<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>YOMITHAI：ヨミタイ</title>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/yomithai/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>スキマTIMEに、読みたい。ちょっとした隙間時間に読める小説を。</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク⑨</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「私がヒナと最後に関わったのは、ヒナが学校に来なくなる前の日。だから、タシマがヒナに神社に連れて行かれたのと同じ日だよね。」<br>アサギは、グラスの中のウーロン茶を半分ほど飲んでから、話し出した。<br><br>私は、夕方、ヒナに会った。<br>別に約束をしていたわけではなく、偶然、学校のグラウンドで教室の窓を見上げているヒナに行きあったのだ。<br>私は、教室に忘れ物をして、取りに行くところだった。夕暮れ時、薄闇に沈み始めたグラウンドで、ヒナは1人、四年生教室の窓を見つめて佇んでいた。<br>その背中がとても寂しそうで、声をかけずにはいられなかった。<br>「何してるの？」<br>突然声をかけられ、ヒナの肩はびくりと震えた。肩越しにこちらを振り返るヒナは、薄闇の中でもよくわかるほど、顔色が悪かった。その顔が乗っている肩も、何だかとても頼りなく、か細く見えた。<br>私は、思わず息を呑んだ。放課後明るく挨拶を交わしたヒナと同一人物とは思えないほど、ヒナの様子は変わり果てていた。<br>ヒナは、私の姿を認めると、薄く笑んだ。その笑みも、とても弱弱しく、何だか消えてしまいそうな。<br>「ねえ、大丈夫？」<br>思わず私の口をついて出たのは、そんな言葉だった。<br>ヒナはゆっくりと頷くと、再び教室の窓へ目をやった。<br>私は、ヒナの隣まで歩いて行き、同じように教室の窓を見上げてみた。教室の室内は暗く、窓ガラスは暮れ行く空の色を映している。これといって変わった様子はない。私は、何気なく隣にいるヒナの横顔に視線を移した。<br>ヒナは、切なそうな、懐かしそうな目をして窓を見つめていた。その時、私は思ったのだ。ヒナに会うのは、とても久しぶりなのではないかと。<br>「ねえ、カナ。伝えたいことがあるんだ。聞いてもらえる？」<br>不意に、ヒナは私の方を見た。その目がとても真剣で、青白い顔と相まって、とてつもなく怖くなった。私は、思わず答えていた。<br>「うん。聞くよ。でも、明日ね。明日、神社で待ち合わせしよ。今日はもう遅いから、早く帰ろうよ。」<br>ヒナは何か言おうと口を開きかけたけれど、唇を震わせただけで、それはすぐに閉じられた。その表情に、何か暗いものが過ったのを、その時の私は幼いながらも感じていた。今思うと、あれは絶望の色だったのだ。<br>ヒナの話を聞くのが、なぜかとても怖かった。<br>男女間で話があると言えば、好きだとか、嫌いだとか、そんな話が相場だと思う。でも、その時のヒナの様子は、そんな浮ついた話をするようには見えなかった。だから、きっと何かよくないことだと、私は直感的に感じていた。<br>だから、先送りにしてしまった。<br>次の日、ヒナは学校には来なくて、私は約束した午後3時に神社に行ったけれど、そこにもヒナは現れなかった。<br>私は、話を聞くことで何か重いものを負わされることを恐れたのだ。<br>きっとヒナを傷つけた。私に勇気がないせいで、ヒナは傷ついたまま、いなくなってしまった。<br><br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12502289835.html</link>
