<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>伊藤誠士郎の小説日記</title>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/seishirou53/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>初めましての方、お久しぶりの方、どうも誠士郎です！また戻ってきましたアメブロ！ここでは最新作「リバーシブル・ワールド」を連載させていただきます。感想等お待ちしてます！</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>2話 part3</title>
<description>
<![CDATA[ &nbsp;太陽は半分を地平線に隠し、茜色の空は西から東にかけて藍色のグラデーションを描いていた。<div>&nbsp;太陽の時間が終わり、眠れる星たちが瞬き始めるこの時間帯が好きだった。ただ暗いだけじゃない。そこにはある意味でのバトンタッチが行われていて、輝く主役が星と星の間で移り変わる。</div><div>&nbsp;ここ迷宮都市イザヴェルの南地区は、ちょうど東西の真ん中に立って空を見上げられることから、イザヴェル内でも天文学が発達するほどに皆が空を見ている地区でもあった。</div><div>&nbsp;その南地区のさらにはずれ。人の気配も少ない路地裏に、俺行きつけの遊び場があった。</div><div>『居酒屋ノリさん』</div><div>&nbsp;何ともまあ気の抜けるようなやんわりした雰囲気の居酒屋である。入り口には赤いのれんと提灯。田舎の酒飲み場をそのままこっちの世界に持ってきたような感覚がして、俺は何かあるとここに来るようになっていた。</div><div>「ちわーす」</div><div>&nbsp;エリーゼを後ろに連れ、俺が先陣を切って中へ入る。と、店内は大きく2分され、相変わらずの賑やかさを醸し出していた。</div><div>&nbsp;入ってすぐ目の前には食事用のカウンター。マスターであるノリトシという50前半の親父さんがカウンターの向こうに構えている。そして向かって右側には畳の遊び場があり、客は飲み食いしながら向こうで軽いギャンブルに明け暮れる。マスターこそここの最近ギャンブラーで、彼に勝てたら本日のオススメメニューを無料で頂けるという特典付きだ。</div><div>「おうリヒト、らっしゃい」</div><div>&nbsp;優しい雰囲気のマスターが俺の顔を見て声をかけた。その手は休まずに何かを弄っている。</div><div>「ようノリさん、ご無沙汰」</div><div>「ん？リヒト、珍しいな、連れか？」</div><div>&nbsp;俺に続いて入ってきた珍客に、店の大将は目を丸くする。</div><div>「お前……ええいっ！」</div><div>&nbsp;ノリトシはカウンターから身を乗り出し俺を捕まえるとグイッと引き寄せた。</div><div>「どこでそんなベッピンさん捕まえたんだこの野郎！」</div><div>&nbsp;ヘッドロックに加え髪をワシャワシャと掻き乱される。</div><div>「いででで…違う違うギルドメンバー！」</div><div>「あの、お邪魔します」</div><div>&nbsp;少々遠慮がちなエリーゼが丁寧に頭を下げた。</div><div>「いらっしゃい。田舎臭えとこだけど楽しんでってくれや」</div><div>&nbsp;やっと解放された俺は髪を直しつつカウンター席に座ってエリーゼに合図する。それを見た彼女も俺の隣に座り……途端、その表情を崩した。</div><div>「……いい匂い…」</div><div>&nbsp;この嗅覚はカウンターの中にあるものを正確に捉えていた。</div><div>「おでん、食ったことあるかい？」</div><div>「おでん？」</div><div>「おう、ダシの効いた汁で大根やら肉やらを煮込んだ今日のオススメメニューさ」</div><div>&nbsp;ごくり、とエリーゼの喉が鳴る。ノリトシの手元で湯気を上げつつ鼻の奥まで染み渡る匂いを放っているそいつは紛れもなくおでん。</div><div>&nbsp;ノリトシが最も得意とするカウンターメニューの1つだった。</div><div>「何から食う？今日はどれでも1つ8メルだ」</div><div>「は、ハチメル！」</div><div>&nbsp;素っ頓狂な声を上げたのはエリーゼだ。ジュース一本50メル。50メルで6個は食べれる計算。さらに目を輝かせる雷神様のテンションはヒートアップする。</div><div>「じゃあノリさん、俺とこいつに、まずは大根をくれよ」</div><div>&nbsp;俺が指を2本立てて注文すると、「あいよ」と手際よく2枚の皿に大根の輪切りを熱々の汁の中から1つずつ乗せて俺に差し出した。</div><div>「食ってみな、美味いから」</div><div>&nbsp;皿の端に少しカラシが添えてあるのがまた憎らしいほど食欲を唆る。</div><div>&nbsp;何のためらいもなく一口食べたエリーゼが目を大きくしながら唸る。</div><div>&nbsp;向こうでさっきまで賭け事をして遊んでいた男達も身を乗り出すようにしてエリーゼを見つめていた。この場にいた者全てが頬を綻ばせたことだろう。天使のような笑みが場を満たしていた。もちろん俺も、ノリトシも笑みを隠せない。</div><div>&nbsp;喜んでもらってよかった。</div><div>「リヒト、他のおすすめはなに？」</div><div>&nbsp;早くも大根を平らげた少女は俺に尋ねる。「いい食いっぷりだ！」と男たちは歓声を上げる。</div><div>「じゃあ…はんぺんとか食っとくか？」</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;その日、夜の9時過ぎまで楽しく食い飲みした俺とエリーゼは夜分遅くになって武器屋に立ち寄り、鍛冶屋の親父さんにこっぴどく叱られた。</div><div>&nbsp;でもまあ、と俺はまだ興奮冷めならぬエリーゼを見た。</div><div>&nbsp;明日からの仕事はたぶんきついから、いい気分転換になったのかもしれない。</div><div>&nbsp;少なくとも、エリーゼはまたあの店に行きたがっている。もう1度あのおでんを食うまでは何がなんでも生き延びるだろうな。</div><div>&nbsp;</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12031756281.html</link>
<pubDate>Tue, 26 May 2015 10:41:02 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>2話 part2</title>
<description>
