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<title>創作人生に悔いはない！</title>
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<description>最新作を不定期にアップします。</description>
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<title>幻の美女～会いたくてたまらない～（５）桜井はどこにいるのか</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>　後ろに目があるわけではないが、右の目端が捉えたのであるから、その人物は右斜め後ろに立っていたのだと思う。なんとなく、熱視線を感じたのは気のせいかもしれないが、初秋の時期であったので、長袖の白いカジュアルシャツにジーンズ姿の若者が文庫本に目を落としながら立っていたのである。中肉中背だが目立つ程に背筋が伸び切っており、肩からかけた黒いショルダーバッグという朝の通勤ラッシュの時間帯には不似合いな服装であった。そして、驚いたのは坊主頭であったことであった。三十歳位であろうか、まるで大学受験の予備校生のような恰好をした男性が私の後ろに立ち並んでいたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　しかし、服装にしても全体的に清潔感が漂っており、色彩も妙に調和している。私が異様に感じたのは、その不思議というか不気味なオーラであり、顔つき、眼つきであった。顔立ちは凛々しいものがあるが、眼つきが危ないというかニヤケたような性的変質性を感じさせるのである。酒に酔って、羽目を外し出す寸前の修行僧という感じであった。</p><p>&nbsp;</p><p>　翌朝もよく翌朝も見かけた。私がこの乗車口に立ち並ぶようになって、しばらくの間、見かけなかったのは、何か仕事の事情があったのだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>　しかし、参ったな。私は心中呟いた。</p><p>&nbsp;</p><p>　既に私は気づいていた。神の偶然で、私が目撃した痴漢サイトのカキコをなしたのは、この坊主頭の暗そうな青年に違いないということである。彼としても、まさか、私が、奇跡でそのカキコを見出して、その主がいっていた桜井さんという絶世の美女を探し求めては、ここにいるとは思っていないだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>　その謎の青年というか、桜井さんという美女を狙った青年を見つけてから、少しの日が経った。</p><p>&nbsp;</p><p>　謎の青年は、毎朝ではないが、大体、二日にいっぺん位の割合で、私たちと同じ乗車口から同じ時刻に乗車するのであるが、不思議な若者であった。そもそも、これほど職業不詳という言葉を体現した者もいない感じがした。一見、カメラを抱えてアイドルを追うようなオタク風にも見えるのだが、ただのオタクにも見えない知的威厳というのであろうか自身に満ちたようなオーラが漂っている。</p><p>&nbsp;</p><p>　痴漢サイトの一瞬の書き込みという神の奇跡の偶然については、何度か見かけるうちにどうでもよくなっていた。それよりも、こいつがいう妙齢の絶世の美女である桜井さんというのは、どこにいるのだろうか。謎の青年が出現してからというもの、私は桜井さんに対する好奇心が一層激しくなったのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　謎の青年は、乗車するまでの間、よほど本が好きなのか、文庫本に目をやったまま視線は本から動かさない。電車が到着するまで、誰かを探すとか目で追うなんて事はまったくない。一番考えられるのは、その桜井さんという女性、この青年に迫られるか何かされて乗車位置なり乗車時刻を変えてしまったのではないかということである。それなら見つけられるわけもない話だが、どうも、直感的にそうではないと感じていた。うまく、表現できないが絶世の美女桜井というのは、この乗車口そのものではないにしても近い位置に絶対いるはずだと思っていたのである。これは、言辞に表出しがたい私の願望から生じた思念だったのかもしれないが、やはり、いまだ忘れ得ないＹ子の面影が通奏低音になっているような気もした。</p><p>&nbsp;</p><p>　1つの盲点に気づいた。もしかして、７時３８分発、ここから乗車した電車の中に彼女はいるのではないかと考えた。乗車して次の駅は急行列車の乗換駅であり、私も青年もそこで乗り換える。そこで、一駅区間内の彼の言動に注意してみたのだけれど、相変わらず文庫本に視線を落とすだけで、電車の中で誰かを意識するなんて事はまったくなかった。