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<title>SM小説</title>
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<description>酒を飲みながら書く小説</description>
<language>ja</language>
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<title>何色でもなかった猫</title>
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<![CDATA[ <p><font size="2">　何箇所か下水道へ繋がっている出入口がある。鼻に付く異臭が辺りを立ち込めており、それは心の中を汚していくのを知っている。その手前から限界まで息を止めて小走りに歩き、やり過ごそうとする。</font></p><p><font size="2">　生活排水という言葉で片付けることは容易じゃない、複雑な心境の生い立ちの過程の奴等が漂っているのだ。</font></p><p><font size="2">　その後に、弁当屋裏から油っぽい臭いが続いてくる。コロッケだろうか、トンカツだろうか、エビフライだろうか、重くて湿った臭いだ。</font></p><p><font size="2">　止めにラーメン屋の裏からは、何年か経過したようなトンコツの臭いが覆いかぶさってくる。<br></font><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　下水と油とトンコツが重なってきた。</font></p><p><font size="2">　とても苦労して倒した余韻に浸っていたらセーブをし忘れ、連続で同じくらいとても苦労しそうな予感な奴が出てきてハラハラして、それも何とか乗り越えたと思ったら停電して、一からやり直しの時のような不運だ。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　真っ暗な小道に、小規模ながら電灯と呼んでいいのか気を使うような、小さな光がちっぽけな物体どもを灯している。自動販売機の灯りと薄呆けたアポートからの明かりがそれを後押しして、辛うじて人が歩くことを許す光度に達している。</font></p><p><font size="2">　そこを見てと言われない限りは、見てもらえないような場所には、圧倒的に落ち着く空間が眠っている。機械的で雑居で誰も気づかない死角。私はその場に座り込み空を見上げた。もう辺りに腐敗臭は漂っていなかった。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　黒い空に白い月が浮かんでいる。その月は異常なまでに目立って誰からも隠れようがない存在感を醸し出している。銀幕のスターもハリウッドの馬鹿も汚染された男優も適わない色彩だ。それが才能というカリスマ的な存在と定義できるのだな、と思ったら赤い猫と目が合った。<br>　赤い猫は奇妙な泣き声をする。普通、猫の鳴き声と連想すればにゃあにゃあとかみーみーとか言いたくなるものだが、そいつときたらまるっきし常軌を逸することをしてくれる。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　せちゃつはわにえをえようど？</font></p><p><font size="2">　いいえ。私は通りすがりの市民です。あなたの欲求を満たすノウハウは合わせ持っちゃいませぬ。</font></p><p><font size="2">　せちゃつははてこのえをとおど？</font></p><p><font size="2">　はい。私は生きるゆえ、このえをとおど。</font></p><p><font size="2">　せちゃつはいくすえにこのほをさずればりりんする？</font></p><p><font size="2">　いいえ。私はただこの空間に存在し、この空間と共有し、この他愛も無い日常に最高の欺瞞を行ずるべくことをばとおど。</font></p><p><font size="2">　せちゃつはおもかゆい。せちゃつはいっこくもなおはえばされ。</font></p><p><font size="2">　おおせのとおりに。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　辺りは急に明るくなることもせず、澄み切った空気も提供できず、その場の状態を維持することに精一杯だと主張した。</font></p><p><font size="2">　二なりの呪いが両者を待ったした。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　せちゃつはどこがしん？</font></p><p><font size="2">　私は赤い猫をはじめて見た、せちゃつは世にそぐわない。どうか仰せのままに消えゆかん。</font></p><p><font size="2">　うむ、わはこれぞいかん。すにもうらのゆくいわばんばこれもまたしらもうせよ。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　赤い猫は少しずつ体を揺らしながら、少しずつ体を大きくしながら、空気と空気の間にある微妙な隙間に入っていった。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　赤い猫は、青い猫に姿を変えて現れた。見てと言われない限りは、見てもらえないような場所に、もう青年は座っていなかった。</font></p><p><font size="2">　パンクしてしまったボールが、暗く沈黙した校庭に転がっている。例え日中に赤い太陽が校庭を照らしたとして、そのボールがどんな競技にしようされる物体なのか長考させられるほど泥で汚れているだろう。</font></p><p><font size="2">　今、校庭から子供たちの笑い声は聞こえてこない。この空間に存在が確認できるのは青い私と、結局存在は目視で確認できない微生物しか残っていないと推定する。そんなはずの空間に、もしも別の何かが浮遊していたら身震いするだろう。それらは結局のところ人間の頭の中で創造されたものであろうに、その創造が想像へ変わり、やがて身を震わすのだろう。</font></p><p><font size="2">　そんなことはこの校庭以外でも容易に考えることができる。自然を破壊しても、動物を殺めても、兵器を開発しても、追尾機能搭載の運命が決定を覆すことは無いのだろう。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　見て、あそこに青い猫がいる。</font></p><p><font size="2">　やれやれまた人に会った。体を大きくして発光しよう。</font></p><p><font size="2">　静寂した黒い校庭に、明るい青色光が円を作った。その円はよく見ると楕円だった。</font></p><p><font size="2">　見て、光ったよ。子供たちは恐れを露にして走り去った。一晩の眠りで忘れることのできる記憶には、海馬の許しを得られそうに無い。タメ息がオゾン層を破壊する前に次の空間へ移ろう。</font></p><p><font size="2">　青い猫は先ほどしたのと同じように空気と空気の間にある微妙な隙間に入っていった。でも体は揺れなかったし大きくもならなかった。