<![CDATA[ 「……というわけだ」<div>「は、はぁ…」</div><div>&nbsp;緑髪のエルフによって発表された依頼は、何度もリアクションし難いものだった。</div><div>「ボスを倒せばいいのね」</div><div>&nbsp;隣にいたエリーゼが手を挙げて再度確認を取る。</div><div>「その通りだ」</div><div>「そういうのって、迷宮攻略系ギルドの仕事なんじゃねえの？」</div><div>&nbsp;そう俺が発言すると同時に、リーダーは眉間にしわを寄せた。</div><div>「だからスレイブハーツが横槍を入れてきたんだろう。彼らも最下層エリアのボスに手こずっていたからな、獲物を横取りされたくないのはどの冒険者とて同じ」</div><div>&nbsp;だが…と、リーダーは腕組みをして顎に手を当てる。</div><div>「先刻の目撃情報が不可解すぎる。ギルド本部が直々に我らアンリミテッドワークスに依頼したのもそのせいだろう」</div><div>&nbsp;先刻の目撃情報。それは、北の長「スレイブスピリッツ」が最下層の主を倒してさらに下層へのルートを開こうとした時に得たものだ。得体の知れないものに不意打ちを食らったスレイブスピリッツのメンバーは全滅。怪我をしながらも逃げ帰ってきた者の話によれば、「水色の彗星が見えた瞬間に仲間が倒れていった」そうだ。その者は仲間を見捨てて逃げた事で批難を浴びたが、そいつのおかげで情報を得られた事も事実。</div><div>「うちのメンバー総出でダンジョンに行ってもらう」</div><div>&nbsp;リーダーの表情はいつも以上に硬い。</div><div>&nbsp;それもそのはず。アンリミテッドワークスのメンバーが総出でダンジョンに行くなど、前例がない。</div><div>&nbsp;ダンジョンに行く時に冒険者は、基本的に6人1組のパーティを組む。ボスなどの大型モンスターに挑む時は、このパーティを5組集めた30人体制を取ることがギルドの方針だ。</div><div>&nbsp;現在のアンリミテッドワークスの構成員は7人。ギルドマスターである彼女がここに残るとすれば、ちょうど1パーティ分の6人で迷宮へ行くことになる。</div><div>&nbsp;30人で倒すべきエリア主を6人で。</div><div>&nbsp;しかも危険な目撃情報付き。</div><div>&nbsp;難易度は一気に高まっていた。</div><div>「リーダー、ただいま戻りました」</div><div>&nbsp;ちょうどその時、外から威勢の良い少年の声が聞こえた。</div><div>「入れ」</div><div>&nbsp;そこに現れたのは、残るアンリミテッドワークスのメンバー3人。</div><div>&nbsp;真ん中の背の小さいガキンチョがシュン。背に弓を携えている。パーティ編成時には後衛を担当する凄腕のスナイパーである。</div><div>&nbsp;向かって右側の大人しそうな黒髪ロングの少女はシェイリン。アリシアに並ぶ魔法師で、戦闘は好まない性格からか、補助系の魔法を得意とする。</div><div>&nbsp;左側がマリュエル。首元までに短く揃えられた赤髪が彼女の特徴で、武器は持ち合わせていない。格闘術が彼女の最大の武器であり、他にも忍術と呼ばれる魔法に分類される古術を会得している。戦闘では主に遊撃の役割を担い、攻守共に要となる。</div><div>&nbsp;そこに俺たち3人とリーダーを加えたメンバーが、現在のアンリミテッドワークスだ。</div><div>「聞いたよ、スレイブハーツ相手に圧勝だってね！」</div><div>&nbsp;市場に水を売りに行っていた彼らの耳にも、スレイブハーツ惨敗の知らせは届いていた。身長145とまだまだ発育途中なシュンが目を輝かせながら言い寄るので、多少得意げになってしまうのは致し方ない。</div><div>「まあな、でも強かったぜ」</div><div>&nbsp;と、俺。</div><div>「私の魔法も貫通できなかったし」</div><div>「すごくお腹の減る戦いだったわ」</div><div>&nbsp;アリシアとエリーゼも、しっかりと敵の強さを認めた上での感想を述べる。これがこのチームの凄さなのだろう。決して強いからと言って前に出ない謙虚さ。中には俺たちを臆病者と罵る奴もいるが、そんなに簡単な理由で引っ込んでるわけではないのだ。</div><div>「お前たち、お喋りは終わりだ」</div><div>&nbsp;全員がその声に反応して前を見る。</div><div>「説明した通り、明日明朝にダンジョンへ行ってもらう。目指すは最下層のボスだ。道中、いつ例の彗星が現れるかわからん。前衛はエリーゼとリヒト、中間にマリュエルとシェイリン、後衛はアリシアとシュンだ。今日はこの後、買い出しに行ってもらう。水の方は私が売ってこよう。各自、明日への準備をしっかりとすること。いいな？」</div><div>「「「はい！」」」</div><div>&nbsp;</div><div>「……とは言ったものの、なぁに買えばいいんだ？」</div><div>&nbsp;時と場所を移してイザヴェル中央通り。日はすでに傾いている。時刻は午後の4時を回ったところ。</div><div>&nbsp;俺とエリーゼは、前衛として必要なものを買い出しに来ている。</div><div>「怪我とか、シェイリンが回復魔法で癒してくれるだろ？なら俺ら何もいらないんじゃね？」</div><div>&nbsp;念のため、先ほど剣と槍は武器屋に渡してきた。刃を研いでもらうためだ。急用だと頼み込んだところ、午後7時には終わらせると言ってくれた。いつも世話になりっぱなしで、鍛治屋の親父さんには俺もエリーゼも頭が上がらないのだが…今回のことでまだ1つ貸しを作ってしまった。</div><div>「多少回復薬は持っておくべき。敵の罠で孤立した時用に」</div><div>「あぁそうか。そんならポーションと…」</div><div>「あとはおやつ」</div><div>&nbsp;はいはい、あなたの脳内はそればかりでしたね。</div><div>「じゃあそこらの店入るか」</div><div>「うん」</div><div>&nbsp;スタスタとおやつ求めて店に入っていくエリーゼを追いかけて俺も店に入った。</div><div>&nbsp;その5分後、</div><div>&nbsp;両手で持たなければ間に合わないほどの大きな紙袋にたんまりお菓子とポーションを(お菓子とポーションの比率は10対1)詰め込んで、エリーゼは出てきた。</div><div>「リヒト、重いわ」</div><div>&nbsp;…持て、と。</div><div>「はいはい…」</div><div>&nbsp;俺は素直にそれを受け取ると、他に必要なものは？と聞いた。</div><div>「武器屋に行くには早いから、少し早めの夕食にしましょう」</div><div>&nbsp;アンリミテッドワークス本部にキッチンはない。というか、この街の人々はほとんど家にキッチンを持っておらず、みんな屋台や飲食店で食事を済ませる。最初この街に来た時に受けたカルチャーショックで1番大きかったのがこれだった。</div><div>&nbsp;なので必然的に、食事は個人で取れ、というのがうちのルールだった。</div><div>&nbsp;が、しかし、</div><div>「おいあれ、雷神じゃないか？」</div><div>「綺麗…」</div><div>&nbsp;四方から第三者の声がちらほら聞こえる。昼間の一件以来、俺たちの名は街中に広がっているようだ。</div><div>「おいエリーゼ、これじゃまともに飯食えんかもしれんぞ」</div><div>&nbsp;それは彼女のそばでヒソヒソと話した。大衆に見られている感覚で食う飯はきっと不味かろう。少なくとも、良い気分では食べれないはずだ。</div><div>「じゃあ、どうする？」</div><div>「……俺の行きつけの店に行こう。南のはずれにあるから少し遠いけど、人も少ない」</div><div>&nbsp;俺の提案に、エリーゼは少しばかり迷いを見せたものの、</div><div>「わかったわ」</div><div>&nbsp;と、素直に首を縦に振った。</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12030991564.html</link>