<pubDate>Tue, 06 Aug 2019 22:55:52 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク⑧</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「いくら何でも、落差がありすぎると思わない？」<br>ナナセは、僕を見た。<br>当時は小学生だったから、それほど深く考えていなかったが、確かに、普段のヒナと明るい時のヒナは、まるで別人だった。ヒナの身体に、別の人間の魂が宿っているように。<br>「多重人格、とか。」<br>ナナセは得心したといった表情で呟いた。<br>「じゃあ、さっき窓から顔を出したのは、誰？」<br>カンノは納得のいかない顔をしている。<br>「もともと生霊が学校来てたなら、さっきのが幽霊だとしてもおかしくないじゃん。」<br>カンノが不機嫌そうに唸るのに、アサギが笑んだ。<br>「変な理屈。」<br>ここに着いた時の、不安げな表情はすっかり消えている。<br>「じゃあ、タシマの話を聞いたところで、今度は私が話すね。」<br>アサギはぐるりとみんなを見回してから、ふとアサギの目の前にあったウーロン茶のペットボトルを手に取った。<br>「その前に、飲み物。」<br>それぞれの席に用意されていたグラスを集めると、なみなみと注いでいく。<br>「それ、飲むの？」<br>カンノは不安そうにアサギの手元を見つめている。<br>「よく冷えてる。せっかくだから、飲もうよ。」<br>アサギはそれぞれにウーロン茶で満たしたグラスを配ってから、グラスを持ち上げた。<br>「乾杯しない？」<br>僕たちは、せーの、で「乾杯」と発声し、グラスを掲げてから、お茶を飲んだ。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12500078060.html</link>
<pubDate>Thu, 01 Aug 2019 09:15:56 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク⑦</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「僕が知っているのは、それだけだ。ヒナの死因は知らない。ヒナが、アサギと僕に伝えたかったことが何かも知らない。」<br><br>あの時、もしアサギとともにヒナの家へ行っていたらどうなっていたんだろうと、10年経った今でも考える。<br><br>僕は、行きがかり上アサギを好いていたことを告白しなければならず、話し終わる頃には俯いていた。しかも、醜い嫉妬から、ヒナの言う通りにアサギを連れて行かなかったのだ。僕の狭量さに、みんな呆れているだろう。益々顔をあげたくなくなる。<br>話し終えて、場に静けさが戻ってから程なくして、誰かが噴き出した。<br>咄嗟に顔を上げると、アサギが僕を見ながら笑みを浮かべている。<br>「何だ。ものすごい深刻そうな顔をして話し出すから、どんな悪いことしたのかと思った。」<br>アサギの言をきっかけに、空気がふっと緩む。<br>「お前、見た目通り繊細だな。繊細というか、面倒。」<br>サイキが呆れたように言った。<br>「そもそも、ヒナは告白するなんて、ひと言も言ってないじゃん。」<br>カンノが口をとがらせるようにして続ける。<br>「本当のことを、伝えたかったんでしょ。何かを伝えるイコール告白って、安直。」<br>確かに。あの時の僕は、普段鼻にもかけない僕を、明るい時のヒナが誘ったことに、ちょっと浮かれていた。だから、ヒナがアサギを連れてきてほしいと言った時、心底落胆していたのだ。<br>それで、頭に血が昇って冷静さを欠いていたと思う。<br>「ヒナが伝えたかったことって、何だと思う？」<br>僕は、こちらを見つめる4人に訊いてみた。<br>「どうして、僕がアサギを連れて行かなければならなかったと思う？」<br>アサギは、首を傾げた。<br>「何か、隠し事があったんじゃないの。」<br>それまで黙っていたナナセがぶっきらぼうに答えた。<br>「自分じゃアサギを連れて行けない、俺たちの知らない理由が、あったんでしょ。」<br>ナナセの言葉に、カンノがはっとした顔をした。<br>「ねえ、普段は大人しいのに、妙に明るくて元気がいい時がtたびたびあったよね。あれ、本当にヒナだったのかな。」