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<title>yuukioka2263のブログ</title>
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<title>ＲＰＧ００９　Frozen Castle of Memaids 人魚と氷の城</title>
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<![CDATA[ <p>１<br><br>「あー、舐めてました。本当に。」<br><br>戦闘力１００億超えてても、防御力がチートでも<br>寒いんです。<br>そもそも、ＨＰや防御力が高ければ、痛みを感じないなら<br>人間として欠陥ですよね。<br>自分で自分の目を抉り出したり、<br>自分の拳で自分殴っても痛くないとか、<br>死活問題ですよね。<br><br>舐めてました、北極圏。<br><br>竜騎士の露原はロシア人なので、平気そうでしたが、<br>インド人の印旛とかイラン出身のペルシャ人の胡とか死にそうです。<br>アフリカ赤道出身の金剛とか暖房の利いた部屋のベッドで<br>死んだように冬眠してます。<br>なぜ俺がこんなところでこんなことをしているかって？<br><br>それは　生粋のイギリス人・英島とロシア人・露原は<br>酒の飲みすぎでダウン。<br><br>おれは、召喚生物もといペットを使って、<br>連絡が出来るからです。<br><br>本当に悲しい。<br>でも泣くと涙が凍ってやばいので泣きません。<br><br>一面真っ白な雪原で、何もやることがない。<br>そのうち、時々やってくるブリザードが<br>楽しみになってくる始末です。<br><br>しかし、いいこともありました。<br><br>ＨＰとか何か？防御力とは何か？が<br>理論的に説明できるようになりました。<br><br>ゲームにはフレンドリーファイアというシステムがあります。<br>ですが、ほとんどの人はそれ以上踏み込まなかった。<br><br>では、セルフファイアはどうなのか？です。<br><br>攻撃力は　「力」　に依存します。<br>防御力は　「体力」に依存します。<br>ＨＰの主要な値は、「体力」に依存します。<br><br>低レベルなとき、例えば竜騎士の露原が<br>自分に槍を突き刺したとしましょう。<br>当然死亡します。<br><br>火力さんは力より体力が少ないからです。<br><br>そこで視点を変えてみましょう。<br><br>「経験値」が、どうなるかです。<br><br>低レベルだと損失経験値はわずかです。<br>若しくはまったくない。<br>しかし、自分自身は同レベルなので<br>倒せばそれなりの経験値が入るはずです。<br><br>ならば、ゲーム内で自殺を繰り返せば<br>レベルアップできることになります。<br><br>通常は規約で禁止されるでしょう。<br>しかし、そんな規約のゲームは見たことがない。<br><br>つまり、ゲームでは自殺はできない仕様になっているのです。<br>あぁ、崖から飛び降りるとか、モンスターの群れに突っ込むのは<br>自分で自分を攻撃していないので<br>ゲーム的には自殺ではないです。<br><br>調べてみると　受けた攻撃と自分の防御力の差が痛みではなく<br>減ったヒットポイントの数値が痛みのようなのです。<br><br>もしそうでなければ、超攻撃型火力でＨＰが少ない人物は<br>割合で痛みを感じるなら、痛みに苦しみもがくでしょう。<br>しかし、ＨＰが減って苦しんでいる高レベルプレイヤーは居ない。<br><br>つまり痛みとは、ＨＰの数値そのものなのです。<br>戦闘力１００億以上でＨＰも兆単位の俺は、<br>死なないが、寒いという負の効果を受けているのです。<br><br>そんなゲーム哲学的なことを考えながら、<br>俺は、地面に開けた穴に釣り糸をたらしています。<br><br>考えうる限りの厚着をして、<br>「ふぁ～あ、釣れないな。」と<br>そんな考えをめぐらしている私の居る上空は<br>ずっと、満天の星空です。<br>ものすごく寒いです。<br><br>傍にある焚き火が消えそうになると、<br>生命に支障は無くても、<br>寒さの影響で頭がおかしくなりそうなので、<br>薪を投入することは忘れません。<br><br>こんな状態が９０日以上続いています。<br><br>人魚の城があると聞いてやってきたら、<br>どんな、「竜宮城」だと思いました。<br>えぇ、そんな時期がありました。<br><br>ここは極寒の地です。<br>普通、北極でも海の深部は凍りません。<br>摂氏２℃程度ですし、氷は水よりも軽いので<br>対流が起きて、移動します。<br><br>当然この海底深部の人魚の城が凍り付いているのは<br>誰かが意図的にやっているのです。<br>非常に困りました。<br><br><br>２<br><br>「なにか、用かしら？」<br>一見普通のおばさんに見える、その女性に情報を求めるのには<br>理由がある。<br>自称・「人魚の末裔」だからだ。<br><br>俺も普通なら、おつむの逝かれたおばさんとして放置するところだが、<br>そうは行かない。<br>人魚の城を実際に魔法で確認し、しかもそこに、リージョンコアが<br>存在していることがわかっているからだ。<br><br>しかし、言い伝えは当てにならない。<br><br>「清き流れの源に　城の鍵　がある。」<br><br>残っていたのはその言葉だけ。<br><br>川の流れが凍ったり、海の海流かもしれない、<br>果ては、溶岩の流れを調べに「俺」<br>御門ヤマトが火山流を泳ぎに行った。<br>一番、ＨＰや耐久、状態異常に強いからだ。<br><br>熱耐性９９％はＨＰがほぼ減らないが、<br>熱いのは常人と同じだ。<br>ＨＰはヒットポイント、<br>ヒット＝当たるのポイント＝数値だ。<br>痛みの割合ではない。<br>あの時は死ぬかと思った。<br><br>ここは、アイスランド大陸南西の都市レイキャビ<br>火山地帯があり、ところどころに温泉がある。<br>俺が見張りをしているのは、<br>バイト料とでも言おうか、<br>スラリンを温泉につからせるためだ。<br><br>俺は召喚対象と５感を共有できる<br>そして、スラリンは、外見のかわいらしい<br>メスのスライムだ。<br>視覚だけではなく、触覚も味わえる。<br>最高だ。だからこんなところで一人で<br>釣りをしていても楽しい。<br><br>城への情報を求めて<br>レアモンスターが沸くのを待っている。<br>住民の話によれば、強力なモンスターらしいが<br>全宇宙の存在で最強の俺からすれば雑魚だろう。<br><br>しかし、ここの氷は<br>黒魔道士の最大火炎魔法や、<br>ウルティメットドラゴン「どらもん」の火炎ブレスでも<br>少し溶けただけだ。<br>この２人の魔法と氷属性の相性が悪いとはいえ、<br>相当な障壁だ。<br><br>やはり持続的な熱、溶岩のようなものでないと<br>溶けないのだろうか。<br><br>スラリンが温泉から出るようなので、<br>そろそろ、交代かと思っていると、<br>レアがわいた。<br><br>ジャイアントタートルだ。<br>それとキラーシャークが５匹。<br>襲われているようだ。<br>俺は浦島太郎のように<br>ジャイアントタートルを助けてやった。<br>「ありがとうございます。」<br>感謝の言葉を述べるカメだが、<br>地図やキーアイテムはないらしい。<br><br>正直、ペット化も考えたが<br>ケイジの管理もなかなか大変だ。<br><br>だが、なぜ凍りついたのか<br>情報の一部は得られた。<br><br>氷の精霊　フラウが大量に出現したため<br>このあたりが凍りつき<br>城への路も閉ざされたらしい。<br><br>なるほど、氷が溶けなかった理由がわかった。<br>俺らは強敵と戦うことばかりを考えていた。<br>初期のスライムを除けば、<br>戦闘の相手はウルティメットドラゴン、<br>「極龍」だ。範囲魔法や全体魔法など<br>強い１体相手には誰も使わない。<br><br>精霊フラウは雑魚の大集団なのだろう。<br>そうとわかれば、全体火炎魔法で<br>焼き尽くしたいところだが、<br>俺は召喚士、テイマーだ。<br><br>精霊フラウをテイムして情報を引き出すべきだろう。<br>そこで、酒びたりの黒魔道士の英島に<br>怪物ヘカトンケイルにやったことを再現してもらうつもりだ。<br><br>カーバンクルのクレイルちゃんで学んだのだが、<br>集団の雑魚はすぐに死んでしまい、<br>テイムできない。<br><br>しかし、この温度で超伝導を起こすのはたやすい。<br>黒魔道士の英島はウルティメットドラゴン相手に<br>氷魔法ばかりを熟練してきた、プロフェッショナルだ。<br>コンマ何度で、温度を調整し、微弱なダメージを与えられるだろう。<br><br>酔っ払いの黒魔道士・英島は意識がほとんどない中<br>無意識に温度を調整して見せた。<br>本当にプロだな、氷だけだけど。<br><br>おれは、フラウをテイムした。<br>５感を共有したため、大量の情報が入ってくる。<br>このあたりは極寒の海であり、<br>とても人魚の住めるような<br>トロピカルな場所ではなかったのだ。<br><br>しかし、海底火山の熱を利用し、<br>居住していたようだ。<br>しかし、何らかの異変により<br>火山の熱が急に高まり、<br>海の水は沸騰したらしい。<br>地球の持つ自然治癒力なのか、<br>第三者の意思なのかは知らないが、<br>氷の精霊フラウが大量発生し<br>人魚後と凍りつかせ鎮めたらしい。<br>大昔の話だ。<br><br>海の底の圧力は高い、<br>しかも超低温だ。<br>氷の精霊自体は、それほど低い温度ではなく<br>発生方法さえわかれば、増やすのは<br>容易だろう。<br><br>氷の精霊の体験や記憶を覗いていた俺は<br>違和感を感じた。<br>この雑魚で大量生産された精霊フラウが<br>なぜこんな記憶や体験を持っているのか。<br><br>そこで俺は大変な思い違いを<br>していたことに気が付いた。<br><br>「清き流れの源」、それは液体、水などではなく、<br>空気、大気の流れだったのだ。<br>溶岩でも海流でもない。<br><br>この星の極に大量の冷たい空気が存在し、<br>そこから、精霊フラウが流れてくるのだ。<br>俺達は北極大陸（地球ではない）に向かうことにした。<br>ここからなら、飛行魔法で２時間ほどだ。<br><br>人魚達には悪いが、原因がわからない限り、<br>氷の城ごと凍り付いていてもらおう。<br>精霊フラウの記憶を見る限り、沸騰した海で<br>煮物になっているだろう。<br>もはやどうしようもない。<br><br>あたり一面が真っ白、どこまで行っても氷しかない世界だ。<br>何もないところにポツリと光が発生した。<br>やがて、大気が集まり形を成した。<br>巨大な精霊フラウだった。<br><br>巨大精霊とコンタクトに成功した俺は<br>精神内の映像を見聞きすることが出来た。<br>一時的にテイムしたからだ。<br><br>巨大精霊の記憶によると、<br>恒星から発生する高エネルギーの電磁波が<br>地表を貫通し、火山のマグマに吸収され、<br>温度が急上昇したらしい。<br>単純に言うと、「電子レンジ」だ。<br><br>ここからでは　恒星、いや判りにくいので命名しよう、<br><br>「太陽王　アトモス」<br><br>に攻撃する方法はない！<br><br><br>３<br><br>ここからでは、太陽王アトモスに攻撃する方法はない。<br>９人の中で遠距離攻撃に特化した弓使いの「胡邦」でも<br>無理だ。弓使いペルシの意見も同じようだ。<br><br>俺が氷の精霊をいじめたせいで、<br>火山の状況がやばくなっている。<br>なんとかしないと、溶岩で氷が溶けて<br>甚大な被害が出る。<br><br>とりあえず、黒魔道士・英島が<br>「アブソリュートゼロ・絶対零度」<br>を連発して火山を治めているが<br>あきらかにＭＰに無理がある。<br><br>巨大精霊に精霊をもっと送るように言ったが<br>いや嘆願したが、断られた。<br>北極自体が危ないらしい。<br>星が滅ぶよりは、この都市の滅亡を<br>看過するようだ。<br><br>都市とはいえ、２０世紀の地球での都市ではない。<br>小国の中世の都市だ。<br>都市の人口は数百人、<br>俺たちは乗り物はない。<br>出来るだけ早く乗り物を作ろうと<br>このとき決めた。<br>飛行魔法や召喚でも５００人以上は無理だ。<br><br><br>仕方ないので最期の手段に出た。<br>村人を殴って瀕死にして、テイム<br>ゲージに入れて倉庫にしまった。<br>これなら安全だ。ほっとした。<br><br>しかし、テイムすると５感が伝わってくる。<br>「助けてください、ここは地獄です。」<br>「ママー、暗いよー。」<br>「狭いところは苦手なんです。」<br>「出して　出してー」「ぎゃぁあぁーーー」<br>など悲痛な声だ。<br><br>スラリンたちがタフなのか、<br>村人が貧弱なメンタルなのか、<br>俺には永遠にわかるまい。<br><br>転移装置で以前行った、砂漠の街に<br>村人を押し付けて、氷の大陸に戻ってきた。<br>すでに氷の大陸は溶け始めており、<br>都市は跡形もない。<br><br>だが、人魚の城への道は開けるだろう。<br><br>太陽王アトモスを倒さねばならない。<br>幸いなことに、ここは人の意識の集合の<br>仮想世界であり、その太陽の主だ。<br>実際の太陽ではない。<br><br>そしてこちらには　人魚の城で入手できるであろう<br>「リージョンコア」がある。<br>リージョンコアは生物の希望と、絶望の集合体、<br>概念や法則を、変化させる力を持つ。<br>世界の種だ。<br><br>つまり、太陽王アトモスが６０００度で燃えていられるのも<br>宇宙空間に存在できるのも、人間の意識が根源。<br>故に、論理的であれば、倒すことは可能だ。<br><br>浦島太郎の話を俺は知っている。<br>そう、太陽王に「玉手箱」をプレゼントしよう。<br>うまくいけば、白色矮星か中性子星になるだろう。<br><br>リージョンコアに時魔道士の墺野・瑛華が<br>ヘイストを大量に打ち込んでいる。<br>この世界での存在感が大きければ大きいほど<br>「リージョンコア｣の影響はでかい。<br><br>そして、この世界に居るのは、村人が居ない今、<br>俺達ＲＰＧ００９と太陽王アトモスだけだ。<br>俺達の存在などないに等しい。<br><br>時魔道士のエイカ・オスマンの全ＭＰとＭＰ完全回復薬<br>１００本で太陽王アトモスは朽ち果てた。<br><br>人魚達は煮物になっていて、蘇生不可能化と思いきや<br>凍り付いていたため、時間魔法では無理だが、<br>通常白魔法の蘇生魔法で肉体損傷も治り、<br>元気に泳ぎだした。<br>フィッシャーは本当に人魚だったらしく、<br>仲間に再会できたことを喜んでいた。<br><br>ジャイアントタートルは人魚の女王の夫であったようで<br>感謝され、何かあったら、必ずご恩はお返ししますと、<br>こうべを下げて、今は亡き、女王を悼んでいた。<br><br>忘れていたが、精霊王フラウは俺がテイムしている状態だったので<br>リージョンコアの加速化の影響は受けなかったようだ。<br><br>ふう、今度は南国に行きたいな。<br>もっとも、水着か、全裸かと、聞かれると難しいところだ。<br><br>人魚と氷の城　</p><p>&nbsp;</p><p>漫画用はアルファポリスへ<br><br><br><br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372501804.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 23:43:28 +0900</pubDate>
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<title>僕は病院に君の墓参りに行く</title>
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<![CDATA[ <p>俺は・・・という名前の平凡な夫だった。<br><br>小学２年のとき東京から田舎へ引っ越した<br>おれは、田舎のガキ大将とそりが合わず、<br>孤独で居ることが多かった。<br>そんなとき声をかけてくれたのが<br>今の妻、紗百合だ。<br>サユと呼んでた。<br><br>田舎だったけど、そのころはまだ自然も残っていて、<br>田んぼでアメンボウを見たり、<br>池のほとりでなくウシガエルの声を聞き、<br>「どこに居るのかな」などといいながら<br>探し回っても、見つけることが出来なかった。<br><br>秋の川には源氏ボタルが居て、虫かごで周囲を照らして<br>電灯代わりにしていた。<br>夏にはオニヤンマやギンヤンマが飛び、<br>大きなスズメバチも居た。<br><br>サユが飼っていた犬が居なくなったのは、<br>小学５年のときだ。<br>もう歳だったので、老衰だったのだろう。<br>サユは死んだことは悟ったのだろう。<br>そのこと自体に悲しんでいる様子は無かった。<br>少なくともそのときの俺には気が付くことはできなかった。<br><br>しばらくして、保健所から連絡があって、<br>死体を引き取りに行った。<br>サユが以前通っていた、亡くなった祖母の家で<br>倒れ伏して死んでいたらしい。<br>餓死だったようだ。<br><br>サユは犬、名前はイチローだったかな、<br>その葬式をしたいと言い出した。<br>当然、彼女の両親は認めることはなく、<br>犬の死体をリュックにいれて、<br>俺とサユで山の見晴らしのいい<br>そして、サユのおばあちゃんの家が見える<br>場所に埋めた。<br>今でもその場所ははっきりと覚えている。<br><br>犬の死体をリュックにいれたことをしかられ<br>俺も両親に一晩、外に出された。<br><br>サユは行方知れずになり、村中が総出で<br>夜の山や川を探した。<br>俺が、犬を埋めた場所にサユの母親を<br>連れて行くと、サユはそこで泣きつかれて<br>眠っていた。<br><br>あれから２５年　俺達は結婚して１３年になる。<br>残念なことに新鮮味もなく、結婚記念日さえ忘れて<br>しまう俺だったが、彼女は良妻賢母を<br>勤め上げてくれていた。<br><br>俺は、東京の大学を出て、塾の講師をしていた。<br>まあ、不景気で就職に失敗したとも言う。<br><br>結婚してすぐ生まれた、長女は中学生になった。<br>常日頃から、弟が欲しいと言い続けていた実乃梨は<br>中学にあがってすぐ、念願がかなった。<br><br>病院で　洋水検査の結果、男の子だと判明した。<br>本当に幸せだった。<br>だけど、病院に一人呼ばれた俺は、<br>もうひとつの事実を突きつけられた。<br><br>子宮がんだった。<br>今すぐ手術すれば、５年生存率は８０％以上<br>医者は、子供はあきらめて、手術を勧めてきた。<br>俺も子供よりサユが大切だ。<br>彼女に事実を伝え、堕胎をすすめた。<br><br>実乃梨も、「弟よりもお母さんのほうが大事」<br>そう言って説得したが、<br>サユは親が子供のために命を捨てられるのなら、<br>生まれてくる子供にもそれは言えるはず、<br>そういって、堕胎を拒否した。<br><br>しばらく病院に通ううちに、俺には変化が生まれた。<br>ある意味産婦人科だったからかもしれない。<br>人が死ぬ病院ではなく、生まれてくる場所。<br>いつの間にか俺の現実は麻痺して行った。<br><br>サユに会っても、亡くなった祖母と話している<br>ような感覚に陥る。<br>まるで仏壇の写真と話しているようだ。<br><br>本当なら泣き叫びたい衝動を、受け止められない俺は<br>いつの間にか、殺していた。<br>サユは生きているのに、自分の中で彼女はもう死んでいた。<br><br>母親に会うたびに、泣き顔で抱きつく実乃梨、<br>それに対して、おれは至って平静だった。<br>サユの両親は俺に対して、心の強い人だと<br>見当違いのことを言っていた。<br><br>気が付くと俺は、彼女の写真をまとめて、<br>荷物を一つ一つ丁寧に保存していた。<br>自分の心を荷物のように閉じ込めるように。<br><br>だが、ある日、彼女は言った。<br>「なぜ、昔の話ばかりするの？」<br>夏休みに実乃梨がホームステイするんでしょ。<br>ニュージーランドは冬だし、<br>冬に着るもの出さないとね。<br>そう言うと彼女は生まれてくる息子の帽子と手袋を<br>編んでいた。<br><br>彼女の余命は１年、それが息子の命の代償だ。<br>医者にある相談をされた。<br>子供を生んだ場合、それからの命は<br>１ヶ月単位あるかないか。<br>ご自宅で過ごされては？<br>ある意味医者が、産婦人科の医者だからかもしれない。<br><br>医者は彼女に自宅で出産するように勧め、<br>彼女もそれに納得し応じた。<br>別に子宮がんだから、出産が危険になるわけでもない。<br>医者が特別に家まで来てくれるらしい。<br><br>小さなクリニックの産婦人科医だ、<br>余命１年の妊婦など生涯に２度は見ないだろう。<br><br>彼女は、クリニックを退院し、３ヶ月ぶりに家に戻ってきた。<br>冷蔵庫を見て、何が入っているかチェックして、<br>食生活が乱れていないか、とか<br>洗濯や風呂掃除ができているかを見ているようだ。<br><br>だが、夫婦の寝室に入ると彼女は怪訝な表情を見せた。<br>元々２個あった、枕が一個しかないのだ<br>サユの服はすべてクリーニングに出され<br>綺麗に整頓してあった。<br>もう戻ることがない、そう告げているようだった。<br><br>サユは突然、大声を上げると、絶叫した。<br>彼女は大粒の涙を流しながら、「なんで、なんで<br>私生きてるよ。まだ生きてるよ。」そう呟くと崩れ落ちた。<br>もうこの家に彼女の居場所はないのだ。<br><br>喚き散らす彼女に、おれも応じてしまった。<br>「俺達には将来があるんだ。未来のことを考えるのは当然だろ。」<br>言ってしまった。もう止められない。<br>「お前はその生まれてくる子供と引き換えに、<br>俺と実乃梨を見捨てたんだ。俺は働きながら一人で子供を<br>育てるんだぞ。お前を殺したその子を育てて、いける自信が・・<br>ない。」<br>言ってしまった、人間として最低だ。<br><br>「再婚すればいいじゃない。一人で育てる自信がないなら<br>再婚すればいい。私は死んでまであなたを縛ろうとは思わない。」<br><br>「ねぇ、私の戒名は何にする？」<br>そう言うと彼女は寝室のドアを固く閉め、<br>俺は廊下で、何も考えられずに<br>泣き止んだ子供のように喪失感に襲われていた。<br><br>ドア越しに俺は言った。<br>「お前の頭部はオルコー財団に保管される。」<br>「俺はお前をあきらめたわけじゃない。」<br>「自分のためかもしれない、いい訳かもしれない。<br>でも俺は弱いんだ。いつもお前が居た。<br>小学２年のあのときから、俺は一人では立てないんだ。」<br><br>彼女からの反応は無かった。<br><br>俺は、家を出ると夜の街を彷徨った。<br><br>「おとーさん、今、オークランドだよ。」<br>ニュージーランドから電話がかかってきた。<br>サユはあの後パスポートを持って、ＮＺに来たらしい。<br>本当は学校の規則ではダメなのだが、<br>余命のわずかなサユを慮って、ホームステイ先に頼み込んで<br>２人でホームステイしているらしい。<br><br>　サユは俺とは口を訊きたくないらしく、<br>実乃梨は元気そうに電話を切った。<br><br>それから２週間ほどは、何も考えることもなく、<br>ただ勤務先の塾に行き、子供達に受験勉強を教えていた。<br><br>「お母さん帰った～？」<br>そんな実乃梨からの電話がかかってきた。<br><br>「えっ、いつ？」<br><br>「昨日の昼だから、もう家についてるんじゃないの？」<br><br>実乃梨の言葉に俺は耳を疑った。<br>娘に心配はかけられないので、仕事が遅くなってるけど<br>急いで帰ると、伝えると　ニュージーランドからの電話を切った。<br><br>もしかしたら病院に居るかも、そう思い電話をかけた俺は、<br>クリニックの医師が、心の底から軽蔑の言葉を浴びせるのを聞いた。<br><br>「奥さん、死産でした。」<br>医師はあなたは、もうこないでください。<br>もはや人間として扱っていないレベルで拒絶した。<br><br>俺は小学校５年のときのことを思い出していた。<br>彼女の故郷は　京都の宮津、しばらく山道を登ったところだ。<br><br>列車の走っている時間ではないし、<br>自動車を運転すれば、今の精神状態だと危険だと<br>そのくらいの判断が出来るくらいには冷静だった。<br><br>紫式部だったか清少納言だったかは忘れたが、<br>タクシーの運転手に宮津まで行ってもらい。<br>そこで別のタクシーに乗ると、<br>俺は急いで、イチローの墓に走っていった。<br><br>彼女、サユはそこにいた。<br>イチロー、彼女は息子にそう名前をつける気だったらしい。<br>医者からへその緒をもらって、犬の墓があった場所に埋めていた。<br><br>普通なら正気を疑うところだが、俺は叫んでいた。<br><br>「俺はもう一人で立てる。一人で歩いていける。<br>もう、お前と２人じゃないと何も出来ない子供じゃない。」<br><br>ふふ、そう言うとサユは笑った。<br>「そうね、私も子供を２人残して、あの世に行けないわ。」<br><br>「イチローと私は行くけど、ちゃんと実乃梨を育て上げて。」<br><br>自宅に実乃梨を呼び戻し、弟、イチローの死産を伝えた。<br><br>何のためにお母さんは死ぬの、そう泣き叫ぶ娘を抱きかかえると<br>サユは</p><p>「よさの海のあまのしわざとみしものをさもわがやくと潮たるるかな」</p><p><br>なぜこんな唄を読んだのかは、古文に詳しくない俺にはわからない。<br>だが、１０日も経たないうちに、彼女は天の橋を渡っていった。<br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372500170.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 23:38:38 +0900</pubDate>