<pubDate>Mon, 25 May 2015 14:17:02 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>2話目 part1</title>
<description>
<![CDATA[ &nbsp;迷宮都市イザヴェル。<div>&nbsp;街の中央にダンジョンへの入り口とギルド本部があり、冒険者にとっては憧れの街として知られている。そして、砂漠の真ん中に位置するこの都市は、日々水が不足しがちだった。</div><div>&nbsp;そこに着目したのが、現在街の東側一帯に固まって存在している商業系ギルドである。&nbsp;</div><div>&nbsp;彼らは当初、他都市との貿易の役割を担っていた分、迷宮とは疎遠な組織だった。そのため、攻略系ギルドたちから粗末に扱われたり、下級的身分と言わざるを得ない対応を受けてきた。</div><div>&nbsp;しかし、ダンジョンに着目し始めた者が現れてからというもの、いい意味で状況が一変した。</div><div>&nbsp;ダンジョンの気温は1年を通して18℃前後と、大変涼しい。砂漠育ちには寒いと言っていいくらいである。そのダンジョンの中には、水が干上がることなく常に流れ、溜まる場所がある。地下水だ。これを地上まで運んで売ろうと考えた商人は、ダンジョンに潜るために晴れてギルドの仲間入り。商業系ギルドという新しいカテゴリーを築いた。</div><div>&nbsp;街の水不足、ギルド登録による地位向上。</div><div>&nbsp;それは、消費する側にも提供する側にも利益のあることだった。現代において商業系ギルドは街のために無くてはならない存在へと成り上がったのだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>&nbsp;俺がこのギルドに入った理由はおいおい話すとして…</div><div>&nbsp;迷宮地下5F</div><div>「リーダーも人使いが荒にゃ～、昼食べたらすぐダンジョンに潜れだなんて…」</div><div>&nbsp;午前中、闘技場で北のスレイブハーツを見事に破った商業系ギルド所属の3人は、休む間も無くダンジョンへと足を踏み入れていた。</div><div>「仕方ない、もうすぐ春の新嘗祭だから」</div><div>&nbsp;アリシアの愚痴をエリーゼが正確に受け流す。</div><div>「まあ、この時期はどこも酒のために水を買ってくれるから、僕らとしてもウハウハなんだけどにゃ～」</div><div>&nbsp;俺の財布の中身が空になるまで街の屋台で食べ歩いた2人はかなりご機嫌が宜しいようだった。エリーゼに至っては、1人でリスのように頬を膨らませてまでもしゃもしゃとあれもこれもと食い倒れの勢いで周辺の屋台を制覇した。また彼女の名は、普段ギルドとは縁のない屋台のおじさんたちにも広く知られていて、ちゃっかりおまけまでしてもらっていた。聞けば常連客らしい。</div><div>「お金～何に使おうかな～♪」</div><div>&nbsp;と、早くも今月のギルドから支給されるマネーのことをあれこれ考えるアリシア。</div><div>&nbsp;俺はいつも通り大きな荷車を引かされながら2人の背中を追う。金髪と銀髪の美少女(劇強)。お前らが並んでるとモ○ハン思い出すからやめてほしいわほんと…。</div><div>「アリシア、お金は大切に」</div><div>「わかってるよエリたん！貯めて貯めてドーンと使うのもいいよね」</div><div>&nbsp;ことダンジョンの中なのに、モンスターはあまりドロップしない。それもそのはず、彼らにも心がある。考える力がある。それが戦闘において厄介な点であり、かつありがたい点でもあるのだ。</div><div>&nbsp;モンスターたちは格上の生き物に無理に闘いを挑まない。</div><div>&nbsp;彼らとて生き物。死にたくない。</div><div>&nbsp;だから、強すぎる相手からは遠ざかる。</div><div>&nbsp;ここ地下5階付近のモンスターはエリーゼやアリシアを怖れて自ら離れていく。だいたい12階くらいまで行かないとまともに向かってくるモンスターはいない。</div><div>&nbsp;商業系ギルドは時に実力があり、ギルドが公表しているランキングでも高位の者を日雇いすることがある。要するに道中の安全をのためのお守りだ。業界では「魔除け」という意味から「鈴」とも呼ばれる。たしかに、俺のいた世界でも熊よけとかに鈴とか使ってたけど、何の遠慮もなしに人を厄除けに使うのはどうかとも思う。それをまんざらでも無く請け負う奴もそうだ。</div><div>&nbsp;だから…</div><div>「…ヒト…リヒト！」</div><div>「あ、あぁ悪い」</div><div>&nbsp;アリシアの声で我に帰った俺は、2人がこちらを振り返っていることに驚いた。完全に自分の世界に入り込んで2人の会話を聞き漏らしていた。</div><div>「聞いてた？」</div><div>「すまん、途中から聞いてなかった」</div><div>「だから、リヒトは給料を何に使ってるのかって」</div><div>「そりゃあ…生活費と、剣や防具の手入れ、あとは…ちょっと遊んだり？」</div><div>&nbsp;注、ここでの遊ぶはけっしてやましい意味合いではない。</div><div>「キャバクラ！？」</div><div>「だからちげえって。人の注意書きちゃんと見ろや」</div><div>「え？どこ？」</div><div>「あぁもういいよ…」&nbsp;</div><div>&nbsp;魔法師と杖と違い、剣は使う度に刃が脆くなる。言い換えれば、「消耗する」。</div><div>&nbsp;だから、2週に1回、少なくとも月に1回は鍛治場に行って剣を研いで貰う必要があるのだ。それに加え、俺は二本の剣を携えている。単純な話、かかる費用は2倍というわけだ。</div><div>「なあ、お前らは給料の使い道、どうなってんだ？」</div><div>&nbsp;ふと浮かんだ疑問をぶつけてみる。</div><div>「私は主に買い物かな。趣味の調合のために」</div><div>&nbsp;と、アリシア。彼女は魔法師としての才能も去る事ながら、新薬の開発でもその名を轟かせている。