この動きは不要にして移動できるんだと誰かが気づいてくれるかな？　と誰も居るはずの無い空間を眺めてた。</font></p><p><font size="2">　そうかあれはボールではなくてラーメンの器だね。何故校庭にラーメンの器が捨てられているのだろうか。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　赤い猫は青い猫に姿を変え、次は何色に変化するのか楽しみにさえなっていた。しかしそれはこの世で表現できない唯一無二の色だった。これは何色か？　と尋ねられても、言語としては決して表現することができない色だった。何色にも似つかない、でも透明ではない、そんな心の休まらない色だった。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　世界は一瞬で一変した。それは天災や科学的な力によるものではなく、心霊的で非現実的な臭いが漂う予感を常に保っていた。猫はどうやら逃げ道を間違えたのだと考えた。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　そこは何も無い世界だった。光は無いが暗闇ではない。生き物は皆無だが何かの気配はする。地面は無いが下に落ちることは無い。空気も無い様子だからとわかったが息苦しくもない。きっと食料はおろか水も原子も無いのだろう。存在が許されない世界。世界ということすらままならない空間。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　そこにある形を認めることができた。それは始めてみるようで、たった先に見たようでもあった。そうだ、あれはラーメンのどんぶりではないかと推測する。その物体と距離感がわからないし、縮める方法が存在しないことから、これ以上考えを深くに達する術は無いのだと諦めた。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　きっと私と一緒に迷い込んでしまったに違いない。そして私は不安に落ちた。空気の無い空間には隙間が無い。私はここから別の箇所へ移動することができないのだと痛感した。やっと落ち着いて身を休めることができると、プラスに考えた。これ以上、私は考えることは無い、動かない、死ぬこともないし生きる意味もなさない。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　2年後。ビッグバンが起こる。</font></p><p><font size="2">　その38万年後、銀河系が形成される。</font></p><p><font size="2">　更にその85億年後、地球が誕生した。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　猫は思った。退屈は残酷だ。どうか生命に寿命を作ろう、そして寿命を待たず死する運命を設けよう。</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10885863430.html</link>
<pubDate>Sun, 08 May 2011 22:44:42 +0900</pubDate>
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<title>のような奴</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">　毎年十二月を迎えるとイーリンが現れる。綺麗に櫛を通された黒髪、少し釣りあがった目、小さい鼻、少し暑い唇。人に例えると、どことなく中国人を思わせるから、イーリンと言う名前を付けた。</font></p><p><font size="3">　イーリンは私の用意した赤いチャイナドレスを纏い、自分の姿を立ち鏡に映していた。彼女の目線は、彼女自身とは別の何かが映っているようだ。</font></p><p><font size="3">　イーリンは息をしない。食事も取らない。寝ない。とても不思議な存在だ。</font></p><p><font size="3">　動くことと、人に似た容姿をしているところ意外は、人と異なっているように思える。血流が無いから心臓も無いようだ。息をしないから肺も無いのだろう。考えているのか、考えていないのか、脳あるいは脳のようなものはあるようだ。とても不思議な存在だ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　イーリンは何度注意しても車に轢かれる。その度に体がバラバラになる。運転手は青ざめた顔で駆け下りてきたり、スピードを倍に加速して逃げたりした。</font><font size="3">私はイーリンを抱えて、何事も無かったように歩く。少し時間が経つと、バラバラになった体は、いつの間にか元に戻っている。元に戻る瞬間を目にしたことは、まだ一度も無い。死に際に消えてしまう猫のように、戻る瞬間を絶対に目に入れさせてはくれないのだ。</font></p><p><font size="3">　イーリンは直ぐに誘拐される。男子トイレの横に置いといたイーリンは忽然と姿を消してしまう。そんな時は探しても見つからないのだが、必ず同日の夜には家に一人で戻ってくる。何があったのか、誰に連れて行かれたのか、そんなことを問いかけても何も教えてはくれない。</font></p><p><font size="3">　イーリンはその他にも、高いところから落ちてしまうし、水に沈んでしまうし、火を触って燃えてしまう。その度に周りの人間は、一瞬硬直する。少し経ってイーリンに駆け寄る、しかしイーリンは何事も無かったように、とことこと歩き出すのだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　週に一度、新しいチャイナドレスを買いに行く。</font><font size="3">彼女の手を引いて、それらしい店に入る。店内には色彩豊かなチャイナドレスが飾られている。足首までのサイズとミニスカートのサイズがある。黒いミニスカート風を選び購入する。</font></p><p><font size="3">　家に戻りセックスをする。人の女性器にそっくりな部分へ挿入し腰を動かす。イーリンは声を出さないし、感じることも無いので無表情のままだ。非常に淡白な手淫をしている気分になる。最後はそのまま中へ出してしまう。きっとイーリンは何も思っていないだろう。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　年末を向かえ大晦日の深夜が迫ってくる。イーリンの体は少しずつ透明になり、見えなくなっていく。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　また来年もお願いします。</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10885818215.html</link>
<pubDate>Sun, 08 May 2011 22:43:03 +0900</pubDate>
