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<title>小説書いたりいろいろしたり</title>
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<description>主にオリジナル小説メイン　たまにSS</description>
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<title>Sign of Daybreak&lt;6&gt;</title>
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<![CDATA[ <font size="4">　夜。皮肉なほど綺麗な月が荒野になった街を照らすなか、三人で焚き火を囲む。<br>「他の奴は？」<br>「えっと、山田さんとその奥さんは……」<br>　葉月から彼女が所属していたグループのメンバーの特徴を聞き出し、メモを取る。<br>「これで全部か？」<br>「うん。それで全員」<br>「よし。わかった」<br>　救助隊を出す際に探しだす手がかりだと言って道中ずっと聞き続けていた。<br>「お願いだよ、ユーリ」<br>「任せとけ」<br>　真剣な目で頼む葉月に安心させるように不敵に微笑んで答える。<br>「ユーリ。もう寝かせてあげれば？」<br>　荷物の中から寝袋を引っ張りだしながらアマネが言う。<br>「ああ、悪いな。随分聴きこんじまった。つーかお前、人の荷物勝手にいじるなよ」<br>「だってもうそろそろ深夜って時間だよ。葉月も疲れてるみたいだし」<br>「私なら大丈夫だよ」<br>「強がりはいいから寝て。寝不足で調子悪いままだと足引っ張ることになる。そしたら葉月の仲間に助けを出すのもその分遅くなる」<br>　的確に反論できないよう説得して寝袋を押し付ける。<br>「ご、ごめんなさい」<br>「怒ってるわけじゃない。気にしないで」<br>　しゅんとする葉月にそう言うが、アマネの無表情はこの状況ではデメリットにしかならない。<br>「ならもうちょっと笑ってやれよ。ほれ」<br>「むぃー」<br>　ユーリに頬を摘まれ無理やり口角を上げられる。<br>「あはは。変な顔」<br>「まぁこいつの言うとおりだ。とっとと寝ちまえ」<br>「うん。おやすみなさい」<br>　そう言ってしばらくごそごそと寝袋をいじるが、<br>「これどう使うの？」<br>　使い方は知らなかったらしい。恥ずかしそうにしながら尋ねる葉月にユーリが笑いながら使い方を教え、ようやく中に入ったと思うと、やはりかなり疲れていたのかすぐにすやすやと寝息を立て始めた。<br>「随分早いな」<br>「あんな状況にいたんだしまともに寝てなかったはずだよ。もうちょっと気を使ってあげないと」<br>「お前の場合、気を使ってんのかどうかわかりにくいけどな」<br>「表情筋ないから仕方ない」<br>「ないのか」<br>「ないよ。頭付近は色々と必要な機器が多いから」<br>「その割にほっぺは柔らかかったな」<br>「そこら辺はこだわりだったんじゃないの」<br>「ほんとよくわからん趣味してるな。お前を作ったやつとやら」<br>「そもそも女の子の遺体を改造しちゃうところで気づくべき」<br>「そう言えばそうだったな……」<br>　アマネがあまりに当然のようにしているので意識していなかったがその素体の経緯からしてかなり頭のネジは飛んでいる。<br>「お前はなんとも思わないのか？ そういうの」<br>「って言われても。私に設定されてる目的って言えば魔族の殲滅と保護対象の確保くらいだから。何も思うところはないしそもそも思うところがあるようになんて設定されてない」<br>「ああ、そうだ。その保護対象ってなんだよ。最初に言ってたけど」<br>　聞いていると段々と虫の居所が悪くなりそうなので話を変えることにする。<br>「主に有力な日本政府の官僚。でもこの有り様だとほとんど死んでるって自己判断してるから優先順位は下方修正されてる。魔族の殲滅に関してはユーリと一緒にいたほうが効率が良さそうだから現状ユーリの優先順位が最上位」<br>「そりゃどうも」<br>　どっちにしろ聞いていて面白い話でもなかった。普段の彼女との会話に心地よさを覚えているだけに余計にこういう会話はしたくない。<br>「もういいや。お前も寝とけ。見張りは俺がやるから」<br>「…………。うん。わかった」<br>　一瞬だけ逡巡するように沈黙したあと、特に何を言うでもなく寝袋に潜り込む。<br>「はぁ。ったく……。どこにでも政治屋って絡んでくるよな……」<br>　イラつきながらぼやく。タバコでもあればふかしていたかもしれない。<br>　それから日課の銃の手入れを始め、しばらく時間を潰し、<br>「……アマネ。寝たか？」<br>　軽く肩を揺すってアマネの様子を確かめる。葉月のほうは心配はいらないだろう。<br>「よし。寝てるな」<br>　反応がないのを確認し、マスクをかぶり、しっかりと装備を整え、その場を離れる。<br><br>　無言で数キロほど歩く。行き先は葉月が襲われたという地点だ。移動を始めるときにまず最初にそれを聞き出し、休憩場所をその近くに選んだ。おかげで大して移動できていない。<br>「くそ。一回外しちまうとうざってぇなこれ」<br>　邪魔そうにマスクの位置を直しながら辺りを調べる。今のところ魔族の気配はない。と、油断していたのか。<br>「っ！」<br>　地面に向けていて視線を慌てて後方上部へ振り上げる。そこには空を舞う大きな竜。<br>「魔王だって？ ふざけんな……！」<br>　魔侯よりもなお強大な存在感とこの距離でも感じられる威厳と余裕。魔王クラスの魔族だ。離れていたからなのか妙に気づくのに遅れた。その場に伏せ、ライフルを取り出す。<br>「ったく……。ほんとにミイラ取りがミイラになりそうだ」<br>　苦笑い。幸い向こうはこちらに気づいていないようだ。それにしてもなぜここまで近づいてようやく気づけたのかと考え始めた矢先。<br>「マスク外せば？ 狙いつけにくいでしょ」<br>「ああ。そうだな。それはそうとなんでお前がここにいる？」<br>「なんでって後着いてきたし」<br>　いつの間にそこにいたのか、隣でしゃがみこむアマネにマスクを取りながら思わずこめかみの血管が膨らむのを感じる。<br>「お前のせいか」<br>「むしろよく私がいてこの距離で気づけたね。さっきもそうだけどユーリの感覚はすごいよ」<br>「のんびり話してる場合じゃなきゃ褒め言葉だと思えたんだけどな」<br>「のんびり話してる場合じゃなきゃみっちりお説教できたんだけどね」<br>　言いながら事も無げに立ち上がる。<br>「おい、あいつぁ魔王だぞ。そうそう簡単に」<br>「モード変更。ツクヨミ。システム起動」<br>　食い気味に答えとして返ってきたのはそんな言葉と静かに彼女の体が組み替わる音。<br>　スサノオモードと呼んでいたものほど見た目に武器はない。ただその身に付けていたドレスよりもなお黒い日本刀のような長い刃を二本、その両手にそれぞれ握り、それと同色の大袖が両肩から両腕を覆う。そして。尾の先から彼女の背中に展開された月のような柔らかく冷たい金色を放つ光の輪。<br>「おい、お前何してんだ」<br>「モード変更完了。システム完全起動までサンマル秒。ユーリ。その間援護お願い」<br>「あ、ああ」<br>　近くにいるからか、霊素が何かもわからない彼にも感じられる威圧的なほどのエネルギー。当然、空を悠々と飛んでいた竜もそれに気づく。方向転換したかと思うと、凄まじい速度で迫ってくる。<br>　その鼻っ面。狙撃手の神経に切り替えたユーリは冷静に銃弾を叩き込む。が、体を横倒しにすることで一切速度を落とさずに躱される。<br>「やっぱりかよ！やりづれぇな全く！」<br>　そんなことはむしろ当たり前だ。だからこそ一発の威力を重視したモードに変えていない。躱すよりも前に躱すであろう先にもう一発撃ちこんでいる。更に先読みして、連続で引き金を絞り続ける。<br>　流石にそのまま突進するのは難しいと判断したのか咆哮と共に大きく弧を描きながら上空へと舞い上がる竜。<br>「ほんとにやれるとは思わなかった。すごいね。もういいよユーリ」<br>　けなされたのか褒めているのか分からないセリフにツッコミを入れようと振り返るとそこにアマネの姿はなかった。そして、上空から響く咆哮。<br>　視線をそちらへ向けるとそこには竜と正面から対峙するアマネがいた。<br>「まじかよ……」<br>　速度で説明できる距離ではない。ワープや瞬間移動と言った次元だ。思わず凝視した一瞬、アマネの背後の黄金色の輪の中が見える。<br>　そこにあるようでないような、夜空のようなどこか色のある暗黒が渦巻いている。<br>　その先は彼に視認できるものでなかった。<br><br>「ツクヨミモード。時空間干渉開始。虚数時間軸侵入」<br>　呟く。その背後の月輪のなかの暗闇が踊る。瞬間。アマネの存在はこの実時間の宇宙から外れる。<br>　禍々しく輝く竜の蒼い眼光の目の前にいた彼女はその後頭部に現れる。消えるのと現れるのは全く同時。<br>　反応する竜。だがその時には両手の黒い刃は振り終わっている。交差するように閃いた軌跡。人間の持つ刃では傷ひとつ付けられぬ鱗も肉も骨も関係なく美しさすら感じる切断面を残して竜の首が落ちる。時間差でその巨体も力を失い重力に捉えられる。<br>　それが地面に落ちるよりも先にアマネはユーリの隣に戻っていた。既に展開していた兵装は全て消えている。<br>「ただいま」<br>「お、おかえり」<br>　すべて合わせて一秒未満。まさに瞬殺。<br>「何？」<br>　自分を見つめるユーリに小首を傾げる。<br>「いや、すごすぎてビビってる」<br>「そう。スサノオで充分だったかも知れない。それと」<br>「あん？ いでででででででっ」<br>　いきなり耳を引っ張られる。<br>「お説教してる時間はなさそうだからこれで勘弁してあげる」<br>「いってぇ……」<br>「葉月に偉そうなこと言っときながら。まったく」<br>　無表情で感情のこもっていない声ながら怒っているのはわかるくらいご立腹らしい。<br>「悪かったよ……」<br>「お人好しだね」<br>「つーかお前、葉月はどうした？」<br>「この辺りで一番大きな魔族の反応はあの竜だったし他は全部小さかったからあのナイフがあれば寄らないよ。保険もかけておいたから」<br>「魔素の方は？ あいつマスクしてないだろ」<br>「それも大丈夫。ちゃんと対策してる」<br>「そっか……」<br>　何をしたのか気にはなるが先の攻防を見てしまうと理解できないような何かをしたのだろうと納得してしまう。<br>「それで。探さないの？」<br>「……何を？」<br>「誤魔化したってダメだよ。どうせ葉月の仲間の人たち探しに来たんでしょ」<br>「まぁバレバレだよなぁ……」<br>「早くしないと朝になるよ。手伝う」<br>　言うが早いか辺りを探しまわりだす。ユーリもまたその作業を再開する。<br>「ここからあの地下街までの距離を半径にしてその円内にあると思うんだけど」<br>「そうだね。だいたい半径六百メートル程度かな」<br>「流石に厳しそうなんだよな。お前センサーで探したりとかできねぇの？」<br>「無理。魔族用のセンサーだし生きてる人間ならともかく死んでるとなると」<br>「だよなぁ」<br>　口を動かしながらも手は止めない。適当な瓦礫をひっくり返してみたりなどしてみる。<br>「聞かないの？」<br>「何が？」<br>「さっきの」<br>「ああ、聞きたいのは山々なんだけどいいのか？」<br>「いいよ。ユーリになら」<br>「なんかまたえらく信用されてるな」<br>「私に作戦を立てたり狙撃をしたりはできないの。だからユーリが必要だと決めたし作戦を立ててもらうには私の性能を知っていて貰わないといけない」<br>　ということらしい。ならばとばかりに話を聞くことにする。<br>「私の戦闘性能は三つのモードがあるの」<br>「スサノオとツクヨミつってたな」<br>「うん。それとアマテラス」<br>「あれ？ お前の機体名アマテラスだったよな。なんでそれがメインじゃないんだ？」<br>「対魔神用決戦兵器。だよ。どんな規模の攻撃すると思う？」<br>「ひどそうだな」<br>「ひどいよ。よっぽどじゃないと使う必要もないし汎用性も低い」<br>「だからその二つを使うわけか」<br>「そう。一番扱いやすいのがスサノオ。完全に接近戦仕様。多少の中距離戦にも対応する」<br>「やたら色んな所からブレード出してたな」<br>「うん。かっこいい」<br>「そうだなかっこよかったな。そんで？」<br>　多数の蒼い刃を多数纏う彼女は格好良いというより美しいと思っていたが口にするのはやめておいた。<br>「特に変わった性能はないよ。本当にただ戦うだけ。本当は電気的性質をもたせた霊素も一緒に使うけどユーリには見せてなかったね」<br>「それが中距離用か？」<br>「そうだよ。それとブレードの威力増強用」<br>「まぁ切り込みが役割の白兵戦仕様って感じでいいか」<br>「うん。それで間違ってない。それからさっきのがツクヨミ」<br>「スサノオより特殊な感じだったな」<br>「そうだね。特殊だよ。それも含めれば白兵戦機能はスサノオを悠に超えるかな。起動に時間がかかるせいで切り替えが効かないし霊素消費も大きいから相手が一定以上に強くないと。要するに吸収できる魔素の量が少ないとほとんど機能しないし、継続戦闘も、性能から見ればあんまり関係ないけど向いてない」<br>「そう聞くと欠点だらけっぽいな」<br>「その代わり虚数時間に干渉して移動できる」<br>「なんだそりゃ」<br>　聞きなれない言葉に思わず動かし続けていた体を止めて聞く体勢になってしまう。<br>「虚数時間。今じゃ研究してる人なんていないだろうけどそういうのがあるの」<br>「どういうのだよ」<br>「説明してもいいけど。アインシュタイン方程式で宇宙の性質について計算していくと過去に遡るにつれて宇宙は始まりとして一点に収縮して物理的に意義を失うことになるの。これを特異点って言ってこれを回避するために時間を純虚数として」<br>「わかったわかった。わからないことがわかった。要約頼む」<br>　慌てて諸手を挙げて降参のポーズ。聞いていると眠くなりそうだ。<br>「もうちょっとで説明しやすくなる部分だったのに」<br>「じゃあそこだけ抜き出せ」<br>「時間を虚数として考えると空間と時間が一緒になる」<br>「おう。よくわからんけどわかった」<br>「それとこの虚数時間に過去と未来とかは存在しない。今が未来だし未来が過去だし過去が今」<br>「そこは訳わからん」<br>「時間の流れっていうものがないの。だから時間を好きなように選択できるの」<br>「へ、へぇ……」<br>「そして時間と空間が一緒になってるから時間を移動すると空間も移動できる」<br>「ほう……？」<br>「端折る。ツクヨミモードの最大の特徴は霊素を強制振動させて時間に干渉するの。その状態の私は虚数時間を移動できる。その中でならゼロ秒で地球の裏側にだって行けるし数百万秒先のこ　こにだって行ける」<br>　説明がめんどくさくなってきたらしい。