じゃなかったら、線路上すれ違う電車の中で一瞬でも見える女性の事をいっているのかな。突拍子もない事を思いついた私であるが、この時間すれ違う電車はなかった。そもそも外の景色なんかには目もくれず、文庫本に目をやる青年である。そうだとしたら、桜井という女性は人間ではないということだろうか。つまり、何かのポスターや広告の写真・・・。しかし、それだったら時間が限定されるのはおかしい。</p><p>&nbsp;</p><p>　なんだか面倒くさくなってきた私である。</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/tsuzuki1017/entry-12953328881.html</link>
<pubDate>Wed, 21 Jan 2026 22:00:43 +0900</pubDate>
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<title>幻の美女～会いたくてたまらない～（４）不気味な人物</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>　痴漢サイトの掲示板で、朝7時３８分発の小田急線上り最善車両に現れるという絶世の美女を探して、私は翌朝から、その時間帯から乗車するようになったのであるが、十日目位の事である。</p><p>&nbsp;</p><p>　今までは意識していなかったのであるが、絶世の美女の噂を聞いてからは違う。キョロキョロと周囲を見渡すことが多くなったせいか、毎回同じ顔ぶれの乗客が朝の出港で出くわすことに気づいたのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>　結局、深夜に痴漢サイトで、どこかの誰かが連投したレスに反応して、ここまで来たのであるが、そもそもその絶世の美女だという桜井さんらしき女性は、十日も経つのだが全く見当たらなかった。そもそも、七氏を名乗るどこぞの誰かの書き込みにしても、一瞬、三連投の記事があっただけで、その後はその話題について一切書き込まれることはなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　十日経って、私は五人程、毎朝のように見かける人たちに気づいた。まず、目がいったのは女性であるが、五十歳前後であろうか。かなり太目で小型冷蔵庫のような体躯をした中年女性である。服装が風貌に似ず少し派手やかであり、貫禄はあった。どこかの会社のキャリアのような雰囲気もあった。申し訳ないが、妙齢の絶世の美女ではなかった。彼女は毎回決まって最前車両から乗車していた。</p><p>&nbsp;</p><p>　もう一人は、三十歳位であろうか。身なりのキチンとした紺のスーツに身を固めたエリート然とした青年である。当時はスマホのない時代であったから、現在のようにスマホをかざす代わりに車内で本を読む者が多かった。その青年の場合、毎朝、右手に日経新聞を持ち、折りたたんだ紙面を熱心に読んでいるのが印象的であった。彼は先頭車両と次の車両をその日の気分で乗り分けていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　もう一人は小柄な老人である。おそらく、勤め先の再雇用も終わりに近づいているような年代にみえた。全体にやる気のなさと慢性的な疲労をかかえているような雰囲気を漂わせていた。この方は、毎朝ではないが、一日おきくらいに見かけた。中年女性と同じで毎回最前車両から乗車していた。</p><p>&nbsp;</p><p>　そして、残りの一人はブレザー姿の制服をまとった男子中学生であった。眠たそうな幼い表情が印象的で、先頭乗車口と次の乗車口、そのまた次の乗車口、三つの乗車口を、その日の気分で動き回っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　こういった事実から、ここには桜井さんなんていう二十代の絶世の美女はいないと悟った私であった。もっとも、桜井さんは連投した七氏の狂気に気づき、乗車時間か乗車場所をずらしてしまったのかもしれない。そう思うと、自分の行動が、なんだかアホらしく思えてきた。何かに突き動かされるように、こんな事をしているのだが、今朝をもって、この乗車口から乗るのはやめて、元の通勤電車生活に戻ろうと思ったのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　なぜ、私はこんな事をしているのか。自分でもよく分からなかった。痴漢サイトで七氏を名乗る者の投稿を見た時、これはやはり奇跡であろう。私は絶世の美女という言葉と奇跡という言葉が、脳内で混和して、意味のある偶然を形作っているような気がしたのである。