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<title>そこまではよかった</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">　単調な造りの部屋には、そこにあるべき物しか無かった。まあまあの速度で体を一周させたなら、そこに何が置いてあったか、配色はどうだったのか、全てを言い当てられそうな単調さである。</font></p><p><font size="3">　その答えを述べるならば、赤と黒の配色に、テーブルが一つ、椅子が二つ、人間が三人、蝋燭がテーブルの中央にあり、その横には花が活けてあり、少し遠くに風景画が掛けられている。時計もクーラーもテレビも無い。</font></p><p><font size="3">　そこには無言の人間と、目の保養にならない絵と、飽き飽きする草木の臭いと、不思議な存在感のみが、お互いを侵食しないよう慎重にバランスを保っていた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　向いに座っている黒服の坊主頭が、どこからか鉛筆を取り出した。鉛筆には透明のプラスッチクでできたキャップがはめ込まれていた。六角形のそれを手の平で転がして、テーブルの上にそのまま放った。</font></p><p><font size="3">　鉛筆はある程度のスピードで転がり、あるタイミングで速度を失い、そして静止した。</font></p><p><font size="3">「油絵だ！　油絵をここに持ってこい」</font></p><p><font size="3">　坊主の男は隣で立っている、人形のような女にそう指示した。</font></p><p><font size="3">　人形のような女は口をずっと開けている。とても綺麗な容姿なのだが、その開け放たれた口から涎が垂れていて残念だ。人形のような女は壁に掛けられた油絵を手に取り、テーブルの上にゆっくりと置いた。</font></p><p><font size="3">「この絵が何かわかるか？」</font></p><p><font size="3">　男は絵から目線を話さないまま訴えかけた。きっと私に話しかけているのだろうと感じた。</font></p><p><font size="3">「……。どこでしょう？　どこかの港町、遠くから写された描写を丁寧に描いている」</font></p><p><font size="3">「ほお。これはどこだ？」</font></p><p><font size="3">　坊主頭が嬉しそうに声のトーンを変えた。隣で口を開けたまま立っている人形のような女は微動だにしないが、坊主頭のトーンに面食らっている様で、体を小刻みに動かしている。小便を我慢しているようにも見えるし、誰にも見つからないようこっそりと自慰をしているようにも見えた。</font></p><p><font size="3">「どこか？　場所は特定できない。海が側にあり、白を基調とした欧風な様相。たぶんギリシャか、その近くか、ギリシャに強く影響を持っているどこか」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　壁をそって蜘蛛が這っている。蜘蛛は特別な存在をアピールするように、黄色く輝いていた。天井を見上げれば、そこにライトスタンドが浮いている。平面に置かれることを仕様としている物を、強力な粘着剤で強引に逆さまに固定された、本来の機能を無視された使い方と感じる。そして灯りはそのものから灯されていない。</font></p><p><font size="3">　乾いてしまったウェットティッシュ、イヤホンが無くなったi Pod、埃まみれの空気清浄機、温くなったコーラ。</font></p><p><font size="3">　本来の機能を果たさない媒体はそこらに転がっている。それらと同じように意味を成さない、役目を終えた、ポンコツが宙に浮いていて、自分を見下ろしている。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「よろしい。この絵は何を訴えている？」</font></p><p><font size="3">　抑揚を書いたトーンに戻った。まだ無言のままの方が幸せだった。女も空気を読んで口を閉めた。床にだらしなくこぼれ落ちた自分の唾液を見つめながら、口の周りをそそくさと拭った。</font></p><p><font size="3">「訴えることなど何もない。ただそこにある情景を我々に誇示している。豆のように遠くに確認できる人間が、今まさに飛び降りようとしている瞬間を捕えている。現場証拠だね」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　男は女の手を強く引き奥へ消えていった。ほどなくして奥から女の喘ぎ声が聞こえてきた。どうやら男は女に欲情をぶつけているようだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　意味を見出せないことへ夢中になることは難しい。だから予想や真実に近い企てを空想して、こちらから働きかける行為が必要になる。意味の無い、存在しない、そんな空白を埋めるのはいつも、私たち自身であるのだから。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　奥から声が聞こえなくなった。そっと席を立ち、物音立てぬよう歩き、奥の空間を見てみた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　</font></p><p><font size="3"><br></font></p>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10719375405.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Nov 2010 02:29:49 +0900</pubDate>
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<title>劣勢なので</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">「私は人間の格好をした幽霊なのです」</font></p><p><font size="3">「何を言ってるんですか？　私の目にはしっかりとあなたの格好が見えている。脚だってしっかり床についている」</font></p><p><font size="3">「ええ、そういうことは生きている人間が思い込んでいるだけであって、実際は違うことがたくさんあるのです」</font></p><p><font size="3">「例えば？」</font></p><p><font size="3">「色黒な幽霊が居ます。幽霊と言えば青白いんでしょうけどね」</font></p><p><font size="3">「う～ん、確かにそういう思い込みがある」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　女の言葉一句一句を丁寧に、市販の大学ノートに書き写していった。ボールペンを握る指先は不思議と震えていなかった。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「手首を曲げて、指先を下に垂らすポーズ。あんな格好はしません。基本的には、生きていた時と全く同じ生態です。幽霊が死んでいるのなら、生態という言い方は間違いかもしれませんが」</font></p><p><font size="3">「宙に浮いたり、行きたいところにワープできたりはするんですよね？」</font></p><p><font size="3">「幽霊によると思います。死んだ原因が何であるのか、その理由にどれだけの強い念があるのか、そういう因果が関係しているようです。