いきなり結論だけを言ってのける。<br>「要するになんだ？ タイムマシンみたいなもんか？」<br>「うん。それが一番わかりやすいかな」<br>「じゃあさっきやってたのは？」<br>「ゼロ秒でユーリの側からあの竜の前に。ゼロ秒で竜の前から竜の首に。そういう移動。私自身は特に急いでるつもりもないけど実時間にいるユーリからみたら瞬間移動かな」<br>「瞬間移動か」<br>「ちょっと違うけど瞬間移動できるタイムマシン。でいいよ。さっきんはゼロ秒移動だから移動を開始した私と移動を終えた私は同時に存在してることになって瞬間の移動じゃないんだけど。同時移動？ 語呂悪い？」<br>「じゃあすごい瞬間移動なのか」<br>「そう。すごいの」<br>「もうそれでいいや。理解できる気がしねぇ」<br>「理解できるものじゃないと思うよ。実験の事故からたまたま搭載された機能だし」<br>「まじかよ」<br>「もともとこんな機能なかったんだよ。たまたま事故で霊素が時間に干渉してその時の振動を流用したらたまたまできた兵装。最初は実時間切断兵装。あの黒い刃と黒い大袖だけだったんだ」<br>「あれは何かあんのか？ えらい切れ味してたけど」<br>　虚数時間だなんだとわかりにくい話など瞬間移動でさっさと片付けてむしろわかりやすそうなそちらの方に興味が移る。<br>「切ってないよ。正確には。勝手につながらなくなっただけ」<br>「はぁ？」<br>　これもやっぱりわかりにくそうだった。<br>「コンセプト的にはより攻守共に特化したスサノオだよ。物理的に切断するんじゃなくて時間的に切断するの。あれはね。触れたものの時間を一瞬だけ止めるようになった霊素で構成されてるの。だから物理的にはただ対象を通り抜けただけ」<br>「それでどう切るんだよ」<br>「ユーリは一秒前のモノと今現在ここにあるモノ。くっつけられる？」<br>「無理に決まってんだろそんなの」<br>「そういうこと。触れられた箇所は触れられていた時間だけ周りのものと時間がずれる。時間がずれればつながってられない。だから切れる」<br>「あ、あー。まだこっちのほうがわかりやすいか……」<br>　言われればなんとなく納得できるような気がしてくる。<br>「大袖も一緒。これの外側と内側は時間的に断層が挟まってる。だから何も時間的に通れない」<br>「強くね？」<br>「強いね。でも最初は弱かったんだよ。だってもともとスサノオのブレードを全部切り替えて立てを装備した感じだったから兵装に割く霊素が多すぎて他の機能、速度とか私本体の力とかかなり落ちたの。その辺りはたまたま使えるようになった虚数時間移動との兼ね合いでブレード本数減らして速力をカバーしたけど」<br>「なるほどね。で、アマテラスは？」<br>「広域大規模破壊」<br>「あ？」<br>「要するに爆撃機。もうこれ以外に説明のしようがない」<br>「大規模って……魔神用なんだろ？ どれくらいになる？」<br>「うーん。三十分でロシアが大半消し飛ぶくらい」<br>「こわっ」<br>「だから使いにくいんだって。いちいち規模が大きすぎて周り巻き込むし仮に魔神を倒したとしてその後に残るのは結局魔神が蹂躙したのと同じ結果だし。だからこれを作戦に組み込むとかは基本無理」<br>「ふーん。わかった。じゃあ次。ステルス性で言ったらどれがいい？」<br>「どの相手に対して？ 魔族？ 人間？」<br>「どっちも」<br>「人間に関してはどっちも大差ないけど魔族に関してはやっぱりスサノオのほうがステルス性は優ってるかな。でも今ユーリが思い浮かべてる場所にどんな魔族がいるかによって変わってくるから今はそれくらいしか言えない」<br>「まぁそうだよな。さんきゅ。教えてくれて」<br>「役立ててね」<br>「任せとけ」<br>「さっき葉月にそれ言ってこの顛末なんだけどね」<br>「言うな」<br>　ひと通りの解説を受けて作業を再開する。<br>「この辺りには……、ん」<br>「何？」<br>　ここは切り上げるかと言おうとした矢先。小さな白い欠片を足元に見つける。<br>「あーあ、見つかっちまった」<br>「ん。見せて」<br>　ため息ともつかない独り言とともに頭を掻くユーリの手の中の欠片を受け取る。<br>「骨だね。手の指の第一関節の骨」<br>「骨だよ」<br>「ここに？」<br>「ここで」<br>「そっか。でもこれじゃまだわからないね」<br>「これがなきゃな」<br>　更にもう一つ。その横に落ちていた指輪。<br>「ん。イニシャルでも彫ってあった？」<br>「ばっちりな。Ｔ．Ｋ。川中橙子っているんだよ。あいつが言ってた名前の中に。こんな荒れ果てた中でここまで綺麗に残ってるってなったら最近だろうしまぁ当たりだな」<br>「そうだね。どうする？」<br>「もう少し探そう。骨は全部埋めてやるくらいしねぇとな」<br>「そっか。手伝う」<br>「いいよ。そこまでしなくても。寝てろ」<br>「さっきは言わなかったけど。私睡眠とか必要ないから」<br>「あん？」<br>「寝なくても活動に支障はない。というか睡眠って機能がない。システムのスリープモードはあるけどそれは睡眠とは違うし」<br>「先に言えよ……」<br>「だって勝手に一人で探しに行きそうって思ったから。言っても聞かなそうだったし」<br>「お前なぁ……」<br>「実際当たってたし。ほら。探そ」<br>「ホント無表情なくせによく気づくよなぁ……」<br>「無表情は関係ないと思うけど」<br>「あるだろ」<br>「それよりユーリは探しといて。穴は私が作るから」<br>「普通そっちが俺だろ」<br>「え？ 何？」<br>　言ったときには尻尾の先からブレードを展開して地面に向かって高速で振り回し、既に彼女の体の半分ほどの深さの大穴を振り終わっていた。<br>「はぁ……。なんでもない」<br>　何故かその光景を見て無性に疲れるユーリだった。<br></font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11903410778.html</link>
<pubDate>Fri, 01 Aug 2014 23:39:15 +0900</pubDate>
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<title>Sign of Daybreak&lt;5&gt;</title>
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<![CDATA[ <font size="4">「何かある？」<br>「んー。食料系は全部魔族に食い荒らされてるしなぁ。そもそも残ってても何年前のだよって話だけど」<br>「缶詰とかは無事じゃないかな」<br>「食えそうなら持って帰るか」<br>「そうだね」<br>　食料品売り場の缶詰コーナーを探し、転がり回った缶詰から容器に破損や変形のないものを探して拾い集める。<br>「結構あるね」<br>「だなー。わざわざこんなもん潰して回るのも面倒臭かったんだろうな」<br>「缶詰一個潰したところで大きく影響するわけでもないしね」<br>「次は医療品でも見てみるか。包帯とかガーゼくらいなら使えそうなのあるだろ」<br>「うん」<br>　そう言って、立ち上がろうとしたところで、<br>「うわぁあああああああ！」<br>　子ども、それも女の子の叫び声と、軽く早い足音。その本体がユーリの懐まで肉迫する。<br>　振り返り様に彼が突き出した拳銃の銃口を眉間に当てられ、アマネの尻尾で巻きつけるように両腕ごと体を縛り上げられたのは、十歳前後のように見える年端も行かない少女。<br>　締めあげられ、手に持っていた小型のナイフを取り落とし、怯えた表情を見せている。<br>「ひっ、ひっ」<br>「ガキ……？」<br>「ユーリ。この子人間」<br>　嗚咽のように喉を絞るような悲鳴をあげる彼女に眉をひそめる。アマネの方は相変わらずの無表情で尻尾の先端を喉元に当て、警戒を解いていないようだが、ユーリはあっさりと銃を下ろす。しっかりとナイフを遠くへ蹴飛ばしてから口を開く。<br>「おい。ガキ。質問に答えろ」<br>「ひぃ……」<br>「腹減ってんだな？」<br>　言いながら、缶詰を見せびらかす。答えはしないがごくりと喉を鳴らしたのが答えだろう。<br>ため息を吐きながらその場にあぐらをかき、懐からアーミーナイフを取り出して、<br>「どれがいい？」<br>「……サ、サバ」<br>「味噌煮か」<br>「うん」<br>　ご指定の通り、さば味噌煮の缶詰を開ける。<br>「アマネ。離してやれ」<br>「いいの？」<br>「いい。腹減った人間は神様にだって反抗するさ」<br>「そう。じゃあ」<br>　少女が両足でしっかり地面を踏みしめたのを確認してから、尻尾を解く。途端にユーリが開けた缶詰へ飛びつく。<br>「おいおい、手切るなよ」<br>　そんな忠告には耳も貸さず無心でむさぼりる。<br>「あと何個食いたい？」<br>「五個」<br>「わかったよ。食ったら話聞かせろよ」<br>　隣に座ったアマネに適当な缶詰を開けて少女の側に置きつつついでに見せてみる。<br>「お前も食うか？」<br>「食事の必要はない。食べる行為自体はできるけど」<br>「味はわかんのか？」<br>「わかる。基本的な感覚は人間と一緒。でも内蔵はない。食べても消化するだけ。食べたものが魂を持ったままなら分解して霊素だけ吸収する」<br>「魂持ったままって、要するに生きたままだろ？」<br>「だから基本的にいらない。霊素吸収もわざわざ摂食、嚥下しなくてもいいし」<br>「それで思い出したけどお前、さっき俺から吸ったときわざわざくっつく必要あったのか？」<br>「近いほうが吸いやすい」<br>「あ、なるほどね」<br>「あとユーリが私の体に劣情を」<br>「もよおさない」<br>「というわけ」<br>「わかったよ。にしても」<br>　少女に目をやる。ぼさぼさになった金色の髪、ぼろぼろのＴシャツとショートパンツ。痩せこけ、薄汚れた体。それらとは対照的に金色の瞳は光を失っていない。普通なら魔族の居た地下街でこんな状態で済むはずがない。などと観察している間に食べ終わったのか、彼へと向き直り手を突き出し、<br>「足りない」<br>「ちょっと我慢しろ」<br>「やだ」<br>「……」<br>「……」<br>　無言で睨みつけられる。結局根負けし、更に三個の缶詰を提供してようやく話を進めることができた。<br>「名前は？」<br>「菊池葉月」<br>「葉月ね。って、日本人？ 年は？」<br>「十三。お母さんがイギリス人だった」<br>「ああ、ハーフか。にしても年の割に小さいな。ま、こんなご時世で大きく育てってほうが無茶か。で、いつからここにいる？」<br>「こんな地下で時間なんてわかんない。結構最近」<br>「それまでは？」<br>「…………」<br>　淡々と答えていた葉月の口が止まる。<br>「どうした？」<br>「えっと、二十人くらいのちっちゃなグループと一緒だった。それが、怪物に襲われて、散り散りになって、夢中で走り回ってたらここについて、ネズミみたいなのがいっぱいで、ずっと隠れてた」<br>「なるほどね」<br>　怪物とは魔族のことだろう。真っ先に滅ぼされた日本の住民がそんなことを知っているはずもない。襲われたのは少女の様子を見るに一週間ほど前か。<br>「よく頑張ったね」<br>　顎を撫でながら思案しているとアマネがあやすように葉月の頭を撫で始める。<br>「こ、子供扱いすんな」<br>「大人でも頑張れば褒める」<br>「じゃあそこのおっさんでも褒めるのかよ」<br>「褒めるよ」<br>「おっさんじゃない」<br>「じゃあ私だってガキじゃない」<br>　睨み合う。が、アマネの無感情な「まーまー」と諌める声で毒気を抜かれ、ユーリの方から折れる。<br>「わかったわかった。悪かったよ」<br>「わかればいいんだ。おっさん」<br>「お前殴るぞ」<br>「だって名前知らないもん。おっさんって呼ぶしかないじゃん」<br>「お兄さんでいいだろ」<br>「お兄さんに見えないし」<br>　むしろ落ち込む。<br>「ユーリ。私はわかってるから。元気出して」<br>「ありがとう、アマネ」<br>「ていうかさ、二人は何なの？ 兄妹？ おっさ、お兄さんのほうは日本人じゃないよね？」<br>　流石に落ち込んだところに追い打ちをかけるのは憚られたのか、言い直す。<br>「あー、えーっと、さっきそこで拾ってきた。お前と一緒だ」<br>「拾われたのどっちかっていうとユーリじゃない？」<br>「話合わせろ」<br>「うん。拾われた」<br>「全部聞こえてる」<br>「まぁそういうことだ」<br>「そういうこと」<br>「どういうことだよ」<br>　苛ついた調子で呟きながら頭を掻く。<br>「お前は知らないでいいことだよ。俺はユーリ。そんでこっちが」<br>「アマネ」<br>　そんな葉月に説明する気はないと暗に言いながら自己紹介。促されてアマネも名乗る。流石に機体名を名乗ったりはしなかった。若干ながらやるかもしれないと身構えていたユーリがそっと息を吐く。<br>「ユーリにアマネ。うん。わかった」<br>「つーわけでおっさんはやめてくれ」<br>「わ、わかってる。ごめんなさい」<br>　素直に頭を下げる。<br>「わかればいい。さて、時間食ったし、医療品コーナー漁ったら帰るか」<br>「帰るってどこに？」<br>　ユーリの言葉に葉月が問いかける。むしろ何も聞かないアマネがおかしいのだが。<br>「まぁお前がこれまでいたのと同じようなとこだよ。生き残ったやつらで集まってびくびく怯えて隠れながら穴ぐら暮らし。ロシアの方まで来てもらうけどな。この辺りは真っ先に潰されてるせいでレジスタンスもねぇんだわ」<br>　先の話にもあったとおり日本はまず最初に滅ぼされ、中国は魔神によって消滅。その後ロシアとヨーロッパで防衛軍が結成されたのもあり、レジスタンスの隠れ家は基本的にユーラシア北部からヨーロッパに集中している。<br>「え、ロシアってすごく寒いんじゃないの？」<br>「気候変動のせいでむしろ暑いくらいだよ。安心しろ。少なくともここよりは過ごしやすいさ」<br>「で、でも……」<br>「なんだ？」<br>「あの、一緒にいた人たち……、まだどこかで……」<br>　はぐれた仲間たちのことを言っているのだろう。思いつめたような瞳は放っておけば一人で探しに行きそうだ。空腹が満たされたのも要因の一つか。<br>「はぁ……。言いにくいんだけどさ」<br>　そんな彼女に乱暴に頭を掻きながら口ごもるユーリ。<br>「死んでる」<br>「で、でも！」<br>　そんな彼の後をついで、無表情なまま断言するアマネ。その鉄面皮が冷酷なようにも見える。<br>「確実に死んでる。あなたが生き残ったのは単純に……」<br>　言いながらユーリが蹴り飛ばしたナイフを拾いに行く。<br>「これのおかげ」<br>「そ、それの？」<br>「俺には何の変哲もないナイフにしか見えないんだが、何が違うんだ？」<br>「見ればわかる」<br>　ユーリの隣に戻りながらナイフを手渡す。<br>「これ……。銀か」<br>「そう。純銀」<br>　独特の強く白い金属光沢。