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<title>仮タイトル</title>
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<description>１５歳の器用なカリスマと不器用で孤独なライオンのような男がいた。昨年の秋、とある目的の為に作られたチームTokyo Midnight Candyにより、計画されてた襲撃が実行された。１５の夏、 仲間の間でさえ不信感ばかりが募っていた。とにかく俺ら、水泳に没頭した。</description>
<language>ja</language>
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<title>第99話</title>
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<![CDATA[ ミッドナイトにお会いしましょう。<br><br>ゴングをひっぱたけ！
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<pubDate>Wed, 17 Jan 2007 20:11:58 +0900</pubDate>
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<title>第９８話　日没前の男</title>
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<![CDATA[ <p>陽介はカロリーメイトを食べながら、レースを観戦している。</p><br><p>トオルは観戦スタンドの高い位置から陽介の後頭部を見つめて電話した。</p><br><p>『おつかれさん。淳のレースはまだ終わってないよな？』</p><br><p>『あっ、どうも。まだですね。もうすぐだと思いますが。』</p><br><p>『よかった。俺はかなり楽しみしているからな。アイツ最後だもんな。伝えて来てもらっていいか？』</p><br><p>『何をですか？』</p><br><p>『お前は最後なわけだし、しっかり運命と踊れよ、と。俺が言っていたと伝えてくれ。』</p><br><p>承知した陽介は招集所へと向かった。選手がずらりと並び腰を下ろしている。</p><br><p>陽介は間を掻い潜り、淳の元へと向かった。</p><br><p>外からパトカーのサイレンが鳴り響いてきている。</p><br><p>トオルは階段を降りて行った。いたって普通の速度でだ。</p><br><br><p>これから夕方を迎えようとしている夏の空の下、サイレン音も少し丸みを帯びていた。</p><br><br><p>トオルは淳のスポーツバッグに拳銃を放り込み、今度は軽快にスタンド席から去って行った。</p><br><p>非常階段付近の自販機でビールを買った。</p><br><p>さすがにトオルにも緊張が押し寄せてきていた。</p><br><p>プルトップを人差し指で持ち上げると、気持ちの良い至福のアノ音が聞こえた。</p><br><br><p>『ちょっと自由すぎるのではないでしょうか？』</p><br><p>口に含んだ冷えたビールが口角の両脇から流れ落ちた。</p><br><p>耳にはサイレン音が、背中には冷たい刃物が薄っすらと突き刺さっていた。</p><br><p>『三浦か？こら！』</p><br><p>背後から聞こえるマスク越しのこもった声の正体が分からずにいた。</p><br><br>
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<pubDate>Mon, 08 Jan 2007 19:06:05 +0900</pubDate>
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<title>第９７話　図太い女</title>
