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<title>書いたもの倉庫</title>
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<description>ＳＳだったりラクガキだったり</description>
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<title>ks</title>
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<![CDATA[ <p>「・・・わぁっしみにしてろよ」</p><p>ぽん、と頭を叩かれて目頭が熱くなった。一瞬なはずの甲斐の手の重みがじわりと残る。</p><p>頭を触られるのは好きじゃない。慰められるのも甘やかされるのも好きじゃない。癖っ毛で猫っ毛な自分の髪質も好きじゃない。</p><p>だけどその手がずっとそこにあればいいのに、と思った。矛盾しているけど、きっとそれが恋愛感情なのかもしれない。</p><p><br></p><p>自分らしくない、柄じゃないことを受け入れるのは自信の喪失に直結している気がした。<br>なぜあたしはこんなに弱くなったのか。弱さなんて自分が一番嫌っていたものなはずだった。女だからと言い訳せずに済むよう仕事でも道場でも負けじと張り合ってきたのだ。</p><p>それも上手くいってたはず。</p><p>甲斐が怪我するまでは。</p><p><br></p><p>だから甲斐に肩を押されたのを機に、振り切るように身をよじって離れる。これでいい。</p><p>恋愛感情なんか無視すればいい。残り少ない時間、相棒としてだけ付き合えばいい。 </p><p>離れれば忘れると思った。一課を離れた甲斐があたしを忘れるように、あたしも甲斐のことをどう思ってたかなんてどうでも良くなる。後々思い返せばあんな男に血迷ってたって笑い飛ばせるようになる。</p><p>一つ、片付いたと思った。</p><p>あとは春日さんとのお見合いを断って、それで１０日ほど前の、甲斐の腕が折れる前の状態に戻ればいい。あたしの目標は一課でのし上がって行くこと。それだけはブレてないんだから。 </p><p><br></p><p>道場で心を落ち着かせて、甲斐との対応の仕方を決めて、目標を見据えて。</p><p>しっかり自分で解決していけている、と自負しているのに気持ちは一向に晴れない。</p><p>「・・・帰ろ」 </p><p><br></p><p>帰り際、甲斐の顔を見ることができなかったことが情けなかった。 </p><p><br><br></p><p>********************** </p><p><br></p><p>早朝に道場に顔を出し、一汗かいて現場に向かう日々が続いた。</p><p>自分のデスクに寄らなければ甲斐に会うこともない。現場も佳境に入り自分の家にすらろくに帰れない生活で、随分元のペースに戻れたんじゃないかと思う。</p><p>そろそろあのピアスを着けてもいいんじゃないかとそっと自分の鞄に手を差し込む。</p><p>実は外したあの日からずっと鞄に入れたまま持ち歩いていた。</p><p><br></p><p>勲章のように感じてた一課バッヂのミニチュアみたいな可愛いピアス。</p><p>３０歳の節目に相棒から貰ったピアス。</p><p><br></p><p>「・・・西島さん、タバコ吸っていい？」</p><p>「・・・えっ？なんですか？」</p><p>鞄の中のピアスケースに指先が触れた途端に声をかけられて言葉が聞き取れなかったあたしにとうとう春日さんが笑い出した。</p><p>「・・・なんですか」</p><p>どうぞと言わなかったのがツボだったのかなんだか知らないけれど、笑われるようなことはしていない。諫めるようにキリと睨む。</p><p>「甲斐さんと、何かあったでしょ」</p><p>ずばり直球の指摘にムウと押し黙る。何かあったと言えばあった、何もない、いつものことだと思えばいつものことで、なんと答えて良いかわからない。</p><p>「・・・ビンゴ？」</p><p>タバコに火をつけながら人懐こそうに覗き込まれても何も言えないままだった。 </p><p><br></p><p>「仕事柄さ、限られた情報の中で読み取ろうとする癖があるでしょ。だから外したときでかくて恥ずかしいよね」</p><p>黙り込んだあたしにこれ以上突くのは得策ではないと感じたのか、春日さんは煙を吐き出しながらやんわりと話題を逸らす。</p><p>「君の前で初めてタバコ吸ったときもさ、まず僕のタバコの銘柄チェックしたでしょ。無意識かもしれないけどそれも刑事の癖だよね」</p><p>そういって赤ラークの箱をポンと上へ放り投げてキャッチした。</p><p>そういえばそうだったのかなぁとぼんやり思う。本当無意識だったけど、言われてみれば最初から赤ラークだと知っていた。 </p><p>春日さんは人の気持ちを察するのが上手いなぁと思う。人との対応の仕方は孝ちゃんを彷彿とさせた。</p><p>この人相手だったら甲斐との様に喧嘩になることもないのかもしれない。</p><p>今まで自分が付き合ってきた人たちもこうゆうタイプの人ばかりで、それをいいことに胡座をかいては離れていってしまっていた。</p><p>最後の人は結婚話まで行ったのだけれど。</p><p><br></p><p>「・・・あたし、課長にお見合いするなら仕事辞めなくても許してくれる人とって言ったんです」</p><p>「・・・うん、越坂部先輩から聞いてるよ」</p><p>春日さんはあたしの話の飛び具合にも気を悪くしないで答えてくれた。</p><p>「僕、仕事してる西島さんがいいなと思ったからね」</p><p>本当にいい人だと思う。甲斐の言うとおり、あたしにはもったいないくらい。今だってあたしが助手席で春日さんが運転席、本庁所轄の差はあれど春日さんの方が上の身分なのに一つも嫌な顔をせず率先して運転してくれる。</p><p><br></p><p>「でも、このままお見合いして結婚とかなったら、ずっと春日さんに課長のしたり顔映しちゃうと思うんです。だから」</p><p>「先輩が理由なの？・・・甲斐さんじゃなくて？」</p><p>優しい口調のまま春日さんの目から笑いが消えて、びくりとする。</p><p>「前の現場で見かけたときは今してるピアスをつけてたんだよね。それが今回紅いピアスに変わってて・・・で、今また前のに戻ってる。君、そんなに身につけるものころころ替えるタイプじゃないでしょう？」</p><p>事実を突きつけられて言葉に詰まる。仕事内容だったら、ここまで窮境な思いはしないはずだけど、いかんせんこれはあたしの超個人的な内容だ。尋問受けてる被疑者の気持ちがわかる気がした。刑事は敵に回さない方が良い。</p><p>「意地悪言ってごめんね、でもこの年になるとイイヒトだけじゃ欲しいもの手に入れられないってわかってるからね」</p><p>辛そうに目を伏せた春日さんに、言いたくないことを言わせてしまったのだと気がついた。</p><p><br></p><p>「あのピアスは甲斐に貰ったものです。でも・・・甲斐は、関係ないです。もう」</p><p>もう、関係ない。甲斐とはあと数ヶ月、相棒としてだけの付き合いだ。</p><p>「わかった、お見合いは反古にしよう。・・・でも君、本当意地っ張りだね」</p><p>甲斐さんの話題になる度にそんなに沈んだ顔して、と、春日さんは呆れたように煙とともにため息を吐いた。</p><p><br></p><p>********************** </p><p><br>結局ピアスを付け替えるタイミングを逃したまま仕事を終え、夕飯にしては遅すぎる弁当をコンビニで物色していた時だった。<br></p><p>「春日から聞いたよ、西島くん」</p><p>課長からの呼び出し電話に、ちっ、話はえーなと小さく舌打ちする。</p><p>嫌みなら電話で済ませてくれればいいものを、すぐに顔を出せと言われてもう一度舌打ちして何も買わずにコンビニから出た。</p><p><br><br></p><p>「君の条件通りの男を選んだはずなんだが？」</p><p>越坂部課長は自席に座ったまま苦虫を噛み潰したような表情でギロリと睨んだ。</p><p>そろそろ前髪やばいんじゃねぇの位に感じてたその存在も、実際矢面に立たされると威圧感がすごい。</p><p>すみませんと頭を下げてから、さてどうしたものかと逡巡する。</p><p>「ありがとうございます。とても素敵な方を紹介してくださって」</p><p>こうゆうときの切り抜け方が巧みなのは、と思い巡らせて一人しか浮かばなかった。</p><p>「・・・でも、課長の下で学ばせて頂く今がとても楽しいので、もう少し訓育いただければと」</p><p>口角を意識してにっこりと笑って見せた。</p><p>「・・・どこで覚えた？その笑顔。お前、そうゆう世辞は苦手だっただろ･･･甲斐か」</p><p>課長の脳裏に浮かんだらしい男の名前をを忌々しげに吐き捨てる。</p><p>「俺、そのツラ嫌いなんだ」</p><p>思わず私もですと零しそうになって、慌てて口を閉じた。</p><p>表向きの笑顔は相手に伝わるものだ。本庁一課の課長ともなれば汲む力も相当だろう。</p><p>甲斐がどれほど課長に疎まれているかは想像に容易い。それを何事もなくあしらい続ける彼も大したものだと思った。</p><p>「・・・すてきな相棒と組ませてくれたことにも、感謝しています」</p><p>多分の嫌みも含めてお礼を言い、もう一度頭を下げた。</p><p><br><br></p><p>********************** </p><p><br>また性懲りもなく折れたヒールの予備をとりに一課へ戻る。</p><p>二度までは靴の修理店にだして直して貰うけど、三度目は捨てるようにしている。なんでこうポキポキ飽きもせず折れるのか。骨折だって再び繋がった骨は前より強固になるっていうのに。</p><p>甲斐が一課を離れる時が来たら、もうヒールの高い靴は履くのをやめようと思う。</p><p>甲斐と組んでから前を歩く背中が自分の視界を塞ぐのが嫌で履き出したものだ。彼と離れたら履く意味がない。この先もっと背が高い人と組むかもしれないけど、たぶん、その背を目障りだとは感じないだろう。そもそも自分より前を歩かせなきゃ済むことだ。甲斐と組んでから歩く速さにも磨きがかかったし、とにかく、甲斐以外の男には負けない気がする。</p><p><br></p><p>「よぉ」</p><p>一課に来たのだから甲斐が居るのは当たり前だとはわかっていても無意識に身構えた。</p><p>「なぁに」</p><p>ごくふつうに返したつもりでも知らず棘が出る。</p><p>甲斐のギプスは外れていて、あぁ治ったのだなと思った。快気祝いじゃないけど何か言葉をかければいいのにそれすら出てこなかった。</p><p>思うように振る舞えないのは嫌だなぁと思う。疲れるし、苛つく。</p><p>だから、デートしようぜと誘われても嫌だとしか答えられなかった。</p><p>甲斐の言うデートが恋人同士がする甘いそれじゃないことはわかっていた。仕事ではなく私用で話さねばならないことがあるのだろう。先日課長にお見合いの件も伝えたばかりだし、なんとなくは把握できた。</p><p><br></p><p>甲斐に春日さんとの結婚を勧められたら、きっといつもの言い合いになって、結局結婚すりゃあいいんだろって流れになっちゃう気がした。</p><p>あとに引けなくなって、結婚して、課長のしたり顔を見て、一課やめて、春日さんに甘える日々になる。</p><p>そんなの自分の理想とはかけ離れていて、やっぱり嫌だと思った。