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<title>小説「ワールズエンドアンドガールフレンド」</title>
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<description>カスミと出会って始まった“僕”の淡く切ない日々（＝インディゴブルー）と、キツネに閉められてしまったドアを開ける“僕”の戦い日々（＝モスグリーン）。</description>
<language>ja</language>
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<title>From シー</title>
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<![CDATA[ <br><br>こんなブログでも見に来てくださる方がいるみたいで、<br>びっくりしています。<br><br><br>純粋に小説のみをupしてどのくらいのアクセスがあるのか、<br>それを知りたくて、<br>新たにＩＤを取得して、この小説専用のブログを作りました。<br><br>しかし、通常のブログのように習慣にならず、放置してしまうことが多いため、<br>今日を持って閉鎖したいと思います。<br><br><br><br>いずれ機会があったら別の形でもう一度upしたいとは思うのですが、<br>前述の通り６、７月と更新できない日々が待っているので、<br>それは今考え中です。<br><br><br><br><br>ちなみにこの小説は僕が大学に入ってから暇を見つけては少しずつ書いたもの。<br>結末はまだ僕も知りません。<br><br>もう少しこのブログはこのままにしておきます。<br><br><br><br>またどこかでお会いできれば、<br>その偶然に感謝します。<br><br><br><br><br><br>読者登録、チェックリスト登録してくださった方、<br>ごめんなさいと、ありがとうございます。<br><br><a href="http://profile.ameba.jp/lily1i1y/" target="_blank">シー</a>より。
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<pubDate>Sun, 10 May 2009 13:54:16 +0900</pubDate>
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<title>インディゴブルー＜４＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br><br><br>　カーテンを少しだけ開けると外は霧雨が降っていた。汚れた心も打たれれば少しずつ洗い流されそうな、そんな優しい霧雨だ。<br><br><br>　なんだか僕は眠たくなってしまってベッドに寝転んだ。白い天井を見つめながら読んでいた本を手放す。時計の針は夜中の０時を回ろうとしていた。<br><br>　僕はまたやってくる日曜日にカスミと行く海のことを考えながら寝返りを打った。ベッドカバーのチェックの模様から一本、縦の黄色いラインだけを選んでなぞってみる。僕の手は目の前を通過して、お腹の前あたりでめんどうくさくなったようだった。<br><br>　顔を少し上げて部屋の向かい側の壁を見てみる。好きでも何でもないイギリスのバンドのポスターが貼ってある。貼ったのは他でもない僕だ。白い壁が寂しく見えてしまって、音楽雑誌についていたポスターの中でも一番騒々しそうなやつを選んで貼った。<br><br>　パンクバンドのボーカルがマイクにかじりついて絶叫していて、顔が見えない後ろの男が身体を捩じらせてギターを掻き鳴らしている。部屋の雰囲気に合っていないことは気づいていたけど、そのアンバランスさが滑稽で、そしてどこか無碍にもできない愛らしさがあった。無論パンクバンドに愛らしさがあるなんて最高の侮辱かもしれないが。<br><br>　<br><br><br><br>　一人の部屋は静かだ。時計の針が申し訳なさげに音を立てる。<br><br><br><br><br>　僕が通う大学は学費が高く、在学している生徒の多くがそれなりに恵まれているものの、実家が東京都内にあるのに一人暮らしをしている学生は少なかった。そして僕はその数少ないうちの一人だった。<br><br>　「大学生になったら一人暮らしでもしてみたら？」という母の無責任な一言の行き着いた先、僕は風に流されるようにして気がつくと大学一年生の春から一人暮らしを始めていた。父は基本的に母のやることなすことに口を出さない。その時も何も言わなかった。<br><br>　一人暮らしをすることが本格的に決まったあくる日の朝に、リビングでコーヒーをすすっていた父の背中なら思い出せる。ただ気の利いた一言くらい何かあるんじゃないかと少し期待した自分も同時に思い出して、今でも面映くなる。