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<![CDATA[ <p>嫉妬心にかられているマリは、レースで良い成績を残し、見返してやろう</p><br><p>と考えているようだ。勝負時に見せるラテン的なノリが彼女に戻りつつあった。</p><br><p>早くレースがしたい。そんな心境なのだろうと杏は察した。</p><br><p>『マリちゃん、アップ行っとく？』</p><br><p>『はい。そーっすね。でも、淳さんのレース、もうすぐかも。』</p><br><p>『あぁ、そっか。でもサブプールからでも十分見られるよ。』</p><br><p>杏はマリをウォーミングアップに誘った。</p><br><p>死体はまもなく発見される。その際の自分の取り繕い方も分からなかったし、</p><br><p>あまり現場の近くにいたくなかったというのが本音であった。</p><br><p>誰にも自分の表情を見られずに、気づけば事が済んでいるであろうという魂胆から</p><br><p>泳いでいるのが都合がよかったのだ。</p><br><p>彼女らの出場する１００M自由形決勝レースに向けてのアップにしては、時間的に少し早い。</p><br><p>だが、途中で淳のレースなどを観戦することを告げていたため、傍から見てもその辺の違和感は</p><br><p>すんなりとキャンセルされていた。</p><br><br><p>『ごめん、由香ちん。』</p><br><p>杏は振り返りながらそう言うと、由香の方へと再び歩き出した。</p><br><p>今からマリと泳ぎに行くことを告げた。</p><br><p>杏はイケメンを物色しに行くようなノリで一緒に泳ぎに行かないかと由香も誘った。</p><br><p>テンションで押し切った。</p><br><p>マリは大きなピアスを外し、軽い柔軟を行いながらジャージを脱ぎだしている。</p><br><br><p>『で、さっきの・・・、トイレで何だったっけ？』</p><br><p>杏が由香に能天気さを装って、一応聞いてみた。</p><br><p>『超混んでて、漏れそうになった・・・。くだらねぇ。』</p><br><p>『相変わらず下品ね、アンタは。』</p><br><p>内心ほっとしながらそう言った。由香が行ったトイレは出てすぐにある一番近くのトイレで、杏とトオルが向かった売店側のトイレではなかったようだ。</p><br><p>『だって全然開かないないんだよ。さっさと出て下さいって話じゃない？携帯は外出てイジればよかろ？』</p><br><p>『私もよくやってしまう方でして・・・、座ったと同時に携帯をパカっと開いてしまって。』</p><br><p>『それはね、１００歩譲って良しとしても、一番端っこの個室なんて逆に、超静かなの。何してんすか？って感じじゃない。』</p><br><p>『一番端っこ？』</p><br><p>『そう。奥の個室。』</p><br><p>『で？』</p><br><p>『いきなりガーってドアが開いて、出てきたの。携帯耳にあてて。”ごめん超寝てたんだけど”とか言いながら。』</p><br><p>『はは。図太い人だね。』</p><br><p>『しかも、指で髪の毛クルクルしながらね。ギャルみたいな顔して。あんぐらい図太くないとアソコの主将は務まらないのかもしれないけど。』</p><br><p>『まさか・・・。ウチらとタメの？』</p><br><p>『そのまさか。去年はずっと欠場してたらしいけど・・・妊娠説が流れてたしねぇ。今年復帰したみたい。』</p><br><p>話しながら由香もジャージを脱いでいた。</p><br><p>マリがセームタオルで杏のお尻を叩くと、３人は神奈川県内で無敵の中学の女主将の話をしながらサブプールへと向かって行った。猛者が集う学校として有名であった。個人競技では負けたことがない杏やマリも、リレーでこの学校に苦汁を飲まされた経験は何度もあった。</p><br><p>そんな話をするこの３人も周りからすれば憧れの的だ。周囲の連中から注目の眼差しを受けながら彼女達は歩き続けていった。</p><br><p>トオルは彼女等の後は追わず、三浦陽介に接近しようとしていた。</p><br><br><br><br><br><p><br><br></p><p><br></p>
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<link>https://ameblo.jp/what-up/entry-10023026249.html</link>
<pubDate>Mon, 08 Jan 2007 18:23:31 +0900</pubDate>
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<title>第９６話　溢れ出す白々しさ</title>
