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<title>カラッポのマネキン</title>
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<description>ウソと本当のミックスジュース。おいしくどうぞ。</description>
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<title>ラーメンの雫</title>
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<![CDATA[ 　僕は鞄をあけてハンカチを探して渡そうとした。すると柳沼さんは「濡れちゃうから」とにっこり微笑んで断った。ハンカチは濡れた物をふくためにある気もするが、ここまで濡れている柳沼さんにこのハンカチ一枚では何も出来ない気もして、腕ごとブランと下げた。何もできない。<br>「あっちですかね、会場」柳沼さんは、コンビニの屋根の下にも入らず歓迎会を行う居酒屋がある方向を指差した。濡れた手から雫が落ちる。<br>「たぶん、ええ」僕はぼんやりとその場に立ち尽くした。何から手をつければ良いのかわからない。そんな気持ちに襲われた。柳沼さんは目の前で、僕を待っているようで、ぼんやりと立っている。当然のように雨に濡れて。<br>「ちょっと待ってて」僕は店内に入り、大きめのバスタオルとビニール傘を買った。傘も、タオルも今から使います。なんだか慌てて少し大きな声になっていた。<br>　僕がタオルと傘を買う間、柳沼さんはずっと雨の中に立っていた。<br>「ちょっと」柳沼さんを手招きでコンビニの屋根の下に呼び、頭にタオルをかけた。「ふいた方がいいよ」<br>「ありがとうございます」柳沼さんは青い隙間（バスタオルは青いものしか無かった）から、ふにゃりと目を細めて微笑んだ。そして細い指をシャクシャクと動かし髪の毛を拭いた。僕はすることが無かったので、まだ半分だけ屋根から外に出ている柳沼さんの肩を、傘で隠した。<br>　傘に雨粒があたり、バララと音をたてる中、考えた。<br>　柳沼さんは濡れたまま会場に行くつもりなのだろうか。濡れたままの柳沼さんを連れていっても、連れていかなくても、途中で出会ってしまった僕の責任のような気がして、必死に考えた。<br>「タオル。濡れちゃってすいませんでした」<br>　柳沼さんは濡れた白いタオルを丁寧に何度も折り、小さくして僕に手渡した。拭いたとはいえ柳沼さんはビショ濡れで、僕は「いや、うん」と、まだ何かしなくてはならないのに言葉が見当たらずタオルをとりあえず受け取った。<br>「行きましょうか」柳沼さんは、もうあとは会場に行くだけだという晴れやかな笑顔で僕を見たが、下着がすけて見えるほど濡れている状態のまま飲み屋に連れて行くのはどうなのか。この子、少し普通じゃないのかもしれない。そう思ったと同時にじゃあ十分は普通なのかと問い、つかれてしまった。僕は一つため息を吐き出して言った。<br>「やっぱり着替えたほうがいいですよ」僕は傘を開いて、柳沼さんの上にさした。<br>「持ってません」<br>　柳沼さんはとても不安そうに言った。そりゃあそうだ。それは分かってるが、このまま行くのも。近くの店で服を買うというのはどうだろうと思いつきクルリを首を回したが、周りにはおでん屋とラーメン屋しか無かった。<br>「行きましょうか」柳沼さんは僕の傘からスルリと抜け出し、青になった交差点を渡りはじめた。僕はそれを追う形で歩き出した。傘にバララと雨粒が落ちる。柳沼さんはスタスタと交差点を歩き、角を曲がった。その迷いがない歩きに僕は逆に悩んだ。僕がおかしいのだろうか。下着が濡れたまま飲み会に行くのは普通なのだろうか。すくなくとも僕はいかない。気持ちが悪いし、それが言い訳になる。下着まで濡れてしまったんだ、いけなくてごめん。普通これから飲むのだ。途中で傘くらい買うだろう。<br>「どうして途中で傘を買わなかったの？」僕はやっと普通の質問をした。<br>「もう濡れていたから」柳沼さんの黒い革靴が水を含んでジュポと音をたてる。「もう濡れたからいいやと思って」<br>「そうか」僕はそれ以上聞くことが出来ず黙り込んだ。一度濡れたからもっと濡れても変わらない。そういう意味だろう。それは違うと思うが、確かにそんな気もしてきた。もう分からない。よく分からないが違う気がする。雨音が傘をバララと弾き、その下では柳沼さんの革靴がギュポ、ギュッポと断続的に音を立てた。この音が続く先は飲み会の会場だ。僕はびしょぬれの柳沼さんと一緒に居酒屋に、本当に行くのだろうか。頭のなかにその絵を浮かべてみたが、どう考えてもおかしい。<br>「やっぱり行くなら服変えたほうがいいよ」<br>　ギュポッという音が止まった。<br>「じゃあ、ここに入りましょう」<br>　柳沼さんが指をさした先にはネオンきらびやかなラブホテルだった。