</p><p><br><br></p><p>帰り際、甲斐とエレベーターに乗り合わせて一言も喋らずに別れた。</p><p>社のエントランスを先に歩く甲斐の背中を眺める。</p><p><br></p><p>ずっと目障りだと思っていた。</p><p>後から入ってきたくせに最初からあたしの前にいて。</p><p>でかいから視界から外そうと思ってもずっといて。</p><p>どんどん進む背中を追いかけても全然追いつかなくて。</p><p>なんど噛みついてやろうと思ったか。</p><p>噛みついて小さくても消えない傷をつけて、何かの機会にあたしを思い出せばいい。</p><p><br></p><p>もうこの背中を見ることもあまり無くなるんだろうと思うと無性に寂しくなった。</p><p>「甲斐」</p><p>どうせ居なくなるなら自分から離れた方が楽だと思う。色々思うことはあれど、相棒として振る舞おうと決めたのだ。</p><p>甲斐の足が止まったのを確認して続ける。</p><p>「・・・受けることにした」</p><p>実際に春日さんと結婚しなくても、受けることにしたと言えば課長に対する甲斐の面目は立つんじゃないかと思った。無理にあたしとデートして話す必要もなくなるんじゃないかとも。</p><p>彼の負担が軽くなればいいと思った。</p><p>そっかそっか一安心、怪我も治ったしこれで俺も昇任に向けて精を出せるわ、くらいのことを言ってくれれば万々歳だった。</p><p><br></p><p>だから、振り向いた甲斐の笑顔が歪んでいたことに驚いた。</p><p>よかったじゃん、て顔してないじゃん。</p><p>「・・・甲斐」</p><p>全然嬉しそうな顔できてないじゃん。</p><p>表面取り繕うのは得意だったはずなのに、言葉と表情が相反していて訳がわからなくなる。</p><p>そのままくるりと後ろを向いて歩き出してしまった甲斐に、また上手く振る舞えなかったのかと悲しくなった。</p><p>もうこれ以上何か言っても拗れるだけだと挨拶の言葉もかけずに別れる。</p><p><br><br></p><p>自分が甲斐に対して相棒以上の感情を持った時点でおかしくなってるのは自覚していた。</p><p>でも甲斐だっておかしい。</p><p>体を動かすのが好きな彼が怪我して思うように動けなくなったのも、ワーカホリックのくせに仕事ができなかったのも、ストレスだったのはわかる。自分だってそうだったから。</p><p>でもここまでじゃなかった。</p><p>甲斐に何が起きてるのかと考えて、春日さんが言ってた言葉を思い出した。</p><p><br></p><p>刑事ってのは仕事柄、限られた情報の中で読み取ろうとする癖が------</p><p><br></p><p>あたしは近しい人に対してそうゆうことをしないからまだまだ刑事として甘いのかもしれない。</p><p>散々甲斐のこと考えていたけれど状況を揃えて相手の結論を出すということをしていなかった。</p><p>でも相手はこうなんじゃないかと決めるのはなかなか勇気のいることだ。</p><p>相手が甲斐なら尚更に。</p><p><br><br></p><p>「翔子！！」</p><p>呼び止められて振り向けば別れた筈の曲がり角まで甲斐は戻ってきていた。</p><p>それからはまた結婚の話でもううんざりだった。</p><p>なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのと言いたくても言葉を挟む隙すらもらえない。</p><p>あたしが仕事バカだろうがオトコオンナだろうが料理ができなかろうが部屋が汚かろうが、あんたに関係ない。</p><p>あたしが誰と結婚しようが愛想つかされようが、あんたには関係ないじゃない。</p><p>仕事の話なら責められてもしょうがないけど、個人的な事を責める権利はないじゃない。</p><p> </p><p>なんで一方的に言われなきゃいけないの。</p><p> </p><p>恋人でもないのに。</p><p> </p><p>ひとしきり悪態をつき終えてスッキリしたらしい甲斐はその勢いのまま言った。</p><p>「・・・俺と結婚しろよ、お前」</p><p> </p><p><br>「・・・ばぁか」</p><p>しばらく二人で間抜けな顔で見合って、やっと絞り出したあたしの声は震えていた。</p><p>「・・・何に苛ついてんのかしらないけど、心にもないこと言ってんじゃねぇよ」</p><p>言われたあたしよりも言った本人の方が驚いた顔して、言うつもりのなかった言葉だって露骨に出して。</p><p>ビンタの一発でも食らわそうと右手を振りかぶって、甲斐に腕を捕まれた。</p><p>あんなポカンとした顔しといて腕だけ治ってるなんてずるい。</p><p>なんかもう、色々ずるい。</p><p>ぶわわと涙が溢れてきて、すんでのところで堪える。</p><p>甲斐がでかくて良かった。見上げて睨み付ければ零れなくて済む。</p><p>「あたしもバカだけど、あんたも大バカだ」</p><p><br></p><p>キスして</p><p>抱きしめて</p><p>春日さんとの付き合いを勧めたり</p><p>辛そうに良かったって言ったり</p><p>結婚向いてないって悪口言うわ</p><p>しまいには俺と結婚？</p><br><p> </p><p>「・・・あんた、あたしのこと好きなんじゃないの」</p><p>絶対それはねぇよと確信していることを口に出したのが自分の胸をえぐる。</p><p>思いついたことをすぐ言っちゃうのがあたしの悪い癖だ。</p><p>なに失恋フラグ立てちゃってんの。</p><p>相棒としてだけ付き合うって決めたばっかりなのに。</p><p>「・・・もーやだ・・・」</p><p>目に溜まっていた涙で揺らいでいた甲斐の顔が全く見えなくなって、あたしは物心ついて初めて人前で泣いた。</p><p>「翔子」</p><p>甲斐に呼ばれて捕まれた腕に更に力を込められたけど涙は止まってくれなかった。</p><br>
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<pubDate>Fri, 08 Mar 2013 22:21:33 +0900</pubDate>
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<title>keishou3</title>
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<![CDATA[ <p>「・・・・良かったじゃん」</p><p>振り向いた甲斐の表情に目を奪われた。</p><p>なんでそんな顔してるの。</p><p>「んじゃ、約束どおり宴席張ってやんなきゃなぁ」</p><p>「・・・甲斐」</p><p>「祝い、何がいい？ヒールの踵でも買ってやろっか。６班みんなで」</p><p>明るい言葉とは裏腹になんでそんな辛そうに口を歪めて笑っているの。</p><p>「・・・・」</p><p>春日さんと付き合えと勧めてきたときも、こんな顔をしていた。</p><p>甲斐は苛つきをそう易々と表に出すタイプじゃ無かったはずだ。うまく笑顔で隠してスマートに対応して。</p><p>なぜここ最近はそれが出来なくなっているの。</p><p>自信満々にふんぞり返って憎まれ口を叩く甲斐はどこへ行っちゃったの。</p><br><p>後へ引き下がれなくなった子供が強がって支離滅裂なこと言ってるような、そんな感じだった。</p><p>甲斐だから子供みたいだなんて可愛くは思えないけど、前を歩く背中にいつもの迫力を感じる事が出来なくてどう声をかけて良いかわからない。</p><p>そんな彼を見ていたくないような、抱きしめたいような、一人の相手に対して相反する気持ちを抱くのはなぜだろう。</p><br><p>わからないことだらけで、もう無理だと思った。</p><p>元の相棒に戻りたいと願ったけど、もう無理なのだ。</p><p>自分の歯車についた石を取り除けば今までどおりに戻れると思ってたけど違かったみたい。</p><p>彼の歯車まで傷つけてしまったのか、なんなのか、とにかく一度噛み合わなくなったギアは元には戻れない。</p><br><p>なにも言えないまま分かれ道に来て、何も言わず甲斐と別れた。</p><p>たぶん、帰り道だけじゃない。人生っていうか、仕事での道というか、そうゆうのも自分と甲斐では違う道を選ばなきゃいけないんだろうと思った。</p><p>甲斐には甲斐の道があって、自分にも自分の道がある。</p><p>一時それが重なっただけで行き先が違うのなら別れなければならない。</p><p>元からわかっていたことだけど、辛いなぁと思った。</p><br><br><br><p>「翔子！！」</p><p>呼び止められて性懲りもなく何かを期待したのは自分がバカなのかアホなのか。</p><br><br><br><p>********************************</p><br><p>「俺と結婚しろよ、・・・ってさ」</p><p><br>「・・・えっ？」</p><p>ケンちゃんはくりっとした目を更に丸くさせて、緩んだ口元からレモンハイをボタボタと垂らした。</p><p>「ちょっ、零さないでよ、きったないなぁ」</p><p>慌てて手元にあったくしゃくしゃのおしぼりをケンちゃんに投げつけて、甲斐もそんな顔をしてたなと思い返す。そして自分もそんな顔だったはず。</p><p>豆鉄砲を食らった鳩とは良く言ったものだ。思考が止まると誰でもこんな面を晒すのだろう。</p><p>ケンちゃんはワリィワリィとおしぼりで拭いてから「それでそれで？」と興味津々に身を乗り出してきた。</p><p>「そんでショーコちゃん、どう答えたの？」</p><p>あたしよりも１コ年上のケンちゃんは子供みたいに目を輝かせて顔を近づけてくる。その野次馬的興味になんだかホッとして、愚痴り相手に選んで間違いなかったと思った。</p><p>昨日今日のタイミングでケンちゃんからお誘いがきた理由は不明だけど、あたしが課長にお見合い組まれてるのも知ってたし、本当渡りに船だった。</p><p>「答えるも何も・・・」</p><br><p>だって、思いもよらないことを言われたあたしより甲斐の方が驚いてたから。</p><p>心にもないこと言っちゃったんだって直球でわかったから。</p><p>腹が立って。</p><br><p>「・・・甲斐のおでこにチョップ入れて帰ってきた」</p><p>ズビッと、やっちゃった。</p><p>昨夜甲斐の額に見事に決まった黄金の右手刀をケンちゃんの目の前に掲げる。</p><p>途端にケンちゃんは口に含んでいたレモンハイをあたしの顔面めがけて吹き出して、空になってたグラスを倒して笑い転げた。</p><p>「ちょっ・・・・もおおおおおおおお」</p><p>そしてあたしは立ち飲み屋の店員に新しくおしぼりとレモンハイをもう一つ持ってくるよう伝えて、顔から滴るお酒の気持ち悪さに相談相手にケンちゃんを選んだことを激しく後悔したのだった。</p><br><p>新しいおしぼりで自分の頭と顔を拭き、テーブルもキレイにしてからもまだヒーヒーと笑い続けているケンちゃんにため息をつく。</p><p>「まじさ、笑い事じゃないんだって」</p><p>がぶがぶと少しぬるくなったビールをあおって、ジョッキをだんとテーブルに置いた。</p><p>「突き放すくせに絡んでくるしさ、何が気にくわないのか言ってくれなきゃわかんねーっつの」</p><p>わからないならわからないままでいいと思う。今までそうやって付き合ってきたのだ。</p><p>甲斐に突き放されるのはいつものこと、言い合いになるのもいつものこと。</p><p>ただ、あの辛そうな顔だけが引っかかって割り切れない。</p><p>あんなの自分の知ってる甲斐じゃない。