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<![CDATA[ <p>由香と話した反動で、杏は他の人とも自然に話せそうな気がしていた。</p><br><p>階段を下り、マリの元へと向かった。</p><br><p>『まだ、レースまでもう少しあるよね？』</p><br><p>杏はマリと共に出場する決勝レースの話題から入った。</p><br><p>マリは杏の右腕に抱きつき、さも寂しかったと言わんばかりの表情で杏にペチャクチャと話し掛けた。</p><br><p>マリは杏の不在を知っていた。</p><br><p>空白の時間は３０分もない。</p><br><p>杏はそれを考慮しつつ当り障りにない返答をした。</p><br><p>どうやら杏をﾄｵﾙの元へと向かわせた張本人、陽介はメンバーに何も話していないようだ。</p><br><p>杏は右目の視界の端っこに映る陽介の視線だけが痛く体に突き刺さった。</p><br><br><p>『トオル君知ってるじゃないですか？』</p><br><p>マリが杏に問い掛けてきた。</p><br><p>杏は”トオル”というキーワードが陽介に聞こえていないか心配だった。</p><br><p>『ああ、うん。』</p><br><p>『さっきね、女の人と一緒にいたんです。大人の女って感じの人。』</p><br><p>『そう。』</p><br><p>『やたら綺麗な人だった。』</p><br><p>『トオルさんって、なんとなくだけど、色々お友達多そうだもんね。』</p><br><p>『さぁ。ああ見えて、意外に孤独な人だと思ってたんだけどなぁ。時々寂しそうな目してるし。』</p><br><p>『へぇ。分からないもんだね。』</p><br><p>『年下としては生意気かもしれないけど、守ってあげたいって思ってたし。』</p><br><p>『意外と大人なのねぇ、マリちゃんは。誰なんだろう、その女の人って？』</p><br><p>杏は気が付くとそう口にしていた。</p><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/what-up/entry-10022832578.html</link>
<pubDate>Sat, 06 Jan 2007 03:13:34 +0900</pubDate>
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<title>第95話　偽りのボリューム</title>
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<![CDATA[ <p>まるで何事もなかったかのように通路へと出た2人は、うつむきながらスタンド席へと消えて行った。</p><br><p>トオルは平然を装うと、レースが行われているメインプールを眺めながら独り言をブツブツ言い始めた。</p><br><p>必要以上に財布をいじりながら、何かを呟くアダルト系購入者のように不自然だった。</p><br><p>拳銃と光恵の携帯が入ったポケットの重みを感じながら、トオルは杏の背中をさすっていた。</p><br><br><p>『何も恐れることはないよ。杏ちゃん、安心して戻りなね。』</p><br><p>トオルはプールを見たまま左横にいる杏に帰るように命じた。</p><br><p>『私、どうすれば・・・。』</p><br><p>『大丈夫だって。何も心配するな。』</p><br><p>『だって・・・。』</p><br><p>『だって？　だって何だ？　お前はどうしたい？』</p><br><p>『・・・。』</p><br><p>不安な心境になっている杏にとって、どうしたい？と投げかけられるのは辛かった。</p><br><p>意地悪にも思えた。トオルが銃殺した自分の事をどう思っているか、まだ言葉で聞いていないからだ。</p><br><p>トオルは大人すぎて難しい。</p><br><p>杏は自分の不甲斐なさを感じつつも、大人のズルさみたいなものを感じずにはいられなかった。</p><br><p>光恵の死体が発見されるのは時間の問題だ。</p><br><p>杏にもそれは痛いほど分かっていた。</p><br><p>大好きな淳に栄光あれ！と思ってとった行動であった。本音がまったく見えないトオルに何て言って良いか杏は迷った。</p><br><p>『捕まっても、いいです・・・。』</p><br><p>杏はそう答えた。多少の計算はあった。捕まりたくないと言えば、虫が良すぎるからだ。</p><br><p>『馬鹿やろう！』</p><br><p>杏にとってはある種、予想通りのアンサーだった。内心、少しホッとした。</p><br><br><br><p>トオルは杏の手を引き、自陣のスタンドへ向かわせた。</p><br><p>杏は歩き出した。トオルは少し距離を置いて、杏の帰りを見守った。</p><br><p>『あれ？SCREAMのトオル君じゃない？』</p><br><p>他校の女子生徒がトオルを呼ぼうとしている。巨大組織SCREAMは全国区だ。</p><br><p>少しヤンチャな生徒でトオルを知らない方が珍しいほど、彼の名前と写真は出回っていた。