<br><br>　僕がやることに関してほとんど干渉してこないというのが教育方針なのか、それとも誰からも口を揃えて可愛いと褒められる姉しか文字通り見えていないのか、僕には自分の親の気持を推して量る余裕も好奇心も持ち合わせていなかった。<br><br><br><br><br><br><br>　最後まできちんと閉まりきっていなかったカーテンの隙間から外の光が入ってくる。防犯のためか、最近アパートの脇の道に新しく街灯がつけられた。夜なのに煌々と眩しい。<br>　<br>　駅前の商店街を抜けて脇道に入って、大股でチ・ヨ・コ・レ・イ・トと２、３回歩いたところくらいに僕のアパートは建っている。つまり脇道に入ってすぐ見える建物が僕の住むアパートだ。外壁は薄いグリーンで、外から見る期待を裏切らず内観も綺麗なアパートだ。エントランスの花壇に植えられたつつじの花と、薄いグリーンの外観と、「スピカ×××」というアパートの名前を僕が、というよりはむしろ母が気に入って入居が決まった。<br><br><br><br><br><br>　ベッドの脇に立てかけてあったギターを手にする。僕がこのアパートを気に入っている大きな理由の一つはギターが弾けることだろうか。Ｄの音を優しく爪弾く。一弦の音がずれていた。二弦の５フレットを押さえて音を確かめる。きっと３弦から上もずれているに違いない。<br>　<br>　もちろん音量は抑えているものの、夜遅くに弾いても誰も何も言わないから小声で唄ってみたりもしている。防音に力を入れたアパートなのか、それとも角部屋だからなのか、はたまた僕の声なんか誰の耳にも届かないのかわからないけど、誰も何も言ってこない。でたらめな唄をでたらめなコードを合わせて気分に任せて唄う。<br><br>　チューニングを合わせて、全部の弦の音をもう一度６弦から確かめる。Ｄを弾いてＧを弾いて、何かを確かめるようにＣを弾いた。<br><br>　<br><br><br>　適当なコードに鼻唄を合わせて遊んでいたら電話が鳴った。ギターの心地よい音で満たされていた部屋に電子音が響き渡る。ベッドから立ち上がって受話器を取る。<br><br>「もしもし。」<br><br>　こんな夜中に電話をしてくるなんてどんなやつかと思ったら、なんてことはない、店長だった。どうせ明日の夕方から入れないかとか、そういった電話だろう。店長だったらこの時間に電話してくるのも頷ける。<br><br>「遠藤？俺だけど。明日の夕方入れる？」案の定だった。<br><br>　店長はマイペースだ。それは人を苛立たせる理由にもなるが、人に愛される理由にもなっている。きっと地球に隕石が落ちてきて人類が滅亡するニュースがテレビで流れていても、店長だったら自分が作っているパスタを茹で過ぎないようにお湯から上げることを優先するだろう。それからきっとこう言うのだ。「なんかあったか？」<br>　<br>　明日の夕方だったら授業で必要だった本を買う予定しかなかったから大丈夫だ。二つ返事で承諾した。店長は「ありがとう恩に着ます。」と一言。きちんと礼を言える大人は素敵だと思う。<br><br><br><br><br><br><br>　電話を置き、いいかげん眠たくなって掛け布団に潜り込む。なぜか頭の中では子どもの頃に聞いたクラシックの音楽が小さく鳴り始めた。どこか懐かしくなるような旋律だ。どこで聞いたんだろう。小学校だろうか。下校の時に流れていたような気がする。鼻唄で唄って、店長に曲の名前を聞いてみようと考えていたら、静かに眠気が身体を包んでいく感覚を覚えた。</font><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/worlds---end/entry-10252479524.html</link>
<pubDate>Fri, 01 May 2009 13:38:09 +0900</pubDate>
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<title>From C ＜１＞</title>
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<![CDATA[ <br><br><br><br>すみません。<br>もし読んでくださっている方がいっらるようでしたら、<br>読者申請していただけたらと思います。<br><br><br>チェックリストに追加でも構いません。<br>更新がかなり不定期になってしまうのと、６・７月は都合により更新できないので、<br>忘れられてしまうのはなんだか悲しいのです。<br><br><br><br><br><br><br>誠に勝手ながら、よろしくお願いします。<br><br><br><br><br><br><br><br>この物語、僕にも結末がわかりません。<br>一体どうなるんだろう。<br><br><br>
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<pubDate>Mon, 27 Apr 2009 07:52:05 +0900</pubDate>