鋼とは違う質感はある程度武器に精通していれば見ればわかる違いだ。<br>「お前こんなもんなんで持ってんだ？」<br>「え……、お父さんが死ぬ直前に渡してくれた。これで毎日拭けって専用の布とかも渡されたんだけど……」<br>「毎日手入れしててよかったね。おかげで死なずに済んだ」<br>「おい。俺にもわからん。説明しろ」<br>「昔から退魔の金属でしょ」<br>「それだけか」<br>「そうだよ。銀の霊的性質はね。魔素に対してすごく強いの。魔素を払う力を持ってる。このナイフに使われてるくらい純度の高い銀なら、あのネズミくらいなら近寄らなくなるだろうね」<br>「そんな効果あったんだな……。それ知ってりゃあの大戦ももうちょいマシだったか」<br>「言っても小型のくらいしか嫌がらないけどね。さっき倒した鎧くらいまで行けば触るとちょっと痛い程度だと思うよ」<br>「あ、あの、何の話？」<br>　ついてこれない葉月が頭に疑問符を浮かべながら二人の間で視線を泳がせる。<br>「あ、ああ。要するにこれが魔除けのお守りになってたって話だよ」<br>「そう。お守り。他の人はこんなの持ってたとは思えない」<br>「持ってたかもしれないじゃん！」<br>　ここぞとばかりに可能性を主張する。確かに持っていなかった確証はない。が、<br>「純度９９．８％を超えるような純銀をこの大きさで？」<br>「持ってないなんて言えないでしょ！」<br>「そうだね。でも持ってたかもしれないと思おうとしなきゃ思えない。私一人ならともかく。ユーリや葉月がその程度の可能性で危険に飛び込むなんて馬鹿のすること。それに」<br>　と続けながらじっとその無機質な赤い瞳で葉月の金色の瞳を見つめる。<br>「本当に。生きてると。思ってる？」<br>「思ってる！」<br>「本当に」<br>「思って」<br>「本当に」<br>「おも、思って……」<br>　俯いてアマネの視線から逃げる。<br>「おい、そこまでにしといてやれ」<br>「こういうことははっきり言わないといけない」<br>「悪かったよ。俺が言えば良かった」<br>「こういうのは人間のユーリより私のほうが向いてる」<br>「いいから。葉月」<br>　アマネを窘めてから、うつむく葉月の肩を優しく掴む。<br>「俺も無責任なことは言えない。生きてるかもしれないやつのために生きてるやつを危ない目に合わせるわけにゃいかないんだ。ミイラ取りがミイラになっちゃ意味が無い。わかるか？」<br>「うん……」<br>「よし。いい子だ。じゃあ約束だ。まず最初に自分の安全を考える事。いいな？」<br>「……うん」<br>「よし。ただし俺からも約束しよう。帰ったらそれなりの人員を動かして救助隊を出す。俺が指揮を取る。これでいいか？」<br>「それじゃ……遅いよ……」<br>「そうだ。けどな。これが俺にできる最大限の譲歩だ。これでダメなら救助隊も出さない。お前は無理やり押さえつけて連れて行く。どうする？」<br>「わ、わかったよ……。我慢する……」<br>「悪いな。強制して」<br>「ううん……。ユーリの言うこともわかるから……」<br>　その後、すっかり大人しくなった葉月を連れて、デパート跡を漁り、必要なものを拾って気まずい空気のまま外へと出て行った。<br></font>
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<pubDate>Wed, 30 Jul 2014 21:21:13 +0900</pubDate>
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<title>ブチ切れ勇者の世界征服</title>
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<![CDATA[ <font size="4">ようやっと読めましたわ<br>まぁまず読む前の段階として普通に書店に並んでたのに驚いたよね<br>これまではむばね先生の本って全部取り寄せ注文してたからね<br>どうせ置いてないだろ―って思いながら棚見たら普通に置いてあったわ<br><br>つーわけで一回読んだ感想<br>とりあえず面白かった<br>読者っぽく言うなら魔王さんちの舞台でスタンプやったらこんな感じになるんじゃないかなってイメージ<br>リナイスとか秋ちゃんぽかったし<br>主人公がボケに寄った彗って感じ<br>能力がやたら高い辺りも彗<br>全体的に勢いで押してくる感じ<br>細かい設定とか気にする人とか主人公がはちゃめちゃするのがダメな人とかは合わないかもしれない<br>僕は好きです<br>つーか僕の文体もこっちより<br>そこはどうでもいいとしていい感じにさらっと読める<br>読んで疲れるっていうのはない<br>最後にちらっとシリアスっぽくなったけどほんとにちらっと<br>どっちかって言うと主人公はモアちゃんってイメージで読んだほうが楽しいかもしれない<br>そしたらヒロインいなくなったけど<br>色恋沙汰は特になし<br>そっちを期待してはいけない<br>ひょっとすると二巻以降出るかもしれないけどそうするとモアに対してその気配を見せた登場人物にロリコンの疑いがかかるな？<br>ぐだぐだ言ったけどまとめると<br>RPGをさくさくっと進めていくのが好きな人は好き<br>きっちりサブクエとかレベリングとかやってしっかり攻略するのが好きな人はダメっぽい<br>という感じ<br>個人的には期待通りの面白さだったのでオススメしたいところ<br>何にしても売れないとはむばね先生が餓死して続きがでなくなるので皆買ってほしいね！<br></font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11900754120.html</link>
<pubDate>Sun, 27 Jul 2014 19:50:40 +0900</pubDate>
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<title>Sign of Daybreak&lt;4&gt;</title>
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<![CDATA[ <font size="4">「あ、あそこ無事」<br>「お、確かにな」<br>　数十分ほど歩き回ってようやく比較的被害の少なそうに見える衣服店を見つける。<br>「あー、まぁいいか」<br>「何が？」<br>「ありゃちょっときわどいっつーかあざとい服しか置いてない感じだぞ」<br>　眉をひそめながら確認した店はロリータ・ファッションを専門に取り扱う店のようだ。懐中電灯で照らしだされた外装だけでも可愛らしさをあざといまでに狙った雰囲気を感じさせる。<br>「そうなの。この際着られるならなんでもいい」<br>「まぁな。これ以上俺もロリコンのセクハラ男扱いされたくないし」<br>「そうだね。行こ」<br>　軽い足音と共に足早に店の中に入っていくアマネ。そんな様子はおくびにも出していなかったが、実は恥ずかしかったのかも知れない。後を追って中に入ると、真っ暗ではあるが、周囲の店舗よりも随分きれいなままの内装が残っていた。<br>「随分とまぁ綺麗なことで」<br>「でも服はぼろぼろなのが多いよ」<br>　奥の方から声が聞こえてくる。そちらに向かいながら服を確認していくが確かにぼろぼろだ。<br>「お前ほんとにこれ着るのか？」<br>「着るよ。他のお店探すのも手間だから」<br>「つーかどっちにいるんだよ」<br>「ちょっと待って。今着替えてる。着終わったらそっち行くから」<br>「おう、そりゃ失礼」<br>　慌ててその場に留まって、待つこと数分。奥からカーテンの開く軽い音が聞こえる。どうも試着室の中に入っていたらしい。<br>「お待たせ」<br>　出てきたアマネは黒を貴重にしたフリルにレース、リボンで飾り立てられ、パニエでスカートをしっかり膨らませた、いわゆるゴスロリと呼ばれるタイプのドレス。どの年齢層を狙ったのか肩から胸元にかけて大胆なほど肌が露出していて、その大きな胸が強調されている。袖は根本から千切れてノースリーブになっている。<br>「似合う？」<br>「思った以上にな」<br>「六歳だからね。当然だね」<br>「六歳にそんな胸元開いたドレスは似合わねぇよ。ったく」<br>「私だってわざわざこんなのにしないよ。これしかなかったんだもん」<br>「まぁ、たしかになぁ」<br>　軽く見回してみても今彼女が来ているドレスよりも状態がいいものは見当たらない。<br>「それにこれ、スカート広がってるから尻尾気にする必要なくて楽。袖は肘の兵装展開に邪魔だから私がちぎったけど」<br>「ああ、お前がやったのかそれ。確かに普通のスカートじゃ尻尾邪魔そうだよな」<br>　広がったスカートの裾から伸びる尻尾を頭の後ろでひょこひょこ揺らす。<br>「って、ここ下着とかはないよな」<br>「ないね」<br>「お前」<br>「仕方ない。次はランジェリーショップを探そう」<br>「そうだな……」<br>　眉間に指を当てて唸るように同意する、<br>「あ、ドラッグストアでもいい」<br>「はぁ？」<br>「最悪絆創膏を貼って誤魔化せば」<br>「さっさと探すぞ」<br>「うん」<br>　何故かユーリのほうが必死になって探しまわる。暢気についてくるアマネの手を引いて更に数十分ほど経ってからようやく見つけたランジェリーショップにアマネを放り込んでしばらく待つ。<br>「はいてきたよ」<br>「はいてきたってなんだよ！」<br>「はいてきたの」<br>「その言い方じゃ上はつけてないよなぁ！なぁ!?」<br>「だってこのドレス、胸のとこにワイヤー入っててブラいらないし」<br>「先に言えバカ！」<br>「慌てるユーリ面白かったから」<br>「はぁぁぁぁぁぁぁ」<br>　深く深くため息をついて膝に手をつく。<br>「ユーリ。元気出して」<br>「誰のせいで疲れたと思ってんだこの野郎」<br>「野郎じゃないよ」<br>「このアマぁ！」<br>「わー、怒ったー。きゃー」<br>　騒ぎながら地下街を走り回り、なんとなしに入り込んだデパート。<br>「はぁ。はぁ」<br>「ユーリ、体力ないね」<br>「お前が速過ぎるんだよ……。これでも普通に考えりゃそこそこ脚速いし、体力もある方だぞ……」<br>　入り口でへたり込む彼のそばに奥から戻ってきたアマネがしゃがみ込む。<br>「ここ色々残ってたよ」<br>「まじか。ちょっと探索してくか」<br>「うん。休憩してからね」<br>「そうすっか」<br>　並ぶように座り込んでなんとなしにアマネから口を開く。<br>「ね」<br>「何だ？」<br>「大戦の内容が知りたいな。ここまでぼろぼろになってるとは思わなかった」<br>「ああ……。まぁそうだよな。いいぞ」<br>「あ、話したくないならいいよ。その歳ならユーリだって戦ってた人だよね」<br>「構わねぇよ。そうだなぁ。大まかな流れでいいか」<br>「うん」<br>　構わないとと言いながらもやはり進んで話したい内容ではないのか、結局自分のことは語らないことにする。<br>「まず最初に潰されたのは日本だったよ。まぁ多分お前んとこが問題だったんだろうけどな。今思うと」<br>「だろうね。じゃなきゃわざわざこんな小さな島国狙わないよ」<br>「ある日いきなり東京の機能が停止した。発端はそこからか。で、自衛隊は戦う前に散り散りに、しばらくして派遣されたアメリカ軍に吸収されてその間にほとんど制圧されてた日本が戦場になった。まぁアメリカが攻め込んだのは日本の為じゃなく魔族の力に利益を見つけたからだろうけどな」<br>「だろうね。実際魔族の力は吸収できたらかなり使えるはず。ユーリの使ってたライフルもでしょ？」<br>「流石にわかるか。まぁそっちは後にして続けるぞ」<br>「うん。ごめん。話の腰折ったかも」<br>「気にすんな」<br>　驚くほど優しい表情でアマネの頭に手を乗せながら話を続ける。戦いの日々を思い出して思うところがあるのだろう。<br>「それでまぁ、アメリカさんが出てきたはいいけど今度はアメリカ本土に魔族が現れ出す。で、完全に日本に目を向けてて自分のとこに現れるなんて思ってなかったアメリカもあっという間にワシントンを除いて主要都市を破壊される。流石に首都はきっちり守ってたからなんとか生き残って戦い続けたわけだ。ここまで俺の母国のロシアは完全に漁夫の利狙いだったわけだけど流石にこれには危機感を感じて自国内に引き込まるように軍備を強化。中国もそれに倣うように引きこもり。と思ったら三日後に一瞬で北京から武汉にかけてが消滅。ここで初めて魔神が観測されたわけだ」<br>「ちょっといい？」<br>「なんだ？」<br>「大戦って一応二年は続いたんだよね。その言い方だとあっという間に負けてそうだけど」<br>「この時点で敗戦濃厚だったんだけどな。ここで流石に無事だったロシアとヨーロッパも引きこもってるだけじゃダメだと思ったのか連合軍を作ったんだよ。で、連合軍が出撃してアメリカの半分を何とか奪い返してあとは応戦しつつじわじわと領土を奪われていく感じだな。もうこの当たりから魔族側も被害を最小限にする為か随分消極的に攻めてきてたからな。長引いたんだ」<br>「一気に端折ったね」<br>「めんどい。つーかこっから惰性だ」<br>「ユーリはいつから戦ってたの？ もとは猟師とかだったんじゃないの？」<br>「あれ。言ってたっけ？」<br>　昔の職業を言い当てられ驚く。<br>「言ってないよ。でもあのライフルの扱い方見れば猟師かなって思う。過去にもそういう狙撃手は多い」<br>「当たりだよ。片田舎の村でほそぼそと猟師稼業だったさ」<br>「それで？」<br>「引きこもって軍備を強化って言ったろ。丁度あの頃」<br>「そっか。どんな感じだったの？」<br>「んー。まぁ全然ダメだよ。当時の装備じゃな」<br>「そっちじゃなくて。ユーリの戦果」<br>「あ？ 負けた側の兵士に戦果なんざねぇよ」<br>「……。それで。なんでここまで荒れ果ててるの。魔族からしても別に荒らすのが目的だったわけじゃないでしょ」<br>　話したくないことを察したのか話題を変える。<br>「まぁ当然のように最後の最後まで抵抗して結局核ぶっ放して自滅して終わりさ」<br>「やっぱりそうだろうね」<br>「予測できたろ」<br>「うん。大体はね」<br>「ま、放射能やらの問題は魔族側が片付けてくれたからそういう意味じゃ御の字かな」<br>「エネルギーを直接食べる魔物もいるからね。放射能なんて大好物だと思うよ」<br>「そういうわけさ。そんじゃ見て回るか」<br>「うん」<br>　服についた汚れを払いながら立ち上がり、デパートの中へと歩いて行くユーリの後を追ってアマネも駆け足で入っていった。<br></font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11897308444.html</link>
<pubDate>Mon, 21 Jul 2014 00:30:03 +0900</pubDate>