飲んだら一定時間体が軽くなるとか、ちょっと怪しいけど定評のある薬を世に送り出している。</div><div>&nbsp;で、俺は相づちを打った後、エリーゼを見た。</div><div>「……私は、食べ物」</div><div>&nbsp;なるほど、まず食費ね。</div><div>「あとは……食べる」</div><div>&nbsp;……ん？</div><div>「ほかには？」</div><div>「……食べる」</div><div>&nbsp;全部食費に飛ぶのかよ！どんだけ食ってんだ。</div><div>「……食べる」</div><div>「わかりましたもういいですよエリーゼさん」</div><div>「リヒト、何だか馬鹿にしてない？」</div><div>「いや全然。むしろリスペクトですわ」</div><div>「……？」</div><div><br></div><div>&nbsp;俺たちがダンジョンに来る目的は、主に水の運搬である。だが、俺たちのやり方は他とは少し違う。</div><div>&nbsp;本来なら、バケツ運びの容共で水を汲んだら一定距離ごとにバケツを受け渡して入り口まで持っていく。</div><div>&nbsp;が、こと我らアンリミテッドワークスにそんな面倒なことをしたがる者はいない。</div><div>「アイシード！」</div><div>&nbsp;ため池が凍った。俺たちのギルドが所有することを認められた地下5階のため池が。</div><div>「セァァッ！」</div><div>&nbsp;凍ったため池を俺が二本の剣で捌く。アリシアが魔法で凍らせた氷は鉄よりも硬く、溶けない。その鉄壁の氷を無駄のないように切り取り、荷車にすっぽり乗る大きさまで切り落とす。それをアリシアが魔法で荷車に乗せる。荷車を引くのはエリーゼの役目だ。アリシアは氷が解けないように魔法をかけ続け、俺はモンスターが現れても大丈夫なように前方の確認する。1トン以上の氷とアリシアを乗せた荷車は何の抵抗もないかの如くすいすい前へ進む。エリーゼがベクトル変換の魔法を使っているのだ。アリシアには劣るものの、簡単な魔法ならエリーゼにも使える。槍に雷を纏わせたあの技も魔法と槍術の合わせ技と言える。</div><div>&nbsp;魔法が使えないのは俺だけだ。その代わり俺には剣がある。おかげで氷を削る作業を通して、どの角度、どのくらいの力で刃を入れれば硬いものが切れるか、砕けるかを熟知できた。試合で見せたアレはその応用に近いものがある。</div><div>&nbsp;だから、魔法が使えないことに決して劣等感を覚えていないわけではないが、少なくとも今の自分が他の魔法師に劣っているとも感じていない。</div><div>&nbsp;俺はこの街で3位だ。</div><div>&nbsp;</div><div>「帰ったらリーダーが例の仕事を発表するってさ」</div><div>「どうせもっと下の階にある水たまりに水を汲みに行けって言うんだろうな」</div><div>「……お腹減った」</div><div>&nbsp;</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12030383493.html</link>
<pubDate>Fri, 22 May 2015 14:36:40 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>1話 part3</title>
<description>
<![CDATA[ &nbsp;戦闘開始から5分。<div>&nbsp;直径500メートルのフィールドの右翼で3つの金属が激しくぶつかり合う。</div><div>&nbsp;1人は猛々しく、強く、大きな得物を振りかざしては叩きつけ、1人はそれを2つの剣で受け止め、受け流す。互いに力と力のぶつかり合いに見えるが、実は細かなところで技に機転を利かせ、いつ勝負に出ようかと機会を伺っている。</div><div>「フンッ！」</div><div>「せぃっ！」</div><div>&nbsp;互いの力が交錯する。瞬間、爆風のような強い風が巻き起こり、フィールドの土煙を発生させる。観客席の誰もが息を呑んでその攻防を見守った。</div><div>&nbsp;が、彼らの目と耳は2人だけを捉えてはいられなかった。</div><div>&nbsp;フィールドの中央で魔法を打ち合っているのはアリシアと相手チームのリーダー。</div><div>&nbsp;魔法を魔法で相殺する、まさに魔法師同士の闘いとなっていた。</div><div>&nbsp;アリシアが得意とする炎系の魔法。それを消し去る程の土系防御魔法を発動する敵。先刻の2人は大剣の男が攻めていたのに対し、こちらはアリシアが攻めて敵が守るという戦闘の流れだ。</div><div>&nbsp;アリシアが頭上で火球を発生させ、思い切り相手へ飛ばす。それを土の壁で受け止め、また壁に火球が触れる瞬間に減速魔法で炎を弱める。</div><div>&nbsp;素人にはただ一方的に少女が男をいたぶっているようにしか映らないだろうが、少女からすれば、試合の主導権はあちらにあるも同然だった。</div><div>&nbsp;さらに視線を左に移して左翼。</div><div>&nbsp;雷神エリーゼが変幻自在に一本の槍を休む暇なく動かす。それを2本の短刀で受け流す小柄な男。稲妻の如く早く鋭い槍さばきが彼を捉えようとするが、避雷針に守られるが如く彼に刃は届かない。</div><div>&nbsp;両者は互角。両チームは互角。</div><div>&nbsp;北の、迷宮攻略を主に行っている実力派ギルド「スレイブハーツ」相手に、東の商業系ギルドが互角にやりあっている。雷神はともかく、商業系ギルドに魔法をバンバン打ちまくれる程の魔法力を持つ少女と、華麗な剣さばきと力を兼ね揃える少年が居たことは、観客はもちろん、スレイブハーツのメンバーでさえ驚愕の一言だった。</div><div>&nbsp;当初彼らは、先にエリーゼ以外の2人を排除した後、3人で囲むように包囲して雷神を仕留める予定だった。</div><div>&nbsp;しかしどうしたことか、いや、決して彼らの実力が劣っているわけではない。手を抜いてもいない。</div><div>&nbsp;だが……</div><div>「しぶてえ野郎だ！」</div><div>&nbsp;苛立ちを覚え始めた大剣の男が叫ぶ。そろそろ男の体重が乗った攻撃に少年が膝をついてもいい頃だ。もう5分以上も攻撃を受け続けている。</div><div>「さっさとくたばれい！」</div><div>&nbsp;勝負は一瞬にして付いた。</div><div>「お望みとあらば…」</div><div>&nbsp;旋風一閃。目にも止まらぬ速さで、男の前を一陣の風が吹き抜けた。斬られた感覚はない。元より、相手への直接攻撃はルール違反に繋がるのだ。</div><div>「ぬぅっ⁉︎」</div><div>&nbsp;その異変は手元に起こった。</div><div>&nbsp;軽い…？</div><div>&nbsp;男の持つ大剣のずっしりとした重みが、消えた。</div><div>&nbsp;直後、ズシンッと腹の奥に響くようなド低音が、右から聞こえてくる爆音を消した。</div><div>&nbsp;剣が、落ちた。