</p><br><p>とりわけ関東圏では無敵な男だ。</p><br><p>田舎臭さが抜けない女子生徒にトオルの話題を振られた男子はチラっとトオルを見ると、すぐに目をそらした。</p><br><p>通路を彼が通過してから、</p><br><p>『間違いねぇ。でもやべぇよ。』</p><br><p>と、もの珍しそうにこちらにトオルを呼ぼうとしている女子を制止しようとした。</p><br><p>『トオル君！』</p><br><p>懲りずに女は彼の名前を呼ぶと、すぐに物陰に身を隠した。</p><br><p>『お前、君付けで呼ぶなよ。殺されるぞ。』</p><br><p>『だって皆、トオル君て呼ぶじゃん。』</p><br><p>育ちの悪そうな女はふて腐れた。</p><br><p>トオルは振り返りもしなかった。</p><br><p>女は往々にして楽勝に上下関係を飛び越える。</p><br><p>それはあまり男からは理解できない。男が１０年ぐらいかけて築き上げた関係性をも、</p><br><p>5分で飛び越えようとしてしまう奴がいる。</p><br><p>『お前、何様だよ！』</p><br><p>男子生徒はトオルを君付けで呼ぼうとする女に突っかかり始めた。</p><br><p>『お前こそ何様だよ。別にアンタSCREAMのメンバーでも何でもないでしょ？マジ最低。』</p><br><p>女は自分の言葉の威力に確信を持っていた。</p><br><p>男は菓子の袋を女の頭に投げつけて、下らないイザコザは終わった。</p><br><p>この中学は、もうほとんどの選手がレースを終えているようだ。観戦に飽き始めていた。</p><br><br><p>杏が再び自分達の観戦席に戻る。</p><br><p>トオルは少し離れた場所でその様子を見ていた。</p><br><p>杏は自陣のエリアの一番上のベンチに一人で座り、誰にも話しかけずに手首を回しながらプールを見た。</p><br><p>あたかもずっと前から座っていたかのような顔を必死で作っていた。</p><br><p>一人で間が持たない杏は２つ下のベンチにあったオーディオを手にとり、イヤホンを耳にあてた。</p><br><p>レースを控えた選手がコンディションを整えるときの様にそっくりであった。</p><br><p>イヤホンから聞こえてきたのは由香が駅前で貰ってくれたバンドマンのMDだった。</p><br><p>由香の設定は自分のものより遥かに小さな音量であった。</p><br><p>しかし、杏はボリュームを上げることができなかった。</p><br><p>いつもはもっと大きめの音できくのだが、アナウンスや会場の状況が分からなくなることが怖くて仕方がなかったからだ。</p><br><br><p>『おい！』</p><br><p>杏は肩をたたかれた。杏はビックリして立ち上がる程だった。</p><br><p>イヤホンをずらして振り返ると、由香がいつも通りのサバサバした表情で立っていた。</p><br><p>動揺した杏は立ち上がった際にイヤホンのコードを引っ張り、ポータブルの本体を地面に落としてしまった。</p><br><br><p>『ごめん、ごめん。びっくりしたぁ。ごめんね、落としちゃった。』</p><br><p>『うん、はいはい。いいよ別に買ったばっかだし。』</p><br><p>由香が冗談まじりに言う。</p><br><p>『ほんと、ごめんて。』</p><br><p>『あんた、何キョドってんのさ？』</p><br><p>『あっ、んん。大きい音で聞いてて、全く外に意識が行ってなかったから・・・びっくりした。』</p><br><p>『ほんと天然だよね。計算？そりゃカワイイ、カワイイ言われるわぁ。』</p><br><p>『もう、違うんだってば。』</p><br><p>２人の間に笑顔が戻った。トオルもその様子を見て少し安心していた。</p><br><br><p>『でさぁ、今、トイレ行ってきたんだけど、』</p><br><p>由香がそう言った。</p><br><p>どうやら、さっきまで由香はこの辺りに座っていてトイレに立ったようだ。</p><br><p>杏は由香の顔が見れなくなった。</p><br><p>『ねぇ、聞いてんの杏？』</p><br><p>下手な嘘は付けない。杏は胸の中でそう思った。</p><br><p>『あっ。』</p><br><p>杏は何かを思い出したかように席を立ち、ベンチには由香のオーディオを残したまま、ずっと前方に座るマリや陽介の元へと歩き出した。</p><br><p>由香は不思議な顔をして杏の背中を眺めていた。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br></p>