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<title>Sign of Daybreak&lt;3&gt;</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br>「ユーリ。そこ入って」<br>「あれか」<br>指差す先には地下鉄のトンネルが半分ほど瓦礫に埋もれながら顔をのぞかせている。ささくれだったレールが刺さらないようにハンドルをさばきながら助走をつけ、トンネル前の瓦礫でジャンプして半分だけ開いた穴へと飛び込む。<br>「わお」<br>「どうだ？」<br>「楽しかった」<br>　無表情ではあるが楽しかったらしい。<br>「そうだろ」<br>「うん。もう一回」<br>「後でな」<br>「うん」<br>「で、このまま線路沿いでいいのか？」<br>「うん。そのまま。それはそうと枕木の上走って」<br>「嫌だよ。レールが引っかかるだろ」<br>「あーってやりたい」<br>　これも無表情なままである。とは言えユーリの方も慣れたのか普通に受け答えする。<br>「子どもかよ」<br>「今日生まれた」<br>「いや、確かにそうだけど。いや、むしろ今日起きたんじゃねぇのか？」<br>「そうかも」<br>「ちなみに完成はいつよ」<br>「六年前」<br>「六年？ 人魔大戦開戦が五年前で終わったのが三年前ってことは」<br>「うん。大戦中ずっと寝てた」<br>「お前何のために作られたんだよ」<br>「仕方ない」<br>「なんで起動しなかったんだよ」<br>「霊素が足りなかった」<br>「足りなかったのか」<br>「うん。設計コンセプトが魔素から霊素を生成するってところだったからね。今はそこら辺に魔素が充満してるけど大戦前だったから厳しかった。元がイコールなものだから霊素も同じ吸収機構で吸えるけど」<br>「それがなんで足りない理由になるんだよ」<br>「ちょっと説明間違ったかも。足りないっていうか純度が低すぎたの。高純度な霊素を使う前提の設計だから。どの機能も起動するのに霊素の振動効率が悪すぎてダメだった」<br>「あ、なるほどね。で、さっき起動したのはなんでよ」<br>「大戦でまき散らされた魔素を吸収できて起動直前までいけたから。動けないから周りにあったの全部吸収しちゃってその後が続かなかったけど。それでユーリが連れてきた魔族の放つ魔素で起動した」<br>「へぇ。でも研究所はもぬけの殻だったよな」<br>「開戦の前に潰されたみたいだから」<br>「わざわざ狙ってか」<br>「わざわざ狙われるようなもの作ってたからね」<br>「まぁ確かに。で、なんでお前は無事だったんだよ。No_003ってことはその前に二機は作られてたんだろ」<br>「そうだよ。どっちも消息不明」<br>「で、お前は？」<br>「さっきから何度も私のコンセプト言ったよね。私の前の二機にはそんな機構なかったから。というか核燃料で動いてたから」<br>「ああ、そういうこと。つーか核かよ」<br>「そういうこと」<br>　要するにアマネの近くに寄らなかったのだ。近寄れば起動するの兵器にわざわざ近寄る必要もない、という判断だったのだろう。あの魔侯は監視役といったところか。<br>「つーか寝てたお前がなんでそれを知ってんだよ」<br>「監視カメラの映像データも入ってるから。襲われたときの惨殺現場の解説もできるけど」<br>「しなくていい。でもそんな痕跡なかったぞ」<br>「だってユーリが入ってきた穴、私が起動したときに出て行く為の穴だし。研究所本部はあの水槽がいっぱいだったところのもっと奥だよ。私に無駄な霊素供給しないように全部機械任せで誰も近寄らなかったからあの辺りには何もないよ」<br>「無駄な霊素っつったらお前、俺から吸ってなかったか？」<br>「吸ったね」<br>「いいのか？」<br>「兵装用には無理だけど通常活動には大丈夫。さっきも言ったけどユーリの霊素質がいいから」<br>「質がいいの意味がわからんのだが」<br>「こっちの世界の霊素もほとんど振動覚えちゃってるんだけどユーリのは全然覚えてなかったよ。一つの感情の振動しかないから動かしやすい」<br>「へぇ」<br>　生返事。魂がどうのと説明されても実感などあるはずもない。<br>「実感ないよね」<br>「ないな」<br>「別にいいよ」<br>「っていうか。お前今は戦えないってことか」<br>「ううん。もう魔素を随分吸収できたから戦えるよ」<br>「そりゃ助かる」<br>「私頼りだったんだ」<br>「お前頼りだよ。一応警戒はしてるけどよ」<br>　ユーリ単体で魔族に襲われて生き残る自信などない。先の戦いぶりを見ているからこそ多少であるが大胆に移動している。<br>「そう。まぁ近くに反応あったら教えるよ」<br>「頼まぁ。ちなみにどれくらいなら対応できる？」<br>「どれくらいって？」<br>「ああ、階級分けとか知らなかったか」<br>　大戦中に設定された階級を彼女がしるはずもない。<br>「知らない。どんな感じ」<br>「下から魔物、魔侯、魔王、魔神」<br>「どの程度で分けてるの」<br>「大まかな脅威度。人間がどのレベルで殺されるかって話」<br>「私にはわからなさそうだね」<br>「そうだな」<br>「さっきのは？」<br>「ありゃ魔侯って感じかな」<br>「ふーん。じゃあ魔王くらいまでなら普通に戦えると思うよ」<br>「いちいち規格外な性能だな。ほんとに」<br>「そうかな」<br>「でも対魔神用っつってなかったか？ どういう区別での魔神だったんだよ。今とは違うんだろ」<br>　大戦前の魔神の設定が気になる。<br>「神話の性能にあわせた設定。名前で言うなら有名どころだとサタンとかルシファーかな」<br>「どんだけどでかい相手だよ……。の割に魔侯相手に大したダメージ入ってなかったじゃねぇか」<br>「フルパワーじゃないし。ようやく起動できるって程度だったから火力出なかった。大して魔素も出してくれなかったし」<br>「ちょっと意地になってんな」<br>「なってない」<br>「なってるだろ」<br>「なってないもん」<br>　もちろんこれも無表情である。<br>「はいはい」<br>「怒った。私怒った。もうユーリほっといてどっか行っちゃう」<br>「頼む。一緒に来てくれ」<br>　かなりの死活問題だ。<br>「そういえば私なんでユーリと一緒に動いてるんだろう」<br>　気づいてしまった。別に理由などないことに。<br>「さぁ」<br>「流された気がする」<br>「今更だな。さっきからずっと流されてんぞ」<br>「ほんとにね」<br>「一人になったらどうすんだよ」<br>「とりあえずそこら辺の魔族を殲滅して回る」<br>「勿体ねぇ」<br>「なんで？」<br>「お前ぐらいの戦力があるなら俺が欲しい。もういくつか戦略もあるし」<br>「いいよ」<br>「いいのかよ」<br>「私は白兵戦と広域大規模攻撃はできるけど狙撃機能ない。ユーリの狙撃能力は私も欲しい」<br>「そりゃ嬉しいな」<br>「だから一緒に行く」<br>「そっか」<br>「うん。助かる。ところでそこの駅のホームで止まって」<br>「ん、あれか」<br>　アマネが指さした先にある大きな駅のホーム跡。そこを見て、嫌そうに眉を潜める。<br>「あれ。ちなみに魔族反応あり」<br>「気づいてるよ」<br>「何で？」<br>「なんつーか、臭いっていうかな。なんとなくわかるんだよ」<br>「ああ、そっか」<br>「ん？ 何が？」<br>　ひとりごちるように勝手に納得したアマネに問いかける。<br>「魂の純度が高いから魔素に反応できるんだね」<br>「純度によってそんな差もあるのか」<br>「というか純度が低いほうが死にやすいかな。ユーリは魔素に耐性がある。だから知覚できるくらい魔素に触れても大丈夫ってことだね」<br>「耐性って何が違うんだよ」<br>「魔の気配に触れた霊素は魔素になる。じゃあ魔素はどうやったら霊素になるかって話」<br>「どうやったらなるんだよ」<br>「特殊な振動を与える。これが私。あとは霊素から魔素でも同じだけど純度の高い霊素に触れること。だから純度の高い魂を持ってるユーリは魂が魔素に触れても魂自体が魔素になった部分を浄化できるんだよ」<br>「なるほどね。にしてもお前といるとわかりにくいな。いつもならもっと手前で気づけるんだけど」<br>「今でも吸ってるし。むしろその残りだけでよく気づけたね。ちょっと吸収力あげとく」<br>「あ、わかんなくなったわ」<br>「小さい魔族みたいだし。ユーリの言ってた基準なら魔物かな。先行って片付けとくね」<br>「あ、おい」<br>　何のためらいも無くシートから降り、飛び降りる。一瞬だけ空気抵抗で後ろに流れたのち、風と蒼い粒子を残してバイクを置き去りにホームへと、刃を展開しながら飛び込んでいく。<br>「ったく。ほんと今までちまちまやってたのが馬鹿らしくなってくるな」<br>　普通なら複数の師団を捨てる覚悟で探索に入るところだ。やや遅れてホームに乗り込み、明かりを確保する為バイクのエンジンはかけたままで、よじ登る。そこには肉のサイコロが転がっているだけでアマネの姿はない。<br>「もう上に行ったか」<br>　そして、今も血と肉の撒き散らされる不愉快な音のする方には暗闇が広がる構内へ続く階段がある。目を慣らすためにしばらく待ってから駆け上がる。<br>「遅かったね」<br>「お前が早過ぎるんだよ」<br>　上がり切ると、振り返りながら最後の一匹、ネズミの姿をした魔物を一瞥もせずそれだけ展開したままだった細い尻尾の先の刃で細切れにして、そんなことを言う。<br>「それが霊素か？」<br>　暗闇のなかで鮮明に光るその刃を指さしながら尋ねる。<br>「うん。高周波霊素ブレード。触ると危ないよ？」<br>「どれくらい？」<br>「エネルギー量で例えるならF35のエンジンをアフターバーナー込みで限界ぎりぎりの出力で動かした排気に触れるくらいかな」<br>「消し飛ぶな」<br>「塵すら残らないね。なんて言ってもこれはブレードだから消し飛ぶんじゃなくて綺麗に真っ二つになるだけだから安心して」<br>「できるかバカ」<br>「じゃあ消しとくね」<br>　言うが早いかささっと残った尻尾の刃も消してユーリの隣に並ぶ。<br>「その尻尾も兵装展開用か？」<br>「うん。というかこれがメイン」<br>「剥き出しでいいのかよ」<br>「固いから大丈夫なんじゃないかな。私のボディで最強硬度だからこれが潰されたら私本体も潰れてるよ」<br>「つーか長いなこれ」<br>「や。引っ張んないで」<br>　改めて長さを確かめてみると彼女の身長と同じくらいはある。<br>「もー。はーなーしーてー」<br>「ああ、わりぃわりぃ」<br>「この尻尾馬力も私のなかで一番強いんだから。その気になったらあのままユーリの腕を肩から引きちぎるのだって簡単だったんだよ」<br>「そりゃ怖い」<br>　棒読みで両手をあげて降参のポーズ。<br>「信じてないでしょ」<br>「お前の口調が移った。まぁ信じる信じないっていうかやらねぇと思ってるし」<br>「やらないけど。どっちかっていうと引っ張って羽織ってるこれめくってお尻でも見たいのかなって思った」<br>「なんでだよ」<br>「ユーリ。やらしい」<br>「はいはい……」<br>　言われるまでアマネが裸のままだったことは忘れていたし、目はずっと尻尾にしか向けていなかったが、言い訳をしても墓穴を掘る気がしたので流すことにした。<br>「で、その服を調達に来たんだよな」<br>「うん。ここが一番近い大きな地下鉄の駅。その構内の商店街もこの辺りで一番大きかったから。もしかしたら無事なのもあるかなって」<br>「確かにな。とりあえず見てみるか。魔族は？」<br>「反応なし。まだ残ってたみたいだけど皆逃げちゃった」<br>「そっか。じゃあ安心してライトつけれるな」<br>　荷物の中から取り出した懐中電灯のスイッチを入れる。傷だらけの床や壁。未だにいくつか残ったままの血痕。その血の主は骨までネズミに食いつくされたのか面影すらないが。<br>「やれやれ。見慣れてるとは言え見たくはないな」<br>「そうだね。見たくないなら消してていいよ。私が案内するから」<br>「いや、慣らした目もすっかり瞳孔閉じちまったしこのままでいいよ」<br>　広い地下街を二人並んでうろつき始めるのだった。<br></font>
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<pubDate>Tue, 15 Jul 2014 01:07:56 +0900</pubDate>
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<title>Sign of Daybreak&lt;2&gt;</title>
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<![CDATA[ <font size="4">「ついたよユーリ」<br>「いって！」<br>　穴から出た途端ユーリを投げ捨てる。<br>「投げんなよ！」<br>「重いから」<br>「散々余裕つってただろ！」<br>「恥ずかしかったから」<br>「そろそろ天丼って言葉でどうにか出来るレベルじゃないから自重してくれ」<br>「うん。わかった。次は痴女で押す」<br>「そうだな。いい加減にしような」<br>「うん」<br>　言いながらマスクをかぶり始めるユーリとそれを不思議そうに見上げる少女。<br>「何被ってるの」<br>「マスク」<br>「見ればわかる」<br>「なら聞くな」<br>「なんで被るの？」<br>「魔素対策」<br>「魔素？ いっぱいなの？」<br>「いっぱい。いっぱい過ぎて吸うと死んじゃう」<br>「ふーん」<br>　興味なさそうに言いながらユーリのマスクを剥ぎ取る。<br>「あ、おい」<br>「いらないよ？」<br>「あ？」<br>「私と一緒にいるならいらないよ？」<br>「なんでよ」<br>「私、魔素吸収して霊素生成してるから」<br>「はぁ？」<br>「相手が強ければ強いほどエネルギー供給が増えて性能限界が上がるエコロジー仕様」<br>　ぶいさいん。ひらがなで書いてる辺りが彼女らしさ。<br>「エコロジーの意味違ってるぞ」<br>「じゃあ省エネ？」<br>「そうだな。そっちのほうが合ってるな」<br>「そんなことどうでもいい」<br>「確かに。一理ある。でもお前が言うな」<br>「あいた」<br>　つい手が伸びて頭を小突いてしまった。<br>「痛いよ」<br>「ツッコミだ」<br>「キレのあるいいツッコミだった」<br>「そうだろ。いいから説明しろ」<br>「うん。でもその前に霊素から入ったほうが早そう」<br>「そうか。とりあえず先にエンジンかけるわ」<br>「うん」<br>　近くに止めてあったバイクにまたがり、エンジンをかける。<br>「乗るか？」<br>「乗る」<br>　その後ろにまたがる少女。<br>「ああ、忘れてた」<br>「なに」<br>「名前」<br>「さっき言ったよ」<br>「長ったらしいかたっ苦しい呼びにくい」<br>「そう言われても」<br>「それらしい名前考えろ」<br>「えー」<br>「いいから。