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<pubDate>Sun, 17 Mar 2013 23:25:38 +0900</pubDate>
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<title>傘なき華</title>
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<![CDATA[ 　歩くと飲み屋に向かってる会社の人に会うかもしれない。僕は雨の中、大通りまで小走りで出てタクシーを拾うことにした。通り雨かと思ったが雨は激しく道をたたき、流れとなって本降りの顔を見せはじめていた。<br>　帰ろう。<br>　お酒を飲む気分ではなくなっていた。新人は歓迎している。でも何もお酒を飲んで歓迎する必要はない。僕はコンビニの入り口で空のタクシーが来るのを待った。一台、二台と見送るが全てに客が乗っていた。タクシーの隙間に何度かバスが見え、やはり傘を買ってバス亭まで歩くべきか、と思いながら、思ってるうちに空のタクシーが来るのではないかと外をぼんやり見ていた。<br>　随分と本降りになってきていた。白く雨煙があがる交差点の向こう。傘もささずに立っている女の人が見えた。そのすぐ後ろにはお弁当屋がある。傘を持っていない人は皆そこに避難しているのに、その人は直立姿勢で交差点に立っていた。そして青になった信号を、ゆっくりと腕をふって歩き出した。あまりにも堂々とした歩き方に、僕は目を離せなかった。その人は雨に濡れた前髪を耳にかけながら僕のところに歩いてきた。<br>「会場はこっちですか？」<br>　柳沼さんだった。<br>「会場も、なにも」一瞬完全に言葉を失い、喉の奥から言葉を出す。「びしょ濡れじゃないですか」<br>　柳沼さんは濡れて下に着ているキャミソールが透けている白いシャツを両方の指でつまみ「途中でふられて」とパチンと指を離した。
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<link>https://ameblo.jp/tegmenta/entry-11488479142.html</link>
<pubDate>Sat, 16 Mar 2013 23:24:11 +0900</pubDate>
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<title>無人の資格</title>
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<![CDATA[ 　物件の前についた。ハイム高田。なんとも普通の名前だが、家主が知恵をしぼりすぎて意味不明になっている物件よりは良い。最近あった物件で印象的だったのは、中野の奥地にあるアパート名が「サグラダファミリア」。家主のこだわりに文句はないが、印象の前に失笑してしまう。国の名前も多い。「マンション・カサブランカ」や、「アパート・インド」てのもあったし、アパートの名前なのに「サイトウタカシ」という物件まであった。市井は我慢ができない体質だから<br>「サイトウタカシという物件に、サイトウタカシさんはご紹介しにくいですね」と笑顔（嫌味）で言ったら<br>「ぜひ紹介してくれ」と握手されたという。<br>　僕の予想だと、家主はサイトウタカシじゃなくて、サイトウタカシを探してる人なんだ。<br>　生き別れた弟とかね、サイトウタカシ。きっと良い人だと思う、サイトウタカシ。梅干とか自分で漬けてそうだな、サイトウタカシ。<br>　どうでも良いことを考えながら玄関ドアを開いて、ポストのある場所を確認する。<br>　ポストが物件の中にあるのは、良い。いたずらをされる確立が減るからだ。それにこの玄関ドア、両開きだから引越しには便利。<br>　マンション内に通路があるのは、女性に人気がある。外の道＝玄関では、どの部屋に入ったか見られても文句は言えない。畳で築年数も古いが、この物件、意外と女性向かもしれない。<br>　ガスのお知らせがぶら下がる玄関ドアの鍵をあけて室内に入る。