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<title>いい旅クソ気分のブログ</title>
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<title>観覧車</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「大丈夫？」</p><p>&nbsp;</p><p>何が大丈夫なんだろう。</p><p>体調は見ての通り優れないし、気分もかなり最悪に近い。</p><p>それに、こいつに大丈夫？と心配される筋合いは無い。他にかける言葉が見つからないからとりあえず会話の繋ぎとして言ったのだろう。</p><p>だけど、会話する事そのものを否定していたら、こいつと付き合っている私ごと否定してしまう気がする。</p><p>だから私はこう答えるしかない。</p><p>&nbsp;</p><p>「大丈夫。」</p><p>「無理すんなよ。」</p><p>「うん。」</p><p>「何杯飲んだんだっけ。」</p><p>「生7杯と、ウイスキー５杯と、日本酒を…忘れた<b>。</b>」</p><p>「飲み過ぎ。」</p><p>「うるさい。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>夜の繁華街を抜けて、なるべく明るい大通りを選んで歩いているはずなのに、気付けば周囲の人影は少なくなっていた。まだ二十一時を超えたばかりだというのに。見上げた電柱に「北区祭り」と幕が貼られていて、そんな祭りがあったのかと今頃になって初めて知った。</p><p>今から行ったところで、祭りは終わっているだろう。</p><p>３年くらい前だったか、もっと前、付き合い始めた頃だったか忘れたけど、こいつと祭りに行ったときのことを思い出した。</p><p>&nbsp;</p><p>気合を入れて浴衣を着てきたにも関わらず、まさしく着の身着のまま、と言うかそれは寝巻きでは？というほどの体たらくでいたので、私の気合がなんだか惨めに浮いてしまったこと。</p><p>屋台を一つ一つ吟味し、あの店は原価より300円程度高い、あの店で買うよりスーパーで買ったほうが安い、綿菓子は食べづらいから嫌だ、と駄々を捏ねるばかりで結局何も買わなかったこと。</p><p>祭りも終わりに差し掛かり、そろそろ帰ろうかという時に、やばい、携帯を落としたと騒ぎ立てるので、来た道をもう一度引き返して探しているうちに足が攣り、やがて辺りに誰もいなくなった頃に鞄から携帯が出てきたこと。</p><p>&nbsp;</p><p>碌な思い出が一つとして出てこなかった。もうだいぶ前のことなのに、今になって沸々と怒りが湧いてくる。情緒を学んでから出直せ。祭りの屋台で原価率を求めるな。帰宅した後に、慣れない浴衣を乱暴に脱ぎ捨てた深夜の苛立ちが蘇る。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「祭りやってるんだ。」</p><p>「もう終わってるでしょ。」</p><p>「そうだな。行きたかった？」</p><p>「別に。」</p><p>「だよな、お前、人混みとか嫌いだしな。」</p><p>「そうだね。」</p><p>「あ、コンビニ寄るから。」</p><p>「うん。」</p><p>&nbsp;</p><p>祭りに行きたくないのは人混みのせいじゃなくて、あんたが駄々を捏ねるからだし、そもそも行きたくないとは一言も言っていない。</p><p>「あ、コンビニ寄るから。」じゃなくて、「コンビニに行きたいので、こっちの道に進んでもよろしいでしょうか？」だろ。いつまで相手側に意図を察させるような言葉遣いをするつもりだ。今年で26だろ。小学20年生かお前は。</p><p>言いたいことは言わなくても全部伝わると思うなよ。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「待ってて。」</p><p>「うん。」</p><p>&nbsp;</p><p>こうして私はいつものようにコンビニの前で待たされる。別に、何も言われなくとも外で待つことには違いないんだけど、「待ってて。」と言われて待つのは、なんかちょっと違う。なんだか自分があいつの飼い犬になったような気分になって虚しくなる。</p><p>だったら一緒に入店すればいいんだけど、特に買うものも無いのに買い物に付き合うのも馬鹿らしい。店員や他の客に、カップルだと思われるのもなんだか恥ずかしい。ましてや、ベタベタくっつきながら店内をアホ面で闊歩するカップルと一緒にされでもしたら最悪だ。一緒にしないでほしい。</p><p>&nbsp;</p><p>めんどくさいな、と自分でもわかってる。</p><p>めんどくさい性格だけど、自分が我慢すれば、もっとめんどくさいことにならないで済むから。そんな言い訳をしてしまうこと自体がなんとなく情けなかった。</p><p>誰に言い訳をしているのだろう。あいつに？</p><p>&nbsp;</p><p>隠し事をしているつもりはないのだけど、なんとなく言いたいことはいつも口の中で淀んでしまう。言いたいことを言わないのは私も同じなのだ。ずっと前からお互いに見て見ぬ振りをしてきた壁があって、その壁に触れることにお互いずっと消極的でいる。このままではダメだと気付いているのに。</p><p>&nbsp;</p><p>遠くで明かりが咲いた。打ち上げ花火は遠すぎて、感動するには物足りなさすぎた。さらに手前に見える光は、駅前の小さい商業施設に隣接する観覧車の明かりで、精一杯光って回っている。たいして何もない町で、唯一の特別を主張しているかのようだ。そんなに無理しなくても良いのに。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「うい。」</p><p>「ん。」</p><p>「これ。飲む？」</p><p>「あ、うん。…硬水の方が良かったな。」</p><p>「わがまま言うなよ。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ただ待っていても、特別はやってこない。狭い視野の中で大人しくあるものを消費するだけのそれをただ日常と呼んで、またしょうもない思い出にしてしまうだけで。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「あ。」</p><p>「何？」</p><p>「あれ。こんな時間でもやってるんだな。」</p><p>「うん。」</p><p>「夏だからか。」</p><p>「夏だからかもね。」</p><p>「乗りたい？」</p><p>「えー。」</p><p>「今から行けば間に合うかもよ。」</p><p>「あー。」</p><p>「どうする？」</p><p>「…気分じゃない。」</p><p>「そっか。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>駅に着いて、いつものように短い会話をして、別々の電車に乗って別れた。ホームは割と混んでいたけど、自分の周りだけ誰もいなくて、ぽっかり穴が空いている。やって来た電車に乗る気が起こらなかった。</p><p>携帯の液晶に「やっぱ乗りたい」と打ち込み、メッセージを送ると、遅いわ、もう電車乗ったんだけどと返ってきて、それからすぐに、今から戻るから、とメッセージが来た。</p><p>鞄からペットボトルの軟水を取り出し、口に含むと、もう電車は走り去った後だった。生ぬるい風がやけに気持ちよかった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>終。</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12401946287.html</link>
<pubDate>Sat, 01 Sep 2018 19:44:37 +0900</pubDate>
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<title>私見的なこと③</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>「そうだ。こないだツイッターで友達が、ピザに味噌かけて食べてたんですよ。おかしくないですか。味噌？って聞いたら、家族はみんなこうするんだって。それで私、類ちゃん家はそうかもしれないけどって言い返して。あ、その友達、類ちゃんって言うんですけど。それで、」</p><p>&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">すると男性はハハハ、と大きな声を出して笑った。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">気が触れてしまったのかと危惧したが、どうやら話がウケたらしい。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「なんだか、色々バカらしくなったよ。ありがとう。私も仕事に戻るとするよ。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;男性は深くお辞儀をすると、駅の方へ向かっていった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">踊りたくなるくらい嬉しかった。私でも誰かを救うことができたらしい。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">ただ、そのせいもあって、集合時間まであまり時間の余地はなかった。私はより一層急がなければと走り出そうとした。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;その時、轟音が、幾度となく響いた。</p><p>&nbsp;</p><p>しばらく何事かわからず錯乱していた。それが怪獣の疾走だと気付くにはかなり時間がかかった。&nbsp;</p><p>怪獣は走っていた。町から海へ向かって。 「怪獣は歩く」というセオリーをガンガンに無視して。</p><p>&nbsp;もう少し遅れて来るだろうというニュースの予報は大幅に外れて、奴は間も無くここまで辿り着く。</p><p>恐怖と、馬鹿馬鹿しい笑いが同時に込み上げて、どんな顔をしていいのかわからなかった。 ただ一つ心にあったのは、ここまま死ぬのは嫌だということ。 みんなに会って、買い物をして、映画を見るまでは。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>私は駆け出す。怪獣に追いつかれないように。 轟音が一つ鳴るほど、地面が大きく跳ね上がるほど、鼓動は凄まじくなっていく。</p><p>速く、もっと速く、でなければ、怖いから。</p><p>逃げなければ。</p><p>逃げろ。</p><p>すると、目の前から光が消えた。全てが影になった。 怪獣は、私の上を大きく飛んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>同時に閃光が空を駆け巡る。何かが弾けて、怪獣が咆哮を放つ。 鼓膜がはち切れんばかりの振動だった。</p><p>視界がぐらついている。吐きそうだ。</p><p>大量の戦闘機が飛び交っている空に、怪獣の顎が見える。射撃を受けて、怪獣はよろめいた。</p><p>まずい。ここで倒れられたら、私は一溜まりもない。</p><p>怪獣は片膝をついた。その下の住宅街が音を建てて破壊されていく。&nbsp;</p><p>嵐のような突風、轟音の中で、怪獣の股の下にいる私は、震えて縮こまっていた。</p><p>頭には願いが一つだけ。 どうか、どうかショッピングモールだけは。</p><p>一瞬。凄まじく世界が傾いた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">熱い地面が頬を打つ。どうやら私は今、倒れているみたいだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">瓦礫か何か、もしくは怪獣の足か。何かが私に当たったのだろう。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">消えゆく視界が最後に捉えたのは、まるで映画のワンシーンのように、雲ひとつない綺麗な空だった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">それまで何をしていたのか、自分がなんで倒れているのか、一瞬わからなかった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;辺りの景色は荒廃していて、空を見ると、日が沈みかけていた。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">かろうじて思い出せるのは、友達との約束だった。 そうだ、行かなければならない。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">今日はみんなで買い物をして、映画を見るのだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">顔を起こすと、ショッピングモールがあった。なぜか町は全壊しているみたいだけど、あれだけは無事らしい。安堵の溜息が出る。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">その向こうに、何かが見えた。黒くて大きくてゴツゴツとした何か。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">ふらふらとよろけながら、海に向かってゆっくり歩いている。