走り始めたら音で聞こえないだろ」<br>「あま、てら、あま、あまね。……アマネでどうかな」<br>「じゃあアマネな」<br>「うん」<br>「そんで、説明は？ ホントにマスクいらねぇんだろうな」<br>「うん。霊素はね、魔素と逆でこっちの世界に満ちてたもの」<br>「ふーん。まぁ魔素があるならそういうのもあるかもな」<br>「そう。それはね。こっちの生物達の魂の元素。逆に魔素は魔族の魂の元素が魔素。霊素は魔の気配に触れれば魔素にもなるんだけど」<br>「ってぇことは」<br>「うん。魔素も霊素になるよ。それと魔族がこっちに攻めてきたのはそれが理由。霊素が魔素になるとすごく高純度なの。魔素から霊素でも一緒だけど」<br>「魔界は魔素不足か？」<br>「と言うより魔素の品質が悪くなったからこっちの霊素を求めたみたい。高純度な魔素で形成された魔族のほうが強いから」<br>「は、なるほどね」<br>「魂はね。感情を発すると震えるの。震えると余分な霊素とか魔素を吐き出してより綺麗な形になる」<br>「それで？」<br>「でも感情に触れた霊素や魔素はその振動を覚えちゃうの。だからその振動以外の感情を受けてもちゃんと震えてくれなくなる。逆にその振動を受けるとすごく震える。それは個性とも言えるけど」<br>「後ろ向きな奴らとか前向きなやつらの違いか？」<br>「そう。魂の構成因子がネガティブな感情とかポジティブな感情とかを覚えちゃってるからそういうことになっちゃうの。でも魔族からするとそれは魂が歪んでるってこと。魔族は自分の欲求に従うのがアイデンティティだから。でも魔素がその欲求に通じる感情と違う感情を覚えていちゃうと」<br>「弱っちいのができちまうと」<br>「そう。だからこっちの霊素を魔素に変えて使うために攻めてきたみたい。魔素から霊素、霊素から魔素に変化するとき、覚えていた振動を忘れるから」<br>「おっけそっちは分かった。で、お前のほうだよ」<br>「うん。私はね。霊素で動くの」<br>「それでさっきああいったわけね」<br>　ひっついてきて感情を動かせといった理由はこれだったようだ。言われてみれば納得である。<br>「うん。ユーリの霊素おいしかった」<br>「味すんのか」<br>「味っていうか質？ 車がレギュラーのガソリンよりハイオクのほうがよく走る感じ？」<br>「もう動く車なんてないけどな」<br>「これは？」<br>　自分がまたがっているバイクを指さして尋ねる。<br>「これは特別製。つーか俺が作った」<br>「作ったの？」<br>「そう。そこら辺に落っこちてたガラクタかき集めてな。太陽電池で動いてる。充電しとけば一晩くらいは動くぞ」<br>「すごいね」<br>「そうだろ。もっと褒めろ」<br>「やだ」<br>「喜ぶぞ」<br>「もうお腹いっぱい」<br>「そうか」<br>「褒めて欲しい？」<br>「いや？ お前に褒められても皮肉に聞こえそうだ」<br>「うん。続けていい？」<br>「どうぞ」<br>　特に文句を言うでもなくあっさり話を戻す。<br>「私は周囲の魔素を吸収して内部で霊素に変換できるの」<br>「それでどう動けるんだよ」<br>「ユーリは経験ない？ 疲れて動けないと思ってるときでも怒ると体が動くとか」<br>「まぁ、あるな」<br>「感情の力。削ぎ落とされた霊素の振動の力だけでも人は限界を越えられる。わかりやすくいうと精神力みたいなものかな」<br>「精神力ね。じゃあ何。お前は気合で動いてるってか」<br>「ううん。それを物理的に作用させる機構が私にはあるの。さっき使ってたブレードも霊素を加工して生成してた」<br>「へぇ。そりゃすごい」<br>「あんまり思ってなさそう」<br>「いや思ってるよ。真面目に。強さはさ。でもその中身の話されてもピンとは来ねぇよ」<br>「そっか。それもそうだね」<br>「そうそう」<br>「ささっと言うなら他の振動を知らない高純度の霊素に武器として威力のある指向性の振動を与えると物凄い強いんだよ」<br>「そっか。じゃあ行くぞ」<br>「うん。ところでどこに？」<br>「……ふむ。改めて言われると悩むな。帰るつもりだったんだけど、その前にお前の着るものとか調達するのが先か」<br>　無表情なまま普通に会話しているせいで忘れていたがアマネは羽織っている外套の下は素っ裸だった。<br>「どこに帰るの？」<br>「ロシア。の西の方の端っこ」<br>「遠いね」<br>「遠いな」<br>「じゃあ先にもうちょっと日本回ろ？ 流石にこの格好で長距離移動は嫌かも」<br>「いいけど、どっか行く宛あんのか？」<br>「ある。案内する」<br>「了解。っと、マスクはいらんでもこれはいるな」<br>　荷物の中から予備のヘルメットを取り出してアマネの頭にかぶせる。<br>「わ」<br>「ほれ、上向け」<br>「う、わ、自分でできるよ」<br>「いいから上向け」<br>「う、うん」<br>　何が気になるかと言うと首の両側面にぶかぶかの襟から見え隠れする機械部分に顎紐が引っかからないかどうかだ。<br>「お前ここに何か当たっても大丈夫か？」<br>「どこ？」<br>「これ」<br>　軽く指先でつついてみる。<br>「ん。くすぐったい。露出してる金属部分のこと？」<br>「そうそう」<br>「それなら平気。特に問題はない。露出しても大丈夫だから出てるの」<br>「そういやそうか。にしてもなんでわざわざ出してんだろうな」<br>　それでも気になるのでその部分に当たらないように、かつサイズの合ってないヘルメットが揺れないようにきっちり締め付ける。<br>「さぁ。なんでだろうね。趣味じゃないかな」<br>「趣味かよ」<br>「趣味だと思う。機械少女萌えーってやつだったんじゃないかな。出ても問題ないけど出してる必要もないし。あ。兵装展開基部は出してないと困るかな」<br>「お前の知識はどうなってんだ」<br>　無表情なまま機械少女萌えーとか言われても反応に困る。先程からの会話も含め妙に偏りを感じる。<br>「さぁ。私に聞かれても」<br>「まったくだ。後でほんとに似顔絵頼む」<br>「おっけー」<br>「うし。これでずれねぇな」<br>「うあーうあー」<br>　ぐりぐりとヘルメット越しに頭を前後に動かしてみるがずれたりはしない。自分もヘルメットをかぶり、しっかりと服を握らせて排気音を残して皇居跡を去っていく。<br><br>「んで、どこ行くんだ？」<br>　バイクの走行音にかき消されないように大声で後ろのアマネに問いかける。<br>「あっち」<br>　別に声を張り上げるでもなく、後ろから向かいたい方角を指さす。声で伝える気はないらしい。<br>「あっちか」<br>　そちらへ前輪を向けて、荒れ果てた大地を走る。砕け散ったアスファルトとコンクリートの瓦礫を避けるように蛇行しつつ、風化したそれらが積もり積もって砂漠のようになった地面に轍を残していく。<br>「しかしほんとにマスクいらずか」<br>「信用してなかった？」<br>「聞こえてんのか」<br>　なんとなしに呟いた独り言に答えるアマネに驚く。<br>「別に聴覚拡張とかはしてないけど。これだけくっついてたらいくらでもいろんなセンサーで感知した信号を音声データに変えて把握できるよ」<br>「へぇ」<br>「ついでに言うと今私の声も骨伝導で伝えてる」<br>「そんな便利なもんあるなら先に言ってくれよ」<br>「聞かれなかった」<br>「聞かなかったな」<br>「うん。バイクって楽しいね」<br>「気に入ったか？」<br>「うん。自分で飛んでるより好きかも」<br>　流れる景色をきょろきょろと眺める。<br>「飛ぶのは好きなのか？」<br>「さっき飛んだのが初めてだからわかんない」<br>「お前実はさっきからテキトーに喋ってるだけだろ」<br>「うん。今更気づいたの」<br>「いや、なんとなく察してた」<br>「さすがだね」<br>「そうだろ」<br>「あ、今度はそっち」<br>「あいよ」<br>「ツッコミは？」<br>　ボケたつもりらしい。<br>「つーかお前さ」<br>「なに？ ツッコミは？」<br>「お前のしゃべり方って今昔のしゃべりから持ってきてんだよな。素体がどうとか言ってたし」<br>「うん。そうだよ。ツッコミは？」<br>「十七歳っつってたよな」<br>「うん。ツッコミは？」<br>「の割にお前のしゃべり方随分子供っぽいよな」<br>「そうだね。そもそも小さい頃の話し方をちょっとだけ適用しただけだし。ツッコミは？」<br>「なんでよ」<br>「検索。検索。素体。年齢十七歳時。あ、あ……。ちょっとおっさん、調子乗ってないでとっととツッコめよ」<br>「あ!?」<br>　思わずこめかみに青筋が立った。振り返りかけたユーリの頭を両手で挟み込んで押さえつける。<br>「おい、前向いて運転しろよおっさん。あとさっさとツッコめ」<br>「……、おっけー、わかった、もうやめろ」<br>「うん。ツッコミ」<br>「どんだけ性格悪かったんだよ……」<br>「この年頃の女の子ならこんなものじゃない？ ちなみに父親へのしゃべり方を流用した。内弁慶な子だったみたいだね。学校とかじゃすっごい大人しかったみたいだよ」<br>「つーか俺のこと怒らせたかったなら最初からそっち使えよ」<br>「あ」<br>「気づいてなかったのか……」<br>「うん」<br>「お前実はバカだろ」<br>「失礼な。さっきのしゃべりに戻すよ」<br>「やめてくれ」<br>「うん。わかったよおっさん」<br>「おっさんじゃねぇ！ これでもまだ二十一だ！」<br>「知ってるよ」<br>「え、まじで？」<br>「これでもセンサー類は優秀。触れられてるなら代謝とかでわかるよ」<br>「…………」<br>　無言で口角を上げるユーリ。<br>「嬉しそうだね」<br>「今までずっと老けて見られてたからな……」<br>「頑張れ。もうおっさんって言わないから」<br>「さんきゅ」<br>「じゃあお返しにツッコミ」<br>「なんでそこにそんなこだわってんだよ」<br>「だってスルーされたら私がつまらないこと言ったみたい」<br>「そこを気にするのか」<br>「つまらないのはユーリ」<br>「俺のせいにすんな」<br>「あ、右に曲がって」<br>「あいよ」<br>　<br></font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11892393352.html</link>
<pubDate>Fri, 11 Jul 2014 12:28:43 +0900</pubDate>
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<title>Sign of Daybreak</title>
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<![CDATA[ <font size="4"> 　火薬と血の匂いが混じり、鼻をつく土煙が舞う。横たわる数えきれぬ死体達。どれも原型を留めていない。<br>　今ここに。人類は敗北した。<br>　魔族共の時代が幕を開ける。<br><br>　それから三年後。<br>「日本？」<br>「そう、日本です」<br>「あんな真っ先に滅ぼされた国に何があるってんだよ」<br>「さぁ……。あそこは変人の国ですからねぇ」<br>　獣の巣穴のように作った洞窟をそのまま利用した岩肌丸出しの薄暗い地下室で交わされる会話。<br>「どこからの情報だ？」<br>「先日保護した日本の官僚からですね」<br>「はん。なるほどね……」<br>　精悍な顔つき。ホコリまみれの外套から伸ばした手で無精髭だらけの顎を撫でる。<br>「確かめてみるか」<br>「では調査団を派遣しましょうか」<br>「どこから？ 何人行けるんだ？」<br>「そ、それは……」<br>「どこも人手不足だろ。俺が行くさ」<br>「ダメです！リーダーが直接なんて……！」<br>「別に俺一人いなくても大丈夫だろ。しばらく任せた」<br>「あ、ちょっと!?」<br>　秘書らしき女性を置き去りにして大股で歩き去っていく背中に大きなため息が追いつくことはなかった。<br><br><br>　元ロシア連邦。南部連邦管区であった場所の更に西部にある隠れ家からその広大な大陸を横断し、元は海底だったはずの、干上がった陸地を抜けて日本があった列島へと辿り着く。<br>　文字で書けばこれだけだが実際に移動するのは異常なまでの困難を乗り越える必要がある。<br>　現在、人魔大戦と呼ばれる人類と魔族の大戦争。どこからか現れた悪魔妖怪、アンデッドに魑魅魍魎。一気に窮地に陥った人類によって押された禁断のスイッチ。<br>　荒廃した星の大部分が人類の核によるものだというのは皮肉にもならない。<br>　更に後押しするように世界中に魔族たちによって撒き散らされた魔界に満ちる魔素。そこら中を闊歩する魔族たち。<br>　そんな死の大地を横断してようやく真っ先に魔族に滅ぼされた島国が見えてくる。<br>　単独で動くならば、放射線、魔素への耐性を付与した装備で全身を包んだ状態で、一般人なら生き残った人類が築いた隠れ家から出て数分で、魔族と戦うために立ち上がり、鍛えあげられた戦士達でも隠れ家から数キロも離れれば確実にその体の大部分が魔族たちの胃袋に収まっているだろう。胃袋に至るまでの間に死んでいるか生きているかは瑣末な問題だ。<br>「チッ。もう砂まみれになっちまった」<br>　だがそれらの困難は彼にとっても瑣末な問題でもある。<br>　宵闇のなか、愛銃である対魔族仕様の濡羽色をした特殊な大型の対物ライフルと、愛車のバイクの手入れをしながらぼやく。気候変動により雨も雪も降らなくなり、毎日摂氏三十度を超える暑さに包まれる荒野を渡り歩いた為、至る所に砂が詰まってしまっている。<br>　足元に軽い音を散らしながらはぜる魔除けの香をくべた焚き火で暖と明かりを確保しながら鼻歌でも歌いそうな気軽さでナイフを投げると、十数メートルほど離れた位置に魔除けよりも食欲を優先し、獲物の様子を見に来た犬のカタチをした魔物の喉元にそれが突き刺さる。<br>「こっちは服の下に仕込んでたしあんま出番なかったからマシか」<br>　続け様に状態を確認するように拳銃の引き金を引く。放たれた弾丸はこれもまた隠れていた犬の魔物の眉間に風穴を開ける。<br>　彼、ユーリ・グラズノフは、生き残り、地下で活動するレジスタンスたちの唯一の希望。現状人類最強と言われる人物だ。人魔大戦においても個人によるもので最大の戦果を挙げたと言われる英雄。精悍な顔立ちに、無精髭、ざっくりと短くしただけの銀髪に幽鬼のような筋肉質な長身痩躯。<br>とは言え、その容姿も今は防毒面と全身を覆う外套で一切外気に触れてはいない。<br>「こんなもんか」<br>　手入れを終えた対物ライフルを無造作に設置し、構え、流れるように銃口を動かしながら引き金を引き続ける。一発、二発、三発、四発、五発。無駄のない動きでリロード。更に五発。<br>　放たれる大口径の弾丸の全てが犬の魔物を粉砕する。かの白い死神とまで呼ばれた伝説の狙撃手を彷彿させる連射速度と照準精度と出で立ちから銀の死神などとあだ名されている。<br>　そして、<br>「ふむ。逃げるか」<br>　すさまじいまでの危険予知能力。