私は基本的にはそういうこはできません。特に誰かを憎んでいるわけでも、前世にやり残してきたこともありませんから」</font></p><p><font size="3">「喉は渇きますか？　コーヒーでも……」</font></p><p><font size="3">「幽霊は食事をしません。疲れませんし、眠たくなりませんし、痛みを感じません。それらは人間と一緒では無いですね」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　自分が飲むためのコーヒーを煎れるため、湯を沸かしながら考えた。全く信じられない、どう見ても気の狂った人間としか思えない。暇なのか？　と。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　何故俺の前に現れたのだ？　ふわふわした疑念を暴くために、もう少し幾つかの質問をしなければならないと思った。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「そういえば未だお名前を伺ってませんね」</font></p><p><font size="3">「名前？　そんなことは今、重要ではありません。"女"で結構ですよ」</font></p><p><font size="3">「お、女。しかしそれはちょっと困るというか、呼びにくいですね。死前のお名前を教えて頂けると……」</font></p><p><font size="3">「まゆ」</font></p><p><font size="3">「まゆさんですか」</font></p><p><font size="3">「あなたのお名前はきよかわきよしさんでしょ」</font></p><p><font size="3">「な、何故知ってるので？」</font></p><p><font size="3">「私は幽霊ですもの。どんな字を書くのかしら？」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　女が置いた用紙に、清川清と書いた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　上から読んでも下から読んでも清川清。このことが深いトラウマになっている。子供の頃は、これを理由にからかわれた。テスト用紙に名前を書く時、誰かに見られて笑われているような気がした。病院でフルネームを呼ばれると恥ずかしくなった。だから自分の名前が嫌でしょうがない。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「まゆさん。私にはあなたの話を信じることができません。そしてあなたが何故、今私の前に現れたのか未だにわかりません」</font></p><p><font size="3">「結論を急ぐ必要はありません。あなたが信じるまでゆっくり時が経つのを待てば良いのです」</font></p><p><font size="3">「そう言われましても、私には婚約者がいる。仕事だってある。あなたと一緒に居るわけには……」</font></p><p><font size="3">「大丈夫です。あなたにとって都合の悪い人からは、私の姿は見えませんから。日常生活で邪魔したりもしません。心配不要です」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　それから数時間が経って、仕事を終えた妻の麻美が帰宅した。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「ただいま！　ちょっと遅くなっちゃった」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　緊張で震える体を抑えることができなかった。それもそのはず、隣に見知らぬ若い女が座っているのだから。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「ねえ！　いないの？」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　麻美が居間を覗いた。ソファーには、自分と見知らぬ女が隣接して座っている。飛び出そうになっている心臓が、目に見えてしまいそうなほどドクドクと鼓動していた。それ以上に女の姿が妻の目に入るのを恐れた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「あらいるじゃない。どうしたの？　顔色悪いけど」</font></p><p><font size="3">「あ、あああ。おかえり。ちょっと怖いTVを見てしまってね」</font></p><p><font size="3">「えええ、こんな時間に怖いTV何てやってる？」</font></p><p><font size="3">「んああ、怖いというか気持ち悪いというか。いや夢を見てたのか？」</font></p><p><font size="3">「ねえねえ、ちょっと大丈夫？」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　そういって麻美が近づいてきた。確かに女の姿は映っていないようだ、そう心から感じた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「熱は無いみたいね？　せっかくの休みなのに何してたの？」</font></p><p><font size="3">「い、いや、ずっと、ゴロゴロと」</font></p><p><font size="3">「ふ～ん。変な人」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　変なのはこの状況だ。結婚を間近に控えた男女の横に、青白い若い女が座っている。幽霊のような透明さは無い、全くそのまま人間そのものじゃないか。私の目には見えて、妻の目には見えていない。本当にこんなことがあるのだろうか？　自分に何度も確かめるようにそう心の中で考えた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　夕食時も晩酌時も、夜にセックスをするときだって、ずっと隣に女がいる。女がじっと私たちを見ている。女は時々話しかけてもきた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「美味しいくらい言いなさいよ」とか「疲れた奥さんに話題を求めないの」とか「あなたがもっと動かなきゃ」とか。しかし疑念は晴らされた。</font></p><p><font size="3">　麻美には、この女が見えていないし言葉も聞こえない。この女が言っていたとおり、自分に都合の悪い人間に対して、存在を消すことができるようだ。言い換えると、女にとって都合の良い人間だけに姿を見せることができて、本当の人間のように振舞える、という言い方のほうが正しいのかもしれない。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　こんな状況で射精ができるわけもなく、寝る寸前まで麻美は文句を言っていた。仕事が大変だったのか、今では小さい寝息を立てて、自分の肩に顔を乗せて寝ている。</font></p><p><font size="3">　女は立ち去るのでもなく、座るわけでもなく、ずっとベッドの横で黙って立っている。十分邪魔をしているじゃないか、と思いながら眠りに付いた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「あなた、もう８時よ！」