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<title>森の小径</title>
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<title>ソロクライマー３</title>
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<![CDATA[ <p>　隔たりというよりも、岩尾は我々とは別の場所で、別の生き方をして来た者のように思える。いや、こんな言い方では何かか不足している。言いきれていない。</p><p>　まだ２度しか会っていないし、会話と言えるほど言葉を交わした訳ではないけれど、その違いだけははっきりと感じている。</p><p style="text-align: left;"><br>　我々はいつも何かに追われているかのように、絶えず忙しく生きている。何がしらのノルマがあり、義務があり、成果が求められ、富裕だったり貧しかったり、愛を求めたり、あるいは注いだり、資産を比較したり、強奪したり、妬んだり、たまには優しかったり、親切を施したりする時もあるけど、概ね計算高く意が悪い。誰もがそんな臭いや濁った色をしている。触れたくもないほどザラザラした感情を持て余している。</p><p style="text-align: left;">&nbsp;</p><p style="text-align: left;">　だが岩尾にはそんな色や臭いが感じられなかった。でも美しいかと言うと、これも外れている。今の私の言語力では表現することができない。とりあえず、魅力はあるがつかみどころがない男、と言うに留めておこう。</p><p style="text-align: center;">&nbsp;</p><p style="text-align: center;">&nbsp;</p><p style="text-align: center;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20200205/00/sibacco/d3/fe/j/o0448033614707929042.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="315" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20200205/00/sibacco/d3/fe/j/o0448033614707929042.jpg" width="420"></a></p><p style="text-align: center;">&nbsp;</p><p style="text-align: left;">　結局、宮園の意見が会議の方向を支配し、岩尾が登るところを見てみよう、ということになった。</p><p style="text-align: left;">そう決まってから、私は、岩尾翔太という名前だけで、連絡先も知らなかったことに気付いた。</p><p style="text-align: center;">&nbsp;</p><p style="text-align: left;">「動画はおろか、証拠になる写真すらもなく、しかも連絡方法も知らないなんて」と、都筑が私の方を見ずに言った。</p><p style="text-align: left;">私が困っていると、<br>「塩原さんが岩尾翔太君と会った同じ曜日と時刻に山に行って、会うしかないですね。何週か通えば、きっと会えますよ」、と仁藤志穏が話を収拾してくれた。</p><p><br>　でもいったい何度通えば岩尾に会えるのだろうか？<br>　たった２度しか会っていないのだ。しかも曜日も時刻も違う日に偶然に会っただけなのだ。<br>　私が岩尾と会ったのは会社が休みの土曜日と、半日休暇を取得して登った水曜日の午後だった。水曜日はみんな仕事があるので、土曜日の昼前から交代で竜神沢のＦ１で待つことにした。私は岩尾ついて、知ってる限りのことをみんなに伝えた。</p><p><br>　この例会の日から、私は心のどこかに汚点のようなものの存在を感じるようになっていた。<br>早く岩尾に会って彼のクライミングを見てもらわねば・・・</p><p>&nbsp;</p><p>でも、私が思ったよりも早く、その日はやってきた。<br>仁藤志穏と都築が組んで登った例会から3週目の土曜日だった。</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12572841934.html</link>
<pubDate>Wed, 05 Feb 2020 00:55:55 +0900</pubDate>
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<title>ソロクライマー２</title>
