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<title>N.Y　小説・短編小説・詩集</title>
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<description>小説・短編小説・詩集を書いていきます。コメントやメッセージで意見を頂けると凄く嬉しいです。</description>
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<title>おとなのおつかい　８</title>
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<![CDATA[ <br>外に出るとすっかり日は落ちていたが道を照らす明かりの数は多く<br>田舎では考えられないくらい明るかった。<br>「悟のことは聞いたか？」<br>悟とは修おじさん達の養子の子だ。<br>僕らは目を合わせた。<br>「はい」<br>公太は前を歩くおじさんに並び声を上げて聞いた。<br>「さとにいいるんですか？」<br>修おじさんは少し考えて口を開いた。<br>「地球のどこかにはな」<br>残念そうに頭を下げると歩くペースを下げて再び僕らの横に並んだ。<br>公太も悟という人物に憧れているようだった。<br>「悟が使ってた場所だが２ヶ月前に掃除したから奇麗になっている<br>気兼ねなく使いなさい」<br>「ありがとうございます」<br>一体どんな場所だろう、僕と健は目を合わせて<br>声を出さずに喜んだ。<br>「一緒の場所に住んでなかったんだ」<br>独り言のように公太が言った。<br>「あいつは変なこだわりが多くてな<br>どうしてもここがいいって聞かなかったんだ」<br>修おじさんは昔のことを思い出しているようだった。<br>懐かしい思い出に浸っているようだがどこか悲しげな感じもした。<br>「ここだよ」<br>おじさんが足を止めたそこは<br>僕たちの予想を大きく裏切った。<br>僕が田舎で毎日のように見てきた小汚い<br>平屋の一軒家。<br>ひどく見慣れたような佇まいの家で<br>ここまで衝撃を受けるとは考えもしていなかった。<br>隣を見ると公太も健も同じことを思っているらしい。<br>僕は先ほどまで尊敬の念を抱いていた顔も知らない悟と言う人物を少し恨んだ。<br>高層ビルからの景色は一瞬で夢に消えたのだ。<br>僕らの様子を見かねてか<br>「どうした？不満か？」<br>おじさんが訪ねてきた。<br>「いえ、そんなこと無いです」<br>自分でもわかるほどに棒読みだった。<br>「住んでみるといい場所だぞ<br>電気も水道も通っているから好きに使いなさい<br>加代子のうまい飯が食いたいときはいつでも連絡しろ」<br>「ありがとうございます」<br>「鍵はこれな、高校最後の夏休み楽しめよ」<br>そう言って修おじさんは去っていった。<br>渡された鍵を見て考え直したが<br>こうやって家を提供してくれるだけでありがたいものだ。<br>僕たちは理想だけが先に行きすぎて不満を言っているだけだ。<br>「ありがとうございます」<br>僕らは去っていく修おじさんの背中に向かって叫んだ。<br>修おじさんは振り返りもせず左手を上げ<br>街灯に照らされた姿も少しずつ消えていった。<br>「さて」<br>公太は玄関の前に立つと深呼吸した。<br>「俺たちの家だー！」<br>大声で叫ぶと飛び跳ねながら僕らのほうへ飛んできた。<br>そうだここがこの夏の僕たちの家だ。<br>そう思うとテンションが上がった。<br>下宿先みたいでこっちの方が楽しそうだ。<br>「誰が鍵開けるよ」<br>健はそう言いながら拳を握りながら<br>前に出してきた。<br>ジャンケンの合図だ。<br>僕たちは何も言わずに健の誘いに乗った。<br>なんでだろう、ぼくらのジャンケンはいつも一回で決まる。<br>わずか数秒の戦いを制したのは僕だった。<br>僕は財宝を目の前にした盗賊の気分だった。<br>鍵を開けて古びたドアを引くと軋む音を立てながら開いていく。<br>僕は真っ暗の家の中で携帯の明かりを頼りに明かりのスイッチを探した。<br>「付けるぞ」<br>二人の返事が聞こえた。<br>スイッチを入れると<br>チカッチカッと数回点灯した後に明かりがつき部屋が映し出された。<br>「おい、２ヶ月前に掃除したって言ってたよね」<br>僕は振り返って確認した。<br>「確かに言ってた」<br>健は僕の横に歩みを進めながら言ったが目の前の荒れ果てた光景に<br>自分が今言っていることに自信が無いと言いたそいうな表情をしている。<br>「じゃあなんだよこれ」<br>僕らのいるその場所はおおよそ掃除をしたとは言いがたいほどに<br>ゴミで溢れ返っていた。<br>仮に僕が窃盗に入った家がこんな状態だったら幻滅してそのまま帰ってしまうだろう。<br>「掃除から始めないと」<br>玄関に腰を下ろしため息を一つついた僕たちは<br>一日の終わりに大変な仕事が舞い込んできたとひどく落胆した。<br>ただその中で公太一人だけが目を輝かせていた。<br>「違うよ、さとにいが帰ってきてたんだ」
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<pubDate>Wed, 19 Feb 2014 18:03:09 +0900</pubDate>
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<title>おとなのおつかい　７</title>