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<title>モスグリーン＜３＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4">　<br><br><br><br><br>　リリが来なくなってから数日が過ぎて、僕はもうとっくに死を覚悟していた。それは自分でもくすぐったくなるほど静かなもので、赤く燃えるような夕焼けをいつものように見ながら、世界の終わりはこんな感じだろうかとか、自分でもよくわからないことをいろいろと考えてみたりした。<br><br><br>　リリは自分と家の世界を繋ぐ唯一の存在で、そのリリがいなくなった今、自分に残されているのは静かな死のみだと思っていた。<br><br><br><br><br><br>あのフクロウが喋るまで。<br><br><br><br><br><br><br>　もう僕は今夜がいったい何回目の夜なのか数えるのもやめてしまった。きっとそう日にちは経っていないのだろうが、リリのいない日々は永遠みたいに長かった。<br><br><br>　夜の帳は全てを飲み込むには濃さが足りず、つけっ放しにしたリビングの灯りが庭をやんわりと明るくさせていた。草木も僕が水をやっていないからか茶褐色の部分が少し目立つようになっていた。食べ物ももう限界は見えている。見てみると意外に蓄えがあったものの、少しずつ食べてももって１ヶ月くらいだろうか。<br>　ただ何より話し相手がいなくなってしまったのはつらかった。空腹よりも何よりも、孤独は人を死なせてしまうと強く思った。<br>　<br><br><br><br><br><br>　実際、僕はその日その日をほとんど何もせず過ごし、食事も思い出したときにとるくらいだった。だから始めは庭の椎の木にとまったフクロウが喋った時に、幻覚に違いないと思った。<br><br><br><br>「こうしていても仕方がないから、とりあえずは庭の外の世界に出なさい。」<br>　<br><br><br>　嘴をパクパクと動かしながら喋るフクロウを見て、我ながらずいぶんと精巧な幻覚を作り出したものだと感心した。声はなんだか頭に直接響いてくるみたいだった。リビングのソファに寝転んだ僕は、ベランダに面した開けっ放しの大きな窓から少し朦朧とした意識の中でフクロウの姿を懸命に捉えようとする。<br>　<br>　暗くてはっきりと見えないが、茶褐色の羽並みの合間にところどころに純白の羽根が見え隠れした美しいフクロウだった。庭の木の中で一番大きな椎の木の中ごろの、人が差し伸べた手のような枝をしっかりとその両足で握り締め、黄色く光る大きな瞳で僕をじっと見据えていた。<br><br><br><br><br><br><br>「庭の外の世界のことを君が何一つとして知ることのないのはわかっている。<br>ただ世界は絶えずその形を変えるのだ。<br>わたしが明日も飛べる保証などどこにもありはしないし、流れる雲が次にどのような形をとるかは誰も知らないのだ。<br>そしてきっと庭の外の世界で君は、今までに感じたことのないような悲しい出来事も知ってしまうかもしれない。<br>庭の外に出た君はとにかく無防備なのだ。庭の外に出るということは、裸のまま何も見えない真夜中にピクニックをするのと少し似ているかもしれない。<br>それを思うとわたしは胸が苦しい。<br>君を庭の外の世界になんて行かせたくないのも間違いなくわたしの本音なのだ。<br>ただ、繰り返すように、世界は絶えずその形を変えるのだ。」<br><br><br><br><br><br><br><br>　幻覚にしては映像としてクリアすぎるし、何よりもフクロウが喋る量にしてはちょっと長すぎる。僕は目をしばたかせてあくびをかみ殺した。夜風が吹いてきて少し寒かったから、足元に丸まっていたお気に入りのブランケットを手繰り寄せる。<br><br>「何を考えている。」<br><br>　フクロウが僕に問いかけた。ブランケットで隙間が出来ないように体を包み込む。風が通らなくなるとすぐに体に温もりが戻っていく。<br><br>「裸のまま行くピクニックについて考えています。」<br>　<br>　僕は想像の中でとりあえず裸になってみて、それからやっぱりピクニックに行くのだからリュックサックは必要だろうと考えた。それから懐中電灯はきっと使ってはならないんだろうとフクロウの意図を汲み取り、ならきっと火は起こせないからライターやマッチなんかもだめなんだろうと思って持っていく荷物からはずしたりした。<br><br>「君は何一つ疑う必要なんてないんだ。君は何も知らないのだから。フクロウが喋ることは信じられないことなのか？」<br><br>　正直なところ、もうほとんどフクロウが喋っているというこの出来事が幻覚なんかじゃないと薄々気がついていた僕は、フクロウの次の一言でソファから立ち上がることになった。<br><br><br>「言い難いことがだが、おまえはもうリリには会えない。」</font><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/worlds---end/entry-10249931750.html</link>
<pubDate>Mon, 27 Apr 2009 07:47:38 +0900</pubDate>