恐れをなして逃げ出した犬の魔物達に倣うようにそそくさと荷物をまとめ、その場を離れる。<br>　しばらくして銃声と市の気配に誘われたのか、巨大な蛇のような、ミミズのような、魔物がその巨体で焚き火をすりつぶすように辺りを徘徊し始める。大戦の英雄でも所詮単身で相手どれる魔物など雑魚でしかないのが現実だ。逃げるときは逃げる。その生き延びる力こそが彼の強み。<br>　そうしてバイクで大陸を横断し、南下し、辿り着いた日本。<br><br>「東京か……」<br>　情報の詳細を確認し、足を向ける。やはり幾度かの戦闘で時間をロスしたものの特に問題もなく東京へと辿り着く。かつては高層ビルが立ち並び、毎日人のあふれていた都市など面影すらない砕けたコンクリートの荒野をバイクで駆け抜ける。<br>「くそ、目印すらないぞ」<br>　目当ては皇居。だが、そこかしこに廃墟が並び、どれがどれなのかわからない。と、思っていたが。<br>「おっ、あれか？」<br>　かつての地図を頼りにそれらしい場所を探してみると、何故か綺麗に形を残した建造物が一つ。警戒しながら近づくが、魔族どころか魔素すらない。長袖の上から手首に巻きつけた腕時計のような危機をしばらく確認してから防毒面を外す。<br>「はぁぁぁぁ……」<br>　肺の中の空気を入れ替えるように深く呼吸をする。あまりの清々しさに思わず駆け出したくなる。<br>「なんだ……？ ここ……？」<br>　そんな衝動を押し殺しながらう用心深く生き残った建物に近づく。小さな楼閣。出入口のようなものは一切見当たらない。<br>「…………」<br>　背負っていた袋から取り出した対物ライフルで壁を破壊する。空いた大穴から侵入するとそこには大穴が口を開けているだけ。<br>　信号発信用の発光チューブを放り込んでみるが、底から光は届かないような深さだ。<br>「む……」<br>　無精髭を撫でてしばらく思案すると、穴の壁に装備の中から取り出した鉤爪のように鋭利な歯のついたつるはしを突き立ててみる。しっかりと刺さる。これで登れるだろうと判断すると、外套を外し、手に持ってから飛び降りる。パラシュート代わりに外套を頭上で開き、速度を殺しながら落下していく。<br>　落ちていくこと数分。自分が落ちているのか浮いているのかわからなくなるような時間は、やがて、チューブの光と、ほの暗いオレンジ色の光が見え始め、着地に備えた脚への衝撃と共に終わりを告げる。<br>　そして、<br>「なんだ、これ……」<br>　　光の発生源。円筒形の巨大な水槽。時たま底から気泡が立ち昇り、水音が反響する。<br>　その中央にこれも底から伸びる数えきれないチューブに繋がれ浮かびながら眠る少女。<br>　一糸まとわぬ小さな体。肌色のなかにところどころ無骨に光る金属質な部位。小柄なのにかなり女性的な体つきではあるが、その鈍色に光る部位のせいで色気と言ったものを感じさせない。<br>「…………」<br>　気にはなるが、先に周囲を調べる。ちらりと背後に伸びる通路を見やり、拳銃を構えながらそちらへ近づく。身を隠せそうな障害物はない。装備を確認し、光を反射しそうなものはすべてその場に捨てて、拳銃も外套の中に隠すように構えを変えて、壁に張り付くように進む。<br>　ゆるやかにカーブした通路をしばらく進むと、<br>「ちっ……」<br>　小さく舌打ち。ついで、横飛び。彼がいた背後の壁に音もなく、おびただしい数の穴が穿たれる。その中から顔を出すもぐらのような魔物。退化した目の代わりに鼻を鳴らしながら這い出し這いより、ユーリへと襲いかかる。<br>「くそっ」<br>　吐き捨てながら全速力できた道を引き返す。応戦したところで相手の数が多すぎる。手持ちの弾丸だけではどうあっても数が足りない。銃声で奥にいる他の魔物を引き寄せるのもまずい。<br>　背後から肉を食いちぎる共食いの音に急かされながらかけていくと、飛び降りた先にあったオレンジ色の光が強くなっている。<br>「なんだよクソが」<br>　しかしそれ以外に行き場がない。もっとも、行ったところで逃げ場もないのだが。登ろうにもちんたらやっている間にもぐらに食われて死ぬだけだろう。そんな彼の神経を逆なでするように鼓膜を打つ無機質な声。<br>「魔族反応検知。No.003_アマテラス。起動。掃討シークエンス。開始。警告。魔族を除く生命体は退避してください」<br>　硝子の割れる甲高い音と液体の流れだす低い音。<br>「対象小型魔族。モード・スサノオで対応します」<br>　勘に任せてヘッドスライディングの要領で前進しながら伏せる。後ろの魔物など構っていられない。その頭上をかすめるように交錯し飛び去る影。<br>衝撃波に弾き飛ばされ、受け身とともに後方へ振り返ると、そこにいたのは水槽の中に眠っていた少女。だが今は鬼神にしか思えなかった。<br>上側の両手首から伸びる雷を連想させる蒼い刃。更には両肘、両膝、両つま先から伸びる同じ刃。ダメ押しと言わんばかりに腰から伸びる細い尻尾のような機器の先からも同色の刃を展開し、縦横無尽に飛び回り、もぐら型の魔物を細切れにしていく。<br>「前方から更に大型の反応あり。そちらも排除します。モード・スサノオを継続」<br>　一瞬、いや刹那においてユーリを追いかけていた魔物をすべてミリ単位の肉塊に変えながら、さらに通路の先へと蒼い粒子を散らしながら低空を滑るように飛んで行く。<br>「なんだなんだ。ちくしょうめ」<br>　泡を食いながらその後を追いかける。全力疾走でも影を追うことすらできない。流石に息を切らし始めたところで耳をつんざくような高音が脳を揺さぶる。あえて表現するなら金属のぶつかり、こすれるような、そんな音。<br>　思わず耳を塞ぐ。音だけで卒倒しそうになりながら匍匐前進で発生源を窺う。<br>「っ……」<br>　息を呑む。そこに広がるのは少女が眠っていたのと同じ水槽が二列、平行するように並んだ広大な空間と、身長三メートル程度、横幅はユーリの倍はある屈強な騎士。<br>　現在、世界を闊歩する者達、それらを総じて「魔族」と呼ぶ。その中でも危険度により階級が決まっており下から「魔物」、「魔侯」、「魔王」、「魔神」の四段階。<br>　魔物に襲われれば死ぬ。魔侯に撫でられれば死ぬ。魔王の視界に入れば死ぬ。魔神に至っては理解不能。存在を理解する前に死ぬ。そんな曖昧な区分けではあるが、つまり、最悪の場合でも相手にするなら魔物までが限界だということだ。<br>　そして、今目の前にいるのは魔侯。それが、まさに今目の前で、剣舞を魅せるように動く少女に為す術もなくその体を削られている。<br>だが、どれも浅い。騎士の見た目に恥じない全身を覆う鎧に切り傷が刻まれていくだけで中身にはダメージが通っていない。<br>そうしている間に壁から床から天井からもぐらの魔物が湧き出すように這い出て少女を襲う。どうやらあの騎士に従っているようで、ユーリには一匹も寄ってこない。このままではいずれもぐらの群れに呑み込まれて動けなくなって詰み。そうなれば彼もまた同じだ。<br>背中に背負った魔族用対物ライフルを音も立てずに設置する。魔物を撃つのとは訳が違う。威力を犠牲に扱いやすさを取った設定から、魔族を殺すためにただ威力を求めた設定に変更。<br>銃内部に仕込まれた歯車が回る。かりかりと小さな時計が針を進めるよう音とともに、ライフルから小型の戦車砲のような形状に変形したそれを構える。<br>状況はわからないが、あの少女は魔族と戦っている。敵の敵は味方。狙撃手とは本来、優秀な前衛がいてこそ本領を発揮する。<br>　そう、彼女のような。<br>　スコープは付けず、アイアンサイトで狙いを定める。動きまわる標的を追うのではなく、行く先を読んで射線をそこへ置いておく。<br>尾から展開した刃でもぐらを切り払いながら少女の本体が更に騎士を追い詰める。<br>右手の刃を縦に振り下ろし、右へ避けた相手を追うように左膝の刃を横に凪ぐ。後方へステップした騎士を追うように低空を這い、飛び上がりながら膝蹴り。後方にジャンプし威力を殺しにかかる騎士を更につま先の刃で斬りあげる。両腕を交差しガードした騎士の体が弾かれるように空中で跳ねる。<br>　引き金を絞る。爆音。ストックを当てた肩から足の先まで響く反動。跳ね上がる銃身。吐き出される硝煙と、初速ならば秒単位で数キロメートルを走る大質量の銃弾。<br>　騎士の頭が肩に埋まるほどその首が横に倒れる。甲冑が吹き飛び、その下にあったのはしゃくれた牛のような顔。<br>　それを視認できたものが少女以外にこの場にいたのかはわからないが。<br>　次の瞬間には首から上はサイコロのように綺麗な立方体の集合になり、まばたきの間にバラバラの方向に宙を待っていた。<br>　胴体が落ちる重たい音と肉片が落ちる水っぽい音が不快に共鳴する。一拍置いてモグラたちがざわめき出し、共食いが始まる。<br>狂食の嵐から逃れたものは獲物を求め、少女を恐れ、ユーリのほうへ集り始める。<br>「やべっ」<br>　思わず集中してしまった。後のことを考えてなかった。後の祭りだった。反動でしびれる体はいうことを聞かず、数センチだけ後ろに這いずってくれただけだった。こりゃ死んだな。などと思っていると、ふっと影が彼にかぶさり、集り出したモグラたちがやはりサイコロになった。<br>「…………」<br>　ふらふらと揺れる尻尾になんとなく可愛らしさを覚えている間に蜘蛛の子を散らすように消えていくもぐら達。<br>「計算。掃討に必要なエネルギー値。許容量オーバー。人間。データ照会。項目なし。非保護対象。掃討シークエンス。中断。尋問。開始」<br>　展開していた刃を消して、くるりと振り向く。水槽の中ではチューブの影になってよく見えなかったが、肩甲骨まである少しクセの入った柔らかそうな黒い髪が揺れる。<br>　水槽の中では閉じていたその目は猫目で瞳は朝焼けのように赤い。その瞳が無感情に、無機質に、ユーリを射抜き、無感動な無機質な声で問う。<br>「名前」<br>「俺の？」<br>「あなたの」<br>「ファミリーネーム？ ファーストネーム？」<br>「どちらも」<br>「ユーリ・グラズノフ」<br>「ユーリ。ユーリ。ロシア人」<br>「そう。一応元ロシア人」<br>「元」<br>「元。国なんて概念、とっくの昔に廃れ果ててるよ」<br>「検索。検索。該当なし。詳細求む」<br>「その前にさ」<br>「何」<br>「起き上がっていいか」<br>「どうぞ」<br>　ようやくしびれの抜けた体を起こしてその場にあぐらをかく。<br>「ついでに」<br>「何」<br>「これ着とけ。素っ裸の女と話し込む趣味はない」<br>　そう言って外套を脱いで差し出す。妙に肉感的な体よりむしろ肌色を侵すように見える機械部分が目のやり場を迷わせる。<br>「了承」<br>　特に拒否することもなく外套を羽織って体を隠したのを見て、満足気に頷き、今度はユーリから口を開く。<br>「で、お前は？」<br>「何」<br>「名前」<br>「私が問う側」<br>「知らん。名乗られたら名乗り返す。これが最低限の礼儀」<br>「機体ナンバー003。名称アマテラス」<br>「何だそりゃ」<br>「名前」<br>「あー。何、ロボット？」<br>「否定。正しくはサイボーグ」<br>「……どゆこと？」<br>　無精髭を撫でながら訳知り顔で尋ねる。<br>「人間の女性の死体。改造」<br>「死体？」<br>「機体コンセプト。対魔神用決戦兵器」<br>「はぁ？ 魔神？」<br>「……。質問。私が」<br>「いいから説明」<br>　気づけば会話の主導権はユーリのものになっている。結局そのまま説明を続ける少女。のサイボーグ。<br>「人魔大戦開戦前。魔族。研究。魔神、」<br>「わりぃちょっとタンマ」<br>「何」<br>「そのしゃべり方わかりにくいからなんとかならねぇの？」<br>「…………。検索。検索。素体。生前の会話法。適用。あ、ああ、あ。人魔大戦の開戦前。魔族の存在を知った研究者が対魔神用に設計した。それが私。これでいい？」<br>「おっけーおっけー。それで頼む」<br>　幼い、舌っ足らずなしゃべり口。一言一言で区切るのは元からの話し方だったらしい。その上無機質な声音は変わらないが、随分と話しやすくはなった。<br>「それよりユーリ」<br>「あ？」<br>　唐突に名前を呼ばれて生返事をする彼の目の前で少女が無表情なまま急にへたり込む。<br>「ガス欠」<br>「はぁ？」<br>「霊素充填途中で起動したから」<br>「霊素？」<br>「説明は後。ユーリ、ぎゅってして」<br>「なんでだよ」<br>「いいから。別に死んだり怪我したりはしない」<br>「やらなきゃどうなるんだよ」<br>「機能停止。再起動できるかわからない」<br>「わかったよ。ほれ」<br>　ぽんぽん、と膝を二回軽く叩く。ためらうことなく脚の間に収まる小柄な体。そのまま大きな胸を押し付ける少女。<br>「……、興奮しない？」<br>「して欲しいのか？」<br>「してもらわないと困る」<br>「って言われてもなぁ」<br>　無表情なまま見上げられてもどうしようもないものはどうしようもない。むしろ体温や肌の感触が人間のそれと同じだったことに軽く驚いたくらいだ。<br>「なんでもいいから感情動かして」<br>「って言われてもな」<br>「じゃあ、ユーリのバカ」<br>「はぁ……」<br>「バカ」<br>「……その程度じゃ怒らねぇぞ？」<br>「怒って」<br>「無理」<br>「じゃあ喜んで」<br>「どうやってだよ」<br>「さぁ……？」<br>　当人は焦っているのかもしれないが妙に緊張感のないやりとりを繰り広げる。<br>「じゃあ私をあげるから喜んで。性的な意味で」<br>「俺にロリコンなんて性癖はないぞ」<br>「これでも素体は享年十七歳。あと一年で合法。生殖機能はないけど性行為はできる」<br>「まじで？」<br>「食いつくんだ」<br>「そこじゃない、そこじゃないんだ。ヤりたいんじゃないんだ。勘違いすんな」<br>　ここまでのセリフで最も本気の口調だった。<br>「その身長で十七ってまじかって聞きたいんだ」<br>「まじ」<br>　ユーリが長身なのもあるとは言え、その肩にすら目の高さが届いていない。正直、十代前半だと思っていた。<br>「１４９センチ。スリーサイズは上から８９―５８―８８。Ｇカップ。わがままボディー」<br>「後半の情報は求めてない」<br>「抱き心地はいいと思う」<br>「聞いてない」<br>「抱いて」<br>「抱かん。つーか目的が変わってる」<br>「劣情でも構わない」<br>「見境なしか」<br>「痴女。喜んで」<br>「それで喜ぶと思ってんのか」<br>「男とはそういうもの。データベースにある」<br>「お前を作ったやつをぶん殴りたい」<br>「もう死んでると思う。大戦勃発時に７９歳だった」<br>「そりゃもう絶望的だな」<br>「絶望して」<br>「それでもいいのか」<br>「いい」<br>「いいのか……」<br>「ん。もう大丈夫」<br>「は？」<br>「充填できた」<br>「できたのか」<br>「楽しかった？」<br>「楽しかったよ」<br>「戦闘には耐えられないけど移動くらいなら三日は動ける」<br>「そっか」<br>「うん。ありがとう」<br>　相変わらずの鉄面皮で礼を述べる。狙って話していたのか天然だったのかはかなり気になるところではあるがとりあえずは話を先に進められそうだ。