</p><p>なにがどうなって「俺と結婚しろ」になるの？</p><br><p>「え～？俺わかっちゃったけどね～」</p><p>ケンちゃんはムフフとほくそ笑んで、それからまた思い出したように腹を抱えて笑い出した。</p><p>「いっや～あの圭吾がねぇ！プロポーズしてチョップ食らって・・・ギャハハハハハ」</p><p>「だっから、プロポーズじゃないんだって」</p><p>何度言ってもわかってくれない愚痴り相手に向けて枝豆を鞘からぴゅんと飛ばす。</p><p>ケンちゃんはそれを器用に空中でキャッチしてぱくりと口に入れた。</p><p>「っじゃーさ、ショーコちゃんはどーなのよ？圭吾のことどー思っちゃってるわけ？」</p><p>「・・・らしくないのは対応に困る、ちょう困ってる」</p><p>「そ～じゃなくってさ。結婚しよって言われて嬉しかったとか！キュンときちゃったとか！」</p><p>「・・・あのねぇ、本気でもないのに嬉しいわけないじゃん」</p><p>本気じゃないことはあたしのチョップを受けた甲斐を顧みれば明確だ。</p><p>あいつがあたしの攻撃を避けれないなんてよっぽど呆けてた証拠。</p><p>「まっ、俺的にはおもしろきゃいーんだけどね」</p><p>くっくっくと性懲りもなく笑うケンちゃんに対してあたしは全然笑えなかった。</p><br><p>「でもそのデートには行っといた方がいいんじゃね？ちゃんと思ってること話してさ～」</p><p>無責任さを隠そうとしないのか、それとも無責任を貫いて見守ってくれてるのか。</p><p>どちらにしろケンちゃんの明るい態度に救われたのは確かだった。</p><p>「・・・そーだね、話さないとね」</p><p>多分、甲斐もそのつもりで誘ったのだろう。仕事ではなく私用という意味でデートという言葉を選んで。<br></p><p>「で！後日報告よろしく！！」</p><p>大漁大漁、と満足げに店を出て行くケンちゃんを見送りながら、次にケンちゃんが何か悩んだときは絶対首突っ込んでやろうと心に決めた。</p><p><br>*******************************************</p><br><p>霞ヶ浦付き合ってあげる、何時にどこ行けばいい？と上から目線で送ったメールに甲斐からの返信が届いたのは休みの前日、中野署に居るときだった。</p><br><p>明日９時</p><p>お前の寮近くのコンビニ</p><p>ヒール禁止</p><br><p>デートの待ち合わせとは到底思えない素っ気ない内容に思わず吹き出して、果たし状かよ、と小声で突っ込みを入れた。</p><p>どうしたの、と怪訝そうに見る春日さんになんでもないと答えてから、甲斐の常套句を思い出して関係なくはないかと思い直す。</p><p>春日さんには色々迷惑かけてしまった。</p><p>苛々して仕事に身を入れられないこともあったし、お見合いの話だって二転三転して。</p><br><p>結局のところ、越坂部課長の術中に乗るのは嫌なので、と素直に打ち明けてお見合いは止めて貰うことにしていた。このまま結婚なんかしたら春日さんの後ろにずっと課長のしたり顔を重ね見て過ごすことになりそうだから、と。</p><p>でも結婚前提じゃなくていいから付き合ってくれると嬉しいんだけど、と食い下がられて、それはこのヤマが終わったらと保留させてもらった。</p><p>甲斐の言うとおりだ。あたしなんかに言い寄ってくれる人なんかこの先百年は現れない物好きで、もっと時間をかければ課長の思う壺な結果になったとしても悪くないかもしれない。</p><p>だからできるだけ失礼のない様に、隠さず素直に接しようと思っていた。</p><br><p>「何故か甲斐とデートすることになって・・・」</p><p>こんなデートらしくないデートをするのは色気のないあたしの人生でも初めてだ。さすが甲斐、普通じゃない。</p><p>「・・・うまくいかなかったら飲みに誘ってよ」</p><p>春日さんが悔しそうに笑うから、うまくいく事なんてありえないですよと返した。</p><p>「あたし、飲むと大虎なんだそうです。逃げた方がいいですよ」</p><br><br><p>春日さんといつかまた組むことがあったら無理して高いヒール靴を履かなくて済むなと思う。</p><p>春日さんが甲斐より背が低いからじゃない。甲斐よりもっと背の高い人がでてくるかもしれないけどそんなの関係ない。</p><p>ただ、あたしがでかくて追い越したくて、と思う背中が甲斐のものなだけ。<br></p><br><p>*******************************</p><br><p>行き先を考えればヒール禁止なのは尤もだったけど、着ていく服がないのには困った。</p><p>元から散らかってる部屋を更に散らかしてあれこれ考えてみたけど、手持ちにヒールと鞄くらいしか女らしいアイテムが無い。</p><p>結局ざっくりしたセーターと短パンにぺたんこのブーツを合わすしかなく、いつもジムに行く服と変わらなかった。</p><p>絶対嫌み言われるぞと思っても、釣りだし、そもそもデートなんて柄じゃねぇし、と諦める。</p><p>甲斐にもらったピアスはどうしようと悩んで、結局着けられずにケースごと鞄の中に入れる。</p><p>実は外した後も常に鞄に入れて持ち歩いていた。でも一度外したものを再び着けるというのは何かしらのきっかけがないとできなくて。</p><p>だから、今日はまた自信もってあのピアスを着けれるよう色々スッキリさせてこなきゃ。</p><p>厚手のモッズコートを掴んで家を飛び出し、待ち合わせのコンビニまで走った。<br></p><br><p><br>ピアスを買いに行った日のデジャヴだ、と舌打ちをした。</p><p>また何か言われるなと覚悟はしていたけど、実際文句言われるとカチンと来る。</p><p>「じゃあ他の女の子何着てくんのよ、真冬の釣りにぴらっぴらのスカート穿くわけ？」</p><p>「そーじゃねーけど。・・・もっとこう、オトコに見えないやつねーの？」</p><p>「足出してるだけで十分じゃん」</p><p>「タイツ穿いてたら出してるっていわねーの」</p><p>「これ脱いだら寒いじゃん」</p><p>車の中、呆れたようにため息をついた甲斐にやっぱりデートなんか来るんじゃなかったと後悔した。</p><p>女の子とっかえひっかえしてる奴のメガネに適うわけがないのだ。</p><p>なんだよ、せっかく化粧だけはちゃんとしてきたのに。</p><br><br><p>「・・・で、どこで釣るの？」</p><p>釣り場近くの駐車場は同じ目的で来ているであろう車でいっぱいだった。</p><p>「まー、こーゆう丘っぺりで釣るか、ボート借り・・・」</p><p>「ボーーーート！！！」</p><p>思わず食い気味に甲斐の言葉を打ち消す。</p><p>「・・・お前、絶対落ちるから」</p><p>「ボート乗りたい！ボートがいい！！水の上でやる！！」</p><p>渋る甲斐の背中を押してボートを借りてもらう。</p><p>初めて乗るそれはススキやら枯れ芦やらをかき分け水面を進んでいく。</p><p>「やっべーすっげー」</p><p>冷たい風さえ気持ちよく、それまでの鬱々とした気持ちはどこかへ消え失せて、まるで探検家にでもなったかのように上機嫌だった。</p><br><p><br></p><p>それからのあたしは絶好調だった。</p>ルアーをくくりつけた釣り糸を水面に投げ込むやいなや、小さいながらも続けざまに２匹を釣り上げ、今３匹目と格闘中だ。一匹も釣れてないからって人の戦果をビギナーズラックとか言う甲斐のぼやきは聞こえないふりをする。<br><p>「ねーあたし、対サカナフェロモン出てんじゃね！？」</p><p>「バーカ」</p><p>「出てるって！だだ漏れだって！！ほら、今回の大きいかも！！」</p><p>なかなか持ち上げられない重みを知ってもらいたくて甲斐に竿を押しつける。</p><p>「ねっ？でかくね？」</p><p>「あ、ほんとだ、結構重い」</p><p>重いとか言いながら快調にリールを巻き上げていく甲斐に自分の獲物が横取りされちゃう気がして慌てて竿を奪い取った。<br>「これはあたしの！」</p><p>「・・・サメが食いついてんのかも」</p><p>意地悪く言う甲斐の冗談にビクリと体をこわばらせる。</p><p>「・・・ここ、池でしょ？サメ居ないもん」</p><p>自分が釣れないからって負け惜しみ言っちゃって大人げない。</p><p>「霞ヶ浦って海と繋がってる池なんだよ。お前のサカナフェロモンに海から来るかも」</p><p>絶対そんなことない、と思いながらなかなか竿をあげる勇気が出なくてもたもたしていたら外れてしまった。</p><br><p>「あんたね、軽々しくサメって口にするけどやばいんだよ、あれ」</p><p>あたしのサメに対する認識は子供のころ見た映画に拠るもので占められていて、一般的なそれとは違うらしい。</p><p>体長４メートルでIQ２００あって前だけじゃなくて後ろにも泳げるサメ。</p><p>主人公で安全だと思ってた人もばくばく食われて、あたしにトラウマを植え付けた。</p><p>「キッチンに居た人間をレンチンしようとするんだから」</p><p>即行スイミング教室に入ってサメから逃げる為に泳げるようになったはいいけど、海は苦手なままだ。</p><p>同じ水の中という土俵に立ったら勝てる訳がない。</p><p>「・・・なにそれ」</p><p>呆れたように笑う甲斐を眺めて似てるなぁと思った。</p><p>でかくて頭がきれて身体能力も抜群で。しかもこの男ときたら顔も整っている。</p><p>甲斐はサメじゃなくて人間だから、負けず嫌いなあたしは存在そのものに白旗を掲げる訳にいかず、ことあるごとに楯突いたのだろう。</p><p>「・・・存在がチートなんだよ」</p><p>ぼそりと呟いて、あたしは３匹目を狙うため水面に糸を垂らした。</p><p><br><br></p><p>「おおおっ！やった！」</p><p>ようやく一匹目のバスを釣り上げたらしい甲斐が自慢げに見せつけてくる。</p><p>「・・・一匹目じゃん。あたし２匹だし」</p><p>「お前のより全然でけーし！」</p><p>「そんな変わんないよ」</p><p>どうみても自分のより大物なそれを忌々しく思いながら一瞥くれる。</p><p>「ばっか、お前のなんか２０センチそこそこだろ、これ４０ちかくあるぜ」</p><p>これ級のはなかなか居ないんだ無知め、と興奮ぎみにバス釣りとはなんたるかを語り始めた甲斐になんだか張り合ってるのが馬鹿らしくなる。</p><br><p><br></p><p>軽口の叩き合いもこうゆうんだったら楽しいのに。</p><p>なんであんなにギスギスしちゃうようになったんだろう。</p><br><p><br></p><p>「そっちの方があんたらしくて好きだよ」<br>思わず出た言葉が彼の興奮に水を差したらしい。途端に胡乱げな視線に変わって失言したことに気付いた。<br>「・・・俺らしいって何だよ」</p><p>「・・・それがわかんなくなっちゃったから困ってんじゃん」</p><p>藪蛇をつついてしまった。</p><p><br><br>「あたしさ、前、交通課の女の子たちにあんたの好みは出世の邪魔にならない子って言ったの、覚えてる？」</p><p>「・・・あー」</p><p>お前がゴリラみたいな格好してた時な、と言われて</p><p>「あれはさ、言う相手を間違えたかなと思うけど、あながち外してはないと思ってるのよ。少なくとも、あたしのイメージの中の甲斐はそうゆう男だったの」</p><br><p>努力もするけど最短距離で目的地に行くためなら手段を選ばず、のし上がって行くためなら越坂部課長よりもっともっと上のお偉いさんに紹介された子と結婚するくらい訳なくて。