<br>カンノの他の4人が、瞬時にカンノを見た。一斉に見つめられ、カンノはちょっとたじろいでから続ける。<br>「例えば、ホントはヒナはとっても身体が弱くて、でも、ホントは元気にしてたかったから、生霊みたいのが抜け出して、あんな風に振舞っていたの。ホントは自分でアサギたちを呼びたかったけど、実はタシマがヒナに頼み事をされた時には、ヒナは死にそうだったとか。」<br>興奮気味に語ってから、カンノははっとして口を押えた。<br>「ごめん、不謹慎だね。」<br>「それがホントだったら、益々オカルトじゃない。」<br>アサギが小さなため息を吐くと、ナナセが首を捻った。<br>「でも、ヒナがいつも同じヒナじゃなかった、ってのは、何か納得いく気がする。」<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12499930134.html</link>
<pubDate>Wed, 31 Jul 2019 21:52:10 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク⑥</title>
<description>
<![CDATA[ <p>ヒナは、アサギのことが好きだった。アサギは、まっすぐな性格で、物言いがかなり辛辣な女子だった。ただ、良いと思ったものは褒めるし、良いと言う。正直だったのだと思う。<br>僕も、アサギが好きだった。</p><p>ヒナがアサギを好いていたのは、そのすっきりとした性格に惹かれて。だが、僕はアサギの外見が好きだった。僕は、アサギの内面が好きだと言えるほど、アサギと付き合いがあったわけではないし「好き」というのも、遠くから見つめるだけの憧れに過ぎなかった。それに対し、ヒナの「好き」は、アサギの内面までよく見つめた上での「好き」だった。……そんな気持ちの差や、アサギとの距離の差について、僕はヒナに劣等感を抱いていた。<br>ヒナは、その美しい見目で多くの女子に好かれていたし、落ち着いた物言いは、自分よりも遥かに大人びて見えた。そうした、人としての魅力の差も、僕をより一層小さくしてしまっていた。<br>ただ、ヒナにはむらがあり、普段の落ち着いたヒナと、明るく活発な雰囲気のヒナとが混在していた。後者の時のヒナは、よく動き回り、スポーツを好む。そんな時、ヒナが遊び相手に選ぶのは、サイキが中心となっているグループだった。嫌な言い方だが、いわゆるヒエラルキーが上位のグループ。みんなから一目置かれている、イケメンばかりのグループだった。その時のヒナに、僕は近づくことができなかった。<br>普段のヒナは、屋外を好まず、休み時間には図書室で本を読んだり、音楽室のピアノを弾いたりして過ごしていた。そんな時に一緒にいるのは、大抵僕だ。僕は、目を伏せて文字を追うヒナの横顔に見とれたり、卑屈な気分になったりしながら、彼の隣にいた。<br><br>あの日のヒナは、明るいヒナだった。それなのに、僕はヒナに声をかけられ、学校の裏手にある神社に赴いた。<br>「ユイ、お願いがあるんだ。」<br>ヒナは、台座の部分が苔で覆われた鳥居の前に立つと、僕を振り向いた。<br>「俺、もうすぐ学校に来られなくなるかもしれない。そうしたら、カナを俺の家に連れて来てくれない？」<br>「え？」<br>僕は、ヒナが言ったことの意味を咀嚼しようとした。ヒナが何を言っているのか、よくわからない。<br>「何で僕が？」<br>「えっと。」<br>ヒナは、少し首を傾げて、考え込んだ。<br>「本当のことを、伝えたいんだ。」<br>本当のことを伝える？ヒナがアサギを好きってことを？<br>「自分でやってよ。」<br>ヒナは、僕がアサギに近づけないことを知っているはずだ。それなのに、なぜわざわざ僕に連れて来いなんて言うんだ。好きだと伝えるなら、僕抜きでやってほしい。<br>僕は、普段以上に卑屈な気持ちになっていた。<br>ヒナは、そんな僕の様子をじっと見つめた。その表情がひどく悲しそうで、僕は一瞬怯んだけれど、アサギと親しくもない僕がヒナの告白の仲立ちをするなんて、おかしい。その時、僕はそう感じて、つい言ったのだ。<br>「僕に関係ないだろ。」<br>その時、ヒナは一瞬目を見開いてから、顔をくしゃりと歪めた。