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">不意に、口から言葉が漏れた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「まあ、いいや。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">慌ててフードコートに着いた私は、二人に向けて駆け寄る。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「ごめんごめん！遅くなった！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;倉ちゃんはわざと顔をしかめて怒ったような表情をしている。いつもなんだかんだで許してくれるから、いつも私も、ついつい甘えて遅刻してしまう。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">類ちゃんは何やらこっちを見て唖然としている。変なの。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">夕日が照らすテーブルの上に、ポテトがあるのが目に入る。お腹がきゅうと鳴った。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「あ！昼メシ！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;断りも入れず、一つ摘み上げて口に含む。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">口いっぱいに塩っけと、脂っこいポテトの香ばしさが広がった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">いつも通りの味に安心する。 当たり前のことだけど、やっぱりポテトは普通に食べるのが一番美味い。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">終。</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12398989186.html</link>
<pubDate>Sun, 19 Aug 2018 20:38:50 +0900</pubDate>
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<title>私見的なこと②</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">凝った映画のようだと思った。海底から突如現れたと云われる大怪獣が、栄えた都市を破壊している。逃げ惑う人々を背にして、アナウンサーが懸命に何か叫んでいたが、ぶつ、と映像が途切れた。一瞬だけ映った黒い画面の向こうで私は呆然と口を開けたままだった。どうやら、これは映画ではないらしい。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">黒くて、大きくて、ゴツゴツとした怪獣がこの町に向かってきている。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">二十時間もあれば、私たちは瓦礫の下。もしくは怪獣の胃の中。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">どちらにせよ、逃げなければ命は無い。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">真っ先に思い浮かんだのは家族のこと。それから、大好きな友達のこと。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">不意に携帯が鳴る。メッセージが届いた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「カナエ、ニュース見た！？やばい！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;倉ちゃんからだった。鼻筋の通った、綺麗な笑顔が目に浮かぶ。焦りと絶望でいっぱいだった心が少し軽くなった気がした。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「うん、見たよ。」 出来るだけ平静になろうと、いつもみたいになんでもなさそうに返信した。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">すぐメッセージは返ってきた。私は目を見開く。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「タツヤ、芸能界やめるんだって！どうしよう、やばくない！？」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">思わず笑ってしまった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">倉ちゃんはいつもどこかおかしい。 この非常事態に、彼女は相変わらずで、昨日の夜中に発表されたニュースの方が重要らしかった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「そんなことより、町がヤバいんだって」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「そんなことって、私にとっては町より怪獣よりタツヤだから！マジでタツヤに人生賭けてきたから！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;彼女は熱弁を振るうと、部屋の中にあるタツヤのグッズを一つ一つ紹介し始めた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">こうなると話が長い。慌てて話題を変えることにした。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「類ちゃん、大丈夫かな？テレビ見てパニックになってないかな。私、電話してみるね。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;無理やり会話を打ち切ると、類ちゃんに電話をかける。考えないようにしていたけど、少し怖かった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">嫌な予感がしていた。怪獣はまだこの町に来ていないのに、なんとなく、もしかしたら類ちゃんがもういないんじゃないかと。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">不安を振り払おうとした。それでも動悸は激しく鳴るばかりだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;二度、三度とコールが響いたが、類ちゃんは出ない。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">お願い。類ちゃん、どうか無事でいて。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;ふとコールが鳴り止んだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「もひもひ？」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;寝ぼけたような類ちゃんの声に、一気に力が抜けた。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">類ちゃんは休日の昼過ぎだというのに起きたばかりらしく、間抜けな声で私の呼びかけに応えた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「類ちゃん、テレビ見た？怪獣がやって来て、この町が、なんかヤバいんだって」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「うん。そうだね。明日の映画楽しみにしてるね。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">一方的に電話を切られた。冗談だと思われたらしい。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">でも無理もない。寝起きでいきなりそんなことを言われて素直に飲み込めるわけがない。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">倉ちゃんに伝えると、「ウケる」とだけ返ってきた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;気付けばさっきまであんなに重たかった憂鬱が、すっかり消えて無くなっていた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">なんか知らないけど突然やってくるらしい終末より、その前に友達と会って、映画を見られることの方が幸せだった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;もしかしたら明日映画館、やってないかもしれないけど。 それでも最後にみんなで会えるならそれでよかった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">遠足の前の日みたいにわくわくして夜に眠って、日曜日の朝は嬉しさとともに目が覚めた。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">時間はたっぷりあるのにわざわざ急いで支度して家を出る。一秒でも早くみんなに会いたい。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;外ではあまり人気がない。それでも、私と同じように、いつもみたいに日常を過ごす人も少なくなかった。</p><p>公園で遊ぶ子供たち、散歩する老人、どこかへ出かける家族。 皆、今日死ぬなんて微塵も気付いていないみたいだった。</p><p>&nbsp;いや、本当に気付いていないのかもしれない。終末なんてどうでもいいのかもしれない。</p><p>そう思うと気が楽になった。 よかった。私もみんなと同じで、普通だ。</p><p>&nbsp;</p><p>電車に乗って、改札を出る。駅前にはまばらに人がいるばかりだった。&nbsp;</p><p>駆け足でショッピングモールへ向かう。集合時間には余裕で間に合いそうだ。</p><p>&nbsp;映画の前にみんなでお昼を食べて、買い物をして、夕方からは楽しみだった映画を見るのだ。 すると、バス停前のベンチで、倒れている男性が目に入った。</p><p>迷彩服を着ていて、左肩に日の丸が縫われている。自衛隊員らしい。&nbsp;</p><p>頭を抱えて小刻みに震えている。意識はあるが、正常ではなさそうだ。</p><p>&nbsp;「どうかされましたか？」</p><p>&nbsp;私の声に気付くと、ひっと小さい悲鳴のあと、怯えた風に目線を上げる。&nbsp;</p><p>「お前...怖くないのか...」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">質問の意図がわからず、苦笑いを浮かべて訊き返してしまう。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「えと、何がでしょう..」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「あいつだよ！この町にもうすぐやってくる...あぁ、もうオシマイだ。何もかも。いくら俺たちが躍起になって立ち向かったって、勝てるハズがないんだ。嫌だ、死にたくない。死にたくない。死にたくないよ。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">男性は終末に怯えていた。私はなんとか彼を救ってあげられないかと思案する。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「あの...あんまり落ち込まないでください。ほら、悩んだってしょうがないこともあるじゃないですか。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;とにかく慰めることにした。不安事は人に話した方がスッキリするから。 それでも彼は震えたままだった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「お前、一体どこに逃げるつもりなんだ。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">不意の質問にまた一瞬、意図を汲めずにいた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">ややあって、私が怪獣から逃げていると思い込んでいるのだとわかった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「いえ、今から友達と遊びます。買い物に行って、映画を見ます。