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<title>ほこりも笑うよちゃむちゃん**</title>
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<description>足を運んでいただき、ありがとうございます。私が書きました小説を掲載いたします。読んでくださると非常に嬉しいです♪今後もよろしくお願いいたします。</description>
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<title>完結</title>
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<![CDATA[ 「大人を殺す」<br>ようやくアップ終わりました<img src="https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/029.gif" alt="あせる"><br>長かったです。お付き合いいただいた方、もしいらっしゃいましたら全力でお礼申し上げます。<br><br><br>某新人賞の作品を書きつつ、こちらにもまた、今まで書いたものをアップしていきたいと思います。<br>新聞に掲載されている小説並みの文量で、連載なんかも考えています。<br><br><br>今後とも、よろしくお願いいたします<img src="https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/139.gif" alt="ニコニコ"><br><br><br>すみれ子<img src="https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/057.gif" alt="黄色い花"><br><br><br><br><br>もしよろしければ、お願いいたします<img src="https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/031.gif" alt="ドキドキ"><br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 10:01:33 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　ラスト</title>
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<![CDATA[ 　兄がいつも使っていた部屋の中央で、しばらくの間佇み、そして決意したように彼女は目的の物を探し始める。本棚、机の上、窓辺、洋服ダンス。見つからない。悲しそうに唇を歪めた彼女がベッドに腰掛けると、枕元にそれはあった。自分たちがもっとずっと幼かった頃に、両親が兄妹揃いで買ってくれたペンダントだ。鎖に通された指輪に、小さな星が二つぶら下がっている。マナは肌身離さずつけていたのだが、兄は違った。彼は寝る時にしかペンダントをつけなかった。妹が一度その理由を訊ねると、彼は言った。<br>「とっておきの物は、とっておきの時にしか使わないんだよ」<br>　今、その記憶が彼女の脳裏に蘇り、胸を錐(きり)で突き刺すような痛みを促した。マナはペンダントを右手に持ち、階下へ向かった。霧雨が、廊下の窓を細かい粒で覆っている。鉛色の重苦しい雲が広がり、地上の光を吸収し、分厚く成長していた。風が泣いている。生温い、粘着質な風だ。<br>　マナは居間を抜け、そのまま外へ出た。傘も持たず、雨に濡れるのも気にせずに。<br>　家の前は石畳の広場になっており、中央には相変わらず時の止まった噴水があった。他の子供たちの気配は全くない。だが彼女にとってはどうでもよいことだった。つかの間の平和は過ぎ去ったのだ。何が起ころうと不思議ではない。<br>　噴水の端に腰掛けたマナの髪に、無数の雨粒が降り掛かり、濃い茶色に変わった。<br>　ペンダントを握りしめる。兄と、両親。その不透明な記憶。<br>（あたしたち、どうすればよかったのかしら）<br>　マナの心に、やりきれない後悔の念がわき起こった。<br>（もっと穏やかに暮らせなかったのかしら。もっと優しく、許し合って………）<br>　突然、彼女は言い知れぬほどの焦燥の予感を覚え、顔を上げた。痺れるような感覚が胸を中心に、全身へと駆け巡った。<br>　遠くの空に黒煙が上がる。霧雨の存在など、物ともせず。<br>　マナは、街に子供の気配がない理由に思い至った。そして周囲に大人たちの死体がないことにも。<br>（焼いてるんだ！）<br>　そして彼女は皆が例の遊戯に飽き、生きる目的を失いつつあることに気がついた。（大人たちを、みんな焼くなんて………）<br>　古い世界を生きた大人たちの死体がなくなってしまえば、子供たちは二度と後戻りは出来ない。彼らにそれだけの覚悟はあるのだろうか？<br>（だめよ、だめ。みんな、やめて………）<br>　マナは両手でペンダントを握りしめ、祈り始めた。<br>（何を祈ればいいの？）<br>　しかし彼女にはわかっていた。この世界が、幻想に覆われたまやかしの世界が、子供たちの無邪気なエゴで創られた遊戯の舞台が現れてから、彼女はずっとこうすべきだと知っていた。<br>　マナは祈った。<br>　大人たちが生き返ってくれるよう、自らの命をあげて祈った。<br>（死体がなくなってはだめ。彼らは生き返るわ。そしてまたあたしたちと一緒に暮らすの。