</font></p><p><font size="3">「……あ、ああ」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　熟睡できなかった。何なら今日の仕事を休もうかとも思ったが、女が監視する中、この生活を送ることで、より一層の疲れをもたらしてくれそうだと思い、家を離れた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「いってらっしゃい」</font></p><p><font size="3">「いってきます」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　その後に、女も「いってらっしゃい」と加えた。当然それには応えなかった。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　仕事が手に付かない。何をするにもあの女のことが頭から離れない。自分に何かを頼んでいるのが聞こえて頷いているのだが、我に返ると何を頼まれたのかもわからなく、もう一度のその人に話を聞く。そんなやり取りが十数回に達したところで、上司に呼ばれた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「おい、お前今日顔色おかしいぞ。何かあったのか？」</font></p><p><font size="3">「いえ、ちょっと寝不足なだけのようです」</font></p><p><font size="3">「悪いことは言わないから、今日は早退しろ」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　他人に相談できるわけも無く、話の流れで本当に早退してしまった。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　不安な気持ちで鍵を開ける。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「ただいま」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　返事は無い。そして家の中には誰もいない。更に何か様子が変っている。テレビが無くなっている、パソコンも無い、ゴルフセットも無い、預金通帳と印鑑が無い。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　テーブルの上に二枚の紙が置かれていた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　保証人欄に清川清と書かれた借金返済の明細コピー。もう一つは自分が昨日メモしていたノートを切り取ったものだ。私は人間の格好をした幽霊なのです、のところに赤のペンで下線が引かれている。そこには、「バカな男ね」と添えられていた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　笑いながら逃亡している妻と女の顔が目に浮かんだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　別にこんな回りくどいことしなくてもできたろうに、と思えたのは数年後だった。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10714228842.html</link>
<pubDate>Sun, 21 Nov 2010 21:30:33 +0900</pubDate>
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<title>下書き</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">　きっと定時きっかりに席を立つため、十分前には帰る支度を始めているはずだ。支度といってもオフィスからの持ち運びを許されていない物がほとんどだから、鞄の中は手帳と折り畳み傘くらいなものだろう。同僚へ「お先です」の言葉も粗相にして、真っ先にエレベーターホールへ向かうだろうか。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　下降のボタンを押して、他に誰かが後から来ないか、そして中には誰も乗っていないでくれ。そんな風にできるだけ可能な限り、人との接触を避けて、会話を避けて、帰路に入るはずだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　帰路と言っても真っ直ぐ家に戻ってくるわけは無い。馴染みの定食屋で夕食を取るだろうか？　ちょっと早い晩酌をお気に入りのバーで嗜むだろうか？　それともあの女と待ち合わせをして、適当なホテルにでも消えるのだろうか？</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　今日の身形は、キートンのスーツにグレーの帯を占めていた。クールビズが始まるこの季節に、内職が９割９部の人間は何故そうするだろう？　答えは至ってシンプルだ。夜に誰かと会うからに決まっている。そしてそれは異性の女である確率が、９割９部９厘という驚異的な確率を叩く。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　奴は今頃、その女にしか見せない特別な表情と会話で接しているか、既に肉体を重ねている頃だ。世間的には少し速いペースだが、そうしないと帰りが非常に遅くなる。そのリスクと日常の穏やかな暮らしを天秤にかけるわけだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　ほろ酔いになった頃、部屋に戻るといつもと様子が違うことに気づく。部屋は真っ暗で人気がしない。手探りで明かりを付けようとするも、付かない。ブレーカーのスイッチ自体が落ちていることに辿り着くまで数分掛かるはずだ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　やっと灯りに辿り着いた時、最初に飛び込んでくる映像が、ベットに横たわる血まみれの女。もちろんそこは赤い液体塗料なわけで、別に低予算でトマトケチャップでもいいのだが、念には念をで臭いや粘性の違いを気づかれる可能性をゼロに近づけよう。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　呆然とした顔でその遺体を数秒見つめている。何か声を掛けるわけでもなく、体に触れるわけでもなく、ただただ辺りを見回す。数分してようやく近づいてきた奴を目掛けて、笑顔で突き刺す。包丁でいいだろうか？　いや、後々使えなくなって勿体無いから工作用カッターにしようか。しかし刃が折れて致命傷に至らないと全てが台無しになる。ここは市販されている小型のナイフにしておこう。殺傷能力は十分であろう。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　遺体は浴室に張ったホルマリンに漬けて、死臭の広がりと皮膚の腐敗を防ぐとしよう。肉体を少しずつ切断し毎日海中に投棄しよう。環境と魚には申し訳ないが、発見される前に餌として食されることだろう。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　実行はいつにしよう。よしっ</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　ここまで読んだ時、</font></p><p><font size="3">「あなた、遅かったわね。一応、冷蔵庫に御飯入ってるわよ」</font></p><p><font size="3">「あ、ああ。今日はちょっと食欲が無くてな」</font></p><p><font size="3">「あら風邪？　だめよ元気でいてもらわないと困るわ」</font></p><p><font size="3">　と話しかけられた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　寝床に付いている妻は、いつもと何も変わらぬそぶりで、目を擦りながら話しかけてきた。旦那の殺害計画の下書きを、机の上に置いたままであることが彼女のミスだったのか、わざとだったのか、彼女を殺してしまった今、知る由は無い。</font></p><br>