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<pubDate>Mon, 01 Jan 2007 18:58:13 +0900</pubDate>
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<title>第94話　恋愛とも違う感情</title>
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<![CDATA[ <p>『何故、撃った？』</p><br><p>トオルが小さな声で杏に問い掛けた。</p><br><p>『急に誰かの足音が聞こえてきて・・・、銃を構えている私を試すかのように、彼女が挑発的な目で私の事を見てたから・・・。』</p><br><p>杏は素直に告白した。</p><br><p>トオル自身の足音が光恵の死を誘発した。</p><br><p>『そうか。』</p><br><p>トオルはそうとだけ答えた。</p><br><p>杏は淳のことが頭にあったことを付け足そうと思ったが、言葉は彼女の喉の高い位置で蒸発した。</p><br><p>トオルがトイレのドアを押さえながら、少し焦っている表情を見せたからだ。</p><br><p>ドアノブを押さえながら、杏にジャージを脱ぐように指示し、トオルは水着姿となった杏にドアノブを持たせた。</p><br><p>杏のジャージを丸め込んで抱えたトオルは光恵の横たわる個室に入り、思いつくあらゆる部分をジャージで拭きだした。</p><br><p>まるで自分や杏の指紋を拭き取ろうとしているかのようだ。</p><br><p>所々、血液がジャージによって引き延ばされ、白色の壁を汚してしまう結果となった。</p><br><p>自分の頬から滴り落ちた汗を、トオルは怒りに満ちた表情で凝視してから踏みにじった。</p><br><p>個室の鍵をかけて上から出ると、神経質なくらい自分の軌跡を杏のジャージで擦り付けた。</p><br><p>いつも涼しげな顔をしているトオルの顔面は汗でびっしょりであった。</p><br><p>割れた鏡の前に立ち、顔を２、３度濯ぐと、ジャージで顔の水滴を拭き取った。</p><br><p>トオルはなんて無様な姿なのだと、ギザギザな鏡に映る自分を見て</p><br><p>『FUCK！』</p><br><p>と激を飛ばした。</p><br><p>そして、その勢いで杏の体を抱いた。</p><br><p>まるで杏を光恵と勘違いしてるかのごとく、強く彼女を抱いた。</p><br><p>杏には意味が分からなかった。</p><br><p>左手でドアノブを押さえながら、杏は抱かれた。</p><br><p>獣に抱かれる恐怖感と快感が入り混じる感情が芽生えながらも、同じぐらいのパッションを有した淳が今頃レースに臨んでいるのではないかと頭の中で想像が始まっていた。</p><br><p>トオルはどうにか杏を肯定したかった。</p><br><p>最愛の人を撃ち殺した彼女を無理やり燃焼させた情熱で包み込んだ。</p><br><p>彼の両腕の感触次第で一瞬にして冷めてしまいそうな緊張感が共存した、彼の抱擁バランスは、しばし平衡を保ったまま、互いの額で２人の汗が混じりあった。</p><br><p>そこに言葉は無かった。</p><br><p>言葉にできなかった物質が２人の間にできた道を行き来した。</p><br><p>自然と杏の左手はドアノブから離れ、目に涙がたまっていた。</p><br><p>それを感じたトオルがジャージを隠すようにして、そっとドアを開き、彼女の背中を摩りながら混み合う通路へと出た。</p><br>
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<link>https://ameblo.jp/what-up/entry-10021908254.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Dec 2006 19:35:22 +0900</pubDate>
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<title>第９３話　開いたドア</title>