いや、落とされた。</div><div style="text-align: center;">『 真っ二つに剣が割れた‼︎』</div><div style="text-align: left;">&nbsp;嘘だ嘘だと男は右手にあるはずの刃を見る。しかし、そこには自慢の剣が柄の部分から上に伸び、半分のところで粉砕されている。</div><div style="text-align: left;">「な、何が起こった…？」</div><div style="text-align: left;">「名乗ってなかったな」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;ぞくり、と男の背筋が凍る。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;いつの間にか背後に立つ少年に、その声に、男は体を硬直させた。</div><div style="text-align: left;">「もう少し公表は先にしようって話だったんだけど、俺を闘わせたってことは、リーダーも止むを得んと見たのだろうな…」</div><div style="text-align: left;">「くそっ！」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;男は振り向きざまに半分になった剣で少年をなぎ払う。が、</div><div style="text-align: left;">「遅え」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;またも一閃。今度こそ剣は粉々となり、その手から落ちていった。</div><div style="text-align: left;">「リヒト・シュランクス。総合ランキング3位だ」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;男の目が大きく開いた。</div><div style="text-align: left;">「お前が…風神…」</div><div style="text-align: left;">「名前が出回ってねえからってエリーゼエリーゼって…うぜえんだよ」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;</div><div style="text-align: left;">『ジークバルト戦闘不能！』</div><div style="text-align: left;">&nbsp;アナウンスが俺の戦闘が終了したことを告げる。その時初めて俺はその男の名を聞いた。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;風神。雷神エリーゼと並ぶ存在と噂されていたダンジョン攻略者の二つ名である。が、その正体は謎に包まれていた。基本、ギルド本部によってランキングは公表されているが、本人の意思があれば名を隠すことも可能である。このダンジョン都市3位の席は、その名が公表されていなかったため、「幻影の3人目<font size="2">ファントムスリーマン</font>」とも言われていた。それが風神、リヒト・シュランクス。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;</div><div style="text-align: left;">&nbsp;一人の男が倒れ、当初の予定がめちゃくちゃになった敵チームは慌てふためく。同時に、折り合いを見たと判断した女性陣2人が打って出る。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;エリーゼ。その槍さばきもさることながら、彼女には魔法という才能まで備わっていた。雷神という呼び名は、ひとえに槍の突きが稲妻のようであるというだけではない。</div><div style="text-align: left;">「雷系魔法…『ヴァリアーチ』‼︎」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;エリーゼの優艶な声が空へ消えた。直後、彼女の槍が輝く。青白い光。電気が帯電していた。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;エリーゼの持ち味は、正確な槍さばきと、雷系魔法を槍に乗せた超強力な突き。これを防げるものなどいない</div><div style="text-align: left;">「セァァッ‼︎」</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: left;">&nbsp;2人目の男が倒れ、残るはリーダーただ1人。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;が、拍子抜けなことに、2人目が倒れると同時に男は降参した。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;そして、勝敗が決する。</div><div style="text-align: left;">『勝者、アンリミテッドワークス！』</div><div style="text-align: left;">&nbsp;司会が高々と宣言する。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;北の2位vs東の8位。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;総合ギルドランキングで言うと5位対29位の勝負は、あろうことか29位の名の知れぬ水売りギルドの勝利に終わった。</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: left;">&nbsp;この事は、後にリヒトを始めとするアンリミテッドワークスに大きく影響してくるとこは間違いなかった。</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: left;">「んで、勝ち取ったはいいが、仕事ってのは何だろうな」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;と、俺。</div><div style="text-align: left;">「んー、どうせまた氷運びじゃない？」</div><div style="text-align: left;">「お腹減った。リヒト、奢って」</div><div style="text-align: left;">「はぁ！？」</div><div style="text-align: left;">「あ、私も！3人で祝勝会やろうよ」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;</div><div style="text-align: left;">&nbsp;勘弁してくれ。</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12029391829.html</link>