もうリフォームされていて、室内は清掃後の香りがしていた。前の住人が長く住んだこともあり、シンクは新品にしたようだ。障子もはりかえてあり、美しい。畳もはりかえてあるようだ。カーテンがない窓を開けると、目の前にマンションがそびえたち、まったく光が入らない。それどころか、方南通りの車の音が激しく聞こえる。これは減点だな。ベランダがあるのに、ここに洗濯物は干せそうにない。半年客が入らなかったら、浴室乾燥機をつけてもらうと良いかもしれない。<br>　僕は部屋の真ん中に正座し、横に買ってきたパンとコーヒーを置いた。<br>「いただきます」心の中でつぶやき、両手の先をあわせる。<br>　自分が紹介することになった物件の中で、食事をするのが好きだ。家具もカーテンもない部屋。ただ広くて、自由で、孤独だ。<br>　近所で買ったものを食べながら、この部屋をどうお客さんに紹介しようか考える時間が好きなのだ。<br>　売りは物件そのものより、周辺の環境にありそうだ。立地条件や周辺店舗、スーパーや商店街をのぞいてみよう。このパンも結構おいしいし、コーヒーも悪くない。いけそうだ、と小さく何度か頷き正座の足をくずし、パテンと畳に横になった。<br>　瞳をとじたら、一気に畳の香りが鼻に踊った。<br>　畳の香りは日向を思い出す。僕はフローリングの床よりも畳のほうが好きだ。でも畳は敷金トラブルも多いんだよな、と頬にふれるタテジマの感触を楽しんでいたら、外からパラ、パララと何かを弾く音が聞こえた。<br>　瞳をあけると、むき出しになっている窓ガラスに雨粒がついていた。<br>「え。まじで？」横になったまま、声にはせず息と共に吐き出す。<br>　雨がふってきたのが信じられないのではなく、ベランダに雨が振り込むことが信じられなかったのだ。いまどき屋根がないベランダなんて考えられない。本当に浴室乾燥機を入れてもらったほうが良いかもしれないと瞳を閉じたら、今度はお尻からビリリと振動を感じた。<br>　寝転んだまま右手をお尻にまわし、携帯電話を引っ張り出す。画面には「会社」と出ている。<br>「もしもし」起き上がりながら耳にあてた。<br>「二宮さー、今、南台の物件？」市井だった。<br>「だったら？」瞬時に嫌な予感がして（今物件？など、あまり聞かれない。僕は基本的に単独で動いている）言葉ごと突き放した。<br>「新人の歓迎会がさ」<br>「ああ」面倒で行きたくない（基本的に仕事でいく飲みは好きじゃない。家でゲームでもしながら物件のことを考えてるほうが好きだし、酒は一人で飲んだほうが美味しいし、楽しいと思う。たまにドンチャン飲むのも楽しいが、やはり疲れる）ので、断る理由を頭の前のほうで考える。<br>「二宮がいる南台近くの居酒屋で５時からやるんだよ。この前行ったらすげぇ良くてさ、まず店員な、美人が多いのよ。あ、今日居るかどうかわからないけどね」聞きながら時計を確認したら、もう４時をすぎていた。<br>「帰りに寄れよ、その方が楽だろ？　住所今からメールするから。地図持ってるだろ。じゃあな」<br>　ピと距離を持って電話は切れた。断るもなにも、これで参加しなかったら僕は「新人を歓迎する気がない、面白くない人」だ。僕は面白くなくても良いが、歓迎はしている。<br>　しかし面倒だ。そしてこのベランダの雨。ああそうか、雨がふってきたんだ、更に面倒だ。僕は携帯電話を太ももの間に挟み、再び瞳を閉じた。<br>「新人」口は動いているが声にならない息で言う。柳沼さんがいるのか。じゃあ行ってもいいか、と考えた自分に呆れた。僕は“人であって人じゃない”。女の子に興味を持つなんて、バカみたいな時間の無駄だ。
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<pubDate>Fri, 15 Mar 2013 23:23:06 +0900</pubDate>
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<title>一滴で満たされる</title>