<br>「ユイにも、伝えたいんだ。」<br>振り絞るような声で訴えるヒナの、その涙を見るのが何だか怖くて、僕は彼に背を向けた。<br>意味がわからなかった。ヒナがアサギを好きだと、僕に伝えてどうなる？アサギの目の前で、わざわざ僕にそれを聞かせるつもりなのか？<br>勝手に、二人だけでやってほしい。<br><br>次の日は1学期の終業式で、ヒナは学校に来なかった。そして、夏休みになっても、ヒナに会うことはなかった。<br>新学期に学校に行くと、4年生教室の空気はざわざわとしていた。それも、賑やかさとは違うざわめきに満ちていた。<br>ヒナは、夏休み中に死んでいた。それも、なぜか東京で。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12498848320.html</link>
<pubDate>Sun, 28 Jul 2019 22:16:09 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク⑤</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「遅い。」<br>腕組みをしたナナセが、非難を込めた目で僕たちを見た。僕は、多分曖昧な笑みを浮かべていたんだろう。それに気づいたナナセが、にやにやするなと僕を小突く。<br>「さっき、窓から顔出してた人は？」<br>アサギが教室を覗くと、サイキが僅かに首を傾げた。<br>「俺たちが来た時には、誰もいなかった。」<br>4年生教室の中には、木製の学習机を組み合わせた大きなテーブルが1つ用意され、その周りにイスが5脚置かれていた。それぞれの席には、席札が用意されている。その席札に記された名に目を留め、僕たちは息をのんだ。<br>「これ、……」<br>カンノが、恐る恐る席札を手にする。カンノが手にした札には「マミ」と書かれていた。<br>「私のことマミって呼んでたのは、ヒナだけだよ。」<br>僕の札には「ユイ」。タシマ　ユイトだから、ヒナは僕のことを「ユイ」と呼んでいた。<br>アサギの札は「カナ」。アサギの名はカナコだ。ナナセは「ミツキ」。そのまま。サイキはユウタで「ユウちゃん」。<br>それぞれ、ヒナだけが呼んでいた呼び名だった。僕たちのクラスメートのほとんどは、相手を名字で呼び捨てていた。カンノの「マル」は例外だ。<br>「ねえ、これって。みんなヒナだけが呼んでた呼び名じゃん。やっぱり、さっきの人はヒナなの？」<br>カンノがおろおろとみんなを見回す。その時、<br>「何で、席は5人分なのかな。」<br>アサギがぽつりと呟いた。<br>「ヒナもいるなら、ヒナの分の席も必要だよね。」<br>「ねえ、ちょっと。もう、やめてよ。」<br>カンノが泣きそうな顔になり、アサギにすがりついた時、サイキがふと目をそらし、あ、と声をあげた。<br>「黒板に、その答えがある。」<br>僕たちは、一斉に黒板を見た。<br><br>――次の準備があるので、僕は席を外しますが、みなさんはどうぞごゆっくり。<br><br>「今日、この会場の準備をしている人がいるんだね。」<br>僕はなぜかほっとした。<br>「どういうつもりで、何のためにやってんの。趣味が悪い。」<br>置かれた席札を指先でもてあそびながら、ナナセが吐き捨てるように言った。<br>「ナナセずっと不機嫌だね。」<br>横からアサギが揶揄すると、ナナセは眉間の皺を深くする。<br>「会場が遠くて来るのが大変な上、妙なことをされて、腹が立たない方がおかしいだろ。」<br>「そうかな。」<br>アサギは、指定された席にすとんと腰かけた。<br>「ねえ、あの日、それぞれ何があったのか、話してみない？」<br>アサギの言に、ナナセの頬がぴくりと動いた。<br>「本当は、話したかったのに、みんな避けてたでしょ？」<br>アサギは、座りなよ、と全員に促す。<br>僕たちは、ガタガタとそれぞれの席に着き、改めて向き合った。<br>僕は、1人はみ出したいわゆる「お誕生日席」だった。<br>みんなが一斉にこちらを見るので、思わず怯んでしまう。<br>「ねえ、タシマ。まずは、あんたからじゃない？