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<pubDate>Sun, 04 Jul 2010 23:21:51 +0900</pubDate>
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<title>【六人目】　大学教授花園</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">「当店のシステムはご存知ですか？」<br>「いいえ、ここは何をしているお店なのですか？」</font></p><p><font size="3">「当店は、一号室から六号室までのどこかへ入室頂き、室内の女の子からサービスを受けていただきます。サービス内容や料金・時間は直談判となります。宜しいですか？」<br></font><font size="3">「それは違法なことなんじゃないのか？」</font></p><p><font size="3">「サービスがですか？　料金システムがですか？」</font></p><p><font size="3">「どちらもだよ」</font></p><p><font size="3">「とんでもございません。法律を遵守して経営させていただいております」</font></p><p><font size="3">「なるほど。じゃあ三号室の桜をお願いできるかい？」<br>「かしこまりました」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　階段を上る客の足音が響いてきて、自分の部屋なのかどうか期待を寄せる。私は日の大半をこの六畳一間の湿った部屋で過ごしている。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　扉がノックされ、心臓がそれまでと少し違うスピードで揺れ出した。<br></font><font size="3">「いらっしゃいませ」<br>　見覚えのある人間が現れた。そして顔から血の気が引いた。<br>「お、お父さん！」<br>「そんな格好で何をしているんだ、桜」<br>　父親が入ってきて、部屋を隅から隅まで観察し始めた。</font></p><p><font size="3">「お前こんな湿った部屋で何してるんだ？」</font></p><p><font size="3">　父親の顔には怒りのような、それを通り越した呆れのような、複雑な表情が浮かんでいる。</font></p><p><font size="3">「ええっと、サービスを、色々なサービスを……」言葉に詰まる。</font></p><p><font size="3">「サービス？　例えば？」</font></p><p><font size="3">「お客さんと話をしたり、一緒に御飯を食べたり……」</font></p><p><font size="3">「では、何故風呂とベッドがあるんだ？」</font></p><p><font size="3">「あう、あああ」最悪だ。</font></p><p><font size="3">　父親はこういう店に入る人間では無い。どこからか情報を手に入れて、娘を叱りにきたことは明白だった。</font></p><p><font size="3">　室内はこれまで以上に湿気を帯びて、全ての音がワンテンポずれて聞こえてくるような感覚がする。終いに父親の姿もぼやけて見えて、あれ？　何だろうこの感覚は……そこで意識を失った。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　目が覚めるとそこは、自宅でも病院のベッドでもなく、見慣れない個室だった。そして直にその意味がわかった。私は二号室に昇格したのだと。</font></p><p><font size="3">　二号室は牢獄のように暗く、黒く、風呂も存在しない。そして何より、私の体はギシギシ音がなるパイプベッドに固定されていて、身動きが取れない。これから何ヶ月いや何年という時間をこの姿のまま過ごす。</font></p><p><font size="3">　それが二号室の試練である。この苦しみ(喜び？)を乗り越えなければ、一号室には入れない。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　それから一週間が過ぎた。三号室との違いは、客質である。相手を人間とは考えていない、そんな感情の人間が大半だった。性欲を私にぶちはけて、満足して笑みを浮かべながら部屋を出て行く。また来るぞと声は出さないが、心の中に響いてくるようだ。</font></p><p><font size="3">　食事は一日三回スタッフから与えられる。当然体の拘束は解いてもらえない。</font></p><p><font size="3">　もちろん風呂にも入れない。体の隅々をスタッフに拭いて貰うだけの生活。介護されているような感覚になる。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　昔から思っていた疑問、どうして部屋の番号が減っていくのかと。こんなに待遇のよい店をどうして辞める人間がいるのかと、簡単だった。この二号室があって、誰もが嫌になるんだ。きっと昨日一号室か二号室の人間が辞めた(または死んだ)のだろう。でも私は辞めない。このままこの部屋で人生を終えようと屈しない覚悟だ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　私は外界が怖い。出たくない。だからこのまま永遠に私を飼育して下さい。どうかお願いいたします。老化して客が付かなくなった時は、私に死を与えてください。怖いんです、自分で死ぬのは。だから最後まで甘えてもいいですか？</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10488521903.html</link>
<pubDate>Mon, 22 Mar 2010 18:43:00 +0900</pubDate>