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<![CDATA[ <p>　私は、岩尾がF1を登る様子をできるだけ詳しく話した。それでも都築は認めなかった。<br>「そんなやり方で登れるわけがない。俺の身長でも左上のホールドは届かなかったから、あそこにボルトを打って、それを掴んで登ったんだから、な、そうだよなシオン」<br>　都築は３つ年上の志穏に対して先輩のような口ぶりで言う。興奮するといつもこうだ。しかし私は動揺しなかった。むしろ喜んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;例会で報告するにあたり、私にはひとつの考えがあった。これを報告すれは都築が否定するのは容易に想像できた。でも否定だけで終わらせたくなかった。都築の負けず嫌いな性格を刺激して話を先に進めたかった。つまり、都築や仁藤たちにやる気を出させ、竜神沢に本気でトライさせたかったのだ。そして最終的には・・・</p><p><br>「でも私は見たんだ。この目で。君たちが登れなかった竜神沢のF1をフリーソロで登るのを」<br>　君たちが登れなかった、と言う時に意識的にトーンを上げた。<br>「登れなかったんじゃない！」と都築は荒げた声を上げた。<br>「失礼、登ったんだったね。アブミを使ってね」と都築をさらに刺激し、苛立つ都築の表情を確認して<br>「しかも、岩尾君はF2もフリーで登ったと言ってる」と言った。</p><p>都築は悔しさを通り越して言葉も出せず、紅潮した顔で私を見ていた。</p><p>&nbsp;</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20200201/00/sibacco/4a/66/j/o0336039614705601834.jpg"><img alt="" height="396" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20200201/00/sibacco/4a/66/j/o0336039614705601834.jpg" width="336"></a><br>「そんなに強いクライマーがいるなら、誰かが知ってると思うんだけど、そんな話は聞いたことはないし、山岳連盟の会議でも出なかったし、まして、うわさ話すらないな」と、宮園が言った。<br>　会の重鎮である宮園の発言で、都築が息を吹き返した。<br>「そんな危険な登りを塩原さんは何で放置したんですか?」と都築は私を非難し始めた。都築は、私が会長になった当初から、私を会長とは呼ばなかった。しかし私は落ち着いてした。むしろ、都築が興奮すればすするほど平静になるのだった。</p><p><br>「山岳指導員としてあるまじき事だと思っているよ。すまない。でも、その時に私はロープを持ってなくてね。彼にロープを出してくれ、と言った時には、既に彼は岩に取り付いていたんだ。取り付くのも速かったけど登るのも速く、瞬く間のことだった」これは本当のことだった。<br>「すまない、じゃすまんでしょう。いつも俺たちに、安全にって、しつこいほど言ってるくせに」<br>いいぞ、その意気、と私は思ったが、例会には気まずい雰囲気が蔓延り始めた。</p><p><br>「まあ、一度見てみようや」と、仁藤志穏は苦笑いをしながら言った。<br>「そんなに凄い奴なら見てみたいよ」<br>「そうだよね。自分が登れなかったところを、無名の、しかもどの会にも所属しておらず、道具の使い方も知らない奴に登られたのだからな～都築君が興奮するのもわかるけど、一度見せてもらおうか、F1だけでなく未踏のF2もね」 宮園が言った。</p><p><br>&nbsp; もう未踏ではないけどね、と私は思った。上から喋る宮園の口ぶりにも、いい気はしなかった。<br>岩尾翔太の何の陰りもない笑顔が思い出された。岩尾の笑顔と、この会の人たちとの間には、何か大きな隔たりがあるのを感じた。</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12571627827.html</link>
<pubDate>Sat, 01 Feb 2020 00:23:25 +0900</pubDate>
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<title>ソロクライマー</title>