<br>「で、どこまで話してたっけ」<br>「私の説明と霊素の説明。どっちからする？」<br>「あー、いいや。めんどくさい。先にこっから出るか」<br>「うん。それでもいい。またもぐらに出てこられても困る」<br>「確かに」<br>「こっちは何がある？」<br>　入ってきた穴と逆方向に続く空間を指差す。<br>「研究施設。見ない方がいい」<br>「あん？」<br>「失敗素体の標本とか。見てて楽しいものじゃない」<br>「そりゃ確かに見たくねぇな」<br>「普通にそっちから出よう」<br>「はぁ。登んのめんどくせぇな」<br>「登る？」<br>　首をかしげる少女の疑問の内容はすぐに知ることになった。<br>「お前、ずる、くね？」<br>「ユーリ。遅い」<br>　額に汗を浮かべながらつるはしを使って垂直な壁をクライミングするユーリとそれに合わせてのんびりと跳ぶ少女。<br>「これでも、全速、力、だよ」<br>　体を動かす度に言葉を切りながら話す。むしろ話しているから余計に息が上がっている。<br>「早く」<br>「うる、せぇ、な」<br>「早く出して？」<br>「黙れ！思い出したようにそういうキャラで押してくるのやめろ！おお!?」<br>　思わずツッコミを入れた拍子につるはしを差し損ない、落ちそうになる体を少女が支える。<br>「危ないよ。気をつけて」<br>「気を抜かせてるお前が言うな。つーかこのまま運んでくれ」<br>「無理。ユーリ重い」<br>「嘘つけ。余裕で支えてるだろ」<br>「うん。余裕」<br>「お前なぁ」<br>「だってくっつくの恥ずかしい」<br>「どっちのキャラで押したいのかはっきりしてくれ」<br>「多少恥じらってるほうがポイント高いらしい」<br>「ほんと殴りたい」<br>「後で似顔絵描く」<br>「頼む。探しだしてぶん殴るから」<br>　もちろん彼女を作ったという研究者のことだ。<br>「死んでないといいね」<br>「まったくだ」<br>　などと言いながら脇にユーリを抱えて上昇し始める。<br>「やっぱり余裕じゃねぇか」<br>「うん。余裕。さっき言った」<br>「はぁ、もう怒るのもめんどい」<br>「怒って」<br>「ぷんすかぷんすか」<br>「わーい。嬉しいなー」<br>　楽しかった。<br></font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11891406430.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2014 15:07:58 +0900</pubDate>
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<title>まずい</title>
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<![CDATA[ <font size="3">ここのとこくそ忙しくてまぁまるで小説の方に手を付けてなかったわけですよ。んで、ちょっと余裕出来たから書こうと思ったわけですよ。</font><br><font size="5"><font color="#FF0000">書いてない間に別の話思いついちゃってそっちのほう書きたくなったよね</font></font><br><font size="3">つーわけでそっちも一緒に書いていくかもしれない。つーか書く。どっちか気が向いた方の更新になりそう。</font>
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<link>https://ameblo.jp/shitisei-original/entry-11888488775.html</link>
<pubDate>Fri, 04 Jul 2014 01:28:48 +0900</pubDate>
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<title>桜咲かせよ　鬼が為＜本編二章7＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br>「はぁ……。どうしよこれ……」<br>　手に持った小刀に視線を落とす。再び封印を施して今は微弱な霊力しか感じないがそれでも持っているだけで肩が強張る気がする。<br>「だからそんな気にすんなって」<br>「気にするわよ……」<br>　学校からかなめの家へ向かう最中。未だにぶつぶつと文句をつける彼女を適当になだめながら夕暮れのあぜ道を歩く。意外と距離があり、村の中心近くにある学校から既に一時間近く歩いていた。<br>「けっこう離れたとこにあるんだな」<br>「この辺りは開発されてないからね。というかもともと田んぼとか畑が多かったから手付かずだったほうをメインに開発していって今の街ができたって感じ。旧家の人たちはこっちに残ってたりするのよ」<br>　彼女の言うとおり、辺りにちらほらと見える家はどれも広大な平屋ばかりだ。<br>「ふーん。羨ましいような羨ましくないような」<br>「正直寮の部屋くらいのスペースで生活してるほうが落ち着くわよ」<br>「そんなもんか」<br>「そんなもんよ。一人ならね」<br>「つーかお前の家……、あれか」<br>「あれよ。見ればわかるでしょ」<br>「確かにな」<br>　周囲の家屋とは一線を画す大きさ。そして何よりも周囲に神経質なまでに張り巡らされた結界が激しく自己主張しているようにも見える。<br>「あれ何の結界？」<br>「大半が探知用だったはず。残りのほとんどは侵入妨害用」<br>「防御用は？」<br>「あんまりなかったと思うけど」<br>「そっかそっか。キサラ。出番だぞ」<br>「はいな」<br>　答えながらキサラが実体化する。気まずそうに彼女から離れるかなめは無視して、<br>「どれくらいでいきましょうか」<br>「いつものやつの一割未満で充分だろ。どう見ても」<br>「ですよねぇ。あーあ、どうせなら思い切りやりたかったところです……」<br>　唇を尖らせながら野太刀を抜き、ぶっきらぼうに鬼気を纏わせる。<br>「な、なんでそんなテキトーそうなノリでそんな凄まじいことしてるのよ……」<br>「えー、こんなのほんきのほの字の一画目すらでてないんですけど。あー、やる気でないです」<br>　ぶんっ。家の方を見もせずにぞんざいに野太刀をなぎ払う。ダンジョンでボスエリアを手前から押しつぶしたのと同じ攻撃。だが規模は比べようもないほど小さい。一本の巨木が地面を這うように横向きに急速に伸びていく。<br>　結界に突き刺さり、霊気の火花はを散らしながらも巨木は成長を止めず、障害を食い破っていく。<br>「脆すぎです。余計やる気なくすんですけど」<br>　などと言っているとかなめの言った防御用結界にぶつかったのか、木が止まり、軋み始める。<br>「これが防御用ですか。ほら、頑張りなさい」<br>　木に触れ、直接鬼気を流し込む。前へ伸びることができない木が無理やり成長を促され、結界を覆うように枝葉を伸ばす。<br>「これが限界っぽいですかね。一応ちょっとは固いみたいで安心しました」<br>「どうするの？」<br>「私にタメ口で話しかけていいって一言でもいいましたっけ」<br>「え、あ、ごめんなさい」<br>「許してやれ。それくらい」<br>「うー。なんだかご主人様、その女狐に甘くないですか……？ この鬱憤は火にくべて晴らしましょう。結界燃やしますよ」<br>「あ、その木に火をつけるのね。なら私が……」<br>「誰があなたなんかの火使うっていうんですか」<br>　木に触れたままの掌から電流を迸らせる。空気を弾くような電撃音にかなめが肩を跳ね上げるのを鼻で笑いながら家の方へと電流を走らせていく。その後を追うように火線が滑り、間を置かずに結界を覆う枝葉までもが炎上する。<br>　霊気の火花が激しく散り、少しすると砂の城を崩すように結界が崩壊していく。<br>「こんなもんですかね。これで他に防御結界があってもおしまいでしょう。それではのんびり突撃と参りましょうか、ご主人様？」<br>「そうだな」<br>「え、え、今の電撃？」<br>「そうですけど？」<br>「嘘、そんなの初めて見た……」<br>「まぁ人間様に扱えるシロモノじゃないですし。そんなことはどうでもいいのでさっさと行きますよ」<br>「あ、ちょ、ちょっと」<br><br>「何事だい」<br>　キサラの攻撃に慌てる屋敷の中。その最奥に鎮座する一人の老婆が駆けまわる若い陰陽師に声をかける。<br>「わ、わかりません！突然攻撃を受けたようです！」<br>「たわけ。そんなことはわかっておる。どんな攻撃を受けたかを答えんか」<br>　険しい声で叱咤を飛ばす。<br>「巨大な木によって結界に刺突、そこから木が炎上し破壊されました。目撃した監視役によると遠距離からの攻撃で攻撃した人間は発見できず、そして、鬼気を感じたと報告があります」<br>「鬼気だと？」<br>「間違いなく鬼気だったと申しています」<br>「……下がるがよい」<br>「はっ」<br>　若者が立ち去ったのを確認してから眉間に指を当て、思索にふけり始める。<br>「かなめが粗相をしたと思ったらこれか。何者か知らんがあの場にいた鬼だろうな。まったくあの役立たずは厄介事ばかり……」<br><br><br>「なんておばあ様は言ってるでしょうね」<br>　ぼやきながら自身に隠形をかけるかなめ。<br>「何やってんだお前」<br>「何って見ればわかるでしょ」<br>「ああ、やりたいならやれば？」<br>「何その言い方」<br>　そんなかなめを尻目に戦闘準備を始める朔とキサラ。<br>「なんであんたらはやらないのよ」<br>「俺できないし」<br>「私必要ないですし」<br>「いやキサラさんのはわかるけどあんたの理由は何よそれ」<br>「できないもんはできないの」<br>「こんなの基本でしょ……」<br>「うっせぇな。ほら無駄話してるから来たぞ」<br>　屋敷から出てくる様子を窺いに来た陰陽師が三人。<br>「さて、お前あいつらには勝てるのか？」<br>「……無理」<br>「そうか。じゃあ下がってろ」<br>　かなめを背中に隠しながら頭上で棒を振り回し辺りに呪いの墨を撒き散らす。<br>「キサラ」<br>「はいな。承知しておりますよ」<br>　返事とともにかけ出すキサラ。<br>「お、鬼!? ぐぁ！」<br>「な、ごぶっ」<br>　二人の下顎を峰打ちで砕き続け様に三人目に構える。すでに札を構え、符術の準備を終え、今にも放つところだが、<br>「おっそいですねぇ」<br>「な、何!?」<br>　その札を素手で握りつぶす。行き場をなくした霊力が暴れるのを鬼気で押さえつけながら一点だけ穴を作ってやる。術者の顔に向けて。<br>「ぶっ」<br>　自らの霊力の矢を受けて背中から倒れこむ。それとほぼ同時。屋敷から霊力を纏った矢が放たれる。鏃の金気を強化する金気の術式。<br>「油断したと思いました？」<br>　それを軽々と野太刀で切り払いながら屋敷へ突撃する。更に続けて、今度は数カ所から同時に放たれるそれを最小限のステップで躱しながら発射元へと駆け抜けていく。<br>「およ？」<br>　が、その足が止まり、今度は後方へ数回飛び退る。<br>「もう結界張り直したんですか。邪魔っけですねぇ」<br>　その場で射掛けられる矢を払いながら前進するのをためらっていると、別の場所から今度は朔に向けて矢が放たれる。<br>「おっと」<br>　まき散らした墨が反応し、吹き上がり矢の強化術式と威力を殺し、軽々と棒で叩き落とす朔。<br>「どうします？ ご主人様？」<br>「あー、叩き斬れ。構わねぇよ」<br>「ちょっ!?」<br>　彼の指示に後ろのかなめが声をあげる。<br>「……どこまで斬りましょう。やり方次第じゃ何人か死ぬと思いますけど？」<br>　一応といった感じで確認。<br>「加減しろ」<br>「はいな。ご命令とあらば」<br>　矢を切り払うのをやめ、全身に鬼気を纏わせながら上段に野太刀を構える。<br>「はーい。玄関ぐらいまで斬りますから離れててくださいなー」<br>  二歩助走し、真っ直ぐに刃を振り下ろす。鬼気も纏わせないただの斬撃。それでも結界を切り裂き、余波だけで門扉から十数メートルは離れている玄関までさっくりなどと言った表現が似合うほど綺麗に切り開かれる。<br>「こんなもんですかねぇ。おっと忘れてました」<br>　ついでと言わんばかりに野太刀を振り回し、的確に矢が放たれていた場所を斬り潰す。<br>「まぁ死んでないでしょう。こんなものでいかがですか？」<br>「上出来だ」<br>「だ、誰も死んでないわよね!?」<br>「死んでないです。私がご主人様のご要望に答えないわけないじゃないですか。バカにしてるんですか？」<br>「う、ご、ごめんなさい」<br>「まぁいいだろ。玄関も開いたし乗り込むぞ」<br>　悠々と正面から屋敷に入る。見るも無惨に真っ二つにされた大きな玄関。<br>「さて、どっちに行くんだこれ」<br>　そこからつながる左右中央の三つの廊下。どれもすぐに曲がっていてどれが奥につながっているのか分からない。<br>「えっと、左のそれが土間。右のが客間」<br>「じゃあ真っ直ぐか」<br>「そこを左が台所で右が居間よ」<br>「あーもーめんどい。案内しろ」<br>「わかったわよ」<br>　かなめに先導させて屋敷を進む。右へ左へ左へ右へ。段々と方向感覚を失くしていく構造をしている。<br>「あ、ご主人様」<br>「ん」<br>「え？」<br>　何度目かの丁字路に差し掛かったところで唐突にキサラが声をかける。すぐさま足を止める朔と釣られて振り返るかなめ。そのかなめの頬を何かがかすめる。<br>「ひゃっ」<br>「止まるなバカ」<br>　飛び上がるように縮み上がるかなめの頭を上から押さえつける朔。その腕を再び飛んできた何かが抉る。<br>「ちっ」<br>「ご主人様！大丈夫ですか？」<br>「気にすんな。このバカの面倒見てるからお前潰してこい」<br>「はいな。二十秒で戻ってまいります」<br>　何かが飛んできた方へキサラが駆け出す。<br>「な、何？ 何？」<br>「何じゃねぇよ黙ってろ」<br>　今度はかなめの腕を引いて丁字路から身を隠す。キサラがかけて行ったのと逆方向から飛んでくる何か。<br>「水か」<br>「み、水？」<br>「黙ってろって」<br>　彼女を抱き上げながら更に数歩下がり、空間を裂くように飛び来る水の弾から身を隠す。と、足元から水音がする。<br>「ああ、もうめんどくせぇ！」<br>「きゃぁ！」<br>　鋭く息を吐きながらかなめを肩に担ぎ上げる。<br>「ちょ、ちょっと!?」<br>「うっせぇ！次その口開いたらこの棒突っ込んで黙らせるぞ！」<br>「ご、ごめんなさぁい！」<br>　などとやりあっている間に既にくるぶしまでが水に使っている。しびれるような感覚とともに水に触れているところから霊力が流れだしていく。<br>「呪い……、はダメだな。くそっ」<br>　呪いを流し込むことも考えるが水の量を考えると無駄が多すぎる。背負っていた棒を床に突き立てるように斜めに立てかけ、その上に足を乗せる。<br>「これで少しは保つか……・。つーかお前重いなおい」<br>「殴るわよ……！」<br>「殴ったらこの水のなかに放り投げるからな。つーかなんだよコレ」<br>「知らないわよ！こんなの見たことないもん！」<br>　などと言い合っていると追い討ちをかけるように正面の壁から水が染み出し、飛沫が弾丸のように彼らを狙う。<br>「うぉ！」<br>　水の中へ飛び込まざるを得ない。斜め後方へ下がりながら足で棒を引っ掛け、手元に引き寄せ避けた先で先ほどと同じように立てかけ水から逃れる。<br>「くそ、かなめ、我慢しろよ」<br>「え、な、何……。やん！」<br>　担ぎあげていたかなめを降ろし、抱きしめる。<br>「ななななな、何何何!?」<br>「我慢しろつってんだろ」<br>　廊下の中にそよ風が舞う。それが渦を巻き、つむじ風となって二人を包み、風が呪いの墨で染まる。水墨画に描かれる風が現出したような厳かな風が水弾を消し飛ばし二人を守る。<br>「なに……これ……」<br>「悪いな。しばらくこのまま我慢してろ。離れられると霊力消費増えてキツイ。キサラがなんとかしたらすぐ離してやるから」<br>「う、うん……」<br></font>