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;男性は俯いていた顔を上げると、化物でも見るような目を向けた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「ハハ、お前、狂ってるよ。ハハハ。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">男性はふらふらと路上を歩いて行き、やがて駅の向こうへ消えてしまった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;ショッピングモールへ向かう道すがら、頭を悩ませた。 私は、狂っているのだろうか。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">ちょっと考えていたら、お腹が鳴った。そうだ、朝から何も食べていない。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">早くみんなに会って、ご飯を食べて、こんな悩み事など吹き飛ばしてしまいたい。 私はまた駆け出す。あまりに全力で走っていたものだから、すれ違った子供達に笑われてしまった。 笑われて、また少し気が楽になった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">私だって終末を感じていないわけじゃない。 あの人みたいに怖くもあるし、逃げたい気持ちだってある。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;ただ、正直そんなことはどうでもよくなってしまった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;だってそれより友達の方が好きだし、映画が楽しみだし、それって別におかしいことじゃないんじゃないだろうか。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">私と同じ考えの人たちは確かに居て、それは今しがたすれ違った子供達もそうだ。振り返ると、彼らはリュックサックを背負って何やら談笑し合っている。きっとこれからどこかへ遊びに行くのだろう。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;少し歩くと、今度は蹲って震え、何やら呟いている人がいた。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「私は正常だ。私は狂ってなんかいない。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">その人はパチッと糊が効いたスーツを着こなしている男性だった。よく見えないが、顔もそこそこかっこよさげだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;そんな顔をくしゃくしゃに歪めて泣いている。 パニックになっている彼の背を撫り、私は声をかける。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「大丈夫、あなたは正常ですよ。でも怖いですし、不安ですよね。誰だってそうですよ。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「いや、違う。きっと私は異常なんだ。だって、世間はみんな当たり前のように生活している。恐ろしいことなんて起こらないかのように信じきっている。君だってそうだろう。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「そういう人もいるかもしれないですけど、でも、誰でもちょっとは怖いですよ。そういう人たちもあなたも皆、正常です。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「そんなわけがあるか！もうすぐ私たちは死ぬんだぞ！怖いのがちょっとだけなんて、そんなの、普通に考えておかしいじゃないか。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「うーん。あなたの中の普通ではそうかもしれないですけど、みんなの中の普通は、それで正しいのかも？」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;自分で言ってて、よくわからなくなってしまった。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12398986138.html</link>
<pubDate>Sun, 19 Aug 2018 20:25:58 +0900</pubDate>
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<title>私見的なこと①</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>『ポテトをシェイクにつけるやつやばいwww普通に考えておかしいでしょwww』</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>白い画面にそれだけ素早く打ち込む。ツイートボタンに手を伸ばすと、不意にスマホの画面が輝いた。</p><p>夕暮れ時の外光が射して、白いテーブルとハンバーガーやポテトの並んだトレーを赤く暖かく包み込んでいる。眩しくて手で遮っていると、目の前で「あっ」と声が跳ねた。</p><p>&nbsp;倉子は磨りガラスの向こう、３階下の国道に向けて手を振っている。その通った鼻筋、照ったえくぼがとても綺麗だったので、まるで映画のワンシーンのような風景だな、と類は感じた。</p><p>夕日からオレンジ色に染められた倉子の横顔の、その向こうに、黒くて大きくて、ゴツゴツした怪獣を見た。 蠢く身体が、私たちに背を向け、ビル街を大仰しく壊して進んでいる。 それがこのロマンチックで綺麗な風景にとても似つかわしくなくて、思わず笑ってしまう。</p><p>倉子は怪獣に気づいていないようで、ニカニカと笑っていて、 「お〜い」と国道沿いを歩くカナエに手を振っている。</p><p>&nbsp;声は届くはずもなく、カナエはこちらに気付かずこちらへ向かってきている。 あと数分もすればフードコートまで辿り着くだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「てかさ」</p><p>&nbsp;ポテトを摘み上げると、倉子はわざとらしく顔をしかめた。</p><p>&nbsp;「急に、やっぱ同棲はしたくないとかありえなくない？もう部屋まで決めてるのにさ、今更何言ってるの？って、私怒ったんだけどさ、俺が倉子の邪魔になるだろうからって。いや、それ、おかしいでしょ。って、思わない？」</p><p>またか。と類は内心呆れてしまっていた。 倉子の彼氏は、話を聞く限りではかなりいい加減な人で、それが神経質な倉子の琴線に触れることがしばしばあった。そんなに業を煮やさなくても、と思わないでもなかったが、倉子は一生懸命で、いつも彼女には非が無いような気もする。</p><p>きっと私にとってかけがえのない友人だから、彼女の目線に立ってしまうんだろう。大げさに言えば、彼女にとっての常識が私の常識になるのだ。 倉子が白といえば、私もなんだかんだ白を選んでしまう。 友人とはそういうものなのかもしれない。 そう思うと、彼女を応援したい気持ちが強くなる。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">熱を持って彼氏の愚痴をこぼす倉子を、類は微笑みながらただ頷いて聞くばかりだった。彼女のすべてを許すように。彼女のすべてを愛するように。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">愚痴を吐き出し切ったのか、倉子は一瞬の静寂を挟んで、ふっと笑った。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「類、ほんと優しいよね。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「何、どしたの。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;急に言われ、類は頬を赤くする。</p><p>「いや、なんとなく。ちゃんと話聞いてくれるの類くらいだから。」</p><p>&nbsp;「そんなことないよ。」</p><p>&nbsp;つい謙遜してしまうが、本当はすごく嬉しかった。かけがえのない友人だと倉子も認めてくれたような気がした。 照れ笑いを隠したくて、ポテトを一つ摘んで口に運ぶ。倉子も同じことを考えたようだった。</p><p>倉子は摘み上げたポテトを、口の前で止めた。どうしたのだろうと見つめていると、何かを思いついたような表情をした。 彼女はおもむろにシェイクを手に取る。冷えて霜のついたカップから蓋を外して、手元に引き寄せ、そのまま手にあったポテトを、シェイクの中に落とした。</p><p>持ち上げられたポテトは、先ほどまでの香ばしく油で照っていた姿は見る影もなく、薄ピンクの粘液に無惨にも纏われ尽くされていた。&nbsp;</p><p>「これ！ツイッターで見てさ。一度やってみたかったんだよね〜」</p><p>&nbsp;倉子は屈託のない微笑みと共に、またポテトをシェイクに沈めた。 また持ち上げて、また沈める。</p><p>そうして何度も痛めつけられたポテトは、もう原型を失ってしまっていた。陰鬱とした湿り気を含んだ、甘くドロドロとしたただの芋だ。倉子は嬉しそうに、そのポテトだったものを、口へ運んだ。&nbsp;</p><p>何が起こったのか、その時になってようやく理解した。背筋に戦慄のようなものがひた走る。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「でさ、あいつ。こないだのデートでも15分も遅れたんだけど、到着して何て言ったと思う！？」</p><p>&nbsp;もう彼氏の話などどうでもよかった。 どうせこんな女と付き合う男なんてロクなものじゃない。 早めに別れた方が身の為だよ、とその彼氏に忠告するべきなのかもしれない。私は顔も知らない男に同情した。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「やめなよ、それ。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">私の忠告に、倉子はきょとんと目を開くばかりだった。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「何が？」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「それだよ。ポテト。絶対まずいでしょ。」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「意外と美味しいよ。やってみなよ。」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">耳を貸さないどころか私を巻き添えにしようとしてくる。ヤバい女だ。 女は再びポテトをシェイクに漬けて食べ、ケラケラ笑っている。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「いや、絶対普通に食べたほうが美味しいじゃん。」&nbsp;</p><p>「でもツイッターで拡散されて、みんなやってるよ？みんなやってるってことは、これも普通ってことでしょ。」</p><p>&nbsp;何を言っても無駄のようだった。完全に洗脳されている。 世間に操作された情報を鵜呑みにして、それが常識と信じ込んでいるのだ。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">これ以上話したら私の頭がおかしくなりそうだ。 その時、やたら騒がしい足音が聞こえた。カナエが来たのだ。私は内心ホッとしていた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「ごめんごめん！遅くなった！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">カナエは台詞とは裏腹に悪びれる表情もなく無邪気に笑って、頭から多量の血を流していた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">その小さな額から鼻を覆い、顔の半分以上を覆うほどの鮮血を物ともせず、カナエは「あ、昼メシ！」とテーブルのポテトに食らいついた。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「朝から何も食べてなかったんだよね〜」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「え、いや」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">驚きのあまりほとんど声の出ない私を差し置いて、倉子がなんでもなさそうに聞いた。</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;「カナエ、髪切った？」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「そう！前髪を少し！自分でやったら切りすぎちゃったんだけど、変じゃない？」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「全然変じゃないよ！