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<title>インディゴブルー＜３＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br><br><br>　僕が通う大学は東京といってもほぼ神奈川よりに位置していて、その広大な面積くらいが自慢のあまり名の知られていないありふれた大学だ。<br><br><br><br>　キャンパスはその在校人数に比べたら格段に広く、ちょっとした森と呼べるようなものもあるほど自然には困らない。<br>　土日でもなんでもない平日の昼間にキャンパス内を歩いても、いくつもの棟が連なって建っている中心部以外ではあまり人に出会うこともない。<br><br>　正門からその中心部に向かって歩いていくのに３分くらいかかり、その間はずっと木々の間を通っていく。連なる棟の向こうには森が見え、学内生カップルはよくデートにこの森を使っていた。<br>　森といっても道はちゃんと整備されていて、大きな自然公園のような様相を呈していた。湖もあるみたいけど、僕は一度も一度も行ったことがなかった。<br>　<br><br><br><br>　カスミは心理学部を、僕は社会学部をそれぞれ専攻していた。お互い講義にはきちんと出る性格で、お互い空いた時間を見つけては、適当なベンチに座って他愛もない話をしたり、あてもなくキャンパス内をぶらぶらしてみたり、雨の日は図書館に行ってそれぞれ勝手に好きな本を読んだりしていた。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>　カスミは僕のバイト先にもごくごくたまに顔を出すようになった。僕はなんともいえない閑散としたカフェでバイトをしている。外の天気が雨だろうと、風が吹こうと、満員で込み合うなんてことは誓ってもなかった。<br><br><br>　僕はそこで注文をとったり飲み物やら料理を運んだり、食器を洗うこともレジを打つこともやった。だいたい同年代くらいの男の子と女の子が、全員合わせると結構な人数働いていたけれど、みんなそれぞれどの仕事もこなせる。<br>　感動して涙が出るくらい放任主義な店長が経営するカフェゆえに、入ってしばらくするとみんなそうならざるを得ないのだ。<br>　<br>　店長が唯一自分で意志を持って決めたのはポルカというカフェの名前くらいじゃないかとみんな疑っている。なんでも音楽の言葉らしいが詳しいことはわからない。ただ店内に流れるクラシックはどれも素晴らしいと思う。そういえば音楽を決めているのも店長だった。<br><br><br><br>　ただ身内の贔屓目を抜きにしてもポルカは素敵なカフェだ。お客の数は何一つとして真実を物語っていない。<br><br><br><br><br><br><br>　カスミの住んでいる駅と僕が住んでいる駅の途中の駅にポルカはあって、カスミは大学からの帰り、気まぐれに自分の駅を乗り過ごして僕のもとを訪ねてくることがあった。<br>　<br>　来ても何をすることもなく、いつもの図書館で見せる姿と変わらずに小説を静かに読んで帰るのけど、彼女は彼女なりにこのカフェを気に入っているみたいだった。帰りがけに「またね。」と僕に言って帰るまで、カスミが店に来ていたことに気がつかなかったこともあった。<br>　<br><br><br><br><br><br><br>「カーテンの色を変えようと思うの。」<br><br>「今のカーテンの色は何色なの？」<br><br>「甘いミルクティーみたいなクリーム色。」<br><br>「いい色だと思うよ、それ。」<br><br>「私も気に入っているけど、でもなんかカーテンの色を変えたい時ってあるじゃない？」<br><br>「…あるかもしれない。今は何色にしたい気分なの？」<br><br>「夜空と同じくらい濃いブルーがいい。」<br><br>「いいね。柄は？」<br><br>「…考えてない。」<br><br>「じゃ僕があのお客さんにホットのレモンティーを持っていって、ここに帰ってくるまでに考えてみて。」<br><br><br><br><br>　僕は接客の合間をぬってカスミと交わす短い会話が好きだ。窓の外の景色も悪くない。ポルカの入り口の透明なドアや窓からは外の通りの風景が見える。客足が途絶えて少し暇な時は、街ののら猫みたいな気分になって、通りを眺めていた。<br><br><br><br><br><br><br>　カスミと約束してすぐの日曜日は雨だった。だからカスミと海へ行くのはさらにその次の日曜になりそうだ。<br><br><br><br><br>　僕の頭の中は、カスミと行く海のことでいっぱいだった。<br><br><br><br><br></font>
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<link>https://ameblo.jp/worlds---end/entry-10246303389.html</link>
<pubDate>Tue, 21 Apr 2009 01:30:36 +0900</pubDate>
