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<title>シゲとヤマのフシギなショートショート</title>
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<description>シゲとヤマが書く不思議なショートショート小説です。</description>
<language>ja</language>
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<title>言の葉②</title>
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<![CDATA[ <p>〈続き〉</p><p>&nbsp;</p><p>　サイトウは迷ったがついて行ってみると、店の奥にはさらに部屋があった。部屋の真ん中には机があり、机を取り囲むように部屋の四方の壁はすべて棚になっていた。棚にはすき間なく小説や絵本、雑誌や漫画、レコード、カセットテープ、CDなどさまざまなものが詰められており、もしこれらが棚からあふれ出してくればサイトウと店主もろとも埋められそうだ。それぞれのタイトルを見てみても「将棋の指し方」、「The　Beatles　2th　album」「柏三洋の現代落語！」などといった脈絡のないものばかりで、そんなものばかりがきっと1000はあるだろう。すべて店主のコレクションなのかと思ったとき、店主は机の上の方を指さした。</p><p>　そこには、茶色い鉢に入った30センチくらいの小さな木が置かれていた。初めから目には入っていたが観葉植物だと思い全く気にしていなかったのでどういうことかと思っていると、店主は「あなたが探していたのはこれでしょう。」と無表情で言った。サイトウは意味が分からなかった。またもやサイトウがぽかんとしているので、店主はすこしめんどくさそうに「言の葉の木です。」といった。店主はもうサイトウに反応は求めなかった。</p><p>「この木はこう見えても樹齢100年は優に超えているんです。もしかしたら2倍か、10倍かもしれない。その間木は一切の水を必要としません。代わりにいろんな言葉を聞いて育つんです。ここにある一本は、私の祖先にあたる5代前の店主が譲り受けてからはずっと古今東西の音楽を聴かせ、多様なジャンルの本を読み聞かせてきました。」</p><p>　サイトウは店主の言っていることはわかるのだが、よく理解ができなかった。そもそもなぜ自分にこんな話をするんだろう、運気が上がる等とうそぶいて高額で売る気でいるのでは、といった考えが頭を巡った。しかし、それに反して店主は</p><p>「あなたにこれをお貸しします。ただし1年だけ。私は木と一緒に様々な作品の世界を味わってきました。そのうちにもっとすごい作品に出会いたいという思いが日に日に高まり、胸を焦がしているのです。どうか、1日1枚この木が落とす“言の葉”を煎じて飲んで下さい。きっとあなたの助けになります。」</p><p>といい、半ば強引にサイトウにその木を持たせたのだった。そして帰り際、</p><p>「必ず落ちた葉だけをその日に煎じるようにしてください。」と言った。</p><p>&nbsp;</p><p>　夕方家についてもサイトウはなんだか狐につつまれたような気持ちでふわふわとしていたが、おいていったスマホにはまた何通かのメールが来ているのがわかり、窓辺においた言の葉の木なるものをちらとみてから、酒を飲んで寝た。</p><p>&nbsp;</p><p>　次の日起きると、サイトウはまずカーテンを開けた。そしてスマホには目もくれず、お湯を沸かし始めた。顔を洗い、ポットに茶葉をいれようと思った時にあの木のことを思い出した。窓辺の木に近づき、木の根元をよく見るとたしかに1枚、葉が落ちていた。不思議なことに落ちた葉だけは枯れたように、というかむしろ茶葉であるように見えた。サイトウはそんなはずはないと思ったけれども、まるで緑の葉が揉捻、発酵などの過程を全部通ってきてそこにあるような気がしてならず、飲んでみたいという気持ちを抑えきれなかった。</p><p>　サイトウはポットにその1枚の茶葉をいれた。お湯を入れて3分待っている間にも1枚の茶葉とは思えない濃厚な香りが蓋のすき間から立ち込めている。3分経つのとサイトウが待ちかねてそのポットを傾けるのはほぼ同時だった。</p><p>　茶色とも赤色ともつかない深い深い褐色の液体が朝の光を反射しながらカップに吸い込まれていく様子にサイトウは見とれた。そして、蒸らしている間に漏れ出ていた濃厚な香りは、不思議と軽やかにサイトウを包んだ。それはまるで映画を観た後の余韻というか、小説を読んだ後に胸に広がる何かに似ていて泣きたくなったが、そこには至極の1杯がサイトウを待ち構えるように湯気をくゆらせていただけであった。</p><p>　サイトウは朝のルーティンを大切にする男だ。一般の社会の動きと離れたミュージシャンという働き方をしているからこそ、朝だけでも世の中の流れに乗っておきたかった。