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<![CDATA[ <br>電車から降りると<br>田舎には無い独特の熱気が押し寄せてきた。<br>涼やかな熱さとは違い、熱気が体に纏わり付いてくる。<br>ホームを抜けた頃には既に体の至る箇所から<br>滝のような汗が噴き出していた。<br>排気ガス混じりの空気が鼻をつつく。<br>ホームを抜けると大都会のビルに阻まれ<br>逃げようの無い熱気とフライパンのように熱された<br>アスファルトからの照り返しで頭が回らなくなる程だ。<br>あれだけ憧れていた東京だったが<br>思わぬ先制攻撃に少しだけ嫌になった。<br>公太の先導で電車を乗り換える。<br>向かう場所は桜新町という場所らしい。<br>東京では乗り換えた電車は地下鉄というらしいが<br>僕らにしてみれば電車は電車だ。<br>着いた先は少し落ち着いた住宅街だった。<br>落ち着いたと言っても先ほどまで見ていた景色に比べればという意味で<br>僕らの地元では考えられないほどに発展している。<br>ビジネスビルが住宅ビルになっただけで<br>太陽の照り返しは相変わらず容赦ないが。<br>５分程歩いた先に今回の宿泊先になるマンションが見えてきた。<br>同じようなビルの中にひと際奇麗なそこは見ただけで高級だとわかった。<br>インターホンを鳴らすと<br>優しい声色の返事があった。<br>公太のおばさんのようだ。<br>「公太です」<br>「いらっしゃい、今開けるわね」<br>大きめの自動ドアを通ると<br>これまた大きすぎるほどのエレベーターに僕たち三人は乗り込んだ。<br>みるみるエレベーターの階数が上がっていく。<br>エレベーターから下りると<br>加代子、公太のおばさんは既にそこで待っていた。<br>「お久しぶりです」<br>「大きくなったわね」<br>声でイメージした通り育ちの良さそうなおばさまだ。<br>奇麗に巻いた髪に花柄のワンピースこれで齢５０を超えているというのだから驚きだ。<br>３０代と言っても通用するのではないだろうか。<br>降りた先で迷うかもしれないからと言うことでわざわざエレベーターまで<br>来てくれたらしい。<br>確かに周りを見渡すと同じような玄関が迷路のように並んでいる。<br>ふと目が合った僕らは会釈をすると<br>公太が思い出したように僕らの紹介を始めようとした。<br>「それは家に入ってからでいいわ、こっちよ」<br>案内された玄関に入ると<br>奇麗に整頓されたリビングが広がっていた。<br>窓の外には都内のビルがずらりと並んでいる。<br>なかなか見れないその景色に僕らは思わず見入ってしまった。<br>「おお、高え～」<br>健も興奮している。<br>ここで夏の生活が始めるのかと思うと公太に感謝しても仕切れないものがあった。<br>「そんなに珍しい？」<br>おばさんの言葉に挨拶がまだだったことを思い出した僕らは<br>振り返ると姿勢を正し、自己紹介を述べた。<br>「葉山　翔です！よろしくお願いします」<br>「山本　健です、これからよろしくお願いします」<br>「そんな固くならなくていいのよ、楽にして<br>熱かったでしょう？何か飲む？<br>お父さんは今出かけてるからお茶でもして待ちましょう」<br>高級そうな缶入りのクッキーとオレンジジュースを<br>出してもらった僕らはオレンジジュースを一気に飲み干した。<br>こんな状況でクッキーなんて食べたら既にない水分が完璧に乾涸びてしまう。<br>「そうとうのどか湧いてたのね」<br>おばさんは笑顔で立ち上がるとボトルごと持ってきて<br>好きなだけ飲みなさいと僕らに差し出した。<br>ほとんど満タンだったそれは瞬く間に空になってしまった。<br>ようやく喉が潤ったことで今度はお腹が空いてきた。<br>公太が先陣を切ってクッキーに手を伸ばすと<br>それに続くように僕らもクッキーに手を伸ばした。<br>嬉しそうに僕らを見るおばさんは<br>一気に大きな子供が３人出来た気分なのだろう。　<br>公太から聞いていた話だが<br>おばさんは子供が出来ない体で<br>一人男の子の養子を貰って育てていたらしいが<br>今は世界中を回っていて<br>たまに帰ってくるだけらしい。<br>「自由奔放」ぼくの憧れるそのものだった。<br>明確な目標が無い僕は何にも縛られず生きている<br>顔もしらないその人に憧れた。<br>公太が昔から海外の面白い話を饒舌に話していた理由はこれだったんだ。<br>公太が話していたことを思い出しながら<br>僕たちは他愛も無い学校の話や恋愛の話をして<br>気づくと日も沈みかけていた。<br>ガチャリ<br>「ただいま」<br>そう言ってリビングに入ってきた男は<br>かっちり黒のスーツで決め、髪も奇麗なオールバック、おじさんの修だ。<br>強面でいかにも仕事ができそうな雰囲気を醸し出している姿を見た僕と健は<br>加代子おばさんに挨拶した以上に背筋を伸ばして挨拶した。<br>一瞬返事が無くて焦った僕らだったが<br>すぐに笑い声とともに<br>「そう固くなるなこんな顔で緊張したか？」<br>修おじさんは笑いながら自分の顔を指差した。<br>「相変わらず小さい子には泣かれるけどな<br>君たちはそんな年じゃなかろう」<br>ネクタイを緩めながら修おじさんは自虐気味に言った。<br>自虐的なギャグが面白かったわけではない。<br>安心感から僕たちは笑った。<br>その後夕食をごちそうになった僕らは<br>東京の観光名所や修おじさんのおすすめを聞いた。<br>ビールを飲んでいたおじさんは先ほど以上に饒舌になり<br>時折親父ギャグを混ぜてくるが全く笑えないのが辛いところだ。<br>どうやら不動産の会社を経営しているらしく<br>窓からあそこからあそこまで俺のビルだと言われたときは<br>驚愕した。<br>今見ただけではただの強面の寒いおっさんなのに。<br>きっと仕事のときは最初に見た厳格な雰囲気なのだろう。<br>楽しい夕食の時間も終わり一息つくと<br>「さて、君らの住む場所に案内するよ」<br>そう言って修おじさんは立ち上がった<br>「家ですか？」<br>健のその言葉にはここじゃないんですか？という意味が隠れていたことは<br>間違いない。<br>「そうだ、ここだと何かと不便だからな、鍵も余ってないし<br>、君たちも夜は自分たちだけで騒げた方がいいだろう？」<br>確かに、修学旅行気分の僕たちはきっと夜な夜な騒ぎ倒すに決まっている。<br>おじさん達の邪魔にもなるし、３人で住めるなら好都合だ。<br>ぼくは窓の外を見てきっとあのマンションのどこだろうと息巻いた。<br>なるべく高い場所がいいな、そんな希望を抱きながら部屋を出た。