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<title>モスグリーン＜２＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br><br><br><br>　僕はお気に入りのブランケットに包まってホットチョコレートを片手にリビングのソファに身体を預けた。<br><br><br>　ブランケットは濃いグリーンでどことなく褪せた色をしていて、ソファはそのブランケットよりもさらに褪せたグリーンだ。苔のような色をしている。<br>　僕はいつも、夕方のこのくらいの時間をリビングで過ごす。夕暮れ時から夜にかけて空が見せる映画のような世界が、いつも決まって僕の胸を打つからだ。燃えるような赤と、優しくて、それでいて少し憂いを帯びた藍色の感動的な出会いを見るたびに涙が出そうになるからだ。<br><br>　僕はホットチョコレートを飲んだあともしばらくそうしていた。<br><br><br><br>　僕は自分の宿命や運命といった風に呼ばれるものについて考えていた。自分がどこから来てどこに行くのかといったことや自分がいったいぜんたい何者なのかといった、おおよそ答えの出そうにないことについて考えをめぐらせていた。僕は世界を知らない。<br><br><br><br><br>　<strong>僕は庭の外の世界を知らないのだ。</strong><br><br><br><br><br>　広がる空がどこまでも続くであろうことは知っているのに、僕は自分の家とその庭までしか世界を知らないのだ。正確に言うと、僕は庭のすぐ外に広がる世界について何一つ知らない。高い塀があるわけでも鉄格子がはめられているわけでも何者かに強制されたり脅迫されているわけでもないけど、僕は一歩として外に出た試しがないのだ。<br><br><br><br>　それは今までずっとそうしてきていることであり、出ようと思ったことは何回かあるけど、いつも結局外に踏み出す一歩が出せない。<br><br><br>　それは勇気がないとか僕が臆病者だとかそういった類の問題ではなくて、もっと複雑で入り組んでいて、実体の掴めない概念みたいなものがそこには存在しているのだ。<br><br>　この事実は深く僕を考えさせるものの一つだ。ただ、この由々しき問題が僕の生きていく上では何の問題にもなっていなかったことも事実だ。<br><br><br>　僕は家の中と庭といった限定された世界でも僕は充分満足していたし、食料品や生活用品など必要なものは全部リリが持ってきてくれるからだ。<br><br><br><br>　リリはいつも決まって一日置いた次の日の夕方にふらりと顔を見せる。頼みさえすればリリは食べ物以外にも様々なものを持ってきてくれる。遠い国の写真やそれを飾るための写真立て、綺麗な色のビードロやブリキのおもちゃ、優しい香りのするろうそくやありとあらゆる本、素敵な色で描かれた絵本なんかも、欲しいものは全部、僕のためだけに用意してくれるのだ。<br><br>　そして僕はそのお返しにリリに色んな話をする。そのほとんどが僕の空想の話だけど、リリは帰らずにその話を聞くのだ。怒りっぽいオーブントースターの話、枯れないイチジクの花の話、小人の話、空の神様と海の神様が子供のころにしたケンカの話、自分の命を投げ打って旅人を助けた椎の木の話。<br><br>　その横顔からは表情は読み取れないけど、一度として話している僕を置いて帰ったりはしなかった。<br><br>　そんなリリを横目に僕は時々悲しい気持ちでいっぱいになるのだった。僕と庭の外の世界を繋ぐ唯一の存在であるリリは、極端に無口で必要な言葉以外はほとんど口にしなかった。リリはいつも決まって一日置きの夕方に姿を見せ、僕の欲しいものを欲しいだけ与えて去っていくのだ。<br><br><br><br>　僕が本当に欲しいものなんて露知らず、はなからまるでそこには何にもなかったかのように。何かがあるけどそれが何かわからないのと、何もないのとでは違うと僕は思う。<br><br><br><br><br><br><br><br>　僕はそこに何があるのかわからなかったけど、何かがあることを感じていた。きっとそれが僕を悲しくさせているということも知っていた。<br>　<br><br><br><br><br><br><br><br>　そんな気が狂いそうになるほど平穏な毎日のあくる日、いつも通りの夕暮れ時、来るはずのリリは姿を見せなかった。<br><br><br><br><br>　今までたったの一度としてこんなことはなかったのに。</font>
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<link>https://ameblo.jp/worlds---end/entry-10243421231.html</link>
<pubDate>Thu, 16 Apr 2009 09:27:25 +0900</pubDate>
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<title>インディゴブルー＜２＞</title>