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<pubDate>Sat, 07 Jun 2014 12:17:33 +0900</pubDate>
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<title>桜咲かせよ　鬼が為＜本編二章7＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br> 山を降りて学校に向かう。もちろんキサラの実体化は解き、変態は置いてきた。<br>「なんで学校？」<br>「すぐっつっても最低限の用意とかくらいいるだろ。まだ昼だし夕方からだな」<br>「そう。夕方ね……」<br>「お前もそれまでに準備しとけよ。行くんだろ？」<br>「うん」<br>　校門前で別れてそれぞれ男子寮と女子寮に向かう。<br>「ご主人様。あの子……」<br>「目見ればわかるよ。まぁ確実に先に行くだろうな」<br>「どうします？」<br>「もう対処した」<br>「申し訳ありません。愚問でした」<br>　部屋へ戻り、白紙の札と首飾りを用意して、野太刀の手入れをしつつ、買い込んでおいたカップ麺をすする。<br>「それやめたほうがいいと思うんですけど」<br>「何が？」<br>「体に悪そうです。私は食べたいと思わないんですけど」<br>「別に食いたいわけじゃないしな。ただ腹に何か詰め込んどきたいだけだし」<br>「明日は私が用意しますね。お米持ち込めば山にあるのでどうにでもできますし」<br>「そりゃいいな。頼む」<br>　と、話しているとどたばたと駆けてくる足音が聞こえる。<br>「ちょっと朔！いるんでしょ！」<br>「いるよ」<br>「開けなさい！」<br>「開いてる。来ると思ってたから」<br>　ドアを蹴破らんばかりの勢いで乱暴に開けて現れるかなめ。<br>「あんたねぇ……！」<br>　思い切り朔を睨みつけながら足音を鳴らしながら近寄ってくる。<br>「ちょっと静かに歩け。下の部屋に響くだろ」<br>「あ、そ、そうね」<br>　怒っているはずなのにそういうところには気を使うのだった。<br>「どうせ部屋に戻ったふりして学校出ようとしたらあの変態が待ち構えてたって話だろ」<br>「やっぱりあんたの仕業ね……」<br>　帰り際に置いていくふりをして学校の近くに待機させていた鬼に見つかったようだ。予想通りと言ったところか。<br>「はぁ。先走り過ぎ。お前一人で行って勝てる相手かよ」<br>「そ、それは……」<br>「あのな。確かに勝てる相手だよ。けどそれは俺にキサラ、お前を足止めしたあいつがいるからって話な。お前一人の戦力なんてたかが知れてんだよ。ちゃんと理解しろ」<br>「ぐ……でも……」<br>「でももへったくれもあるか。自分と相手の力量くらい理解しろ」<br>「まぁ仮に人質になったりしてもメス犬一匹程度無視しますけどね」<br>　聞こえていないのをいいことにあっさり見捨てる発言をするキサラ。そちらにため息をつきつつ棒でかなめの額を小突く。<br>「まず頭冷やせ。ちゃんと考えろ。な」<br>「…………うん」<br>　無言で拳を握りながら頷いたかなめに笑いかけながら椅子を勧め、食べ終わったカップ麺の容器を片付けて自分はベッドに腰掛ける。<br>「お前もうちょっと頭使えばいいのにな」<br>「人のことバカみたいに言わないでよ」<br>「実際バカだろ」<br>「なっ」<br>　面と向かって言い切られて思わず言い返すこともできない。<br>「すぐ頭に血が上って猪突猛進になる辺りとかな。俺よりいいもん持ってるのにもったいない」<br>「このメス犬がご主人様に勝るところとかありましたっけ」<br>「茶々入れんなよ。俺より術に幅あるし使える霊力もでかいんだしさ」<br>「なんか、あんたがそんなこと言うのって意外ね」<br>　目を丸くしながら朔を見つめる。これまでこっぴどく扱われていたためかかなり驚いている様子だ。<br>「俺を何だと思ってんだよ。キサラと違って褒めるところは褒めるぞ」<br>「て、ていうかね。今もいるのよね」<br>　落ち着いてそのことを思い出したようだ。体を小さくしつつそんなことを聞く。<br>「いるぞ。ここに」<br>　ふわふわと傍らに漂うキサラを指差す。「この指とーまれ」などと言いながら指を握られるが無視。この状態のキサラにも一応触れられるが体温などは一切感じない。キサラが実体化したときにくっつきたがるのはこれが理由らしい。<br>「う、えと、け、敬語使ってないって怒ってない？」<br>「気にすんな。俺は気にしてないから怒るなよキサラ」<br>「むー。ご主人様がそう言うなら……」<br>　朔の言葉にほっと息を吐きながら肩から力を抜く。面白くなさそうに頬を膨らませながら彼の指を握ったり離したりして遊ばれるのをそのままにしながら、とにかく、と話を戻す。<br>「ちゃんとやることやれば呪術に関しちゃ俺より上だよ」<br>「やること……？」<br>「考えて動け」<br>「考えて……」<br>「何度も言うけど遠距離術式が得意なのに相手が近くにいるとこで戦い始めたり、何かやるたびにそれにしか目が行かなくなって周りが見えなくなったり、そういうのをやめろって話」<br>「う、うん……。確かに今なら頭悪いと思う……」<br>「わかってるなら直せばいいんだよ」<br>「懐かしい話ですねぇ。私がお仕えし始めたくらいの頃にそうやって自分に言い聞かせてましたっけ」<br>「うっせーな。いちいち思い出すな」<br>「何が？」<br>「こっちの話」<br>「ああ、そういうこと。知らないやつから見たら独り言よね」<br>「まぁ気にしないでくれ。で、もう先走ったりしないよな」<br>「うん。ごめんね」<br>「…………」<br>　かなめの口から出た言葉なのかと確かめるようにキサラと目を合わせる朔。<br>「な、何よ」<br>「いや、意外と素直なんだなって」<br>「なんでよ」<br>「人に向かっていきなり槍ぶん投げて喧嘩ふっかけたくせに」<br>「あ、う、ごめんなさい」<br>「まぁいいけど。そんじゃ俺時間まで寝るから」<br>「わかった」<br>「…………」<br>「…………」<br>「いや出てけよ」<br>「え、なんで……？」<br>「これひょっとして素で言ってるんでしょうか？」<br>「さ、さぁ？」<br>　戸惑いながら顔を見合わせる。<br>「寝てる間ここにいるつもりか？」<br>「どうせ一緒に行くならここで待ってたほうが早くない？」<br>「そうだけど。そうなんだけど。そうじゃない。問題はそこじゃない」<br>「何？ 何が言いたいの？」<br>「寝るから出てけ」<br>「だっていちいち部屋戻って待つの手間だもん。ここにいたって一緒じゃないの？」<br>　正論、でも正論じゃない。頭を抱えて言葉を詰まらせる。<br>「……無理。キサラ任せた」<br>「できるならとっくに叩きだしてます」<br>　満面の笑みで青筋を立てるキサラだが、今は無力だ。もう面倒臭くなったので放置することにする。<br>「ああ、もういいや……。寝よ……」<br>「おやすみ」<br>「はぁ」<br>「ああ、私とご主人様の愛の巣が……」<br>「愛の巣ちゃうわ……」<br>　無駄な疲れと共にベッドに潜り込むとそのおかげかすぐに眠りに落ちることができた。嬉しくなかった。<br><br>　珍しく夢も見ないで眠った気がする。アラームの音で目を覚ますとものすごい不機嫌そうなキサラがベッドの隣でかなめを睨みつけていた。<br>「おはようキサラ」<br>「あら、おはようございますご主人様」<br>「ん、おはよう朔」<br>「ああ……」<br>　体を起こすとそれに気づいたかなめも声をかける。ずっと椅子に座って待っていたらしい。それが癇に障ったのかキサラの頭からぶちっと音がした気がする。<br>「私の……私だけのご主人様の寝顔……寝ぼけた声……コロス……コロス……」<br>　ついでに怨嗟の声も聞こえる気がするが努めて無視。<br>「ほんとにずっとここにいたのかよ」<br>「いたけど……。あんたの部屋何もないのね。結構暇だった」<br>「だったら戻れよ」<br>「でもこれ見てるのはちょっと面白かったから」<br>　そう言って持ち上げる呪いの墨染めの棒。<br>「勝手にさわんなよ」<br>「あ、ダメだった？」<br>「いいけど……。何が面白いんだよ」<br>「木自体の持ってるのとあんたの霊力とは感じるけどそれ以外の術式とかはまるで見当たらないのに解析術式走らせようとしたら全部キャンセルされるんだもん」<br>「ああ、そういうこと」<br>　朔の呪いのことは知らないのだから当然だろう。<br>「朝のときも私の槍消えるし火の竜巻とかも消してたし……。あれ何なのよ」<br>「教えなくてもいいだろ。別に」<br>「気になるもん」<br>「自分で調べろ」<br>「じゃあこれ貸して」<br>「だめ」<br>「うー、調べられないじゃん……」<br>「そういえば」<br>　そんなやりとりでふと思い出す。かなめの式神はキサラが出てきた端から潰していたが、まだ手持ちはあるのだろうか。<br>「もうない」<br>「ないのかよ」<br>「鎧武者が手持ちで一番強かったし……。そういえばあれ壊れたのは消されたって言うより潰されただったけど」<br>「キサラだよ」<br>「やっぱり……」<br>「他になんかねぇの？」<br>「ない……。式神ばっかりで符術とかはあんまりだし……」<br>「はぁ。しょうがねぇ。その棒はやれねぇけど」<br>　クローゼットまでのそのそと動きごそごそと上部の棚に隠したものを漁る。<br>「えーっと」<br>「まさかそれの中から何か渡す気ですか？」<br>「そうだけど」<br>「うぅ。ご主人様のためにと山の妖怪たちから必死で巻き上げたのに……」<br>「必死っていうほどじゃなかったろ。つーかめちゃくちゃ楽しそうだったし」<br>「それはもう楽しくて楽しくて仕方なかったです。涙目で一族の宝物渡すときの顔とか見ててとても気持ちよかったです」<br>　鬼のような発言である。鬼だが。<br>「えーっと、これはでかい。これは俺も使えるからダメ。かなめ、お前何の属性？」<br>「火」<br>「火ね。ああ。こいつでいいか」<br>「うわ、それ神刀の類ですよ？」<br>「使わないし。お前も使わないだろこれ」<br>「使わないですけどー。でもー。こんなメス犬に……。いや、私だけの寝顔を盗んだし女狐？ あ、ちょうどいいかも」<br>「ほれ、かなめ」<br>「なに？ ひゃ！」<br>　朔から放り投げられたものを慌てて両手で受け止める。それは鞘に収まった小刀。荘厳な装飾の施された拵え。半分ほど抜くと、刀身は涼やかに、そして紅く輝いている。<br>「何、これ？」<br>「小狐丸」<br>「ふーん……はぁ？」<br>　定型文のような驚き方で、朔に食ってかかる。<br>「ちょ、ちょっと!? こ、こ、小狐丸!?」<br>「小狐丸」<br>　ある刀工が朝廷から命じられた刀の作成に行き詰まった時、その氏神である稲荷明神が手を貸し、打ち上げたとされる日本の宝刀の一つだ。<br>「なんであんたが持ってんの!?」<br>　物凄い剣幕で襟首を掴まれ前後に振られながら答える。<br>「なんでって、キサラが山に住み着いた稲荷の妖狐たちからぶん取ってきたから……」<br>「なんてことしてんの!? 神様のお使いよ!?」<br>「使えそうな武器欲しいって言ったら勝手に取ってきたんだよ」<br>「なんで!? なんで神の使い相手に取ってきた程度なの!?」<br>「知らねぇよ。山で修行してたら『ちょっとお花摘んできますね』って言ってどっか言ったと思ったらどっかから拾ってきたみたいなノリで『お稲荷さんからもらってきました。油揚げよりは使えると思いますよ』って」<br>「はああああああああああ!?」<br>「でもそれ俺が使うと性能発揮しないしキサラの鬼気流し込んだら無駄に燃え上がって扱いにくかったし」<br>「使えたら風と火で結構いろいろできたんですけどねぇ。つーか女狐、いつまでご主人様に掴みかかってるんですか。その指ねじ切りますよ。聞こえてないけど」<br>「こんなもん畏れ多くて使えないわよ！」<br>「こんなもんって」<br>「こんな凄まじい宝剣畏れ多くて使えないわよ！」<br>「言い直すのかよ」<br>「言い直すわよ！」<br>「まぁいいから持ってろって。ただ装飾凝ってるだけの飾りじゃねぇしその大きさならお前でも使えるだろ」<br>「使えないわよ！持つのもなんか恐縮よ！」<br>「使わない道具に意味なんてないだろ。いいから持ってろ。持ってるだけでご利益ありそうだろ」<br>「逆に祟られそうだわ！経緯が経緯だけに余計に！」<br>「ずっとそこに放置してたけど特に何の祟りもなかったよ」<br>「ていうか何でこんなもん置いといてばれないのよ！」<br>　神の手を借りて作られた刀。つまりそれだけで強大な霊力を帯びている。そう言う今も発している。なのになぜ誰の目にもつかなかったのかというと、<br>「ご主人様が呪いで弱めた上で私が適当に封印しましものね。流石にあんな埃っぽいところにそんな状態でほっといても錆びついたりしてない辺りは認めてあげるべきでしょうか」<br>「ほら、キサラが説明したぞ。納得したか」<br>「聞こえないわよぉ！」<br>「さっさと受け取って隠さないとそろそろ気づいた先公が駆けつけてくるぞ」<br>「嫌よ！かくして！」<br>「じゃあ受け取れ」<br>「わかったわよぉ！」<br>　朔の押し売りのような言動に怒っているのか泣いているのかわからない顔と声で仕方なく承諾して受け取るかなめだった。<br></font>
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<pubDate>Sat, 24 May 2014 06:45:28 +0900</pubDate>
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