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11773393634.html</link>
<pubDate>Sun, 16 Feb 2014 08:39:50 +0900</pubDate>
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<title>おとなのおつかい　６</title>
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<![CDATA[ <br>「公太、そろそろこの前話してたの教えろよ」<br>僕は楽しそうに雑誌を捲る公太に横やりを入れた。<br>公太は思い出したように目を見開き頷くと<br>「じゃあヒントあげるよ」<br>そう言ってポケットから小銭を取り出した。<br>「ヒント？」<br>「うん、これで柿ピー買ってきて、小さいパックのやつね」<br>突然渡された小銭と言っていることが理解できない僕は<br>公太を見たまま固まった。<br>いや、言ってる意味はわかる。これのどこがヒントなのかわからなかった。<br>僕の様子を見てか、公太はいいからいいからというように<br>目を閉じて僕を宥めるように手のひらを僕に向けて突き出した。<br>「いいから取りあえず行ってきて」<br>僕は何も言わずに立ち上がると時折揺れる電車の中を<br>売り子を探して歩き始めた。<br>五分足らずで公太に言われた柿ピーを買って戻ると<br>座ったキャリーバッグを頻りに揺らしながら公太達が待っていた。<br>健は僕らのやり取りを興味深そうに見ている。<br>「おつかいお疲れさまです！」<br>嬉しそうに言う公太。<br>これじゃただのパシリじゃないかと皮肉たっぷりに僕は言った。<br>飽きるほどの学校内で見てきた。あの光景と一緒だ。<br>「いい線行ってるね、けど少し違うんだな」<br>公太はそう言って僕に１００円を差し出した。<br>「何これ？」<br>「おつかい料、報酬だよ」<br>「おつかい料？」<br>「俺たちがやるのはおつかいなの、こうやって報酬をもらうんだよ」<br>「「おつかい.com」そう言うことか！」<br>健は納得して頷いた。<br>「面白そうじゃん」<br>「だろ？」<br>盛り上がる２人を他所に何か腑に落ちないままの僕がいた。<br>東京に行ってまでパシリをやるというのか<br>最後の夏休みだと言うのに。<br>「はじめてのおつかいご苦労様」<br>不満そうな僕の手に１００円玉を握らせ公太は奇麗な二重の垂れ目を<br>細くしながら言った。<br>僕の手に包まれた一枚の硬貨は夏の太陽に照らされ鈍く光っていた。<br>出来ればやりたくないと思ったちいさなおつかいが<br>この夏のいや、人生を変えることになるなんて<br>このとき僕は到底考えもしなかった。
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11768081521.html</link>
<pubDate>Sun, 09 Feb 2014 02:27:04 +0900</pubDate>
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<title>おとなのおつかい　5</title>
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<![CDATA[ <br>健は案外簡単に納得されたらしい。<br>真面目に高校生活送ってきたんだ、最後ぐらいと思われたのだろう。<br>夏休み初日。<br>僕たちは着替えを詰めた鞄を持って公太の家に集まった。<br>全員が田舎っぽさを消そうと精一杯のお洒落をして。<br>「じゃあ行くか東京に」<br>公太の合図で僕たちは駅へと向かった。<br>一人だと長く不安に感じてしまう道のりも<br>不思議なことに３人でいるとあっという間に着く。<br>夏休み初日ということもあり自由席はすぐに満席になった。<br>案の定２席しか取ることが出来なかった僕たちは<br>座ることを諦め、出入り口にキャリーバッグを置き腰掛けた。<br>何十時間このままなわけじゃない。<br>何より僕たちは若い。<br>これからの予定を３人で話していれば<br>時間が過ぎるのはあっという間だ。<br>生い茂った緑の景色が次第に無機質な色に変わっていく。<br>樹齢数百年を超える木よりも高い高層ビルが無数に現れ、消えて、現れて、また消える。<br>田舎育ちの僕たちにはどのビルも一緒に見えてしまう。<br>違いがわかるのはせいぜい東京タワーとスカイツリーぐらいだ。<br>「あれ、東京タワー」<br>公太が指差した先には灼熱の太陽に照らされた真っ赤なビルがそり立っていた。<br>ドラマなどで見るそれはライトアップされ、感動的な雰囲気で見るからこそ奇麗に見えるが<br>こうやって見ると赤く塗られた鉄の大きな骨組みにしか見えない。<br>健は携帯を取り出すと東京タワーの写真を撮りはじめた。<br>最近では携帯の加工技術で素人の写真でも見栄えは良くなる。<br>色調を変え、いかにもカメラマンが撮りそうな被写体を真似て撮った写真を<br>健は自慢げに見せてきた。<br>「いいじゃん」<br>加工されたそれを見て素直な感想を述べた。<br>それを聞いた健は満足そうに携帯に目を戻した。