やり直せるわ。いつだって、平和はそうやって手に入れるんだもの………）<br>　彼女の手のひらが、ちりちりとした熱を帯びた。全身にかかる重力が強くなったようだった。皮膚がざわつく。魂が、頭のてっぺんから浮遊していくような錯覚に襲われた。<br>（生き返って………）<br>　マナは祈り続けた。つむった瞼の裏に、最後に見た兄の顔が浮かんだ。知らずに涙が流れ落ちてくる。<br>　どのくらいの間そうしていたのだろう。<br>　マナが目を開けると、幾度目かの夜が訪れていた。<br>　変わらず、人の気配はない。<br>　体を回して辺りを見渡してみると、彼女が座っている反対側に、いつか彼らが創った作品が、月明かりを受けて優雅に佇んでいた。雨は止んでいた。足音が、星屑の落下音のように空虚な街に響いた。<br>　死体の顔面に埋め込まれた無数の宝石が、彼女に問いかけるようにちらちらと銀色の光を揺らした。<br>　マナは、彼の足に触れた。<br>　温もりがあった。<br>　マナは黙って彼女を見上げた。周囲の世界が朦朧とし、輪郭を失っていくようだった。<br>（息をしてる………）マナはペンダントを握る手に力を込めた。（指が動いてる。血が、流れてる………）<br>　その時、不気味な咆哮が夜空と、マナの心を引き裂いた。<br>　苦痛と恐怖に満ちた、獣の声にも似ている。<br>　彼女の口が、大きく開いた。<br>　マナが、自分の祈りは叶えられたのだと気がつくと同時に、皮膚に宝石を埋め込まれた人間は、木箱で作られた台から下り、マナの前で四つん這いになって二度目の咆哮を始めていた。その姿は哀しかった。痛みのためだろうか、何かに耐えているのか、目の前の生き物は地面に爪を立て、割れたそれらの間から血を流している。<br>　太い糸で荒く縫われた頭からは、怪奇的な美を放つ、黄土色の花が見えた。彼は咆哮を続ける。月夜が無音の返答で、彼の存在を承認していた。<br>　マナは、悲劇の結末を目の当たりにし、悲しみの拍子を胸に刻み込まれているようだった。<br>　三度目の咆哮。<br>　マナは動いた。<br>　四つん這いになっている彼の首に手をかけ、とめどなく溢れる涙の背後から、愛と後悔の念に満ちた声をかけた。<br>「ごめんなさい………」<br>　そしてペンダントを首に掛けると、赤い涙で真っ赤になった彼女の頬に、自分の頬を重ねた。<br>「ごめんなさい………」<br>　彼女の叫びは途切れることはない。<br>　しかしマナは、彼女が口をつぐんでくれることを望んでいるわけではない。<br>　ただ彼女に感じて欲しかったのだ。自分の温もりを。<br>　街中で、悲鳴や泣き声、叫び声が上がる。<br>　再び新たな世界が訪れた。<br>　マナは、平和を願った。<br>　心の中で兄の名を呼び、目をつむる。<br>　瞼の裏の暗闇に、小さな希望の光が見えたような気がしたが、それはすぐに消えてしまった。<br>　だが彼女の胸は、奇妙な平安で溢れていた。<br>　とうとう朝が来るのだ。<br>　待ち望んでいた朝が。<br><br><br><br>（了）<br><br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590151810.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 10:00:13 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　３２</title>
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<![CDATA[ 　兄が呼んでいた。<br>　マナは目を開いた。<br>　変わらずの暗闇。しかし、彼女の心には変化があった。<br>　マナは羽目板をずらし、部屋を見回した。誰もいない。射し込む陽光の具合から、時刻は早朝とわかる。<br>　彼女は羽目板に手をかけてぶら下がり、手を離してベッドに下りた。途端に、部屋に充満した血の匂いに、マナの目の前は一瞬揺らいだ。薄緑色のカーペットには乾燥した血が、世界地図のようにも見える形でえび茶色にこびりついていた。それが誰の血かということはあえて考えず、彼女は部屋を出た。階下にも死体はなかった。リンタの断末魔が脳裏に蘇ったので、彼女は一度目をつむり、それらの記憶に蓋をしてから、死の匂いが支配する家を後にした。<br>　早朝の空は白く霞んでいて、和毛(にこげ)のような光をふわふわと空に漂わせている。<br>　朝日の道が眼前に敷かれ、マナはただ機械的に足を運んだ。<br>　大人が死ぬことによって得られた静寂。<br>　今ではそれは、彼女を狂わせんばかりに消耗させる。<br>　数体の死体を越え、時を忘れて歩き続けると、そこはもう自分が住んでいた街だった。<br>　兄の名を呼んだ。<br>　誰もいない。<br>　街に住んでいたであろう友人たちの名を呼んだ。<br>　誰もいない。<br>　マナは一人残され、水の止まった噴水の前に膝を抱えて座り、顔を埋(うず)めて泣いた。<br>　どうしようもなかったのだ。ほかに何が出来よう。<br>　マナの涙はとめどなく、熱を帯びて溢れ出した。<br>　迸(ほとばし)る嗚咽は彼女の息を詰まらせた。それでも彼女は泣き続けた。<br>　日が暮れ、夜が訪れた。彼女はそのままの体勢で、いつの間にか眠りについた。<br>　朝に迎えられ、再び悲嘆と絶望の日が始まると、彼女はようやく立ち上がった。<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590151142.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:59:19 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　３１</title>