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<title>「キス」myself</title>
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<![CDATA[ <p><br>1.既知の仲<br><br>僕は　私立手塚山学園中学校１年<br>名前は　春野　望夢<br>中学受験に失敗して、<br>滑り止めのこの学校に来ました。<br>でも、まぁこの学校でもトップなら<br>京杜大学にいけるでしょう。<br><br>何よりもこの学校の売りは<br>女子生徒が圧倒的に多い。<br>しかも、お嬢様！<br><br>今日は入学式、壇上で校長や生徒会長の<br>挨拶が終わると新入生代表が出てきた。<br><br>イギリスから帰って来た帰国子女で<br>ケンブリッジのトリニティを<br>１０歳で首席卒業したらしい。<br>数学ミレミアム懸賞問題を解いて、<br>フィールズ賞の受賞も決まっているようだ。<br><br>オマケにお金持ち。<br>アーニャ・ハートシルトというらしい。<br>長くてプラチナブロンドの髪で<br>身長も高くモデルのようだ。<br><br>まぁ、あれは少し高望みが過ぎるか。<br>だが、成績優秀者はクラスが固まっているため<br>同じクラスになりそうだ。<br><br><br>教室に入ると突然、<br>「そこのあなた！」<br>流暢な日本語でなぜかそのハートシルト嬢に<br>声をかけられた。<br><br><br>いきなり女子便所に連れ込まれた俺は<br>混乱していた。<br><br>第一声はきちがいかと思った。<br>「私は　あなたよ。」<br><br>はい？この人は何をおっしゃっておられるのですか？<br>「あ、あいあむ　あ　ぺん。」<br>日本語が理解できないのかと思い<br>小学校でたばかりで英語のわからない俺は<br>同じくらいむちゃくちゃなことを言っていた。<br><br>「私は　ペンです。」<br><br>「私って、そういうジョーク言うタイプだったかしら？」<br>ハートシルト嬢はそう言って少し考え込んだ。<br><br>「あなた誕生日は２月２２日？朝の５時に、<br>仮死状態で生まれた？赤ん坊のときに２回腸重積にかかってる？」<br><br>さすがの俺も驚いた。すべて当たっている。<br>どこまでリサーチしているんだとも思ったが、<br>世界有数の財閥の後継者が俺のことをそれほど<br>調べる理由が見当たらない。<br><br>俺の家は、どちらかといえば貧乏な一般家庭だ。<br>有名人などいない。<br>こいつの家は、ハックフェラーとならぶ<br>世界一の大富豪、英国の貴族だ。<br>騎士爵などではなく、本物のロード。<br><br>「学校には私から言っておくから、<br>これからちょっと私に付き合って。」<br><br>そうお嬢様はおっしゃられると、<br>自家用のベントレーを呼び出して<br>彼女の自宅へと向かった。<br><br>高級マンションだった。<br>８階建てで、ホテルのようなラウンジがあり<br>５０人近い人が働いている。<br>目の前には緑地のような公園があり<br>ヘリポートや大きな湖があった。<br><br>「すごく高そうなマンションですね。」<br>俺は何気なくそういった。<br><br>「そうよマンションよ。あなたの言うマンションは<br>高層アパートのことだけど、ここは本物のマンション、<br>一軒家、大邸宅よ。」<br><br>「いっけんやー　まじですかー。」<br>驚きのあまり、素でしゃべっていた。<br><br>昼食をご馳走になった俺は、<br>意外に純和食なのには驚いた。<br><br>「俺に何か用ですか？」<br><br>「私ね、未来から来たの。」<br>「もともとは　春野望夢という男性。<br>つまりあなたね。」<br><br>「絶望的な未来を変えるため、<br>ジョイ･ハックフェラーや<br>エブリン・ハートシルトと一緒に<br>この世界にやってきたの。」<br><br>「未来の知識があって、株や為替で常勝して<br>２京円儲けたとしても、大物と知り合いじゃないと<br>保身は出来ない。殺されるだけね。<br>タイムトラベラーなんてそんなものよ。」<br><br>「あなたいったいいくら資産あるのですか？」<br>俺は思わず聞いてしまっていた。<br><br>「株だけで４０００兆円　世界の株式市場の<br>７５％を支配しているわ。日本の土地バブルでも<br>儲けたし、プラザ合意もよかったわね。<br>２２０兆ドルくらいは持ってるわ。」<br><br>「ちなみに、世界の総資産っていくらくらいですか？」<br><br>「う～ん、現物に限っての地球の価値なら<br>４３０兆ドルくらいね。レヴァレッジ無しの。」<br>ハートシルト嬢は即答した。<br><br>「え～とつまりあなたは一個人で<br>世界の半分以上を保有していると？」<br><br>「そうよ、そして、ハートシルト家の娘として生まれ<br>育った。ちなみに２２０兆ドルは個人資産。」<br>「実家のハートシルトも５０兆ドルくらいは持っているわ。」<br><br>「旧４大財閥と芙蓉グループも系列会社よ。」<br><br>「あのう、タイムトラベラーといわれましたよね？<br>つまり他人の実績とかを盗用している可能性も<br>あるのですか？」<br>俺は失礼だとは思っても聞いてしまった。<br><br>「そうね、私の論文　ポワンカレ予想は<br>ロシアの科学者がもっと後に書いたものだし、<br>フェルマーの最終定理も盗作よ。」<br><br>「あんた泥棒かよ。」<br>俺は憤慨した。<br><br>「少なくとも論文を書いて理解して議論できるだけの頭脳を<br>持ってから言って欲しいわね。君には。」<br>ハートシルト嬢は物でも見るような目で俺を見ていた。<br><br>「私のことは　アーニャでいいわ。本名はグラツィアやハンナ<br>だけど、自分自身に苗字で呼ばれるのは、妙に不愉快だわ。」<br><br>「あんたが俺なんて信じられるかよ！」<br><br>「ふ～ん、私の立場であなたを騙す理由なんてないと思うけど、<br>ちなみに処女でも奪ってみる？」<br><br>「いえ、いいです。ほんとに自分自身だと気持ちが悪いので。」<br><br>「あ、っそう、まあ、いずれはあなたと子作りしないと<br>いけない理由があるけどね。私としても<br>人工授精と代理母出産を希望するわ。」<br><br>「男にまったく興味ないし。」<br><br>彼女はその後の世界がどうなったかを語ってくれた。<br>ハックフェラーもハートシルトも協力する理由があった。<br><br>そして、未来の俺、彼女以外は過去へのタイムトラベルを<br>コントロールできない理由も。<br><br>理解した、理解してしまった。<br><br>続く</p><p>&nbsp;</p><p>2　みほりん<br><br>次の日　学校では噂になっていた。<br>ハートシルトさんがチビでヨワムシな俺など<br>眼中にない、そういう噂だった。<br><br>「だいじょうぶ～だった～。」<br>同じ小学校出身で、登下校も一緒にしている<br>中村　美穂が話しかけてきた。<br><br>俺の家は母親が入院中で、<br>弁当も作る技術ないから、<br>学食で済ませるつもりだったのだが、<br>こいつの母親が気を利かせ、<br><br>「１人分も２人分も同じよ。」と<br>無償提供してくれている。<br><br>そういう負い目はあるものの、<br>ハートシルトが、俺自身でなければ<br>恋愛対象外だろう。<br>直接的に言えば、顔面偏差値だ。<br><br>帰りに、ハートシルトが送っていったことを<br>知っているため、なにやら心配しているようだ。<br><br>学力が、楽南レベルで、楽星なら<br>確実に合格といわれていた、<br>奈良で北大寺学園、出来立ての将来伸びるであろう<br>北大和学園、に次ぐ名門手塚山学園、<br>ちなみに北大和学園は無試験特待生でのオファーがあったが<br>母親が馬鹿にしていたため、蹴った。<br>ちなみに銅志社大学は白痴のいくところだと<br>親は本気で信じていた。<br><br>手塚山には入れたのが奇跡とも言える、美穂<br>とはスタート位置が違うのだ。<br><br>ハートシルトはどうやら、生後半年で日本語と英語がぺらぺら<br>３歳で高校レベルの学力はあったらしい。<br>そりゃ、時間遡行者だからね。<br>１０歳でケンブリッジ首席とか、すごいけど<br>卒業したのは実質、中身はおっさん、<br>試験内容も予測できるいんちきだし。<br><br>フィールズ賞確実、ＩＰＳを泥棒してノーベル賞候補とか<br>まだ芽が出てない川中伸弥さんに謝れといいたい。<br>１０歳でノーベル賞候補、フィールズ賞受賞とか<br>そりゃ、ケンブリッジも首席にするしかないだろう。<br><br>美穂がハートシルトに話しかけると<br>意外に好意的だ。<br>まあ、中身が俺なら、好意的なのも頷ける。<br><br>数十年ぶりの再会だろうしな。<br><br>「おかし～、たべる～。」<br>美穂はハートシルトにお菓子を勧めていた。<br><br>意外に単純だな２人とも、そう思い、<br>親のように見守る俺に美穂は、<br>「ちっ、」と舌打ちし、<br>太ればいいのに。などと呟いていた。<br><br>こいつは天然キャラではなく、演じているだけ？<br>しかし、お菓子を食べさせて太らせるというのは<br>かなり知能が低い発想だぞ。。。<br><br>知能は天然だろう。<br>演技でこの知能は怖いが、<br>なぜこの学校には入れたのかも謎だ。<br><br>「ハートシルトさんは帰らないんですか？」<br>俺はそう言うと、部活やる気いっぱいの<br>ハートシルトさんの帰りが遅くならないか聴いてみた。<br><br>「ぁあ、ヘリコプターあるから、大丈夫。<br>それと昨日言ったけど、私はハートシルトじゃなく<br>アーニャね。」<br><br>寝小便漏らしてた時期、ばらすぞと<br>ありえない圧力をかけるアーニャに<br>美穂があんぐりと口をあけていた。<br><br>「えぇーっ、いつまでおねしょしてたんですか。<br>私も知らない。。。」<br><br>「ふ、ふたりは　そういうご関係なのですか。」<br><br>どうやらこいつは本当に天然らしい。<br>うたがってすみませんでしたっ。<br><br>「あぁ、私　男に興味ないから。」<br>爆弾発言やめてください。<br>実質の女子高で百合とか生きにくいですよ。<br><br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372327934.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 11:34:21 +0900</pubDate>
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<title>ＲＰＧ００９　Plo &amp; Desert Princess 1-5</title>
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<![CDATA[ <p>いつからからだろう、俺は草原をさまよっていた。<br>気が付いたとき、持っていたのは<br>フライパンと水食料、そして、卵だった。<br>元々住んでいた、日本の大阪とは違い、<br>空気も新鮮だし、気温も程よく、<br>すごしやすい。<br><br>だが、俺はそいつに出会ってしまった。<br>そいつはもっとも有名な「雑魚」<br>のひとつで、俺は軽い気持ちで<br>襲い掛かった。<br><br>「御門大和の攻撃、スライムに１のダメージ」<br>フライパンで全力で殴ってもダメージは１だ。<br>「スライムの攻撃、御門大和に３のダメージ。<br>おれは、自分の顔のまん前に浮かぶ<br>液晶画面のようなモニタに、浮かぶ数字<br>ヒットポイントの部分は「９」と表示されている。<br><br>つまり、スライムが３回攻撃すれば死ぬわけだ。<br>この世界は、ロールプレイングゲームのようだが<br>殴られたら痛いし、ナイフで刺せば<br>血のような物もでる。<br>雑魚スライムの攻撃を受けるたびに<br>顔面にサッカーボールキックを喰らったようで<br>全身がふらふらとして意識が遠のく。<br><br>死ぬと死ぬほど痛いだろうし、<br>現実世界と同じで、いまの自分自身にとって<br>死ぬということは未知だ。<br>ものすごく怖い。<br><br>助けなど来ない、<br>俺がいままでやってきたゲームは<br>ファミコムなどのオフラインゲームで<br>この世界が何なのかはまったくわからなかった。<br><br>あと一撃で死ぬ、痛みと恐怖で絶望している俺の<br>前で俺を殺すべく行動を起こしたその雑魚の<br>スライムは上空から降ってきた<br>一本の銅の槍に貫かれ絶命した。<br><br>「なっさけねえな。初期エリアの雑魚相手に<br>死にかけるとかありえねぇだろ。」<br>そう言うと俺を哀れみと侮蔑の表情で<br>見下ろす一人の少年がいた。<br><br>銅の鎧と銅の槍を装備した。<br>立派な槍騎士は俺の手をとると<br>腰の袋から薬草を出して<br>渡してきた。<br><br>「飲めよ。１０くらいは回復するぞ。」<br>どうせ、３ゴールドで売ってるし<br>そこらを探索すれば拾えるぞ、<br>そう言うと、遠慮する必要はないとばかりに<br>大仰に手を振った。<br><br>「あ・あ・ぁ、ありがとうございます～～～。」<br>俺は緊張が解けたのか、<br>助かったと言う事実と、<br>まったく無関係な他人を<br>何の見返りも求めずに<br>助けてくれた人がいたと言う事実に<br>感動して号泣しながらひたすら<br>お礼を言い続けていた。<br><br>もぐもぐと薬草をほおばり<br>飲み下した。<br>ニガヨモギやドクダミのような味かと思いきや<br>意外なことに、オレンジ味だった。<br><br>槍戦士は、草原に出かけたプレイヤーが<br>二度と戻らないことが<br>しばしばあって、そういった初心者を<br>手助けして回っているらしい。<br><br>「お前職業何？」<br>槍戦士は俺があまりにも弱いので<br>職業選択に失敗したと思っているようだ。<br><br>「召喚士です。。」<br><br>槍戦士はうんざりしてこう言った。<br>こういう場合、攻撃力が高いほうがいいって<br>相場が決まってるだろ。<br>魔法使いとかはＭＰの回復に時間かかるし<br>狩りの効率も悪い。<br><br>スライムは打撃耐性あるから<br>斬るか刺すのが一番いいだろ。<br>それをフライパンって・・・<br><br>軽く絶句しているようだった。<br><br>「召喚士はペットを５匹もてるので<br>１プレイヤーでもペット５匹と<br>集団で戦えばフルボコッコできると思って<br>なりました。」<br>浅はかな考えですみません、と付け加える。<br><br>「あぁ、名乗ってなかったな。<br>俺は竜騎士の露原一樹（つゆはらいつき）。」<br>よろしくな、そういうとそいつは俺の手をとって<br>助け起こしてくれた。<br><br>だけどおれは、腰が抜けていて立てなかった。<br>すると、そいつは俺の横に腰を下ろすと<br>スタミナを回復するといって座り続けていた。<br><br>そいつ、露原一樹は俺が人生ではじめて<br>親友と呼べる存在だと思った。<br><br>RPG009-0002<br><br>ある日の酒場<br>俺たちはビールのようなものを飲んでいた。<br>俺たちはまだ中学生なので<br>酒はゲーム的には飲めない。<br><br>飲んでいるのは、軽い毒物だ。<br>ポーションや薬草は<br>使えば使うだけスキルが増えて<br>効果が上がるらしい。<br><br>ちなみに、この酒場での飲み食いは<br>ある人物のおごりだ。<br>「英島豊」という黒魔道士で、最近レベル２５になって<br>中級氷魔法「フリーズ」を覚えたらしい。<br><br>俺と露原もあれからスライムを倒しまくり<br>レベル５程度にはなっているが、<br>こいつの狩りの対象としようとしているものは<br>「極龍」と呼ばれる、最強の雑魚だ。<br><br>レベル９０台、ヒットポイントは３０万以上、<br>体長５０メートル　ジャンボジェット並みの<br>大きさらしい。<br>いまだ倒したものはおらず、<br>経験値は　数万　レアアイテムを落とすとの噂だ。<br><br>不可能な上、実在の確認されていないものの<br>取引に応じているのにはわけがある。<br><br>露原が、槍戦士ではなく、「竜騎士」だからだ。<br>竜なんてオスタードでいいじゃん！と意見する俺に<br>極龍をテイムしてくれと、マジで頼んできた。<br><br>この町でテイムできるペットで、<br>小型でかわいい「カーバンクル」と言うのがいるらしい。<br>このゲームで「召喚士」などと言う職業について<br>生存しているのは俺だけらしい。<br><br>この「カーバンクル」、ある意味最強だ。<br>全体反射魔法、むろん回復魔法も反射するため<br>魔法使いは使わない。<br>故に忘れ去られ、「カーバンクル」が<br>化石のような存在らしい。<br><br>この「カーバンクル」攻撃手段を一切持っていない上<br>ヒットポイントが異常に低く、１しかないらしい。<br>テイムするにはヒットポイントを１割以下にするしかなく<br>事実上テイムは不可能だ。<br><br>そうそう、持っていた卵がレベル上げの途中で孵った。<br>メスのスライムで、現在レベル５。<br>俺はそいつにスラリンという名前をつけ<br>従者にしていた。縦横１０ｃｍの肉まんのような形をしている。<br><br>ヒットポイントが　オンリーワンな「カーバンクル」<br>をテイムする方法は２つ考えていた。<br>魔法で最大ヒットポイントを１００程度増やす魔法がある。<br>それをかければ、ヒットポイントは１割以下になる。<br><br>もうひとつは「カーバンクル」のレベルを上げて<br>召喚士の一撃で死なないようにすることだ。<br><br>ひとつ言っておこう。<br>反射魔法を使えるのは、「カーバンクル」のみであり<br>自分自身に「ファイア」をかけて反射するとかは出来ない。<br>当然、最大ヒットポイントをあげる「ドーピンラ」も<br>カーバンクルは反射してしまう。<br><br>だがこの世界の法則がある。<br>酒場で、毒を飲み、回復薬を飲むと効果が上昇する。<br>ヒットポイントもダメージを受けて、回復すると<br>増加する。<br><br>「カーバンクル」が１匹しかいなければ不可能な<br>外道技を考え付いたのだ。<br><br>その日、俺たちは「カーバンクル」の住むという<br>近くの洞窟に向かった。<br><br>RPG009-0003<br><br>この世の中には「リジェネ」、や、「ポイズン」<br>という魔法がある。<br><br>魔法の反射をすると、５ポイント１２回、<br>計６０回復する魔法の場合<br>効果すべてが反射されるのだろうか？<br><br>検証した結果、初めの１回は反射できるが<br>２回目以降は１回目の的中判定がない場合は<br>効果が存在しなくなる。ということだ。<br><br>「カーバンクル」が全魔法反射を<br>発生させているときだけであり<br>「カーバンクルの死体」は魔法を反射しない。<br>死体が反射するなら、盾等のアイテムの素材に<br>なっていることだろう。<br><br>酒場でも言ったが、最大ヒットポイントを<br>上昇させる方法は、ダメージを受け回復することだ。<br>「ポイズン」パーセンテージダメージなので<br>ヒットポイント１の場合、ダメージはゼロだ。<br><br>「リジェネ」もパーセンテージ回復なので<br>回復量は０だ。<br><br>しかし、０ダメージを受け、０回復するという条件は<br>満たしているため、最大ヒットポイントは上昇する。<br><br>「カーバンクル」の全体魔法反射は、自衛のためであり<br>魔法攻撃を受けない限り発動しない。<br><br>ポイズンのダメージは０のため、発動しない。<br>リジェネはダメージ判定がない<br>回復量が０なため、発動しない。<br><br>「カーバンクル」を監禁し、ゼロダメージに対し、<br>ゼロ回復するを数週間続け、ヒットポイントを<br>１１にすることに成功した。<br><br>おれは、素手でヒットポイントを１にして<br>スキル「フェイタライズ」でテイムに成功した。<br><br>全体魔法反射をするペットの「カーバンクル」<br>を「クレイル」と命名し、仲間にした。