<pubDate>Thu, 21 May 2015 06:59:36 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>1話 part2</title>
<description>
<![CDATA[ 「遅いぞ！」<div>&nbsp;苛立ちを隠すことが苦手なエルフが腕組みをして俺とアリシアを待ち構えていた。</div><div>&nbsp;迷宮都市イザヴェル。街の中央に迷宮への入り口があるこの都市は、文字通り迷宮のある都市として栄えていた。迷宮入り口にはギルド本部があり、現在およそ57のギルドがこの街に滞在している。ギルド本部を基点として、東西南北に四分割される都市だが、それぞれに派閥があり、ギルドも東西南北で分かれている。ギルドにも順位があり、それぞれの地区内でトップのギルドがその一帯を治め、統治していた。北のトップ、「スレイブスピリッツ」。南の「カイザーナイト」。東の「新光通商組」。西の「リンドヴルム」。</div><div>&nbsp;北は主にダンジョン攻略を得意とし、東は商業、南と西は都市運営に大きく貢献している。それぞれが睨みを効かせ合いつつ歩み寄るというバランスの取れた状態が出来上がったのはつい5年前のことらしく、それまでは競争が激しかったようだ。</div><div>&nbsp;ちなみに、我ら「アンリミテッドワークス(ARW)」、通商「水屋」は東地区に陣を構える商売ギルドである。通り名のとおり、水を売った儲けでギルドを運営している。</div><div>&nbsp;閑話休題。</div><div>「ごめんごめん、リヒトがなかなか見つからなくて～」</div><div>「俺はいつもの場所にいたんだがな」</div><div>&nbsp;ひとまずこの冷徹な視線を掻い潜るために俺とアリシアは形だけの謝罪をした。</div><div>&nbsp;うちのギルドは3階建ての一軒家を丸ごと改築した建物に存在しているため、見た目は大きな扉のちょっと豪華そうな屋敷っぽい。一階はロビーとして全て開け払っていて、二階からは居住空間になっている。</div><div>&nbsp;その、ちょっと広いロビーの奥側。大きなテーブルを8つのイスが囲む団欒の場所に、一際人の目を引く少女がいた。</div><div>&nbsp;おそらく、うちのリーダーがイラついているのは俺たちのせいだけではない。</div><div>「エリーゼ、2人が来たぞ」</div><div>&nbsp;エリーゼと呼ばれた少女はイスから立ち上がる。腰のあたりまでまっすぐに伸びたクリーム色の髪を揺らしこちらを振り返る。藍色の瞳。整った顔立ち。雪のように透き通る白い肌。青と銀の凄く軽めの防具。前髪を左上で留めた彼女が俺とアリシアを見た。</div><div>「……リヒト、おかえり」</div><div>「お、おう」</div><div>「エリたんただいま～！」</div><div>「アリシアもおかえり」</div><div>&nbsp;何とも眠くなるようなおっとりした声だった。口調からも滲み出るこのマイペースな性格が時にリーダーを怒らせる原因にもなりうる。</div><div>「お前たち、仕事だ」</div><div>&nbsp;こほんと一つ咳払いをしたエルフが切り出した。</div><div>「先ほどギルド本部から依頼が届いた。そいつをこなしてもらいたい。」</div><div>「本部から？珍しいな」</div><div>「お宝の匂い！」</div><div>&nbsp;話を聞け、と一括された俺とアリシアは、話にまだ先があることを察する。</div><div>「お前らバカがいない間に、北の『スレイブハーツ』がやってきてな。その仕事をよこせと言い出した。」</div><div>&nbsp; スレイブハーツ。北地区所属のギルドを統率するスレイブスピリッツの弟グループ。ギルドマスターが兄弟関係にあるらしく、北地区の地位的には2位に相当する。</div><div>「それでだ、これから奴らと3対3のデュエルをしてもらう。出るのはお前ら3人だ。場所は本部隣の闘技場。わかったら武器を持ってさっさと行ってこい」</div><div>&nbsp;…………は？</div><div>「ちょ、タンマタンマ！何その急な話！」</div><div>「お前が居なかったのが悪い」</div><div>「だとしても、」</div><div>&nbsp;北の攻略ギルド2位と当たるのはさすがにまずいって！</div><div>&nbsp;と言おうとしたが、</div><div>「いってきます」</div><div>&nbsp;先手を打たれた。エリーゼが出て行ったのだ。</div><div>「おい待てエリーゼ！」</div><div>「そうだよ置いて行かないでよ！」&nbsp;</div><div>&nbsp;ってお前はついて行くんかいアリシア。</div><div>「多少本気出していいから勝ってこいよ～」</div><div>&nbsp;まだ依頼内容も聞いてないのにそれを勝ち取ってこいとかめちゃくちゃすぎる！</div><div>&nbsp;俺は髪をワシャワシャとかき回した後、ひとつため息をついてから諦めを覚えた。</div><div>「はぁ…行ってきやす」</div><div>&nbsp;しぶしぶ武器庫に向かう。女性陣2人はすでに準備を終えて俺を待ち構えていた。</div><div>「リヒト遅い！」</div><div>&nbsp;なんて言われながらちゃっちゃと愛剣を両腰に差して装備を整えた。</div><div>&nbsp;アリシアは魔法を発動させやすくする干渉媒体の杖を、エリーゼは彼女の代名詞とも呼べる槍を装備している。デュエルなんて久々だから2人とも乗り気、というよりこれはもう、ピクニックに行く前の子供のようだ。</div><div>（これからトップギルドの連中とやり合うんだぞ…？）</div><div>&nbsp;心の中でつぶやいた。</div><div>「さぁいこーう！」</div><div>&nbsp;右手を高々と突き上げたアリシア。おぉ～！とそれに便乗するエリーゼ。何ともまあ、締まらない感じで俺たちはホームをとんぼ返りするように出かけた。</div><div><br></div><div><br></div><div>『これより、スレイブハーツ対アンリミテッドワークスの試合を行います』</div><div>&nbsp;闘技場には観客こそ少ないものの(というかここはゼロでいいだろ)、きちんとアナウンスが入っていた。なるほど、</div><div>「ギルド公認の公式戦ってわけか」</div><div>&nbsp;俺はまっすぐ相手を見た。フィールドを挟んで反対側。3人のイカツイ男が腕を組んで並んでいる。他のギルドの情報に疎い俺には、3人中真ん中に立っているのがスレイブハーツのギルマスであることしかわからない。が、相手にとって不足なしというところだろうか。3人共かなり濃密なオーラを纏っているように見えた。</div><div style="text-align: left;">『ルールを説明します。3対3の乱闘式でいきます。先に全員を戦闘不能にしたチームの勝利。