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<![CDATA[ 　マナが目を開くと、そこはやはり暗闇だった。<br>　彼女の期待はあっさりと裏切られたわけだ。目が覚めれば、光の道のような朝日が頭上に差し込み、自分は何の変わりもなくベッドから出る。父親が少し酒を飲み過ぎて彼女の部屋に怒鳴り込みに来るかもしれないし、母親が絶望のあまり彼女をぶつかもしれなかったが、それでも彼女にとってはごく普通の、ありふれた愛しい日常だった。そんな日には必ず兄がいた。兄が彼女を守り、庇い、そして愛してくれた。<br>　自分の居場所を思い出すと、マナはそのままそこで死んでしまいたいと願った。今下には、きっと兄の死体が転がっているはずだ。マナの瞳には、尽きることのない水源のように、再び涙が溢れてきた。<br>　彼女は冷たい屋根裏の床に横たわった。もう二度と目覚めたくはないと願いながら瞳を閉じた。<br>　どうしたわけか、瞼の裏に白っぽい帯のような光が見える。<br>　しかしそれも幻影か。彼女の心は、荒れ狂う大海の波に飲まれる一滴のしずくだった。<br>　兄を想い、友人たちを偲(しの)び、大人たちに同情した。<br>　もう一度全てをやり直せるのなら、自分の幸福や平和などいらないと思った。<br>（あたしが死んで、全部が元通りになるなら、喜んでそうするのに………）<br>　彼女にとって、ただひとつの思考。<br>　それもすぐに、悲しみの海の中に沈んでいった。<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590150643.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:58:29 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　３０</title>
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<![CDATA[ （あの人たちは、大人たちに代わって、あたしたちに………）<br>　彼女がリビングを出る際、さらにもう一本の矢が家の中に飛び込んできた。それは台所のテーブルに、三十度ほどの角度で、気取ったように突き刺さった。<br>　夜明けを待てない悲劇。<br>　タツジの目から垂れた血が、階段を汚す。<br>　犬が吠える。ユイがすすり泣く。<br>　彼らは、先ほどまでユイとマナが寝ていた部屋に、一塊のバターのように身を寄せ合って駆け込んだ。<br>「うああぁぁぁ………！」<br>「大丈夫だよ………」コウは言ったが、矢を抜くか否かの判断は下せない。<br>「抜いて、その後にすぐ止血をするんだ」ミツキが言った。<br>　マナがベッドのシーツを剥ぎ取り、コウの横に立った。コウは決意したように顎を引き、呼吸を整えて矢に手をかけた。<br>「タツジ、少しの間動くなよ」<br>　コウが矢を引く直前、ミツキがタツジの口にタオルを詰めた。<br>「我慢しててね」ミツキが手の甲でタツジの頬を叩いた。<br>　コウは歯を食いしばり、矢を抜いた。矢は何かに引っかかっていて一瞬では抜けなかったが、彼は首尾よくやり遂げた。矢を抜いた跡の眼球には、奈落の渓谷のような黒い裂け目が、ぱっくりとそこにあった。血が流れ出た。マナは涙を流しながらシーツを差し出し、ミツキがそれで素早くタツジの目を押さえつけた。<br>　タツジのくぐもった悲鳴。ユイは肩を大きく上下させて、泣いている。まるで暗闇に怯えた赤ん坊のように。<br>「押さえてろ！」コウが叱咤するようにタツジに言うと、悲鳴を上げながらも、彼は自らの手でシーツを持った。侵食されるように、布が血の色に染まっていく。<br>　リンタが、窓の隙間から外の様子を窺った。<br>「人がたくさんいる」<br>「あいつら、何をするつもりだ？」コウが誰ともなしに問う。<br>「決まって、るじゃない」嗚咽の間から、ユイが鋭い口調で言った。「タツジを、見てよ………私たちを………殺す、つもりなんだわ！」<br>　タツジは肩を大きく上下させ、喘ぐように呼吸をしていた。汗をびっしょりとかいている。悲鳴は小さなうめき声に変わった。<br>「どうして？」ミツキが言った。<br>「自分たち以外の子供が、大人を殺したと思ってるんだ」コウが、タツジの目に包帯のように布を巻き付けながら言った。「だから生け贄を差し出して、神様に許してもらおうとしてるんだ。大人たちが帰ってくるように」<br>「私たち、何もしてないわ！」ユイが叫んだ。「大人は勝手に死んだのよ！」<br>「違うよ」コウが言う。「僕たちのせいなんだ………」<br>「僕が話をしてみるよ」リンタが部屋の隅で言った。彼の顔は疲れたように青ざめており、瞳だけが異様に熱っぽい輝きを帯びていた。まるで熱病に冒された人間のようだった。「大人たちが死んだことは、自分たちとは関係ないって説明してみるよ」<br>「ウタを殺した連中に、話が通じると思ってるのか？」歯の間から押し出すように、ミツキが言った。彼の怒りを前に、ユイが目を見開いた。これまでに、一度も見たことがない表情だったのだ。「タツジを見なよ。話して解決するとでも？」<br>「じゃあ、みんなで逃げるか？犬なんか使って、包囲されてるのに？」