<br>飼い主の魔法は反射しないので、<br>色々便利に使えそうだ。<br><br>RPG009-0004<br><br>酒場に「英島豊（ひでしまゆたか）」がやってきた。<br>さっそく、「極龍（グランドドラゴン）」を<br>狩りまくる気だ。<br><br>こいつは中級魔法が使えるので、氷魔法を使用する<br>極龍は、氷属性か確かめるため、馬鹿なのか<br>極龍が氷属性だと思い、火炎魔法をぶち込んだらしい。<br>すると、なんと、極龍は<br>「氷属性が弱点なのに、氷魔法を使う。」<br>という発見をしたようだ。<br><br>「クレイル」が全体魔法反射を常時発動させているため<br>極龍の氷魔法が人数分、増強されて１０人なら１０倍<br>ダメージを与えられる。<br><br>英島は、レベル上げをする女２人を紹介<br>してきた。<br>ヒーラー（回復魔法使い）の咲耶蘭（さくやらん）と<br>盗賊の印旛サヤカだ。<br><br>咲耶は回復と蘇生、盗賊は「極龍」の所持品を<br>盗むためらしい。<br><br>竜燐の鎧や龍の槍がゲットできれば<br>露原は相当強くなりそうだ。<br>金銭的にも非常においしそうだ。<br><br>直接攻撃は黒魔道士の英島が、ブライン（暗闇）で<br>何とかするようだ。<br><br>物理攻撃以外は、「魔法」と判定されるらしく<br>ペットカーバンクル「クレイン」はすべて反射する。<br><br>「あの、私が死んだ時用にこのホイミスライムと<br>ザオラルスライムをお持ちください。」<br>そう言うと咲耶さんは俺に野生のスライムをくれた。<br>それなりに仲はいいらしいが。<br>準備を整えると、<br><br>俺らは９人の大所帯で、極龍を狩りに行くこととなった。<br>でかかった、ものすごくでかかった。<br>そこいらの巨木よりでかい。<br>「グォォオオーーッ」その咆哮だけで、<br>周囲の岩や大木がビリビリ揺れる。<br><br>極龍は大きくそのアギトを開くと<br>１００ｋｍは離れているだろう山を<br>齧ったりんごのように吹き飛ばした。<br><br>「どこが雑魚だ。ボスだろ。」<br>おれは、英島は頭がおかしいと認定した。<br><br>「おいおい、こいつとやりあうのか？」<br>露原はそういうと頭をぽりぽり、掻いた。<br><br>（あんたレベル５の槍戦士、スライム無双できても、<br>スケルトンに負けるレベルだろ）<br>おれは内心そう、つぶやきながら<br>ペットカーバンクル「クレインちゃん」に<br>すべての運命を託した。<br><br>RPG009-0005<br><br>黒魔道士（英島）の放ったブラインで<br>目が見えなくなった、<br>グランドドラゴンは、大きな尻尾を振り回し<br>ちんけで、低レベルなパーティーに<br>怒り狂っていた。<br><br>（そりゃそうだろ。どんな勇者や賢者でも<br>こんなのに喧嘩売らないよ。）<br>俺らのヒットポイント上限９９９だぜ。<br>この極龍さん、最大レベルなら１００万突破。<br>やばすぎるだろ。<br><br>タンク（壁役）の金剛君くんは一撃でミンチにされた。<br>蘇生するには、この極龍さんを倒してからだ。<br><br>召喚「カーバンクル・クレイン」そう叫ぶと<br>ペットが召喚された。<br>極龍の最大級全体氷魔法（ブリザジャ）が放たれたのは、<br>その直後だった。<br>さすがに最大級全体魔法だけあって、詠唱に<br>３０秒ほどかけて魔法陣を構築していたが。<br><br>ブリザジャは周囲１０ｋｍくらいを氷ずけにしていた。<br>しかし、反射を受けたグランドドラゴンは<br>１００万以上のヒットポイントを持っていかれ<br>氷の像となって砕け散った。<br><br>その瞬間、おれは３０万経験値を得て、<br>スキルレベルがすべて４０以上上がった。<br>スラリンとクレイン、ホイミン、ザオミンも同様だった。<br><br>しかし・・・・<br>入手経験値は均等分配ではなく、<br>与えたダメージに比例するらしく、<br>レベルが上がるのは俺と俺のペットだけだった。<br><br>しかし、通常のレベル上げよりは遥かに効率がよく<br>毎日１０時間　半年１８０日休み無く<br>狩り殺した。<br><br>スラリン（総合値８０億）<br>ホイミン（総合値７９億）<br>ザオミン（総合値６６億）<br>クレイン（総合値３１億）ＨＰ６７００万<br>という基地外スライム達となった。<br><br>１００匹目くらいで、極龍をテイムし<br>そいつらは、<br><br>ドラキチ（総合値９９億）ＨＰ１億<br>ドラモン（総合値９９億）ＨＰ１億<br><br>くらいの強さだった。<br><br>ドラキチは、露原に貸し出す約束で<br>念願の竜騎士になれた。<br><br>「ありがとな、まじありがとう！」<br>マジ泣きした露原は心から感じ入っていたようだ。<br>よほど、槍騎士と言われていたのが<br>嫌だったらしい。<br><br>ツンツンキャラの露原が心からデレたのは<br>あれが最初で最後だろう。<br><br>RPG-0006<br><br>ほかの連中も、レベル２５３程度になっていた。<br>総合値で言うと１万程度だ。<br><br>おれは、戦闘系スキルはカンストした。<br>ペットはケイジに入れれば数に制限はないようなので<br>メタルキングや毒矢頭巾、キラーマシンなど<br>１００匹程度は総合値５０億以上に強化して<br>ケイジに入れた。<br><br>残念なことにトレードは出来なくなっている。<br><br>盗賊は、時々死にながらも、<br>龍神の杖、ドラゴンローブ、龍燐の鎧、龍の槍<br>などを９９９９個盗むことに成功し、<br>倉庫はいっぱいだ。<br><br>ゴールドは　２６億超。<br><br>自然習得、いわゆるひらめくスキルは<br>全員がコンプリートした。<br>おれは途中から、「無敵」状態になっていたが、<br>ちなみに俺のステータスは秘密だ。<br><br>だが、ほかのパーティーは必死だったらしく、<br>阿吽の呼吸、盟友と呼べる仲間に<br>なっていた。<br><br>まず、ラスボスにも負けない。最強だ、特に俺。<br><br>だが、俺たちはゲームの世界では<br>エンディングを迎えられなかった。<br>ふと目を覚ますと、何かの研究所のようだった。<br><br>「諸君、おはよう、目が覚めたかね？」<br><br>俺たちは、現実の世界でレベル上げをしていたらしい。<br>人類は、生物として、物体としての形を維持できず、<br>量子コンピューター「アイオーン」に記憶データを<br>移され、肉体は、いや地球は消滅したらしい。<br><br>ここには、デジタルな１００年分の全人類の<br>データが保管されており、可能性を探っている。<br>魔法や能力も人間の想像の中では可能だということだ。<br><br>ただし、想像でケーキを食べて、美味しく感じる必要がある。<br><br>いま、俺たちは人間ではなく人間のデータだ。<br>アメリカの軍産複合体の創り出した、<br>デザイナーズチャイルドであり、将来の可能性を<br>模索していたらしい。<br><br>「スパコン相手に勝てるわけないだろ！」<br><br>おれはそう叫んでいた。<br><br>フェデリコ博士という科学者は、俺達が人類最後の希望<br>そう言った。１０ギガのパソコンに<br>リアルな大容量ゲームを入れてもまともに動かないが<br>ファミコムの様なデータなら、たいてい動く。<br>コンピューターの進化と共に人間は低スペックになり、<br>データのやり取りでは勝てない。<br><br>９人なら「アイオーン」を超える。<br>そうその機工士は言いやがった。<br>ゲームは得意だ、「人類を救ってやる。」<br>９人で誓いを立てた。<br>・・・・・・・<br>・・・・・・・<br>・・・・・・・<br>・・・・・・・<br>真の目的、時間遡行による宇宙の救済こそが<br>「アイオーン」の願い。<br>その真実も知らず、フェデリコ博士の<br>意図に乗ってしまった我々。<br>しばし盲目な羊となろう。<br><br>プロローグ　はじまりの大陸　終わり。<br><br>大長編ＲＰＧ００９　＜砂漠の王女＞<br><br>研究所の転移装置で跳ばされ、<br>ふと気がつくと、そこは砂漠だった。<br><br>道路が石畳であることや<br>馬車のわだちがあるところから<br>中世の雰囲気が漂うが、<br>周囲が砂ばかりというのは<br>異様な光景だ。<br><br>傍の親友を見てみると、<br>その双眸を輝かせて、<br>こちらを見ている。<br><br>「なぁ、ここは２１世紀の日本みたいな<br>世界じゃあないだろう？、<br>ドラキチを出しても大丈夫じゃないか？」<br><br>「正直この世界（リージョン）に<br>５０メートルのドラゴンが存在しているとか<br>ありえんだろう。」<br><br>マテリアルな世界が消滅し、すべてがデータとなった<br>宇宙で何がどうなるかなどわからんが、<br>しょせん、仮想世界だからな。<br><br>こいつは、２１世紀の日本でさえ、<br>「竜に乗っていない竜騎士は差別される。」と発言し、<br>「始まりの大陸」では常識人に見えたこいつが<br>どんだけ性格破綻しているか理解してしまった。<br><br>「仮想世界だし、まあいいだろう。」<br>こいつと議論すると、論理性がないため<br>議論が成り立たない。<br>とっとと、ドラゴンに乗せて上空に行ってもらおう。<br>そのほうが面倒が少ないだろう。<br><br>「わかった、上空から偵察してくれ。」<br>ドラキチを出してやると、竜騎士・露原は<br>大喜びで上空へ飛び立っていった。<br><br>ついでに枠をひとつ消費し、スラリンも出してやった。<br>もっとも、俺はスラリンと日常的に交流できるが、<br>奴は愛するドラキチと会うことすら困難だからな。<br><br>俺たちはとりあえず、機工士のフェデリコの情報を頼りに<br>砂漠のオアシスの都市ラグーサを目指すことにした。<br>このあたりはセレスティア王国の領土で<br>覇権国家エスカ帝国と紛争中らしい。<br><br>遠くに目をやれば、山賊らしき集団も見える。<br>当然だが我々には近づいてこない。<br><br>ドラキチは体長５０メートルを超える極龍、<br>ウルティメットドラゴンだ。<br>複数の強力な魔法が使用可能、<br>防御は生物の域にない、<br>ＨＰ１００万オーバー<br><br>こんなものの飼い主に喧嘩を売るやつがいるとしたら<br>間違いなく自殺志願者だ。<br>俺を除けば、残りの８人にサシで極龍に勝てる奴は<br>いない。<br><br>竜騎士も上空を乗り回して、満足したのだろう<br>街に入るためにドラキチを回収しペットゲージに入れた。<br>後ろ髪を引かれるのか、寂しそうだが、<br>そこは無視する。<br><br>砂漠の真ん中の街なので、アラブ風かと思えば、<br>白亜の石の壁と石畳の綺麗な街並みだった。<br>例えるなら「イタリアのヴェネチア。」だ。<br>水路をうまく使い、水を有効利用している。<br>どうやら、遠方の山から地下の水路で、<br>引き込んでいるようだ。<br><br>「なぁ、お金はどうするんだ。」<br>黒魔道士（英島豊）が聞いてくる。<br><br>印旛が取り出したゲームの金は最低単位が金貨１枚だ。<br>金の含有量は３０ｇと言った所か。<br>おそらくは純金だから、１２万円相当だろう。<br><br>中世の基準なら、金貨は１２万円、銀貨は<br>銀自体の価値は３千円、領主の信用を含めると<br>５千円相当だ。銅貨は１７０円程度だ。<br><br>「金貨２６億枚って・・・。」<br>英島が計算して驚いた。<br><br>「げっ！３００兆円以上じゃないか。」<br><br>ちなみに実物財産の２１世紀初頭の<br>地球の価値は「４００兆ドル」程度だ。<br><br>「とりあえず、金貨は両替が必要だな。」<br>俺は両替商に足を向けた。<br><br>データのみの世界であるため、<br>「アイオーンシステム」の恩恵で<br>コミュに問題はない。<br>自動で意思を伝える、言葉の壁はゼロだ。<br><br>「金貨５枚だが、銀貨と銅貨に替えたい。」<br>両替商にそういうと、銀貨９０枚と銅貨６００枚が<br>返って来た。<br>領主が銀の含有量を調整する銀貨に比べ、<br>教会の発行する金貨は含有量が一定で、<br>値下がりも値上がりもしにくい。<br>両替商としてはごまかす余地が少ないのだ。<br><br>ちなみに現代のように　通貨は多く出回っておらず、<br>旅人などが使う、希少性の高いものだ。<br><br>お金はあるので、客引きは無視して<br>最高級の宿にとまることにした。<br>スライムはペットとして飼う者も多く、<br>問題はなかった。<br><br>腹が減っていたので食事のために外に出た。<br>宿に付設されたものもあるのだが、<br>市井の様子も知りたい。<br><br>「米はないのかよ～、ご飯食べたい。」<br>英島はぐちぐちと文句をたれていた。<br><br>「このパン、小麦じゃないよ。」<br>豆とトマトのスープはうまいが、<br>肉は香辛料も塩も香草も少なく、<br>ややにおいがきつい。<br>「まあ、けっこういける味だぞ。」<br>竜騎士はそう言ってがつがつ食っている。<br>９人分で銀貨２枚は、俺たち的には非常に安い。<br><br>装備のない奴に装備を作るため、旅行ガイドに近い<br>情報屋に金を払い、鍛冶屋の場所を教えてもらった。<br>店に入るとどういったものがほしいか聞いてきた。<br><br>「素材は鉄か銅だ。」鍛冶屋はそういった。<br>少し期待したが、ミスリルやオリハルコンは無い。<br><br>そこで、竜燐の鎧から取った素材と、<br>ドラゴンローブの革を使って作ってもらうことにした。<br>文明の進んだ別のリージョンで、チタン合金の盾<br>に細かい穴のついたものを依頼してそれをもってきていた。<br>そのリージョンで、作らなかったのは、竜燐の出所を聞かれたり、<br>盾の加工など目立つからだ。<br><br>すると鍛冶屋は不機嫌そうに文句を言ってきた。<br>「裁縫屋に行け。」<br>この世界で装備するフェイクの装備もほしかったので<br>俺たちは鍛冶屋で安い武具を色々と買い込み銀貨１０枚をわたし<br>その店を後にした。<br><br>裁縫屋は区画が違うので、急ぎ足で２０分ほどだった。<br>無事にチタン合金の盾に竜鱗を特殊カーボンの糸で縫いつけ<br>ドラゴンの革でチュニックとグローブを作ってもらった。<br>材料持込のため、手間賃は金貨１枚だった。<br>竜の革を譲ってくれと懇願されたが、それは断った。<br><br>店から出ると、アイテムで外見変更を行い、<br>竜燐の盾はキーホルダーに、チュニックはイヤリングになった。<br>いわゆる変身アイテムだ。<br><br>この世界は仮想世界であり、現実の地球の記録をベースにしているので<br>通常の人間は　魔法が使えるということはない。<br><br>魔法を使用するのには条件があり、空想でケーキを食べ、<br>それを実際の感覚で、甘くておいしいと感じなければいけない。<br>到底常人には無理だ。<br><br>宿屋の通路を歩いていると声をかけられた。<br>その人はセレスティア王国の女王の使者で、この町ラグーサの領主に<br>騎士団を貸してほしいといったのだが、ナシのつぶてだったらしい。<br><br>見事な装備を着ており、９人で１泊金貨３枚の宿に泊まる我々を<br>一流の傭兵だと思ったのだろう、声をかけてきた。<br><br>王都はエスカ帝国の侵攻を受け陥落寸前だという。<br>俺は使者の耳に口を寄せ、こう言った。<br><br>「あなたと同行している人物、王女殿下にお会いしたいのです。」<br><br>使者は、顔面蒼白になりながら、狼狽したが、<br>会えることになった。<br>俺たちは協力を申し出、あっさり承認された。<br><br>「たとえエスカ帝国軍を全滅させても、<br>新たな兵が、次々と送られてくるだけでしょう。<br>戦闘は無意味です。」<br>俺は現状を正確に明言した。<br><br>「我々は、滅ぶしかないと言うことですか。」<br>王女は大粒の涙を流し小さく呟いた。<br><br>「考えがあります。お任せを。」<br><br>「お願いいたします。」<br>そういうと王女は崩れ落ちた。<br><br>エスカ帝国の最精鋭３千は砂漠の都市ラグーサを目指していた。<br>王都はすでに落ち、王族は皆殺しにした。<br>完全に征服するには、逃げた王女を殺す必要がある。<br>国民の心を完全に折るのだ。<br><br>「敵兵は見えるか？」ルクス将軍は副官ピレスに聞いた。<br>王女は数人で逃げ出した。<br>領主が味方しなければおわりだ。<br>領主とて、王国が滅びたあと、次々に来る軍勢を<br>すべて滅ぼすなど不可能だ。<br><br>「閣下、おそらく戦闘にはなりません。」<br>「まぁ、そうだな」<br>進軍はのんびりしており、歩兵は談笑しながら歩いている。<br>仕方ないとはいえ　緩みきっている。<br><br>軍の先頭を行く歩兵はあるものを見つけた。<br><br>「％♯！％＄！」<br><br>そこからは一方的な虐殺だった。<br><br><br>002<br><br>「おぉ、かわいいな。ピンク色のスライムだぜ。」<br>「娘の土産にちょうどいいな。」<br><br>「ぴぎー！」<br>なんだ、人懐っこいな。<br>そう言って隣の兵士を見ると、顔が半分に割れていた。<br>「あれ？」、腹部を見ると大穴が開いている。<br>その兵士は、そのまま絶命した。<br><br>総合値８０億のスライムは　通常存在しない領域、<br>常識の外だ。少なくとも千軍万馬に匹敵する。<br>エスタ帝国の精鋭は統率を失い、逃げ惑った。<br>初級の火炎魔法は信じられない広範囲を焼き尽くし、<br>スライムの体当たりは、山の木々を数十本単位で<br>根こそぎなぎ倒す。<br>２９９８人がミンチやグリルにされた。<br><br>逃げたのは将軍と副官だけだ。<br>逃げたと言うより、スラリンが逃がすように<br>命令されていただけだ。<br>必死に馬を走らせながら、ピレスは考えていた。<br><br>スライム１匹に全滅。<br>そのまま報告すれば、確実に敵前逃亡で極刑だ。<br>道中ピレスは将軍を殺害した。<br>王都に戻るとピレスは、司令官の元に報告に行った。<br><br>司令官は驚きのあまり声を失っていた。<br>「全滅だと。。。地方領主の軍勢がそれほど強かったのか。」<br>副官ピレスは真実を告げれば、最低でも死刑、<br>そもそも、スライム１匹に敗北など、帝国の恥以前に<br>信用してもらえない。<br><br>「かの都市には、強力な魔物がおり、その数約１００万<br>奮戦するも将軍が戦死、この情報を持ち帰らねば、<br>帝国の存亡にかかわると考え、生き恥をしのんで<br>帰ってまいりました。<br>この命をもって償わせていただきたい。」<br>心ではそんなことまったく思っていないが、<br>そういう理由でないと納得しないだろうし、<br>ピレスが生き残る方法は無い。<br><br>「ふざっけるなぁ！」<br>竜騎士、露原イツキは　御門を殴打していた。<br><br>「いつからお前は、死刑執行人になったんだ？」<br>「軍隊といえ人だぞ、人が人を殺していいものか。」<br><br>この馬鹿は、消防士らしい発言をしやがる。<br>俺はこいつを説得するのは無理だと理解した。<br>なので殴られるままだ。<br><br>ほかの面々も、スラリンの作った生き地獄の痕を<br>見せられたときは言葉を失っていた。<br><br>竜騎士が　殴りつかれたのか　出て行くと、<br>俺はほかのメンバーに相談された。<br><br>「騙せたとしても一時的じゃないか？<br>エスタ帝国だって馬鹿じゃないんだ、調査するだろ。」<br><br>それは問題ない、おれは言い切った。<br>確かに一度に引き連れていける召喚対象の数は５体だ。<br><br>「それはコントロールできると言う意味であって、<br>テイムしたペットをリリースして野性に帰せば、<br>召喚枠は５にもどる。<br>郊外で試したが、１０体以上召喚できた。」<br><br>「野性に戻すのが前提なので、<br>１万体呼び出しても、野生のモンスターが<br>１万体いるのと同じだ。<br>当然、無抵抗な一般人を襲うし、<br>退治しなければいけないだろう。」<br><br>「１回に召喚できる数は　５体<br>１万体のサモンには２０００回かかる。<br>どうやら、ゲージに収納したペットは数に含まれない。<br>しかし、召喚物はペットではないので<br>ゲージ収納できない。<br>当然、２０００回召喚する必要がある。」<br><br>この世界はデータで構成されているため<br>データである召喚物が、時間の経過で消えることはない。<br><br>逃がした将軍と副官も、「スライム一匹に敗北しました。」<br>などと報告するほどあほではないはずだ。<br>そんなことをしたらスライム相手に兵士を皆殺し、<br>見殺しにして全滅し、指揮官だけ逃げてかえったと言うことだ。<br>笑いものにされた挙句、拷問されて死刑だろう。<br><br>もちろん、９人で敵軍を全滅させれば早いのだが、<br>おれはともかく、全員、「正義の味方だ。」と言う意識だ。<br>野蛮な軍隊であっても、人間を一方的に皆殺しにするなどできない。<br>少なくとも竜騎士は、そんなことを言えば、怒り狂うだろう。<br>実際、この間のスラリンの行動に竜騎士は、おかんむりだ。<br><br>エスカ帝国は、明らかに「悪」なのだが。<br>かの帝国が、魔王軍やアンデット、モンスターならどんなに<br>良かっただろうか。<br>召喚するといっても、善なる存在ではまったく意味がないだろう。<br>生かしたまま撤退させるのだ。思いっきり、ビビッてもらわないといけない。<br>軍隊を殺して、竜騎士と殺し合いなどしたくない。<br>ある程度見た目のおぞましい、悪っぽいやつではならない。<br>そもそも召喚物は迷惑にならないように、<br>後で殺すのだ。スライムのようにかわいくて弱いなど論外だ。<br><br>エスタ帝国は俺たちが考えていたより早く行動にでた。<br>密偵が街を見たが、平和そのものだった。<br>ピレスは、ラグーサに魔王軍がいなければ、<br>尋問され、拷問された後、殺される予定だった。<br><br>おれは、竜騎士のやつがなにかの偵察だと言わんばかりに<br>エスタの軍８０万の前にあらわれて、<br><br>巨大な極竜の咆哮で、脅している間に<br>せっせと、ゲームの中にいたレベルアップよろしく<br>３０秒で４体召喚し、５日間召喚を続け、５万近い<br>悪魔やアンデットのある程度上位の種族を召喚した。<br><br>とうぜん、コントロールできないので、<br>森の奥、木をみんなで切り倒し、<br>できたスペースに押し込んでいた。だが、しかし<br>竜騎士のやつの予想ははずれ、エスタ軍は進撃してきた<br><br>おれは、森で火事を起こし、モンスターの大群を<br>エスタ軍に差し向け、ぶつけることに成功した。<br>俺の召喚したモンスターはレベル５０～６０、<br>それが５万、レベル１から最大でも７程度の人間<br>８０万など一瞬で溶けるだろう。<br>するとなんと、竜騎士がエスカ軍を守るべく、<br>召喚したモンスターを倒しまくっているではないか。<br><br><br>その瞬間、極竜は竜騎士を食らった。<br>首から上がない竜騎士の体は地面に落下し<br>無残に晒された。<br>単独で上空にいたため、油断したのだろう<br>不意打ちだったため、あっさりとしたものだった。<br>極竜が竜騎士の乗り物ではなく<br>おれのペットだと言うことが完全に意識から抜け落ちていたようだ。