</p><p>周りの人間の感情は無視して計算して利用して。</p><p>そうゆうとこばかりとは言わないけど、基本的に自分の利益にならない行動はしない男だと思っていた。</p><br><p>「だから、あんたがあたし庇って怪我したとき何してるんだろうと思った」</p><p>あたしなんか庇って足止め食らって男だからカッコつけてるとか言って。それのどこが格好良いのだろう、らしくないじゃない、って思った。</p><p>「・・・でも、庇ってくれて嬉しかったの」</p><br><p>相棒としての気持ちとあたし個人の気持ちは一緒じゃない。</p><p>計算し尽くして効率的に仕事を進める姿は格好がいいけど、人情味の足りないところは好きじゃない。</p><p>甲斐が苛つけば何カリカリしてんだよって腹が立つけど、同時に心配にもなる。</p><p>らしくないことくらい放っておけばいいのに、気になって。</p><p>甲斐の整った顔が歪むのは見ていたくなくて。</p><br><p>結局ずっと甲斐のことで頭いっぱいだった。</p><br><p>「あたし、あんたのこと好きだよ。」</p><br><p>甲斐がこっちを振り向いたようだったけど、そのまま真っ直ぐ水面を見て言った。<br>「・・・悔しいけど、好き」</p><p>言いながら負けを認めた気分だった。</p><p>勝負事では無いとわかっていたけれど、やっぱり悔しくて下唇を噛む。</p><p>あたしがもし男だったらこんな気分味わわずに済んだのだろうか、もっと一緒に歩めたのだろうか、とチラと考えて男も女も関係ないと思い直す。</p><p>たぶん、自分が男でもこの男に腹が立っただろうし、背中を追いかけただろうし、知らず惹かれていただろう。</p><p>・・・だって、このあたしが落ちたんだから。</p><p>歯車の小石は邪魔だと思ったってそう簡単に外れてくれない。</p><br><p>お手上げ、と甲斐に両腕を伸ばし、自分の薄い胸に彼の頭を引き寄せ押しつける。</p><p>そして少し屈み込んでそっと唇を重ねた。</p><br><p>あの日資料室でキスしたときは驚きで何も考える余裕なんかなかったけど、自分から寄せれば甲斐の唇の弾力に離れがたさを感じて軽く歯を立てた。</p><p>「イッ・・・て」</p><p>眉間に皺を寄せる甲斐の頭をぐりぐりと撫で、無理矢理笑う。</p><p>「やられたらやり返さなきゃね」</p><p>これで、チャラだ。</p><p><br></p><p>少しの間くらい、甲斐の右手とあたしの左手を繋いでいたって損はないと思ったの。</p><p>ピアス買ってくれた時のように。</p><p>お互い利き手じゃない手を握ってたっていいじゃない、そう思ったの。</p><p>あたしじゃ利き手の代わりにはならないだろうけど、右手の代わりくらいならって。</p><p>でも、上手くいかないのなら、甲斐の足を引っ張るだけなら、離したほうがいい。</p><p>片方を追いかけるのが相棒じゃない。追い越そうとするのが相棒なんじゃない。</p><p>ちゃんと並んで進めるのが相棒なのだ。</p><br><p>庇ってもらって嬉しいと思った時点で相棒失格。</p><br><p>「・・・あんたとのコンビを解消させるのはあたしから、って言ったよね」</p><p>あたしが怪我から復帰したときに伝えた言葉。強がりで言った言葉だったから、まさか期間内に撤回することになるとは思わなかった。</p><p>結局、森川さんが自分たちを組ませた意図はわからないままだ。</p><p>色々、本当色々中途半端な気がして悔しいけど、キャリアの道を突き進む甲斐の邪魔をしないようにするのは彼の相棒としての意地。</p><p>「・・・おしまいにさせて貰うよう課長に頼んでみるわ」</p><p>自分が出した答えが正しいか間違ってるかなんて、きっとたくさん時間が経たなきゃわからない。</p><p>でもなんらかの形を示せたことで、来週からまた紅いピアスを着けて仕事ができるんじゃないかなと思った。</p><br><br><br><p>fin</p>
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-11481210803.html</link>
<pubDate>Fri, 01 Mar 2013 17:51:36 +0900</pubDate>
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<title>keishou</title>
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<![CDATA[ 一課へ続く白い廊下。<br>意地を張るんじゃなかったと後悔したときには元来た道を戻るには惜しい距離まで来てしまっていた。<br>２０キロか３０キロか、腕が肩から外れそうになるほど重い証拠品ケースの中身は紙類がぎっしり詰まっているのだろう。<br>台車に乗せて行けば？と声をかけてくれた証拠品保管庫の人は善意で言ってくれたのだ。<br>女には無理、と捉えて断ったあたしが捻くれていた。<br>「くっそ・・・肩もげる・・・・腰やばい・・・・」<br>いつもなら１０分で着く一課が遠すぎる。<br>一度ここにケースを置いて台車だけ取りに戻ろうかとも考えて、そのまま一課へ向かうことにした。<br>あたしから意地を取ったら何が残るの？<br><br><br><br>「あのっ、西島さん！」<br>受難とは重なるものだ。<br>呼び止められた声に振り向くと交通課の若い女の子が二人もじもじと立っていた。<br>「・・・はい？」<br>彼女たちはあたしの名前を知ってる様だけど、あたしはその子達が制服から交通課だということしかわからない。うららの同僚だろうか？<br>「あの、私達、松田さん経由で合コンすることになって」<br>「その席に甲斐さんも参加されるそうなんですけど」<br>自己紹介もなく唐突に本題に入られ面食らう。<br>「それで、甲斐さんの好みを西島さんなら知っているかなって」<br>「西島さん、甲斐さんの相棒だと聞いたので」<br>「・・・・はぁ」<br>そりゃそうだけど。<br>いや、相棒って言葉には語弊がある気もするけど、甲斐と組んでて仕事の間長いこと一緒に居ることは確かで。<br>でもこの今の状況を彼女たちは把握してるのだろうか？<br>あたし、肩もげそうなんだけど。<br>重くて重くてゴリラみたいな立ち姿になってるんだけど。<br>早くデスクに荷物下ろしたいんだけど。<br>苛つきから喉まで出かかった「知るかよ」という言葉を無理矢理飲み込む。<br>あたしはどうもこの手の女子に弱い。菜々美とかうららとか。いわゆるスイーツ？の類。<br>仕事中でも恋愛ごとに一生懸命なのだろう、可愛いとは思うけど感覚が違いすぎてどう接していいかわからない。<br>男にモテるコツをあたしに聞くなんて人選ミスだ。<br>でもこの子達もそれを承知で、しかも相棒とはいえ女のあたしにわざわざ聞きに来るなんて、それだけ必死なのかなと思う。<br>その場で可愛がられるだけ食われるだけじゃ嫌なのだろう。きちんと甲斐と付き合いたいのだ。<br>「あー・・・なんだろうね、」<br>だからこうゆう状況でも真摯に応えねばと｀重い’と｀もげる’で埋まった頭の片隅で甲斐の好みのタイプとやらを考えた。<br><br>「よくわからないけど」<br>前置きしてから本当に自分が甲斐の好みを知らないことに気づく。<br>あたしと甲斐はキャリアノンキャリア男女の差こそあれ、同僚の枠から出ていない。一歩も。微塵も。プライベートなんか知る由もない。<br>甲斐と組むようになって１年ちょっと、あたしの恋愛遍歴を伝えたこともなければ、彼の彼女に会ったこともない。甲斐がモテるのは知っているけど。<br>パッと見、目の前の２人だって十分可愛いと思う。だからそう伝えればいいのかもしれない。そのままでいいと思うよ、と。<br>それでも何か不十分な気がして、なんだろうなんだろうと必死に考えた。<br>あたしの返事をキラキラした瞳で待ってる２人に喜ぶ顔をさせたいのか、それとも相棒のプライドで一歩踏み込んだ答えを出したいのか。<br><br>一つだけ確実に言えるのは、あたしみたいのは眼中にない、ということ。<br><br>ちぎれそうな腕は思考を纏めさせてくれず、悪い方へ持っていくらしい。<br>ゴリラのポーズで導き出した答えは、自分でもどうかと思うものだった。<br>「彼の出世の邪魔にならない子？かな？」<br>流石にこれはねぇよ、と本人の居ないところで悪口になっちゃったことへ反省して、彼女たちの顔色が曇ったのを見て更に後悔を重ねる。<br>しまった、どうフォローを入れようか、まず荷物を置くべきか、軽くパニックになったところで<br>「おまえ、人聞きの悪いこと言うなよ」<br>突然、頭上から声が聞こえたと同時に手がふっと軽くなった。<br>見上げればいつもの顔があって、あたしを苦しめてた荷物は彼の小脇に移動している。<br>さっきまであたしに向けられていた彼女たちの瞳は甲斐に釘付けで、更にキラキラと輝きを増していた。まるで王子様でも現れたかのように。<br>「あんたの好み、教えてくれってさ？」<br>彼女たちは任せたと、ビリビリと痺れの残る手で甲斐の背中を叩き、その場を離れる。<br>甲斐はにこやかに彼女たちと接していて、あぁその笑顔かつて自分にも向けられたことあるなとぼんやり思った。<br><br><br>「お前さぁ、何か俺に一言あってもいいんじゃないの？」<br>甲斐がどすんとデスクに証拠品ケースを置いてちらりとこっちを見た。<br>あたしが自分のデスクに戻ってからまだ２分と経っていない。彼のことだ、軽く挨拶だけ済ませて荷物の重さも大して感じずに戻ってきたのだろう。<br>あたしの指はまだ痺れてるのに。<br>「ありがと、助かった」<br>決してあたしが非力な訳じゃない。男と女の差じゃない。甲斐が人間離れしてるのだ。<br>もし孝ちゃんだったらあの場所まで行く前に諦めて台車を取りに戻ってただろうし、森川さんだったら腰をやってる。<br>「でも足止めされたのはあんたの所為だからね？」<br>なぜか甲斐に対しては悔しさばかり感じて一言多くなる。<br>「ほんと、かわいくねーな」<br>別段腹を立ててる風でもなく言われるその台詞にも、可愛かったら何かあんのかよと心の中でぼやいてとっておきの変顔を見せつけてやった。<br><br><br><br><br>********************************<br><br><br><br><br>せっかくの休日だというのにあたしは甲斐と手を繋いでジュエリーショップに居る。<br>仕事だって言うからしょうがない。<br>今日こそ散らかり放題の自分の部屋の掃除をしようと思ってたけどしょうがない。<br>観たかった映画も大好物の【赤ひげ】の串カツもつけてくれるって言うからしょうがない。<br>甲斐はつい最近まで小鳥遊と一緒に資料室に泊まり込みの仕事をしてたはずで、ケンちゃん達と合コンもあるはずで、そのうえ他の班のヤマの件で休日まで潰すんだから、本当体力底なしなんだと思う。さすが人間離れした男、休みなんか要らないらしい。<br>でも彼のそんなワーカホリックぽいところは悪くない。キャリアの腰掛けと揶揄してる奴らよりよっぽど仕事してるし、勉強も努力もしているのを知ってる。<br>ならばもう少し甲斐に対する態度を和らげてもいいんじゃないかと孝ちゃんに言われた事があったけど、それはまた別に理由があるからで。<br><br><br>今、まさに、今。<br>仕事の‘ついで’に彼女へのプレゼントを買うらしい。<br>仕事相手とはいえ、女のあたしと手を繋いで。<br>ましてや選ぶのが面倒くさいのか、関係ないあたしに選ばせようとする。<br><br>甲斐が要領の良い男だというのは重々知っている。