<br>　階下で、何かが割れる大きな音がした。そのすぐ後に、人々の声、号令、犬の咆哮、慌ただしい足音………<br>「何をしても無駄なら、何をしたって同じだよね」リンタが言う。「行って来る」<br>「やめろ！僕が行く！」コウが言った。リンタは哀れむように首を横に振った。<br>「マナを置いて行くなよ」<br>「まだ火は放つな！」階下の声が言う。<br>　リンタがドアノブに手をかけた。<br>　仲間を見捨てるわけではない、皆、自分が死ぬ運命にあることを悟ったのだった。リンタをその部屋に留めておいても、結局は皆死ぬか捕えられる。皆の顔には一様に、歪んだ悲嘆と悔しさの色が滲んでいた。<br>「僕の話し合いが失敗したら」リンタが振り返り言った。「その間に隠れるか、逃げるかしてよ。いいね？」<br>「行っちゃだめよ………死んじゃうわ」マナは両手で口を覆っていたので、その声は低く屈もっていた。<br>　リンタは部屋を出た。<br>　その後の展開は、空間と時間の軸が折り曲げられたかと思うくらいに早かった。リンタが階下の彼らに呼びかける声が聞こえた。ウタの名を出し、大人たちについて話した。リーダーらしき子供が声を張り上げた。「………ちは、美しかった世界を壊した野蛮な奴らめ！俺たちが取り戻す！」再びリンタの声。しかしその口調は悪いことに、ひどく怯えていた。<br>「隠れろ！」コウの言葉に、皆はそれぞれの場所に身を潜め始めた。ユイとミツキ、そしてタツジは別の部屋へ移った。<br>　死にたくはない。同胞だと思っていた人間などには、なおさら殺されたくはない。<br>　階下からリンタの悲鳴、あるいは断末魔。そして沈黙。<br>「探せ！」<br>　コウは先ほどのリンタと同じように、窓の隙間から外を見た。部屋のすぐ下にたくさんの見張りがいる。マナを振り返り、極度の緊張に引きつった顔で天井を示した。<br>「隠れろ」<br>「兄さんは？」<br>　コウは答えなかった。<br>「兄さんはどうするの！」<br>「静かにするんだ」コウはベッドの上に椅子を乗せ、天井の羽目板をずらし始めた。彼のこめかみからは汗が一筋流れ落ちる。「お前はこれで助かる」<br>「兄さんが一緒じゃなきゃ嫌よ！」<br>「僕は一度あいつらに見られてるから。それに僕なら大丈夫だよ」<br>　そして兄は、抵抗する妹を何とか天井裏へ上げ、羽目板をもとに戻した。かび臭い暗闇の中で、兄の声だけが響いた。<br>「見てろよ、お前は守ってやるからな。だから静かにしてろよ」<br>　マナは嗚咽を必死に堪え、溢れる涙の裏に兄の姿を浮かべた。<br>　階段を駆け上がる足音、多数。最初に聞こえてきたのは、タツジの叫び声。何かを投げ捨てるような、鈍い音。ミツキの抵抗の声。半狂乱でミツキの名を呼ぶユイ。水しぶきのような音。子供たちの無邪気な笑い声。部屋の扉が開く………<br>「………殺したな」コウの声。怒りと恐怖で震えているため、まるでビブラートがかかっているようだった。<br>「この世界をこんなふうにしたのは、邪悪な考えの子供たちだ」コウよりも低い声が答えた。相手は返り血を浴びているのかもしれない。刃物を持っているかもしれない。「そいつらが大人を殺した。僕らを庇護してくれていた、優しい大人たちを」<br>「違う！大人が僕たちに優しかったことなんて、一度もない！」<br>　少しの間。<br>「本当にそう思ってるのか？」<br>「大人がいない限り、僕たちは平和だ」<br>「嘘だ」<br>「僕は殺されない！」コウが叫んだ。<br>　しかしマナに聞こえてきたのは、わずかな抵抗の音。すぐにコウの苦しげな息づかいが響いた。どさりと倒れ込む音。コウは悲鳴らしい悲鳴も上げることなく沈黙した。<br>「切断しろ」<br>　その瞬間、マナは意識を失った。<br>　兄の死が、彼女の頭に重苦しい緞帳を下ろしたのだ。灰色の意識の中で、マナは兄の笑い声を聞いた。幸福に満ち、優しい、愛すべき兄の………<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a><br>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590150134.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:57:15 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　２９</title>
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<![CDATA[ 「何で起きてたんだ？」コウがソファに座り、濡れたタオルで頭や顔を拭きながら言った。「僕たちがいないことに気がついたの？」<br>　マナは、どこかから見つけてきた白いシャツを兄に渡して言った。<br>「あたしは、外から叫び声が聞こえたから起きたの」<br>　コウはシャツを着て、タオルをテーブルの上に放り投げた。<br>「俺もだよ」タツジが言った。<br>「みんなそうなんじゃないかな？」ミツキがユイを見て言う。<br>「私はミツキが起こしに来てくれなきゃ、知らなかったわ」<br>「やっぱりウタだったのね」マナが頬に睫毛の影を落とした。<br>「奴らは」リンタが言う。マナは血で汚れたシャツを、灰色の袋に入れていた。「どうやってウタを連れ出したんだ？」<br>「連れ出したわけじゃないよ」コウが深いため息をついた。「ウタは自分から出ていったんだ」<br>「でも裏口の扉が開いてた」と、タツジ。<br>「知らないよ。僕はウタが外へ出たから追ったんだ。