<br>どうやら彼女に送るらしい。<br>まだ付き合い始めの健は見るのが痛くなるほど惚気ている。<br>一目惚れの彼女は当初彼氏がいたが<br>それを奪っての略奪愛だ。<br><br>東京へ来ることに同意したのかは疑問だった。<br>もし僕が彼女のことを心配して健がやっぱり行かないなんて言い出したら困るので<br>そのことには触れなかったが、不思議だ。<br>「着いたら何からしようか？」<br>公太は東京観光の雑誌を眺めながら聞いてきた。<br>「浅草行って、大江戸温泉行って、原宿でクレープ食べて・・・」<br>頭で思いつくだけ口に出してみたが考えているふりしても<br>思いつくのはたいしたことではない。<br>「俺ら東京人になっちゃうかもな」<br>何気なく公太は口走ったが、東京の人混みは<br>まだ色の無い僕たちを飲み込んで何色に変えるのだろう。
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<pubDate>Fri, 07 Feb 2014 03:41:08 +0900</pubDate>
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<title>おとなのおつかい　4</title>
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<![CDATA[ <br>「なにこれ？」<br>僕は公太の携帯を見ながら聞いた。今はスマホと呼ぶのが正しいか。<br>公太は大きな画面を慣れた手つきでスライドさせた。<br>「おつかい.com」<br>僕と健は首を傾げた。<br>「おつかい？」<br>「そ、おつかい、今流行ってるんだよね、これ」<br>公太が言うにはそのおつかいで稼ぐことが出来るらしい。<br>どうにも胡散臭いとしか思えなかった。<br>「高校生がやってもいいの？」<br>公太は黙って頷いた。<br>「今、説明するのはめんどくさいな、東京でやりながら説明するよ、そっちのほうがわかりやすいし」<br>ここまで来て詳しいことが聞けないなんて、僕はますますその「おつかい」というものに興味が湧いた。<br>「とりあえず東京に行くこと親に納得してもらわないとな」<br>「確かに長期となるとこの時期は大変かも」<br>健が頭を抱えた、受験勉強があるし当然だろう。僕もこんな状態だ、何を言われるかわかったもんじゃない。<br>「とりあえずみんな今日すぐに親に話すこと、結果わかり次第連絡して」<br>わかった、そう言って僕達は家路についた。<br>沈みかけの夕日に照らされた僕の陰は<br>希望と不安がそこに溢れ出ているように僕の何倍も大きくなっていて<br>僕の体よりずっと先へ先へと行ってしまいそうだ。<br>僕は陰に向かって手を振ってみる。<br>同じように手を振りかえされた。<br>次第に消えていく夕日とともに僕の陰は消えてなくなった。<br>体の外に陰として出ていた希望と不安が戻ってきた気がした。<br>いや、希望だけだ、不安なんて無い。<br>きっと楽しいことになる。<br>最高の夏が始まるんだ。<br>そう思うのが一番楽しい。
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11738736656.html</link>
<pubDate>Sun, 29 Dec 2013 17:07:48 +0900</pubDate>
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<title>おとなのおつかい　3</title>
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<![CDATA[ 薄汚い一室でテレビに映された絶賛売り出し中のアーティストが<br>今回の曲のテーマについて話している。<br>いつもカラオケの電気を消す僕たちの部屋ではテレビの光だけが唯一の明かりだ<br>安っぽいカラオケでも薄暗くするだけでなんだかいい雰囲気が出る気がする。<br>「どうだったよ、進路相談」<br>健の言葉にデンモクを弄る僕の手が止まった。<br>「特になんもないかな」<br>僕は動揺を隠すようにひたすらに履歴を漁った。<br>今流行りのアイドルの曲が並んでいるのを見ると<br>同世代の女子高生が歌っていたのだろうか、いや、時折<br>見える銀杏BOYZやbeatles、QUEENは僕の好みと一緒だ。<br>きっと彼氏と来たのだろう。<br>カップル同士でカラオケとは実にうらやましい。<br>カラオケは僕たち高校生が簡単に手に出来る薄暗い個人の空間。<br>誰にも邪魔されずに青春の時間を楽しめる場所だ。<br>大音量で歌えば外に丸聞こえだが<br>その空間でのカップル同士の秘密の会話は誰にも邪魔されることは無い。<br>「まぁ夏が終わったら考えるよ、今は夏を楽しもう」<br>ぼくはそう言って曲を入れた。<br>選んだのは銀杏BOYZ「青春時代」<br>「おっ」<br>健が何も言わずにマイクを握った。<br>僕たちはへたくそな歌が外に漏れるなんてことは考えもせず大声で歌った。<br>誰も見ていない小さな部屋でライブでもしているかのように<br>空想の歓声を感じながら靴を履いたままソファーの上を跳ね回った。<br>「僕は何かやらかしてみたい、そんなひと時を青春時代と呼ぶのだろう」<br>僕たちは青春のど真ん中。<br>今、この一瞬をどれだけ楽しめるかそれだけを考えていたい。いつまでもいつまでも。<br>「最高の夏にしようぜ、最高のな」<br>「うん、そうだな」<br>僕は健の普段見せないテンションの高さに笑ってしまった。<br>こういうメリハリが健の好きなところだったりする。<br>しばらく僕たちはソファーの上を跳ね回り歌い続けた。<br>どれぐらい立っただろう。