効率の良さを重視するのもわかっている。<br>仕事も面ではあたしだって感心せざるを得ない程だけど、それをプライベートまでなんて。<br>相手を想う気持ちが足りないのだろうか、欠けてるのだろうか。そんなところが甲斐の人間離れ感に拍車をかける。<br><br>「…あんたのそういうとこ、ほんと嫌い。だいっっっきらい」<br>甲斐の彼女も、甲斐の好みを聞きに来たあの交通課の子たちも可哀想だ。<br>甲斐の手に立てたあたしの爪があの子たちの様にもっと綺麗に長く伸ばしてあれば良かったのにと思った。余計なお世話かもしれないけど。<br><br>とはいえ今は仕事中な訳で、店主の手前、甲斐を張り倒すわけにもいかず、おとなしく物色する振りをする。<br>小さな輝く石の粒がこんなに高いものなのかと驚いたが、表には出せない。これだけ払うなら飽きるまで焼肉貪ったほうがよっぽど満足感を得られるだろうに。<br>正直アクセサリーの類はよくわからない。自分に似合うと思わないから余計だろう。<br>唯一身につけている透明の石のついたピアスは孝ちゃんから一課配属のお祝いに貰ったものだし、彼氏がいたときに貰ったペンダントやリングもあたしが思ってた以上に高価なものだったのかもしれない。<br>所詮あたしには猫に小判、豚に真珠。<br><br><br>でも。<br><br>あ、これ可愛い、欲しい、とガラスケースの中のあるピアスに目が留まったのと甲斐がそれに指を指したのはほぼ同時だった。多分、いや絶対あたしの方が早かったけど。<br>「…これ、変？」<br><br>金の華奢なフレームに嵌ったキラリと小さな紅い石のピアス。<br>それはまるで一課のs1sバッヂのような。<br><br>「可愛い」<br>乾いた声で言ってから、馬鹿正直に応えるんじゃなかったと後悔した。<br>嘘でも貶しておけば甲斐の気が削がれて違うものを彼女へのプレゼントにするかもしれないのに。そしたらあたしは近いうちこっそりと買いに来れるのに。<br>甲斐が店主を手招きしてその紅いピアスをショーケースから出してもらってあたしの横顔に掲げる。<br>あたしを通して彼女を見るのはやめて欲しい。<br>そのピアスはあたしのだ。<br>だからやめてと言えたらどんなにと思う。<br>でもこの場ではあたしが甲斐の彼女で、それを貰える役なのだ。やっぱりこっちが良い、と適当な物を見繕う余裕すらなく、ただひたすら甲斐に伝われと目で訴える。<br>「・・・似合う」<br>店主からみたら褒め言葉な甲斐の台詞が、あたしをすごく傷つけた。<br>彼女への言葉をあたしに使うな。<br><br><br>車に戻ってから何のお咎めも無かったってことは甲斐の偵察は上手くいったのかもしれない。<br>でもやっぱり似合わない場所になんか行くもんじゃない。<br>車のバックミラーに映る後部座席に置かれた小さな紙袋を見てため息が出る。<br>彼女に対して罪悪感なんて微塵も感じてないであろう甲斐と、何も知らないで受け取る甲斐の彼女、宝物を見つけたのに取り上げられちゃったかのような自分。<br>怒ってるんだか悔しいんだか悲しいんだか、どれとも言い難い気持ちでぐちゃぐちゃになって、窓の外でも睨んでないと涙が零れそうだった。<br><br><br><br><br>甲斐が越坂部課長に連れられて挨拶に来たときのことを今でも覚えている。<br>ひと目見ただけでこりゃモテるだろうなという長身の男は、真新しい紅い襟章の重みなど気にもとめてないといった風に手を差し出してきた。<br>あの交通課の女の子たちに向ける笑顔と同じ顔で。<br>なぜあたしがキャリアのエリートと組まなきゃいけないのか不満でならなかった。現場でのし上がる為には現場のベテランに付いた方がいいに決まってる。<br><br>その後車で甲斐と二人きりになったときに直接文句を垂れたのも覚えている。<br>「キャリアが現場知ってどうするんですか」<br>「キャリアは会社を守るのが仕事なんじゃないですか」<br>そしたら甲斐は問いには答えず面白そうに言った。<br>「君、敵作るの上手いでしょう？」<br>「表裏無いのも良いけど、上に可愛がられることも大事だよ」<br>あたしはこの男とは絶対上手くいかないと思ったものだ。<br><br><br>「・・・なに？」<br>映画と串カツですっかり上機嫌だったあたしに向けられるいつものニヤニヤ上から目線。<br>でも、対女子に使う表面的な笑顔より心地良いと思う。<br>大してあたしの話も聞いてないだろうし、絶対バカにしてるけど。<br>「黙って食え」と差し出された串カツにかぶりついてもぐもぐしながらバカと言った。<br>・・・・うん、悪くない。<br>一年ちょっとほぼ毎日のように顔を付き合わせてきた結果、二人きりで食う串カツを旨いと感じるまでになった。赤ひげの串カツは偉大だ。<br><br><br><br>********************************<br><br><br><br>５月１７日。木曜日。<br>寝ぼけ眼で出社したあたしのデスクの上に小さな紙袋が置いてあった。<br>見紛うはずがない、先日甲斐と行ったジュエリーショップのもので、中身はあたしが一目惚れしたピアス。<br>一気に目が覚めた。<br>課への朝の挨拶もそこそこに自席に駆け寄り、涼しい顔でコーヒーを飲んでいる甲斐の頭をグイとデスクの下に押し込む。<br>「あっつ！！おっま」<br>コーヒーを零したらしいが関係ない。<br>「・・・ねぇ、振られたの？」<br>「・・・はぁ？」<br>「だから、彼女に振られたの？喧嘩しちゃった？」<br>クイックイッと顎でデスクの上の紙袋を指し、こそこそっと甲斐に耳打ちする。<br>小声で聞いているのはプライドが高い彼への配慮だ。一課屈指のモテ男が振られたなど同僚にバラされたくはないはず。プライドの高い人間に初っぱなからプライドを崩すのは尋問のタブーなわけで、定石通りやんわりと問いただす。<br>「すれ違いが重なったとか？」<br>振られたのだと認めさせれば、受け取ってもらえなかったプレゼントをあたしに流用するなんてとんでもない愚行を犯す理由にもなり得ると納得できるものだ。<br>デスクの下、しゃがんだまま俄然取り調べモードに入ったあたしをぽかんと見てた甲斐は呆れた様に苦笑いをした。<br>「なんで俺が振られなきゃなんないんだよ？」<br>「や、わかる。この仕事、デートすっぽかすなんて当たり前だも・・・・あっつ！！」<br>振られた前提から動こうとしないあたしの頬に熱いマグカップを一瞬触れさせて、そのままデスクに置く。<br>「あっつーーー！！」<br>「うるせえ、バカ」<br>「あんたの方がバカ！！」<br>頬を抑え目を剥きだして喚くあたしを甲斐はおかしそうに笑って見た。<br><br><br><br>事の顛末を全て聞き出したのは結局昼休みになってからだった。<br>「・・・じゃあ、なに？最初からあたしに買ってたってこと？」<br>「だから何度言やぁいいんだよ」<br>「仕事も嘘？」<br>「そー」<br>「女友達にあげるのも嘘？」<br>「そー」<br>面倒くさそうに相槌を打つ甲斐にまだ訝しい視線を送る。<br>だって甲斐があたしにプレゼントをよこすメリットがわからない。休日潰してあたしに付き合うメリットなんか何もない。効率と利点を計算しつくして動くこの男がなぜ、と思うけど聞きただすことはできなかった。<br>「なんでそんなややこしいことすんの」<br>「ふつーに誘ったら即断ったのおまえじゃん」<br>「・・・そうだけど」<br>知ってたらあの時あんなに悲しい思いしなくて済んだのに、と思う。<br>デスクの上に置きっぱなしだった紙袋にそっと手を伸ばす。<br>「開けていい？」<br>「中身知ってんだろ」<br>「うん」<br>中に入っているのは小さな紅い石のついたピアス。欲しくて欲しくてどうしょうもなかったけど、もう一度見てしまったら絶対手放せなくなると思って触っていなかった。<br>いつもなら包み紙なんか破ってしまうのだけど、丁寧にラッピングを外した。<br>現れた襟章のミニチュアみたいなピアスに、あぁやっぱりこれはあたしのだと思う。<br>「絶対返さないからね」<br>口から出たのはやっぱりかわいくない言葉で、でも甲斐が心変わりする前に着けてしまえと少し震える指先で急いでピアスを付け替えた。<br>透明な石よりこっちのほうが似合ってるといいと思う。<br>鏡を携帯してないからって「似合う？」と甲斐に聞いたのは自分がだいぶ浮かれている証拠だろう。<br>「・・・店で言っただろ？」<br>「うん」<br>あれがあたしに対する言葉だったんなら何よりだ。<br>「ありがと。・・・大事にする」<br><br><br>もしかしたら。<br>もしかしたら、甲斐にも効率度外視で動く面もあるのかも。<br>そうだったら人間離れしてると感じてたところが少し近づくのにと思った。<br><br><br>fin
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-11463227413.html</link>
<pubDate>Mon, 04 Feb 2013 00:24:55 +0900</pubDate>
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<title>ウェンカヤ</title>
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<![CDATA[ 自分をゴーカン魔だ変態だエロ親父だとものすごい勢いで罵ってきた口は閉じると可愛い。<br>赤く強い光を持つ瞳も瞑ってしまえば人形の様に静かで、微かに寝息をたてるカヤはいつもよりも更に幼く、なんだか後ろめたいことをした気になった。<br>「２７・・・８？だっけか？」<br>同年代の女に比べてとても小柄でスリムなカヤが身を震わせて盾付いてくるのを面白く見ていたが、今回は余裕をなくした。<br>「この浴衣っての、良くないよな」<br><br>仕事で短期滞在させられた日本という国の片田舎に宿を取り、部屋着として置いてあった浴衣。<br>これが前を重ねて腰を紐で縛るだけという、鍵のつかない襖といい皆で入る温泉といい、この国はどれだけ他人に対して無防備なのかと驚いたものだが、――いや、その浴衣。浴衣がカヤに似合いすぎたのが悪いと思う。<br>飯の後、この宿の唯一の娯楽であるらしい卓球を仲間と一緒にしていたのだが、この浴衣ってのが他のグラマラスな女よりカヤの方が似合った。自国のネグリジェだったら間違いなく乳バーン！尻バーン！の女の方が色気があるのに、浴衣は露出が少ない分、カヤの細い首やら小さな肩やら前合わせから覗く細っこい脚だとか、そうゆうのが猛烈にエロかったのだ。<br>エロい格好で卓球でいつもの調子で勝負とか歯向かってくるから<br>「俺が勝ったらヤルからね、カヤちゃん」<br>「ばっ、バッカじゃねーの？なんでお前みたいなオッサンなんかと！」<br>「なー？オッサンに負けるわけねぇもんなァ？」<br>「・・・負けねーよ。あんた負けたらこのラケット耳にして裸で外ウサギ跳びな？」<br>本気を出さない訳が無く、チャっと勝ってチャっとカヤを担いで頂いた。<br><br>それはもう、本当美味しく頂いた。<br><br>「それにしても強姦魔は言い過ぎだろ・・・」<br>確かに合意ではなかったかもしれない、ちょっと、いや大分無理させたかもしれない。俺ってばまだ若いね、と照れ隠しにカヤの寝顔に向けてウインクを飛ばしてみる。最後まで抵抗の言葉を口にしていたかもしれない。・・・でも、彼女の細い腕は自分の首にまわされていたはずだ。吐息も啼き声も俺の耳に直に吹きこまれていたから。<br><br>ついさっきまでの痴情を思い出して、おっとムッツリやべぇと頭を振る。