それだけだ」<br>「おかしいなぁ」壁に凭(もた)れていたリンタが首を傾げた。「だったらこの家に侵入した人間の、目的は何だったんだろう？」<br>「ウタに何かしたんじゃない？」と、ユイ。「ね、ウタの様子、変じゃなかった？」<br>　コウは悲痛そうに顔をしかめた。<br>「別にそうは感じなかったけど………でも、そうだったかもしれない」<br>「どうやったのかわからないけど、それでもウタが外に出るように仕向けたのは間違いないな」タツジが確信に満ちた口調で言った。コウは、彼を訝しそうな目つきで見た。<br>　重苦しい湿った風に乗って、動物の声が聞こえてきた。マナの体が小さく震えた。彼女は今にも倒れんばかりの真っ青な顔をしている。薄い唇は半ば開き、絶えず不安の息を漏らしていた。それは彼らの身に起こった忌まわしい出来事のためばかりではなかった。彼女が今まで考えてきたことが、現実となって今、眼前に現れたためであった。<br>（あたしたちは勝手だった。これから、もっと悪いことが起きるかもしれない）<br>「ウタを………」タツジの声がかすかに震えた。「埋葬出来ないのか？」<br>　コウはゆっくりと首を横に振った。<br>　深い深い沈黙が下りた。そのまま数分間が過ぎた。<br>「お花をあげるなんて、朝でも良かったのに」ユイがスカートの裾で、大きな瞳に溜まった涙を拭った。<br>「朝になったら、すぐにここを離れよう」タツジが言った。<br>「もう眠れない」ユイはミツキの右腕に顔を埋(うず)めた。<br>　その時兄は、ゴミ袋を持ちながら、真っ青な顔をしている妹に気がついた。「大丈夫か？」<br>「うん………」<br>「ソファに横になれよ」<br>「平気………」<br>　兄の潤んだ瞳をのぞき込むと、とうとう彼女の小さな心は押し潰されてしまった。彼女はゴミ袋を掴んでいた手に力を込め、鼻孔を膨らませ、弾けた真珠のような涙を流して囁いた。<br>「ねえ、あたしたち、間違ってたんでしょ？」<br>　兄は凍り付いたように表情を失った。<br>「そうでしょ？あたしたち、どうかしてたんでしょ？どこかで正しい心を失ったんでしょ？」<br>「マナ」兄は乾いた口内に、恐怖の味を感じた。それはシャツについたウタの血の匂い、彼が焼けていく時の粗野で野蛮な肉の匂いだった。<br>「静かに！」突然タツジが右手を前に突き出して、皆を制した。「何か聞こえた！」<br>　確かに聞こえる。誰の耳にも。だがそれは決して、歓迎されるようなものではなかった。<br>　何故なら先ほど遠くで吠えていた犬が、今ではほんの数ブロック先にいるようだし、さらにその犬はとてつもなく興奮しているようだった。数人の人間が、声を押し殺して話している。何を話しているのかはわからなかったが、声は次第に、家を取り囲むように近づいて来ている。コウの話を聞いた今、それらが幸運の兆候とは言いがたかった。<br>　タツジが立ち上がった。<br>「外には出るなよ」リンタが言った。<br>「少し見るだけだ、大丈夫」<br>　そして彼は出窓に近寄り、引かれた草色のカーテンの隙間から外を見た。タツジの丸い背中が呼吸音と共に上下した。コウが彼の方へ近づこうとすると、マナが彼の腕を掴んだ。<br>「待て、何も見えない………」<br>　その時、妙な動きをして時間が止まった。ぷすっという空気が抜けるような音がした。カーテンがかすかに揺れた。タツジの動きが止まった。数秒間が無音のまま過ぎた。とうとうミツキが声をかける。<br>「タツジ？」<br>「う………あ………」タツジがぎこちない動きで振り返る。繰られた人形のようであり、また、支えを失った案山子のようにも見えた。「何だ………？」<br>　彼が皆に顔を向けた途端、目に見えない氷の糸が彼らを縛った。<br>「タツジ」<br>　一本の荒々しい作りの矢が、彼の右目に刺さっている。<br>　頬には黄色い液体と血が共に同じ道筋で流れ、中心を射抜かれた眼球は眼窩の奥深くにはまり、影の中に沈んでいる。<br>「ああ……あああぁ………うあぁぁ！」<br>　タツジの叫び声に我を取り戻したユイが、悲鳴を上げた。天地さえ同情を覚えるような声だった。しかしミツキにさえ、彼女の声は届かなかった。<br>「あぁぁあぁ………！」タツジが両手を宙に彷徨わせて、仲間のほうへ倒れ込むようにして歩いた。<br>「抜い、て………誰か」ミツキが走り寄ったが、リンタが叫んだ。<br>「だめだ！抜いたら出血が止まらなくなるかもしれない！」<br>「じゃあ、どうすればいい！？」<br>　その瞬間、季節外れの凍てつく冷気が、ミツキの頬を掠って吹き過ぎた。風は一本の矢となってソファに刺さり、ミツキの頬には一筋の血が伝った。<br>「みんな！二階に逃げろ！」コウが叫んだ。ミツキは反射的にユイの手を取り、コウに続いて階段を駆け上った。<br>　マナだけが見た。<br>　カーテンの隙間で、いたずらな悪鬼のような炎がいくつもちらつくのを。<br>　うごめく人々は、星空を背景に浮かび上がる、黄泉の生き物だった。犬はやみくもに吠え立てている。マナには彼らが何者なのか、漠然とだがわかるような気がした。胸が締め付けられた。<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590149242.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:56:15 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　２８</title>