ヒナと1番仲がよかったのは、あんたなんだから。」<br>アサギの切れ長の瞳にじっと見つめられると、僕の胸は疼いた。あの頃のことを、思い出してしまう。<br><br>そう、僕の胸は、痛くて痛くて、堪らない。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12498403627.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Jul 2019 18:15:06 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク④</title>
<description>
<![CDATA[ <p>僕たちは、2階の東端にある、4年生教室へ向かうことにした。<br>昇降口から中へ入ると、廊下にもぼんやりとした明かりが灯っていた。かつてここにあったのは、何十年も前から使われていた古いソケットの蛍光灯だったが、今暖かい色味の光を投げているのは、昼白色の電球を取り付けたレトロな形の電灯だ。<br>靴箱の間を進むと、上がり框の段差の手前に、小さな木製の看板が立っている。看板には、靴のままで上がるように指示があった。随分と丁寧なことだ。僕とアサギは、カンノを促し、廊下を進む。<br>木の板を張り付けた廊下の床は、明かりを反射して艶々と光って見える。廊下の床も、2階へ上るための階段の手すりも、磨き上げたようにピカピカだった。<br>木造建造物独特の香りを嗅ぎながら、僕は周囲に目を配る。この小学校が廃校になってから、確か3～4年経つはずだ。それなのに、なぜこんなにも手入れが行き届いているんだろう。<br>隣を歩くアサギも、僕と同じような疑問を抱いたらしい。ぽつりと呟いた。<br>「随分、きれいだね。」<br>アサギの腕にしがみつきながら、カンノもきょろきょろと首を動かした。<br>「電気が古くなってない？」<br>そうだ。校舎の中は、僕らが通っていた頃よりも、時代が遡った印象になっているのだ。それなのに、ところどころに緑色に光る非常灯が設置されているのは記憶の中と同じで、さらに違和感を覚える。<br>扉が開け放たれた教室の横を通り過ぎる時、室内をちらりと見ると、昔は金属製だったロッカーが、木製のものになっている。机やイスも数が減り、背もたれや脚の部分まで全てが木製のものが数セット、教室の端に置かれているだけだった。<br>階段を上り切り、教室に面した廊下に到ると、先に校舎に入った2人が教室の前に立ち、こちらを見ていた。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12497632545.html</link>
<pubDate>Thu, 25 Jul 2019 10:39:50 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク③</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「行くか。」<br>サイキが身を翻し、開け放たれた昇降口のガラス扉を潜った。ナナセがため息を吐き、サイキに続く。<br>アサギとカンノは、身を寄せ合ったまま、4年生教室の窓を見つめていた。2人とも、目を大きく見開いたまま、身体を硬直させている。<br>僕も、気づいていた。そんなはずはない、そんなはずはないのだが。<br>「どうして」<br>震える声で、アサギが問う。自分の声で身体の硬直を解かれたのか、アサギは、ぎくしゃくとした動作で僕を見た。その顔には、恐怖と、困惑の表情が浮かんでいる。<br>「あれは、ヒナ？」<br>僕たちが彼と別れてから、10年が経つ。小学生の頃の姿しか知らない相手を、ほんの一瞬で見分けられるはずはない。だが、なぜか確信がある。先ほど、窓から手を振っていた青年は、僕たちの傷となって残っている友だち。確かに、彼だ。<br><br>ハッタ　ヒナタ。<br><br>彼は、飛びぬけて美しい容姿をしていた。廃村になるような辺境の村にあって、彼の纏う雰囲気は都会的で、テレビの向こう側にいる人たちのような、特別な存在に見えた。