いいじゃん！」&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「え〜嘘、絶対笑われると思ってたのに！」</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;彼女曰く切りすぎたらしい前髪が、額の上で赤く染め上げられている。&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">&nbsp;</p><p data-aria-label-part="0" lang="ja">「カナエ、血！」</p><p>カナエは額に触れた手を見て、ぎゃあ、と悲鳴を上げた。&nbsp;</p><p>「全然気が付かなかった...」 その多量の出血で、気が付かないことがあるのだろうか。</p><p>&nbsp;倉子も前髪より先に気付くべきだったはずだ。倉子は相変わらずポテトを汚物に変えたものを口に運んで笑っている。こいつはもうダメだ。</p><p>「血だ！どうしよう！」</p><p>&nbsp;慌てふためくカナエと、急いで救急車を呼ぼうと携帯を取り出す私。</p><p>&nbsp;「てかさ」 倉子が声を挙げた。</p><p>&nbsp;「全然気が付かなかったってことはさ、カナエからしたら、大したことじゃないんじゃない？」</p><p>思わず押し黙った私たちは、倉子の発言に肝を抜かれた。</p><p>&nbsp;</p><p>「私も全然気が付かなかったし。てことはさ、どうでもいいことなんじゃない？ほら、私も前髪を切ったときとか彼氏に見せても、無反応だよ。全く気付かないの。あいつにとってはどうでもいいんだよ。案外さ、後になって気付くようなことって、どうでもいいことなんじゃないかな。」</p><p>夕日に充てられたポテトからの馥郁な香りが鼻を突く。広いフードコートには日曜だというのに他に誰もいなくて、静かな一瞬が流れる。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;「何それ。むちゃくちゃだよ。」&nbsp;</p><p>「でも納得した！倉ちゃんすごい！」</p><p>&nbsp;「でしょ〜」</p><p>&nbsp;「まあ、カナエがいいならいいんだけど...」&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ふ、と誰かが笑って、皆で笑った。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12398982141.html</link>
<pubDate>Sun, 19 Aug 2018 20:09:13 +0900</pubDate>
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<title>イミテーションの花花花</title>
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<![CDATA[ <p>先日、彼が死んだ。</p><p>葬儀を終えたとの連絡を受けても、私は未だ宙に放られたままだった。</p><p>彼の母は私が葬儀に出向かなかったことを責めなかった。</p><p>「気が向いたら、また会いにきてね」と電話越しに言われ、返す言葉が出てこなかった。</p><p>お前のせいだ、お前も死ねと言われたなら喜んで私も死ぬつもりでいたのに。</p><p>彼は自殺した。その理由は誰にも告げないまま。</p><p>恋人である私に対して相談の一つもなく、思い悩む姿すら見せなかった。</p><p>私は彼に愛情の限りを尽くしていたと思い込んでいた。だが、もしそれが彼自身の負担となり苦しめていたのだとしたら。</p><p>明るい振る舞いの裏で、私にも隠すほどのとてつもない絶望を抱えて、迷惑をかけまいと独りで逝ったのだとしたら。</p><p>もしそうだとしたら、私が殺したようなものじゃないか。</p><p>それは愛情などではなかったのかもしれない。私が彼に与えていたものは、呪いだ。</p><p>きっと彼自身も気付いていなかった。私に呪われていることに。</p><p>愛や優しさなどと宣って彼の傍に居座り、言葉をかけて、体を交わした。</p><p>それが少しずつ、真綿で首を絞めるように、死へと緩やかに誘う呪詛となっていたのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>もしも失ったものが少しでも戻るなら、私は彼に償いたかった。</p><p>泣くことでも、後悔することでもない、何かがしたかった。</p><p>そして自室を整理した。マグカップ、ワインボトル、写真、木製のチェア。彼に関わるもの、彼の私物をすべて捨てた。</p><p>私自身に覆い被さった苦しみをすべて忘れることにしたのだ。</p><p>彼と出会う前のように明るく孤独に生きてみることで、彼が少しでも救われるなら。</p><p>&nbsp;</p><p>僅かに睡眠をとって、アラームで目を覚ます。</p><p>頭が痛い。だが今日はきちんと出勤しようと思っていた。あまり休んでばかりいられない。</p><p>服を着替えてお湯を沸かす。やがてトーストが焼きあがったことを知らせる音が鳴る。</p><p>焼きあがったトーストにバターを塗る。コーヒーを淹れて、角砂糖を入れてかき混ぜる。</p><p>だが、さっきまでお腹が空いていたのに、急に食欲がなくなった。</p><p>無理して一口齧ってみたが、とても食べられる気がしない。</p><p>コーヒーを排水溝へ流し、作った朝食をゴミ箱に捨てる。</p><p>重たい気持ちを抱えながら家を出ようとしたとき、急激な眩暈が起こった。</p><p>視界が揺れて、そして気絶した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「イミテーションの花花花」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>吐瀉物の臭いを感じながら目を覚ます。</p><p>私は玄関で嘔吐し、倒れていた。どうやらまだ生きている。</p><p>彼のことを忘れようとした罰だろうか。まるで呪い返されているかのようだ。</p><p>時刻は昼を過ぎていた。</p><p>職場から何軒か連絡が来ていたらしい。</p><p>慌てて折り返そうという気にもならず、私は坦々と玄関の吐瀉物を片した。</p><p>冷蔵庫から半分ほど残っていた牛乳を取り出して一気に飲み干す。味が薄くなった気がする。</p><p>ソファに腰を下ろすと、テレビをつけた。なるべく明るいチャンネルを選んだ。</p><p>数十分ほどそうしていたが、全く内容が頭に入ってこなかった。</p><p>どうしたって彼のことを考えてしまう。</p><p>いや、それでいいのかもしれない。</p><p>そもそも犯した罪から逃れようと、すべて忘れようとしていたことが間違っていた。</p><p>彼を呪い殺したという罪は、消えるものではない。私に深く刻み込まれて、一生消えない傷痕として残すべきものなのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>私は彼と出会った頃のことを思い出す。</p><p>それから、デートに誘ったことも。</p><p>初めてキスしたときのことも。</p><p>嬉しいこと辛いこと苦しいこと一つ残らずすべて思い出そうとした。</p><p>雑音が気になって、テレビを消す。</p><p>真っ暗な画面に映る醜い自分の姿を見て、思わず目を逸らしてしまう。</p><p>じっと床を見ていると、不意に声が聞こえた気がした。</p><p>&nbsp;</p><p>目を逸らすな。</p><p>目を逸らすな。真実を見つめろ。</p><p>&nbsp;</p><p>それは誰の言葉なのかわからなかった。</p><p>改めて暗闇の中にいる自分を見つめる。</p><p>やつれていて、重たそうな瞼をあげてこっちを見ている。</p><p>彼を苦しめて、孤独な死へと追いやった瞳だ。</p><p>あれが自分自身だと思うと急に恐ろしくなり、身震いして目を逸らしてしまった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>そうして彼のことを考え続けた。</p><p>夜が来たので、もう眠ってしまおうと思った。</p><p>だが、ベッドの上に横たわり目を閉じると、彼の顔が浮かんで眠れなかった。</p><p>きっと私は寝てはいけないのだ。</p><p>そう思い、朝が来るまで彼のことを考え続けた。</p><p>&nbsp;</p><p>次の日も仕事を休んだ。</p><p>幾度となく彼との思い出を反芻していくうちに、また眠気に襲われた。</p><p>風呂場へ向かうと、蛇口を捻る。とめどなく溢れる冷水に、頭を突っ込んだ。</p><p>濡らした髪と顔を拭うことも煩わしく、ぽたぽたと水滴を垂らしながら部屋に戻ってソファに座り直す。</p><p>眠ってはいけない。苦しみから逃れてはいけない。</p><p>私が呪ってしまったのだ。彼から許しを得るまで、一睡たりとて許されない。</p><p>&nbsp;</p><p>やがて夜が来た。朝が来て、また夜が来た。</p><p>浴槽いっぱいに水を溜め、眠くなるたびに頭を沈めて目を覚ました。彼から逃げないために。</p><p>その甲斐もあってか、私はようやく、彼の死を徐々に受け入れ始めていた。</p><p>地に足がつき始めたような安心感を覚えた。</p><p>ずっと過去の中でもがき続けていたが、これから前に進めるのかもしれない。</p><p>そう思った矢先、私は目を疑った。</p><p>&nbsp;</p><p>窓の外に、バルコニーに、彼の後ろ姿が見えた。</p><p>間違いなく記憶の中で何度も見た、淡い黄色のシャツを着て、煙草を吸っている。</p><p>久しく出していなかった声が漏れる。</p><p>気付けば私は駆け出していた。</p><p>窓を開けて、彼に謝りたかった。</p><p>&nbsp;</p><p>強い風に吹かれて一瞬、目を奪われる。</p><p>開けた窓の向こうに、彼の姿はなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>今のは彼なりのメッセージだったのだろうか。</p><p>それとも、記憶を繰り返し呼び起こすうちに現れた幻影か。</p><p>どちらにせよ私はもう一度彼に会わなければいけないと思った。</p><p>彼に会って、直接許しを得なければならない。</p><p>&nbsp;</p><p>もうどれくらい彼のことを思い出していただろうか。</p><p>彼の好きな歌を口ずさんで、彼の癖を真似て、彼の哲学を習っていただろうか。</p><p>視界が滲んで、一瞬ここがどこなのかわからなくなった。</p><p>目を擦ってみるが、結局はぼやけたままだった。</p><p>まあ別に、ここがどこだってもうどうだっていい。</p><p>私はなんとなく気が付いていた。</p><p>きっと私の世界は彼がいなくなったことで決壊し、まさに今、終わりに向かって崩れ始めているのだ。</p><p>私も、私の世界が終わることで消えてしまうのかもしれない。</p><p>世界が終わる時、そこには何が見えるだろうか。</p><p>指先が、いや、身体が震えている。死ぬことなど今更怖くもないのにどうしてだろう。</p><p>彼を失って終わる世界の向こうは、きっと素晴らしいはずだ。</p><p>&nbsp;</p><p>そこには彼以外の何者もなくて。</p><p>私たちを縛るすべてのものも、自由も、永久も、幸福も、何もない。</p><p>ただ、ずっと広がる無の中に、私と彼がいる。</p><p>そこで私たちは間違ってなかったんだって笑いあう。</p><p>そんな未来のためにも、彼に会わなくてはならない。</p><p>ごめんなさいって謝るために。</p><p>もう大丈夫だよって慰めるために。</p><p>ありがとうって言うために。</p><p>&nbsp;</p><p>彼に会いたかった。</p><p>もう帰ってこないと思っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>パン、と衝撃が頭に響く。</p><p>突然のことに慌てる私の目の前に、彼がいた。</p><p>目を細めて、立っていた。</p><p>彼は私にデコピンをしたらしく、私の反応を見てケラケラと笑っていた。</p><p>あぁ、彼がいる。</p><p>何度願っても会えなかった彼の笑顔が、痛いほど胸を揺さぶる。</p><p>彼の頬に触れてみると、確かに温もりを感じた。</p><p>彼は何も言わなかった。</p><p>代わりに、今度は優しく私の頬に触れてくれる。</p><p>何かを言葉にしたくなかった。</p><p>少しでも言葉を開けば、彼が消えてしまう気がした。</p><p>&nbsp;</p><p>彼は私の隣に座り、肩を寄せて、ぎゅっと抱きしめてくれた。</p><p>すると、風が吹いて、私たちを乗せたソファがふわりと宙に浮く。</p><p>ソファだけじゃない。テレビやテーブルも。</p><p>風は強くなって、さらに猛々しくなって、そして嵐になる。</p><p>部屋の壁が崩れて、ばらばらに剥がれ落ちる。花びらのように舞って、みなどこかに消えていく。</p><p>あまりの強風に吹き飛ばされそうになる私の両腕を彼が掴む。</p><p>私も彼の腕を握る。もう絶対に離さないために。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>嵐が止んで、辺りはもう何もなかった。</p><p>君と私だけが、馬鹿みたいにケラケラと笑いあっていた。</p><p>やがてたくさんの花びらが落ちてきた。</p><p>今までの世界に向けてお疲れ様でしたと言うように。</p><p>これからの私たちに祝福するように。</p><p>&nbsp;</p><p>花が舞い散るその向こうに小さな溜池があった。</p><p>君は私の手を引く。私は歩き出す。</p><p>花びらが浮かぶ溜池の前に立って、私たちは見つめ合う。</p><p>これで良かったんだね。</p><p>私たちは正しかったんだね。</p><p>またケラケラと笑いあって、抱き合う。</p><p>嘘みたいな温もりが確かにここにある。</p><p>これからはずっと一緒だ。</p><p>&nbsp;</p><p>静かにキスをして、手を繋いだ。</p><p>池に飛び込むと、暗闇があった。</p><p>暗闇を超えた先はきっと、もう何もない。</p><p>君と手を繋いで、どこまでもどこまでも、沈んでいく。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>終わり</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12383997104.html</link>