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<![CDATA[ 　地図を片手に外に出ると厚い雲がたちこめ、むしむしと暑かった。空気がはりついて肌から離れない感覚。むりやり整髪料で形にしている前髪がふにゃりと梅雨を知らせる。<br>　停留所からバスに乗り込み、目的地より一つ前で降りることにした。僕は物件に向かうとき、基本的に公共機関を使う。ワンルームに住もうとする住人に車持ちは少ない（というか、ほとんど居ない）。店から物件への行き方も説明するときの大きなポイントとなる。<br>　停留所でおりると、目の前にパン屋がみえた。香ばしく小麦の焼ける香りがする。僕は迷わず店に入った。ありふれたコロリンという鈴の音が入店を知らせる。トングを手にとり、コーン入りのマヨネーズのかかったパンを買った。お金を払い終わり店の中をゆっくり見ると（店に入ったとき、僕はまず買い物をする。買い物もしないのに店内に長くいる事ができないのだ）お惣菜パンから食パンまで並んでいて、奥の工房では職人さんが数人みえて、テンポよくパンを丸めていた。店員さんがレジの横を通り「ぶどうパン焼きたてです」と札をたてた。どんどん焼きたてが出てくる回転の良い店のようだ。<br>　僕は買ったパンを受け取り店を出た。このパン屋さんはお客さんにおすすめ出来る。一つ前の停留所でおりたかいがあった。パンが入った袋をぶらぶらとぶら下げて物件へ向かった。<br>　物件の目の前の交差点に着いた。交差点には交番と弁当屋さんとコンビニ。一人暮らしにはとても良い環境だ。ただ少し車がうるさいかもしれない。交差点をわたり物件ちかくに向かうとふわりとコーヒーの香りがした。<br>　発作的に柳沼さんのコクンと動いた白い首を思い出す。<br>　乾いた唇を舐めて周りを見渡すと、物件近くに古びた喫茶店が見つかった。店外に黒板が出ていて「お持ち帰りできます」と書かれていた。<br>　重い扉を押して店内に入ると、深い雨の日のような、密度の濃いコーヒーの香りがした。<br>「いらっしゃいませ」サイフォンの向こう、若い男（僕と同じ位だろうか）が微笑んだ。<br>「何か、えっと、おすすめを、持ち帰りたいのですが」僕はわからない時、すぐにおすすめを頼むことにしている。店員はプロなのだから、僕が考えるよりすばらしい選択肢を持っているはず。<br>「苦みは平気ですか。酸っぱいほうが良いですか」男は白いタオルで手を丁寧にふいた。<br>　僕はもう一度唇を舐め、さっき柳沼さんがいれたコーヒーの味を思い出した。丁寧に、丁寧に。「苦いほうが好きです」<br>「ミルク等、お使いになりますか」<br>　いつもはミルクも砂糖も使うのだが、今日は「使いません」と答えた。<br>「ではあまり苦すぎない、ストレートで飲むと美味しいマンデリンをオススメします」店員は緑色のコーヒーの袋を僕に見せた。<br>「大丈夫です」僕は店員がギリギリと豆を引き始めたので、近くにあった椅子に座ろうかと思ったがテイクアウトの人間が椅子に座るのは気がひけて、カバンを抱えて入り口近くに立った。<br>「どうぞ、座ってお待ちください」店員に声をかけられ、僕はやっと椅子にお尻の先だけチョコンと腰掛けた。<br>　落ち着かない。<br>　テイクアウトを頼んでから、出てくるまでの時間は、どうしようもなく落ち着かない。ファストフード店なら注文を終えてから最後尾に移動して、ぼんやりと店内を見ていれば良いのだが、こういう店の場合、居場所も、やることもない。こういう時僕は、携帯電話を取り出して無料のゲームをすることにしている。人生、どれだけ楽しく暇をつぶせるかだ、僕は延々と続くパズルゲームを起動させ十字キーを動かした。<br>　意味があるゲーム、面白いゲームより、断然僕はつまらない、延々と同じことを繰り返すゲームが好きだ。新しいことを始めるのはストレスになる。そんな事いいながら、先月も新しいゲームソフトを買った。結局なんでもいいのだ。どっちだっていい。<br>　ガサッと音がしたので、ゲームを終了させて顔をあげた。<br>　店員が紙コップにいれたコーヒーを袋に入れようとしていたので「そのままで大丈夫です」と貰い、外に出た。一秒でも早く店を出たかった。プラスチックの蓋に雫がついていたので、それをペロリとなめてみた。なんだかそれだけで欲求は満たされた気がした。
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<pubDate>Thu, 14 Mar 2013 23:21:27 +0900</pubDate>
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<title>豆の愛</title>