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<![CDATA[ <p>　翔太が振り返った。<br>「君、ロープ持ってる？」<br>「ええ、ボッカの重し代わりですけど、持ってますよ」<br>「私がビレイするから、時間があるならF1を登って見せてもらえないだろうか？」<br>断わられるだろうな、と思いながら私は言った。<br>「いいですよ。でもビレイは必要ありません」<br>と言いながら、翔太はさっき見せてくれたスリングのセットされたハーネスをザックから取り出した。それを見ただけで反射的に背筋が寒くなった。クライマーとして、そんな危険なクライミングを見過ごすことはできなかった。まして私は山岳指導員として指導をしている立場なのだ。</p><p><br>「お願いだからビレイさせてくれないか」<br>とは言ったものの、私はビレイに必要なハーネスもデバイスも所持していなかった。私も若い頃は、ロープや登攀道具を重し代わりにザックに入れて登っていた。自分のていたらくを今さらながら悔やまれた。<br>　私が現役のクライマーだった頃にはATCに代表されるようなビレイデバイスなどまだなく、ロープを肩や腰に回し、その摩擦でクライマーの落下を止める、肩絡みや腰絡み、というビレイが主流だっだ。それだったら何とかなるかも、と思ってF1の基部に向かった。</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191220/15/sibacco/1f/7a/j/o0448033614681932073.jpg"><img alt="" height="315" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191220/15/sibacco/1f/7a/j/o0448033614681932073.jpg" width="420"></a></p><p>　翔太はすでにハーネスを着けていた。<br>「すまないが、ロープを貸してくれないか」<br>「大丈夫ですよ」と言うが速いか、翔太はF1に取り付いた。<br>私が「ちょっと待って」と、言った時には、すでに背丈ほどの高さにいた。速かった。しかも動きに無駄がなく、力みも、ましてや緊張すらも感じられなかった。散歩にでも行くようだった。驚いている場合ではなかった。こうなったら、登り方を一部始終見届けよう。<br>　翔太はもうすぐ、都筑たちがフリークライミングで登れなかった箇所にさしかかる。右手が立てにできたフィンガークラックに射し込まれた。左手でハーネスにセットされたスリングのカラビナを掴み、すぐ上に打たれたボルトのハンガーにクリップした。そこから次のホールドとなる左上の岩角へは手を伸ばしてもまだ30～40cmほど届かない。<br>　都筑たちはそのハンガーにアブミをかけて登ったらしい。身長が180cm近い都筑でさへ届かなかったホールドなのだ。翔太はどうするのか？<br>普通だったら距離を出しやすいカウンターという、手足を対角に使うムーブでランジ（飛びつく）するが・・・<br>　翔太は私の意に反して右手をクラック右足をその下の小さな岩角に乗せ、体が左に傾く不安定な恰好になっていた。左足側はスラブ状になっていて、スタンスホールドはどこにもなかった。<br>（どうしようというのだ、あれではランジしても距離が出ないからだめだ。落ちる！）と思った。翔太の全体重があの未熟なスリングとハーネスにかかり、その衝撃を想像すると冷や汗が出た。<br>　そんな私の心配をよそに、翔太は足場となるスタンスホールドから見放された左足を弄ぶようにブラブラと振っている。<br>「ちょっと待って！」と私が声をかけるよりも速く、翔太は左足を大きく動かし、振り上げるタイミングに合わせて右足で翔んだ。<br>一旦沈んだ体が振り子のように弧を描きながら左上に浮くように跳び出した。<br>一瞬の出来事だった。息をするのを忘れて見ている私の上で、宙に浮いた翔太の体が揺れていた。左手は岩角を掴んでおり、右手はクラックに残っていた。右に左に揺れた体が左に戻る動きに合わせて、右手をクラックから抜き、左手の横に添えた。そしてぶら下がったままの格好から、右足をクラックに射し込んで固定し、体を引き上げ、右手で上のガバホールド（指全体がかかる掴みやすいホールド）を掴んだ。<br>　何ということだ。翔太がやったのはサイファーという片手片足で飛び付く高度な動きなのだった。用具の使い方も知らない翔太が知っているはずもなかった。たとえインターネットや本などで知ることはできても、簡単に習得できるものではない。エキスパートが使うムーブなのだ。しかも小動物のようにためらいもなく軽々と！<br>　私は、確かに目の前で起きたことだけど、それを整理しきれずにいた。映像は記憶されているが、頭の何処にも受け入れる場所を持ち合わせてはいなかった。<br>　呆気に取られている私に向かって「F2も登りますか？」F1の上から翔太が言った。<br>私は声を出すことができず、目の前で手を振って断った。もっと困難であろうF2<br>のクライミングを思うと、心臓が止まるかもしれない、大袈裟でなく、そう思った。<br>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;<br>　翌月の例会で、その日のことを報告した。都筑は「そんな奴はいない」と、はなから信用しなかった。</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12561053788.html</link>
<pubDate>Fri, 20 Dec 2019 15:57:19 +0900</pubDate>