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<![CDATA[ 　犬を放つ。<br>「追え」血を染み込ませたぼろ切れを持った少年が、敏捷そうな子供たちを前に言った。<br>「奴が逃げる時、この子が背中に血をかけたんだ」そしてがらくたの山の前に立つ、一等小柄な少女を指差した。少女は照れくさそうに俯いた。<br>「犬が血の匂いを辿る。そこに奴の間がいるはずだ」<br>　犬が勢いよく駆け出した。子供たちはそれに続いた。<br>　すでに星の姿もない。<br>　野生の動物の遠吠えが、彼らの背後で震えんばかりに力強く響いた。<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br>気にいっていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:55:07 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　２７</title>
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<![CDATA[ 　それに、彼は見た。星明かりを受けて鈍い黄土色に光る、毒々しい花を。<br>　コウは胃がでんぐり返るのを感じ、右手で口を押さえて体を折り曲げた。彼の意識は瞬時に理解出来なかったことが、無意識には可能だったようだ。体の反応は非常に早い。<br>（脳みそだ………）<br>　それは最悪で、非情で、目を覆うような事態だった。<br>　胃が落ち着くと、コウは頭だけ上げ、黄土色の物体があるその先を見た。引きずられたのだろう、草花が踏み倒され、黒くなった血がどこまでも伸びていた。<br>　彼は、額のべとつく汗を拭った。嘔吐こそしなかったが、胃液の酸っぱい味は喉元にへばりついていた。<br>（歩くんだ、音を立てるな、静かに息を吸え、見つかるな………）<br>　コウはそれらの言葉を、心の中で何度も繰り返しながら丘を下った。<br>　左手の森からは、夜に生きる動物たちの声が聞こえてきた。黒い遠吠え。夜空と呼応しているようだった。<br>（ウタを助けなきゃ）<br>　彼は、一度インプットされたプログラムを実行するかのごとくウタの行方を追って歩いた。血の跡を辿って。<br>　前方の何軒かの家を越える。海が広がっている。銀色の光を反射して、魚の巨大なうろこのようにきらきらと輝いている。<br>　青白い砂浜に、数十人の子供たちの姿が見えた。皆、たき火を囲んでいた。<br>　コウは身を隠す場所を探しながら、慎重に坂を下った。小さな茂み、がらくたの山などがその役に立った。柔らかい土が足の下で囁くような音を出した。<br>　砂浜の子供たちはコウに気がつかなかった。<br>　コウは森と反対側の斜面から砂浜に下りた。何かが見えた。大きくて、不気味な何か。<br>　子供たちの背丈の二倍ほどはある、まるで案山子のようだった。<br>　彼は不吉な予感を覚えた。先ほどの黄土色の物体を思い出した。<br>　たき火の煙が、黒い熱気を巻き上げて空へと吸い込まれていく。炎が妖艶に踊っていた。子供たちがふざけ合っている。炎に一等近い場所に、ほかの子供たちよりも体の大きな子供が数人立っていた。コウの場所からはっきりと見えるわけではないが、それでも彼らは周囲の子供たちとは異なり、手には鉈(なた)のような物を持ち、時折顔を寄せ合って何事か話していた。彼らはきっと格が違うのだ。<br>　コウは積まれたゴミの山の背後から、そっと彼らを見た。星々が隠れてしまっても、今では炎がある。<br>　先ほど案山子だと思っていた、あるいは思いたがっていた物は、彼の友人だった。十字に組まれた太い丸太に、ウタが括(くく)りつけられている。　<br>　両腕を失った友人。<br>　体を安定させるために、腰回りに何重(いくえ)にも針金が巻かれ、それが腹の肉に食い込んでいた。腹からの出血はない。その意味は………<br>（死んだあとに、やられたんだ………）不意に涙が出そうになった。<br>　うな垂れている友人の脳天は花開いていた。<br>　声が聞こえた。一人の子供が、他の子供たちを制した。<br>　驚いたことに、子供たちは皆自分たちと変わらない格好だった。異教徒的なペインティングも、衣装も身にまとっていなかった。<br>　彼らは一瞬にして、沈黙の海に沈んだ。現実の海は、とめどない波の音を率いて、眼前にあった。<br>「始めよう」<br>　リーダー格の一人がそう言い、たき火のほうへ、正確にはウタのほうへと歩み出た。炎の揺らぐ光に照らされ、コウのところからでも子供の顔がはっきりと見えた。やや肉付きのよい丸顔に、おうとつのないパーツを備えている。垂れた両目には、外見とは不釣り合いな峻厳な色を宿しており、急カーヴを描いた眉毛と相まって、彼の冷徹な性格が表れていた。くたびれたTシャツと紺色の短パンを履いていたが、その子供の物腰には気品がある。顎を上げ、鉈を右手に持ち、左手は腹の上に置いていた。<br>　コウは待った。たき火に群がる他の子供たちと同様に、息を殺して。<br>「今日の仕事は終わった。今夜も天に祈りを捧げよう。獲物はある」鉈を持った少年が言った。<br>　子供たちはウタを見上げて嘆息を漏らした。ウタの無惨な死体が、赤く輝いている。コウは再び吐き気を覚えたが、両手を口に押し当て、こみ上げてきたものを飲み込んだ。<br>　少年が続けた。<br>「この忌まわしい世界を消し去るために、生け贄を捧げたことを天に知らせよう。そして良き大人たちのためにも祈ろう。可哀想な大人たち。あんなにも俺たちによくしてくれたのに、誰かがこんなひどい仕打ちを………」<br>「開始！」