<br>その彼が成長すれば、当然美しい人になっているだろう。先ほど顔を見せた彼は、教室の明かりを横から受けただけの、顔をはっきりと見られない状況でも、十分に美しかった。<br>「ねえ、帰ろうよ。」<br>既に人がいなくなった窓を見つめてぼんやりとしていると、カンノが声を潜めて言った。<br>「怖いよ。絶対変だよ。」<br>カンノは、じりじりと後ずさる。そのカンノの腕を、アサギが掴んだ。<br>「ダメ。マル、サイキの車で来たんでしょ。ここから街まで歩いていくつもり？」<br>アサギが、カンノを「マル」と呼ぶ。「マル」は、カンノの小学生の頃の呼び名だった。その頃のカンノは、小さい上に丸っこくて、本名のマミではなく、マルになってしまった。<br>懐かしい呼び名で呼ばれたせいか、カンノの身体から力が抜けた。<br>「2人とも、教室へ行くの？」<br>僕は、学校の周りの景色を見回してみた。数年前から企業の工場の誘致が始まったせいで、廃村とはいえ電気は来ている。だが、もともと外灯の数は極端に少なく、付近で明かりが灯されているのは、目の前にある校舎とグラウンドのみだ。<br>当然、公共の交通機関もない。<br>僕は、ここまでタクシーで来た。これからタクシーを呼ぶにしても、到着まで30分はかかるだろう。<br>「ここにいても仕方がないし、中に入ろうか。」<br>カンノは、本気で僕を止めにかかった。<br>「だ、ダメだよ！こういう時、映画では幽霊とか呪いとかでぐちゃぐちゃで、みんな次々殺されちゃうんだよ？」<br>カンノの言葉に、アサギが噴き出した。<br>「これは映画じゃないでしょ。」<br>その時、先ほど青年が顔を出した窓から、ナナセが顔を出した。<br>「何してんの。早く来いよ。」</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12497287190.html</link>
<pubDate>Wed, 24 Jul 2019 09:44:10 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク②</title>
<description>
<![CDATA[ <p>僕たちには、忘れられない友だちがいる。<br>忘れてはいけない、友だちがいる。<br><br><br><br>本当は、とっくにわかっている。ここにいるメンバーの共通点。<br>問いを投げたアサギも、僕たちの共通項に気づいた上で、それでも問わずにはいられなかったんだろうことを口に出したのだ。<br>僕たちに共通していること。それは、10年前、1人の少年と関わっていたことだ。<br>つぶらな瞳を震わせ、カンノが早口で言った。<br>「私たち、やっぱり悪いことしたのかな。」<br>「俺たちが、罪に問われるようなことをしたか？誰なんだ。悪趣味だろ。」<br>ナナセが苛立ちを含む声音で返す。<br>サイキは、何も言わずに僕を見る。僕も、サイキを見返した。<br>「本当に、お前じゃないのか。」<br>彼の目は、そう言っている。僕は、ざわざわとする胸の内を悟られないようにしながら、首を振った。ここにみんなを集めたのは、僕じゃない。本当に、何も知らない。ただ、10年前のことを思うと、穏やかな気分ではいられないだけだ。みんなも、そうだろう？<br>一瞬、沈黙が流れた。夏の宵の虫の声と、夜風の揺らす木々の葉擦れの音が戻ってくる。その時、グラウンドに面して設置された古いスピーカーから、少し調子外れなチャイムが流れた。互いを伺っていた僕たちは、チャイムの音に驚いて、咄嗟にスピーカーを振り返った。<br><br>―2011年度卒業生のみなさん、ようこそ同窓会へ。4年生教室にお食事をご用意しました。どうぞ、会場へお進みください。<br><br>スピーカーから流れてきたのは、思いの外爽やかな、若い男性の声だった。<br>アサギとカンノがぴったりと寄り添うのが目の端に映った。サイキが校舎の2階の窓を見上げている。視線の先には、4年生の頃に使っていた2階の一番東側の教室の窓がある。グラウンドから見ると1番右端なので、すぐにわかった。煌々と明かりが灯され、ひと際目立っている。その窓に、人影が映った。<br>「誰かいる。」<br>サイキの声に、僕以外の3人も校舎に目を向けた。<br>4年生教室の窓がからりと開けられ、若い男性が顔を出した。教室の明かりのお陰で、顔がよくわかる。彼は、にこやかに手を振ると、窓から引っ込んで見えなくなった。<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12496999724.html</link>
