼みました。</p><p>快く引き受けてくれた方は先生より少し上の世代でご夫婦みたいです。海を背景にしてふたりで並びました。</p><p>「もう少し寄ってください。できるだけ後ろも写るように撮りますね」</p><p>カメラを構えた男性に言われ先生との間隔を縮めます。ただでさえ写真嫌いなのに、緊張してうまく笑顔が作れません。</p><p>1枚撮り終えて出来上がった写真を見るのがこわいなと思っていると、ふいに先生が肩を抱き寄せました。</p><p><font color="#0000ff">「すみません、もう1枚お願いします」</font></p><p>カメラを持った男性も、「その方が仲がよさそうでいいね」と言っています。しかしドキドキし過ぎた私はもっと笑顔が作れなくなってしまいました。</p><br><p>時間が過ぎるのはあっという間です。気がついたら太陽の光はオレンジ色に染まりはじめ、そろそろ夕焼けが近いことが分かりました。</p><p>ふたりで手をつなぎながら砂浜を歩き、今にも沈みそうな太陽を見つめます。私が望んだとおりビルもマンションもないところから見る夕焼けは、いつまで見ていてもあきず吸い込まれてしまいそうに美しいものでした。</p><p>真っ赤な太陽に照らされたオレンジ色の空がだんだん澄み色に変化していく様は、言葉では形容しがたいほどです。</p><p><font color="#ff00ff">「本当にきれい．．．私、夕空が一番好き」</font></p><p>そう言った私の手を引き寄せて先生がそっと抱きしめます。周りに人影はまばらでしたが、耳元でささやきました。</p><p><font color="#0000ff">「詩音に初めて練習室の廊下で会ったときも、きれいな夕空が広がってた。けど、ぼくは夕焼けよりも窓辺に立つきみに目を奪われたんだ」</font></p><p><font color="#000000">私たちは太陽が完全に地平線の彼方へ姿を消すまで、お互いの体温と鼓動を感じていました。</font></p><br><p>この日、海岸で撮った写真は今も手元にあります。</p><p>私の大好きな柔らかな笑みを浮かべた先生と緊張した表情の私。</p><p>数ある写真の中でも大好きな一枚です。</p><br>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10045382836.html</link>
<pubDate>Fri, 31 Aug 2007 15:00:01 +0900</pubDate>
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<title>初デート&lt;2&gt;</title>
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<![CDATA[ <p>窓外に広がった夏の日差しに輝く海が視界から消え、先生の運転する車が駐車場へと入っていきます。</p><p>お盆が過ぎた後の平日とはいえ以外に込んでいるようで、一台分だけ空いていたスペースに停めることができました。</p><p>冷房の効いていた車内から外に出たとたん、お昼近くの射すような日差しがいつもより眩しく感じます。</p><p><font color="#0000ff">「少し早いけれどお昼にしようか。それにしても海の近くは暑いな」</font></p><p>車のキーを閉めた先生も予想以上の暑さにおどろいたようで、頭上に高々ときらめく太陽に視線を向けました。</p><br><p>駐車場を出ると海沿いの道につながる階段があります。風が運んできたのか海辺の砂が散らばっていました。</p><p>階段に足をかけたとき一瞬、サンダルではなくもっと歩きやすい靴でくればよかったかなと思ったのですが時すでに遅く．．．．．．．．．．．．．．．</p><p>数段上ったところで階段のへりに積もっていた砂に足をとられた私は、前のめりに転びそうになったのです。</p><p><font color="#ff00ff">「あ、．．．．」</font></p><p>バランスを崩し咄嗟に手をつこうと前に出します。けれど、私の手は階段に触れることなく転んだときに感じるはずの鈍い痛みもありません。</p><p>半歩前を歩いていた先生が<font color="#0000ff">「詩音！」</font><font color="#000000">という声と共に、手を握ってくれたおかげで転ばずにすんだのでした。</font></p><p><font color="#0000ff">「大丈夫？びっくりしたよ、手にけがなんかしたら大変だ」</font></p><p>そうです、普通ならば転びそうになると真っ先に手をつきますがピアノやヴァイオリンに限らず楽器を演奏する人間は手の怪我が致命傷になりかねません。</p><p><font color="#ff00ff">「ありがとう、私もびっくりした．．．．．．．．．．．．．」</font></p><p>しかし手の怪我よりもこのときの私は、先生の手にしっかりと握られた自分の右手と<font color="#0000ff">「詩音！」</font><font color="#000000">と呼んだ先生の声しか心にありませんでした。</font></p><br><p>階段を上り終えても先生は手を離そうとせず、ずっとつないだままです。