そして、Y子の幻影のような女性を神がきっと私の前に連れて来てくれたような気がしたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　一昨年、イギリスに旅立ったY子は、もう一度生まれ変わりたいと言って、私の前から去っていった。しかし、私は一年半経った今でも、もう一度彼女に会いたいという気持ちでいっぱいであった。自己分析すると、私の場合、あまりにも苦しかった別れの気持ちを絶つために、今回、幻の美女に強いこだわりを抱いたのではないか。</p><p>&nbsp;</p><p>　そんなことを考えながら、いつものメンバーと一緒に電車を待っていた。太めの中年女性は電車が来るまで立ったまま黙想しており、隣には日経新聞の青年が一心に紙面へ視線を送り続けており、今朝は小柄の老人も出勤日なのか、早くも一日の疲れを迎えたかのように立っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　隣の乗車口付近には、いつもの中学生の男子が眠たそうな表情で、試験前なのか、教科書を立ったまま読んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>　私は、丁度、先頭乗車口の前で待っていたのであるが、もう、これで無益なゲームを止めようと考えていた時である。私の背後に非常に不気味な人物が立っているのに気づいたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>　</p>
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<link>https://ameblo.jp/tsuzuki1017/entry-12952987688.html</link>
<pubDate>Sat, 10 Jan 2026 21:08:36 +0900</pubDate>
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<title>幻の美女～会いたくてたまらない～（３）朝の通勤電車</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>　翌朝、私は駅に向かう最中、昨夜発見した奇妙なネット掲示板上の落書きについて、ずっと考えていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　木枯らしが頬をうつ、冷たい朝であった。私のうつ的様相は数年前から冬になると特に酷く、Y子が姿を消したその年の冬は動けなくなった程であった。</p><p>&nbsp;</p><p>　しかし、どういうわけか、今朝は停止してしまった心がいつもより少し軽やかに動くような気がした。Y子との縁が途切れてからというもの、丁度、いろいろな悩みが重なって、もはや現世においては夢も希望もないような状態であり、ただそういう自分を慰める気持ちだけで生きているような精神状態であった。</p><p>&nbsp;</p><p>　自宅から最寄りのK駅までは、徒歩で十分弱の距離であったが、その道すがら、路地を入った突き当りに桜の大木がある。そこを通りかかった時に、私の胸中には、書き込みがあった桜井さんという、清楚で可憐な絶世の美女の輪郭が浮かび上がってきたのであるが、少しずつその輪郭が目鼻をつけ、すぐにY子の幻影に近づいてくるところで、慌てて心の中を打ち消したのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　駅に辿り着くまで、自分が、昨夜のネット掲示板上の書き込み通りの場所に赴くかどうか悩んでいた。改札前で腕時計をみた。</p><p>&nbsp;</p><p>　都内であれば、だいたい、どこの駅でも毎朝の通勤列車の状況というのは同じようなものだ。薄暗い始発の時間帯から少しずつ人が集まって来て、ピーク時には無言のお祭り騒ぎのような状態になる。</p><p>&nbsp;</p><p>　その朝、私の足は自然といつもの後車両側ではなく、狂気のネット掲示板上の落書き通り先頭車両へと進んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>　７時３８分発の5分くらい前に先頭車両へとたどり着いた私であるが、この時間帯というのは、まさに通勤混雑のピーク時ではあるものの、意外と先頭車両もそうであるが、それぞれの乗車口前に佇んでいる人が少ないのに気づいた。急行列車が止まらないだけで、随分差があるものだなと感じたのだが、直ぐに私は絶世の美女を探すためにグルリと周囲を見渡した。結局、その朝は、ネット掲示板上で七氏が投稿した絶世の美女桜井さんらしき女性は発見できなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　次の朝も私は同じ時間に同じ乗車口の前に立った。そして、その次の日朝も。何度も毎回同じ車両付近に位置していると、似たような顔ぶれに気づくものだ。</p>