そこでサイトウははやる気持ちをどうにか抑え、いつものように、カップを持ち机に向かった。椅子に腰を下ろし、体制を整え深呼吸をするとカップに口をつけ、1口飲んだ。</p><p>　気持ちの焦りからか紅茶を冷ますことも忘れて飲んだので熱、と反射的に思ったが、次の瞬間、サイトウの中に抑えきれない感情が生まれた。いや、感情という言葉は適切ではないかもしれない。たくさんの言葉の羅列が、意味を持たない言葉の羅列がサイトウの頭に流れ込み、よくわからないのになぜか胸は突き動かされた。その衝動をサイトウは抑えきれなかった。一番近くのペンと紙をひっつかみ、筆を走らせた。</p><p>&nbsp;</p><p>　サイトウの目の前には空になったティーカップとたくさんのメモ書きがなされて真っ黒になったたくさんの紙とペンがあった。1枚のメモの中に歌詞と思わしき言葉の羅列を見つけた。サイトウは疲労感で重くふらつく体を何とか動かし、スマホを手に取った。やっとのことでヨシダにその歌詞を送ると同時に気絶するように眠った。</p><p>&nbsp;</p><p>　目を覚ますと窓の外は紫色になっていて時計の針は5時過ぎを指していた。これが朝であるか夕方であるかわからなかったが、太陽が重たそうに少しずつ下がっていたので夕方と判断しほっとした。言の葉の木に何か聞かせようとラジオをつけると3日も経っていたことが分かり唖然とした。スマホにはメロディができたというヨシダからのメールが来ていた・</p><p>&nbsp;</p><p>　さて、半年が過ぎた。</p><p>　サイトウがあの日書いた歌詞による曲は異例の大ヒットを飛ばした。一気に有名人になったサイトウとヨシダのもとにはいくつものライブ出演のオファーや楽曲制作の依頼が来ていた。2人は来るもの拒まず、どんな依頼でも受けた。サイトウはあの紅茶を飲めばいくらでも歌詞が書けたし、ヨシダもそれを喜んでくれた。しかし、いつからか歌詞をヨシダに渡してからメロディができるまでの時間が長くなった。ヨシダはもともと天性の、と言えるくらいには作曲の才能があった。しかしこれだけ多くの曲をつくることは今までなかったので疲労も蓄積していたし、アイディアも尽きかけているようだった。また、ネットではサイトウの作詞の才能にヨシダの作曲は見合っていないなどとささやかれ、実際に別の人間からタッグを組まないかという誘いも多かったがサイトウは断りつづけていた。</p><p>　やがてサイトウは2人の曲を誰にも文句をつけられたくないと思った。ヨシダを守るために自分が完璧な歌詞を書こうと思った。店主が帰り際に言っていたことはなぜか頭にこびりついて覚えていたのだが、それを破り、毎日落ちてくる言の葉だけではなく、まだ枝についている葉さえもむしり取った。何枚もの葉を煎じた茶はずっしりと甘苦く口に入れた瞬間に脳に電流が走ったようになった。それからは記憶が1週間飛ぶこともざらにあったが、2人の曲はだれにも文句をつけられなくなった。</p><p>&nbsp;</p><p>　そろそろ言の葉を飲みだしてから1年が経とうとしていた。2人の曲は売れなかった。サイトウは何も書けず、何も語れなくなっていた。どうにかして書いた曲もこの世のすべての曲の最大公約数のようなチンケな歌詞でファンもスポンサーも離れていった。</p><p>　言の葉にラジオや音楽を聴かせるだけの日々に、突然インターホンがなった。玄関を開けるとあの店主だった。サイトウは何度もあの花屋に行こうと思ったのだが、そもそも同じ路地すら見つけられず途方にくれていたため、すぐさま状況を説明しようと思ったが、</p><p>「ない、の、voicや、かしyで、愛…」と意味不明な音声を発するしかできなかった。</p><p>　伝わらないだろうと思っていたが、店主は初めからサイトウの状況を分かっていたようで、表情を変えず、</p><p>「1年が経ちました。あなたたちの作品には私もとても楽しませてもらいました。しかし、1つ1つの色を味わう力がなければ、どれだけ美しい色を重ねても黒になってしまうのです。」とだけ放ち、サイトウの横を通って言の葉の木を抱え出ていった。</p><p>&nbsp;</p><p>それからのサイトウは徐々に言葉を話せるようになったし、2人は小さなライブハウスで少しずつファンを取り戻した。あの本屋の売り上げは増したらしいが、あのあたりで鉢を抱えた者を見たものは一人もいない。</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: right;">ヤマ</p>
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<link>https://ameblo.jp/sigeyama2020/entry-12599695575.html</link>
<pubDate>Tue, 26 May 2020 20:10:29 +0900</pubDate>
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<title>言の葉①</title>