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<![CDATA[ 　席に戻り、南台の物件への行き方を地図で調べる。市井や内田さんのようにパソコンに詳しい人間は皆、ネット上の地図を使うけれど僕は手でパラパラと見れる地図が一番だとおもう。地図はまず面が広い。パソコン画面のように小さく区切られていないし、どこの道を通ろうか考えてる時間が一番楽しい。大通りから小道へどのタイミングで入ろうか。方南町周辺は商店街が多い。ぶらりと歩いてみるのも楽しい。お客さんにその辺りを売りにするのも面白い。こういう時はパソコンが役にたつ。僕は方南町周辺の商店街を調べ、プリントアウトのボタンを押した。商店街を回りつつ物件を見に行こうと考えながらプリンターへ向かうと、プリンター横の給湯室に柳沼さんの姿がみえた。一畳ほどしかない給湯室に柳沼さんは電気もつけずにいた。<br>「電気、ここだよ」<br>　僕は右側の壁に手を伸ばしてパチンと電気をつけた。<br>「あ、つけてないんです」ふわっと顔をあげた。<br>　同時にほんわりとコーヒーの香りが流れた。柳沼さんは右手に小さな急須（たぶんお客さん用にお茶をいれるものだ）を持ち、コーヒーをいれていた。<br>「急須で、コーヒー？」思わず身を乗り出して見る。<br>「ポットからだと、おいしく入れられないので」と、ドリッパーのふちからゆっくりと急須でお湯を流した。<br>「見にくいでしょう。電気つけないと」僕はプリンター側に移動して紙束を取った。<br>「暗いと」ドリッパーを外してコーヒーカップを一口、口に運んだ。暗い部屋の中で白く光る長い首がコクンと動く。「香りがたちますよ」<br>　視覚が奪われて、嗅覚がたつという事だろうか。顔をちらりと見たが、真っ直ぐに僕を見ていて一瞬目が合ったので慌てて目をそらし「へえ」と言った。<br>「美味しくできました」柳沼さんはコーヒーカップを僕に手渡した。言葉を失う。飲めということだろうか。さっき柳沼さんが一口飲んだものを？　戸惑ったが、これまた柳沼さんが“飲まないことが理解できない。飲んで当然”という目で僕を見ているので、カップを口に運び、柳沼さんが口をつけていなさそうな場所を探しカップを舐めた。すると苦いのに甘い、コーヒーの味がした。<br>「良い豆だね」とカップを返す。よく分からないが、確かに美味しい、と思った。<br>「お粉はここにあったものです」柳沼さんは口の両端をゆるやかにあげて給湯室の電気を切り、出て行った。
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<pubDate>Wed, 13 Mar 2013 23:20:24 +0900</pubDate>
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<title>早産と秋の果て</title>
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<![CDATA[ 　突然呼び捨てにされ、体の中心から大量の血が流れ出すのを感じる。<br>　でもその言い方は、名前を呼んでいる風ではなく、あきひろという言葉を口にしているような単品感だった。でも僕的にはそれは名前だ。心臓はまだコクンと暴れている。「はい。あきひろ、です」柳沼さんは瞳を動かさず視線だけ上げて<br>「春夏秋冬の、秋？」と聞いた。<br>　なんでそんな事が気になるのだろうと思いながら「秋に生まれる予定で秋の字を使ったけど、早産で夏生まれです」と、母親から三十回ほど聞かされた話を職場ではじめて口にした。横の席で市井が「早産」と笑う。「せっかちやのう」と内田さんも笑ったが、柳沼さんは<br>「夏と秋の境目って、突然きますよね」と小さく口元をあげた。<br>　境目？　季節に？　僕はどう反応して良いかわからず、チラリと内田さんと市井を見たが、二人とも柳沼さんのアンサーより僕の早生まれというワードに反応して笑っていた。僕は柳沼さんに「はは」と、あごを軽く前に出して会釈した。「ほな始めるで」内田さんは柳沼さんの肩に、ぬめりと手を置いて座らせた。<br><br>「一週間」<br>　市井は箸を一本たてた。<br>「一週間で内田さんがイヤになって辞める。完全に気に入られてる」<br>　僕は自信満々で箸をふらつかせる市井を無視して「頑張ってほしいねえ」と口先だけで言った。正直どうでも良いのだ。柳沼さんが内田さんにセクハラされようと、仕事を明日辞めようと、三年居ようと、僕にはアフリカの砂漠で井戸が掘られてる話と同等レベル。柳沼さんも市井も内田さんも、僕の中で【その他】だ。必要以上に興味を持っても疲れるだけ。<br>「前に辞めた森下ちゃんは可哀想だったよな。車で拉致は犯罪だろう」<br>　先月辞めた女の子は、内田さんに帰り間際に車に無理矢理乗せられ（本人曰く）見たくもない夜景を一時間見せられ「怖くて無理」と辞めていった。