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<title>単独行</title>
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<![CDATA[ <p>　私の所属する山岳会は３年後に設立３０周年を迎える。設立の年にはネパールの６０００メートル峰に登頂した。以来、１０年毎の節目の年にはアラスカやアフリカの山に遠征を行ってきた。３年後に３０周年になるというのにまだ何のプランもなかった。</p><p>　会員数の減少と高齢化により、会の活力は低下していた。どこの会も同じように尻すぼみの状況だった。懇親会や忘年会などには出席者も多く、昔話で賑やかになるが、山行となると参加者が極端に少なくなる。<br>　長老達からは、まだプランも出てないのか、と非難されるのだが、３０周年行事の中心となるべき年齢層の口からは、イベントに見合ったプランは出てこなかった。海外遠征となると、準備作業や資金調達、それに長期休暇の取得などの課題を解決しなければならなかった。</p><p>　会員は殆どがサラリーマンであり、子育てにお金が必要な世代でもあるので仕方がなかった。加えて、実働者となるであろう３人の若者は、海外遠征はもとより国内の冬山、それに夏山であっても重い荷物を担いで登るような山にはほとんど興味を示さなかった。</p><p><br>　若者達は、普段は市内のクライミングジムで遊び、週末はSNSで連絡を取り合って、近郊の岩場でボルダリングとショートのリードクライミングなど、日帰りでできることばかりをやっていた 。幕営技術の習得さえも怪しいものだ。こういった風潮はどの会も似たり寄ったりだった。むしろ会に所属してやっているだけでもいい方だと思った。</p><p>&nbsp;</p><p>　最近では、何も無理して海外に遠征することはない、と私は思うようになっていた。しかし、国内であっても長老達を納得させるだけの企画は必要であった。</p><p>とはいっても、会員に魅力のないものを押し付けることはやりたくなかった。今の若者達がやりたくなるようなプランがないものかと考えているうちに日にちだけが過ぎていった。<br>　そんな時に都筑がR沢の未踏の滝の話を持ってきたのだった。もちろん、記念イベントにするにはほど遠いものであったが、久しぶりに若者から発案された企画であった。<br>それをずーっとずーっとずーっと延長していけば、何かが見えてくるのでは？と淡い望みを持っていたし、心ののどこかでは、できないならできないでもいい、と居直った気持ちもあった。</p><p>　いつの間にか紅葉の季節になり、仕事もそろそろ忙しくなりつつあった。私たちの若いときには冬山の登山のためのボッカ訓練をしている時期だった。</p><p>&nbsp;</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191208/22/sibacco/33/43/j/o0577043314665801175.jpg"><img alt="" height="315" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191208/22/sibacco/33/43/j/o0577043314665801175.jpg" width="420"></a><br>　<br>　私はいつものデイパックを担ぎ山道を歩いていた。放っておけばストレスに成長しそうなモヤモヤとしたものを汗や吐息と共に山に吸い取ってもらうためだった。高度を上げて行くにつれ、黄色や赤い葉を付けた木々が見られるようになってきた。毎年繰り返されることではあるが、赤く染まったハゼの木や黄色に映えるカツラの木を前にすると、喜怒哀楽などの感情を持っているのではないかと、思わず息を飲んだ。</p><p>&nbsp;</p><p>　R沢が近付いてきたが、水音は聞こえなかった。今年の夏は少雨だったので、早く涸れたらしかった。<br>男が沢を見ていた。大きなザックを脇に置いていた。その大きさからいって２０㎏は越えているだろう。何を入れているのだろうか？パーンと張られた凸凹のないザックは見ていて気持ちが良かった。それだけで男の力量が伺えた。<br>そう思った瞬間、稲妻のように心に走るものがあった。<br>「こんにちは」</p><p>　考えるより先に声をかけていた。雪を頂いた富士山が振り返った。<br>　私はすかさず「今なら登れるよ」と笑顔で付け加えた。すでに知り合いのような口ぶりになっていた。<br>「翔太君だったよね」と近づいて私は言った。</p><p>　翔太は思い出したらしく、ペコリと頭を下げた。が、翔太の次の言葉に私は驚かされた。<br>「先々週登りました」<br>「えっ！まさか一人で？」<br>「ええ」</p><p>　驚いてかん高くなった私の声と対照的に、翔太の声は平素の会話のように抑揚が少なかった。<br>「どうやって登ったの？」</p><p>　私の質問には半分、疑いが込められていた。