<br>総合値９９億の極竜は俺の命令に素直に従った。一撃だ。<br><br><br>「陛下　良い知らせと悪い知らせがございます。」<br>宰相のハラルは言った。<br><br>皇帝も悪い知らせなど聞きたくないだろうが、<br>言わざるを得ない。<br><br>「エスカ帝国軍の精鋭８０万が壊滅しました。<br>臣下の報告によれば、魔王軍らしき数万のモンスター<br>が森の奥部から出現し、それらには<br>槍も剣も通じず、弓なども無意味。<br>何も出来ずに壊滅しました。」<br><br>「その強さからして、そこいらを徘徊している<br>野生のモンスターなのは明白。<br>やはり魔王軍の仕業では？｣<br><br>皇帝もそう思いたいがありえない。<br>エスカ帝国は魔王ザルエラに忠誠を誓っており<br>その尖兵である。この世界を統一し<br>魔王様に捧げるために戦っているのだ。<br>このことは魔王様に報告が必要だろう。<br><br>「それでは良い知らせのほうを。」<br><br>「こちらへお越しください。」<br>宰相は敬意を持って呼びかけた。<br><br>「私は　竜騎士ロマノフと申します。」<br>そう、００４の露原樹である。<br><br>「竜騎士殿はエスカ帝国正規軍がモンスターの群れに襲われて<br>いるところに単騎突撃し、打ち破ったのです。」<br>宰相は興奮気味に話す。<br><br>竜騎士の戦力の是非が、宰相の命運を決めるだろうからだ。<br><br>皇帝は彼の強さがどの程度かはわからないが、<br>連れているドラゴンは人生の中で見た最強の存在だろう。<br>魔王様以上とも思える。<br>今後の戦いに竜騎士ロマノフが居れば<br>頼もしいこと、この上ない。<br><br>宰相はあることを思いついた。<br>「皇帝陛下、久方ぶりに　御前試合など開いては<br>いかがでしょうか？将兵や民衆も戦意が高まりますし、<br>敗北から目をそらせます。」<br><br>なぜなら、<br><br>皇帝は言葉をさえぎる様に言った。<br>「この竜騎士殿が、モンスターを滅ぼさなければ<br>将兵は生きては居ない。<br>エスカ精鋭８０万を上回る戦力、という訳だな。」<br><br>「その通りでございます。さすがは陛下。」<br><br>宰相は振り向くと竜騎士ロマノフを覗った。<br><br>「いいぜ、ちなみに死んでも、その女、<br>大賢者ネーデルが居れば蘇生できるからな。<br>遠慮なくやらせてもらう。」<br><br>白魔道士ネーデル、咲耶蘭はご随意にとのことだ。<br><br>帝都は久しぶりに沸いていた。<br><br>伝説の竜王　バフォメット　と　極龍　ウルティメットドラゴン<br>の対決だ。<br>種族的にはバフォメットが圧倒的に強いだろうが、<br>竜騎士に帝国兵が勝てる見込みはまずない。<br>１勝１敗で盛り上げるつもりだろう。<br>民衆の多くはそう考えていた。<br><br>竜騎士に　「挑戦」するのは　４騎士の一人<br>土のニグルムだ。<br>土のと付いているだけあって　武器は槌<br>ハンマーだ。槍との相性は悪い。<br>まず、勝つ見込みはないだろう。<br><br>酒場や賭場での掛け率は<br>バフォメット１に対しウルティメットドラゴンは３<br>竜騎士１に対し、ニグルム１０００だ。<br>これは、国を救ってもらった恩も理由かもしれないが。<br><br>おれは、ペットである極竜の感覚を通して、監視していた。<br>遠隔監視などではなく、ペットや召喚物の見たもの聞いたものは<br>リアルタイムで情報が入ってくる。<br>寝ているときも入ってくるので、うっとおしい。<br><br>竜騎士は裏切ったわけではなく、瓢箪からこま、棚から牡丹餅か、<br>彼自身の意志でエスタ軍のために孤軍奮闘したため<br>王都に赴いたとき、エスタ軍の将校に感謝され、<br>本国の皇帝に謁見が可能になったのだ。<br><br>御前試合は壮絶だった。<br>バフォメットがブレス　フレア　物理攻撃などあらゆる攻撃を<br>正面から仕掛けるも、無傷。<br>爪で眼球に命中しても、瞬きすらしなかった。<br>戦闘力１０億の雑魚ウルティメットドラゴンと<br>戦闘力５０００の竜王バフォメットの差だ。<br><br>御門ヤマトの性格からして、わざと負ける気はないようだ。<br>バフォメットも戦闘力５０００、常識外の強さだが、<br>初期ステータスのウルティメットドラゴンと同程度だ。<br>竜王ゆえに同格が居らず、戦うことが無かったのだろう。<br>体力の衰えた、年老いた竜に過ぎない。<br>極龍が神速で羽ばたくと、衝撃波で<br>バフォメットは粒子と成って消えた。<br><br>これは、大賢者ネーデルでも蘇生できない。<br>御門に責任があるとはいえ、俺からも<br>皇帝に謝罪しておこう。<br>ドラキチをよこせとか言われたら嫌だからな。<br>竜騎士は緊張感ゼロでニグルムとの戦いを待っていた。<br><br>人間対人間、本物の武器は使わない、練習試合だ。<br>そもそも、ニグルムに勝機などないのだ。<br>真剣勝負は死ねと命ずるのと同義、<br>さすがに皇帝もそこまではいえなかった。<br><br>ニグルムが死ねば、戦意はがた落ちだろう。<br>メリットがない以上しない。<br>それが結論だ。<br><br>竜騎士は、殺すつもりはないが、少しお遊びをすることにした。<br><br>竜騎士は槍で戦わず、ニグルムの持つ<br>イミテーションの槌で戦うというのだ。<br>当然槌の戦い方など知らない。<br>周囲の民衆が見ても、一目瞭然だ。<br><br>踏み込むニグルム、槌を振り下ろした瞬間<br>ニグルムは槌と槌をぶつけ、竜騎士が無手になったのを見た。<br>元々一撃目を棄てる目的の振り下ろしと、<br>武器として使い続ける目的で、二撃目を考慮した<br>戦闘では、ニグルムに勝ち目は無かった。<br><br>竜騎士ロマノフは腰に刺した、木製の棒２本を<br>左右から、そっと首に当てるのだった。<br><br>その瞬間、ニグルムは負けを認めた。<br><br>わーっっつ！！<br>観衆は最高に盛り上がった。<br><br>竜騎士ロマノフは大賢者ネーデルに近づくと聞いた。<br>「あの竜王とか言うの蘇生できる？」<br><br>「白魔法では無理ね。時間魔法なら可能かも。」<br>竜騎士は極龍、ドラキチに近づくと、<br>（遠隔で時魔法よろ）と言ってきた。<br><br>俺は召喚士のスキルとして、召喚物を通じて<br>魔法を行使できる。<br>ドラキチに麒麟とフェニックスの能力を上書きし<br>魔法を放った。（リバーシ）（レイズ）<br>同時に２つの魔法の行使だ。<br>少し疲れるが、自分の責任でバフォメットを<br>滅殺したのだ、しかたない。<br><br>ネーデルは一芝居打つと、バフォメットは蘇生した。<br>ぉおおおー！！<br>観衆は沸き立ち、皇帝の戦意を高める目的は<br>達成され、無事御前試合は終わった。<br><br>２日後、帝国軍は３０万の兵力をセレスティアへ<br>向けた。<br><br>５<br><br>俺たちは、見込みのありそうな若い将校を鍛えていた。<br>将来のセレスティア王国を統治するためだ。<br>王女は、なんと言っていいか箱入り娘で期待できない。<br>俺たちが王国を救ったとしても、彼女が女王で支えるものがいなければ<br>国家は崩壊し、俺らの努力は水泡と帰す、それは避けたかった。<br><br>しかし、その王女の幼馴染の若者、クルセスは名門の出自と言うわけでもなく、<br>王女と結婚できるとは思えない。<br>方法は彼を、「救国の英雄」にするしかないだろう。<br>別のリージョンで、経験値を取り出し、移し変えるアイテムが売っていた。<br>取り出した経験値の半分が宝玉となり結晶化する。<br><br>俺たちは余剰経験値を結晶化して、ある程度所持していた。<br>とりあえず、２万経験値ほど彼に与え、レベルを２０程度にした。<br>もともと、彼は武術の才能には優れており、おそらく帝国軍相手なら<br>無双できるだろ<br><br>「よお、ドラキチ。明日、王都へ攻め込むぞ。<br>よろしく頼むぞ、相棒。」竜騎士殿はそう言って、<br>巨大なドラゴンに話しかけていた。<br>「グルルル」ドラゴンが反応してうなっていた。<br>帝国の兵士はこんなにも強大な力を持つドラゴンの<br>友人になっている竜騎士殿を敬愛していた。<br><br><br>帝国軍は王都オーベルニンヘンへ向け進軍していた。<br>しかし、道中で罠や待ち伏せに会い、<br>兵士の犠牲はあまりにも大きく、士気は低下していた。<br>脱走も相次ぎ、どう考えても情報が漏れているとしか思えなかった。<br>スパイ狩りを徹底したが、それらしき様子もない。<br>すでに軍は疲弊しきった１０万だけになっていた。<br><br>皇帝ヘカトン３世は、それでも帝国軍の進軍を辞めなかった。<br>皇帝自らの指揮を執り、帝国の存亡をかけて侵攻しているのだ。<br>ここで撤退しては、帝国が滅びる。<br><br><br><br>帝国軍８万と王国軍５万がぶつかることとなった。<br>世界史上最強とも言っていい竜騎士ロマノフが居るのだ<br>負けるはずがない。そう思っていたのだが、<br>戦略や戦術は素人らしく、あっさりと敵軍に敗北した。<br>いくらなんでも、１人で５万人を殺すのは無理だろう。<br>そう思っていると、敵将のクルセスに捕縛されてしまった。<br><br>王国軍は戦意旺盛、帝国軍はあっさりと敗北した。<br>竜騎士のことを除けば、予想はしていた。<br>もはやこんな帝国などに未練はない。<br>魔王ザルエラ様から大いなる力を頂いたのだ。<br>リージョンコアの力を！<br>そう言うと皇帝は巨大な化け物へと変化した。<br><br>「リージョンコア確認、通常攻撃は無意味。」<br>盗賊の印旛が言った。<br>「怪物ヘカトンケイル、完全物理魔法無効属性。」<br>盗賊は、「看破」スキルを使うとそういった。<br><br>おそらく、戦闘力１０億の攻撃も効かないだろう。<br>これは困ったと、竜騎士を除いた８人で相談した。<br>とりあえず、全力で物理攻撃と魔法攻撃をぶっ放つも<br>ダメージはないようだ。<br><br>（リージョンコア、恐るべし。）<br>全員がそう思った。<br><br>問題ない、そういったのは黒魔道士「英島豊」だ。<br>「超伝導って知ってるか？」<br>俺は代表していった。<br>「一応は。」<br><br>「やつがすべてを無効にするとしても、時間と空間が停止した<br>時空間では無効化できない。もしそれが出来たら、<br>見捨てて逃げるしかないがな。」<br><br>黒魔道士「英島豊」はヘカントンケイルの前に立ちはだかると、<br>極龍退治で鍛えた　「十八番」やつのカンストスキルレベルの<br>氷魔法を放った「フリーズ！」、「アブソリュートゼロ｝。<br><br>すると、時空間が局所的に止まった。<br>「ヘカトンケイルが無効化できるのは、<br>形がないから、でも時空がとまれば、固着化される。」<br><br>その盗賊の言葉を合図に、<br>魔道士はＭＰの尽きるまで、<br>戦士や召喚士は体力の尽きるまで<br>全力で殴った。<br><br>「いや、それ意味ないから。」<br>英島はそう言うとＭＰを分けてくれという。<br>「サンダー」そう言うと<br>黒魔道士　英島は　電撃を食らわせた。<br>全員のＭＰが尽きるまで。<br><br>「時は動き出す。」<br>某漫画の主人公のような台詞を吐いた、<br>英島は超伝導で抵抗ゼロのエネルギーが<br>時空間の固定化が溶けた瞬間に<br>怪物ヘカトンケイルの内部で<br>爆発的なエネルギーを生み、<br>巨大な閃光と共に、怪物は爆散消滅した。<br><br>皇帝ヘカトン３世の消滅後、彼が魔物だったという<br>噂が広がり、跡継ぎも居なかったため<br>エスカ帝国は皇帝を廃し、共和制と成った。<br>エスカ帝国でカリスマでもあった、竜騎士ロマノフの<br>協力もあり、王国は旧帝国と講和条約を結び、<br>王女と結婚した、クルセスは王太夫となり、<br>平和な世界が訪れた。<br><br>リージョンコアを無事回収した俺達は、<br>研究所に戻り、次の世界に旅立った。<br><br>続く</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267310.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:21:29 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記３（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>産業創世記　第１章　４部　（一時休憩）<br><br>私の祖先の故郷はジパングと言う、<br>初代から伝わる。私の名は　マリヤマト　と言う。<br>故郷の真の名前を忘れぬため、奴隷としてつれてこられた<br>初代マリヤマトは、持ち主に願い、肌の色が白いため認められた。<br>肌が白く、大人になっても子供のような顔をしている<br>私の祖先たちは、男が生まれると奴隷として<br>子孫を残すことなく死に、女として生まれると<br>愛玩道具として一生を過ごし、白人との間に<br>子をなした。ここは新大陸の農場だ。<br><br>かつて、倭で雨乞いを行う あまの と言う一族がいた<br>周易で天祐とある これは 雨のことである。<br>記述では、魏志倭人伝が初出だが<br>後漢書には 倭の一国に 金印を送ったとある。<br>志賀島で発見されているため、確かであろう。<br><br>あまの 「雨の統べる」仮名文字のなかった大和では<br>天の、天の皇すめら すなわち 天皇と変化した。<br>元々、蘇我の大臣おおおみ 物部の大連おおむらじ<br>に対し、大王おおきみ と表現されていた。<br>天皇と言う呼称が定着したのは、大化の改新以降だ。<br>この立役者は、中臣が藤原を賜り、日本で一番栄えた一族だ。<br>天皇と縁戚になり、天皇と藤原は最古の盟友である。<br><br>武門の頭領と言えど、自身が天皇になることはできず<br>平家は藤原を真似、姻戚に基づいた政治をした。<br>しかし、悪知恵の働く公卿に関与されるため<br>安定性に欠け、結局、壇ノ浦で滅んだ。<br>幼子の安徳天皇は天の叢雲と共に海底へ沈んだ。<br>その母も共に。<br><br>その後、同じ過ちを繰り返さぬため、片田舎だが<br>天然の要塞、鎌倉に、源氏は征夷大将軍として<br>開幕した。源氏は朝廷の身分制度でも自由度が高く<br>北海道や東北の平定と言う名目で将軍を名乗り<br>あくまで、武門の元締めであることを強調した。<br><br>伊勢神宮にはカゴメ紋と言うものが刻まれている。<br>あまり公にはされないが、戦国時代あるユダヤ人への<br>感謝の印らしい。ユダヤ教徒の足跡も各地に残っている。<br><br>ジュスト、オーガスト、アンドレ、プロタジ、パウロ、<br>バルトロメイ、ペテロ、ダメオン、メルキオール、レオ、<br>フランシス、ジョアン、そして、ガラシャ。<br>わが名はペトロカスイ。聖地エルサレムより<br>わが祖国へ贈る。<br>主の名の下に誓いを立てたかたはらよ。<br><br>敬愛するジュスト生まれ出ずる以前<br>ガスパール・ヴィレラ、グネッキ・オルガティーノ<br>両名は、アレキサンドロ・ヴァレンティーノの命の元<br>遥か彼方東方の地ジパングを我が物とするために。<br>ひそかに暗躍していた。<br><br>当初、私はキリスト教は、富める者も貧しきものも<br>たとえ罪びとだとしても幸福になる権利を持ち<br>主の前では平等である。それは、閉塞された社会の<br>底辺に生きるものにとって抑圧された魂からの解放に思えた。<br><br>その裏に、ヴァチカンとスペインローマ帝国、<br>それに敵対するオスマンユダヤとフッガー家の<br>全面対決など知る由も無かった。<br><br>これは権力者と、社会の底辺に生きるものとの戦い<br>という虚飾にまみれた名目の表の歴史に隠された<br>真実の物語である。<br><br><br>ユダヤ人フィーメルト・ブランデンブルグは<br>京の都で秘密裏にある貴族と会っていた。<br><br>「室町幕府の崩壊、そして多くの民草が殺されている<br>現状、戦国の世になった日の本、<br>その原因を知りたくはありませんか。」<br><br>ある方<br>「わらわは単なる飾り。そのようなことを話したとて<br>なんとなる。実権を握っているのは一条ぞ。」<br><br>&nbsp;「ええ、存じております。パウロのことですね。」<br><br>&nbsp;「わらわは一条がにくいのじゃ、ザビエールの<br>甘言に乗せられ財政難を理由に他国へ金銀を<br>流しおったのじゃ。」<br><br>&nbsp;「はい。そのために彼の国のナスィ公が私を<br>あなたの許へ遣わされたのです。」<br><br>&nbsp;「彼の国、オスマントルコ大帝国のスルタン・<br>&nbsp;スレイマンの命で、キリスト教徒と対立していた<br>者たちが、ついに立ち上がったのです。」<br>&nbsp;<br>「してそなたは、わらわに何を求むる？」<br><br>「長くキリストに追われている者の「綾」となってくだされ。」<br><br>「この国ヤマトに、キリストのごとく君臨するのです。」<br><br><br><br>&nbsp;京都・清水寺<br><br>&nbsp;「おい、おまえ。異国のものだな。近年、妙な<br>信仰を流布し、各地で一揆を起こしているそうではないか。」<br><br>　通り掛りの武士は、異人を見て不快げな声をかけた。<br><br>&nbsp;「いえいえ、我々は虐げられた民草が幸福になる為に<br>戦っているのです。」<br><br>異国の騎士はこの男の言うことが理解できなかった。<br>イスパニアでは、民衆に分け与えない領主貴族は<br>暴徒に襲われ、殺害されることも多い。<br>暴徒に襲撃され生命を落としたくない。<br>故に分け与える義務がある。慈善ではないのだ。<br><br>&nbsp;「何を言う。一揆を起こす故、農作物が取れず<br>貧しくなるのであろう。貴様の国は何なのだ。」<br><br>フェイゴはこの頭の悪そうな男は、スペイン語で<br>話はできないだろう。それがわかった。<br>かといって、こちらも日本語は片言だ。<br><br>「ふっ、侍はフェンサーにはまず勝てませんよ」<br>故に、力づくで黙らせることにした。<br><br>&nbsp;半身で構えれば、守備面積が減り、<br>&nbsp;刀は重いため両手で持たざるを得ない。<br>正対して、首や心臓を晒す武術に負ける気はしなかった。<br>そして、親指の爪をはいでやると男はこういった。<br><br>&nbsp;「ほう、多勢に無勢、それに開けた場所でも<br>通用するというのか？」<br><br>そうそれが男の答えだった。やはり野蛮人だ。<br>決闘のルールも知らないとは。命を助けてやったのに。<br>爪を剥いだだけだぞ。<br><br>&nbsp;「なんと！！一騎打ちの決闘に負けたというのに一味で<br>殺しにかかるのですか。無頼のやからとなんら変わりませんよ。」<br><br>&nbsp;「プライドは無いんですか？」<br><br>&nbsp;「死人に口無しと言うのを知らんのか、もはや語る言葉なぞ無い。」<br>そういうと１０人以上で取り囲んできた。<br><br>&nbsp;「主に頼まんのか？この状況でも神がお前を<br>守るというのだな。では試してやろう。」<br><br>「ごめんなさい。土下座します。」<br>西洋人は現実主義者だ。こんな異国で恥も外聞もない。<br>そもそも、礼儀知らずはあちらだ。豚を相手に虚勢を張っても<br>仕方がない。<br><br>「少し待ってください、彼はこの国の文化を知らんのデス。」<br>そういうとイスラム教徒であろう商人が顔を出した。<br><br>&nbsp;「おお、アラブから来た商人か。」<br>武士が言う。<br><br>&nbsp;「初めまして、このような異国の地で、ヨーロッパ<br>&nbsp;の人間に会うのは珍しいのでネ。」<br><br>&nbsp;「なぜ助ける。イスラムの人よ」<br><br>&nbsp;「立場は違えど、信じる神は同じ。アラブに住むものは<br>それほどキリストを嫌っておりませン。」<br>&nbsp;<br>&nbsp;「この国には雨を統べる尊がおり、国を治めて<br>&nbsp;いるのデス。」<br><br>&nbsp;「彼らはキリストを嫌っているのではなく。<br>&nbsp;神を信じ死を恐れぬ精神を恐れるのデス。」<br><br>&nbsp;「死を受け入れることがこの国の誇り<br>　しかしそれは死に行くものにのみ許される名誉デス。」<br>&nbsp;<br>「お侍さん、彼は僧侶、仏に仕えるものと同じなのデス。」<br>そういうとアラブの商人は武士に笑いかけた。<br>そして、小判を数枚、ねじこんだ。<br><br>&nbsp;「彼らの国では一騎討ちで逃げるのは、<br>&nbsp;　一族ひいては国の恥なのデス。」<br><br>&nbsp;「彼はいわば仏門、殺しても名が穢れるだけ<br>　お引取り願えンでしょうカ？」<br><br>&nbsp;「まあ、確かに坊主殺しはな。。。」 「行くぞ。」<br>爪を剥がれた武士はフェイゴに蹴りを入れると去っていった。<br><br>&nbsp;「彼らは将軍の家来ではないのか？」<br>フェイゴは問うた。<br><br>&nbsp;「ええ、まあ。しかし、この国には政治を行う<br>　部門の将軍、祭祀を行う雨を統べる巫子がいるのです。<br>&nbsp;　神の名を唱え相争う我々とは違うのです。」<br><br>あめをすべるみこと、大和言葉では<br>あま、の、すめら、ぎ、の、みこと、である。<br>天、、の、、皇、、、、の、、命、、つまり天皇である。<br><br>「ソバ　というものを食べに行きませんか。」<br>そういうと、ブランデンブルグ公の従者ザロモン・シフ<br>は、フェイゴに手を差し伸べた。<br><br>それを聞き、すぐにユダヤ人だとわかったが、フェイゴは<br>それで、軽蔑できるほど腐った精神の持ち主ではなかった。<br><br>「あなたは、ユダヤ人なのか。」<br>フェイゴは言った。<br><br>「なぜわかりました。ああ、そうですね。<br>スペイン語を流暢に話すイスラム商人など珍しいですからね。」<br>シフは気にしない様子で、ソバ屋まで案内してくれた。<br><br>「私はザロモン・シフ、おっしゃるとおりユダヤ人です。<br>あなたは、わたしを裏切り者、敵だと思われますか。」<br>シフはそういうとやさしく微笑んだ。<br><br>「いや私も、イエズス会、テンプル騎士の一人だ。<br>ユダヤ人に罪がないことは知っている。それに<br>白人系のユダヤ人は、イスラエルと何の関係もない<br>難民だ。非難するいわれなどない。」<br>そういうと、フェイゴはシフにソバを奢らせてもらった。<br><br>「私はこれから、越後から入荷する女奴隷を<br>５０人ほど仕入れなければならないので、失礼いたします。」<br>シフはそういうと、小さな友情の証だと言い、宝石の指輪を置いて行った。<br><br>フェイゴは、急いで追いかけると、自分も何か渡そうと思い<br>日本で手に入れた、高価な数珠を差し出した。<br>「これはブレスレットらしい、受け取ってくれ。」<br><br>遥か東の国で芽生えた、ユダヤ人とイエズス会士の友情であった。<br><br><br>新大陸　南東部　アウグスタン<br><br>「ウバ、早くしなさい。」<br>トーマス・ダンカン・ハミルトンはとても優しい男だと思われていた。<br>あの人、奴隷の荷物を持っているわよ。