<br>ちょっと落ち着こうと一服しようとしたが、腕の中にいる子猫から離れるのは忍びなく諦める。<br>枕元の金の懐中時計は未だ５時過ぎを指していて、周りが動きだすまでもう一回ちょっかい出しちゃおうか、でもそれこそ自国でカヤにナイフが装備された瞬間に殺されるかも、と思考をめぐらせている間に障子から漏れる光が強さを増してきて目を閉じた。<br><br><br><br><br><br><br>「イテ！イテテテッ！！」<br>突然引っ掻かれたような痛みを頬に感じて目を開く。<br>目の前には悪戯の最中に親に見つかった時の子供の様な面をしたカヤが目を泳がせていた。<br>「・・・いや、あんたが子猫子猫って寝言ウルセーから猫のヒゲでも足してやろうかと思って？」<br>本当、こいつはガキか？<br>「ボールペンはねぇだろ・・・」<br>指先を器用にくるくると回るペンを奪おうとすると、カヤは手首のスナップを利かせてナイフの様に部屋の隅に飛ばした。<br>そのタイミングの見事さたるや、された悪戯を忘れて感心の息を漏らさせ、マジでナイフ向けられたらやべぇなと思う。<br>「で、今何時？」<br>懐中時計に手を伸ばしかけるとカヤに素早く奪われる。<br>「これ、あたしンのだから触んな」<br>「あー昔お前にやったやつ？まだ使ってんのそれ？」<br>「うるせぇな、なかなか壊れねぇんだよ」<br>憎まれ口しか出てこない唇を尖らせたカヤの手の中にある時計は彼女がこの世界に入ってきて売春婦管理の仕事に就いたときに渡した俺のお下がりだ。俺も気に入ってたから後から同じものを買ったが、それでも１０年以上経つ。<br>言うほど自分が嫌われていないんじゃないかと自惚れにも似た気持ちが胸を横切って、それが顔に出たのかもしれない。<br>「気持ち悪っ」<br>カヤが吐き捨てた言葉も字面ほど酷いニュアンスには感じず、にやけるのを止められなかった。
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-11267131315.html</link>
<pubDate>Sat, 02 Jun 2012 17:45:30 +0900</pubDate>
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<title>ウェンディ</title>
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<![CDATA[ 街で一番上級のホテルの最上階、エレベーターから一番離れた最奥の部屋。足元は豪奢なベルベットのカーペットで自分の体重をいくら乗せてもへたることはない。<br>オークでできた頑丈な扉の前に立つこと早３時間。部屋の中ではボスと幹部と門外顧問の会合で、耳を澄ませば中からの声も聞こえるのだろうが、それは自分が聞いて良い内容ではないし、そもそも下っ端の自分には関係のないことだ。<br>ただの見張りとしてここにいるだけ。不審な人間が現れたら知らせるためだけに立っている。排除するのは隣の部屋に控えている戦闘部員の役目だ。<br>目の前の食め殺しの窓にはいつもより上等なスーツを崩さず着こなした自身が映っていて、なかなかの見栄えだと自画自賛すること２０回。<br>今日はあのいけすかない金目の幹部は出席しておらず、因って困り顔の幹部補佐も居ない。<br>「・・・残念だ」<br>この格好良い自分を見せたかったとか他愛のないことをぼんやり考えて、もう一度ガラスにキメ顔を映した。<br><br>街の灯りがぽつぽつと減って夜も更けてきたことを知らせる。<br>ジャケットの内ポケットから取り出した懐中時計が２３時を過ぎたことを示していた。<br>ボスはまだ幼く、そろそろおねむの時間だろう。解散も間近か。<br>仕事上がりにどこへ行こうか思いを馳せる。酒が飲みたい、幹部補佐と似た紫の瞳のおねぇちゃんのいる行きつけの店にするか。そしてその紫が快楽で歪むのを楽しもう。<br><br>パチンと時計の蓋を閉じると替わって携帯のバイブが着信を知らせた。<br>「おぅ、俺だ・・・その名前呼ぶんじゃねぇよ」<br>背後を気にし小声で出ると自分の代わりに売春宿においてきた部下からだった。これからの予定が狂うことを意図する報告内容に小さく舌打ちし、それでも顔は愉快さを隠すことができずにやけた。<br>「カヤに俺の事務所で待つよう言っとけ」<br>手短に指示して時計と携帯をポケットへしまう。<br><br>自分と同じ懐中時計を持つ、見た目も性格もクソガキな女をどう懲らしめるかに脳内を支配される。何度説教しても同じことを繰り返す奴には違う手段も使わなくてはいけない。<br>「ねー、カヤちゃん。お楽しみにね？」<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-11182676490.html</link>
<pubDate>Sun, 04 Mar 2012 13:53:41 +0900</pubDate>
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<title>あたしの辞書に素直（ｒｙ</title>
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<![CDATA[ <p>あ、と思った時には体は宙に浮いていた。</p><br><p>視界に広がる青空がどんどん遠くなって、落下の怖さを知る。</p><p>甲斐が何か叫んでいるように見えたけど、何も聞こえない。</p><p>甲斐のあんな顔見たことがない。どうしようどうしよう、死んじゃうかもしれない。</p><p>孝ちゃんどうしよう、助けて、と目を閉じたらなぜか牛嶋のジジイの顔が浮かんだ。 </p><br><br><br><p>「こらぁ！しっかり受け身とらんかい！！」 </p><br><br><br><br><br><br><p>******************************************************************************************** </p><br><p>ビルの３階、非常階段の外に放り出されて、左腕を折ったくらいで済んだのはラッキーだったのかもしれない。</p><p>牛嶋のジジイのおかげかもしれないけど、あんまり感謝したくない。</p><p>だってもし死んじゃってたら、あたしのいまわの際はジジイの顔と怒声で埋め尽くされていたってことになる。</p><br><br><p>「全治３週間だって？」</p><p>真っ先に見舞いに来てくれたのは、流石の小鳥遊だった。小鳥遊はお見舞いの花束に香りの少ない花を選んできて驚いた。てっきりバラかなんか抱えてくると思ったのに。</p><p>「うん、退院は週末にもできるけど、頭の検査とかめんどくせぇのがあるみたい。」</p><p>「頭は・・・・・でも、顔に怪我なくて良かったじゃないですか。」</p><p>あたしが男だったら、いけしゃあしゃあと、頭はもとから大したことないんだからって言うんだろうと思いつつ、黙ってフェミニストを見返した。仕事をしくじって迷惑をかけてる身分では絡むこともできない。</p><br><p>現場に居た森川さんにはものすごい剣幕で怒られた後、勘弁してくれよ、と消え入りそうな声が聞こえたから、本当に心の底から申し訳ないと思った。</p><p>牛嶋のジジイはいつもと違って静かな声で、大丈夫か、とちゃんと治ってから道場に来い、と二言だけ言って帰って行った。</p><p>栞さんは病室に入ってくるなり、あたしの頬をツイと撫でて、あら、まだ温かいのねって言うから、思いっきり笑って折れた骨に響いた。 </p><br><p>みんな忙しいだろうに顔を出してくれてありがたい。</p><p>ありがとう、ごめんなさいを毎度毎度伝える。</p><p>特にごめんなさいは何度口にしたかわからない。 </p><p>慣れない謝罪はけっこうしんどい。</p><br><br><p>ごめんの意味は２種類。</p><p>心配掛けてごめんなさい。</p><p>仕事増やしてごめんなさい。</p><p>ちゃんと心をこめて言ってるのに。</p><br><br><p>「翔子、それ反省してないだろ？」</p><p>孝ちゃんはベッド脇のパイプ椅子に腰をおろして眉間に皺を寄せた。手を顎に持って行くのは機嫌が悪い時の癖で、あぁ、地味ーに怒ってんだなって思う。</p><p>「だってさぁー？まさかあんなネクラなヒッキーにこのあたしが振り払われるとかさぁ！だって、ちゃんと関節キマってたのにさ？」</p><p>こっちだって十分悔しくて、思わず声が大きくなる。</p><p>いつもなら上手く行ってるし、ホシだって確保できてるし、まさかこんな病院送りとか惨めったらしい状態になるとは思わなかった。あたしの性格全てお見通しの兄にくらい、八つ当たったっていいだろう。</p><p>「あんながりっがりの野郎に、なんでこのあたしが投げ飛ばされなきゃいけないわけ？ありえねぇし！」</p><p>「まさかとか思ってるから、そうゆう目に遭うんだろ？慢心しないように森川さんが口うるさくしてくれてるんじゃないか。」</p><p>逆に声を荒げることなく静かに淡淡と喋るのも、孝ちゃんが怒っている証拠。</p><p>「・・・・・わかってるよ、だから森川さんにはちゃんと謝ったもん。本当に。」</p><p>「ならいいけど。あと、甲斐さんにもちゃんと謝っておけよ？」</p><p>森川さんには、確かに何度も無茶するなって怒鳴られてるし、もう心配掛けたくないからちゃんと謝った。</p><p>でもなんであいつにも？</p><p>「キャリアだろ、あの人」</p><p>孝ちゃんが意図するところが分かって思わず睨む。それを無視して孝ちゃんは病室を出ていった。</p><br><br><br><p>ベッドから見上げる病室の天井はただただ白い。</p><p>その白い天井がふっと遠ざかる感じがして落ちる感触を思い出したり、ホシの陰気な顔が浮かんだりで、</p><p>何時間寝ようと気持ちが休まることはなかった。</p><br><br><br><p>******************************************************************************************** </p><br><p>「お前、なにそのパジャマ。似っあわねぇ～」</p><p>日が暮れる頃、一番来て欲しくない男は開口一番に憎たらしい言葉を吐いてきた。</p><br><p>ピンクと黒のストライプのパジャマは無駄なフリフリとリボンがついていて、なんだか重い。</p><p>「・・・・菜々美とうららが持ってきてくれたんだよ。」</p><p>かっこいいお医者さんとツテ作っといてくださいね、合コンセッティングお願いします☆って渡された中身がコレだった。</p><p>自分のキャラじゃないのはあたしもスイーツらも重々承知の上。だが、着替えが限られてるからしょうがない。普段はスウェットとTシャツでパジャマ自体持ってないのだ。</p><p>「ハッｗｗ遊ばれてんじゃねーよ」</p><p>「うるっせぇな」</p><br><p>甲斐が座らないから、ベッドに寝っ転がっているとすごく見下されてる気がして体を起こし、</p><p>しわの寄ったシーツに胡坐をかいて、ずいっと手を出す。</p><p>「いいからお土産よこしなよ。ちょっ！シンティランテのじゃん！！」</p><p>甲斐の左手にぶら下がってる大好きなケーキ屋の箱に手を伸ばすと、ひょいと逃げられた。</p><p>「これはお前にじゃねーの。ナースステーションでナースの子達と食うの。」</p><p>甲斐は厭味ったらしく片方の口角を上げて笑う。