試合のルールは公式戦と同じものとし、相手に回復不能の傷を負わせることや、必要以上のダメージを与えた場合は即失格とし、チームも負けとします』</div><div style="text-align: left;">&nbsp;興奮気味の司会者はきっと本部の者だろう。まず公平なジャッジは保証されている、か。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;相手がフィールドに出てきた。向かって一番右の大男は背に大きな剣を。左の細身で小柄な青年と言うべき男は両脇に短刀。そして真ん中のリーダー格の男は杖を握っている。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;うちのパーティと構成はほぼ同じ。槍という大型の武器を持つエリーゼ。二本の剣を使う俺。魔法を得意とするアリシア。あえて同じようなメンツで揃えてきたのか？</div><div style="text-align: left;">『それでは、両チーム位置について』</div><div style="text-align: left;">「適当にやるぞ」</div><div style="text-align: left;">「私魔法の打ち合いやりたい！」</div><div style="text-align: left;">「……お腹減った」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;マイペースすぎるだろエリーゼ…。つかさっきも何か食ってたよな？</div><div style="text-align: left;">『始め！！』</div><div style="text-align: left;">&nbsp;カーン！とゴングが鳴り響く。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;瞬間ー来た！</div><div style="text-align: left;">&nbsp;大剣を持った男が俺めがけて突進を仕掛けてきた。</div><div style="text-align: left;">（速攻か…！）</div><div style="text-align: left;">&nbsp;剣を抜き、頭の上で交錯させて受け身の体勢を取る。次の瞬間、重い重い一撃が俺の体を沈ませる。</div><div style="text-align: left;">「ハッハァ！！」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;男の全体重をかけた渾身の一振りを受け止めた身体中の骨が軋む。</div><div style="text-align: left;">「うぐぅ…！」</div><div style="text-align: left;">「お前らのチームでまともなのは雷神エリーゼだけだからな」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;男は言った。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;雷神エリーゼ。エリーゼ・ノエルの通り名だ。ギルドランキングと同時に公表されている個人ランキングで5位にランクインする彼女に付けられた二つ名。雷の如く鋭い突きを繰り出すところから付けられたのが「雷神」の異名だった。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;そういえばエリーゼってこの街で5番目に強いんじゃんか。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;今更ながら隣にいた存在の大きさに驚く。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;だが……</div><div style="text-align: left;">「雷神がどうしたこらぁ！」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;男の剣を横になぎ払い、左足の蹴りを一発。不意を突かれた男は2.3歩後退する。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;ちらりと横を見ると、向こうでドッカンドッカン鳴り響いてた爆音の正体を確認した。アリシアの得意とする炎系の魔法「フレイマ」。空気中にある一定領域内の分子運動を活発化させて発火させる魔法だ。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;そのさらに向こうでは、エリーゼが短刀使いの男と激しい攻防を繰り広げていた。こちらが力と力のぶつかり合いに対して、あちらは小刻みなステップや技の応用のぶつけ合い。テクニック勝負といったところか。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;</div><div style="text-align: left;">&nbsp;何にせよ、まだ試合は始まったばかり。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;気に食わん。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;誰もがエリーゼを雷神と讃える。恐れる。</div><div style="text-align: left;">&nbsp;だが、このギルドにランキングトップ10に入るメンバーは、エリーゼだけではないのだ。</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: left;">&nbsp;エリーゼ・ノエル/ランキング5位</div><div style="text-align: left;">&nbsp;アリシア・ノア/ランキング8位</div><div style="text-align: left;">&nbsp;リヒト・シュランクス/ランキング3位</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: left;">「さぁこい…風神の二つ名を見せてやんよ三下！」</div><div style="text-align: left;">&nbsp;</div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12029053030.html</link>
<pubDate>Wed, 20 May 2015 21:20:45 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>1話 part1</title>
<description>