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<![CDATA[ <p style="margin: 0px;"><font color="#000000"><span style="margin: 0px; font-family: &quot;ＭＳ 明朝&quot;,serif;">　</span></font>サイトウが目を覚まして始めにさわるものはカーテンと決まっている。スマホにはきっといつものように催促のメールが来ているだろうから、次にふれるのはやかんであるとも決まっている。やかんに水を入れコンロにかけると顔を洗いに向かう。歯を磨くサイトウに今日も昨日と同じような憂鬱が訪れるのかという不安が押し寄せるが、ちょうどその頃には「ピーーーー」という湯の沸く音が響いてくれる。サイトウはポットに茶葉を入れ、沸きたての湯を注ぎ3分待つ。この間にティーカップを温めておく。</p><p>&nbsp;3分ピッタリにポットを傾けると、注ぎ口から赤く透き通り黄色に光る液体がカップに降りていく。そしてぶわっと華やかなにおいが立ち込めたかと思うと周囲を優しく包みこんだ。</p><p>　サイトウはティーカップを持ち机に向かう。机の上には白紙とペンがばらばらと置かれ、奥の方にはぐちゃぐちゃに丸められた紙が２つ３つ転がっている。紅茶を一口飲んで机のはじの方に置き、代わりに転がっていたペンのひとつを手に取った。白紙の上に置かれていた視線は、次第に丸めた紙のしわをなぞり、宙をさまよった挙句、スマホの画面に落ち着いた。</p><p>&nbsp;</p><p>　スマホには3通のメールが届いていた。ひとつはヨシダからだった。</p><p>サイトウとヨシダは歌手である。サイトウが歌い、ヨシダが主にギターを演奏する。それに準じて、曲づくりでもサイトウが作った歌詞にヨシダがメロディをつけることになっている。今年はプロデビューして8年目だが、3年目に深夜ドラマの主題歌に抜擢されて以降主な成果はない。</p><p>ヨシダからのメールは、</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;歌詞、どうかな。</p><p>&nbsp;サイトウががんばってくれてるのは知ってるんだけどさ、事務所からの連絡もあって・・・。でも 絶対俺たちならもう一度やれるはずだと思う。</p><p>&nbsp;</p><p>という優しいものだったが、今のサイトウには胸をかきむしりたくなるものだった。残りのメールを確認すると2通とも事務所からの連絡で、最新のものには近いうちにヒットを飛ばさないと契約を解除するという残酷な内容が書かれていた。なるほど、ヨシダが言っていたのはこれかと思うと同時に、歌手をやめなければならないかもしれないことがすごく怖くなった。</p><p>　さすがにサイトウもスマホを置き、3時間ほど机に向ってみたが、焦りで歌詞が書けるならとうに書いている。その頃には紅茶もすっかり冷めていたので、気分転換に散歩に出ることにした。</p><p>　サイトウの家は東京のはずれの方にある。ビルもあまりなく自然が感じられるこの地域は、カフェや雑貨屋を開業しようとする人たちに目をつけられあちこちにおしゃれな店ができている。もちろん商店街や昔ながらの古本屋などもあって、それらがうまく共存している街の雰囲気がサイトウは好きだ。</p><p>　サイトウの散歩にはある程度コースがある。本屋に行くコース、公園に行くコース、口だけ体から飛び出したような男が落書きされている壁に行くコース。今日は本屋に行くことにした。</p><p>　商店街のはじの方にある本屋に向かうため、街を歩いているとサイトウと同じくらいの歳の私服の奴が歩いていて、平日の昼間にめずらしいなと思い、自分に言えたことではないなと思う。はずれといってもやはり東京は特殊な街で、昼までも私服で歩く若者をよく見かける。</p><p>　本屋に着くと、新刊をチェックしたり雑誌をパラパラめくってみたりする。その記事の中に、最近事業を大きく拡大しているIT企業の社長へのインタビューが載っていた。上部にはでかでかと「貧乏　産婦人科助手から一転！超大金持ちへ」という品のない見出しがついており、きらきらと夢を語るこの社長の意志は全く汲み取られていないように感じた。同じ言葉を紡ぎだす仕事でも必死に考えて誰にも見てもらえない自分と、こんなキャッチコピーで飯を食い一流企業に在籍しているであろう誰かを比べてむなしくなり、店を出た。</p><p>&nbsp;</p><p>　本屋をでて、家に帰ろうかと思ったが、紙屑とペンが散らばっている机の上の惨状が頭に浮かぶと足は自然と反対方向の小さな路地へと踏み出していた。本屋への散歩にはよく来るサイトウだったがこの路地の方へはあまりきたことがなかった。本屋がある通りの古い町並みと新しい店たちが共存したおしゃれな雰囲気は全くなく、じめじめとしていて暗かった。しかし、社会にはじき出されたように感じているサイトウにはその道がすごく心地よく、道の続く限り歩いて行った。</p><p>&nbsp;</p><p>　路地を抜けると、少し開けた通りにでた。