</p><p>「バーか、今の病院はそーゆーの受け取らないんですぅー」</p><p>「バカはお前だろ、俺が持っていけば受け取るんだよ。」</p><p>「ナースなめんなバカ」</p><p>「俺なめんなバカ」</p><br><p>ばーかばーかと言い合って、に本当にそのまま帰ってくれればいいのに、と思った。</p><p>仕事の話題が出ないままなら、あたしは甲斐に頭を下げなくて済む。</p><p>甲斐はナースとケーキを食って、後々ナースを食えばいい。</p><br><p>世間じゃ相棒ってドラマが流行ってて、うちらを相棒だという人もいるけど、実際はそんないいもんじゃない。</p><p>上司に組まされた、ただのペアだ。ペアになるなら森川さんか安藤さんか安村がいい。</p><p>甲斐なんか性格最悪で情も絆もくそくらえだと思う。</p><p>でも、ペア組まされた以上は色々な責任が生じるわけで。</p><p>今までの人達へとはまた違った意味の謝罪が必要なわけで。</p><br><br><p>甲斐はあの時、確かにあたしが動くのを止めたのだ。</p><p>それを、あたしが振り払った。</p><p>ホシはあのまま甲斐が確保したらしいけど、あたしは怪我をした。</p><br><p>「甲斐、」</p><p>こいつだけには頭下げるの嫌だな、孝ちゃん、見逃してくれないかな。</p><p>でもちゃんと筋通すのが大人なんだろうな。</p><p>「・・・・・・・・・・・ごめん」</p><p>胡坐をかいたまま、頭を下げる。</p><br><p>「は？別にお前の心配なんかしてねぇぞ？」</p><p>ケーキの箱を取り上げたまま、やっぱり憎たらしい言葉を吐く相手を見上げる。</p><p>「上に、何か言われてない？」</p><p>ペアのミスは連帯責任だ。だからキャリアってのはめんどくさい。</p><p>腹黒い甲斐の出世街道に傷がつくのはむしろザマァだけど、それがあたしの所為だったらものすごく後味が悪い。</p><p>計算高い甲斐の計算が狂って出世できないところを笑いたいけど、あたしの所為だったら笑えない。</p><p>もし、あたしが墨つけちゃったりしたら、本当にごめん。</p><p>甲斐に謝れっていう孝ちゃんの指示は、自分のミスが自分のことだけで済まないってあたしに自覚させる為のもの。</p><br><p>「あぁ、そうゆうこと。」</p><p>上に、の一言で意味を理解したらしい頭の切れる男は、あたしの渾身の謝罪なんかどうでもいいというような物言いをした。</p><p>「まぁ、俺にでかい借り一つできたと思って喜べ」</p><p>「はあ？」</p><p>「お前は殺しても死なないのわかったし、俺の立身に傷を付ける心配なんかいらねぇって。」</p><p>あたしが下手に出てるのをいいことに、甲斐はこれでもかというくらい上から目線を飛ばして笑った。</p><p>「っつーか、お前まじそのパジャマ似あわねぇｗｗｗ写メ撮っていい？一課のホワイトボードに貼っとくわ」</p><p>「まじ殺す」</p><br><br><br><br><br><p>結局、甲斐はケーキの箱をそのまま置いて行って、中にはあたしの大好物なミルフィーユがちゃんと入っていた。</p><p>わし掴んで頬張れば、甲斐とのペアも、まぁ、佐久間さんよりはマシか、と思えるようになった。</p><p>さっさと退院して、元凶作ったあのヒキコモリ男をきっつく取り調べて欝憤を晴らそうと心に決めた。</p>
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<pubDate>Fri, 04 Feb 2011 22:24:50 +0900</pubDate>
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<title>琥太郎×月子　（スタスカ）</title>
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<![CDATA[ 放課後の保健室。 <br>片付いた机の上の山のように積みあがった書類にペンを走らせる。 <br>背後には彼女の気配を常に感じていて、気持ちばかり逸る。 <br>彼女は何も言うわけじゃない。静かに本を読んで俺の仕事が終わるのを待ってるだけだ。 <br>仕事が終わってから何をするという約束もしていない。きっとソファに並んで座って、彼女の淹れたマズイお茶を飲み、たわいない話をして、キスをする。 <br>毎日変わらない事だけれど、その時間はとても幸せすぎて、大切すぎて、欠かせない。 <br>月子が急かしてくる訳ではない、俺が早く彼女の隣に座りたい。 <br>早く、早く。 <br>だけど振り返ったら負けだ。彼女の姿を見てしまったら仕事なんか放り出して小さな体を抱きしめてしまうかもしれない。 <br><br>我が校唯一の女生徒、夜久月子と付き合い始めて約半年。 <br>理事長と生徒という立場の違いや歳の差から、大人である俺が自分に課した制約を守る日が続いていた。 <br><br>理事の仕事は月子の前ではしないこと。 <br>保健医としての仕事を先に済ませてから月子との時間をもつこと。 <br>月子が在校生の間は身体の関係を持たないこと。 <br><br>ペンを止めると、背後から彼女がページをめくる音が聞こえた。 <br>その音の規則正しさで、月子が俺を待つことに飽きてないのを知り、ホッとする。 <br>「・・・・ハァ」 <br>自分の余裕のなさにため息が出て、思わず顔を手で覆う。 <br>３０目前のいい大人が、なんでこんなにいっぱいいっぱいなのか。 <br>「星月先生？・・・なんか煮詰まってますか？」 <br>背後から月子の声がしてドキリとした。 <br>「いや・・・・まぁ、少し、な」 <br>こいつはぼんやりしている様で鋭いから、隠しても無駄だ。素直に認めるしかない。 <br>「お茶、淹れますね」 <br>彼女はフフッと笑ってソファから腰を上げた。 <br><br>月子と入れ替わるようにソファに腰掛け、身を沈める。 <br>月子は３年生になっても幼くてお子様な性格のままだったが、夏服に変わった制服から伸びる手足はすらりとしなやかに成長して目の毒だ。 <br>日々、彼女に色気がないとぼやくのは自分に言い聞かせるためだったりする。 <br>月子の卒業まであと半年以上、一年とみた方が近いくらい。我慢できるのだろうか、俺は。 <br>「月子、いつもより濃い目に淹れてくれ」 <br>強力にマズイのを飲んで、意識を覚まさなければ。 <br>「はーい」 <br>彼女は歌うように返事をして、振り向き、微笑む。 <br>あぁ、本当に可愛い。 <br>もっと可愛がりたいのに、後ろにはそれが出来るスペースだって整っているのに、大人ってのは厄介だ。 <br>「・・・マズイお茶、早めに頼む」 <br>月子は小さく頬を膨らませた。 <br><br><br>ふとソファの上を見ると月子が読んでいた本が残されていた。 <br>「進学案内？」 <br>「今日、進路調査表配られたんです」 <br>月子がマグカップを両手に持って戻ってくる。 <br>「悩んでるのか？」 <br>差し出されたカップを受け取ってソファの上の本を退かし、彼女を隣に座らせた。 <br>「いえ、教育学部にしようと思ってるんですけど・・・・」 <br>正直助かった、とホッとした。 <br>この話題と渋くて苦いお茶で保健医としての顔が保てる。 <br>「教員目指すのか。いいんじゃないか、お前に向いてると思うよ」 <br>まっすぐに他人のことを思いやれる月子。なかなか度胸もあるし意地もある。教師は適職だろう。 <br><br>「・・・それもいいんですけど」 <br>月子はマグカップに唇をつけたまま、言葉を続けた。 <br>「保健の先生になりたいって言ったら、先生、反対しますか？」 <br>長い前髪から大きな瞳がおずおずとこちらを見た。 <br>上目遣いは反則だ、とクラリとしてから彼女の言葉の意味を遅れて理解する。 <br>「看護教員！？」 <br>口に含んだお茶を吹き出すのをすんでのところで耐えた。 <br>「はい、星月学園の保健の先生になりたいです」 <br><br>月子が白衣着てこの保健室に居たら、と想像する。 <br>この男子校とほぼ変わらない学園でこんな可愛い保健医が居たら、月子目当ての患者で連日満員御礼なのは目に見えていた。 <br>学生は看護してもらいたくてわざわざ怪我してくるだろうし、陽日も今以上に入り浸るし、その頃教師として赴任してるであろう郁に至ってはどんなちょっかいを出してくるかわからない。 <br>職員室ならまだしも、ベッド標準装備の保健室に一人で置いておくなんて。 <br>ダメだ、絶対ダメ。 <br>これ以上月子を他の男の前に無防備に晒しておくなんて耐えられない。 <br><br>「お前、俺の仕事取る気か？」 <br>様子を伺うような彼女の視線に、精一杯の余裕の言葉で却下した。 <br>「そうゆう訳じゃないんです！先生が保健医のお仕事、とても大切にしてるのは分かってるんです。・・・・でも」 <br>慌ててすがりつくように月子は俺の白衣の袖を掴んだ。 <br>「私、保健委員になって保健医って素敵だなって思えたし、これからこの学校も女の子増えるかもしれないし・・・やっぱり先生大変そうだし・・・」 <br>次々と志望理由を挙げては否定されるのを恐れるように、細い指で白衣を握り締める。 <br>「それに、これからも先生との時間、もっと欲しいんです」 <br>月子の子供っぽくもまっすぐな欲求は俺の胸を熱くした。 <br>同じことを思っていても素直に伝えられない自分に彼女は眩しく見える。 <br>小さく薄い肩を引き寄せて、きつく抱きしめた。 <br>「・・・・考えておく」 <br>桜色の唇に自分のそれを重ね、柔らかな甘さを味わった。 <br><br><br>マグカップが空になってから、再び机の書類に向かう。 <br>けれど月子が保健医として過ごしやすい環境にするにはどうしたらいいかで頭をいっぱいにしているあたり、 <br>結局、俺はこの可愛い恋人には敵わないのだ。 <br><br><br><br>了 <br>
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-10483330810.html</link>
<pubDate>Tue, 16 Mar 2010 16:52:26 +0900</pubDate>
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<title>郁×月子　（スタスカ）</title>