<![CDATA[ &nbsp;反転世界というはちゃめちゃな異世界にきてしまった俺は、世界に7つ存在するダンジョンの最下層に元の世界への扉があると信じ、毎日ダンジョンに挑戦……していなかった。<div><br></div><div>&nbsp;春。まだ薄手のシャツでいるには少し早い季節。今年も小さな緑が生命の息吹を吹き返し大空に背を伸ばし始めた。</div><div>&nbsp;最近ではすっかり日差しも暖かくなって、それを受け取ろうとする葉たちが作る影にいるのがとても心地よくなった。俺的にはこういう春一番の日に昼寝をしていたいというのが本音だった。が、</div><div>「こらリヒト！まぁたこんなところで寝そべって…少しはみんなを見習って仕事したら？」</div><div>&nbsp;おいおいここ高さ10メートル以上の木の上なんですけど…。とかツッコミ入れるのは愚行である。俺に声をかけた(というより俺の昼寝を邪魔した)少女は宙に浮いている。正確には、自身を重力に反する逆加速度を加えられた物質と定義して加速魔法を発動させているのだ。常に魔法を発動していないとこの技は成せないとされているが、さすがは一級ダンジョン攻略者。その美貌もさることながら、実力も十分に兼ね揃えていた。</div><div>「なんだよアリシア。遠征の計画でも出たか？」</div><div>「出てない。そもそもうちのギルドの本業はモンスターをバリバリ狩ることじゃないでしょ？」</div><div>&nbsp;言うと、アリシアは俺が座る枝の隣に腰を下ろした。銀色の髪に紅の瞳。髪に落ちた葉を払う姿はまさに異世界にしか存在しない宝石、とでも言うべきか。魔法を最適に使用できるコスチュームがまた彼女のボディラインを浮き彫りにして目のやり場にも困る俺は幸せ者だろうか。</div><div>「わ、わあってるよ。」</div><div>&nbsp;とりあえずそう答えはしたものの、</div><div>「わかってるなら仕事しなさい」</div><div>&nbsp;一刀両断された。いつものことである。</div><div>&nbsp;アリシアは紫色に白のラインが入った少しヒラヒラ感の強い服を着ている。年齢が俺と1つしか違わないのだが、その少し幼さを残した童顔には似合うというか、それ以上に服が張り付いてエロい。ここ大切だから2回目。</div><div>「突如現れた天才剣士」</div><div>&nbsp;と、彼女は意味有りげに呟いた。同時に右手人差し指を鍵の形に曲げて頭上へ差し出す。数秒も経たないうちに小鳥が一羽その上へ乗り、彼女へ鳴いて見せた。</div><div>「こんなところで寝てていいの？」</div><div>&nbsp;これもいつも言われることの一つだった。よく母親が子供に言う「こうなりたいならああしなさい」みたいなものだった。そう、早くダンジョンの最下層に辿り着きたい。それでもし何も無かったらそれはそれでいい。ただ、</div><div>「どうして俺はここで寝てるんだろうな」</div><div>&nbsp;その理由が知りたかった。</div><div>「仕事サボってるから」</div><div>&nbsp;アリシアは俺の言葉の意味がわかっているにも関わらず嫌味なことを口にする。「ねぇ～」と小鳥を撫でる。蓋を開ければその小鳥は彼女の使い魔なわけだが、それにしてもよく懐いている。</div><div>「リーダーは何て？」</div><div>「さっさと連れて来いって。カンカンに怒ってたよ？」</div><div>「うちのママがそんなことで怒るかねぇ…」</div><div>「私が怒らせた♪」</div><div>&nbsp;てへっと舌を出すアリシア。とばっちり確定。こいつまた何やらかした…！</div><div>&nbsp;ママとはギルドマスターのあだ名である。女性のギルマスはよくママとかアネゴとか言う呼び方をされる。いつも口酸っぱく俺たちを叱る彼女はアネゴというよりはママ、というよりむしろ母ちゃんといった印象なのだ。</div><div>「そんじゃあ2人で怒られに行きますか。どうせ他に面倒事とか用意してるんだろうからさ」</div><div>「ダンジョン関係だといいね」</div><div>&nbsp;俺は木の上から飛び降り、アリシアはゆっくり重力に逆らいながら降り立った。</div><div><br></div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12028156001.html</link>
<pubDate>Mon, 18 May 2015 18:46:15 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>プロローグ</title>
<description>
<![CDATA[ &nbsp;ここは、僕たちの住んでいる世界とは正反対の世界。<div style="text-align: center;">&nbsp;通称、<font color="#00ffff" size="5"><b>リバーシブル・ワールド</b></font></div><div>&nbsp;世界のおよそ7割を大陸が覆い、これにより、世界規模の水不足がマンネリ化している。東には広大な太平陸。それを挟む形で、ユーラシア海とアメリカ大海が陣取り、南半球には世界一大きな湖として知られるオーストラリア湖。どれを取っても、俺の元いた世界の地理的地形を逆転させたものばかりだった。本当に、地面の裏側に張り付いて立っているような、自分だけ逆立ちしたような、ある意味でのダルさというか、ついていけなさを隠しきれなかった。</div><div>&nbsp;はてさて、どうして俺がこんな世界に来てしまったか。それは僕にもわからない。</div><div>&nbsp;気付いたらそこにいた。</div><div>&nbsp;としか言いようがないのだ。</div><div>&nbsp;そして今は、元の世界に戻るために、日夜努力を重ねている。と言っても、現時点において俺は、ここ異世界においてもニートを続けているのだった。</div><div><br></div><div>&nbsp;世界に7つ存在する迷宮<font size="2">ダンジョン</font>。地下へと続く階段を降りれば、そこは怪物たちが犇めく死の領地。</div><div>&nbsp;しかしその最下層には、新たな世界への扉が存在すると、言い伝えでは語られている。</div><div>&nbsp;新たな世界…。</div><div>&nbsp;それはきっと、俺の元いた世界のことに違いない。</div><div>&nbsp;気付いたらダンジョンの入り口に倒れていた俺ことリヒト・シュランクスは、本名仁神利人という元の世界のあぶれ者。</div><div>&nbsp;そんな、俺が誰もクリアしたことのないダンジョンへの挑戦話は、とりあえず一眠りしてから始めようと思う。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;ようこそ、全てが反転した世界、通称「リバーシブル・ワールド」へ</div><div><br></div>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/seishirou53/entry-12027865429.html</link>
<pubDate>Sun, 17 May 2015 22:50:36 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