<br>丁度休憩しようかと思ったそのときドアが開いた。<br>「おまたせ」<br>公太は餌を待っている小鳥に餌を運んできた母鳥のように<br>待ってただろう？という表情をしている。<br>「遅い」<br> <br>ぼくはマイクを使って叫んだ。小鳥だったら聞かん坊だっただろうな。<br>公太は不適な笑みを浮かべると僕からマイクを奪った。<br>「えー発表します」<br>「夏休みはみんなで東京に行こうと思います」<br>「東京！？」<br>僕はがっかりした。東京なんて電車を使えばいつでも行ける距離だ。<br>向かいの健も拍子抜けと言いたそうな顔をしている。<br>「沖縄の方がいいじゃん」<br>僕は健を見た。<br>「なんでまた東京なの？」<br>僕らの反応を見て、そう言われることは想定済みだったんだろう。<br>公太は続けて話し始めた。<br>「いやさ、俺親父の会社の手伝いで東京の親戚のとこ行かなきゃで<br>友達も連れてっていいかって聞いたら<br>そりゃもう大歓迎ってわけ。<br>東京だったら健は彼女と会うときに帰ってくればいいし<br>親戚の家で勉強もできる。ちょうど一昨年まで従兄が使ってた机あるし。」<br>健が少し揺らいでいるのがわかる。<br>確かに長期的に沖縄は無理だが東京なら大丈夫だ。<br>「そんで翔！」<br>「はい」<br>いきなり自分の名前を叫ばれた僕は<br>なぜか敬語で返事をしてしまった。<br>「お前東京に憧れてるだろ」<br>なんで知ってるんだ。今まで２、３回しか行ったことは無いが<br>僕はネオン輝く大都会に憧れていた。<br>一つ町を歩くだけでも刺激があって、溢れる人との新しい出会いが<br>そこにはある気がしていた。<br>「知ってたの？」<br>「東京の家賃とか調べてただろ、携帯見たら開きっぱなしだったぞ」<br>しまったと思った。<br>いずれ言うつもりだったが、今はただ漠然と行けたら面白そうだなと思っていただけだった。<br>何より地元に残る２人には言いづらいとも思っていた。<br>僕だけが離れることになってしまうのだから。<br>「翔はわかりやすいんだよ」<br>健も知っていたのか、それにしてもわかりやすいとはなんだ。<br>「だからさ、東京に一ヶ月住むってのは悪いことじゃないと思うぞ」<br>公太はマイクを使って話すのをやめた。さっきまでと違って<br>静かに僕に語りかける。<br>「行こう」<br>「え？」<br>僕は公太からマイクを奪った。<br>「東京行こう！」<br>結局こいつらにはなんでもわかってしまうんだ。<br>僕は素直に嬉しかった。それと同時に相談していなかったことを少し悔やんだ。<br>「俺も東京の大学に進路変えちゃうかもな」<br>健は笑っていた。決まりだ。<br>「でも東京行って何するの？毎日毎日買い物するわけじゃないだろ」<br>確かに、沖縄旅行だったら海だったり記念館だったりやることはあるけど<br>東京で僕たちは何をするのだろう。<br>「まずは、無駄に渋谷のセンター街を歩いて<br>東京のいろんな場所を観光する。浅草とか色々あるだろ」<br>「お金どんぐらいいるだろ」<br>バイトもろくにしたことの無い僕はお小遣いと少ない貯金があるぐらいだった。<br>「そこよ、そこがポイント」<br>公太が人差し指を上げた、これをやるときは何か重大なことを話すときだ。<br>「いいのがあるんだよ、東京楽しみながらお金を稼ぐいい方法がある」
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11732322515.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Dec 2013 16:45:47 +0900</pubDate>
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<title>大人のおつかい　２</title>
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<![CDATA[ 「失礼します」<br><br>ほとんど出入りがない進路相談室のドアは<br><br>鈍い音を立てながら開いた。<br><br>少し離れただけなのに普段人気が無いだけで学校内でも異様な雰囲気を醸し出しいているそこで<br><br>地獄の門番のように<br><br>担任の田中がどっしりと構えている。<br><br>「座りなさい」<br><br>言われるがままに僕は田中の前に座った。<br><br>これからどんな制裁が待っているのだろう<br><br>「お前だけだぞ。進路決まって無いの」<br><br>そんなことはわかっている、僕は無言の圧力を発した。<br><br>それに見かねてか田中は簡単な資料を机一杯に広げた。<br><br>ファイルには僕の名前が書いてある。<br><br>クラスの一人一人に用意しているんだろう。<br><br>４０人近くの進路を管理するんだ。田中も大変だろう。尚更僕みたいな厄介者は特に。<br><br>「やりたいことは見つかりそうか？」<br><br>「特に・・・無いですね」<br><br>田中は表情を変えずにぱらぱらと資料をめくり始めた。<br><br>「葉山が行けそうな文系の学校のデータを集めてみたんだ<br><br>やりたいことが見つからないなら進学しておいた方がいいだろうな。<br><br>大学の４年間でやりたいことを探す方がいい」<br><br>資料には地元の大学がずらりと並んでいた。<br><br>「大学はいいぞ、サークルでみんなと出かけたり<br><br>ここだけの話なんだが酒も強くなるな。凄いんだよ大学の飲み会は」<br><br>勉強とは無関係の自分の体験談を雄弁に語り始めた田中は<br><br>餌で釣るように僕の好きそうなことを並べてくる。<br><br>実に大人らしいなとどこかで納得してしまった。<br><br>結局進路が決まればなんでもいいのだろう。