</p><p><br>　翔太はザックを開け、ゴソゴソと奥の方からスリングとカラビナとハーネスを取り出しだ。カラビナがセットされた１mくらいのスリングが２本、ハーネスのビレイループに取り付けられていた。カラビナを握り「これを交互にハーケンに掛けながらのぼりました」<br>（こいつは素人だ。クライミングを学んだ者ならば、そんなやり方で登る者などいない）<br>たしかにF1（１番目の滝）については都筑たちが登った時にハーケンとボルトを打っていた。しかし、F2に関しては最も困難と思われるオーバーハングのある核心部までは到達していなかった。ましてやF3は手さえ付けいてない。</p><p><br>まさかとは思ったが「F2は登ったの？」と私は言った。<br>「F2？」と翔太は聞き返してきた。</p><p>（この男は滝の呼称さへ知らないのか）<br>「その滝から１５分ほど登ったところにある、この沢で一番高い滝だよ」と、呆れていた私は、翔太のさりげない次の言葉で、ちょっとしたパニックに陥った。<br>「ええ、そこともう一つ上のF3というんですか？それも先週、登りました」<br>「そこも同じやり方で？でもボルトがなかっただろう？」<br>「F1を登った日にF2とF3は下見をしていましたので、先週はハーケンとナッツを用意し、F2はハーケンを１ヶ所だけ打ち足し、すでに打ってあったハーケンとボルトを使って登りました。F3は真ん中あたりに岩の割れ目があったのでナッツっていうんですか？アルミでできた小さいおにぎりのような形をしたものを挟めて登りました。以前本で見て知っていたんですが、初めて使いました」</p><p><br>（何ということだ。想像するだけで恐怖が走った。私はすっかり冷静さを失い、言葉が見つからなかった）<br>私が黙っているので、翔太はハーネスをザックにしまい歩き始めた。<br>暫くして私は、また以前のように頂上では会えないかもしれない、と思い、慌てて翔太の背中に声をかけた。<br>「ちょっと待って！</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12554677925.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Dec 2019 23:40:09 +0900</pubDate>
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<title>翔太３</title>
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<![CDATA[ <p>　　まだ苔や草木の生えそろっていない滝は、立ちはだかっているように見えた。男はその岩壁に向かって合図でも送っているかような仕草をしていた。踊っているようでもあった。<br>　私はすぐにオブザベーションをしているのだな、と思った。<br>クライミングを知らない人が見たら、気が触れたと思われてもおかしくなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　オブザベーションというのは、クライミング競技に使われる用語で、課題が作られた競技用の壁を、競技の前に一定時間だけ競技者に開示することをいい、その際競技者は、壁を見ながら、あたかも登っているような仕草をする。登る手順や身体の動きをシミュレーションしているのだった。</p><p>　男は左手を伸ばしてジャンプした。伸びた左手が岩を掴むように握られた直後に右手がすぐ横に添えられた。</p><p><br>　私は男の動きが止まったのを見計らって「登るの？」と、声をかけた。男が振り返った。一瞬、驚いた様子だったが、すぐに、さっきの追い越された時の無垢な笑顔になった。白い前歯が印象的だ。男は何も言わず、照れたように頭を掻いた。<br>　邪心のかけらもない、新雪の富士山のような顔。この男だったら登れるかも、と思った。</p><p>　昨年、私の所属している山岳会の若者がこの沢に挑戦した。まだ誰にも登られていないことが知れ渡ってから、いくつかの会が登攀を計画し、ちょっとした初登争いになっていた。<br>　延長が２㎞ほどのこの沢には３つの滝があった。問題は、ここからは見えない二つ目の滝だった。２０mほどの、ほぼ垂直の滝で、上部が少しオーバーハング(手前側に傾いている)していた。<br>　その滝を発見したのは、うちの会の都筑という大学生で、例会の時に「まだどこの会も登っていません」と、興奮気味に報告していたのを覚えている。</p><p>　さっそく、その年の秋に会の３人の若者で挑戦したのだった。うちの会には若者は、その３人だけになっていた。<br>　今、見ている第一の滝は、アブミ(ロープとアルミのプレートで作った小さな梯子)などの器具を使って登ったものの、第二の滝は核心部と思われたオーバーハングまでも到達できずに敗退していた。</p><p>&nbsp;</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191119/00/sibacco/48/44/j/o1905218314643752021.