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<![CDATA[ <font size="4"><br><br><br>「わたしが最近思いついたこと、言ってもいい？」<br>「いいよ。」<br>「夢の中でもみんなが繋がっていたら素敵だと思わない？」<br>「どういうこと？」<br>「寝たら夢を見るでしょ？夢についてみんなあんまり話さないけど。」<br>「うん。」<br>「その夢、みんなばらばらに見ているって思っているけど違うの。」<br>「それはみんなが一つの夢を共有しているってこと？」<br>「そう。あなたが誰かに追いかけられたあの恐い夢も、わたしがカモメに飛び方を教わって空を飛んだあの夢も一緒の夢の中で起きていたのよ。」<br>「じゃ、僕が泣きそうになって逃げていたあの道の上を、カスミはカモメと一緒に飛んでいたかもしれないのかい？」<br>「うん。」<br>「いいね、それ。素敵だ。それに、もしかしたら夢の中で逢えるかもしれないってことだろ？」<br>「そう。話しそびれたことは眠っている間に夢の中で話すのよ。なんか素敵だと思わない？」<br>「うん、素敵だ。」<br><br><br><br><br><br>　カスミと僕が仲良くなるのにそれほど時間はいらなかった。僕らは月並みな表現をすれば似たもの同士で、話すことは尽きないほどあった。それはどちらかがお喋りだったわけではもちろんなくて、二人の世界がすごく近いものだったからだ。とりとめのない話をたくさんと、好きな本の話、音楽の話、映画の話、死について生について、それから僕らは時々世界の終わりについて話をした。<br><br>　世界が終わる日の過ごし方とか、どんな風に世界が終わるかとか、それはいつかとか。下らないことではしゃいだりふざけあったりして、どちらからともなくさよならを言うような、そんな日々が過ぎていった。<br><br><br><br><br>　カスミと出会ってからの僕の生活は劇的にではないけれど、決して少しという言葉では表現できないくらいに変化した。毎日はカスミの手によって知らなかった色が与えられた。僕にとってカスミの存在はなくてはならない存在になっていたし、カスミにとっての僕もそうであるはずだと、僕はそんなことも考えた。<br> <br><br><br><br>　カスミは時々突拍子もないことを言う。彼女とよく話すようになってから少しずつ慣れていった僕だけど、時にまだ驚かされることがよくある。それはキャンパスが太陽の白い光を反射してきらきらと光る素敵な冬の昼前だった。<br><br><br>「海が見たい。」<br><br><br>　まるで子供だと思った。そしてそのいきなり言い出す突拍子もない言葉に対して、いつも何かをしてあげたいと思っている僕がいるのも紛れもなく確かだった。<br><br><br><br><br><br>　大学の正門へと続く道を二人で歩く。その日は僕の授業が早めに終わったため、いつもより早くにその時間に授業をとっていないカスミと落ち合うことができた。僕らは図書館の脇に寄り添うようにして立つブナの木を待ち合わせ場所にしていた。いつものように他愛もない話を少しだけして、バイトがある僕に付き合って途中の駅まで一緒に帰るはずだったのに。<br><br><br>「海が見たい。」<br><br><br>　僕がなんと答えていいかわからずに困っていると、カスミが前と少しも違わない、本当に行きたいのかと疑ってしまうような努力のないリピートをした。僕はなんだか少しいじわるがしたくなって、いらない沈黙を置いてみる。<br><br>　道の両脇には綺麗に刈り込まれた植え込みが等間隔で並んでいた。この道はゆるやかなカーブを描いて正門へと続いている。空は生まれたことを少しも不幸だなんて思っちゃいない赤ん坊のようにキラキラ眩しい。本当のところ、僕は今すぐ何もかもを捨ててカスミと海に行くのも素敵だと思った。<br>「カスミは僕が大学を出て真っ直ぐバイト先に行かなくてはならないって知っているよね。」<br>　仕方がない。どうしようもないことなんて両手を塞いでさらにポケットからもはみ出してしまうくらいこの世界には溢れている。僕はあんまり悲しい顔をしないで欲しいなと願いながら横顔を見る。<br><br><br>「そうだね。きみの言うとおりだね。」<br><br><br>　世界中の雨が全部自分に降り注いでいるような顔をしてカスミが答えた。<br><br><br><br><br>　僕はもう少しだけこのままがいいなと思って、バイトの時間を１時間ばかりでも遅くしなかった自分を適当な言葉で呪った。<br>「次の晴れた日曜日に海へ行こう。」<br>　少し歩調を早めて前を歩いたカスミの顔はちゃんと見えなかったけど、その横顔は少し笑っているように見えた。<br><br></font>
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<pubDate>Thu, 09 Apr 2009 08:05:01 +0900</pubDate>
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<title>モスグリーン＜１＞</title>