正しい判断だと思う。<br>「確かにあれは可哀想だったな」<br>　あまり興味ないが、興味ないよと言って「冷たいヤツだな」と詮索されるのも面倒だ。必要最低限の反応は自分自身を救う。<br>「でも社長もさ、どうして内田さんを首にしないのかなあ。どう考えてクビにすべきだろ？」<br>　市井は食事の間、内田さんがちょっかいを出した女の話をずっと続けていた。僕はその話に相槌をうち、たまには最もだと首をふって笑った。一人で話をして進んでいく人間は好きだ。反応さえ間違えなければ、僕は何もしなくて良い。何より僕が話すより、僕以外の人間が話したほうが面白いのだ。僕は僕の話に一番興味がない。
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<link>https://ameblo.jp/tegmenta/entry-11488474159.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Mar 2013 23:18:25 +0900</pubDate>
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<title>隕石</title>
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<![CDATA[ 　なんでピチピチなんだ？<br>　それが僕の柳沼さんに対する、初めての疑問だった。<br><br>　考えられる理由を、僕はぼんやりとした顔を作り、でも目だけ動かしながら柳沼を見て考えた。ありがちなのは、新しい職場が決まりストレスで急に太った。でも新しい服を準備する時間はあっただろう。本当にお金がなくて、昔から着ている服のまま？　もしくは洗濯の失敗か。でもあれは綿のシャツに見える。綿のシャツは洗濯の失敗であんなに縮まなだろう。少なくとも初出勤の会社に着てくるには不謹慎というか、損をするように感じる。<br>「今日からお世話になります。柳沼綾です。よろしくおねがいします」<br>　挨拶してる柳沼を見て、そんな事ばかり考えていた。<br>　パチパチと拍手があがる蒸し暑い部屋の中、柳沼さんは頭のてっぺんから丁寧に頭を下げた。<br>　僕が居た角度からだと（ちなみにほぼ真横だ）見ようと思えばボタンの隙間から下着がみえそうなほど白いシャツのボタンはピチピチだった（ちなみにウチの会社に制服はなく、白のシャツ着用というルールがあるだけだ。男性社員はほとんどがスーツだが）。<br>「なあ」<br>　隣にたつ同僚の市井が、高い背をひにょりと曲げて僕の耳元で言った。<br>「あの服、なんだろな」<br>　同じことを考えてるのか。なんだかシャクだったので「変態」と小声で返し、視線を窓の外に動かした。<br>「でも事務か。長続きするかな」<br>　市井は右手の親指と人差し指で後ろ髪をかき「内田さんの餌食かな。なんだかエロいし」と真っ直ぐに柳沼さんを見ながら言った。<br>　うちの会社は賃貸業、部屋貸しをメインにしている。おおまかに分けると事務と窓口と総務があり、事務の仕事内容はパソコンで部屋の間取りを書く少しマニアックなもので、窓口はお客さんの対応をする。部屋を勧めたり、内覧に行ったり。それぞれの部署には“一番エライヒト”が居るのだが、事務のエライヒトは内田さんという「少しでも可愛い子は全てチョッカイを出す」とても面倒な人なのだ。上司からすればチョッカイ。新人からすれば断れない仕事の一部だ。半年に一度、一人は辞めていく事態なのに内田さんは気にもしていない。<br>「ほなここが綾ちゃんの席や」<br>　大阪弁の真似をした大阪弁を使い（ちなみに内田さんは大阪に住んだことも、行った事もないらしい）、柳沼さんを席に座らせてる後ろを市井と通った。<br>　所詮僕は窓口で、柳沼さんは事務。<br>　直接関わりは少ないが、心の中で「半年持ったらケーキを差し入れしてやる」と思った。でもこういうのは僕の中の遊びで、一度も差し入れなんて行為をしたことはない。相手の趣味なんて分からないじゃないか。お金だして嫌がられるのは面倒だし、自分の趣味を差し入れという善意で押し付ける行為が苦手だ。<br>　席に着き、メールチェックをすると十件を超える新着物件がきていた。中野区南台六丁目で方南町から徒歩四分。これは嘘だろう。六丁目なら徒歩十分以上かかる……でも入りたくなるような魅了を探したいと思い隅々まで情報をみるが、畳で築年数も古い。