<br><br>ただ、ぼくはそんな大学生活を望んでいないから<br><br>こうやって燻ってるんだ。<br><br>特別に頭が言い訳ではないし、数学なんて大の苦手<br><br>普通の大学に入っても就職活動直前まで遊んで後悔しながら<br><br>その辺の企業に入ることになるんだ。<br><br>いや、下手したら就職さえ出来ないかもしれない。<br><br>仲が良かった先輩が時折学校に遊びにきては<br><br>サークルやら女やら、今度みんなで旅行に行く話を楽しそうにしている。<br><br>予定が無い日はパチンコに行って勝ちでもすれば仲間と豪遊。<br><br>僕は自分が進学したらそうなるんじゃないかという恐怖心があった。<br><br>以前、健と公太に相談したときは、そんなの自分次第だと言われたが<br><br>自分でわかるほどにそんな環境に勝てるほど僕は出来た人間じゃない。<br><br>「聞いてるか？」<br><br>僕は田中のその言葉でハッと我に返った。<br><br>「聞いてます」<br><br>田中は説明を終えたのか資料を整えて僕に渡してきた。<br><br>「頭は悪くないんだ、色々と見学にも行ってこい」<br><br>一通り話を終えたのだろう。田中は満足そうな顔をしている。<br><br>自分の大学生活でも振り返って余韻に浸っているようだ。<br><br>「わかりました、ありがとうございます」<br><br>作り笑顔で僕は答えた。<br><br>感謝こそしていないがこんな生徒を抱えた田中は可哀想だなと思ってしまった。<br><br>なんたって自分の教室から進路未定が出るなんてことは担任としては避けたいことだろうから。<br><br>来年の査定にも響くだろう。<br><br>勿論僕らの為ではあると思うが、田中だって自分や家族の為に必死なんだ。<br><br>守る物の為に一生懸命なんだ、それは当然のこと。教師として、いや人間としてか。<br><br>「一応聞いておくがー」<br><br>まだ終わりじゃないのか、僕は田中の言葉にがっかりした。<br><br>「就職は考えているのか」<br><br>そう言って今度は学校に来ている求人表を見せられた。<br><br>あるのは地元の工場や中小企業の物ばかりだ。<br><br>僕は再びがっかりした。<br><br>結局来るのはこういうのばかりだ。<br><br>それこそ大学に行ったほうがいいぐらいつまらない人生になるだろう。<br><br>味気ない仕事をして、休みの日は朝まで酒を飲んで<br><br>たまたま出会った女の子と付き合ってそのうち結婚。<br><br>そこから死ぬまでそんな生活が続くんだ。<br><br>やってみないとわからないとはよく言うが<br><br>僕にはそれは耐えられそうにない。<br><br>毎朝父が決まった時間に起きて<br><br>仕事に向かって<br><br>決まった時間に帰ってきて<br><br>そのおかげで僕たち家族は生活できているのだが<br><br>僕はそうなりたくないと思ってしまう。<br><br>こうやって何をするにも文句を言っている僕は<br><br>他から見ればニート予備軍だろう。<br><br>社会にとけ込めない人間のクズという烙印を押されて<br><br>いつまでも理想を見続けるピーターパン症候群のまま<br><br>歳だけを重ねて行く。<br><br>違う。何かきっかけが欲しい。<br><br>熱くなるなにか、この夏が僕を変えてくれる。変えられるような夏にしよう。<br><br>僕は大きな決意をして進路相談室を後にした。<br><br>教室からは先生がいないのをいいことに談笑しているのだろう時折笑い声が聞こえてくる。<br><br>「翔」<br><br>振り返るとそこには寂しい頭に眼鏡、ひょろひょろの体の男がいた、豊田だ。<br><br>豊田は高校２年までの担任だった。<br><br>唯一プライベートのことも関係なく話せる先生だ、２年同じクラスだった分信頼も出来る。<br><br>「おう、授業は？」<br><br>僕は友人に話すように話しかけた。<br><br>「この時間は休みでな、どうだった面談」<br><br>「おいおい、豊田まで辞めてくれよ、みんなして面談やら進路やら」<br><br>豊田は笑っている。<br><br>「その調子だと上手く行ってなさそうだな、相変わらず夢追い人か」<br><br>「悪いかよ」<br><br>「俺は好きだぞ、翔のそう言うとこ」<br><br>禿げ上がった中年に好きと言われるのはあまりいい気分ではない。<br><br>若い女教師ならまた違うんだろうなんてことを僕は考えていた。<br><br>「今年は書かないのか？」<br><br>「書かないってなにを」<br><br>「短編小説、２年は強制だけど３年は自由だったろ」<br><br>「あぁ」<br><br>２年の頃、文系は夏の課題で短編小説を書かされる。<br><br>僕は見よう見まねで簡単なミステリー小説を書いてみたが<br><br>驚くことにその年の学年優秀賞に選ばれた。<br><br>たかが学校内で評価された物だ。僕は特に気に留めなかったが<br><br>高校で翔に選ばれるなんてことになったのはそれが初めてだった。<br><br>結局そこから何か変わったわけではなく何かをを書くということもそれっきりになったのだが<br><br>「強制じゃないし、書かないかな、最後の夏は楽しみたいし」<br><br>「そうか」<br><br>豊田は少し残念そうな顔をした。<br><br>「楽しみにしてたんだけどな」<br><br>「変な期待し過ぎだよ」<br><br>僕は笑って言ったが何か喉に詰まるものがあった。<br><br>「最後の夏休み楽しめよ」<br><br>豊田は僕の肩を叩くと小さい体を揺らしながら階段を下りていった。<br><br>その背中を見るとなんだか懐かしい気分にさせられた。<br><br>２年間入学式からぼくらの前を歩いていたのはその小さい背中だった。<br><br>怪我をした時も親身に相談に乗ってくれた男だ。<br><br>もしかしたら中途半端なままの自分を叱って欲しかったのかもしれない。<br><br>背中が見えなくなると僕は振り返って教室へと足を進めた。<br><br>喉に詰まったそれは相変わらず詰まったままだ。<br>