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<![CDATA[ <p>野見山に会ったら伝えて下さい。</p><br><p>”俺が必ず迎えに行くと。</p><br><p>そして、俺ら、もっともっと有名になろうと伝えて下さい。”</p><br><br><p>淳からの短いメールだった。</p><br><p>まだまだ物足りないと言わんばかりのメールだ。</p><br><br><br><p>トオルは杏に言った。</p><br><br><p>『牢屋に入る前の奴に、こんなメッセージかよ。』</p><br><p>トオルは光恵の携帯を杏に見せる。</p><br><p>杏は淳のメールを読んだ。そして送信元のアドレスを何度もチェックした。</p><br><p>紛れもない淳からのメールだった。</p><br><p>杏は嬉しかった。</p><br><p>内容的には危なっかしいかもしれないが、</p><br><p>淳が未来のことを少しでも考えていたからだ。</p><br><p>杏は淳が今どうしているかが気がかりであった。</p><br><br><p>早く淳に会いたかった。</p><br><br><br><p>そんなことを心の中で思っているとトオルの呟きが杏の耳に入ってきた。</p><br><br><p>『アイツは俺から何もかも奪って行くつもりか。』</p><br><br><p>SCREAMからの引退や光恵の死。</p><br><br><p>トオルはメールを読んだ直後から、大事な物をいとも簡単に奪われた気分になっていた。</p><br><br><p>杏は血まみれになっている自分の姿すら忘れて、心は淳のことで一杯になってる事に気づかされた。</p><br><p>光恵を銃殺した目の前の事実から反射的に逃避するかのごとくトオルとの会話を不毛と思感じ始めている矢先での</p><br><p>トオルの呟きだった。</p><br><p>杏は恐る恐る顔を上げてトオルを見ると、目が少し赤いトオルは怒りに満ちた顔をしていた。</p><br><p>杏は淳に対する嫉妬心の表われだと察知した。</p><br><p>トオルは杏の顔を見つめて言った。</p><br><br><p>『小せぇな、スケールが。散々好き放題やっといてよぉ。』</p><br><p>トオルの怒りの怒声が静かなトイレに響いた。</p><br><p>巨大組織SCREAMの元ヘッドの今後の野望が気になりもしたが、</p><br><p>これから取るトオルの行動を想像すると恐ろしさを感じずにはいられなかった。</p><br><p>トオルはこの個室から出て次へ行こうと頭が切り替わり始めている。</p><br><p>と同時に、光恵という一人の女にどれほどのインパクトや興奮を与えられただろう</p><br><p>という回顧が同時に行われた。</p><br><p>プライベートとしての彼女、仕事人としての彼女。もっともカテゴライズしずらい人物だったが</p><br><p>どの側面から見ても、彼女にとって自分が一番の男だったと確信した。</p><br><p>それが今の彼の唯一の誇りと自信だ。</p><br><p>そう思える相手を愛せて良かったと、トオルは頭の中での回顧を締め括った。</p><br><br><p>『まだだ。俺も小さいかもな。』</p><br><br><p>トオルは個室のドアを開けた。</p><br><p>血まみれの個室がアラワになる。</p><br><p>安らかに眠る光恵に新しい風が当たり、長い髪の毛が揺れた。</p><br><p>風は生ぬるく、真っ白くギラついた太陽が少し開いたスリガラスの窓の隙間から見えた。</p><br><p>光恵の額には未だ薄っすらと汗の粒が浮かんでいた。</p><br><p>トオルはトイレ入り口のドアを押さえながら杏に出てくるように命じた。</p><br><p>外の空気は美味かった。</p><br><p>夏ももうすぐ終わる。</p><br><p>海に行きたいような、行きたくないような気分だ。</p><br><p>トオルの中でリセットしたい気分がリアルになってきている。</p><br><p>『杏、早く出て来いよ。』</p><br><p>杏は返事はするものの中々出てこない。</p><br><p>『お前もレース控えてる身だろうが。出てきなよ。』</p><br><p>光に触れることが怖いのであろうか、杏は薄暗い個室でしゃがみ込み、</p><br><p>顔に手を当てている。</p><br><br><br><p>『もう夏なんて終わっちまえや！』</p><br><p>トオルは目の前の手洗い場の鏡を拳で叩き割った。</p><br><br><p>『すみません。』</p><br><p>少し大きめの返事をした杏がよろけながら個室から出てきた。</p><br><p>杏はトオルにどう話しかけて良いかが分からない。</p><br><p>どう謝ればいいのかも。</p><br><br><br>
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<pubDate>Sun, 10 Dec 2006 17:15:45 +0900</pubDate>