さすがにサイトウもそろそろ引き返さなければならないという気持ちになり、もと来た道を戻ろうとしたその瞬間、ふわっといい香りがした。それはサイトウが毎朝嗅いでいる紅茶の香りに違いなかったが、それよりももっと濃厚で華やかで澄みきっていた。音楽以外の趣味といえばもっぱら紅茶であるサイトウは、茶葉にもこだわりがあり、それなりのものを飲んでいたつもりだった。しかし今サイトウを包む香りはサイトウの紅茶に対する自信を打ち砕き、代わりに圧倒的な好奇心を芽生えさせた。</p><p>　サイトウは足早に香りのする方へ行ってみると、花屋についた。花屋とわかったのは「山本花屋」と古めかしい看板に書いてあるからで、店先においてあるのはたくさんの小さい木や観葉植物、観賞用の苔、サボテンばかりであり、一見したところサイトウの知っている花屋と同じであるとは思わなかった。</p><p>　よく見ると店は奥の方に続いており、中に進んでみるとたくさんの種類の茶葉が小さな袋に入れて売られていた。それぞれの袋は売り場の真ん中に置かれているぼろぼろの細長い机や壁に取り付けられている棚に並べられていた。一緒に透明なケースも置かれており、中には香りを試すための袋に入っていない茶葉が入れられていた。路地まで香るくらいの茶葉がところ狭しと並べられているのに、透明なケースを開けるまでは不思議とどの茶葉の香りも沈黙を貫いていた。紅茶には目がないサイトウは一心不乱にそれぞれのケースを手に取り嗅いでいった。シンプルな香りやスパイシーな香り、甘い香りや渋い香り、どれもどこか懐かしくけれども新鮮な香りだった。</p><p>　どれくらいの時間が経ったのか、気が付くと後ろに白髪の男が立っていた。エプロンをつけておりどうやら店主らしい。サイトウが何か言おうか迷っているとその店主が口を開いた。「あなたが探しているのはそんなものじゃないでしょう。」店主はそう言ってさらに店の奥の方に入っていった。</p><p>&nbsp;</p><p>〈続く〉　ヤマ</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sigeyama2020/entry-12599694012.html</link>
<pubDate>Tue, 26 May 2020 20:03:21 +0900</pubDate>
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<title>夢の産婦人科</title>
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<![CDATA[ <p><span style="font-size:1em;"><span style="font-weight:bold;">出生数</span></span><br>―えー、政府によりますと、今年の出生数は1219万3千人となり、これは前の年に比べて20万6千人の減少となりました。これは、国の予想を2年も上回るスピードであり、早急の改善が求められます。厚生労働省が考えた要因として―<br>ピッ<br>―いやー、このデータを見てみるとね、小学生の女の子は数値が高いんですけど、特に中学生の男子の産む数がね、ちょっと少ないな～って感じがするんですよね。これ、黒川さんどう思いますか？―<br>ピッ<br>もういいや、朝これしかニュースやってないわ。<br>てか、俺にとっては女が産んだ数も男が産んだ数もどうでもいいし。<br>てか、人生どうでもいいし。<br>でもなー、そろそろ仕事しないと金がなー…。<br>…お、これいいじゃん、「産婦人科　助産師助手」。<br>最近需要高いし、助手やったら資格要らないし。<br>あー、暑い、クーラーつけよ。<br><br><br><br><span style="font-weight:bold;">就職</span><br>「私が産婦人科の佐々木と言います。これからよろしくお願いします」<br>「あ、よろしくお願いします…。あのー、僕こういう経験あんまり（てか全く）無いんですけど、大丈夫ですかね？」<br>「大丈夫ですよ。こっちは“向こう”の産婦人科とは違って出産の介助は楽なので、基本的には何かあったら手伝ってもらう程度ですから」<br>「あー、そういうもんなんですね」<br>「そういうものですよ」<br><br><br><br><span style="font-weight:bold;">１人目</span><br>「うぅ…痛い…」<br>「大丈夫ですよー。もう少しですからねー」<br>「頑張ります…！うぅ…」<br>痛そう…<br>「ゆっくり呼吸してくださいねー。もうすぐですよー」<br>「うぅ…！産まれる…！！」<br>スポンッ<br>うわっ…<br>出産の瞬間初めて見た…<br>「どうですかー。無事に産まれましたよー」<br>「あぁ…これが僕の…。あの…覗いてもいいですか…？」<br>「はい、ご覧になってみてください」<br>「うわー、大家族だ…！そうか、確かに言われてみれば思い当たる節が…」<br>「これからも頑張ってくださいね」<br>「はい、とっても元気になれました！頑張ってみます！」