それに歩く速度を<br>奴隷に合わせるなんて、なんて寛大な紳士。<br><br>正直、オラバ族のウバ・サウルは内心怒り心頭だった。<br>これでは、まるで奴隷が旅行に連れまわされているようには見えない。<br>残念なことに、いや、幸いなことに、主人トーマスはスペイン語を話せない。<br>ウバはスペイン語、フランス語、英国語、ラテン語、アラビア語は<br>読み書きはできる。発音はともかく、内容を正確に伝えると言う意味では、<br>ほぼ完璧に話せるので、トーマスの通訳をしていた。<br><br>アウグスタンからイングランド領の中心地ボストンまでは遠い。<br>現在なら航空機や高速鉄道もあるが、この時代は馬車だ。<br>もちろん、９０００ポンド以上の財産があるので、郵便馬車などではなく<br>貸切のそれなりの良い馬車だ。<br><br>それなりの、と言うのは何年かかるかわからないので、ウバが馬車の質を<br>ケチったためだ。黒人海賊、偽者アンボニー一味はいざとなれば助けてくれるだろう。<br>しかし、９０００ポンドあるとはいえ、それは生活するのに困らない。と言う意味で<br>何か大きな事態が起これば足りなくなる可能性がある。ゆえに、ウバは慎重だった。<br><br>トーマスは家族を全員殺され、死にかけていたところを、黒人海賊のラッカムに<br>助けられたらしく、年齢のせいもあるが天涯孤独の身の上だ。<br>ラッカムもアンボニーもそれも計算に入れているのだろう。<br>トーマスはまだ１０歳のウバをわが子のように思っているようだ。<br><br>新大陸は荒野そのもので、時折見かける、原住民のインド人にはらはらしていた。<br>ウバは生き別れになった父から教わっていたので、弓は得意だが、<br>こちらの弓は少し練習したが、故郷のものほどなじんでいない。<br>トーマスも元海賊だけ会って、それなりに強いが、インド人の大群にあえば<br>何をされるかわかったものではない。<br><br>新大陸は、大英帝国本土から重税をかけられ、やせた土地で食料も少なく<br>飢えていた。ただでさえ食うに困っているのに、大英帝国本国は<br>監獄船に寿司詰めにして白人奴隷を送り込んでくる。<br>森林では木を切り、掘り起こし、開墾しなければならない。<br>荒野でも、土地が肥えるまで時間がかかる。<br>それが何を起こすかと言うと、原住民を襲い土地と畑を奪い取るのだ。<br><br>もちろん黒人奴隷は、人間ではなく道具なので何も望めないが、<br>白人は成功すれば、奴隷から農場主に大出世だ。<br>ウバよりもトーマスのほうが心配だ。<br>原住民のインド人に会えば確実に殺されるだろう。<br>そもそも、何語を話すかすらわからないので、交渉も無理だろう。<br><br>３日ほど馬車に揺られていると、行く手を白人の女性が<br>さえぎっていた。まだ幼さの残るその白人は奴隷のようだった。<br>何より着ているものが粗末でみすぼらしい。<br>特に鎖などで拘束されている様子はなく、現地に溶け込んでいた。<br><br>御者は、どうしますかとトーマスに尋ねてきた。<br>トーマスがウバに聞き、その後トーマスが御者に命令すると<br>不自然だが、わざと英語の話せないスペイン出身の御者を<br>雇ったのだ。ウバは意思を伝える。<br><br>その女奴隷はトーマスにスペイン語で話しかけてきた。<br>「私は農場で働いていた、マリヤマト、農場がインド人に襲われ、<br>逃げてきた、助けてください。」とスペイン語で言っている。<br>その農場は、もとはインド人から奪ったものらしい。<br><br>「あなたは、農場主の家族か？」ウバがスペイン語で聞くと、<br>即座に否定した。農場主に囲われていた慰み者の奴隷らしい。<br>このまま放置すれば、殺されるか野垂れ死にだ。<br>トーマスは意見するつもりはないらしい。<br>ウバに決定権があるのは明白なのだろう。ウバはそれほど冷酷ではない。<br><br>「乗りなさい。」そう短く言うと扉を開けて乗せた。<br>別に臭くはないし、ノミやしらみもいないようだ。<br>ウバはトーマスと話した後、御者に説明し短く指示を出した。<br>すぐにまた馬車は走り出し、女はヤマトのムツと言う国を始祖に持つ<br>異邦人の末裔だと言う。<br><br>彼女はキリスト教徒らしく、命を救ってくれたお礼に<br>トーマスの奴隷になると言っている。それと指輪を取り出して<br>トーマスに渡した。六芒星の彫られたものでしっかりしたつくりのものだ。<br>安物ではないだろう。トーマスはそれをウバに渡してきた。<br>奴隷がするのも可笑しいが、ウバはその指輪を嵌め、マリヤマトに<br>礼を言った。与えないものは何ももらえない、常識である。<br><br>夜も遅くなってきたので、一向は馬車を止め、<br>暖かい食事を取るため火をおこした。<br>トーマスは狭い船の中での調理になれた元海賊らしく、<br>こんな場所でもうまくナイフを使い、信じられない<br>精度と速度で料理を作り上げた。<br><br>４人で、食事の後のコーヒーをたしなんでいると、いきなり<br>ウバの目の前に、矢が突き立った。距離的にはかなり離れている。<br>矢の角度と勢いでわかる。インド人のもののようだ、<br>はじめは襲われるのかもしれないと思ったが、<br>どうやら流れ矢のようだ。<br><br>しばらくすると、ドドドドドという音と共に、馬の蹄の音が聞こえてきた。<br>インド人を警戒して、馬車の下に隠れていたが、<br>トーマスが話しかけると、その一団は非常に友好的だった。<br>彼らは、フランスから住民の護衛のために派遣されてきている傭兵らしい。<br>トーマスが彼らのことを同胞だといった。ハイルドギース騎士団と言うらしい。<br><br>「おい、こんなところで焚き火をしたら危ないぞ、死にたいのか。」<br>そういうと騎士はトーマスの肩をトンとたたいた。<br>トーマスは、暖かい食事をしたくて、自分たちが軽率だと謝罪していた。<br>トーマスがお礼を渡そうとすると、それをさえぎり断った。<br>「見返り目的で、仕事をしているわけではない。報酬は雇い主にもらっている。」<br>そういうと朝まで数人が警護してくれるらしい。<br><br>書物にでてくる昔なつかしの騎士団のようだ。<br>おかげで安心してゆっくりと休むことができた。<br>翌日日が昇ると馬車は再び、ボストンへ向けて出発するのだった。<br><br>昨夜、矢が飛んできた方向へしばらく進むと<br>一面焼け焦げた畑が広がっていた。<br>　<br>かぎ慣れない臭いをいぶかしむウバを傍目に<br>トーマスは何の臭いかすぐに気がついた。<br>人間の焼ける臭いだ。<br><br>「これは、何かの畑？」<br>ウバは小さな粒々の実がついた作物らしきものを<br>拾い上げると、遠くから拳銃を構えた白人が<br>近づいてくるのを発見した。<br><br>トーマスは何も知らない旅人を装い、<br>「やぁ、何があったんだい？」<br>天気でも聞くような軽い口調で<br>声をかけていた。<br><br>こう言った場合、沈黙が金ではない。<br>沈黙は緊張を呼び、緊張は事件の元だ。<br><br>「トウモロコシ畑が焼けてね、<br>所有者がいないから売りに出されるらしい。」<br><br>「どうだい、あんたいい身なりしてるが、<br>興味はないかい。」<br><br>ガンマンは、いかにもと言う感じの<br>ゴロツキだ。<br><br>「トウモロコシ？それはいったいなんですか。」<br>トーマスが聞いた。<br>ウバもはじめて聞く作物だ。<br><br>「あぁ、自由市民が食べるパンは畑で作るだろ、<br>だが畑で働く奴隷も食べるものが必要だ。<br>それがトウモロコシだよ。」<br><br>「向こうでオークションが開かれる。<br>もっとも、焼けてしまったので<br>売り物は奴隷が大半だがね。」<br><br>売り物は畑が焼ける前は、<br>この畑の所有者だったのだろう。<br>ひどいものだ。<br>金塊を黒人奴隷に食べさせて輸出する<br>ろくでなしと同類だ。<br><br>ウバもトーマスも、ボストンへ向かう旅人<br>買い物をする気などないが、<br>後学のため、オークションとやらのチケットを<br>購入した。<br><br>チケットは、１シリング　５０００円ほどだ。<br><br>この畑から逃げてきたであろうマリーヤマトは<br>一人の少年を見ると騒ぎ出した。<br>息子らしい。<br><br>すると騒ぎに気がついた、<br>ごろつきのボスらしき輩がやってきてこう言った。<br>「こいつはこの畑から逃げ出した商品じゃないですか？<br>購入していただけるならけっこうですが、<br>それなりに金がかかりますぜ。」<br><br>明らかに足元を見ているが、<br>トーマスもこう言った輩には慣れているらしく、<br>こう切り返した。<br><br>「うちの馬車の前にこの女が飛び出してきてね、<br>馬車の一部が壊れてしまった、<br>この女の所有者があなただというなら、<br>その修理代金を支払っていただけるのでしょうね？」<br><br>それなりに高額な馬車を見たボスらしき男は<br>「いや、この女はうちの所有物じゃない。<br>支払う義理はないな。」<br>そう言うと、あきらめてオークション会場に戻っていった。<br><br>「荷物運び程度には使えるでしょう。<br>それに私は歳です。あなたに使える従者を<br>購入するのも将来のためには良いのでは？」<br>トーマスは同情や哀れみではなく、<br>ウバの未来を見据えて、母子を従者とすることを<br>進言した。<br><br>ウバは黙ってうなづくと、<br>マリーの息子を２ポンド、２０万円くらいで購入した。<br>母子はトーマスに泣きながら感謝していた。<br><br>その子はマリーとナバホ族の男の間に生まれた<br>ハーフらしい。<br>マリーは白人の農場で飼われていたが、<br>インド人、いやナバホ族の襲撃で開放された後、<br>その男、夫の畑で手伝いをしていたらしい。<br><br>トーマスもこれからボストンに向けて旅をするために<br>原住民ナバホ族の言葉が話せ、<br>なおかつ恩を感じる原住民は役に立つと考えている<br>ようだ。<br>特に安全面において非常に役が立つ。<br><br>まだまだ、旅は続きそうだ。<br><br><br><br>「ウバ様はなぜ奴隷の振りをしてまで<br>大英帝国を目指すのですか？」<br><br>買ったばかりのマリーの息子「ホーク」は<br>自分と似た境遇に在ったのに、<br>大金を手にしてロンドンを目指す<br>ウバに興味深々だった。<br><br>「黒人に金塊を食べさせて、<br>死体を大英帝国に運んでいたのよ。」<br><br>「伝染病で乗組員がほとんどいなくなったところで<br>アンボニーに救ってもらったの。<br>オマケに大金をもらってね。」<br><br>「金というのはそれほど貴重なのですか？」<br>ホークは不思議そうに聞いた。<br><br>「当たり前でしょ。」<br><br>「本で読んだ限りでは、金は教会が管理して、<br>純度が一定だから、すべての基準になっている。」<br><br>「いえ、この地でも金は取れますよ。<br>川にごろごろ転がっています。」<br>ホークの何気ない言葉にトーマスがあんぐりと<br>口をあけている。<br><br>「昔からです。最近はトウモロコシ畑を襲い<br>家畜を奪う凶暴な人たちが来たので、<br>誰も口にはしませんが。」<br><br>「むかし、ヴァイキングといわれる人たちが来たとき<br>その価値を教えてもらい、交易していましたから、<br>どの程度の価値かは、知っています。」<br><br>「大英帝国というのは、そのヴァイキングの人たちの子孫が<br>治めている国家なのでしょう？」<br><br>「今は違うわ。」<br><br>新大陸に大量の金が存在していることを<br>アンボニーたちに伝えたかったが方法がない。<br><br>もしこのことが広く知られれば、全ヨーロッパから<br>一攫千金を夢見るものが押し寄せ、<br>原住民は全滅するだろう。<br><br>「金のことは誰にも言わないほうがいいわね。」<br>ウバはそう忠告した。<br><br>伝説、そう伝説。<br>かつて、白い狂人の軍隊が、聖地エルサレムを蹂躙したとき<br>救い手となった、我が祖　オラバ･サウル。<br>遠い言い伝えがある。<br><br>「御印を見せよ。もう一人の王に。」<br><br>ウバは背中にある言葉の意味を知っていた。<br>それは、アラビア語を学んだときに調べた、<br>旧約聖書トーラーの文字だった。<br><br>「この近くに宝石商はありませんか？」<br>ウバはユダヤ人に連絡を取る最速の方法をとった。<br><br>幸い、マリーからもらった宝石もある。<br>怪しまれはしないだろう。<br><br><br><br><br>宝石商で鑑定を受けると、宝石商は怪訝な顔をして<br>こちらを見定めていた。<br>「呪いの宝石ですね。」<br><br>「どちらで手に入れられたのですか？」<br>マリーが事情を話すと理解はしたようで、<br>それ以上、問い詰められることは無かった。<br><br>ウバは宝石商の耳に口を近づけると<br>こう言った。<br><br>「我が名はウバ･サウル、オラバ族の酋長。<br>ユダヤの王　ナスィ　に連絡したい。」<br><br>「本気でおっしゃっているのですか？」<br>そういうと宝石商は従業員に指示をして<br>即座に閉店すると奥へ導いた。<br><br>「証は？」<br><br>「左目がそうだ。」<br><br>ウバは隻眼だった。<br>生まれたときに繰り抜かれたのだ。<br><br>「本物のようですね。」<br><br>店主は蝋で封じた手紙をすばやく作ると<br>トーマスに渡した。<br><br>現在、大英帝国には　公女　シオンナスィ<br>が来訪している。そちらにも連絡を取るべきだろう。<br><br>２週間後にこちらへ来ていただければ、<br>大英帝国までの道案内をさせていただきます。<br>そう言うと、店主は深々とこうべをたれた。<br><br><br><br><br><br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267222.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:18:15 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記２－Ｂ（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>産業創世記ギデオン　第１章　監獄の住人　第３部(仮完成)<br><br>「選ばれし戦士よ　奮いたて。忌まわしき異教徒に奪われし、聖都を奪還せよ。<br>　神の名を騙り、神の名を奪う、そして我々の父と子より与えられた<br>豊かな大地　清らかな水　そしてキリストの血と肉を再び我らの手に。」<br><br>教皇ウルバヌス２世は老いて衰弱した体に鞭打ち、神に祈った。<br><br>すると、数千にものぼる、王侯貴族の子弟が一様に吼えた。<br>「神の御心ままに。」<br>神託は下された。<br>百年以上の歳月をかけ、人の手で積み上げられた、一つ一つのレンガが<br>まるで人々の心と魂に、呼応するかのように打ち震えていた。<br>騎士たちの着る　鋼鉄の鎧と鋼鉄の盾、鋼鉄の剣が、そして鋼鉄の槍が、<br>光り輝き、聖堂に高く美しい金属音を奏でていた。<br><br>西暦１０９５年　フランス・オーヴェルヌのクレルモン・フェランにて<br>イスラム帝国を屠る為、イエスキリストの聖なる騎士団がエルサレムへと向かった。<br><br>熱狂していた。フランス各地から集まった群衆は、魂が枯れんばかりに。<br><br>当時、イベリア半島はイスラム帝国の勢力圏であり、フランスとの国境に<br>位置するノエル村は、イスラム商人と香辛料などを取引する市場があり<br>普段は大変な賑わいを見せている。しかし、イスラムへ聖騎士団が向かった翌年<br>イスラム教徒は危険を察し、近づくことはなかった。しかし、愚かなユダヤ人は<br>いつもどおりに商売を始めていた。<br><br>はじめは些細な祝いの祭りであった。聖騎士団の圧倒的な進軍に酔いしれていた<br>フランス民衆は、高らかに喝采を上げ、踊り狂っていた。<br>中世において、飢えて死ぬものも少なくなく、働くと言うことの対価は<br>食べると言うことである。娯楽なども祭りくらいだ。<br>一人の男が立ち止まって見た。そして言った。「異教徒がいるぞ。」<br>「敵だ。」「敵だ。」祭りといっても、戦争で異教徒を滅殺する祭りだ<br>誰ともなしに、褐色の肌の異教徒　ユダヤ人を引きずりまわし、言った。<br><br>「裏切り者のユダがいるぞ。」「サンヘドリンの手先だ。」<br>人々は手にパンを伸ばす棒を持ち、鎌や、ナイフで滅多刺しにした。<br>ばらばらに引き裂いて燃やし尽くした。そう、ヒンノムの業火に<br>投げ入れたのだ。<br><br>ユダヤ人の受難、ナチスによるホロコーストへの始まりの詩であった。<br><br>原初の地で、イスラムの民と轡を並べた、ミズラヒ１２万と<br>スファラディム３０万の民は、必死の抵抗もむなしく、天へと昇った。<br>聖地エルサレムが占領され、老若男女すべてを蹂躙し聖絶された。<br>それはこれより３年後であった。幸い、教皇ウルバヌス２世の耳に<br>この知らせが届くことは、ついになかった。<br><br>かつてのギリシャ・ローマ帝国、ヴァチカンによるエルサレム帝国<br>の誕生した瞬間であった。<br><br>「オラバ、オラバはいるか。この書簡を持って、メッカまで走ってくれ頼む。」<br>オラバはイスラムで最も足の速い男であった。砂漠地帯を横切るため<br>馬だけでなく、足の速さも重要だ。「わかった、何があろうとも届ける。」<br>遥か彼方から来た、漆黒の戦士よ、我らの命運は　そなたに託そう。<br><br>それから１ヶ月もたたず、周辺のイスラムの村落はすべて壊滅<br>一人残らず、皆殺しにされた。聖絶されたのだ。<br><br>旧約聖書時代に遡る、２千数百年前、大いなるチグリス河と<br>ユーフラテス河の湖畔にて誕生したメソポタミア文明。<br>そしてそれを発祥とする暗殺を生業とするアサシンギルド、<br>東方マニ教、グノーシス教団、その正体は１２使徒の末裔であった。<br>ペルシャ帝国の裏の顔である。王位継承に破れ、国を追われ、<br>奴隷階級となったが、この時代、斥候、諜報を任務とし<br>イベリア半島に赴いた彼らは、後の世で、シオニズム運動と呼ばれる<br>ものの起源となる、「シオンの組織」を創設した。<br>魂の地、聖地エルサレムを蹂躙され、同胞を罪なくして殺された、<br>彼らユダヤ人は兵士、「ソルダ」であった。<br><br>イスラエル建国へと到る、千年のシオンによる戦いがここに始まった。<br>アメリカ独立戦争の後、和睦の使者としてルイ・ブルボンに送られた<br>王女マリーアントワネットの死を掌り、その真相を知るものも、また<br>ここにいたのである。深淵の闇の中、イエスの妻マリア　そしてその末裔も<br>ここにいた。ペルシャの支配下ケノボスキオンの地より、正統後継者なる者、<br>皆等しく、原初の地への回帰を求め、この地に降り立った。<br>そう、裏切りのパウロへの　「復讐の刃」として、<br>そう、そして、「我が子らへの、死神として。」<br><br>ソフィア・コレイオンより。<br><br><br><br>産業革命期、土地に縋る地方貴族と農民は対立し、その農民を支援したのが<br>この組織、シオン組織であった。いわゆる共産主義である。その支援を受け<br>誕生したのが、コーサノストラであり、マフィアだ。<br><br>これに対し、新興産業に基づき労働者から搾取する資本家、<br>これに反旗を翻す目的で設立されたのが、左派キリスト教社会主義である。<br>救世軍、赤十字社、赤軍として戦争を創造し、戦場を駆る高貴なる鷲であった。<br><br>教会は巨大な諜報網であり、お互いに民衆を監視させた、連座させた。<br>教会による告白とは、報酬を伴っており、密告であり、<br>しかして、貧しきものの日々の糧　唯一の行き場所、救済者であった。<br><br>日本にも日本人を奴隷として売りさばき、ドアに十字架の印で知られる<br>イエズス会。上杉謙信、伊達政宗、高山右近、明智光秀などがいる。<br><br>彼らの目的は生産効率が悪い小麦と言う、キリストが与え給う<br>粗末な一切れのパンを求める、貧しいヨーロッパに全世界の<br>富と食料を集約することにあった。<br><br>珍しいものを持って行き、支配者と取引した。<br>高価な奢侈品が、多くのアジア・アフリカ・アメリカの一般民衆の<br>日々の糧を奪っていった。戦国が到来し、イエズス会の略奪と支配<br>それにより、暗黒の時代が到来した。過酷な飢饉に人々は口減らしの<br>名の下に第三市民階級として、奴隷として売られていった。<br><br><br>「被告、ジェニファー・ペインを５シリング７ペンスの窃盗の罪により<br>極刑に処す。」裁判官は、彼女ケルト人特有のにおいを忌み嫌うかのように<br>ハーブの香りを大きくその胸に吸い込むと、ゆっくりとこう告げた。<br><br>この当時、英国国教徒以外は公職につけず、当然この判事もＷＡＳＰだ。<br>また、再審請求権もなく、聖職者を名乗れない。<br>運悪く、アメリカ大陸への奴隷切符を手に入れることできなかった<br>彼女を待つのは、過酷な死だ。<br><br>彼女の不幸を嘲笑うかのような、面白半分で見物に来る観衆の注目の中<br>１８歳の少女は、２児の前で焼き殺され、刑場の露と消えた。<br>今日、この日は、１７６１年１０月１７日。<br><br>ジェニファー・ペインの亡骸は、身寄りの無いものの集う、パプテスマ<br>と言う新興の再洗礼派の教会へと埋葬された。<br>幸い２人の子供は、その教会の孤児院が引き取った。<br><br>下町の一角で死刑執行を目撃した、知り合いの老女は涙を流しながら<br>「ジェニー、子供を食べさせることすらできずに、パンを盗んだだけで<br>殺されてしまうなんて。」そう言って、嗚咽をあげていた。<br>この町だけでも、一週間に５０人以上の万引き法での死刑が行われていた。<br><br>そう、法が法であるがために。<br><br><br>ヘアリング商会、大英帝国でもっとも大きな資産を持つ<br>企業である。良い悪いにかかわらず、どんなことでもする。<br>よく言えば便利屋、悪く言えば極道である。<br><br>通常なら、ストリートランナーの手に負える相手などではない。<br>相手は巨大権力であり、こちらは街を走って回るただの民間人だ。<br>見ない振りをして、いや実際に見なければいい。それだけだ。<br><br>しかしこの組織も、ロンドンだけで百以上の古物商から苦情が来る。<br>おまけに時計会社は最高にぶちぎれている。<br>「何だ、この時計は。」「このくそったれな時計はなんだ。」<br>懐中時計を買った富裕層も、自分の全財産をはたき、<br>あるいは借金して購入した労働者も、懐中時計が壊れる。<br>資本家も、労働者も時間が守れず。工場がとまり、不当な残業が増える。<br>ロンドン中が大騒ぎだった。<br><br>古物商や質屋は、詐欺だと訴えてくる始末だ。あまりの保証金額の<br>大きさに、英国最大の商会も、非常に困っている。<br>組織員の何人かは死刑だろう。<br><br>マンチェスターで５万カラット受け取った無能な、ハンスはすでに河の中だろう。<br>最も確かめもせずに時計会社に渡したことにも問題がある。<br>あまりに多く作りきれないので、スイスに輸出までした。<br><br>スイスの異変に気がついた、ユダヤ貴族がハッペンハイムに<br>使者を送ったが、そいつも河の中だ。