こういった“魅了が見つかりにくい物件”こそ、可愛く感じてしまう。人気のある部屋に僕は必要ない。何もしなくても彼らは売れていくのだ。そんな事を思い、世に言う不人気物件ばかり扱ってお客を入れていたら、僕はいつの間にか“不人気専門”の窓口屋になったらしく、今日来ていた物件情報は、どれも数年お客が入っていないものだった。「よしよし。お前たちは僕がなんとかしてやる」口のなかで呟くが、実は不人気だからこそお客が入らなくても怒られやしない、そしてもし客が入ったら褒められるというメリットまであるのだ。<br>「また酷い物件だな、それは」<br>　僕のパソコン画面を覗き込んだ市井が細く切られた眉毛をあげて言った。「可愛いところもあるもんよ」僕はメールを事務側に転送した。とりあえず大家が書いた適当な絵の状態で“新着物件”として張り出すが、徒歩十分で築二十年の物件に客が飛びつくはずがない。キレイに清書してもらい、付加価値を探してからネットにアップするのが最善の策だと思っていた。<br>「おお、ほらメールきたで」<br>　後ろの事務席から内田さんのインチキ大阪弁が聞こえる。頭を動かさず目だけ後ろに流して雰囲気を感じる。丁度設定が終了したところなのだろう。僕が転送したしたメールを柳沼さんと内田さんが開いていた。<br>「こうやってくるんや。俺が割り振るけー、イラストレーターでパスおこしや」<br>　はい、わかりましたと柳沼さんの声がする。<br>「しかし、またケッタイな代物やのう、二宮」苗字をよばれて振り返る。振り返らざるを得ない。内田さんの呼びかけを無視して良い事などない。そしてお決まりの言葉を言う。「可愛いところもありますよ」<br>「二宮っつー営業や」内田さんはアゴで僕に挨拶を促した。顔をチラリと見ると、いつも通りの“偉ぶった”上司顔だ。僕の仕事はただ一つ。従順な部下を演じるだけだ。首だけで後ろを向いていたが、椅子を回転させ立ち上がって言う。「二宮秋広です」<br>　柳沼さんは右手の人差し指を口元にまげて近づけ<br>「あきひろ」<br>　と言った。
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<link>https://ameblo.jp/tegmenta/entry-11488472871.html</link>
<pubDate>Mon, 11 Mar 2013 23:17:46 +0900</pubDate>
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<title>おにぎりの神様</title>
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<![CDATA[ 「何が食べたい？　なんでも作るよ」<br>　母親に言われて私は即答した。おにぎり、お母さんのつくったおにぎり食べたいわ。<br>　母親はそんなんでいいの？　と笑いながらすぐににぎってくれた。そのおにぎりは丁度よい硬さで、大きさも厚さも手にすっぽり入って美味しかった。<br><br>　息子が幼稚園に行くようになり、週に何回かお弁当を作っている。<br>　息子は悲しいほど食が細く、つくってもあまり食べない。よって食べてくれるものでお弁当を作ってしまうのだが、おにぎりは毎回いれる。息子の作るついでに自分の分のおにぎりも作るのだが、これが悲しいほどただの米の塊だ。おにぎりじゃない。<br>　私が実家にいたころ、母親が作ってくれたおにぎりはこうじゃなかった。少なくともただの米の塊！だと思ったりしなかった。おにぎりだった。<br>　もうちょっと米が多いのか？　と大きめに握っても、違う。もうちょっと柔らかくか？　とゆるめに握ったらこぼれ落ちた。違う。<br>　先日帰省して、母親におにぎりを食べた。美味しい～。これだ、これ。まねして隣で握ってみるが、違う。もう判らない。正直場数だろう。なんか私のおにぎりは米粒がつぶれてる気がする。母親のおにぎりは米がつぶれない気がする。<br>　卵焼きや他の料理は「おおさじ1、こさじ2」とか作り方がある。でもおにぎりはない。<br>　前にテレビを見ていたら、手には無限の細菌がついていて、有名寿司店とかの人は、その細菌が優れてると聞いた。<br>　長く母親をすると、すんごい細菌が手に繁殖するのだろうか。私の手にいるのは、まだ一年生だ。<br>　自分の手に語りかける。おいこら、美味しいおにぎり作りたいぞ。<br>　手が返す。<br>「まだまだじゃ、ぼけ」<br>　そうですね。まったくその通りだ。