<pubDate>Fri, 15 Jun 2018 22:43:47 +0900</pubDate>
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<title>ゾンビが何を言ってるかわからない件。②</title>
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<![CDATA[ <p>「ああ！あらゆる鍛錬を越えて、ようやく巡った海外のイレイザー！あれやこれやと言うに事欠いてた学生の選挙スクラッチは0.3%の均衡を保つことに意味はあるのかしらね！いいえ、こちら、或る一縷の庇うデリに因ってなにをしても酔狂の推敲に肖るものよ！頭文字はものすごくパブリックだけど、あなたの明日は倒錯！討伐一千年おめでとう！」</p><p>&nbsp;</p><p>「…キリタさん、帰りましょう。今すぐに」</p><p>「そうだね、タカノさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>二人はさっき侵入した窓の方へと踵を返しました。</p><p>すると、大柄な男性がそこに居ました。</p><p>背広を着ていて、やはり顔は真っ白で、やはり生気のない眼で、二人に微笑みを向けるのです。</p><p>キリタさんだけが大きな悲鳴をあげました。</p><p>それに呼応するように男性が叫びました。</p><p>&nbsp;</p><p>「道すがら、公道に鬱を撒く朝方の老父に会ったかい！？アンディとキャンディーの繋がりはとうに優秀賞をかち割った愛の報道だよ！明後日の衣服に期待だね！人事部を通して抜けた殺し屋の七月をお見逃しないように！」</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん！こっちにぃい！こここっちにもいるよ！」</p><p>「キリタさん、こっちよ。」</p><p>二人は侵入口とは反対の廊下を、全力で疾走してゆきます。</p><p>&nbsp;</p><p>死んでいるような人たちは、二人の前に次々と現れます。</p><p>&nbsp;</p><p>「酒にバイオニズムの映像と、賞金を巡る運命の暴動に手を染めないでー！！」</p><p>「タカノさん！またいたあああ！」</p><p>「キリタさん、こっち。」</p><p>&nbsp;</p><p>「好きも嫌いも、達磨もどきの口八丁だと我々は高らかに高め合おう！！」</p><p>「タカノさん！！いたよおおおお！」</p><p>「キリタさん、こっちに。」</p><p>&nbsp;</p><p>「ピンクの懐かしさに私の煉瓦はコンテクストじみているなんてもっとちょうだいー！！」</p><p>「タカノさあああああん！！」</p><p>「キリタさん、キリタさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>二人は逃げるように校舎を駆け回り、気がつくと二階にいたのでした。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「いや、そういう話をしてるんじゃなくて…。」</p><p>&nbsp;</p><p>13回も悲鳴を挙げたので、キリタさんはヘトヘトでした。</p><p>「っていうか、やっぱりあれ、幽霊なのかな。幽霊だよね。生きてる人が、こんなところにいるわけがないもんね。」</p><p>タカノさんは逆に冷静さを取り戻していました。</p><p>「幽霊じゃないわ。足があったもの。だからあれは、ただの生きてる死体よ。だから「人』じゃなくて『体』で数えるべきよ。」</p><p>「どっちでもいいよ。もう帰りたいよー。」</p><p>「だからこうして脱出する方法を探してるんじゃない。」</p><p>「今までただ逃げてただけだと思うけど…。」</p><p>&nbsp;</p><p>振り返ると、まだ13番目の人がこちらを見ていました。こちらを見て、相変わらずなにやらさっぱり分からないことを言っています。</p><p>現在地を知りたくて隣の教室を見ると、2年3組でした。</p><p>キリタさんのクラスは3年3組で、ここはちょうどキリタさんの教室の真下に位置します。</p><p>&nbsp;</p><p>今更になって課題のことをキリタさんは思い出しました。</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。帰る前に、教室には行きたいな。」</p><p>「いいけど。そういえばそれが当初の目的だったわね。完全に忘れていたわ。キリタさん、恐怖より勉学を優先するのね。偉いわ。」</p><p>「退学より怖いものはないからね。」</p><p>&nbsp;</p><p>そうして二人は、キリタさんのクラスを目指します。</p><p>途中、また何人かと、もとい何体かとすれ違いましたが、やはり彼らは何も危害を加えてきません。</p><p>揃ってみんな、こちらを見つめて何かを口走るのみです。</p><p>芸のないお化け屋敷みたいだな、とタカノさんは思いました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>そうして、3年3組に着きました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>キリタさんは自分の机を平手で叩きながら、</p><p>「ここが私の席です。」</p><p>などと言い、</p><p>タカノさんは早くしろと言いたげに、</p><p>「存じてます。」</p><p>と返しました。</p><p>引き出しからファイルを取り出すと、キリタさんは胸に抱きかかえました。</p><p>&nbsp;</p><p>「よかったああ！これで退学は免れた…。」</p><p>「でも、まだ手をつけてないのよね？」</p><p>「うん。ぜーんぶ白紙。」</p><p>「朝までに終わるかしらね。」</p><p>「まあ二人がかりなら余裕でしょ。」</p><p>「え？」</p><p>「え？」</p><p>「手伝うなんて一言も、」</p><p>「よーし、早く帰ろう！持つべきものは友達だねー！生きててよかったー！！」</p><p>「…やっぱり、関係を改める必要がありそうね。私たち。」</p><p>&nbsp;</p><p>二人は笑いながら、教室を出ようとしました。</p><p>タカノさんが窓の方を見ると、微妙に欠けている月が輝いていて、欠けてはいるけどとても綺麗でした。</p><p>&nbsp;</p><p>「見て。キリタさん。」</p><p>「なあに？わ。けっこう綺麗だねえ。」</p><p>「うん。本当に…。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「あ。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>月が一瞬、見えなくなりました。</p><p>上の方から真っ逆さまに人が落ちてきて、窓の向こうのその人と目が合いました。</p><p>真っ白な顔のその人は、もう死んだような目をして、薄ら微笑んでこちらを見ていました。</p><p>セーラー服がよく似合った女の子でした。</p><p>そしてそのまま、落っこちていきました。</p><p>どん、と重たい音がしました。</p><p>&nbsp;</p><p>それを見てタカノさんは、</p><p>キリタさんが言ってたのは、見間違いなんかじゃなかったんだなあ。と思いました。</p><p>&nbsp;</p><p>「ねえ、タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>「今の、何の音？」</p><p>「人が落ちたみたいね。」</p><p>「えっ。」</p><p>「セーラー服の子だった。」</p><p>「えっ！」</p><p>「キリタさんの言ってた子かしらね。」</p><p>「ま、まさか、こ、この学校の…。」</p><p>「いや、違う制服だったわ。」</p><p>「そっか…。じゃあ、さっきの人たちと同じような、生きてる死体の子だったのかな。」</p><p>「そうかもしれないわね。わからないわ。」</p><p>&nbsp;</p><p>タカノさんはもう一度窓の向こうを見て、</p><p>「ちゃんと死ねてたらいいわね。」</p><p>と呟きました。</p><p>窓の下を覗いてみようかと思いましたが、怖かったのでやめました。</p><p>&nbsp;</p><p>帰るときにはもう、白い顔の人たちはみんないなくなっていました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>坂道をジグザグに下りながら、二人は行きます。</p><p>&nbsp;</p><p>「もうすぐ朝になっちゃうね。」</p><p>「そうね。」</p><p>「頑張って登校までに間に合わせようね。」</p><p>「だから何で私まで…。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>キリタさんは、気になっていたことを次々と口にしてみました。</p><p>&nbsp;</p><p>「あの女の子、なんで死のうとしたのかな。」</p><p>「さあ。」</p><p>「あの死体みたいな人たち、なんだったのかな。」</p><p>「わからないわ。」</p><p>「そっか、そうだよね…。」</p><p>&nbsp;</p><p>キリタさんは考えました。</p><p>あの女の子は、あのとき、屋上からこっちを見ていた。</p><p>私たちに何か恨みでもあったのだろうか。</p><p>それとも、伝えたいことでもあったのだろうか。</p><p>&nbsp;</p><p>せめて、話を聞いてあげたかったな。</p><p>&nbsp;</p><p>考えがまとまらないので、キリタさんはもう一度、声をかけました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>「…ううん、なんでもなーい！」</p><p>&nbsp;</p><p>「何よそれ。まるで淑女の宝華みたいに戯けちゃって。」</p><p>「あはは。え？なに？」</p><p>「だいたいキリタさんはね、砂場に綻んだ頬杖が満たされちゃったら、私にとって眩んだ病が滞って姉妹に放蕩しようと間引いてること自体がおかしいのよ。」</p><p>&nbsp;</p><p>「…え？」</p><p>「なに？」</p><p>「ちょっと、タカノさん？」</p><p>「それに言わせてもらうけど、本当に相似したこの間にも、調査中の時代錯誤にH2Oを孕んだクロロフィルが著しく税罰を堂々裁きを与えるヒンドゥー教徒なのよ。そもそも喜怒哀楽を別荘にずっこけた事情聴取をナンセンスにほぼ隠してしまうことも、頬が冗談交じりに独身で無意識を貿易商としても卑下することに相対するのよ。まさに激昂したアリバイが富豪の戦争を未亡人にしてオートロックに３メートルの線路に帰化してしまうから…。ちょっと、聞いてる？」</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>「…感染してない？」</p><p>「えっ？」</p><p>「あ！あの川辺のおじさん！会話したら感染するとかなんとか…。」</p><p>「あ…。」</p><p>「あはははは！変なの！あはははは！」</p><p>「ちょっと、亀裂に懲戒をパージするのだって、新母体の終わりだったのよ！」</p><p>「あはははは！」</p><p>「緊縮に憚らないで！」</p><p>「ねえ、タカノさん。甲板にも斡旋させて！」</p><p>「え？」</p><p>「え？あ…。」</p><p>「これ、呪縛は忌日のように毛細血管が止まってるわね。」</p><p>「ああ！もしかして、顰蹙のトカゲに劣等感を古刀として訝しんだの？」</p><p>「制定は海開きによって花を召したわね。」</p><p>「えー、もう…。」</p><p>&nbsp;</p><p>二人はまた顔を見合わせ、笑いました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>終わり。</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12361906762.html</link>
<pubDate>Tue, 20 Mar 2018 23:49:09 +0900</pubDate>
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<title>ゾンビが何を言ってるかわからない件。①</title>