<br><br>しかし問題がある。ストリートランナーのスパイを取り逃がしたのだ。<br>名前はわからないが、異常なほどの剣術体術の使い手だ。<br>とても素人とは思えない。<br>しかもなぜか、味方であるはずの、ハーシー卿が、<br>その女を調べようとすると、「ぶち殺すぞ。」と錯乱する始末。<br>あの様子では、逆らえばこちらが消されるだろう。<br><br><br>謎の水死体がテムズ川の岸に上がった。<br>ストリートランナーが呼び出され、パトリシアとボードウィンが<br>出っ張ってきた。「よぉ、自警団の紅一点が遅刻とわね。<br>ボードウィンが軽い口調で言った。<br><br>パトリシアは、半狂乱でとめるハーシーを説得しようとしたが<br>あきらめるしかなかった。強制的におとなしくさせて<br>何とかこの時間にやってこれたのだ。<br><br>パトリシアは普段は肉屋＝ブッチャー、をやってたが幼いころ貴族出身の<br>&nbsp;カヴァネスを仕事とするものに、 育てられたためインテリではあった。<br>その為、こうやって、ストリートランナーとして、警察のような仕事もやっていた。<br><br>「野盗にでも襲われたんだろう、上流で争って飛び込んだってところか。」<br>この時代確かに野盗や殺人は珍しくない。<br>命の価値が低いからだ。だが、剣術に長けたパトリシアから見て<br>それは素人が斬りつけたように、到底見えない。プロだ。<br>暗殺者の斬りかたに近い。ボードウィンには言うべきでは無いだろう。<br><br>ボードウィンが不思議そうに、ある男を見つめていた。<br>そしてその少年に言った「なんだい、あんたらは。」<br><br>「我々は、フリーメーソンの調査団、ハッペンハイム家の要請を受け<br>やってきました。あなたがたの手に負えるものではありません。<br>おひきとりを。」少年は言った。<br><br>ボードウィンはいらいらするこの少年に言った。<br>「何の根拠でそういうんだ。」<br><br>「この服を見てどう思いますか。」<br><br>「単に金持ちなんじゃないか。」<br><br>「泥だらけですが、ここを見てください。家紋でもなく<br>デザインで複雑な刺繍がされている。服まで剥ぎ取る野盗は<br>珍しいですよね。貴族階級は重要な暗号を運ぶとき<br>服の刺繍に託したそうです。何らかの機密保持のため<br>重傷をおっていながら、河に飛び込んだ。死を覚悟して。<br>そう考えます。」<br><br>「ふ～ん、だから貴族の服はゴテゴテしてんのか。」<br><br>「王族が他国に嫁ぐとき、服は調べられるか、取り上げられます。<br>お分かりいただければ、けっこうです。」<br>ハイヤーハムシェルはボードウィンにだけ立ち去るように言った。<br><br>ボードウィンは説明に納得したのか、迫力に押されたのか<br>帰って行った。ハイヤーハムシェルは河の水で手についた泥を<br>流しながら言った。<br><br>「私は、田舎者のハイヤーハムシェルと申します。<br>少々お話をお伺いできないでしょうか。」<br><br>「以前、大量の宝石を持って、医者を訪ねてきたものがいるのですが、<br>姿をくらましました。彼の妹さんはいらゃっしゃいます。<br>身の安全は保証しましょう。」<br>ハイヤーハムシェルは事情が知りたかった。<br><br>「私はあなたと初対面では無いですよね。」<br><br>「そうですね、マンチェスターのゲットーでお会いしました。<br>５万カラットの宝石袋をいただいたときです。」<br><br>「ほう、隠そうともしないとはね。どう考えても死刑ですよ。<br>まあ、いいでしょう。事情がありそうですし。」<br>ハイヤーハムシェルは続けた。<br>「彼らが何者なのか、目的は何か、ぜひ知りたいですね。」<br><br>「お断りします。私たちアイルランド人がこうなったのは<br>あなたのお仲間、ギデオン家の初代当主が原因と言われています。」<br>パトリシアも譲る気はなかった。これは自治組織の存続にかかわる。<br><br>かつて、南海バブル事件において、たしかに投資した地方貴族は敗け<br>都市資本家のホイッグは勝利した。労働者を搾取する資本家<br>ホイッグ、そのイメージはぬぐえないだろう。<br>しかし、イングランド銀行の所有者たるハンタギュー公爵家が<br>指一本動かすことがなければ、何も為せはしないのだ。<br>それを、この女は理解していなかった。同じカソリックそれゆえ<br>己が目を曇らせていた。だが、ハイヤーハムシェルにとって<br>それは自明の事だった。<br><br>「率直に申し上げて、故オックスフォード卿は嵌められたのです。<br>ハンタギューそして、神聖ローマ帝国にね。なぜ、ハンタギューが<br>ハイルドギースを国内から掃討したか。」です。<br><br>「オーストリア継承戦争には、２人の英雄がいました。<br>一人はフランスのプリンツオイゲン。もう一人は<br>大英帝国のジョンチャーチル。彼らは、オスマン帝国の<br>野望を阻止すべく奮戦した。しかし、ルイ・ブルボン側は<br>コレを良しとせず、ジョンチャーチルを閑職へ追いやり、<br>アン女王の信頼していたコクピットグループを解散させました。」<br><br>「アン女王は失意の内に・・・、そしてハノーヴァ朝が誕生し<br>宮廷ユダヤ人ハッペンハイムに乗っ取られた。」<br><br>「まあ、しかたありませんよね。オックスフォード卿は<br>我々、ユダヤ側の人ですから。」<br><br>パトリシアは絶句した。<br>少し落ち着こうとしたが、話が衝撃的過ぎて<br>頭が回らない。<br><br>しかしこれだけは言った。「協力するには条件があります。」<br><br>「幼い子供たちが数十人、新大陸に奴隷として密貿易で<br>売られていこうとしています。監獄船は悲惨です。<br>助けてください。ご存知かもしれませんが、ハイルドギース騎士団は<br>精鋭の優秀な騎士を育てるため子供のころから育てます。」<br><br>「じつは、今回の事件の発端はケルトの仲間割れか<br>それに近いこと、そう考えればつじつまは合います。<br>内部犯でなければ、少しづつも売れた。我々に売るかもしれない。<br>現金を持たないのに、宝石と妹を残して消える。<br>すぐ逃げるべき理由があった、と言うことでしょう。」<br><br>「わかりました、協力しましょう。」<br>ただ、ハイヤーハムシェルはそういうと<br>いくつかの言葉をつむぎぶつぶつと言い出した。<br><br>「ヴァセロンの時計にもやはり、 傷物の宝石の時計があった。<br>これは偶然にしてはできすぎ、ヴァセロンの所有者はヴァチカン、<br>コミティーの所有者はモンタギュー、と推測されます。<br>産業革命にとって、時計は命、ブルボン・ローマともに血眼に<br>&nbsp;なるわけですね 、かれらは、新大陸の交易で、宝石＝懐中時計を金銀に<br>交換している様子。」<br><br>「パトリシアさん、あなたとマンチェスタのゲットーで一緒だった<br>彼、殺されました。おかしいですよね。単なる野盗では<br>報復がこんなに迅速なはずは無い。内部犯ですね。」<br><br>マイヤーはそういうと最後にこう言った。<br>「とりあえず、作戦を立てましょう。ゲットーにご同行願えますか。」<br><br><br><br>豪雨の雨　深夜。<br><br>「ここに閉じ込められているのか、浮浪児は。」<br>ハイヤーが言った。<br><br>「はじめまして、フランクフルトの貧民に生まれ、彼らと同じく親を殺され<br>８歳にして、哀れオッペンハイムの下僕の、ハイヤーハムシェル。違うかね。<br>浮浪児がどうなるか知らぬわけでもあるまい、慈善だよ慈善。<br>親も無い、家も無い、金も無い。こんな大英帝国に彼らは何も求めていない。<br>ハイヤーハムシェル、かつての君と同じだ。」ハーシーは言った。<br><br>８歳のころがフラッシュバックして、ハイヤーハムシェルは<br>少し動揺した。<br><br>「君たちがやっているように、強い憎しみを持った同胞を<br>教育し仲間にしている。彼らの未来を摘み取ったのは君たちではないか。<br>だから新世界へ。」<br><br>「行ってどうする。同じことが繰り返されるだけだ。」<br>ハイヤーハムシェルは怒鳴った。<br><br>「そんなことはない、奪われる側から、奪う側になれる。」<br><br>何か回りくどい。ハイヤーハムシェルは違和感を覚えながらも、<br>トラウマから思考がとまる。<br><br>「まるで君じゃないか。祖国奪還はオックスフォード卿のご遺志。」<br>ハーシーは言った。<br><br>「これが、ヴァチカンの陰謀だとわからないのか。彼らは<br>ノルマン王家の存在など認めない。」<br>ハイヤーハムシェルはかろうじて答えた。<br><br>「違うな、ひとつになろうとしている。大英帝国と言う強大な<br>敵を得てひとつになろうとしている。<br><br>ルイ、そして　ハプスブルグが。聖イエスキリストのご遺志だよ。<br><br>消えるのは貴様たちだ。」<br><br>ハイヤーハムシェルは準備していたものに火をつけた。<br>爆音と共に、監獄船は動き出した。<br>だが、ハーシーの姿はどこにもなかった。<br>何かがおかしい。<br><br>進め　進め　このボロ船が。<br><br>子供たちを救出するとハイヤーハムシェルは言った。<br>「まだ新世界へ行きたいか。」<br><br>子供たちはうなずいた。<br><br>「そうだな、自由市民としてなら行かせてやろう。」<br>ハイヤーハムシェルは言った。<br><br><br>数日前　ゲットー<br><br>「狭い上　ろくなおもてなしもできず申し訳ない。」<br>ハイヤーハムシェルは言った。<br><br>「いえ、お構いなく。それよりなぜ私にそんな情報を。<br>単なる親切とは思えません。人質ですか。」<br>パトリシアは聞いた。<br><br>「いえ、私個人としてはハイルドギースは真の敵ではない。<br>ローマカソリックこそ真の敵。この国に再び平民の王を<br>テューダー朝、若しくはクロムウェル。それが理想です。」<br><br>ハイヤーハムシェルとしても茶番に付き合うのはいやなのだが<br>ケルト社会、ハイルドギースの中心人物、彼女とコネは作るべきだろう。<br>そう考え道化になることにした。<br><br>「そこで計画ですが、子供は反乱など起こさず、教育して<br>長く使役できます。いい環境にいるでしょう。高値でしょうから。<br>おそらく船の上部にいます。しかし、私は監獄船そのものを<br>動かして、奪ってしまおうと考えています。各個を回収するより<br>効率的でしょう。」<br>「彼らも必死に追ってくるでしょう、そこで雨にぬれた帆に<br>火薬と小麦粉を混ぜたものを吊り下げて爆風を起こします。」<br><br>「故に決行は雨の日です。」<br><br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267195.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:17:13 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記２－Ａ（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>第１章　監獄の住人　第２部 (仮完成)<br><br>フワッ、一陣の風が吹き抜ける。<br>上空を飛ぶハゲタカの一羽が落ちてきた。コムラ・オラバは弓の名手であった。<br>コムラは弓を射ることはとても好きだ。だが、生き物を遊びで殺す事はいけない。<br>ハゲタカは見事に羽を射抜かれ、バタバタともがいていた。<br>「ほら、よしよし、すまないな。」そういうとコムラは矢をはずし<br>ハゲタカを逃がしてやった。<br><br>我々はオラバ族という、内陸で農業をしながら暮らしていた。<br>ただ、コムラには酋長として生まれた以上、趣味のみに生きるわけにはいかない。<br>海に近いところに住んでいたものたちは、コムラの１０代以上前の世代から<br>金や宝石と交換し、部族同士が戦争で勝つために武器を<br>競うように集めていた。「白い人」はそのうち金や宝石を掘り出すために<br>彼らを武器で脅して道具として使い、危険な山の坑道で働かせた。<br>最近では、土地も名誉も権力も白い人にすべて奪われ、<br>彼らの祖国イングランドで、同じようなものを大量に作るようになり<br>人間自体が売り物として連れて行かれるらしい。<br>だがコムラにとってはどうでもいい、彼らは人を殺すために武器を買い<br>殺しあって、奴隷になってしまったのだ。誰も殺すなと誰も教えなかったのか。<br>他の部族は、物として売られ、飢えに苦しみ、ずっと働きっぱなしだ。<br>海沿いに残ったもので部族間の争いが起き、その結果滅んでしまった。<br><br><br>今年５歳になる娘が一人いる。妻はこの子を産むときに亡くなった。<br><br>コムラは外部からいろいろなものが入ってくる事はよい事だと思っている。<br>コムラの部族は、武器など買わずに文字の書かれた質のよい書物を<br>集めていた。直接、白い人に接触するのは危険なので、家畜と交換に<br>他の部族を通じて、集めていた。別にコムラのために集めているのではない。<br>娘のためだ。白い人が彼らより強いのは、彼らより広い世界を知り<br>多くの知識を持っているからだ。<br><br>コムラの遠い祖先に、砂漠を渡り、白い人と戦って帰ってきた者がいた。<br>ヨーロッパと言うところから来た鉄の塊の戦士がアラブのイスラム戦士と<br>戦ったらしい。鉄の戦士は凶悪で残忍、狂っていたと伝えられている。<br>その兵士たちは、白い人であった。住民を皆殺しにして回ったらしい。<br><br>初代オラバはエルサレムから帰った英雄であり、<br>その足の速さで伝令を務め、勝利に貢献し、鉄の戦士を弓で多く殺した。<br>そして、遠い国で姓を与えられ、コムラは意味も知らず<br>名乗っている。その初代オラバは、白い人、鉄の戦士が来たら<br>決してかかわるなと、一族の掟に定め、オラバ族は白い人がやってきたとき<br>掟に従い土地を捨て、内陸の荒野に移り住んだのだ。<br>初代オラバは正しい預言者だった。<br><br>初代オラバはこのあたり一帯を治める　王であった。<br>だが旅に出る事を選び、もどってきたときは、異邦人として扱われた。<br>コムラの一族には秘密の名前がある。初代オラバは叙勲を受けるとき<br>イスラムの酋長からサウルと言う姓を賜った。<br>娘、ウバには彼らの文字アラビア語でサウルと刺青を入れた。<br>コムラは娘とともに平穏に日常を送っていた。娘は５歳だが<br>英語を学びつつある。会話を学ばせるために<br>白い人の愛妾となっていたが捨てられた女を一族に入れた。<br><br>初代オラバの予言は正しいだろう、かかわってはいけない、<br>だが向こうからかかわってきたらどうするか。<br>将来オラバ族を率いるであろう娘ウバには武力は期待できない。<br>だから、多くの知識と聡明な頭脳を与えたかった。<br>もはや、この大陸のどこに逃げても、白い人、虐殺の狂人はやって来る。<br><br>産業革命期の真っ只中、細々と炭鉱で働くものたち、<br>そして、細々とそれを監視するものたち。<br>前者はおおむね流浪罪のベイグランシーと<br>アフリカから連れてこられた道具かであった。<br>後者はゲットーから通う貧困ユダヤ人。<br>１日に３シリングで雇われていた。<br><br>ベイグランシーとユダヤ人は仲が悪く、彼らの多くは<br>ユダヤ人はブルジョアの手先と誹謗し、都市資本家の豚と呼んでいた。<br>道具達の扱いはひどく、鞭で打たれる、耳を削がれる、などは日常<br>死を持ってあてがわれる罰が多かった。最も炭鉱で生き埋めになり<br>苦しみながら死ぬよりは幾分かましであったが。<br><br>その日は珍しく、黒い道具の一人が脱走を試み<br>見せしめのために、ユダヤ人の手で縛り首になっていた。<br>この施設の予算は非常に脆弱で、脱走を阻むのは<br>低いフェンスと寝ぼけたユダヤ人の見張り程度だ。<br>しかし、抜け出しても外で生活ができるわけでもなく、<br>流浪罪で連れ戻され、殺されるだけだ。<br>なぜなら、道具達は真っ黒ですぐに見分けがつくからだ。<br>だから、道具達も頭がおかしくでもならない限り、従順だった。<br><br>実際に白人のベイグランシーも連れてはこられるのだが<br>すぐに逃げ出すので、１週間もいるものはいない。<br>彼らは、ユダヤ人が黒人を道具として迫害していると言う<br>プロパガンダ政策の一環として、実行されている。<br><br>往々にして言われる事だが、なぜ近代のように<br>反乱を起こさないのかである。彼らの多くは諦めていた。<br>故郷はあまりに遠すぎた。この世にもっとましな場所が<br>あるとは思えなかった。<br><br>白人は言うのだ。農村部で飢えに苦しみ、５シリングで死ぬ。<br>監獄船の糞尿と奴隷船の黒い血、そのどこに違いがあるのかと。<br>帰るところなど結局のところどこにも無いのだ。<br>この世に楽園など無い、死を超越できるものこそ<br>真の幸福である。それが大方の道具の一致であった。<br><br><br><br>ある日コムラは、村人の一人が見つけてしまった、<br>災いについて相談していた。<br>村人の一人が、村から歩いてしばらくのところにある<br>川のほとりで、冒険家と思われる３人組を発見した。<br>他に死体が２つ、水汲み場に肉食獣が近づくのは厄介なので<br>コムラはその２人については村の墓地に埋葬する事にした。<br><br>問題は生き残った３人だ。１人は重症で、２人は無傷だ。<br>幸い、英国人らしくウバが、話を聞いていた。<br>白い人は子供が英語を話す事に驚く様子もなく、<br>この地にある程度慣れているものだろうと推測された。<br><br>「父上、話を聞きましたが、このあたりに金や宝石の鉱脈がないか<br>一攫千金を狙った、政府より派遣されてきた役人が一人、<br>現地のガイドが１人、傷の深いものは安静にさせております。」<br><br>無傷で生き残った、けむぐじゃらの大男が話しかけてきた。<br>ウバしか言葉を理解できるものがいないのだから仕方ないが<br>村の掟を破るわけにも行かない。<br>かといって無視しては心象がかなり悪くなるだろう。<br>仕方なく<br>「父上に許可を取ってきます。しばらく待って。」<br><br>「はぁ、許可～。」大男は顔を近づけると臭い息を吐きかけてきた。<br>「ふざけんなよ、黒いの。俺は酒が欲しいんだよ。」<br><br>「ちょっと待って、それはある。許可を取ってくる。」<br>ウバは急いで父のもとに行き、許可を取ろうとした。<br>しかし、コムラは酒を飲ませて、酔っ払って暴れられると困る<br>そういって、許可はできないと言った。<br><br>ウバは、それは分かるが１０歳かそこらの子供だ。<br>身長が自分の２倍、体重は４～５倍ありそうな<br>熊のように凶暴そうな男を怒らせるのはいやだ。<br><br>「申し訳ないですが、できません。」<br>あなたが酔っ払って暴れまわると迷惑なので<br>できないと言うことを説明すると大男は言った。<br><br>「傷を負って死に掛けてる神父に渡したいだけだよ。」<br>それでもダメなのかと、怒り狂う男は自分はしらふでも暴れまわると言い出す<br>始末だ。ウバは酒に眠り薬を混ぜて飲ませようと思った。<br>弓は好きだが、獲物を殺すのを嫌がる父は、矢に塗るための眠り薬<br>を持っていたはずだ。<br>「わかりました。お口に合うかは分かりませんが、お持ちします。」<br><br>父も仕方なく、承知してくれた。<br>ついでにあの男の言うとおり、神父にもお酒を持っていくことにした。<br>痛みで眠れないだろう。<br><br>傷ついた神父は、荒い息を立てながら横たわっていた。<br>おそらくこの傷ではこの村では助からないであろう。<br>ウバが神父に酒を塗り、口にお酒を含ませ。<br>「沁みますか、消毒のためです我慢してください。」<br><br>そういうと神父は少し驚いたように、こちらを向いた。<br>「君は英語が話せるのか。しかもかなり流暢だ。<br>こちらの人間は、まともな言葉が話せないと思っていた。」<br><br>「私は幼いころから、ヨーロッパの書物を毎日読んでいました<br>読み書きなら、ここの言葉よりも得意です。」<br>ウバは神父の傷口に薬草を塗りながら言った。<br><br>「あの大きな男性は凶暴で暴れるので、お酒を飲んで寝ています。」<br>ウバがそう言うと神父は必死の形相で英語でこういった。<br><br>「今すぐ逃げるんだ。何を聞いたかしら無いが、彼らは奴隷狩り、<br>しかもただの奴隷狩りじゃない、殺すのが目的だ。」<br>神父はそういうとまた、疲れたのか静かになった。<br><br>「何のために。殺しては価値が無いのでは。」<br>そうウバが言うと、あの男が寝ている今しかチャンスは無い<br>もう一人は、助けを呼びに行った。すぐに戻って来る。<br>彼らは、奴隷を使って　金を大英帝国に密輸している。<br>、食べさせて、死んだ死体から金を取り出すんだ。<br>そう、つぶやくように言うと神父は目を閉じた。<br><br>急いで、父　コムラのところへ走って行き、そのことを伝えた。<br>「そんな馬鹿な。それではあの男の護衛と案内を頼まれた村人はどうなる。」<br>そうウバにだけ言うと、村人全員を広場に集め、オラバ族酋長コムラは<br>全員に今日中に別の土地に移り住むように行った。<br>そして、酋長をやめ、娘ウバが次期酋長になると宣言した。<br><br>村は大騒ぎ、大男は寝ているうちに、何重にも縛り上げ<br>動けないようにした。<br>村人たちが無事この地を離れると父は弓を取り<br>ついていったものを救出する。そういって、ウバに後を託した。<br><br>父が旅立った後、村落のものは、洞窟を目指し急ぎ足で歩いていた。<br>ウバは長老に言った。「父コムラは、白い人と交渉に行った。<br>父は白い人の言葉が分からない、私は必ず戻る。」<br>そう言って、父の後を追うと告げた。村人は全員が反対した<br>ウバは、酋長は自分、そう言って、無理やりみんなを行かせた。<br>ウバを次の酋長にしたのは、コムラの人生最大の失敗だった。<br><br>父上、必ずお助けします。死なせたりなどしません。<br><br>そういうとウバは走り出した。<br><br><br>大西洋上の大海原を走るのは、ゴールデンハインド号、<br>船長の名はアン・ボニー。読者は思うだろう、偽物だと。<br>そう偽物と偽者だ。そのカリブの海賊アン・ボニーの肌は真っ黒だった。黒人だ。<br>嘘だと思うだろう、だが事実だ。カリブの海賊の３割強は黒人の乗組員。<br>当然、海賊船の船長もいる。むろん女性は珍しいが。<br>年齢は３０半ば、身の丈は８フィート　ボディービルダーのような体つきだ。<br>顔には大きな傷と白い刺青。あまり美人ではない。<br><br>「野郎ども、最近は　金より乗り組み人が不足している。<br>このままでは船が動かんぞ。」アンボニーは大きな銅鑼声を張り上げ<br>野郎どもを叱咤した。<br><br>海賊船といっても、金銀財宝を乗せ、強固な武装の護衛のいる<br>大型船を襲うなど無謀、そもそも船員が足りて無いので、<br>船を奪っても動かせない。そんな折見張りが、大声を張り上げた<br>「漂流船だー。」<br>漂流していると言うことは、向こうも船員が足りてない<br>何を乗せているかは知らないし、興味も無い。<br>だが、向こうもこちらを殺せば、船を動かせない。