<br>この子良い子だなー…<br>案外産むのっていいのかもな…<br><br><br><br><span style="font-weight:bold;">２人目</span><br>「痛い！痛い！」<br>「大丈夫ですよー。すぐ終わりますからねー」<br>「痛い痛い痛い痛い！」<br>「深呼吸してくださいねー。吸ってー吐いてー」<br>「無理無理無理無理！」<br>うるさいな…<br>「うぅ…！！！」<br>スポンッ<br>えー、でかっ！<br>「はぁはぁはぁはぁ…」<br>「大きいですよー。見てみてください」<br>「…！うわー、すげー！かっけー！！」<br>「よかったですねー」<br>「おじさんたちありがとうね！」<br>「いえいえ、これからも頑張ってくださいね」<br>すげーな、今のめっちゃ大きかったなー。<br>なんかいいなー、あんな目キラキラさせて…<br>………え、てか、今俺も“おじさん”に含まれてた感じ？<br><br><br><br><span style="font-weight:bold;">悩み</span><br>あー、俺も産んでみたいなー。<br>んー、いやいや、見てる限り痛そうだしなー。<br>…でも、やっぱり俺も何か頑張ってみたいんだよな。<br>今まで俺何の興味を示さなかったけど、このままなんとなく死ぬより自分のやりたいことやって死にたいよな。<br>……んっ、何だ？おなかが痛い…あれ…これはやばい感じの痛さだぞ…うぅ…<br>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-weight:bold;">３人目</span><br>「うぅ…これはやばいです…」<br>「大丈夫ですよー。安心してくださいねー」<br>「あぁ…想像の100倍はやばいですよ、これ…」<br>「はーい、深呼吸してくださいねー」<br>いや、深呼吸とか言ってる場合じゃねー…<br>「これ死んじゃいますよ…」<br>「大丈夫ですよー。もう産まれますよー」<br>いや、もう無理…あぁ…！<br>スポンッ<br>「はーい、産まれましたよー」<br>「はぁはぁ、よかった…。産まれた…」<br>「どうですか、見てみますか？」<br>「はい…！」<br>………え、これどっから見たらいいの？<br>「院長、よく見えないんですけど…」<br>「はい？よく見えないということはないと思いますが…」<br>「いや、これ映ってるのただの僕なんですけど」<br>「…なるほど」<br>「え、『なるほど』ってなんですか？どういうことですか？！なにか僕に問題が…？！」<br>「いえ、あなたは検診で全くの健康体でしたから、あなた自身に問題はないと思います。これはつまり、あなたがすでに夢を叶えてしまっているということです」<br>「はい…？そんなわけないじゃないですか！僕まだ産む以外何もしてないですよ？」<br>「妊娠のメカニズムをご存じですか？妊娠は人の“脳”が夢を見つけたと判断した瞬間に始まります。あなたが見つけたと感じた時を思い出せますか？」<br>「んー、この前何かしら頑張ってみたいなーって思ってましたけど…。あー、あと、出産も意外といいのかなーって、思って…まし…た…。え、院長もしかしてこれ…」<br>「そういうことです。つまり、あなたは“夢を産むことが夢”だったんですよ。だから、あなたが覗いた夢には夢を叶え終わった今のあなたが映っていたんです」<br>「……。」<br>「まあ、こういうことは稀に起こります。あまり気を落とさずに次頑張りましょう」<br>「…いえ、むしろ僕もっと頑張ろうと思います！なんか分からないけどまだ頑張れる気がしました！」<br>「なるほどなるほど、それはよかったです。では、明日からもよろしくお願いします」<br>「はい、よろしくお願いします！」<br>&nbsp;</p><p style="text-align: right;">シゲ</p>
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<link>https://ameblo.jp/sigeyama2020/entry-12597759544.html</link>
<pubDate>Sun, 17 May 2020 23:00:37 +0900</pubDate>
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<title>レジの店員の話</title>