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<title>間</title>
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<![CDATA[ <p>あいてしまいましたね。</p><br><p>今日から再始動。</p>
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<link>https://ameblo.jp/what-up/entry-10021168444.html</link>
<pubDate>Thu, 07 Dec 2006 03:22:51 +0900</pubDate>
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<title>第９２話　光恵へ</title>
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<![CDATA[ <p>トオルは光恵の手を握った。</p><br><p>彼女の指先からは血がしたたり落ちている。</p><br><p>杏は黙ってその様子を見ていた。</p><br><p>時折スタンドの歓声がけたたましいほど大きくなるが、トオルも杏もそれどころでは無かった。</p><br><p>しばらくしてトオルが光恵のもう片方の手も握りだした。</p><br><p>ただ光恵の体温を感じているだけではないようだ。</p><br><p>２人の両手が結ばれ、ループ状になるとトオルは目を瞑った。</p><br><p>トオルの口元がわずかに動いているのが杏には見て取れた。</p><br><br><br><br><p>絡まりすぎてややこしかった糸が、ゆっくりと解けようとしている。</p><br><p>思いやりも空しさも、お互い伝わりずらくなったこんな時、</p><br><p>さも大げさに、一期一会を口にして、</p><br><p>僕ら２人にだけ効く魔法の粉、互いの空に振り撒いた。</p><br><p>まだ温かい君に、僕は大切な腐れ縁感じている。</p><br><br><br><p>好きと言いながらも、やっぱ好かれたい。</p><br><p>だから騙しあいは否めない。</p><br><p>時に不本意に、時にややこしく。それが長続きの秘訣ね？</p><br><br><br><p>絡まりあう程、悩んだね。</p><br><p>誰もが皆、繊細。</p><br><p>おちゃらけてる様で相性って奴には敏感なんだ。</p><br><p>クローゼットには入りきらない胸騒ぎ、</p><br><p>誰にも見つからないように身に付けた。</p><p><br>あそこでの待ち合わせ、悩みながらもいい足音心掛けた。</p><br><br><p>自分らしさもプライドも頭に無い、本能的なあの日程、</p><br><p>本音を出し惜しみしたあの日程、</p><br><p>全てが手探りだけど、</p><br><p>今となっては素敵に思えて、誰にも迷惑をかけないような、</p><br><p>旧友も知らないような、</p><br><p>いけない事をできた気がする。</p><br><br><p>もう一度君との悩ましい快感を。</p><br><p>僕は正直求めている。</p><br><p>本当の愛かどうかを疑うような</p><br><p>優しいキスを。</p><br><p>今の僕らの薄目具合は丁度良い感じに</p><br><p>あの頃に似ている。</p><br><br><br><br><br><br><br><p>ウジウジ考えたけど、もう何も言葉はかけないよ。</p><br><p>時間がないし。</p><br><p>もう結末は分かっているから。</p><br><p>君が冷めてしまう前にキスで終わろう。</p><br><p>もう一度、最後の熱を入れよう。</p><br><p>ほら、こんなに欲情してんだ。</p><br><p>もうすぐ道ができるよ。</p><br><p>相変わらずだけど、久しぶりだろう。</p><br><p>俺とお前しか通らない道だけど、</p><br><p>今日はしっかり送るよ。</p><br><p>もう２度と通れないだろうからね。</p><br><p>誰も見てないし、思いっきりいけない事をしよう。</p><br><p>何なら仮面を付けて。</p><br><br><br><p>大丈夫、なんだかんだとウジウジ考えても</p><br><p>全ては君の歴史の産物。</p><br><p>見れて光栄だよ。</p><br><p>さっさとお気に入りの仮面を付けろよ。それすら愛せるから。</p><br><p>散らかってけど、久々寄ってけよ。