<br>悪いようにはならないだろう。<br><br>「よっしゃー、急いであの船につけろ。いそげー。」<br><br>この船は全乗組員が黒人。長期間奴隷として船を動かして、<br>生き残ってきた、手練だ。アンボニーはマルコムＸも真っ青な<br>白人が大嫌いな人種だ。白人がいれば殺すつもりだった。<br><br>アンボニーは、両親を殺され、村を焼かれ、若い者だけが<br>奴隷船に乗せられた。船の底に全員が座れるだけのスペースもなく<br>次々に死んでいった。幸運か不運か、そのうちに伝染病が発生し、<br>船員にまで被害が出たため、生きたまま、海に捨てられたのだ。<br><br>海を漂う塵にしか見えない彼らを幸運が救った。<br>旧型のキャラックが通りかかったのだ。<br>それが先代の船長、ラッカムだ。読者は思うだろう、偽者だ、しかも黒人だ。<br>その通りだ。年を取ったので、彼は彼女に船長を任せ、船の中で隠居している。<br><br>ゴールデンハインド号はゆっくりと、漂流する船に接舷した。<br>アンボニーは船の甲板を見渡すといった、いつもの通りにしな。<br>そういうと、アンボニーは言った。<br>「危害は加えないから、全員甲板に並びな。どうせ動かせないんだろ。<br>出てこないやつは敵とみなすから、殺すよ。」<br>全員が出てくると、銃声が６発した。それは白人の乗組員全員の<br>眉間を捉えていた。即死だ。残ったのは１人だけだ。<br><br>「助けてください。敵意はありません。降伏します。」<br>そう流暢な英国英語で話しかけてきたのは１０歳に満たない少女だ。<br>しかもネイティブ並みの発音。落ち着いている。度胸もありそうだ。<br><br>「なんだいあんたは。」<br>本人はそれほど自覚は無いが、潮風のせいでガラガラの<br>大きな銅鑼声を張り上げて、アンボニーはその少女を見た。<br>慰み者にでもなってたのか。<br><br>「私は、オラバ族の元酋長ウバと申します。提督殿の御慈悲にすがり<br>何でもいたしますので、御助命をお願いいたします。<br>我々の船には３００人分の金塊がございます。そちらも差し上げますので<br>お願いいたします。」<br><br>金塊３００人分。おかしな表現にアンボニーはすぐには理解できなかった。<br>だから詳しく説明するように言うと、ウバは答えた。<br>船に乗るときウバ以外の黒人全員が金塊を食べさせられ、英国へ<br>連れて行かれるところだったと。<br><br>「はぁ、乗組員の補給は無理そうだね。分かった乗りな。」<br>そういうと、乗組員に黒人の死体を解体して金塊を取り出すように命じた。<br><br>「ちょいと、聞くけど。目的地はどこだったんだい。」<br>アンボニーは、この船の本来の目的地を聞いた。この少女は異常なほど<br>英語がうまい。フランス語やスペイン語も話せるらしい。<br>ウバは聞いた限り、目的地は、イングランドだと言っていた。<br><br>「あんた、私たちと来る気あるかい。」<br>アンボニーはウバは将来、よい参謀になると思い、聞いた。<br>だが、ウバは予想もしない答えを返してきた。<br>英国に連れて行ってくれと言うのだ。<br><br>父は無事村人を助けたらしい。さすが、英雄コムラ・サウル。<br>だが娘の自分は、行き違いになり捕まってしまった。<br>ウバは５ヶ国語話せる。この機会に白い人の国を見てみたかった。<br><br>「はっきり言って、まったくお勧めできない。頭がおかしいのかと思うよ。」<br>アンボニーは始めこの娘は無知蒙昧なのだと思った。<br>だが彼女は、欧米の学問文学数学芸術すべてに非常に長けており<br>ほかの言葉が話せる乗組員に聞いたら、スペイン語もフランス語も<br>流暢だ。<br><br>この１０歳の少女は言った。我々黒人は、自分の土地を出ることなく<br>閉じこもり、何も知ろうとせず、売り買いされる荷物だ。<br>それでは何も変わらない。永遠に、だから知りたい、たとえ敵であっても。<br><br>アンボニーはこの１０歳の少女を心の底から気に入った。<br>「わかった、新大陸に送ってやろう。それとな、あの船から<br>いただいたお宝の代金、１割やろう。残った乗組員はお前だけだ。」<br><br>「感謝いたします。提督。」<br>アンボニーとウバ・サウルはフロリダに着くまで、いろいろとはなし<br>とても仲良くなった。アンボニーは思った。こいつならできるかもしれない。<br>自分ではできない何か大きなことを。<br><br>脆弱なる未完成な勇者ギデオン、シバの女王・・・<br>稀有な存在、その身体能力と武力により尊敬された黒人種。<br>しかし、いつからかキリスト教徒の道具となり<br>その底辺となっていた。<br><br><br>新大陸　ボストンの宿屋<br><br>「私は、トーマス・ダンカン・ハミルトン。<br>あなたの主人であるアングロサクソンの白人です。」<br>そういうと、トーマスは深々とお辞儀した。<br>「先代の船長、ラッカム氏は命の恩人でして、それにそれなりの<br>礼金はいただいております。あなたの財産は９０００ポンドになります。<br>アンボニー氏が色をつけたようですね。足りなければ為替で送ると<br>おっしゃっておられました。彼らによほど気に入られたようですね。」<br>９０００ポンドは現在の貨幣価値でおよそ、１０００万ドル以上。<br>貧富の差や生活レベルを考えるとそれよりはるかに価値が高い。<br>オラバ族元酋長ウバ・サウル　おそらく世界一、金持ちな黒人奴隷の誕生だ。<br><br>大英帝国　ロンドン<br><br>「Ｄ１０１、Ｄ１０１、お前の仕事は今日からもう少しマシになる。<br>黒いとはいえキリスト教に改宗したのだからな。」<br>黒い体を抱いた牧師はそういうと周囲にいるユダヤ人を見下ろすのだった。<br><br>「その仕事と言うのは、アメリカ大陸から帰って来る使者の魂を清める<br>聖なる職務、オラバの末裔たる君にふさわしいと思うがね。君たちを苦しめる<br>ユダヤ人に対し、我々、高教会が　黒い物に少しばかり救いを与えるためだ。」<br>その牧師はそういうと、彼女に口付けた。<br><br>「いまは、天にまします。われらがイエスの使徒です。」<br>Ｄ１０１と呼ばれた少女は、キッと目を見るとこう答えた。<br><br>火にくべた死体から何故、金が取れるのだろう。魔術、噂に聞く錬金術。<br><br>それは教会だけの特権、棺を開けるのは。<br><br>この中にはアフリカの同胞のものがあるのだろう。少し感謝する気持ちもあった。<br>しかし、キリスト教徒は土葬のはず。何故燃やすのだろう。一抹の不安がよぎった。<br>だめだとは思っても、その誘惑には勝てなかった。禁断の棺を開ける誘惑には。<br><br>そう、どれだけの同胞の血が流されようとも変えなければ、未来を。<br>黒人奴隷を皆殺しに、ハッペンハイムに急報がとんだ。<br><br><br>「首謀者の死体は受け取ったものの、キリスト教徒の少女だとは。」<br>ゲットーの一室で、シオンとハイヤーハムシェルは人払いをかけると<br>そっと彼女を見つめていた。<br><br>当初、暴動を起こし多数のユダヤ人を殺害した首謀者は、拷問するため<br>生きたまま渡すように要求したのだ。しかし、彼女は服毒自殺していた。<br>綺麗な体だった。炭鉱は閉鎖され、真相は隠された教会の手で。<br>血に飢えた天使は、再び舞い降りたのだ。我らを創り賜いし、ガゼルによって。<br><br>私たちの国、ガゼル　ハイエナ　ライオン　多くの動物たちと歩んだ。<br>そう、多くの同胞を犠牲にして、キリスト教徒になりながら私は生きている。<br><br>「起きなさい。わたくしにそれは通用いたしません。」<br>シオンナスィは強く言い放った。今回の暴動の元凶さん。<br>シェイクスピアの有名な悲劇に「仮死の薬」と言うものがあるのです。<br>「その結末はどうなっているかご存知ですか？」<br><br>彼女の顔はわずかに赤みを帯びていた。<br><br>「気づかれていたんですね。私は生きていていいとは思っていません。<br>しかし、真実を誰かに伝えなければいけない。どんな拷問も<br>殺されることも喜んで受けます。」<br>そういうと彼女は伝えることを伝えこういった。<br><br>あなた方は白い肌、直接手を下す存在、許せると思いますか。<br><br>「ハイヤーさん。」シオンはこんな表情をするハイヤーハムシェルを<br>見たことがなかった。<br><br>ハイヤーハムシェルは思い出していた、幼き時の<br>フランクフルト・アム・メインの光景を、借りた金を返したくない理由で<br>火を放ち、殴りつけ　犯し、殺しまわる暴徒。これでは我々も同じではないか。<br>どこが・ちがうんだっ。<br>アフリカの黒人は死んだのではない、殺されたのだ。<br>棺の特権とともに金をイングランドに密輸するために、<br>教会の莫大な利益のために、いや大英帝国を叩き潰すために。<br><br>当時、アイルランドカソリックの大半は地方領主のもとで働く<br>農業従事者であった。食べてはいけるが、給金はゼロ。当時の常識だ。<br>飢え死ぬ者の多い中、食べることと生きることが報酬だ。<br>これに、起因して起きたのが、後の土地に依存する形の共産主義<br>自然や環境に左右されるが故、努力でなく結果の平等を求めた。<br>こちのユダヤ主導の　共産主義　である。<br><br>対して、都市資本家ブルジョア階級の元で働く浮浪者、黒人奴隷、ユダヤ人は<br>工場労働者であり、これに起因して起きたのが、後の貨幣に依存する形で<br>発生した　社会主義。人材と時間に価値を置く、アメリカ的機会均等を<br>求めるものであった。左派キリスト教社会主義である。<br><br>この時代、工業化による　「それ」はそれほど知られていなかった。<br>黒人、アイルランド人、ユダヤ人、ケルト人　その中でこの大量死事件は<br>少しづつではあったが噂として広まっていた。<br><br>ある神父はこう言った。<br>「ユダヤ人が井戸に毒を投げ入れ、河に病気を流していると。」<br>１７６１年中旬、大英帝国中枢　紡績都市マンチェスター、アイルランド流民の<br>居住する一角でそれは起こった。原因不明の奇病と大量死。当時はケルトを嫌う<br>悪質な嫌がらせ、テロリズムと思われた。<br><br>アメリカ独立戦争において名をはせた、ジョージワシントンの副官<br>そして、ハイルドギースの指導者たるハンドルフ一族、ハーシー家、<br>そして、彼女の耳に入っていた。<br><br>ナスィは国王、酋長、頂点を意味し、サンヘドリンの長をパトリアルクと言い<br>これが転じて、パトリックとパトリシアとなった。セントパトリックの意味は<br>聖王セイントキングである。聖アルトリウスの血の継承者。<br>彼女とは、パトリシア・シャムロックである。<br><br>「アイルランドの浮浪者、労働者の一団、武装蜂起し、ユダヤ人ゲットーに<br>向かった模様。」ハーシーからの報告を聞いたハンドルフは寝耳に水だった。<br>ハーシーは意味ありげに笑うといった。「この機会に昨今、躍進するユダヤ人を<br>叩き潰しては？」おそらく、ハーシーはこの話を知っていてわざと遅らせたのだろう<br>ハンドルフを追い込むために。<br>パトリシアは叫んだ。<br>「偽りの理由には、偽りの正義しかない。ユダヤの有力者に伝があります。<br>何とかして見せます。」<br>ハーシー「しかし・・・わかりました何とか押さえます。時間は無いですよ。」<br>「わかった、それでいい。私がハッペンハイムへ使者に出ます。」<br>パトリシアはそういうとゲットーへ向かった。<br><br><br>「ハイヤー　どうしたのです。深刻な表情をして。」<br>「いえ、肉屋のパトリシアが来ているのです。」<br>ハイヤーはあの女が苦手だった。<br><br>「突然の訪問、お時間をいただき感謝いたします。お会いできて光栄です、殿下。」<br>パトリシアは慇懃に言った、急ぎながら。<br>「なんだか疲れているようですね。休息を。」<br>ハイヤーは言った、例の件なら承知しています。原因ははっきりしています。<br>我々は毒など流していない、付近にある工場の垂れ流す廃棄物が原因でしょう。<br>いうなれば、「公害」でしょう。<br>パトリシアは怒り心頭だった。<br>「あなたたちは知っていて、放置していたのですか。それは毒を流すのと同義です。」<br>「我々だって被害は出ている。我々は政府や国王ではないですし、<br>工場を立ち退かせるのは無理です。」<br>産業の中枢を担う製造業が毒を流しているのは事実です。しかしこの不況時<br>それが公になれば、ホイッグは辞任しなければいけない。<br>経済恐慌が悪化し、労働者は飢え時ぬでしょう。<br>「では、毒で死ぬか、飢えて死ぬか。選べと。これではハーシーの言うとおりです。」<br>飲み水の確保も困難か、監獄船の大量死も関係あるかもしれない。<br>ハイヤーは考えていた。<br>「あなたたちでは話にならない、ギデオンかハッペンハイムを出しなさい。」<br><br>「いえ、我々としても放置する気はありません。ただ失われたものは１００年近く<br>経過しないと元に戻らない。原因が我々側にあるとはいえ、<br>ヴァチカンがけしかけたもの。産業資本家のほとんどは<br>&nbsp;イングランド貴族。このままでは、アイルランドと<br>イングランドの全面対決になってしまう。<br>それはまずいと思うのですが。」<br><br>「何でも、教会のせいにすればいいと思っているのですか。自分たちには関係ないとでも。<br>産業資本家が超え太るために建てた物で、何故、貧民が苦しまねばならないのですか。<br>このままでは、ハーシーの言うとおりです。」<br><br>「ギデオン卿やイングランド王はこう思っているのです。農作物はフランスやドイツから輸入し<br>高価な工業製品と交換すればいい、貨幣を支配し、宝石兌換による英国優位の金融システムが<br>築け、交換比率が高いことから、資産は何倍にも膨れ上がり、国民全体が豊かになるとね。<br>&nbsp;海洋国家ゆえの宿命です。」<br><br>&nbsp;「それは地方領主や農民や切捨てを意味しますよね、違いますか<br>&nbsp;地方は寂れるばかり、そんなもの認められない、いりません。」<br><br>&nbsp;「アイルランド、スコットランド地方には毎年都市部から集めた財産を交付金として支給します<br>&nbsp;ご心配なく。」マイヤーアムシェルは農業のことなどまるで理解していなかった。<br><br>&nbsp;「ふっ！乞食と言うのですそれを！トーリー党を支持する地方地主はつぶれると言うことですね。わかりました、<br>それではこちらにも考えがあります。」そういうとパトリシアは去っていった。<br><br>&nbsp;うーーん、マイヤーアムシェルは考え込んでいた。<br>&nbsp;今回の公害を、流行病だとして発表するつもりだったし、<br>それにより死体に対する消毒もできる。毒だと言われればそれはできない。<br><br>&nbsp;「パトリシアにもアフリカから来た伝染病だと偽ったほうがよかったのではないですか？」<br>シオンはそっと聞いた。<br>&nbsp;「いや、彼らは、我々の究極の目的のためには必要な存在、軍事力を持たないのですから、<br>&nbsp;我々は。」<br>&nbsp;「シオン、いまやヨーロッパ全土がヴァチカンの支配下にあり、<br>&nbsp;我々ユダヤ人の支配する土地などありません。かつてのネーデルランド独立も<br>不完全であり、そのための新大陸をトーリー、ヴァチカンの及ばない<br>我々の新天地、支配国とする必要があるのです。」<br><br>&nbsp;「ネオ・フロンティア計画ですね。」<br>&nbsp;「彼の地の金や石炭、広大な土地はあまりに魅力的です。」<br><br>&nbsp;「住民に黒い奴隷と浮浪者を送り込み、王権に対する抵抗勢力とし<br>我々が支配中枢として、世界の歴史上初めて共和制合衆国を作る。」<br><br>「我々では、決定できません。ギデオン家へ。皆を召集します。」<br>そういうとハイヤーは言った。「至急ハッペンハイムへ連絡を請う。」<br>５人の使用人が全速力で飛び出していった。<br><br><br>ギデオン邸・<br><br>「近年の金の暴落、銀の暴騰、これらは仕組まれたもの<br>&nbsp;だったのです。」マイヤーは言った。<br><br>&nbsp;「これが続けば、イングランドの穀物や１次生産物が<br>天井知らず、このままでは中世のように兵糧が<br>底をつきます。<br>そう、中世以来、地方領主＝トーリーは小麦の代償として<br>銀を受け取り、ヴァチカンは金を支配した。<br>&nbsp;しかし、銀の産地がイスパニア領土の中南米<br>であったのに対し、金はヴェラクルスやケープ<br>&nbsp;イングランド領であった。ゆえに不完全な支配だった。<br>　しかし、ヴァチカンは方法を考えた、いや作っていた。<br>&nbsp;黒人の埋葬と称し、金を秘密裏に持ち込んだのです。<br>&nbsp;棺の特権を利用し、黒人奴隷を虐殺し！<br>&nbsp;「このままいけば、地方領主を勢いづかせるだけでなく、<br>ハイパーインフレを起こし、債務増加、イングランドの<br>国家財政は破綻します。<br>&nbsp;おそらく、宝石時計事件の懐中時計が、新大陸に<br>渡り、金と交換され、国内に流入している。」<br>ハイヤーは長々としゃべる。<br><br>&nbsp;「何者かが、最近になって、コーヒーハウスで<br>銀に対する大掛かりな投機を行っている。<br>&nbsp;宝石は固有の紋様から出所がすぐにばれる。<br>しかし、金銀はそうではない。<br>&nbsp;持ち込むことさえできれば、対抗することは可能でしょう<br>目的は同じでしょうし。」<br><br>&nbsp;「しかし、どうやって？」ギデオンが問う。<br><br>&nbsp;「持込には、銀製の棺桶を作り、堂々と持ち込みましょう<br>彼らの棺の特権、それは内側に対するもの。<br>そのシステムを逆に利用されるとは思わないでしょう。<br>&nbsp;「中身は、アフリカの黒人がベストでしょう。<br>&nbsp;数が集まりやすく、教会が埋葬することは決してない。<br>&nbsp;「同時期にイングランド銀行の金塊を消滅させる。<br>&nbsp;奪うことや運ぶことは不可能でも消すことは可能。<br>&nbsp;玉水を使ってね。」<br><br>&nbsp;「どうやって、その条件を飲ませる。？」<br><br>&nbsp;「アフリカから伝染病が来ている、そういう流言を<br>流せばいいでしょう。、殺菌のために薬品を<br>入れさせてくれ、もちろん中身を汚さずにね。<br><br><br>「お待ちしておりました。国王陛下。」シオンはそういうとゲットーに<br>国王ジョージ３世を迎え入れた。<br><br>ん、何だ、このにおいは。国王は異様なにおいに戸惑った。<br><br>おいそこのもの、これは何だ。<br>国王は不快さを隠そうともせず問いかけた。<br><br>「教会が、黒人奴隷は教会で処分できないのでお前たちが処分しろ<br>&nbsp;と言われましたが、火葬にしなければならず、困っています。<br>そのうち伝染病も蔓延し死人も出る始末。」<br>もっとも、この死体は暴動を起こしユダヤ人を殺したのもたちの<br>死体だが。<br>「やはりお前たちが原因か、下流では伝染病で大量に人が死んでいるんだ。」<br><br>「せめて、すべての死体を消毒殺菌させてください。」<br>ラッセル公家が責任を持つそうです。」<br><br>&nbsp;「もちろんキリスト教徒には手を出しません、黒人奴隷のものだけです。<br>それともあなたたちがやりますか？」<br><br>国王は唖然としながら、怒鳴りつけた。<br>「すぐに実行せよ。私がすべての責任を負う。」<br><br>かくしてすべての黒人奴隷の死体はユダヤ人が管理することとなり、<br>いつの間にか、ヴァチカンの金は消えていた。<br>これ以降、黒人奴隷の待遇、浮浪者の待遇は改善され、<br>&nbsp;都市資本家に対抗するヴァチカンの社会主義はあまり意味を持たなくなった。<br>&nbsp;一定期間のみではあったが。<br><br>「ハイヤーさん、何故パトリシアに真実を伝えたのですか。」<br><br>「彼女は知っている。ヴァチカンの搾取を、農民の苦しみを、<br>&nbsp;「今は誠意を見せるとき、偽りの善は良策ではありません。」<br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267168.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:16:15 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記１－Ｈ（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>Ｈ<br><br>屋外では、すでに戴冠式の準備が整い、聖ウエストミンスターの<br>広場には大勢の貴族が集い、リボンや風船の飛び交う中<br>大英帝国のいかなる大物貴族でも替えがたい、そのオリエンタルな<br>気品は周囲の注目を集めていた。<br>しかし、貴族たちはその艶やかな姿形とは裏腹に有色人種ゆえか<br>ユダヤ人ゆえか、オスマンの威光を持ってしても消せない<br>特有の扱いを受けていた。<br>おざなりに、スルタンシャリフからの祝辞が読まれ<br>ホーフユーゲンであるハッペンハイムが彼女をもてなした。<br><br>「父と子の祝福により、汝、ジョージ３世を国家の守護者とし<br>偉大なる大英帝国の繁栄を　祈らん。」<br><br>（ふぅ、ここの様子は理解しがたいわね。オスマンの名代である私を<br>何か別の生き物を見るように。彼らはオスマンの権勢を恩義を忘れたのかしら）<br>いえ、たぶん肌の色のせいね。ハッペンハイムには普通ですし。<br><br>オスマンの名代である彼女シオンナスィは特権がある。<br>当然であるが、大帝の使者だ。王と会話できる。<br><br>シオンは静かに切り出した。<br>「国王陛下、昨今のゲットー襲撃と大火災、ユダヤ人に<br>災厄が降りかかりました。大英帝国として公的な援助を<br>お願いしたく思っております。」<br><br>新国王ジョージ３世<br>「昨年からの大恐慌、我が国の財政は逼迫しております。<br>シオン姫、ご協力したいのは山々なのですが、無理なのです。」<br><br>ホイッグの頭領ラッセル公が叫んだ。<br>「我が祖　初代ジョンラッセルがかつての親友との<br>約束を果たすときが来ました。」<br><br>「国王陛下、かつて罪なく処刑された我が一族に当代の王は言われました。<br>この償いはすると。いま償っていただきたい。」（ライハウス事件）<br><br>トーリーの頭領ハンタギュー卿は侮蔑的に返す。<br>「故に、我々は肌に色のついたものに寛容すぎるのです。」<br><br>「寛容、あのゲットーが。我々の生活をご存知ですか。」<br><br>大英帝国に来たときはじめて着た三角形の奇妙な帽子、<br>よれよれの一張羅。変形したぼろぼろの木靴。<br>それらが後押しして勇気をくれた。<br><br>「どうしても信用いただけないなら、私が質となりましょう。」<br><br>ハンタギュー卿<br>「よろしいので、オスマンと我が国に何かあれば、ご家族に災いが<br>大帝に御迷惑がかかりますよ。それに言ってはなんですが、<br>我が国のゲットーはフランクフルトやパリと比べれば天国です。」<br><br>ジョージ３世<br>「私は見てみたい。ユダヤ人の暮らしを。姫の邸宅をお邪魔しても<br>よろしいですか。