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11730413487.html</link>
<pubDate>Mon, 16 Dec 2013 17:38:10 +0900</pubDate>
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<title>大人のおつかい　１</title>
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<![CDATA[ （キーンコーンカーンコーン）<br><br><br>一体何回このチャイムを聞いたのだろう。<br><br>校内に響き渡る無機質な音はここでは始 まりと終わりを告げる号令。<br><br>お昼の時間を告げた少し長めのチャイムと同時に<br><br>何人かの生徒が財布を片手に我先にと教室を飛び出す。<br><br>片田舎の学校では購買のパンの取り合いは体育祭よりも激しいかもしれない。<br><br>僕はそんな彼らを横目に母が作ってくれたお弁当を取り出した。<br><br>冷凍食品が半分を締めているが最近の冷凍食品はバカに出来ない。<br><br>何よりこうやってお弁当を作ってもらえることで下らない競走に参加しなくて済むそれだけでありがたかった。<br><br>「翔、テストどうだった？」<br><br>空いている椅子を引きずってくると健は僕の向かいに座った。<br><br>「どうって、いつも通りって感じ」あまり触れたくない話題だった僕は、適当に受け流す。<br><br>「いや毎回夏休み前だとそっちに気がいって勉強どころじゃないよな」<br><br>「わかる。今からそのことしか考えてない」なら話すなよと思ってしまう。<br><br>だよな。そう言って僕たちは笑った。<br><br>考えることはみんな一緒みたいだ。<br><br><br><br>「もう一学期も終わるんだな」<br><br><br><br>健は何気なく言った一言だが考えると<br><br>もう一年も無いんだ。ここに通うことも、こうやってお昼のチャイムを待ちながら<br><br>授業を受けることも<br><br>みんなで喋りながら駅まで歩くことも<br><br><br><br>あと半年しか残ってない。<br><br>「最後の夏休みか」<br><br>「彼女作れよ。祭りとか楽しいぞ」<br><br>「嫌みかよ」<br><br>僕は間髪入れずに言った。<br><br>「祭りなんて全部雨で中止になればいいのに」<br><br>幸せそうな健の前では嫌みでしかないだろう。<br><br>「雨が振っても彼女の濡れた浴衣姿が見れて、濡れちゃうからちょっと雨宿りしようかって<br><br>そのまま。結局得するよ？」<br><br>「なんだよそれ」<br><br>妙に納得してしまった。確かに彼女がいたら楽しいんだろうな。<br><br>同じ学校から一緒に自転車を押しながらつく家路。<br><br>僕はテレビでしかみたことないけれどきっと楽しい。<br><br>「翔はなんていうか理想が高いんだよな、顔とかじゃなくて<br><br>こう、運命的な物に憧れ過ぎというか」<br><br>うるさい。そう思ったが図星だ。<br><br>月９のドラマを見てはこんな恋がしたいと息巻いて<br><br>未だに角を曲がるときに食パン咥えた女の子が走って来ないか期待してしまう。<br><br>「なんかさ、最後の夏休みやりたいよな、なんかやらかしたい」<br><br>僕は健の話を無視して話し始めた。<br><br>「最後じゃん？なんかしたいよ。このまま高校生活が終わるなんて絶対嫌だ」<br><br>それを聞いた健は少し考えて話し始めた。<br><br>「旅行でも行く？沖縄とか」<br><br>「いいね！沖縄！みんなで沖縄バックパッカー生活？やってみたかったんだよね、ぼろい民宿に泊まってさ」<br><br>沖縄と言う一言に妄想を膨らませる僕を<br><br>健は急いでなだめてきた。<br><br>「待て待て待て、どんだけ沖縄にいる気だよ！」<br><br>「え、、一ヶ月とか？」<br><br>「バカか！さすがにそれは無理だろ！」<br><br>「受験勉強もしなきゃ行けないのに」<br><br><br><br>受験勉強か、今一番聞きたくない言葉だ。<br><br>「沖縄でやったら捗るかもよ？奇麗な海見ながらさ」<br><br>「あんな暑い場所で勉強してたら頭がいかれるわ！」<br><br>不満そうな僕を他所に健はバッグからお弁当を取り出した。<br><br>バッグには彼女とお揃いのお世辞にも可愛いとは言えない大きなぬいぐるみが<br><br>ご飯を待っている子供がはしゃいでるようにゆらゆら揺れている。<br><br><br><br>「てかさ、翔は決めたの？進路」<br><br>僕はなんて答えるか迷った。<br><br>「まだ、、、考え中」<br><br>「おいおい。今日の午後進路相談だぞ、ていうか大体のやつはもう決めてるし<br><br>何もやりたいことないの？」<br><br>「ん～」<br><br>「無いわけじゃない、人生一回だし普通じゃ終わりたくないかな」<br><br>「また翔はそうやって...」<br><br>健は僕の曖昧な答えを追求しようとしてきたが<br><br>教室の扉が開いて昼休み廊下を歩く大勢の生徒の声にかき消された。<br><br>心なしか皆いつもより楽しそうだ。<br><br>扉を開けたのは教室でいわゆるいけてないグループの男子だった。