さっきまでは海風とそれに乗ってくる熱気しか感じていなかったのに、今は先生の手のぬくもりに全神経が集中していました。</p><p>手をつなぎながら少し歩いたところで、いくつかのレストランやカフェが見えてきて先生が<font color="#0000ff">「ここに入ろう」</font><font color="#000000">と言います。</font></p><p>海に面したテラス席には犬を連れた人が多く開放的な印象でした。入り口で人数や喫煙の有無をたずねられ先生が答えています。</p><p>案内された席は大きな観葉植物が置かれた横の席で、右手の窓からは海をみることができました。</p><p>天井で静かに回るファンの涼しい風を心地よく感じながら、手渡されたメニューを眺めます。</p><p>一通り見たところでメニューから顔をあげると、先生に<font color="#0000ff">「何にするかきまった？」</font><font color="#000000">と聞かれました。</font></p><p>ちょっと迷ったのですが『今日のパスタランチ』がおいしそうだったので、それにすることに決めます。</p><p><font color="#ff00ff">「今日のパスタランチにしようかな、ドリンクはアイスミルクティー。先生は？」</font></p><p>そう聞き返したところへタイミングよく席まで案内してくれたウェイトレスの人がオーダーを取りにきました。</p><p>一瞬、ほんの僅かですが<font color="#ff00ff">「先生は？」</font><font color="#000000">と言った私の方を怪訝そうに見ます。そして私と先生に交互に目をやった後は、「ご注文はお決まりですか？」と元通りの笑顔を浮かべました。</font></p><p><font color="#0000ff">「今日のパスタランチを二つ。ドリンクはアイスミルクティーと、ぼくはアイスコーヒーにしてください」</font></p><p>先生が注文してくれている間も私は、さきほど自分に投げかけられた視線を思い出していました。</p><br><p>確かに考えてみれば手をつないで入ってきたのに、私が「先生」と呼んでいれば不自然に写って当然です。</p><p>注文を確認してウェイトレスの人が去っていくと、先生が真っ直ぐにこちらを見ていました。</p><p>そして車の中でと同じはにかんだような笑顔を見せると、やっぱり同じように早口で言います。</p><p><font color="#0000ff">「詩音、二人でいるときだけは名前で呼ばないか？ぼくのことは“響一”って呼んでほしい．．．．．．」</font></p><p>また先生に名前を呼ばれました。大好きな先生の声だと聞きなれた自分の名前すら、何だか愛おしくなります。</p><p><font color="#ff00ff">「うん、私も“詩音”って名前で呼んでほしい。さっきね、転びそうになった時ね初めて名前呼んでくれてうれしかったの」</font></p><p>話しながら頬に赤みが増していくのが分かります。そこへちょうどよく先に持ってきてほしいとオーダーしたドリンクが運ばれてきました。</p><br><p>私たちの前に並べられたアイスティーとアイスコーヒーの氷がカランと涼しげな音を立てます。</p><p>ガムシロップとたっぷりのミルクを入れたアイスティーは冷たくてとてもおいしく感じました。先生はというとガムシロップもミルクも入れずに飲んでいます。</p><p><font color="#ff00ff">「先生、コーヒーはブラックが好きなんだね」</font></p><p>何気なく口にした一言に先生の言葉が返ってきました。</p><p><font color="#0000ff">「詩音、先生じゃないよ」</font></p><p>習慣というものはすぐには直らないようで無意識に「先生」と呼んでしまったのです。</p><p><font color="#ff00ff">「あ．．．コーヒーはブラックがすきなんだね．．．．．．．．．．．．．．．．．．響一さん」</font></p><p>最後のほうは消え入るような小さな声になってしまいました。先生も少しだけ照れたように笑っています。</p><p>パスタが運ばれてきて窓の外の海に目を奪われたまま食事をしている最中にも、また「先生」と呼んでしまいました。</p><p><font color="#ff00ff">「海を見てると東京にいるのを忘れてしまいそう。本当にきれい、先生．．．」</font></p><p>今度は言った直後に自分で気がつきます。あわてて<font color="#ff00ff">「響一さん」</font><font color="#000000">と呼び直しすと、先生は向かいで笑うだけでした。</font></p><br><p>カフェを出てさっき歩いた海沿いの道に戻ります。半歩前の先生がふり返ると、<font color="#0000ff">「ほら」</font><font color="#000000">というように左手を差し出しました。</font></p><p>大きくてあたたかい先生のてをにぎりながら、私は好きな人の名前を呼び呼ばれるときの幸せを感じていたのです。</p><p>今も私は先生の優しい声が<font color="#0000ff">「詩音」</font><font color="#000000">と奏でる瞬間を鮮やかに想いだします。そして叶わないと知っていても、もう一度だけ聴きたいと願わずにはいられません．．．．．</font></p><br>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10045261142.html</link>