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<![CDATA[ 教育実習が終わり、大学生活に戻って早半月。 <br>教員もなかなか楽しそうだと知って、以前より学生生活も充実してはいるけれど、やっぱり彼女が気になって打ち込めていなかった。 <br>男だらけの中にぽつんと独り居る月子は、きっと相変わらずのほほんと無防備に生活しているのだろう。 <br>周りはみんな性欲持て余したガキで、その中で寝食を共にしている危険を彼女は理解していない。 <br>僕がもう少し具体的に男というものを教えておけば良かったと悔やんでも、今更どうすることもできない。 <br>琥太にぃと陽日先生が彼女を守ってくれているのだろうけれど、その二人にすら嫉妬してしまうのだから厄介だ。 <br><br>月子の声を聴きたくなって電話をする。声が聴けたら今度は会いたくなって、そして直に触れたくなる。 <br>寮生活の彼女とは休日か大型連休しか会えない。 <br>恋人同士なのに会いたい時に会えないなんて。 <br><br>恋とか愛とか面倒くさい必要ないと避けていたら、実際その中に身を置くと本当にきついのだと今この年になって知った。 <br>この僕が恋焦がれちゃうなんてね。 <br>恋も愛も知らないままで良かったなんて強がっても、今更どうすることもできない。 <br>月子は僕の世界のすべてを覆し、僕が見ないようにしてきた物すべてを抱えて飛び込んできた。 <br>もう手放すことができない。 <br><br><br><br>ある平日、琥太にぃに我侭を言って、こっそり屋上に上がらせてもらった。 <br>放課後そう時間も経ってなくても冬の空は早く暗闇を宿して星を瞬かせる。 <br>がらんとした屋上をふらりと歩き、ベンチに独り座った。 <br>月子には学園に居ると伝えていない。 <br>それが琥太にぃから出された条件だったし、僕も彼女と同じ学園内に居るということだけで満足はできなくても、気が楽になった。 <br><br>ほんの何週間か前まで毎日ここで彼女とデートをしていたのだ。 <br>賭けのゲームのような恋人ごっこだったけれど、今なら無条件で毎日会えたのは贅沢なことだったんだと思う。 <br>毎日手をつないで星を見る、本当にお子様なデートでも、それすら叶わない今よりは全然幸せだ。 <br><br><br>ふと小さなメロディが耳を掠めた。 <br>視線で元を辿ると、手すりに手を添えた月子が空を見上げていた。 <br>冷たい風でなびく髪、短いスカート。 <br>ホラ、やっぱり無防備すぎる。こんな暗闇で一人で居るなんて。 <br>心の中で文句を垂れてみても、会えた喜びで頬が緩むのを止められない。 <br>後ろから抱きしめて驚かそうと、そっと彼女に向かって歩みを進めた。 <br><br>「・・・！」 <br>彼女に近づくごとにしっかりと耳に届く月子の鼻歌が心を冷やした。 <br>「ご機嫌だね、月子」 <br>「郁！！」 <br>背後から話しかけ、振り向いた彼女の表情が喜びから不安に変わったのを見る。 <br>「郁？」 <br>冷たくなった心は恋人の不安げな表情さえ小気味よく感じた。 <br>「君は憧れのバンドのメンバーと付き合えて満足なんだもんね？」 <br>幼い彼女の瞳が大きく見開かれても、僕のほうが、よっぽど傷ついてる。 <br>彼女が口ずさんでいたのは、僕が昔バンドで作ったバラードだった。 <br><br>「郁？」 <br>おそるおそる自分に伸ばされる彼女の手を、冷めた笑顔で制した。 <br>女の子の手を振り払うなんてみっともないこと出来ないけれど、触れて欲しくない。 <br>行き場をなくした細い指先が空を掴んで下ろされる。 <br>「僕としたことが、ファンの子の告白を真に受けて浮かれちゃうなんてね。堕ちたもんだよ全く」 <br>僕がかつてバンドをやってたことは彼女と出会った時には気付かれていた。 <br>月子はそのバンドを好きだと何度も口にしていたし、辞めたとはいえ元ボーカルの僕と付き合うことは彼女にとってステイタスなのかもしれない。 <br>「たくさんのファンの子達とベッドを共にしてきたけど、君もそうして欲しい？」 <br>僕に抱かれたといって自慢してたあの子達と一緒なのかもしれない。 <br>教育実習の間、彼女が僕に向けていた瞳がどんなものだったのか、頭の中が霧がかったように曇って思い出せなかった。 <br>「郁？何言ってるの？」 <br>愛だの恋だの、所詮人の心なんて全て分かるわけないのだ。 <br><br>「私は郁があのバンドのボーカルだったから好きになったんじゃありません！」 <br>月子が震える声を抑えるようにピシリと言った。 <br>「この歌は私が本当に好きな曲ってだけで・・・こんな星空にぴったりって思っちゃっただけで」 <br>濃紺の空にチラチラと輝く星たちに視線を投げて、そして僕に戻す。 <br>「この曲と郁のことは、全然別だよ」 <br>小さく頭を振って、まっすぐ僕を射止めた。 <br>「私は、ちゃんと水嶋先生が、郁が好きです」 <br>揺らぎのない視線の強さはこの小さな身体のどこから出るのだろう。 <br>辛い経験もない子供のくせに、大人を従わせる力を持つ純粋な瞳。 <br>そうだ、この強さに僕は救われたのだ。 <br>「お願いだから、そんな悲しいこと言わないでください」 <br>月子は細い指先を僕へ再び伸ばし、頬を撫でた。 <br>「そして・・・そんな辛い顔しないで？」 <br>ひやりと冷たく悴んだそれを自分の手のひらで包む。 <br>月子も僕と同じように、一人でこの屋上庭園でデートのことを思い出していたのだろうか。 <br><br>「わかった。信じるよ。だからもう一度歌ってみてよ、月子」 <br>交換条件のように意地悪く注文をすると、月子はポッと頬を染めた。 <br>「・・・えぇぇぇ？」 <br><br><br>月子の少し高く伸びやかな声で歌われたそれは、自分が作ったのとは別なものの様に星空に響いた。 <br>真冬の寒空の下、優しく包み込むような暖かさを持ったメロディは僕の涙を誘う。 <br>嫌な思い出として一緒に封印してしまった幾つかの曲。 <br>彼らに非はなかったのに。 <br>バンドの事とは別に、作って歌った曲たちは大事にしてやればよかった。 <br>彼女の前で泣くのが恥ずかしくて、小さな体に覆いかぶさるようにして抱きしめた。 <br><br>「本当、君には敵わないね。惨敗だよ」 <br>月子の耳元で甘く囁いた言葉は、いつもの僕の声でいられただろうか。 <br>僕はどこまで彼女に救われるのだろう。 <br>この小さくて幼い恋人に。 <br>「また！勝つとか負けるとかゲームみたいなこと言って」 <br>可愛らしい膨れっ面に唇を落とし、キスをした。 <br>増すばかりの愛情と甘さに感謝の意も込めて。 <br>「愛してる。月子」 <br>僕の苦手な言葉も、彼女にならいくらでも。 <br><br><br><br><br>了 <br>
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-10483329869.html</link>
<pubDate>Tue, 16 Mar 2010 16:51:05 +0900</pubDate>
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<title>ライル×アイリーン　（アラロス）</title>
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<![CDATA[ 「ライル！！ライル～！！」<br>謁見室の入口からアイリーンがドレスの裾をひらめかせながら飛び込んできた。<br>遠目でみてもわかるくらい頭に血を登らせ小さな顔を険しくさせて。<br>職務中の筆を置いて彼女を眺める。<br>「ライル！私の香水！！捨てたでしょう！？」<br>私の目の前に来るまで我慢できないのか、ずんずんと近づきながら怒鳴りつけ、謁見室に声をこっくりとした声を響かせている。<br>「ずぅーっとずぅーっとシャークにお願いしておいたのを、やっと手に入れてもらったのに！！」<br>全く彼女は煩く騒がしい。年の割に・・・・といっても私と比べたら子供でしかないのだけれど、それにしても幼く、小憎たらしく、可愛らしい。<br>「・・・・全く、そんな大声張り上げて」<br>早く大人にならせるよう毎晩苛めてあげているのに（可愛がっては意味がないのだ）、その時ばかりはなかなかの艶をみせるのに、なんで昼間はこうなんだろうと小さなため息をこぼした。<br><br>「大声だって出ます！私の大事なもの、なんで勝手に処分しちゃうの！？夫婦だからってやっていいことと悪いことがあるでしょう？」<br>玉座の下段、大臣席に腰掛ける私の目の前で仁王立ちした彼女は、怒りに呼吸を乱したまま<br><br>「私はこの３日間機嫌が悪かったのですよ？」<br>「そんなのわかってたわよ、理由話してくれなかったくせに」<br>「言葉に出して教えなきゃ伝わってくれないんですか。おしおきが必要ですね」<br>腰に手を回し、力を込めて引き寄せる。抱き寄せるというよりは自分の身体へ拘束する様に。<br>そして、空いた手の指先で彼女のへその下をグイと押す。<br>「・・・・奥、良くなってきたでしょう？」<br>プリンセスでありながら男と身体を繋げることにそう抵抗を感じない彼女も、年相応の経験しかしていない。<br>アイリーンの初めてを奪った男に対する私の想いはとりあえず置いておき、毎晩彼女に新たな快感を植え付けるのはたまらない興奮だった。<br>私を受け入れる身体の最奥も、やっと馴染んで望ましい反応を返してくれるようになったのだ。<br><br>「あなたの香りが感じられなくて嫌だったんです。香水なんか必要ない」<br>「ならそう言ってくれればいいじゃない、なにも捨てなくても」<br>「だから、」<br>「さっきも言ったでしょう？機嫌が悪かったんですよ」<br>「後で思いっきり苛めてあげますからね」<br><br>真っ赤に染まった柔らかな頬に甘く唇を寄せた。
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<link>https://ameblo.jp/savage-lily/entry-10483328584.html</link>
<pubDate>Tue, 16 Mar 2010 16:49:17 +0900</pubDate>
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<title>ライルアイリーンえろ　（アラロス）</title>
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<![CDATA[ 掠れた声を上げて意識を飛ばした彼女の奥深くへ注ぎ込む。<br>意識は飛ばしているはずなのに彼女の体内はギュムギュムと自身を絞り続け、その気持ち良さに引き出すのを躊躇わせた。<br>だからと言って反応を返さない身体を蹂躙するような癖は持ち合わせていない。<br>自身をずるりと抜くと咥えこんでいた赤い秘裂から自分が放った白濁が零れ、そのいやらしさにまたゾクリとした。<br>絶頂の余韻かむず痒さに身体を震えさせるアイリーンの腰を抱え込む。<br>放った液がこれ以上零れぬよう持ち上げ、もう一度蓋をしてしまいたいとか、更にまた注ぎ込みたいとか、そんなことを自分が考えていることに気がついて苦笑せざるを得ない。<br><br>力なく投げ出された柔らかな肢体に年甲斐もなく何度も欲情してしまうなんて、私もどうにかしている。<br>その上、子供ができてもいいんじゃないかとまで。<br>自分の歳の半分ほどの元教え子に長いこと複雑な想いを寄せていたとしても、実際想いが通じてここまで我を忘れることなんて想像していなかった。<br>子供は嫌いなのだ。アイリーンの家庭教師になったのだって嫌々だし、彼女が成長してせいせいしているのだって本音だし、まだたまに見せる彼女の子供っぽさを疎ましく思っているのだって本音なのに。<br>私は彼女のどこまで欲するつもりなのだろう。<br><br>このまま彼女の隣に横になって眠りに落ちるか、半端にくすぶっている熱を散らせてからにするかを考えて、安らかな寝息を立てるアイリーンの寝顔を見て心を決める。<br>いまだ充血の引かない小さな突起を苛めても彼女の目が覚めないようなら、そのまま寝ようと。<br><br><br>私が育てた彼女の、私が開発した身体が、反応しないわけがないのだけれど。<br>
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<pubDate>Tue, 16 Mar 2010 16:47:20 +0900</pubDate>
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