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<![CDATA[ <p>「合い挽き肉298円、鯖が半額で150円、玉子180円、ホイップクリーム211円、ショウガが108円、合計で947円になります。」</p><p>&nbsp;</p><p>誕生日か。</p><p>&nbsp;</p><p>彼女が小銭を差し出す前にそんなことが浮かんだ。</p><p>「947円ちょうどいただきます。ありがとうございましたー。」</p><p>&nbsp;</p><p>　作業着の彼女はこの時間帯の常連で、とはいってもこの小さな街のスーパーにはほぼ常連さんしか来ないのだが、普段の買い物に加えてたまにキャラクターのパッケージのお菓子やジュースを買っていく。前に財布にぼろぼろの紙きれが入っているのがレジを打つ視界の端に見えたことがある。</p><p>　スーパーのBGMが遠くなり、県営住宅の一室で小学生の男の子と先ほどの彼女の姿が浮かぶ。女手一つで息子を育てる彼女の家庭は裕福ではないが、とても幸せそうに見える。明日は息子の好きなハンバーグとケーキを手作りして誕生日を祝い、その次の日は魚があまり好きではない息子に鯖の醤油煮を勧めながら「好ききらいしちゃだめでしょ。魚は体にいいんだから。」と言う。渋々食べる息子だが、数十年後この光景を思い出し、母の愛情の大きさに涙するのだろうと思ったところで聞くだけで胃痛のしてくるBGMが遥かから聞こえ、それと同時に、意識が県営住宅の一室からスーパーに戻った。</p><p>　自分のレジと周りを見回すと別に客が待っているわけでもないし、他のレジが混雑しているわけでもなくほっとした。ただこんなことは稀ではなく、私の勤務する18時から23時の中でもこの20時以降はいつも客足がまばらなのだ。品出し等もなく、言ってしまえば暇なのである。そのため、いつしか客の買い物からその人の生活を想像する癖がついてしまった。むしろ最近では無意識に想像の世界に飛んでしまっている。</p><p>&nbsp;</p><p>　しばらくぼーっとしていると常連の主婦が機嫌よさそうにレジに向かってきた。</p><p>「・・・・合計で3,366円になります―1,634円のお釣りです―ありがとうございました」</p><p>　…はじめから結婚しなければいいのになあ、と連日ため息をつきながらビールを買いに来るあの主婦を見てそう思っていたが、最近彼女がよく買っているものと明るい顔にも同じことを思う。そんな薬でごまかして一緒にいる意味なんてあるのだろうか。なんだかやるせない気持ちになっていたところにいつもの男がやってきた。</p><p>&nbsp;</p><p>「弁当1点が半額で210円です。」ついに1人分の半額弁当か…。</p><p>　男はレジをしている間にもスマホをちらちらとみて落ち着きがない。少し睨んで</p><p>「ありがとうございました」と言うが、真意は男に全く伝わっていない。</p><p>&nbsp;</p><p>　あの男は半年くらい前までよく奥さんと一緒に買い物に来ていた。しかしいつからか、男は一人で来るようになった。買い物時代も前によく買っていたお酒ではなく、若い女の子の好きそうなフルーツやゼリーばかりが浮ついた様子でカゴに入っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　ふっと部屋が浮かぶ。生活感もあるが片付いた部屋。夫のスマホを見る妻の姿。女の子からのたくさんの着信を問いただしたところ、夫は会社の若い部下と浮気していたことが判明する。男女関係において潔癖の気がある妻は夫と距離を置いた生活を始めた。家庭内別居というやつだ。妻は洗濯もご飯も買い物をする場所も、何を持っても夫と同じことを嫌がった。そんな2人の生活の寂しさは夫の自尊感情を着実に削っていき、そこを補うように夫はまた浮気相手の家に通うようになった。しかし、ついに今日妻は決意したのだ。帰宅後この男はしばらく座っていなかったリビングのテーブルで半額の弁当を食べるだろう。部屋は暗く、寒い。スマホに照らされて浮かび上がる顔は浮気相手のSNSに一喜一憂しており気味が悪い。</p><p>&nbsp;</p><p>「佐伯さん、代わります。」</p><p>という声が聞こえ、はっと我に返る。</p><p>「深夜も人少ないといいんですけどね、これまでは結構お客さん来ました？」</p><p>&nbsp;</p><p>　隣に23時からのシフトの黒川くんが来ていた。この店は最近流行りの24時間営業スーパーというやつで、深夜の時間帯はこの子のように大学生が多く入っている。</p><p>「黒川くん、まだ23時まで10分もあるでしょ。まだ少し休憩してきたら？」　</p><p>「いやいいんですよ。それより、佐伯さんこそ10分早く上がっちゃえばいいのに」</p><p>「それができたらいいけどね。タイムカードに時間記入しないといけないし。」</p><p>「じゃあ10分間ここで2人で話して時間つぶしましょうか、客来るなよー、なんつって。」</p><p>　前に黒川君に2人でご飯に行こうと誘われたことがある。断ってからもよく私に話しかけてくれるが、あどけないこの陽気さを見ていると父を思い出して、少しだけ、苦しくなる。</p><p>&nbsp;</p><p>　私の父は、明るくてよく笑う人だった。けれど、わたしが小学生の頃、浮気が原因で母と離婚することになり、笑顔で「じゃあな。」と言って家を出ていった。わたしは母のすすり泣く声となぜか濡れている頬をぬぐいながら、いつも笑っている人はやはり笑いながら人を傷つけるのだな、と思った。それ以来わたしは、明るい人や笑顔も恋も結婚も愛も信用しておらず、否定はしないが一種の宗教みたいなもので、すがりたい人が心の拠り所にしている靄のようなものだと思っている。