<pubDate>Thu, 30 Aug 2007 14:13:16 +0900</pubDate>
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<title>あなたに似た人</title>
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<![CDATA[ <p>こんにちは、いつもこのブログを訪ねてくださってありがとうございます。日記は必ず三日坊主の私がこうしてブログを綴っているのも（若干サボリ気味のときもありますが．．．）、読んでくれる方がいるからだと思っています。</p><p>今年の夏はは猛暑だと聞きましたが、日本はまだまだ暑い日が続いているのでしょうか？</p><p>私の住むヨーロッパは夏が終わり早くも秋の気配が近づいています。今朝方は気温14℃という寒さに、セーターを引っぱり出しました。</p><p>9月になっても残暑が厳しいと思うので体調には気をつけてくださいね。そして、またここを訪れてもらえたらうれしいです。</p><br><p>ところで、先日とっても驚いたことがありました。ある雑誌の中で先生によく似た方を発見したからです。</p><p>きっかけは来月に日本へ帰国してしまう友人がくれた日本の雑誌でした。彼女が引越しの際いらなくなった楽譜や本を引き取ってほしいと言うので、お言葉に甘えてアパートへ行き好きなものを選ばせてもらったのです。</p><p>ダンボールの影に積まれた文庫本の横に雑誌の山があって、私はその中の数冊をパラパラと捲っていました。</p><p>手にしていた芸能情報誌には知らない顔ばかりが写っています。もともと日本に住んでいた頃から流行のファッションや人気がある芸能人には疎かったのですが、もはや浦島太郎状態です。</p><p>そんなことを考えて苦笑していた私の目は、見開き1ページに大きく掲載された写真に釘付けになっていました。</p><br><p>写真の下に書かれている文章によると、今すごく人気のあるお笑いコンビだということです。</p><p>けれど私の意識はインタビュー記事よりも、写真に写っている人物に吸い寄せられているようでした。</p><p>そのお笑いコンビの一人が大好きな桜井先生によく似ていたからです。特に横顔がそっくりに感じました。</p><p>真剣にインタビューを受ける様子や笑った顔、デビュー当時の様子など色々な写真が載っていて、あまりに見入っていた私は友人に声をかけられたのも気がつかなかったほどです。</p><p>はっと我に返り聞き返すと、「雑誌も処分しようと思ってたからほしいのがあれば持ってて」と言っています。</p><p>結局、文庫本と楽譜に加えその雑誌ももらってしまいました。帰宅しても先生によく似た人のことが頭から離れません。</p><br><p>つい窓際のデスクに飾っている先生の写真とも見比べてしまったのですが、第一印象というか顔の雰囲気が似ているんだと思います。</p><p>もちろん別人ですから細かなディテールは異なります。それに雑誌に書かれていたプロフィールによれば、歳は先生よりも若いです。関西出身の方ということなので、きっと話をしている時の雰囲気は全然ちがうのでしょう。</p><p>でも身長が先生とまったく同じだったのにもう一度びっくりさせられました。</p><br><p>生きている人に死んだ人の姿を重ねたりしたら、その方に失礼だというのは分かっているつもりです。</p><p>それでもテレビで話をしているところを見たいなと考え、同時に芸能界で長く活躍してもらいたいと思う自分がいました。</p><p>私が決して会うことのできなかった40代、50代の先生、そしてもっと先の姿を少しだけその方から想像できる気がしたからです。</p><p>ご本人やファンの方々が目にしたら良い気分でないことは承知の上で、こんなことを書いてしまいすみません。</p><br><p>もし先生がいなくなってしまった直後であったなら、私は今のようには感じなかったと思います。</p><p>きっと先生に似た人に先生を重ねて悲しみに沈むだけで、1年後のことはおろか明日のことすらどうでもいいと投げやりでした。</p><p>あの日、先生が空の上に行ってしまってから3年。悲しみが消えることはないし気持ちの整理もまだ長くかかりそうですが、10年後20年後の未来を考えるようになった自分に気がつきました。</p><br><p>先生、いつも心配しかかけていない私だけれどまた少し安心してもらえましたか？</p><p>そうそう、先生によく似た方が載っていた雑誌は取ってあるけれど焼きもち妬いてくれるかな。</p><p>もし妬いてくれたなら今夜あたり夢に出てきてくれると、うれしいのですが．．．</p>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10045132146.html</link>
<pubDate>Wed, 29 Aug 2007 14:37:46 +0900</pubDate>