<pubDate>Tue, 23 Jul 2019 11:15:06 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>アノ夏ヲ、トク①</title>
<description>
<![CDATA[ <p>アノ夏ヲ、トク</p><p>&nbsp;</p><p>廃村となった故郷の村。差出人のわからない同窓会の知らせが届き、かつて通った小学校に集まった「僕」を含めたクラスメート5人。5人には、小学生時代の忘れられない記憶があった。</p><p>&nbsp;</p><p>◆</p><p>&nbsp;</p><p>あの子の死を思う時、なぜか後ろめたい気持ちにさいなまれる。<br>僕たちは、いつになったら救われるんだろう。</p><p><br><br><br>夕闇が迫る頃、周囲を木々に囲まれた木造校舎の、1つしかない昇降口に、僕たちは立っていた。集まったのは5人。みんな、怯えた顔をしていた。<br>「ねえ、今日って、同窓会じゃないの？何で私たちしかいないの。」<br>涼しげな白いワンピース姿のアサギが、周囲を見回した。アサギとは、中学校卒業後に村を出る前に、1度会っている。あれから5年。それほど印象は変わっていない。<br>「みんな、都合がつかなかったんじゃないの。」<br>眼鏡をかけた、すらりと背の高い男性が言った。彼は、ナナセ。クラスメートだった小学生の頃は、もう少し野暮ったい感じだったが、今はすっきりとした好青年だ。<br>「20人全員都合がつかなかったってこと？先生も？」<br>アサギは、眉間に皺を寄せた。<br>「しょうがないよ。だって、みんなもう、ここにはいないもん。」<br>小柄で丸顔の、子どものような女性。彼女は、カンノ。<br>僕たちが小学生の頃のクラスメートの半数は、小学校卒業とともに、村を出ている。その頃には、この村が廃村になるといううわさがあったからだ。<br>「で、幹事は誰なの？」<br>おしゃれ坊主の、ガタイのいいサイキが、Gパンのポケットからポストカードを取り出した。アサギも、ナナセも、ポストカードを手にしている。<br>僕は、1カ月ほど前に届いたカードの、案内が印刷された面に目を落とした。カードには、今日の日時と場所が指定されているだけで、同窓会の幹事の名は記されていない。<br>「タシマ？」<br>おもむろに名を呼ばれ、はっとして顔を上げると、僕以外の4人が僕を見つめていた。<br>僕は慌てて首を振った。<br>「幹事は、僕じゃないよ。ここに来るのは、小学校卒業以来はじめて。」<br><br><br>校舎の周りの木の間に麻のロープが張られ、小さなランタンが等間隔で幾つも灯されている。かつてグラウンドだった場所は、丈の揃った草が一面に生えていて、柔らかな踏み心地だ。手入れが行き届かず、草ぼうぼうになったのを、誰かが刈り取ったのだろう。<br>校舎の東側、タイヤの遊具の脇には、木の間に大きな白い布が張られている。<br>陽が山の向こうへ隠れると、星が瞬き出した。ランタンの柔らかな明かりが、ひと際輝いて見える。白い木造の校舎も、窓辺に明かりが灯されている。<br>幻想的で、ノスタルジックな景色なのに、僕たちには、そんな光景を楽しむ余裕はない。<br>アサギが、みんなの顔を見回してから呟いた。<br><br>「どうして、このメンバーなの。」<br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/yomithai/entry-12496700372.html</link>
<pubDate>Mon, 22 Jul 2019 11:44:35 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