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<title>少しだけ見えてる</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">　ねえ教えてよ。</font></p><p><font size="3">　そうやってまたはぐらかすんだ。</font></p><p><font size="3">　もういい。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　全身を駆け巡る血に、赤黒い温かみと鉄分の冷たさを同時に感じた。体内という空間は、自分からとても近いのに決して見る事を許されない秘密の領域なんだと改めて実感する。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　でも、少しだけ見えてることがある。見えないふりをしたほうがいいのか、見えてることを教えたほうがいいのか、悩みだしてからもう半年だ。世間は秋になって紅葉の匂いを醸し出しているのに、私は至って平坦だ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　何？</font></p><p><font size="3">　そんなこと聞いてない。</font></p><p><font size="3">　何であんたが怒ってるわけ？</font></p><p><font size="3">　ん、じゃないよ。逆ギレしないでよ。誤りなさいよ。</font></p><p><font size="3">　誤りなさい。</font></p><p><font size="3">　ごめんなさいでしょ？</font></p><p><font size="3">　何で今度は口が尖がるのよ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　あいつが押し付けた手の平から、私の体内に悪魔が入り込んできた。</font></p><p><font size="3">　自分がどういう場面にもっていきたいのかわからなくなる。何が自分にとって喜ばしいことなのか、何が自分に嫌な空気なのかわからない。ずっとわからない。</font></p><p><font size="3">　自分自身のこともわからずに人と付き合うことはやめよう。時間を掛けて自分を見つめなおそう。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「ねえ、教えて。この映画おもしろいの？」</font></p><p><font size="3">「うん、今のところはおもしろくないね」</font></p><p><font size="3">「疲れたから横になっていい？」</font></p><p><font size="3">「いいよ」</font></p><p><font size="3">「汗臭いよね、この辺」</font></p><p><font size="3">『ジーパンは洗わない』</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　あいつ本当に戻ってこない気だろうか。私はその場に立ち尽くして空を見ていた。空は曇って、つまらない色をしている。風はゆっくり、それでいて冷たく、頬にぶつかってきた。</font></p><p><font size="3">　何もやることはない。</font></p><p><font size="3">　用事もない。</font></p><p><font size="3">　たぶん何時間でもこの場で待ってられるよ。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「私、仕事辞めようかなって思ってるんだ」</font></p><p><font size="3">「……」</font></p><p><font size="3">「人間関係に疲れたなって思うの、最近」</font></p><p><font size="3">「違う仕事探すの？」</font></p><p><font size="3">「しばらくゆっくりしたい」</font></p><p><font size="3">「……そっか。それもいいかもね」</font></p><p><font size="3">「かもって？」</font></p><p><font size="3">「え？</font><font size="3">」</font></p><p><font size="3">「かもって何が？」</font></p><p><font size="3">「ん？」</font></p><p><font size="3">「私のことなんて他人事？」</font></p><p><font size="3">「まさか、自分で決めたことを俺が口挟むのも……」</font></p><p><font size="3">「何かそれ頼りない」</font></p><p><font size="3">「何でだよ……」</font></p><p><font size="3">「もっとこうしてとか、ああしてとか、私に言ってよ」</font></p><font size="3"><p><font size="3">「……」</font></p><p>「何もないかあ」</p><p>「お前さ」</p><br><p>　カー、カー、カラスが鳴く。</p><p>　遠くからトラックの騒音が響いてる。</p><p>　空色は少しずつ明るみを帯びて、逆戻りはしないようだ。</p><p>　ねえ、さっきから、そこから見てるでしょ？　わかってるよ。</p><p>　ねえってば。</p><br><p>「心配なんだな」</p><p>「はあ？」</p><p>「大丈夫だよ」</p><p>「だから何が？」</p><p>「一人で色々考えたり決めたりするのが不安なんでしょ？」</p><p>「それに気づけたらそう言うなよ」</p><p>「いてっ」</p><br><p>　朝になったね。半袖は寒いんじゃないの？</p><p>　明るくなってきたよ。そんな所に立ってたら不審に思われちゃうでしょ。</p><p>　ねえ。</p><p>　あの時、どうして止めてくれなかったの？</p><p>　うん、そっか。</p><p>　今日は雨だよ。傘なんて持ってきてないでしょ？</p><p>　始発まで後３０分くらいかな。</p><p>　うん。</p><br><p>「暖かい」</p><p>「だろ？」</p><p>「でも硬くなってるよ」</p><p>「そういう風にできてるんだよ」</p><p>「プルプル震えてるし」</p><p>「お前だって硬くなってるよ」</p><p>「それは、そうできてるんだよ」</p><p>「なあ」</p><p>「ね」</p><p>「この映画おもしろくねえな」</p><p>「意味わからないし暗くなる」</p><p>「止める？」</p><p>「でもこの後何かありそうじゃない？」　</p><p>「無いでしょ」</p><p>「あれフニャフニャになってきたよ」</p><br><p>　少しだけ見えてるよ。</p></font>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10380943223.html</link>
<pubDate>Wed, 04 Nov 2009 23:01:26 +0900</pubDate>