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<![CDATA[ <p>彼女が悲鳴を挙げ終えると、また静寂が訪れました。</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>非常灯が灯る廊下に二人の声が響きます。</p><p>&nbsp;</p><p>「これで13人目だね。」</p><p>「違うわ、キリタさん。」</p><p>「違うはずがないよ。一階で６人、階段で５人。二階で２人目だよ。出くわすたびに私、今みたいに悲鳴を挙げたんだもの。計13回叫んだもの。それとも私の記憶違いだって言うの？」</p><p>「違うわ、キリタさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>慌てふためく彼女と、相反して彼女は至って平静でした。</p><p>&nbsp;</p><p>「死人は『体』で数えるべきよ。」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>事の発端は、遡ること数時間前、タカノさんがなかなか寝付けないでいた頃のこと。</p><p>キリタさんから着信がありました。</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。今から学校に行かない？」</p><p>時刻は午前１時を回っていました。</p><p>「実は、明日提出しなければいけない課題を教室に忘れてしまいました。ということを、今思い出しました。タカノさんの家の前集合でいい？」</p><p>&nbsp;</p><p>タカノさんは、彼女とは今まで仲の良い友人だと思っていたけど、これからは関係を改める必要があるな。と思いました。</p><p>&nbsp;</p><p>「キリタさん。」</p><p>「なあに。タカノさん。」</p><p>「今何時だと思っているのかしら？」</p><p>「１時を過ぎたねえ。私の親友、タカノさん。」</p><p>「わざとらしく肩書きを加えてきても無駄よ。私は宇宙の因果によってこの布団から出ることができないもの。残念だけれど協力はできないわ。めんどくさいし。」</p><p>「めんどくさいって言った！」</p><p>タカノさんは、一刻も早く電話を切ってしまいたい程度にはめんどくさいと思いました。</p><p>「ということで、さようなら。」</p><p>「タカノさん！お願い！あなたにしか頼めないことなの！」</p><p>&nbsp;</p><p>あなたにしか、頼めないこと−–。</p><p>タカノさんは、かけがえのない友人の頼みと、死ぬほど面倒くさいという気持ちを天秤に掛けました。</p><p>考えた末、やたら布団があったかかったので行かないことにしました。</p><p>&nbsp;</p><p>「キリタさん。」</p><p>「なあに。私の心の拠り所、タカノさん。」</p><p>「勝手に格上げしないでくれる？」</p><p>「タカノさん。先生から『絶対に明日までに出すように』って言われた課題を次の日に忘れて、『明日絶対に持ってくるように』って言われた課題を次の日に忘れて、『明日忘れたらお前の学籍を消す』って言われた課題を学校に置いてきた私の気持ちがわかるでしょう。」</p><p>「わからないわ。おやすみなさい。」</p><p>&nbsp;</p><p>結局、タカノさんは、誰かのせいで目が冴えてきたのもあって学校に付き合うことにしました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ひっそりと寝静まった住宅街の一角、タカノさんの家の前に、集合時刻を十五分過ぎてキリタさんがやってきたので二人は学校へと歩き出しました。</p><p>誰もいない道路を、キリタさんの音程が不安定な鼻歌のリズムに合わせてまっすぐに、ときどきジグザグに進みます。</p><p>見上げると微妙に欠けた月がありました。</p><p>どこからか犬の遠吠えが聞こえてきたりしました。</p><p>&nbsp;</p><p>普段はできるだけ社会のレールから外れまいと日々を過ごすタカノさんにとっては、なんだか不思議で貴重な夜でした。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>川沿いを沿って歩いていると、向こう側の岸に人影が見えました。</p><p>こっちを見ているようです。</p><p>&nbsp;</p><p>「こっちを見ているよ。」</p><p>「こっちを見ているわね。」</p><p>「こんな時間に川辺で一人。変なの。」</p><p>「まあ、私たちよりは珍しくないと思うわ。」</p><p>&nbsp;</p><p>ニット帽の男性が、こちらをじいっと見つめて、何か言っているようでした。</p><p>声は次第に大きくなりました。</p><p>&nbsp;</p><p>「おーい！君達は無事かい。もしこの言葉がわかるなら、すぐに逃げなさい。わかるかい？わかるんだね！いいね、すぐに逃げるんだ。わかったな。」</p><p>&nbsp;</p><p>男性の迫真さに、二人は思わず生唾を飲み込みました。</p><p>よく見ると顔は真っ白で、やけに不気味でした。</p><p>それでもさすがに無視するわけにもいかなかったので、タカノさんは川越しに質問を投げてみました。</p><p>&nbsp;</p><p>「どういうことでしょうかー。」</p><p>「ここは危険なんだ。すぐに遠くへ逃げなさい。」</p><p>「何が危険なんでしょうかー。」</p><p>「いいから逃げなさい。ああ、ダメだ。私と会話するんじゃない。私と会話することが既に危険なんだ。これは感染する病なんだ。言葉から感染してしまうんだ。私と会話すると感染してしまう。一刻も早く、逃げなさい。君たちはこの川の方角を、私と反対を目指して強く逃げなさい。私の言葉は危険だ。危険は私自身なんだ。ああ、恐らく私の舌から頸動脈を経て長いこと暮らしていたから、酷く感染しているに違いない。くそっ。ああ、畜生め。」</p><p>&nbsp;</p><p>これ以上会話するのはなんだかちょっと悍ましいと感じたので、二人は小走りで川沿いを駆けました。タカノさんが振り返ると、男性は頭を抱えて倒れ込んでいました。</p><p>&nbsp;</p><p>川を過ぎて、学校が坂の上に見え始めました。</p><p>「もうすぐだね、タカノさん！」</p><p>キリタさんは疲れを知らないのか、さらに元気を増したように坂道を跳ねて進みます。</p><p>タカノさんは、さっきの男性の言葉が気がかりでなりませんでした。</p><p>&nbsp;</p><p>「ねえ、キリタさん。」</p><p>「なあに、タカノさん。」</p><p>「さっき、逃げなさいって言われたわね。」</p><p>「うん。」</p><p>「感染がどうのとか。」</p><p>「変な人だったね。」</p><p>「もしかして、何か事件でもあったんじゃないかしら。」</p><p>「まさか。パニック映画じゃあるまいしさあ。」</p><p>「でもなんか変じゃない？」</p><p>「何が？」</p><p>「静かすぎるっていうか。」</p><p>「当たり前だよ。深夜なんだから。」</p><p>「そうなんだけど、なんか嫌な空気がするっていうか。ここまで歩いてきてさっきの男の人としか会わなかったし。車も一台も通らなかったし。」</p><p>「普段からそんなに通らないでしょう？」</p><p>「でも、大通りを南に少し散ったのにさ、」</p><p>「もしかしてタカノさん怖いの？」</p><p>「そういうわけじゃないわよ。ただ、」</p><p>「やだー、タカノさんも可愛いとこあるんだねえ。」</p><p>&nbsp;</p><p>そうして二人は、やがて学校に辿り着きました。</p><p>そこで重大なことに気がついたのです。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「しまった、タカノさん！校門が開いてない！」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>深夜２時を回ったころ、校門は防犯のため無慈悲にもしっかりと施錠されておりました。</p><p>&nbsp;</p><p>「キリタさん。」</p><p>「なあに、タカノさん。」</p><p>「あなたはこの校門が閉まっているように見えるの？」</p><p>「どう見ても閉まってるように見えるよ。」</p><p>「まだまだね、キリタさん。」</p><p>&nbsp;</p><p>タカノさんは校門に近付くと、</p><p>「上がガラ空きじゃない。」と言いました。</p><p>肩車をしたりして、なんとか二人は校門をよじ登りました。</p><p>&nbsp;</p><p>「すごいよタカノさん！タカノさんに越えられない壁はないね！」</p><p>「いいえ、私一人じゃ登れないもの。キリタさんのおかげでもあるわ。」</p><p>深夜の学校に侵入した、という事実がタカノさんをも熱くさせていました。</p><p>&nbsp;</p><p>「タカノさん。」</p><p>「なあに、キリタさん。」</p><p>「そういえば校舎にはどうやって入ればいいの？」</p><p>「そうね。」</p><p>「一見どこもかしこも施錠されてて入れなさそうだけど、入れる方法があるんだよね。」</p><p>「そうね。」</p><p>「二人に越えられない壁はないもんね！」</p><p>「ええ、そうね。」</p><p>&nbsp;</p><p>タカノさんは知恵を絞りました。</p><p>どこか開いている扉か窓から入るという可能性を考えましたが、夜はどの扉も窓もきちんと施錠されているので無理です。</p><p>無理でした。</p><p>&nbsp;</p><p>「無理ね。帰りましょう。」</p><p>「決断が早いのはタカノさんのいいところだね！でも待って！せめて本当にどこも開いてないか確かめてからにしようよ！」</p><p>「そうね。こうなったら警備員さんの体たらくに期待するしかないわね。」</p><p>&nbsp;</p><p>二人は希望を胸に、校舎へ向かって走り出しました。</p><p>すると、キリタさんが急に立ち止まります。</p><p>どうかしたの、と声を掛けても返事をしません。</p><p>「ねえ、あそこ、女の子いない？」</p><p>キリタさんが指を指したのは屋上でした。</p><p>&nbsp;</p><p>「…誰もいないわよ。」</p><p>「え、あれ。今確かにいたよ！セーラー服の女の子みたいな女の子が、屋上からこっちを見てたの。」</p><p>「ねえ、キリタさん。」</p><p>「なあに、タカノさん。」</p><p>「やめてくれるかしら？そういう嘘。」</p><p>「えっ、ちょ、嘘じゃないんだってば！ちょっと待ってー！」</p><p>&nbsp;</p><p>再び二人は歩き出しました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>運良く、立て付けが悪く鍵のかかっていない窓があり、校舎内に侵入することができたのでキリタさんは上機嫌でした。</p><p>&nbsp;</p><p>「やったね！さすがタカノさん。持ってるね。」</p><p>「え？あ、ええ。そうね。」</p><p>なんだか上の空でした。</p><p>タカノさんの足取りは重く、やけに周囲に気を配っているようでした。</p><p>「そんなにしなくても、誰か来たら隠れればいいんだからさ。」</p><p>「いや、そうじゃなくて。」</p><p>「タカノさんは怖がりだなあ。」</p><p>「だからそうじゃなくて！」</p><p>&nbsp;</p><p>廊下を抜けて、角を曲がると、真っ赤なドレスを着た長髪の女性がそこに立っていました。</p><p>振り返った真っ白な顔には、生気のない瞳。</p><p>一瞬あって、二つの絶叫が校舎内に轟きました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「へぁあ！はは、に、にに逃げよう！絶対おばけだよ！タカノさん！タカノさん！」</p><p>「待って、キリタさん。」</p><p>「た、タカノさん！早く逃げないと！」</p><p>「山々だけどね、逃げたいのは。動けないの、私。抜かしちゃったわ。腰を。」</p><p>「タカノさん！倒置法の乱用がすごいことに！」</p><p>「行って、置いて、先へ、私を、いいから…。」</p><p>「もう何を言ってるのかわからないよ！」</p><p>&nbsp;</p><p>でも女性は、近寄ってくるでもなく、何をするでもなくこちらをただ見つめていました。</p><p>その顔に薄ら笑顔を浮かべながら。</p><p>&nbsp;</p><p>「あの人、どうしてこっちを見てるの…？」</p><p>「わからないわね。聞いて見たら？」</p><p>「嫌だよ！」</p><p>&nbsp;</p><p>すると女性はおもむろにゆっくりと口を開き、二人に向けてこう言いました。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12361906328.html</link>
<pubDate>Tue, 20 Mar 2018 23:47:21 +0900</pubDate>
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<title>ブラックアウト</title>