救国の英雄の,<br>親友にお会いできた事は至福の喜びです。」<br><br>シオン<br>「お待ち申し上げております。迎えのものが参りました、それでは。」<br><br>ギデオンはキリスト教徒であり、ユダヤ人である。<br>それ故に、ここにユダヤの王、イエスを架刑に処したとされる存在が<br>下等な有色人種であり、敵であるイスラムの民である事を鑑み、<br>華麗なるウエストミンスターから、薄暗い監獄へと彼女の身柄を<br>移した。<br><br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267124.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:15:45 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記１－Ｇ（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>Ｇ<br><br>ギデオン邸<br>「で、殿下、なぜここに。」<br>ギデオンが声を上げた。<br><br>「わたくしがいてはいけないのですか。謀反相談でも。」<br>シオンが笑顔を向けると。<br><br>ギデオン卿はハイヤーハムシェルを睨みつけてきた。<br>「王女殿下、彼の力量はいかがですか。」<br><br>相変わらずギデオンはハイヤーを睨む。<br>「非常に優秀で、優れた人格を持つ、」<br><br>シオンは周囲を見回し全員を見終えるとこう付け加えた。<br>「友人です」<br><br>ギデオンはあまり気乗りしなさそうに会議を始めた。<br>「では、ハッペンハイム卿、本日の議題について<br>説明していただきたい。」<br><br>ハッペンハイムは平常運転、宮廷ユダヤ人だけあって面の皮が厚い。<br>「大量の宝石を持っていたものがおり、話を聞きだそうとしましたが<br>その者は見つからず、妹は何も知らないようです。妹の身柄は確保しております。」<br><br>ギデオンが発言した。<br>「ふむ、盗まれた宝石は近年起きているゲットー襲撃事件と関係あるのは<br>まず間違いない。だがそれを我々ユダヤ人を介さずどう処分されるのかが問題だ。」<br><br>「前例が無いからな。」<br>一同が沈黙する。<br><br>「発言をよろしいでしょうか。」<br>ギデオンはあごをしゃくって認める。<br><br>ハイヤーは何を思いついたのか早口で切り出した。<br>「まず奪われた宝石に希少価値の高い大きなものはありません。<br>次に何かの部品に使われているのではないかと思います。」<br><br>ギデオンは興味が少しわいたのか、<br>一向に解決しない事件に自信に満ちて発言する<br>ハイヤーは只者では無いと思った。<br>「なぜ、そう思う。」<br><br>「はい。彼らは価値の高い大きな物は狙いません。<br>ご存知と思いますが、宝石の小さなものに価値はありません<br>しかし、部品に使うのならば、画一化されてなければいけない、<br>鑑定される大きい宝石を奪う価値が無いから奪わなかった、<br>そう考えます。」<br><br>「また、我々を介さず直接換金できるとは思いません。<br>それならば初期にカルテルにばれているはず。<br>しかしながら、彼らは用意周到で、組織立っている。<br>維持コストも相当なはず。これほど頻繁に襲撃してくる以上<br>大掛かりなロンダリングシステムを持っていることは固いでしょう。」<br><br>「たとえば研磨剤。ダイヤモンドは硬いぞ。」<br>「ルビーは偏光に役立つ。」<br>いろいろな言葉が漏れる。全員考え込んでいる。<br><br>「ハイヤーハムシェル　その線で地道に調査しては。」<br><br>「ダメですね。捜査が遅れれば被害が増すばかり。<br>無論きちんとした調査はします。しかし彼らの様子を見ると<br>ろくに鑑定もしていない様子、その証左に傷物の宝石も<br>混じっていました。」<br><br>「つまり、そうですね。贋物や傷物をわざと奪い取らせ<br>大量に流通させる。すべての宝石に対して。<br>早期に必ず騒ぎが起きるでしょう。それを待つのです。」<br><br>「贋物だと。で、その宝石はどこから調達する。<br>乞食野郎、塵ダメでも漁ってくるか。」<br>ホォーバーグは興奮のあまり、金切り声を上げた。<br>ハイヤーをたたき出しそうな勢いだ。<br><br>シオンが声を発する。<br>「それは暴言ではありませんか。ホォーバーグ。」<br><br>「そうではありません。殿下。宝石は我々ユダヤ人が鑑定し<br>その信用の元価値があるのです。ヴァチカンの金銀に対抗する<br>唯一の手段です。贋物や傷物が出回れば信用はがた落ちです。」<br><br>「カルテルをつぶす気か。ハイヤーハムシェル。」<br><br>「ふぅ～、信用は落ちません。何らかの工業製品といいましたが<br>彼らは、当然需要があるから来るのでしょう。そうやすやすと製造できず<br>価値があり換金できる。彼らの行動に周期があるのはそういうことでしょう。」<br><br>「鑑定しなくては我々にわからない。そこをつかれましたね。<br>質屋にこれが、製作に時間がかかり、宝石が必要、なおかつ<br>大量に流通し、一般人にわからない。」<br><br>ハイヤーは大きく息を吸い込むと今日という日が来たことに感謝しつつ<br>言い切った。<br>「その工業製品とは懐中時計、プアマンズ・バンクです。」<br><br>「なるほど、時計の軸受けか、盲点だ。」<br>ギデオンもハッペンハイムも、もはや<br>ハイヤーハムシェルの能力を疑うものはいなかった。<br><br>「時計会社がロンダリングに絡んでいるのは確実<br>彼らの信用が落ちるだけです。」<br><br>「王家の人質と等価か。」ポツリとギデオンが言った。<br><br>「これが、単なる犯罪ならば良いのですが、<br>規模からして、国家の利害をはらんだ謀略の可能性も<br>否めません。」<br><br>「殿下の力を借りる必要がありそうだな。」<br><br>一同が目を合わせる。<br>「この事件に関しては、ハイヤーハムシェルに全権を与える。<br>異議のあるものは。」<br>誰も手を上げなかった。<br><br>「はい。」なぜかシオンが手を上げた。<br>「ああ、全員一致の無効ですか。懐かしいものを見ました。<br>後ほど王に報告せねば、殿下にお願いしてもよろしいですかな。」<br>「はい。」<br>シオンはあふれんばかりの笑顔で答えた。<br><br>ユダヤ人は襲撃事件を警戒し、すべての宝石をマンチェスターに<br>集めている。そういう噂が流れていた。<br><br>「みなさん、賊の手から身を守るため、すべての宝石をカルテルが預かります。」<br><br>大衆から様々な抗議や悲鳴が上がる。<br><br>「ふざけるなー、お前らは何もせず傍観してたじゃないか。」<br>「賊から身を守るためとはいえ。全財産は、何か、何か、<br>保証はあるのですか。」<br><br>さらに怒号が飛び交う中、澄んだ声が響き渡った。<br><br>「無論、何の担保もなしとは言いません。<br>王家である私が担保となりましょう。<br>国王と交渉し、必ず再び平和を取り戻します。」<br><br>一人のラビが跪いて祈る。<br><br>「こんな塵石のために、ヘロデの至玉をと。」<br><br>シオンが下がり、ハイヤーが叫ぶ。<br>「それほどまでに憂慮されている。オスマンからやってこられた。<br>皆さんの血と汗の結晶　労働の対価は決して塵ではない。<br>もはや大英帝国は中世では無い。皆さんの時間は王の命と等価なのです。」<br><br>数日後、<br>マンチェスターのシナゴークに、パトリシアシャムロックと<br>へアリング商会のごろつきがいた。<br><br>「豚どもめ、石をすべて小屋に入れたらしい。」<br><br>パトリシアは男に言った。<br>「そうね、でも仕事がやりやすくなって、よかったじゃない。」<br>いくら内偵とはいえ、このやり取りは反吐が出る。<br>今すぐミンチにしたいタイプのごろつきだ。<br>非常に美味しくなさそうな食品の部類だが。<br><br>「はじめまして、盗賊の皆さん。私はハイヤーハムシェル<br>ただの田舎ものでございます。<br>ここに住むものは、みな日に１シリングも稼いでいません。<br>塵を拾い、物を乞い　暮らしてきました。この新たなる<br>革命期、やっと得た　平和　自由　職業なのです。<br>どうか奪わないでもらいたい。<br>ここに５万カラットの宝石があります。」<br><br>「ふざっけるなぁ、くだらん、くだらん　<br>たかが５シリング盗めば死刑、借金で死ぬやつもいる<br>それなら、強盗してでも殺人してでも、<br>我が糧を得る、家族のために、仲間のために。<br>俺の祖先はヴァイキングだ。トーラーのゴイムだよ。」<br><br>「そうですか、私はまだ死にたくは無いのでこうします。」<br>そういうとあらかじめ用意していた燃える水に火を放ち<br>ミグェに飛び込んだ。<br><br>深夜、赤々と照らされるシナゴークを包む炎は<br>月明かりに照らされ１０マイル先からも見えたと言う。<br>その後、この事件で焼け残った跡は、ゲットー襲撃の折<br>第二次大戦の空爆など、尾ひれをつけて現在も残っている。<br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/yuukioka2263/entry-12372267105.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:15:13 +0900</pubDate>
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<title>産業創世記１－Ｆ（仮）</title>
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<![CDATA[ <p>Ｆ<br><br>シオンは途方にくれていた。<br>前日は薄暗く良く見えなかったが、天井が低い、しかもすごく。<br>背の低いシオンでさえ天井に手が届く。<br>しかも、５～６階建てはあるだろう。確認はして無いが。<br>高層の建物が所狭しとひしめき合っていた。<br>彼女、公女殿下もオスマンの華麗な服から、こちらの一般的な<br>ユダヤ人の服に着替えさせられていた。<br>三角形の奇妙な帽子、よれよれの一張羅。変形したぼろぼろの木靴。<br>これがヨーロッパのユダヤ人の処遇を表わしていた。<br><br>もちろん彼女がそういう姿なのには理由がある。<br>それが理解できたから我慢しているのだ。<br>周囲のユダヤ人に、ヘロデの至玉の存在を知られるわけには行かない。<br>そもそも、オスマンの大貴族の正装は目立ちすぎる。<br>ギデオン卿が手紙で書いてきたのはこのことか。<br>後でギデオンを叱責しよう、ここ人は悪くない、何も悪くない。うん。<br><br>部屋をノックする音が聞こえた。<br>自宅なら侍従がするだろうが、ここは小人の国だ。<br>しかも船のような硬質な響きではない。<br>扉の安全性が非常に不安だ。<br><br>「よろしい。入りなさい。」<br>シオンは威厳を持って、下々のものに舐められないように<br>粗末な服と小さな部屋で、胸を張って迎えた。<br><br>「すみません、こちらにシオン公女殿下は<br>いらっしゃいますか。」<br>ハイヤーハムシェルと言う接待人は、ふざけている。<br>憤慨するシオンだったが、社交術には長けている。<br>見た目に感情は出ない。<br>しかし、言葉には少し出た。<br>「この部屋で、公女殿下は無いでしょう。」<br>不愉快極まりない、最もあきれ果てて、どうでも良いが。<br><br>「ご機嫌麗しく存じ上げます。王女殿下。<br>私の名はハイヤーハムシェル、ハッペンハイムより遣わされた<br>接待人です。」<br>ハイヤーハムシェルは自分の限界を超える慇懃さで<br>深々と頭を下げた。<br><br>「ハイヤー　ハムシェル？キリスト教圏ですよね。<br>名前がハイヤー　家名がハムシェル？」<br>シオンは英国について学んできたが、ハムシェルという家名があるのだろうかと<br>不思議に思った。<br><br>「いえ、本名を隠して申し訳ございません。陳謝いたします。<br>名はハイヤー　家名はバウアーです。<br>ドイツ語で田舎者と言う意味でございます。」<br><br>「す、すみません。変なことを聞いてしまって。」<br>しかし、疲れる。このような会話と態度がずっと続くのだろうか。<br>まあ、ギデオン卿も、貴族といって無いし、民衆でしょう。<br><br>「こちらのユダヤ人は、おかしな家名をつけられるのです。<br>知り合いに　船　バネ　強欲　と言う家名のものがおります。」<br><br>シオンは、噴き出してしまった。<br>考えても見よう。「砂糖　花子」、「針金　次郎」などという<br>本名の人がいたら、可笑しいし、悲惨だろう。<br><br>ハイヤーハムシェルは慇懃に、淡々と、自己紹介を終えた。<br>・・・つもりだった。<br>「本日は日曜日です。外出は禁じられておりますので、<br>ゲットーの中を案内させていただきます。」<br><br>シオンは名前が面白いので、なんだかこの少年がかわいいと思えた。<br>そこで、ある提案をする事にした。<br><br>「そうですね、あなたは私に、虚偽の発言をしました。<br>オスマン帝国公爵家として、オスマンの名代として<br>１ヶ月以上かけて、遠路はるばる来た私に、接待の責任者が。」<br>笑いながら言ったのだが、バウアーには伝わらなかったようだ。<br><br>「しかし私は、人に処罰をしても何の益もありません。<br>そうですね、水タバコを買ってきていただけますか。」<br>今日中に買ってくることができれば、許しましょう。<br><br>ハイヤーハムシェルは地面にひれ伏しそうな勢いで<br>走って出て行った。あらら、私の案内は誰がするのかしら。<br><br>すると、シオンと同じような年恰好の女性が顔を出した。<br>「バウアーの指示で、案内させていただく事になりました。<br>イライザと申します。」<br>慌てふためいても、仕事はきっちりしているようだ。<br>そもそも、この人が案内する予定だったのかも。<br><br>ハイヤーハムシェルは顔を真っ赤にして、息を切らせて<br>ハッペンハイムの使用人を急きょ集めた。<br>「水タバコを探し出せ。今日中だ。」<br>使用人の一人が言った。<br>「ここはイスラムではありません。通常の方法では入手できないのと思います。<br>モーセス様にご助力いただいたほうが良いのでは。」<br>「だめだ、町中を探せ。」<br>ハイヤーハムシェルはあわてていたためひとつ忘れていた。<br>ゲットーの中に水タバコなどと言う、高級品が売っているはずが無いと。<br><br>ハイヤーハムシェルはあっさりと騙された。<br>水タバコは見つかった。だが明らかにゲットーの<br>外に出られないと言ううそがばれてしまった。<br>ヨーロッパ大陸において日曜にゲットーから出られないと言うのは常識だ。<br>だが、ここは大英帝国なのだ。<br><br>「公女殿下　あまりお急ぎにならないほうがよろしいのでは。」<br>ハイヤーアムシェルは路にある水溜りが、水や雨ではなく<br>小便であると言うことを知らせるか迷った。だが知っておくべきだ。<br><br>「なぜですの。」<br>シオンは不思議そうに聞いた。<br><br>ハイヤーハムシェルは慎重に、だが真剣に言った。<br>「路の真ん中を歩けば馬車に轢かれます。しかし端のほうを歩くと<br>窓から、トイレの中身が降り注いできます。」<br>「そのため、すさまじい悪臭が漂っており、ハーブのマスクなしで歩くのは<br>不可能です。」<br>ハイヤーは必死に傘を差しながら早口で説明した。<br>オスマン帝国から来た貴族は歩くのが速かった。<br>ついていくのに必死だ。殿下が頭から糞尿を被ったら。<br>そう思ったら気が気でなかった。<br><br>シオンは貴族ではあるが、イスラム教徒ではないので<br>身分制度そのものから外れており、ユダヤ人の代表と言う位置だった。<br>しかも、その次女。どこかのユダヤ貴族の嫁に行くだけだ。<br>それに先ほどの服や建物、寛容で裕福だと言う大英帝国でこれだ。<br>ヨーロッパ大陸はどのようなところなのだろう。<br><br>「こちらには、午後の紅茶と言うのがあるらしいですね。<br>ぜひ経験してみたいです。高級店はいやですよ。」<br>シオンは紅茶よりコーヒー党だが<br>オスマンにはない英国のお菓子に興味があった。<br><br>それを聞いたハッペンハイム使用人の団体が大急ぎで探しに行った。<br>はあはあと息を切らせながら使用人の一人が店を見つけてきた。<br>ハイヤーは使用人をにらみつけた。思いっきり庶民の店だ。<br><br>「ぶしつけな質問ですが、ユダヤ人はハノーヴァ王朝において<br>開放されたのですよね。なのに大半の人々はゲットーに住んでいる。<br>なぜですか」<br><br>少し迷ったが、また嘘を言って、怒らせるとまずい。<br>物理的に首が飛ぶのはいやだ。ここからはすべて正直に行こう。<br>ハイヤーハムシェルはそう心に決めた。<br><br>「元々、物乞いやスリ、乞食や売春を生業としてきた我々<br>と言うより、一般のユダヤ民衆は資金がほとんどありません。」<br>「それに住み慣れた我が家と申しましょうか、ゲットー<br>それ自体がユダヤ人を閉じ込めておく牢獄であると同時に<br>身を守るための城でもあるのです。」<br><br>ハイヤーはひとつだけ聞きたい事があった。<br>幼少に両親が殺され、８歳でオッペンハイム家に出仕した為、<br>記憶はおぼろげだが、毎日のように借金を踏み倒すため<br>暴徒が襲い、キリスト教徒の虐殺や強姦が日常茶飯事<br>ゲットーの門に豚の絵が書かれており、<br>賄賂を持たないものは　リンチされ殺されていた。<br>それゆえ、キリスト教徒である大英帝国がこれほどまで<br>ユダヤ人に寛容なのか、それなりに権力に食い込み<br>地位もコネもあるハイヤーハムシェルでも知らない。<br>それゆえ、尊敬と親愛を持ってこう聞くのだ。<br><br>「なぜ、この国は我々、ユダヤ人に良くして下さるのですか。。」<br><br>シオンは少し迷ったが隠す事でもない。<br>「そうですね。かつて薔薇戦争のランカスター側の武門の出自であった<br>後のヘンリー７世はヨーク側に裏切りました。彼はローマ教皇の仕立てた<br>王女エリザベスを妻に迎え、平民出身でありながら王となり<br>テューダーという王朝を作りました。」<br><br>「しかし、神聖ローマ皇帝及び教皇はこれを認めず、<br>王権の返還すら求めました。しかし反対勢力もおり<br>妨害され、国が纏まらない為、対策を講じる事ができませんでした。」<br><br>「そこで、あなたのような優秀な若者、一介の貿易商であった<br>初代ジョン・ラッセルに白羽の矢が立ったのです。かれは　のろま<br>と言う名の船に乗り、世界最強のスペイン無敵艦隊の打倒を掲げ<br>反旗の狼煙を上げたのです。」<br><br>「当時オスマン帝国のペルギーネだった我が租ヨセフとグラツィアは<br>協力し、ユダヤ海賊スィナンや宮廷医ハモン、初代オスマン帝国海軍提督<br>バルバリア王ハイレディン、彼の部下モハメットシャルークらを集め<br>プレウェザの海戦にて、アンドレアドーリア率いるイタリアスペイン艦隊に勝利し、<br>地中海の制海権を握りました。」<br><br>「ロードス島を落とし、セウタ海峡を勝ち取り、ウィーン包囲にいたりました。<br>背後ではグラツィアがネーデルランド独立に莫大な支援をして、独立させます。<br>フッガー家は多額の借財を負わせ、免罪符の乱発で兵站を破綻させ、<br>民衆の心は離れました。その結果、初代ラッセルは救国の英雄となり、<br>一代で伯爵になり、その子、フランシスはアマンダ海戦でスペイン無敵艦隊を<br>壊走させました。その結果、大英帝国が成立、世界の植民地を手に入たのです。」<br><br>「まあ、ラッセル公は我が家に大恩があると言う事です。」<br><br>そういうと、公女殿下はティーカップを置かれ<br>お菓子を食べ終えた。<br><br>ハイヤーハムシェルはあまりの規模の大きさに驚いていた。<br>それと同時にこの方はやはり、我々の正統王家なのだとも感じた。<br><br>感心仕切りのハイヤーハムシェルがまだ隠し事をしている。<br>油断したハイヤーハムシェルを見ながら、<br>そう感じたシオンは問いかけた。<br><br>「何か心配事でもおありですか。」<br><br>ハイヤーハムシェルは少し考えたが、我々では数年もの間、解決できなかった。<br>そもそも、ギデオン家やハッペンハイム家の主人である。<br>隠していても仕方が無いし、ユダヤ人への襲撃事件を話さなければ<br>発覚したとき、殿下は本当に私を殺すだろう。<br><br>ハイヤーハムシェルは今まであった事件の経過を知る限り<br>シオン公女殿下に伝えた。<br><br>「なるほど、しかし、オスマンはおろかヨーロッパでも<br>聞かない話ですね。その事件が起こったのは大英帝国だけなのですか。」<br><br>もう大抵のところは調べた。<br>「いまのところ打つ手はなし、お手上げです。」<br><br>シオンはハイヤーハムシェルに慇懃に振舞ってもらう必要を感じなかった。<br>かつて、オスマンの大貴族だったヨセフやグラツィアは<br>ジョンラッセルを単なる一介の騎士、平民として接したのだろうか。<br>おそらく違う。対等に扱ったはずだ、だから、ラッセルは大英帝国で<br>必死の努力をして、ユダヤ人が安心して暮らせる世界を目指したのだろう。<br><br>シオンは心を決めた。<br>「シオンと呼んでください。ハイヤーさん。」<br><br>ハイヤーは固まった。<br>「え。」「あのう、どういうことですか。」<br><br>シオンは自然体にもどりたかった、友人でありたかった。<br>同胞のことを心から心配し憂慮する、年下の接待人に。<br>「かつてのジョンラッセルは平民でしたが、<br>我が祖グラツィアに平伏して従ったのでしょうか。<br>友人だったから、この国ができた、そう思います。」<br><br>「あ、そうそう。大航海時代で思い出したのですが、経度を測るのに<br>正確な時計が必要で、王家の身代金と同額がかけられていたとか。」<br><br>「今周囲の労働者も、時計を持っていますね。工場で働くので<br>他の国に比べて、時間に正確だとか。」<br><br>ハイヤーは気が付いた。<br>何気ない言葉だが、異邦人の視点も馬鹿にはできない。<br>そもそもオスマンには懐中時計など無いのだろう。<br>懐中時計には宝石が軸受けとして使われている。<br>しかも質屋で高額で換金できる。<br>カルテルも鑑定していないはずだ。<br><br>「シオン、そのラッセル公の片腕、ギデオン卿に会わねばなりません。<br>今すぐに、ご同行願いますか。」<br><br>「それと、そのハーブのマスクを外す事をお勧めします。」<br>マイヤーは笑いながら言った。<br><br>「それは遠慮しておきますわ」</p>
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<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 04:14:41 +0900</pubDate>
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