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<![CDATA[ <br><br><br>　<font size="4">  <strong>僕はひどく混乱していた。どのくらい混乱していたか言い表せないほど混乱していた。キツネはほんの少しだけ開いていたドアを閉めたのだ。それも目一杯の力で。一瞬の静寂があたりを包んだ。そして止めるまもなくそのドアに鍵をかけたのだ。僕は立ちすくむ足を動かそうとしてみたがまったく動く気配もなかった。彼はすごく満足そうな笑顔を見せると姿を消した。あとには閉じられたドアだけが残った。そしてそれはもう二度と開かないかのように見えた。</strong><br><br><br><br><br><br><br><br><br>　目が覚めた。そこはいつもの部屋だった。淡い茶色のカーテンから微かに陽の光が射している。それはそれ以上でもそれ以下でもいけない、絶妙な量の光だった。僕は横になったまま心から感謝の意を示し、モスグリーンの枕に顔を埋めた。汗の匂いがした。そのまま寝てしまってもいいけれど、こんな晴れた日に二度寝なんてもったいない。僕はちょっとくたびれたヒーローみたいにゆっくりと立ち上がって、朝食の支度に取り掛かった。<br><br><br>　僕は目玉焼きを二つと熱い紅茶とマフィンと、一口大の大きさに切ったトマトを用意した。あとから思い立ってレタスを何枚かトマトの乗っている皿に添える。それらを白いテーブルクロスの上になるべく整ったバランスで配置する。少し傾いだ木製のイスに腰をかけ、いつも通り朝食を黙々と食べた。僕はこの時間が一日の中でもひどく気に入っている時間だ。朝食を食べながら窓の外の音を聞く。風の音、小鳥のさえずり、木々の葉が揺れて誰かの噂話をしている。<br><br><br>　素敵な朝食の時間を終えた僕は庭に出る。ダイニングを抜けてお気に入りのソファと低いテーブルがあるだけのリビングへ向かい、庭に面した大きなサッシを開け放ち、新鮮な空気を肺いっぱいに吸って段差を飛び越えて庭に出る。こじんまりとした庭には草が生い茂っている。名前も知らない木々が息づき、小さな花が精一杯着飾って緑に文字通り花を添えている。僕は使い古した青いホースをズルズルと塀際から引き出し、霧のように細かい水を空中に撒いた。<br><br><br>　水を撒き終わると、しばらく家と庭を隔てる段差の縁に腰掛けてみる。風が頬に心地よい。僕はそっと目をつぶってみた。目をつぶると風の音が聞こえる。風が木々の間をすり抜け、葉に語りかけ、土を優しく撫で、そしていつの間にか去ってしまう様子を瞼の裏に描いてみる。<br><br><br><br>（もうしばらくここにいよう。）<br><br><br><br><br><br>　気づくと僕はいつの間にか、優しい風に身体を預ける格好ですやすやとその優しい眠りについていた。<br>　僕は夢を見ていた。どこか遠くの国にいる。左手に赤い屋根の建物が、右手には小さな湖がある。僕はそこが夢の世界であることを知っている。<br>　<br><br>　僕は赤い屋根の建物の正面にある、素敵なドアをノックする。返事がないのでノブに手をかけて小さな力で手前に引いた。ドアは小人の歯軋りのような音を立てて、じれったいくらいに少しずつ開いた。中には誰もいないようだった。音一つしないし、およそ生活感といったものが感じられない。ガランとした一つの大きな部屋のようになっていて、真ん中に大きな長方形のテーブルがあり、その長い方の辺には椅子がずらりと並んでいた。床は木造の床で、あらゆるこげ茶色の中でおそらく誰もが思い浮かべるような中立的な色をしていた。右手にやや大きめの窓があり、そこから外の光が入り込んでくる。奇妙といっていいほどに理路整然とした空間だが、この部屋には何もない。<br><br><br><br>（この部屋には何もない。）<br><br><br><br>　僕は思った。そこには何か、例えば忘れてしまってどうしても思い出せない何かや、懐かしくて温かい記憶を呼び出すときのような、どこか胸が締め付けられるような気持ちが伴っていた。僕はしばらく立ち尽くしてそんな空気に浸ってみた。<br>　僕はこの夢が覚めるまでの時間、もう何もしないでおこうと思って、静かにドア口に座り込んだ。何か、それ以上部屋に入ったら涙さえ出てきてもおかしくないような、そんな気持ちだったからだ。<br><br><br><br><br><br><br><br>　―気がつくと僕は目を覚ましていた。夢はいつも目が覚めるとすぐにあやふやになってしまう。少しだけ残っている夢の断片も、手の甲にのった粉雪みたいに消えてなくなってしまう。それでも消えないでそのままでいるざらめのようなものを、僕は頭の中で大事にすくい取ってみる。やっぱりそれはどこか懐かしいような、そして二度と帰れないような気持ちに僕をさせた。<br><br><br>　日はまさに今暮れようとしていた。僕の庭が淡い赤に染まっている。しばらく座っていたかったものの、風が少し肌寒い。僕はホットチョコレートを飲もうと、ゆっくりと家の中に帰った。</font>
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<pubDate>Mon, 06 Apr 2009 10:07:17 +0900</pubDate>