</p><p>　昔のことを思い出したせいか、なんだか頭がぼーっとする。少し疲れもたまっているようなので、スーパーのレジの前で一人23時になるのを待って、早めに家に帰り、寝た。</p><p>&nbsp;</p><p>　次の日起きると、頭は痛いし手足や腰は重く、今にも体全部が布団に沈み込んでしまいそうだった。スーパーに病欠の連絡をすると、少しため息をつかれたがこればかりはしょうがない。今後体調管理を改めるとして、今日は一日眠りこけることにした。朦朧とする意識の中で、レジのカタカタジャリンという音といつものBGMが繰り返していた。すると遠くからシングルマザーの旦那の男が歩いてきて私を殴ったかと思うと別の男がビールと白い粉をぐちゃぐちゃに混ぜ私に飲ませ、半額弁当の男はそれを見て笑っていた。またその後ろで半額弁当の浮気相手を父が抱きしめていて、急に黒川君が現れたかと思うと全てが混ざり、押し寄せてきて目が回り、吐いた。</p><p>&nbsp;</p><p>　目が覚めるとすっかり翌日の昼になっていて頭痛もだるさも少しはましになっていた。だけどやはり仕事はできそうにないので、スーパーに電話してため息をもらった後、支度をして病院に向かった。今日は土曜日で少し向こうの病院しかやっていないようだった。車も持っておらず、自転車に乗るのも心もとない体調ではあるけれど、タクシーを呼ぶお金はないのであきらめて歩いていくことにした。</p><p>&nbsp;</p><p>　スーパーの前を見つからないように歩き、大通りを抜け小道に入ると小さな墓地があった。一人でこの地に越してきた私には縁のない場所なので特に気にも留めず通り過ぎようとしたら、手前のお墓の前にいる人の顔に見覚えがあった。あのシングルマザーだ。しかし、彼女の隣には男がいて、二人は寄り添いながらお墓を見つめているようだった。お墓には少ししおれてはいるがたくさんの花と、動物のキャラクターのお菓子が供えられていた。通り過ぎるときに</p><p>「本当だったら雄太も昨日で9歳だもんな」</p><p>と男の声が聞こえて、彼女の嗚咽が聞こえ、しばらくするとそれは何かに抱きしめられているようにくぐもっていった。</p><p>&nbsp;</p><p>　墓地の脇の道を歩き、河川敷に出ると熱っぽい頭には心地よいさわやかな風が吹いていた。春には運動を始める人が多いと聞くが、これほどまでに多いのかというぐらい河川敷には走っている人や手を大きく振りながら歩いている人でいっぱいだった。なんだか普段着でのろのろと歩いている自分を恥ずかしく感じたが、前を歩いている夫婦も同じようなむしろ少し遅いスピードで歩いていたので、まあいいかと思いつつ、妻の方を見ると驚いた。それはいつもプロテインを買っていく主婦だった。2人ともなんだか難しい顔をしていて無言が続いていたので、後ろを歩いているのが気まずくなってスピードを上げて追い抜こうとしたとき、夫が口を開いた。</p><p>「俺、知ってたよ、プロテインのこと。お前の代わりにビール買いに行ったときに、プロテインのコーナー見ちゃったんだ。はじめは、『大きなココロづくり』って書いてあるの見て、その、めちゃくちゃ腹が立ったんだけどさ、なんか、お前につらい思いさせてたんだなと思うとすごい、悪かったなと思って、それから俺少しずつだけど変わろうって思えたんだ。」</p><p>　わたしは夫婦に追いつかれないように、追い抜いたスピードのまま息をきらし歩いた。</p><p>&nbsp;</p><p>　河川敷を下りて、もう少し歩くと病院に着いた。</p><p>　そこは内科、婦人科、産婦人科が一緒になった病院で、産婦のために土日も空いていることが多いとネットに書いてあった。入口に入り、受付をして待合室で待っていると、あの半額弁当男が待合室を横切っていった。男はそのまま産婦人科とその入院施設のある2階に上がっていった。わたしはそろそろ熱も上がってきていたが訳も分からず男をつけていくと、ちいさな面会スペースで寝間着姿のあの奥さんと話していた。そのとき、急に頭に血が上ったようになって目が回り、立っていられなくなり、その場にうずくまると、その奥さんが「あなた大丈夫！？」と言って男と一緒にかけよってきて、ふわっとミルクのにおいがした。それと同時に下の階からランニングウェアのあの夫婦や墓地にいた夫婦がやってきてハンバーグとケーキをわたしの口にぎゅうぎゅうと詰め込んでくるから吐いた。すると父が小さい頃のように優しく頭を撫でてくれてまた吐いた。</p><p>&nbsp;</p><p>「佐伯さん、佐伯さん！聞いてますか」</p><p>　気が付くと、22時58分のレジの前にわたしは立っていた。訳が分からずぼーっとしていると、</p><p>「だから、明日2人でご飯に行きませんかって聞いてるんですけど…」</p><p>　と黒川君が言ったので、わたしは少し考えて、こくん、とうなずいた。</p><p align="right">ヤマ</p>
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<pubDate>Wed, 13 May 2020 15:45:11 +0900</pubDate>