<br><br>学校では嫌でも似た者同士が集まりグループを作る。<br><br>僕と健もバスケ部で出会ったのが仲良くなったきっかけだった。<br><br>僕は途中でけがをして試合には出れなくなってしまったけど<br><br>マネージャーとして試合のサポートをしていた。<br><br>バスケが好きだったからだ。試合に出なくてもここでバスケから遠ざかってしまうのは<br><br>今まで自分が打ち込んできた全てが無くなってしまう気がしていた。<br><br>健はサポートに回った僕の意見を積極的に取り入れてくれたし<br><br>変わらず仲として接してくれた、それからもこうして一緒にいる。<br><br>大概僕たちも彼らも一度そのグループに入ると<br><br>抜け出すのは容易ではない。<br><br>いや、こればかりは不可能に近いかもしれない。<br><br>「おつかれさーん、ありがとね」<br><br>「いいよいいよ、ついでだから」<br><br>いわゆる学校の少しやんちゃをしている奴らは<br><br>昼の徒競走に自分たちとは違う彼らを駆り出す。<br><br>パシリだ。<br><br>仲が悪いわけではないし「ついでに」買いに行ってもらっている<br><br>いじめとは呼べないだろう、でもパシリだとは思う。<br><br>そういう人間関係が必要なんだろうな。ここでは。いや「ここでも」か。<br><br>学校という場所にとけ込んだその光景はここではごく自然なことだ。<br><br>「最後だし、何しよう夏休み、過去最高の思い出を残したいな」<br><br>「さっきからそれしか言って無いじゃん。だから旅行行こうって、公太と３人でさ」<br><br>独り言だよとは言えずに僕は頷いた。<br><br>現実から逃げてるだけなのかもしれないけれど<br><br>このまま高校生活が、最後の夏休みが終わるのは本当に嫌だった。<br><br>もう二度と経験できない時間を誰よりも楽しみたい、今の僕はそれだけだった。<br><br>「おーい」<br><br>ワイシャツを胸元まで明けて整髪剤で整えた茶髪をゆらゆらさせながら寄って来た。公太だ。<br><br>「遅かったじゃん」<br><br>ほとんど食べ終わったお弁当の中の大好きな卵焼きをいつ食べようか考えながら<br><br>ぼくは空返事で答えた。<br><br>「夏休みさ、どうするよ？」<br><br>公太はいつもテンションが高いが今日は格別に高い。こういう時は何かあると僕は察した。<br><br>ただ、いつも公太が持ち出す話は予想外のことしかないのだが<br><br>以前も同じようなテンションの時は<br><br>公太が好きな子への大規模な告白作戦を実行すると言い出したり<br><br>なにを血迷ったかタッパーに詰めた食用コオロギを皆で食べようといい出したこともある。<br><br>虫嫌いな僕に美味しいからという理由だけで虫を食べさせようとした時は<br><br>少し嫌いになった。<br><br>仕方なく食べたら確かに美味しかったことは否めないんだが。<br><br>ただいきなりインドに修行に行こうなんてこともいいかねない。旅行ではなく、修行に<br><br>「それ俺らも今話してたとこ」<br><br>ついに卵焼きを口に運びながら答えた。<br><br>「でさ、沖縄に旅行なんていいんじゃないかなって」<br><br>公太が何かを口走る前に僕は先制攻撃をした。<br><br>「沖縄かー、悪くないね」<br><br>「悪くないって何だよ、沖縄だぞ？」<br><br>てっきり乗ってくると思った公太の反応に驚いた。<br><br>「いや悪くないけど、俺夏休みは結構家の手伝いあるし、沖縄は厳しいかも」<br><br>「少し位いいだろ、最後の夏休みだぞ」<br><br>自分だけ何も決まっていないまま焦る僕は少し荒げた声を上げた。<br><br>「そうもいかないんだよ」<br><br>僕の呆れた表情をなだめるように公太は言った。<br><br>「それよりさ、もっと面白いことがある」<br><br>「もっと面白いこと？」<br><br>「そ」<br><br>自信満々の表情で公太はいい放った。来たなと思った<br><br>「今日放課後空いてる？」<br><br>「俺は空いてるけど」<br><br>僕は健を見た。<br><br>「俺も今日は空いてる」<br><br>「よし、じゃあこのことは今日の放課後発表します。久しぶりにカラオケでも行こう」<br><br>こうやって公太のペースに乗せられてしまう。悔しいが公太はこういうのが本当に上手い。<br><br>「いいね、カラオケそういえば全然行ってないな」<br><br>以前は毎日のように行っていたカラオケももう一ヶ月は行っていない。そう思うと放課後が待ち遠しくて仕方ない。<br><br>「じゃあ決まりだな」<br><br>「俺ちょっと用事済ませてから行くから翔と健は先行ってて」<br><br>言い出したやつが遅れてくるのかと思ったが<br><br>公太の事情を考えるとそれもしかたないことだと自分に言い聞かせた。<br><br>「でも」<br><br>健は腕組みをして表情を曇らせた。<br><br>「翔はその前に難関を乗り越えないとな」<br><br>「あ、、、」<br><br>忘れていた。これから悪夢の２者面談が始まるんだ。<br><br>僕は空になった弁当箱を鞄に投げ込んだ。<br><br>なにも入っていない鞄の中でお箸が揺れる音がした。<br>
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<link>https://ameblo.jp/ynblogyn/entry-11727777836.html</link>
<pubDate>Thu, 12 Dec 2013 10:18:43 +0900</pubDate>
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