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<![CDATA[ <p>今日、せっかくの誕生日に、自分から別れ話を切り出す気分はどんなもんだろう。まり子は、いよいよ吐きそうなほど嗚咽し始め、やがてペットボトルのお茶を飲んで落ち着いた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「私25になるんだよ。淳くんも今年で26でしょ。友達もだんだん結婚とかし始めてさ、もういい歳なんだよ。そりゃあ大学生とかならこう言う恋愛だってまだいいけどさ、そろそろ無理だよ。さすがに私も耐えらんないの。こんな惨めな誕生日は初めてだよ。」</p><p>滑舌が悪いので、相変わらず頭の悪そうな喋り方をする。</p><p>涙目のまり子が見ていられず、テーブルに置かれたブタの形をした貯金箱に目を落とした。</p><p>円らな瞳に、まんまるな体つきをしている。</p><p>俺からの３回目の誕生日プレゼントだった。</p><p>なるべく可愛らしい雑貨で、若干のユーモアも含めたつもりだ。まり子はケタケタ笑いながら喜んでくれるものだと思っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>これは確かに、惨めな誕生日にさせてしまったなと反省する。</p><p>反省をして、去年、一昨年も同じ雑貨屋の貯金箱をあげたことを思い出した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「あの、小さくて黒い、あ、さっきこの店に来たんやけど。こういう鞄無かったですか？鞄。トイレに。」</p><p>&nbsp;</p><p>焦りが文法をめちゃくちゃにした。</p><p>ライブ前には決まって駅前の牛丼屋に行くのだが、隣に新しくカレー屋が出来ていたのでつい入ってしまった。味は悪くなかったが、若女共が多く居心地の悪い店だった。</p><p>そして、トイレに鞄を忘れた。</p><p>気付いたのはライブハウスの楽屋に荷物を置こうとした時。カレー屋を出て１時間は経っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>結局、店に鞄は無かった。</p><p>諦めかけたとき、革の鞄が近くの自動販売機に落ちていたのを見つけた。間違いなく俺のものだ。</p><p>中に入っていた財布、バイト代すべてが入った封筒が抜かれていた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>地下二階にある『下北沢CLUB Eight』で毎月開かれるライブイベントは、毎回4組のアマチュアバンドが集う。客は基本少ない。いくらイベントに出演したところで、集客がなければ赤字だ。</p><p>薄暗い楽屋には俺たちを含め、他のバンドの男たちがこの部屋にすし詰めに密集する。胡座をかくほどのスペースもない。先ほどから隣の知らないデブが煙草を吸いながら大声で不満を垂れている。</p><p>壁に貼られたフライヤーを覗く。</p><p>知ってるバンド名が一つもない。</p><p>恐らく今日は、20人も入れば良いほうだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>財布と現金約9万円を失くした旨をバンドの奴らに伝える。乾と左田は声を挙げて笑った。志賀は一切の反応もなくスマホを弄っている。</p><p>「じゃあお前、清算どうすんねん。」</p><p>「乾、貸して。3倍にして返すわ。」</p><p>「先月の１万返してから言えや。てか、俺もうバイトしてないから。」</p><p>「は？じゃあ生活どうしてんの。」</p><p>「ほら俺、彼女いるから。」</p><p>乾は大学時代からの友人だった。</p><p>バンドを結成してからというものの、お互いに干渉することが減り、ついには金銭面のやりとりばかりになっていた。</p><p>&nbsp;</p><p>「動員の少ないバンドはね、ライブをするべきじゃないんすよ。そいつらが一斉にライブ辞めたらね、ハコの質が一気に良くなりますよ。マジで。」</p><p>隣の無名バンドのデブが誰かに語っている。30代は過ぎているように見える。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>猛烈な喉の渇きを感じた。</p><p>「ジュース。」と、強めに言って立ち上がる。先ほどの乾の言葉でまり子のことを思い出したのもあり、苛立ちは最高潮だった。</p><p>一歩踏み出した際に、誤ってデブの手を踏んだ。</p><p>「ってぇ。」</p><p>低い声で俺の顔を見上げる。</p><p>汗ばんだ顔に向けて唾を吐きたかった。何の楽器を弾くのか知らないが、二度と楽器ができないほど手の骨を踏み折ってやりたかった。</p><p>「…っせん。」</p><p>俺から出たのは、「すみません」を最大限に濁した言葉だけだった。</p><p>&nbsp;</p><p>「いい歳したおっさんが粋がるなよ。クソバンド共が。」</p><p>楽屋を出たところで呟く。</p><p>階段を上がり、自動販売機を見つけたところで、財布が無いことを思い出した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>俺たちの前のバンドが演奏を終えた。妙に洒落っ気と昭和のポップス感を意識した雰囲気がアングラ好きにウケているらしい。客は30人ほど入っていた。</p><p>客入れ音楽が流れる間に、ストラップを肩にかけ、違和感に気付いた。</p><p>ピックが無い。</p><p>楽屋に忘れてきたことに気付き、慌てて取りに戻った。</p><p>&nbsp;</p><p>舞台上は青暗い。</p><p>間延びする準備時間。</p><p>楽屋から戻り、俺は舞台に出る。</p><p>控えめな拍手がかえって恥ずかしい。</p><p>客が先ほどよりやや減っていた。</p><p>&nbsp;</p><p>明かりが差した。</p><p>普段通りの曲を弾いて、ありふれた曲に合わせ、客が手を振る。そんな時間が始まる。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ふと、寒気がした。</p><p>客の中に、ギターケースを背負った若い女がいた。バンドの練習帰りだろうか。幼い顔つきに、赤い髪が似合ってなかった。</p><p>女は歯を見せながら拍手をしている。</p><p>期待が表情に溢れていた。</p><p>彼女が見ているものは何だろう。舞台上にいるのは、ただの26歳過ぎた底辺バンドマンだ。俺も同じように隣で舞台を見ていられたらどんなに楽だろう、なんて考えて恥ずかしくなった。死にたくなった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>喉が渇いている。</p><p>時刻は21時を回っている頃だ。</p><p>変な匂いのするマイクに触れるとスイッチを入れた。</p><p>&nbsp;</p><p>「あー。どうもこんばんは。挨拶なんかせんと、はよ曲やれやって思うとるやろけど、まあ聞いてくれ。俺ら大阪から出てな。東京に出てきて、ほんで３年くらい。俺らのこと知ってるって人おる？…あー、まあそんなもんか。じゃあみんな、他のバンド目当てやな。さっきの奴らのか？あんな雰囲気だけのバンド、どこがええねん。ボーカルも細い声でそれっぽく見せとるだけや。流行りに便乗しとる音楽に、お前らみたいなアホが群がりよるだけやねん。どこがええねん。」</p><p>&nbsp;</p><p>「おい、もうええから。」</p><p>乾に声を掛けられる。</p><p>&nbsp;</p><p>「せやな。聞きたいのはこんな話ちゃうもんな。演奏やもんな。お前らが見たいんは俺たちやなくて、バンドやもんな。だから高い金払ってまでライブハウスに来てんねん。俺らみたいな知らんバンドでも、何か良い音楽やってくれるちゃうかな思て、ここに残っとるかもしれん。それに応えたらんとな。」</p><p>&nbsp;</p><p>誰かの期待に応えるのは難しい。</p><p>スポットライトを浴び、音楽を共有できたときの達成感は何物にも代え難い。だが、失敗したときほどそれだけに、期待されるのが怖くなった。舞台上に居ながら誰も自分を見ていないような、そんな空間が愛しかった。</p><p>&nbsp;</p><p>「あー。なんか始めにくい。なんかないかな。…せや、さっきな、うんこしてん。楽屋のトイレで。めっちゃでかいうんこ。調子良かったんやろな。大腸の形そのままみたいな、綺麗な形しててな。あれ多分今年一番に入るくらいに綺麗だったんちゃうかなって。」</p><p>客席から失笑が漏れた。</p><p>笑いを取るほどでもなく、ただの下品なMCに、会場の空気が重たくなったのを感じる。それに若干の心地よさを感じた。</p><p>乾に促され、曲を始めることになった。これ以上無いほど冷たい視線を見て見ぬ振りする。</p><p>&nbsp;</p><p>終わったら、あの子に会えるだろうか。</p><p>そんなことを考える自分に嫌気が差して、演奏が始まるとすぐに、客席すらもう見えなくなった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>終。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>#リプで来た単語３つを使って短編を書く</p><p>『貯金箱』『底辺バンドマン』『うんこ』</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12346123359.html</link>
<pubDate>Sat, 20 Jan 2018 23:53:04 +0900</pubDate>
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<title>化物</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>自分の身体を切りつける夢ばかり見る。</p><p>それは台所であったり、自室で本を読んでいる時。</p><p>ふと思い立っては刃物を探す。</p><p>刃物は大抵すぐそばにあって、包丁や鋏を見つけた時、私はたまらなく興奮する。</p><p>服の袖を捲り、生まれたてのような真っ白い肌に、今夜も言葉を刻んでいく。</p><p>&nbsp;</p><p>「お前が一番醜い」</p><p>痛くて痛くて、私は声を挙げて泣き出した。</p><p>&nbsp;</p><p>「お前が一番醜い」</p><p>「お前が一番醜い」</p><p>悪い夢ほどなかなか醒めない。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>景色のピントが明瞭になるにつれ、じんわり身体が冷える。</p><p>寒い。汗をかいているのだろう。</p><p>目の前に私が食べたであろう食品のパッケージが落ちている。</p><p>遅れて悪臭が鼻を突く。</p><p>燃えるゴミの日はいつだっただろうか。</p><p>&nbsp;</p><p>目が醒めた。</p><p>腹が減った。</p><p>&nbsp;</p><p>試しに声を挙げてみるが応答などない。</p><p>ここには私しかいないのだ。</p><p>買い物に行こうか。</p><p>もう碌に自宅の階段すら自由に上り下りできない私が、町へ出て、食材を抱えて帰ることができるだろうか。</p><p>&nbsp;</p><p>不安だ。不安だが、行くしかない。</p><p>覚束ない足取りで玄関へ向かうと、</p><p>&nbsp;</p><p>ゆっくりと、扉を開けた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>**</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ゆっくりと、教室の扉を開けた。</p><p>すると、すべての時間が止まったのだ！</p><p>&nbsp;</p><p>教科書を捲る紙の音。規則正しく並んだ椅子をずらす仕草。コンクリートに囲まれた窓の外、その向こうの校庭で騒ぐ学生らの声も。</p><p>一瞬、私が扉を開けている間だけすべてが静止した。</p><p>そして、扉は遠慮というものを知らず、思い切った音を立てて開ききった。</p><p>連鎖的に、学生らがこっちを向いた。</p><p>坊主頭の教師も授業を中止し、私の目を見る。</p><p>激昂しているのがわかった。</p><p>&nbsp;</p><p>「遅刻してしまい申し訳ございません。」</p><p>&nbsp;</p><p>私は投げやりに言い放った。</p><p>理由等聞かれるかと思ったが、冷ややかな視線を浴びるだけとなった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>授業が再開された。</p><p>どこかの国の、知らない人物の遍歴など頭に入ってこなかった。</p><p>私は頭が悪い。</p><p>今更周りからの遅れを取り戻す気負いなどとうに無かった。</p><p>&nbsp;</p><p>冷たい机に頭を伏せた。</p><p>身体が怠い。少し熱っぽくもあった。</p><p>すると間も無く教師の声が遠くなった。</p><p>生徒の醜い笑い声が聞こえる。</p><p>授業は終わったのだろうか。</p><p>私は、重たい頭を持ち上げると、醜い私は、私は醜い。私は醜い。私は、</p><p>&nbsp;</p><p>***</p><p>&nbsp;</p><p>私は重たい頭を持ち上げる。</p><p>車に乗せられて居るらしい。いつの間にか眠っていたようだった。</p><p>笑い声がラジオから流れている。</p><p>&nbsp;</p><p>運転席の若い隣人が目に入った。</p><p>この人は誰だったろう。</p><p>&nbsp;</p><p>すぐに、夜になった。</p><p>フロントガラスの向こうに、星が等間隔に夜空に張り付いている。</p><p>&nbsp;</p><p>綺麗だ。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>あまりにも綺麗だったもので、夜ではないと気付いた。</p><p>そうか、此処はトンネルだったのか。</p><p>通りで息が出来ないと思った。</p><p>苦しい。息がしたい。