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<title>【五人目】　芸能人高橋　</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">「当店のシステムはご存知ですか？」<br>「……。いいえ」<br>「当店は、一号室から六号室までのどこかへ入室頂き、室内の女の子からサービスを受けていただきます。サービス内容や料金・時間は直談判となります。宜しいですか？」<br>「……。わかった」<br>「では、どの子にいたしますか？」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　階段を上る客の足音が響いてきて、自分の部屋なのかどうか期待を寄せる。私は日の大半をこの六畳一間の湿った部屋で過ごしている。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　扉がノックされ、心臓がそれまでと少し違うスピードで揺れ出した。<br>「いらっしゃいませ」<br>　深い帽子がサングラスに被っている。私の思考が正しければ、この人間は危険な人物か有名な人物と予想できる。</font></p><p><font size="3">「……。この部屋にカメラや録音機は付いているかね？」</font></p><p><font size="3">　男は慎重に言葉を選びながら、静かだが<span>滑舌</span>の良い口調で問いかけた。しかし男が危険なのか有名なのかは、依然この質問から判断することが難しい。</font></p><p><font size="3">「当店はお客様のプライバシーを完全に保護いたします。ご安心ください」</font></p><p><font size="3">　警戒する男をベッドに座らせて、隣に座った。<br>「こんばんは。桜と申します」、写真顔入りの名刺を渡し、毎日練習してきた笑顔を見せる。<br>　男はしばらく考えてサングラスを外した。</font></p><p><font size="3">「あっ！」思わず声が漏れてしまった。</font></p><p><font size="3">「……」</font></p><p><font size="3">「も、申し訳御座いません。つい」</font></p><p><font size="3">「……。構わないよ、どこでも同じ反応を受ける」</font></p><p><font size="3">　男は今を時めく旬の芸能人であった。確か、既婚者だった気がするが……。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「どのようなプレイをご希望ですか？」<br>「……。普通がいいんだ。普通でいいんだ」<br>　男は遠くを見つめるように、澄んだ目をしている。</font></p><p><font size="3">「かしこまりました。その他に希望は御座いますか？」<br>「……。細かいことは君に任せるよ」<br>「コスチュームのご希望もよろしいですか？」<br>「……。和服もあるのかい？」</font></p><p><font size="3">「はい、御座います」</font></p><p><font size="3">　男は黒と紫の着物を選んだ。<br>「合計、五万円になります。宜しいですか？」<br>「……。ああ」</font></p><p><font size="3">　男は光り輝くクレジットカードを差し出した。しかし凝視すると財布との摩擦で擦れた傷が、細かく確認できた。頻繁に使っている証なのだろう。<br></font><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">「#123お願いします」<br>　備え付けの内線電話で私は、この男とのプレイに必要なアイテムを、スタッフに告げた。数分後、スタッフがアイテムを持ってきて、直ぐに立ち去った。<br>「お風呂はどうしますか？」<br>「……。入ろうか」<br>「かしこまりました」</font></p><p><font size="3">　男は太い腕をバスタブに載せ、私の入浴を迎え入れた。</font></p><p><font size="3">「何とお呼びしましょう……？」</font></p><p><font size="3">「……。高橋、それが俺の本名だ」</font></p><p><font size="3">「高橋さんの演技すごいですよね。私が一番好きな映画は”五臓六腑のその下で”です」</font></p><p><font size="3">　お湯が温まってくる。</font></p><p><font size="3">「……。若いのにずいぶん前の作品を知ってるんだね、桜さんだったかな？」</font></p><p><font size="3">「はい。桜は本名です。映画のヒロインが桜だったので印象的だったんです」</font></p><p><font size="3">「……。なるほど、そうだったね。そうかそうか」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　弄られた着物の下から白い太ももが露になった。高橋は太ももから下方に舌をグラインドさせて、足袋に鼻をつけた。数秒して再び太ももまで顔が戻ってくる。高橋はプログラムされたマッサージチェアのローラーのように精密に動いた。</font></p><font size="3"><p>「最近、妻と寝ていない」</p><p>　初めて高橋から話しかけてきた。</p><p>「私が代わりになれますかどうか」</p><p>「代わり？　君は君だ。代わりになる必要はない」<br>　高橋は着物を上半身まで捲り上げた。顔が着物で覆われ目隠しの役割を果たす格好となった。高橋の硬い髭がお腹を刺激して、思わず感じてしまう。抑えていた声が漏れる。長い時間愛撫された後、着物を剥ぎ取られた。もう恥部は決壊して洪水を引き起こしていた。</p><p>「ゴムを付けても構わないね？」</p><p>「お客様がそうされることを希望するならば構いません」</p><p>　こけしのように太い物が入ってきた。喘ぎ声を出しながら色々な気持ちがこみ上げてきた。この男は今もセックスを演じる役者なのだろうか、それとも純粋にプライベートでセックスをしているのだろうか。妻と最近寝ていないのは、長年の結婚生活による時間の問題なのだろうか、もしかしたらこの巨根を受け入れるのが怖いのではないだろうか。</p><br><br><p><font size="3">「ありがとう。とても満足できるものだった。これはそのお礼と、君を信用しているが、口止め料と思って頂きたい」</font></p><p><font size="3">「ありがたく頂戴いたします。</font><font size="3">またのご指名お待ちしております」</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">　封筒には札束が入っていた。私は何度も枚数を数えなおしたが、何度やっても枚数は百だった。</font></p><p><font size="3">　今日も私は一人の男の願望をかなえた。これでまた一歩近づいた。<br></font></p></font>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10363388088.html</link>
<pubDate>Mon, 12 Oct 2009 20:48:47 +0900</pubDate>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10346399188.html</link>
<pubDate>Sun, 20 Sep 2009 05:38:06 +0900</pubDate>
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<link>https://ameblo.jp/smking/entry-10341432073.html</link>
<pubDate>Sun, 13 Sep 2009 01:44:22 +0900</pubDate>
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