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<title>初デート&lt;１&gt;</title>
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<![CDATA[ <p>８月半ば、お盆が過ぎたばかりの暑い夏の一日に私と先生は初めてのデートの約束をしていました。</p><p><font color="#0000ff">「たった今なかなか外では会えないって言ったばかりだけれど．．．来週デートしませんか？」</font></p><p><font color="#000000">僅かに困ったような笑顔を見せていた先生は、私が大きくうなずくのを見るといつものように柔らく笑いました。</font></p><p>そんなことを想いだしながら私はポーチから鏡を取り出し、耳の後ろで軽くまとめた髪の毛やさっき付けたばかりのリップを確かめます。</p><p>何を着ようか昨晩いっぱい迷ったのですが結局、パフスリーブとリボンがお気に入りの白いワンピースに細いストラップのサンダルと夏らしいカゴバッグを合わせることにしました。</p><br><p>約束の時間より15分ほど早く、待ち合わせ場所である大学から少し離れた駐車場に着いてしまいました。</p><p>住宅街に囲まれた小さな駐車場なので誰かに姿を見られる可能性は少ないと分かっていても、何だか落ち着かず木陰で先生の車を待ちます。</p><p>１０分も経たないうちにブルーのフォルクスワーゲンが駐車場から入ってきて、ゆっくりと私の前に止まりました。</p><p>運転席に目をやると先生です。急いで助手席のドアを開けて滑り込むように乗りました。</p><p><font color="#0000ff">「．．．．．．．．．だいぶ待たせたかな？ごめん、屋内で待ち合わせすればよかったね」</font></p><p>少しだけ目を細めてシートベルトをかける私を見ながら冷房を強くしてくれます。</p><p><font color="#ff00ff">「ううん、私が早すぎたから。それに木陰にいたから大丈夫」</font></p><p>涼しい風を心地よく感じながら、初めて見る先生のプライベートな姿にドキドキします。車と同じきれいなブルーのジーンズとベージュのニットがよく似合ってるなと思いました。</p><p>車の中は微かだけれど、先生に抱きしめられたときに感じたにおいと同じにおいが漂っているようです。</p><br><p><font color="#0000ff">「道が空いてれば１時間もかからないかな。．．．．．．．今日はいつもと少し雰囲気がちがうね」</font></p><p>待ち合わせ場所の駐車場を後にして広い通りに出た頃、真っ直ぐ前を向いたまま先生がとうとつに口を開きました。</p><p><font color="#ff00ff">「．．．．．．．．．えっと、先生どこに連れて行ってくれるの？道はけっこう空いてるみたい」</font></p><p>先生の声が普段より低い気がしてドキッとします。車は大きな交差点に差し掛かり信号待ちのため停まりました。</p><p><font color="#0000ff">「その髪型すごく似合ってる。学校でのきりっとした風もいいけれど、今日みたいな感じ好<font color="#0000ff">きだな</font>．．．．」</font><br>ハンドルからは手を離さず顔だけをこちらへ向けると私の問いには答えず、はにかんだように笑って早口で言います。</p><p>私は物心ついた時から背中につくロングヘアーなのですが、ヴァイオリンを弾くのに面倒なこともあって大学では無造作に頭の上にまとめていました。<br>先生はすでに運転に集中しているようですが<font color="#0000ff">「</font><font color="#0000ff">好きだな」</font><font color="#000000">という言葉が何度も響いて、頬がうっすらと赤くなるのが分かります。</font></p><br><p>車はいつの間にか夏の眩しい日差しをキラキラと反射する海が臨めるエリアに入っていました。</p><p>研究室で先生からデートに誘われた後、<font color="#0000ff">「どこか行きたい場所はある？」</font><font color="#000000">と聞かれ、きれいな夕焼けが見たいとリクエストしたのです。</font></p><p>もともと空を眺めるのが好きだった私は、高い建物が視界に入らない場所でどこまでも広がるオレンジ色の光を見ていたいと思っていました。</p><p>この海辺ならきっと想像以上の夕空が広がりそうです。車がスピードを落とし目的地に到着したことが分かりました。</p><p><br></p><br>
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<link>https://ameblo.jp/salmodia/entry-10044880777.html</link>
<pubDate>Mon, 27 Aug 2007 15:42:50 +0900</pubDate>
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