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<link>https://ameblo.jp/tsuzuki1017/entry-12951370880.html</link>
<pubDate>Sun, 28 Dec 2025 15:44:48 +0900</pubDate>
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<title>幻の美女～会いたくてたまらない～（２）桜井さん</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>　痴漢体験談や一緒にやる人を求めるという、今では考えられないスレッドの中では、最も勢いがあったものの中に、私は七氏を名乗る者の文章を見つけた。深夜、私が注目した奇跡のような七氏の文章が始まったのは、その時点から約一週間前、続けて３つの文章がエントリーされていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　最初は、こんな内容の投稿であった。</p><p>&nbsp;</p><p>　「小田急線K駅新宿方面０７３８－１ー１、半年位前かな、俺は毎朝乗車する絶世の美女を見つけたぜ。名前は桜井さんというらしい、２０代後半かな。純情可憐な清楚なオーラがたまらない。とにかく俺好みだ。誰か痴漢してくれよ。」</p><p>&nbsp;</p><p>　最初のこの投稿にはレスはまったくなく、というか誰からも相手にされていない。続けて、少し間をおいて、こんな投稿が続く。</p><p>&nbsp;</p><p>　「桜井さんは、どうも駅の近くに住んでいるようだな。」</p><p>&nbsp;</p><p>　「頼む誰か痴漢してくれ、無理なら視姦でもいいよ。」</p><p>&nbsp;</p><p>　こんな３記事が投稿されて、それから後は一切七氏も桜井さんも登場する事はなかった。勿論、他の投稿者誰からも相手にされていなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　狂ってるな、これは究極的な変質者だぞ、私は深夜のパソコンに微苦笑を浮かべるとともに、毎朝、こんな輩と同じ時間の電車に乗っているのかなと思うと、少し粟立つものがあった。</p><p>&nbsp;</p><p>　なんだか、便所の妄想的落書きを見るような感じであったが、私は、しっかりとこの投稿文をしっかりとプリントアウトしていた。やはり、同じ駅で同じ時間というような奇跡のような出逢いに、これは何か意味ある偶然なのではないかと考えたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　その晩、私は七氏と桜井さんの事を考えては、遅くまで寝付けなかった。絶世の美女という言葉に敏感に反応したという事もなかなか寝付けなかった理由である。</p><p>&nbsp;</p><p>　どういうことかというと、一昨年別れた彼女、いや、正式に交際していたのではないから別れたという表現は適切ではないな。時々、手をつないで歩いたことがある程度の仲の良い女友達だったから、別れたというよりも、突然私の前から姿を消したという表現が正しい。</p><p>&nbsp;</p><p>　一応、彼女の名前をY子とするが、Ｙ子こそ私にとって絶世の美女と呼んでいい存在であった。それだけでもないが、Ｙ子が私の前から姿を消して、私は人生に絶望した。だいぶよくはなっているが、今でも鬱の状態が続いているのは、いまだ消せないＹ子に対する未練が主因であるともいってよいだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>　その晩、私は、現実と入眠的妄想の境目で、妙な決意をした。翌朝７時３８分の新宿行き先頭車両から乗車してみようと思ったのだ。どれほどの美女なのか、この眼でみてみたいという好奇心もあったが、それだけでもない。なんとなく、七氏と桜井さんの話からＹ子の幻影を想起したということもあったような気がする。</p><p>&nbsp;</p><p>　いずれにしても、私は、その時を境に非常に奇妙な世界に巻き込まれることになるのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/tsuzuki1017/entry-12950619028.html</link>
<pubDate>Fri, 19 Dec 2025 22:59:56 +0900</pubDate>