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>明かりが見える。</p><p>ずっと止めていた呼吸をしようと、私は大きく吸って、</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。」</p><p>助産婦に抱きかかえられた。</p><p>母の声が聞こえる。</p><p>私は産まれた。</p><p>此処がどこかも知らない。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>知らないまま、何もわからないまま、進んでいくらしい。</p><p>そうして私は、すぐに暖かい水の中に落ちた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>**</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>水中に、真っ暗で何も見えず、ただ沈んでいく。</p><p>誰かの助けを待っている。</p><p>泣きたいけど声も出せない。</p><p>死ぬのは怖い。</p><p>&nbsp;</p><p>まだ死にたくは無かった。</p><p>水面に手を伸ばす。</p><p>その腕に、赤黒く文字が刻み付けてあった。</p><p>&nbsp;</p><p>「お前が　一番」</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>続きはなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>***</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>**</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>*</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>トンネルを抜けたらしい。</p><p>運転席の隣人は私が起きたことに気がついた。</p><p>この人は誰だったろう。</p><p>でも私を助けてくれたということだけは覚えている。</p><p>乾ききった口から、私は感謝を述べた。</p><p>&nbsp;</p><p>「もう！びっくりしましたよ、本当に！インターホン押してもなかなか出てこないから、窓から覗いたら倒れてるし。いや、本当に、本当に死んでなくてよかった。ね。」</p><p>&nbsp;</p><p>自宅で階段から転げ落ちたところまでは覚えている。</p><p>必死に助けを呼んでいたが、居るはずの家族は誰一人駆けつけてこなかったのだ。</p><p>話を聞くところによると、デイサービスの職員だというこの男が、救急車を呼び搬送してくれたらしい。</p><p>病院から自宅へ送っていく途中で、私は目を醒ましたのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>「東京のご家族にも連絡しました。今日の夜にはこっち着くみたいですよ。私もそれまでは一緒に居ますから。ね。」</p><p>「嫌だ。」</p><p>「え、どうして。」</p><p>&nbsp;</p><p>雨が強くなってきた。</p><p>&nbsp;</p><p>「私は醜い。」</p><p>「あ、じゃあ、帰ったらお風呂入っちゃいましょう。ね。」</p><p>&nbsp;</p><p>終。</p>
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<link>https://ameblo.jp/upsetpopping/entry-12345809238.html</link>
<pubDate>Fri, 19 Jan 2018 20:11:40 +0900</pubDate>
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<title>ピクトか君になって②</title>
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<![CDATA[ <p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢えっ。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢こんな怖い人でもなれる職業なんて、ロクなもんじゃない！って（笑）｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">どこかの教室の窓が閉まる音。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">ぴしゃ。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢それじゃどうして、先生は先生になったんですか。」</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢うん。私ね、中３の夏になってもまだ進路が決まらなくてね。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢先生も？｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢そう。今の君と同じ。でも私の場合は勉強が嫌いすぎて、どうしても高校に行きたくなくて。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢そんな理由で!?｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢当時は本気だったんだよ。でも、親には反対されててさ。いよいよクラスで私だけ進路が決まってないって状況で、『鬼教師』が相談に乗ってくれたの。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">ぴしゃ。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢怖かったですか？｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢そりゃ～もう！勇気を出して、進学したくないって伝えたらさ。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">みんみんみん。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢なんて言われたんですか。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢『行きたくないなら行く必要なんてない。周りに合わせるな。自分のやりたい道を選べ。』｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢...｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢『ただ、ほんの少しでも夢があるなら、進学しろ。夢を育め。高校は、どこより出来る社会だ。』って。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢...｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">おーい。なにー。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢今まで怖かったのに、まあ怖いのはあんまり消えなかったけど、ちょっとだけかっこいい人だなって思ったんだ。それで結局進学して、友達に教わりながら勉強を頑張って、なんとなく教師を目指し始めたの。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">バイバーイ。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢じゃあ、夢、叶ったんですね。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢いや、まだ叶ってないなあ。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢どうしてですか？｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢だって私は『鬼教師』みたいになりたかったんだもん。こんなんじゃ、まだまだだよ。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">＊</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢先生、今日はありがとうございました。｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">私は２回ほど口を着けられたティーカップを置いて、椅子に座ったままの会釈を交わす。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">仕事とはいえ、溜め込んだものを一方的に吐きつけられる気分はどんなものだろう。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">ここで私は、先生という肩書きはいつだって、存在しているだけで何か押し付けられているという不条理さが伴うのだと知った。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">傘をさして家路に着く。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">駅前通りは人が少ないので、自分の足音がやけに耳にうるさかった。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">堂々巡った問題に対して与えられたのは、考え過ぎないということ。<br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">定期的に診断を受けること。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">それと、抗うつ剤。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">しかし症状は比較的軽いため、恐らく休職は望めないだろう。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">明日もまた、私は不確定多数の標となるのだ。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">それが正しいか、正しくないか。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">答えはないのに答えを求められる。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">あくまで模範解答のような顔をしていなければならない。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">｢先生、先生になって幸せですか？｣</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal; min-height: 20.3px;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">彼は医者になれていたら幸せだっただろうか。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">さっきまで話していた心療内科医の顔が思い出せない。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">もしかしたら、あれは、あの頃の少年だったんじゃないか。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">もしかしたら、もしかしたら。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">彼の顔が、彼の声が。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2">もしかしたら。なんて馬鹿みたいだなあって思って、水溜りを踏んで、その帰り道は何も覚えていなかった。</font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><font size="2"><br></font></span></p><p style="margin: 0px; line-height: normal;"><font style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);" size="2">終わり。</font></p>
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<pubDate>Thu, 01 Jun 2017 23:58:20 +0900</pubDate>
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