<br>　別の声が叫んだ。低く、どっしりとした女の声だった。<br>　子供たちは一斉にうな垂れ、目をつむり、ポップコーンが弾けるような調子で祈りの言葉を唱え始めた。銘々が好きなように祈っているらしく、文句は統一されていない。誰もが熱心に祈っている。「良き大人たちのために」祈っている。<br>　その時コウは気がついた。砂浜の線に沿って、黒い塊がずらりと並んでいる。彼は目を凝らし、炎の光が丁度よく焦点を当ててくれるのを待った。すると間もなく、彼の視界に何とも不可解な物が映った。子供たちはまだ祈っている。<br>　それは大人たち。<br>　大人たちの死体が、まるで人形のように、海岸を囲むコンクリートの壁を背にして座らされていた。数十体の死体。それらは全て俯いている。死体というよりも、ぜんまいの切れた玩具と言ったほうが適切かもしれなかった。遊戯の犠牲になった死体はひとつもなかった。中には花束を添えられている死体もあった。<br>「終了」先ほど号令をかけた少女が言うと、皆従った。<br>　鉈を持った少年が、少女に何事か囁いた。少女は彼に答え、再び声を張り上げた。<br>「大人が殺されて日から、今日でちょうど二年が経ちました」<br>　子供たちは大きく頷いた。<br>「私たちが何故、このような生け贄を捧げるかはわかりますね？」そして少女は、子供たちの中で一番小さな子供を指して言った。「あなた、答えてみなさい」<br>　その子は決然とした様子で胸を張り、甲高く抑揚のない声で言った。<br>「大人たちが帰って来るようにです」<br>「そうです」少女は優しく頷く。「その通り。私たちも始めはこの自由を喜びました。でも、冷静にあたりを見回してみると、そこには何がありましたか？理不尽に殺され、惨めに横たわっている大人たちの死体です。彼らは何をしましたか？私たちに対して、命をもって償うようなことをしたのでしょうか？」<br>（したさ！）コウはどす黒い怒りに耳鳴りを覚えた。（何言ってるんだ。悪いのは大人に決まってるじゃないか！）<br>「中には悪い大人もいました。でもみんながみんな、そうじゃなかった」先ほどの子供が言った。<br>「私たちはそれを知っています。ですからこの世界を創り上げたのは、もっと憎しみに満ちた、頭の悪い子供たちなのです。私たちは同じ考え方をする子供たちを、仲間として歓迎します。すなわち、私たちの仲間にならない子供たちは、この世界を創るのに加担した悪い人間なのです。私たちは悪人を刈り取ります。そして生け贄として天に捧げ、昔の世界を取り戻すために力を尽くしているのです」<br>「ひとつ質問があります」毛羽立った麦わら帽子の、痩せた少年が言った。「一人残らず殺すことは出来ますか？僕たちの仲間ではない子供たちを、一人残らず殺せば世界は元通りになりますか？」<br>「きっとそうなります」<br>「神様や大人たちは許してくれますか？」<br>「私たちの心がけ次第で」<br>「じゃあ、焼いちゃおう！」数人の子供たちが一斉に声を上げ、心底愉快そうに笑った。<br>　コウは今すぐ逃げ出したい衝動に駆られたが、うなだれたウタが、自分を非難しているように思えて行動に移せなかった。<br>　そのうちに鉈を持った少年が、燃え盛る炎から松明に小さな炎を移し、丸太の下に敷き詰められた藁に放った。乾燥した藁は一気に炎を吸い込み、花開くように勢いよく燃え上がった。小石を投げた時のようなパチパチという小気味よい音が、コウの耳に届いた。<br>　人の体が焼けていく匂い、空に懺悔の思いを届ける黒煙、飛び出した脳みそ、ぶら下がる眼球………<br>「この腕はどうすればいいですか？」双子らしき子供二人が、ウタの腕を一本ずつ持っている。<br>「好きにしてもいいです」少女が答えた。<br>　それを聞くと、双子は腕を高く掲げ、嬉しそうに走り回った。<br>　コウの胃は、荒波のように動いている。吐き気も感じたが、それよりもひどいのは頭痛だった。ウタが焼け、灰になっていく匂いが、風下である彼のところに直接的に届くのだ。<br>「次の仕事の前に、十分休養を取るように」鉈を持った少年が言うと、子供たちは再び浮かれ騒ぎ始めた。<br>　ある者は踊り、ある者は歌い、ある者はウタの腕を投げ合って遊び………<br>　コウは身を乗り出しすぎたようだった。体を隠していたがらくたの山に肩がぶつかり、彼は我に返った。幸いなことに、がらくたの山は音を立てず崩れもしなかった。それでもコウは、鉈を持った少年が自分を見たような気がした。<br>　目が合ったようだった！<br>　赤く燃えた目は、射抜くようにコウをとらえた。<br>　その瞬間彼は、焦燥と恐怖の触手にしっかりと捕まってしまった。<br>　彼は逃げ出した。<br>　来た時のように身を隠しながら。<br>　だが、パニックのために慎重さを欠いていた。<br>（これじゃだめだ！見つかるぞ！）<br>　そうは思っても衝動には勝てなかった。逃げたい衝動、彼らから一刻も早く遠ざかりたい衝動、人間の焼ける匂いを避けたい衝動、人殺し人殺し人殺し………<br>　そしてコウは逃げ切った。鉈を持つ少年に見つかったかどうかはわからないが、追っ手がつかなかったことだけは確かだった。<br>　仲間のいる家が見えてきた。何故だろう、明かりがついている。<br>　扉の前に立つと、力まかせに何度も叩いた。鍵が閉まっていたからだ。<br>「僕だよ！開けてくれ………早く！」<br>　マナが現れた。彼は扉が突然開いたために支えをなくし、前につんのめった。その瞬間、異様なまでの疲労が彼の全身にのしかかった。ミツキが彼を抱きとめた。<br>「怪我をしてるのか？」<br>（怪我なんてものじゃないさ、ウタは怪我なんてもんじゃ………）<br>　ソファに座り、水を飲むと、コウは自分の体から強烈な鉄の匂いがすることに、不明瞭な意識の中で気がついた。<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<link>https://ameblo.jp/sumireko1031/entry-10590148128.html</link>