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<title>幻の美女～会いたくてたまらない～（１）痴漢サイト</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>　私が毎朝最寄り駅のホームに立つという幻の美女の噂を聞いたのは、今から約二十年前の事である。当時、私は小田急線K駅から徒歩十分のワンルームに独居しており、毎朝新宿まで出て、そこから地下鉄丸ノ内線に乗り換えて新宿御苑前にあった法律事務所まで通勤していた。</p><p>&nbsp;</p><p>　当時は心身ともに最悪の状況にあり、適応障害と診断され、心療内科に通院していた。その当時、私は３１歳。二年前に警視庁警察官を辞職し、少しだけ元気が良くなった頃合いをみて、小さな弁護士事務所に事務職員として転職した頃の話である。仕事は簡単であったが、給料は安く、あまり興味のもてるものではなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　事務所に大型事件が入ってきたのは約一か月前のことであり、ボス弁の知人の息子が犯した電車内での痴漢事件についての刑事弁護事件である。弁護士三人、事務員二人で、一致団結して裁判に臨んだわけであるが、その痴漢事件について、私は奇妙な資料調査を命じられたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　約二十年前、旧称２ちゃんねるには、痴漢掲示板なるものが今よりもずっと過激に一部マニアの間ではびこっていた。大抵は募集スレッドや体験談であり、その後、警視庁から徹底調査の対象になり、サイトをきっかけに犯人が検挙されたりするようになる。</p><p>&nbsp;</p><p>　事務所が弁護する被告人はどうやら痴漢掲示板の募集スレッドに記事を投稿したことがあるという事が警察の捜査で分かった。その事実自体は認めるが、今回起訴された電車内での三人の男による集団痴漢行為については一切自分は関知していないという。自分の知らないところで、勝手にされた事件であり、被告人は共謀の事実について徹底的に争っていたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　そこで、私がボス弁に言われたのが、そのような痴漢ネット掲示板の調査であった。私の前職を期待してのことだったと思うが、そんなサイトの存在は私自身は勿論のこと、事務所の誰もが知らなかった。だから、高齢のボス弁は、現状をよく調べて、教えてくれと私に頼んだということなのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>　この仕事は意外と楽しかった。帰宅してからも、私はその類のスレッドに目を通しては、特に一緒に痴漢をやろうなんていう輩のレスには注意深く眼を通し、事務所が弁護する被告人の弁明に矛盾がないかを考えたりもしていたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　ある金曜日の晩の事である。私は一番投稿者の多いスレッドを投稿順に読んでいくうち、奇妙なレスにぶつかったのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　大体一月位前から始まったその募集スレッドであるが、似たような妄想的体験談やら一緒にやりましょうなんていうふざけたレスの中、一週間前だろうか。小田急線K駅という文字が目に飛び込んできたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　えっ・・・？</p><p>&nbsp;</p><p>　思わず、毎朝、自分が使っている最寄り駅の名前が出てきたのには驚嘆したのであるが、わずか数行のそのレスを見て、一人深夜のパソコンに向かって小さな悲鳴をあげてしまった。</p><p>&nbsp;</p><p>　０７３８－１ー１、毎朝絶世の美女が現れます。一緒に彼女を犯しませんかとあるのだ。隠語についても分かってきた私であり。これは小田急線K駅発、新宿方面午前７時３８分第一車両の先頭という意味である。</p><p>&nbsp;</p><p>　なぜ、私が小さな悲鳴をあげたかというと、それは私が毎朝乗車している電車だったからである。しかし、かろうじて安堵のようなものを覚えたのは、私の乗車位置は、第一車両ではなく、ずっと後ろの車両だったからである。</p><p>&nbsp;</p><p>　投稿主は七氏とあり、その記事の少し後に二つほど彼からのレスが続いており、私は食い入るようにその記事を読んだのだが、更なる衝撃をうけてしまうのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/tsuzuki1017/entry-12950410198.html</link>
<pubDate>Wed, 17 Dec 2025 22:32:11 +0900</pubDate>
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