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="252" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191119/00/sibacco/48/44/j/o1905218314643752021.jpg" width="220"></a></p><p>&nbsp;</p><p>　男は何度もランジという、飛ぶ仕草をしていた。フリーで登るつもりだ、と私は思った。（フリー：アブミや壁に打ち込んだボルトやハーケン等の人工物を使わずに素手で登ること）</p><p>「秋になると水が涸れるから挑戦できるよ」<br>私はあえて、登れるとは言わず挑戦と言った。<br>「どこの会なの？」と言いながら、山岳会の名刺を渡した。私は３年前から会長を引き受けていた。<br>「岩尾翔太と言います。どこの会にも入っていません」と言って、荷物を担ぎ、じゃあ、と頭を下げて登って行った。私はあっけにとられながらも、悪かったかなぁ、と思った。頂上で会った時にもう一度話してフォローしよう、と思い直して頂上に向かった。<br>　結局その日は岩尾と会うことはなかった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12546667097.html</link>
<pubDate>Tue, 19 Nov 2019 00:57:20 +0900</pubDate>
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<title>翔太 ２</title>
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<![CDATA[ <p>　標高が1,000mを少し越えただけの、けして高いとはいえないこの山だが近郊では最も高く、都市からの交通の便が良いということもあって、登山者やハイカーが多かった。大晦日の夜には御来光を拝むために数珠繋ぎの列ができる。<br>　私は、今でこそ数ヶ月に一度くらいしかこの山に来ないが、若い頃は週に１回は登っていて、年間60回を越えたこともあった。大げさに言えば、目をつぶっていても登れる山だ。<br>　サーモスをザックにしまい、私も登り始めた。登山道はすぐに尾根道の急登になった。直線で前方の見晴らしがいい。それだけに登りの長さがわかって、その日の体調によっては意気消沈することもある。<br>　男の姿はどこにもなかった。ここまでに脇道はない。そんなに速い？<br>&nbsp; 少し不思議に思ったが、トイレにでも行ったのだろうと思い直した。<br>　息が上がった。踏み降ろす靴音と呼吸が静かな森に吸い込まれていく。足の動きに合わせて呼吸をする。ボツッ、ボツッ、吐く、吐く。汗が顎を伝い、足元に落ちた。ボツッ、ボツッ、吐く、吐く。やがて、すべてがこの音と行為に占領される。<br>　思考や物思いや、頭の隅に隠れている嫌な出来事の記憶が、身体から離れていく。振り落とされていく。この時がいい。<br>　やっと緩やかな登山道に変わった。すぐ左には３年前の豪雨の時に森林を押し流してできた沢がある。登山道は一ヶ所だけその沢に接しており、そこが水場になっている。そこから先は再び急登になるということもあって、殆どの登山者がそこで休憩をする。最近、休憩用のばんこも設置された。<br>　男が立っていた。水場の先にある滝を見上げていた。雨が少ない秋から冬にかけては沢の水は涸れ、10m程の高さではあるが、垂直の岩壁になる。今は音を立てて水を落としている。</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: center;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191113/11/sibacco/e1/e6/j/o1536204814638699940.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="293" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191113/11/sibacco/e1/e6/j/o1536204814638699940.jpg" width="220"></a>&nbsp; 　次号をお楽しみに</p>
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<pubDate>Wed, 13 Nov 2019 11:54:22 +0900</pubDate>
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<title>フィクションが誕生しそう</title>