<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:54:23 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　２６</title>
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<![CDATA[ 「ウタはいたの？」マナが兄の顔をのぞき込んで言った。<br>「いや」コウは唇を噛んで頷いた。「一面が血の海だったよ………それに<br><br><br><br>（つづく）<br><br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:53:23 +0900</pubDate>
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<title>大人を殺す　２５</title>
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<![CDATA[ 　その後、脳天を叩き割ったのだ。<br>　視界の不利なコウにも、ウタの末路は容易く思い描けた。逃げる際に聞こえてきた彼の悲鳴と、それを断ち切るようなあの衝撃音。ウタの声は、スイッチを切ったようにぱったりと途絶えた。後に続いたのは不気味な静寂ではなく（コウはむしろそれを望んだのだが）、大勢の人間たちの興奮しきった笑い声、無数の息づかい。<br>（ウタは死んだんだ）<br>　丘を下り、森に逃げ込み、数十メートル先で仄かに煌めく光を目指して走っていた。そこに何があるのかはわかならかったが、彼の心は今しがたの衝撃を和らげてくれるものを、そして逃走の手助けになりそうな場所を、無意識のうちに探し求めていた。枝をかき分けて進んで行くと、空き地に出た。仄かな光の正体は、時折顔を見せる星々の明かりを受けた小川だった。<br>　コウの胸は、前進を焼けつくさんばかりの熱を持っていた。<br>　彼は走るのを止め、振り向き背後を窺った。荒い呼吸を極力抑え込む。周囲から聞こえる物音といえば、呪いの言葉を囁きながら通り過ぎる風の音、我関せずというようにそれぞれの営みを続けている動物たちの足音、遥か後方から聞こえてくる子供たちの気違いじみた笑い声。<br>　コウは数秒、数分、あるいは数十分、そのままの姿勢でじっとしていた。彼を追っている、狂乱のサーカスは次第に遠ざかっていくようだった。<br>（でも何も聞こえなくなるまでは、ここにいないと………）<br>　コウは小川の水を両手ですくって口に運んだ。ほのかに甘い水が、体を浄化するように滑り落ちていく。<br>　顔を洗い、もつれた髪の毛にも水をかけた。闇を映し込んだしずくが、彼の顎から伝い落ちた。<br>（戻らなきゃ）冷えた水に助けられ、彼はウタの惨劇について思い巡らせた。（たとえ死んでいようとも、だめだ、戻らなきゃ）<br>　ウタの断末魔が、鉄に付着した錆のように、彼の心にこびりついている。<br>（生きてればなおさら、助けを待ってるはずだ）<br>　彼には潔癖なまでの正義感があった。それ故、激しく大人を憎んだのだ。今も彼は自分が感じている死の恐怖よりも、友人の生存の可能性に心を動かれた。<br>（もしかしたらあれは全部、僕の心が作り出した幻かもしれない、あるいは………）<br>「きっとあれは、僕たちの知らない遊びなんだ」コウは声に出してそう言った。すると途端に心が軽くなった。<br>「遊びだ。僕たちがやっているような、ちょっと変わった遊びなんだ」<br>　そして彼は立ち上がり、茂る枝と葉の間からのぞく白っぽい星を目印にして、森を抜けた。<br>　遠く前方に広がる街は、数個の淡い光を残して眠っていた。コウにはそこが、自分とは完全に断絶された安住の地に思えた。<br>　彼は左に向かって歩いた。星空に、白く淡く照らし出された丘を目指した。<br>　そこにはすでに、何の気配も感じられなかった。先ほど友人が膝をついていた場所はといえば………<br><br><br>（つづく）<br><br><br><br>気に入っていただけましたら、お願いします。<br><a href="http://novel.blogmura.com/"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fnovel.blogmura.com%2Fimg%2Fnovel88_31.gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログへ"></a><br><a href="http://novel.blogmura.com/">にほんブログ村</a>
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<pubDate>Wed, 14 Jul 2010 09:52:44 +0900</pubDate>
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