</p><br><p>キスだけだってば。</p><br><p>目を瞑ってくれな。</p><br><p>もういいんだ、瞑ってさ。</p><br><p>頼むよ。</p><br><p>最後だし、俺は仮面をとるからさ。</p><br><p>ほらね。</p><br><p>これからの君にも、僕にも、</p><br><p>言おうか。</p><br><br><p>”おかえり、</p><br><p>そして、行ってらっしゃい。”</p><br><br><p>thank you光ちゃん。</p><br><p>ごめんな。</p><br><br><br><br><br><p><br></p><br><br><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/what-up/entry-10020580851.html</link>
<pubDate>Sun, 26 Nov 2006 22:49:11 +0900</pubDate>
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<title>第９１話　ラストメッセージ</title>
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<![CDATA[ <p>トオルが２人のいる個室にダイブした。</p><br><p>杏の持つ銃が上を向いた。</p><br><p>ブルブルと震えている杏の腕に飛び込んだトオルは</p><br><p>拳銃を奪い取ると、個室のドアに激突した。</p><br><p>しゃがみ込んだトオルの目線の先には丁度光恵の膝があり、</p><br><p>血まみれになった彼女の上半身をゆっくりと下から見上げて行った。</p><br><br><br><p>生気も何もかもが吹っ飛んだ彼女は別人のように綺麗だった。</p><br><p>廃盤になって入手できない懐かしのレコードを思い出しながら口ずさむ時の気分だ。</p><br><p>いつだって思い出して歌える場所は一緒だ。</p><br><p>トオルが決まって思い出し、リピートしてきた彼女に対する最高の記憶の断片が、これ以上無い形で目の前に存在した。</p><br><p>同時に、仮に時が止まった時の虚しさを実感した。</p><br><br><p>日に日に曖昧になって行き、美化してきた虚像の根本は胸騒ぎだ。</p><br><p>今から思えば、やり直したいと思った日ほど、心は揺れまくっていた。</p><br><br><p>全くもって揺れることも、膨らんで張り裂けそうになることも、</p><br><p>増殖して不安になることも無く、まるで石のような完璧な心を手に入れた代償は大きかった。</p><br><p>女々しい事だとは分かっていた。さんざん憎んできたが、彼女のことが好きだったことにトオルは気づかされた。</p><br><p>常日頃、ムシャクシャしたら物事に終わりがあることを教えてやるつもりでいた。</p><br><br><p>目に涙が溢れ出し、大粒の涙が零れ落ちた。</p><br><p>この思いを何処まで遠くに飛ばしても彼女には届きそうにない。</p><br><p>もうどんだけ思いを募らせようが、掻き集めようが、２度と彼女には伝わらない。</p><br><p>今はただ、会えてよかった、と</p><br><p>それすら伝えられないことが悔しくて、悔しくて仕方が無かった。</p><br><p>本気を出し惜しみした気分だ。</p><br><br><p>光恵に熱さが無いと言われるのが影ながら大嫌いだった。</p><br><p>本当は、誰よりも野心家だ。</p><br><p>光恵に対しても同じだ。</p><br><p>ハングリーなんて心にしまっておけば良いと思っていた。</p><br><p>口に出して言うものではないと思っていた。</p><br><p>言ったもの勝ちなんて真っ平だ。</p><br><p>取り分け光恵には伝え方が分からなかった。</p><br><br><br><br><p>今なら大声で叫べるのは何故なんだ？</p><br><p>ココにはもう戻らないよ。</p><br><p>もう２度と言わないから、今日だけは聞いてくれ。</p><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
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<pubDate>Sun, 12 Nov 2006 18:18:31 +0900</pubDate>
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