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<title>インディゴブルー＜１＞</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br><br><br><br>　雨の日は決まって図書館にいる。<br><br><br><br><br>　大学の図書館は居心地がいい。バッグを置いて、音を立てないように椅子を引いて深く腰を落とす。僕はそこから過去現在未来、世界中、さらには書き手の空想世界にまで旅立つことが出来る。望むのであればどこにでも行ける。<br><br>　僕はここで本を読んだり課題をやったり、居眠りをしたりする。一人の時間はどこかの田舎道の脇を流れる、せせらぎのように流れていく。<br>　日々はそれこそ平和そのものだ。単調な繰り返しがたくさんと、こんぺいとうみたいなちょっとしたいいことがごくたまに。ほとんど何の変化もない繰り返される毎日に対して、僕は少しばかりの退屈とぬるま湯のような安心を感じていた。<br><br><br><br><br>　その日はあいにくの雨で、授業の合間にいつも通り図書館に立ち寄った。少し濡れてしまったボトムの裾を気にしながら、適当に空いている席を探して座る。いつもより少し人が多くて空いている席が少なかったものの、窓の方を見て座る一番奥の席が空いていた。<br>　<br>　大学へ向かう途中のコンビニで買った雑誌を、長いテーブルの上に広げ、少し体を傾けながらそれを読む。図書館のイスは長い机に３個ずつ並べられ、隣の人との間に仕切りはない。僕は肘が隣の人の邪魔にならないように少しだけ身体を小さくした。<br>　<br>　ふと正面の窓に目をやると、憂鬱と混沌を絵筆につけて描いたような景色が見える。曇天と、濡れて黒々としたアスファルト、雨のなか風にたなびく木々。急ぎ足の学生が通りを横切る。あらゆるものが薄暗い影を落としていて、どこか物悲しく見えてしまう。僕は時々鼻をすすって目をしばたかせた。ページを捲る手を替えて首のストレッチをして、また文の先を追う。今日はやけに目が乾く。<br><br><br>　そして雑誌を閉じて手にあごを乗せた僕は、左の方から確かに視線を感じた。理由なんて何一つないけど、そんな気がした。顔をそちらにそれとなく向け、少しだけ視線を返すつもりだった僕は、彼女と逃げようのないほど目を合わせてしまう。肩にかかって胸まで届かないくらいの、緩いウェーヴのかかった髪と澄んだ瞳、頬に添えた右手が白くてとても綺麗だった。<br>「向こうの窓の外を見ているの。」<br>　彼女の瞳は間違いなく僕の目を捉えていたけど、それは言い訳ではなくて、かといって僕をからかうニュアンスもなかった。少しだけ微笑んだ口元が僕の動悸を速める。<br>「きみの名前は？」<br>　こちらの返答を待つそぶりもなく質問をする彼女。僕が答えると、彼女は少し困ったような顔をして、バックからルーズリーフとボールペンを取り出した。そしてそれを僕にほおってよこす。僕はそのB5のルーズリーフの隅っこに、自分のフルネームを漢字で書いて彼女に返す。それを見た彼女は少し困ったように口を尖らすと、何もなかったように本の世界へと帰っていった。<br><br><br><br>　彼女が次に口を開くまでの間、僕は雪がしんしんと降り積もる大地に広がった針葉樹の森林について考えていた。全ての木々はまっすぐ天に伸びていて、その先っぽは削りたての鉛筆みたいに鋭いのだ。僕は想像のなかで空高くからその森を眺めている。雪で化粧をした木々は、僕が知る限りの寂寥感を体いっぱいに表しているようだった。<br>　僕はしばらく多くの木々のうちの一つを眺めていた。そしてそれに飽きると今度はもっと高くから森林全体を見てみる。この森はずっと先まで広がっていて、それは世界の終わりまで続いているようだった。<br><br><br><br><br>「カスミ」<br>　<br><br><br><br>　本に出てきた登場人物の名前でも気まぐれに読んだだけだと思っていた僕は、それが彼女自身の名前であることに気づくのにしばらくの時間を要した。<br>「素敵な名前だね。」<br>　僕は言った。本当に素敵な名前だと思ったし、それ以上になんて言えばいいか分からなかったし、なにより彼女には僕にそう言わせる何かがあったのだ。<br>「ありがとう。」<br>　彼女の声は少し低くて優しくて、不思議と響く声をしている。僕は深くて穏やかな海の底を思い描いた。そこではあらゆる海の生き物が平和に暮らしているのだ。僕は声についても褒めようとしたけど、途中で思いとどまってやめた。<br>　<br><br><br>　そして僕は、彼女が着ていたインディゴブルーのカーディガンがすごく素敵だったことも言わないでおいた。</font>
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<link>https://ameblo.jp/worlds---end/entry-10235356949.html</link>
<pubDate>Thu, 02 Apr 2009 22:44:14 +0900</pubDate>
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