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<link>https://ameblo.jp/tegmenta/entry-11486259949.html</link>
<pubDate>Fri, 08 Mar 2013 22:31:51 +0900</pubDate>
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<title>甘き涙と時の華</title>
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<![CDATA[ 　なぜ親は子供の成長に涙するのだろう。<br>　今日は幼稚園の「先生一年間ありがとう」の会があった。<br>　先生が一年のまとめを話し、まず泣く。<br>　そして保護者が一言ずつ…といっても一人一分くらい語る。<br>「うちの子は最初幼稚園が嫌いで…でもマミ先生のおかげで、最近は今日は熱があるからお休みよと言っても行くと園服を着て寝るんです」<br>　そして泣く。圧倒されるレベルの涙大会だ。<br>　私はドライなので、全く泣かずヘラヘラ…うそです、先生のスピーチに泣きました。反則レベルの語り。いつも必死に子供追ってる先生も一年目だったとは。知りませんでした。<br>　あまりに皆わが子の成長を語りながら泣くので、なぜ親という生き物（とくに母親）は、子供の成長に涙するのか考えてみた。<br>　母親は生まれる前から、子供と一緒だ。お腹が大きくなり、やがて出てきて、毎日泣いて寝不足で、それでも小言ばあさんになりながら子供を追い、やっとこ幼稚園に入れる。その子はやがて気分で着れなかった服をきて、靴をはく。そしてカバンをかけて自分で歩き出す。ご飯ひとつ一人で食べれなかった子が。<br><br>　逆に言うと、ご飯ひとつ一人で食べれなかった子供には、もう二度と会うことはできない。<br><br>　それを自覚して泣くのだろう。<br>　成長とは、未熟を消す行為。未熟とは人の手が必要な状態。それはもう二度とない期間。<br>　子供が離れていく。嬉しい、悲しい、二度と見れない。<br>　だから泣くのかなと思った。<br>　私も息子の二度と見れない愛すべき姿を沢山覚えてる。<br>　あれはもう二度と見れない。<br>　それは本当に嬉しく、でももう二度と食べれない甘き果実だったのかも知れない。
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<pubDate>Thu, 07 Mar 2013 22:13:26 +0900</pubDate>
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<title>育児の世界に母親は漬物石みたいなものです</title>
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<![CDATA[ 　本当に文章がノル時は、私が書いてる気がしない。人物が勝手に動きだして、私も知らないような答えを連れてくる。私はまたあの感覚に浸りたい。何時間書いても疲れない、物語のキャラクターたちに取りつかれた瞬間。あとで推敲すると、なんじゃこりゃ？てなときも多いけど、多少の直しでいけることが多い。<br>　おもしろい、ってなんだろうと毎日考えてる。わたしはおもしろい作品とは、心が動くことだと思ってる。<br>　悲しい、うれしい、笑える、泣ける。<br>　何か動いたら、それがおもしろい作品だ。<br>　でもその作品が売れて、利益を生むかどうかは別の話。<br>　本当に面白いものは売れないよ、なんて戯言。私は一番好きな話は、渡る世間は鬼ばかり、だ。あれほど悲喜こもごもな作品はない。突然いなくなるキャラクターも多数。まあその事情はさておき。<br>　私はあんな作品を書く人になりたい。<br>　ちょっと良い話とかには興味がない。もっとエグくなりたい。良い意味でも悪い意味でも。<br>　今まで職人の世界でノンビリくらしていた私に、今という状況は絶好のチャンスだと思ってる。母親という世界。<br>　自分が消える世界。面白い。<br><br>
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<pubDate>Wed, 06 Mar 2013 22:03:40 +0900</pubDate>
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