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<title>肉体改造</title>
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<![CDATA[ <p>「ったく、なんでビール用意してないんだよ！」<br>小さなアパートの一室で男の大きな声が響く。<br>「でも、今日お酒飲むって言ってなかったから…」<br>「ゴチャゴチャ言うな！いいから買ってこい！！」<br>「分かったから大きな声出さないでよ！まったく…」<br><br>「はあ…昔はもっと優しかったのに…」<br>閉店間際のスーパーマーケットの中で妻の足取りは重かった。<br>―最近のやつはなんであんなに使えないんだ！少しは周りを見て考えて動けってんだ！――田村のやつ、最近北上さんの奢りで飯行ってんだぜ。なんで俺は連れていかれないんだよ！チクチョーめ―<br>―おい、なんで辛口のカレーにしてんだよ！俺はカレーは甘口って言っただろ！―<br>この人とならどんな壁も乗り越えられる、そんな希望を抱いて結婚したはずが、今立ちはだかる壁はなぜか夫の形をしていた…。<br>いつからこんなことになったのだろう、そう思いながらビールといくつか品物を買ってスーパーを後にした。<br><br><br>ある日夫は朝目覚めて食卓に向かうと、見たことのないものが置いてあるのを見つけた。<br>「おい、これなんだ？」<br>「あー、それプロテインよ。牛乳とかの液体に混ぜて筋トレの後とか夜寝る前に飲んだら大きくなるって。」<br>「いや、俺肉体改造するなんて言ってないだろ」<br>「あと、それビタミンも豊富で健康に良いらしいから、1か月くらい飲んでみてよ。」<br>「話聞こえてないのか？…あ、じゃあ、これ酒に入れて飲むっていうのはどうだ？笑」<br>「いや、良いかどうかは知らないけど…。試しにそれで飲んでみたら？」<br>「じゃあ、プロテイン飲んで、体バキバキにして、会社の女の子にモテちゃおっかな～」<br>「はいはい、どうぞご勝手に」<br><br><br>2週間が過ぎた日の夕食、夫は妻を問いただした。<br>「なあ、恵美、あのプロテインほんとに効果あんのか？！」<br>「あるわよ。ちゃんとしたスーパーで買ったんだから。」<br>「もしかして、これは本当は変な薬が混じってて、俺をゆっくり弱らせて殺すって算段じゃないだろうな？！」<br>「変なこと言わないでよ。ダイエットも効果が出るまでに3か月はかかるって言うし、まずは結果は気にせずに続けてみたらどう？」<br>「だけどな、もし3か月して効果が出なかったらこの家追い出すからな！」<br>「もう、いいから少しは信じてよ！」<br>「ったくゴチャゴチャうるさいな。…てか、またビール用意してないじゃないか！」<br>「あ、ごめんなさい、まだあると思って…」<br>「ごめんなさいじゃないんだよ！もういい、俺が買いに行く」<br>バタンッと家を出ると、夫はスーパーに向かった。<br><br><br>2か月が過ぎた日の夕食、夫は嬉しそうに妻に話した。<br>「最近少し筋肉が付いてきた気がするんだよなー」<br>「よかったじゃない、毎日頑張ってるしね」<br>「それとね、最近は運動すると心もこうパーッと晴れるっていうか、気分が良いんだよ」<br>「へー、やっとプロテイン効果が出てきたのね」<br>「恵美も一緒にやってみる？」<br>「私はもう間に合ってるから」<br>「間に合ってる、って別に運動はいつからやっても良いでしょ」<br>「まあね。…あ、ごめんなさい、またビール切らしちゃってたから買いに行くね」<br>「あー、大丈夫大丈夫。買いに行かないといけないんだったら別にいいよ」<br>「ううん、プロテインももうすぐ無くなりそうだからすぐ買って帰ってくるね」<br>「あー、ごめんよ、ありがとう」<br><br>妻はスーパーに寄り、ビールとつまみをいくつか買った後にプロテインのコーナーに向かった。<br>「よかった、まだ売ってたわ」<br>妻はいつものプロテインを手に取り、レジで会計をした。<br>「クリアアサヒ6本セットがおひとつで982円、エアリアルチェダーチーズ味がおひとつで120円、ザバス大きなココロづくりがおひとつで2,150円、ポテトチップスのり塩味がおひとつで114円、合計で3,366円になります―1,634円のお釣りです―ありがとうございました」<br>閉店間際のスーパーマーケットの中で妻の足取りは軽かった。</p><p style="text-align: right;">シゲ<br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/sigeyama2020/entry-12596087253.html</link>
<pubDate>Sun, 10 May 2020 18:01:34 +0900</pubDate>
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