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<![CDATA[ <p>　一人の男が登ってくる。坂が急なので、顔は見えないが、荒い呼吸が聞こえる。かなりの速さだ。ずんずん近付いてくる。俯き加減なので、頭頂部しか見えない。私には気付いていない。</p><p>&nbsp; 私は脇に避けて道を空ける。私の足が視界に入ったのか、驚いたように男が顔を上げた。一瞬だけ困惑した表情をしたあと、すぐに破顔した。警戒心のかけらもない、飼い主の前で飛び跳ねる子犬のような笑顔。何も言わずに私の前を登っていった。</p><p>&nbsp; 男の笑顔は新鮮だった。あんなに無心な笑顔を見たことがなかった。</p><p>　</p><p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;想像はどんどん膨らんでいく。いっそのこと、ここからフィクションにしよう！<br>まず男に名前を付けよう。岩尾翔太。歳は２０～２５歳。<br>　</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: left;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191111/08/sibacco/21/5d/j/o0768102414636942498.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="560" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191111/08/sibacco/21/5d/j/o0768102414636942498.jpg" width="420"></a>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 次号をお楽しみに・・・</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: left;">&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12544251982.html</link>
<pubDate>Mon, 11 Nov 2019 09:01:22 +0900</pubDate>
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<title>「孤高の人」を読んだハイカーのブログデビュー！！</title>
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<![CDATA[ <p>　　自宅の近所の里山や低山に月に１、２回登っています。気が向いたときに写真を撮っているのですが、まとめて見てみると何故か山道の写真が多いことに気が付きました。</p><p>　　理由は分かりませんが、意識をせずに撮った結果そうなったのです。それはそれで面白かったので、いっそのことまとめてみようと思い、『森の小径』という名でシリーズ化することにしました。ブログデビュー記事の写真はその中の一枚を選びました。</p><p>&nbsp;</p><p>　　くねった小径が細くなっていきながら雑木の間に消えて行っています。じっと見てると、ひょっこり向こうから誰かが現れてきそうです。<br>　　私は、大きなザックを担いだ男の人が首に掛けたタオルで顔を拭いながら歩いてくる姿が想像されます。皆さんはどうですか？</p><p>　　人に限らず、うさぎや狸などの動物を想像する方もおられるでしょう。何を想像するかによって、その時の心理状態が伺えそうですが、あいにく、その能力は私にはありません。</p><p><br>　<a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20191025/22/sibacco/d6/c1/j/o2560192014623741777.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="465" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20191025/22/sibacco/d6/c1/j/o2560192014623741777.jpg" width="620"></a>　</p><p>&nbsp;</p><p>これからもぼちぼち写真と小文でブログを書いていきます。気にかかったら見てください。</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sibacco/entry-12539326221.html</link>
<pubDate>Fri, 25 Oct 2019 22:05:34 +0900</pubDate>
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