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<title>ダニーロのブログ</title>
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<title>ダニーロの小説</title>
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<![CDATA[ <p><font size="2">　はい、どーもー。ダニーロです。</font></p><p><font size="2">　ようやくアップできました。これでたぶん読みやすくなったのだろうと思います。</font></p><p><font size="2">　とは言っても、読んでくれる方はかなり少ないと思うのですが……。</font></p><p><font size="2">　</font></p><p><font size="2">　読んでくれている方々、ありがとうございます。</font></p><p><font size="2">　いずれ、後編の方もアップいたしますので、もうしばらくお待ちを。</font></p><p><font size="2">　何か、要望があれば遠慮なく申しつけください。</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2">　</font></p><p><font size="2">　では、またﾉｼ</font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><font size="2"><br></font></p><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10844194865.html" target="_blank">ジーク・ケルディオル　前編</a> </p><br><br><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10970385979.html" target="_blank">時をとめた少年のお話１</a> </p><br><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10970400415.html" target="_blank">時をとめた少年のお話２</a> </p><br><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10970406713.html" target="_blank">時をとめた少年のお話３</a> </p><p><font size="2" target="_blank"><br></font></p><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10970441092.html" target="_blank">時をとめた少年のお話４</a> </p>
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<link>https://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10971812134.html</link>
<pubDate>Mon, 01 Aug 2011 11:03:09 +0900</pubDate>
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<title>ダニーロの小説</title>
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<![CDATA[ <p>すみません</p><p>なんか手違いで変な感じでアップされてしまいました(汗)</p><p>また、調整してアップしたいと思います。</p><br><br><p>ちなみにジーク・ケルディオル　の後編はまだできていません。</p><p>今回はまた違う短編なのですが・・。</p><p>すみません(滝汗)</p>
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<link>https://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10971046648.html</link>
<pubDate>Sun, 31 Jul 2011 17:42:59 +0900</pubDate>
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<title>ダニーロの小説</title>
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<![CDATA[ <p>どーもー、忘れた頃再アップ、ダニーロでーす。</p><p>と言っても、まだ後編はできてないのですが……(-_-;)</p><p>いずれ、必ず！　アップしますので、しばらくお待ちを。</p><p>と言っても、見てる人はいないと思うのですが…。</p><p>また、忘れた頃に何かアップしておきます。</p><p>そんなんだったら、更新するな！　って言いたいだろうけど、すみません。</p><p>本当は今回アップするつもりだったんです！</p><p>はい、言い訳です。すみません。</p><p>まぁ、見てる人はいないから何とでも書き込めるんだけどね！</p><p><br></p><p><a href="http://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10844194865.html" target="_blank">ジーク・ケルディオル　　前編</a> 　　</p><br><p><br></p><p>いずれ必ず！後編はアップするので、しばらくお待ちを。<br></p><br><p>では、ヒマ人のダニーロでした！！</p>
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<link>https://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10844214844.html</link>
<pubDate>Mon, 28 Mar 2011 21:41:50 +0900</pubDate>
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<title>ジーク・ケルディオル　　前編</title>
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<![CDATA[ <br><br><p>　見渡し限り雲一つない青空、頃合としては太陽が南中する頃。直視できない光の下で多くの人達が賑わいを集めていた。</p><p>　テレネトア大陸の海際にある規模が小さい街、エクシリアのこの日は、年に一度の祭りが催されようとしていた。</p><p>　その祭りはエクシリアの街を支える精霊への感謝のためのものであった。</p><p>　精霊、それはこの世界になくてはならない存在であり、人類に力を与えた、言わば神に似た存在である。ただし、神と決定的に違うことは、精霊には人間の目に見える体を持っているという点である。</p><p>　精霊が人間に与えた力は･･････魔法であった。</p><p>　その魔法の概念とは、この世界を構成している理を操る事にある。精霊はこの世に存在する理を操る力を持っている。その精霊が人間と〝契約〟をすることで、契約した精霊が支配する理を操れるようになる。故にこの力を使う者は魔法士、精霊使い、などと呼ばれている。</p><p>　しかし、この力を使うにも代償を払う必要があった。</p><p>　それは、魔法を使うに当たって、人間が自らの心の一部を精霊に捧げなくてはならないというものであった。心は体を休めれば同時に回復するものだが、この代償により人間が一日に使える魔法は限られた。心を全て失うと、その人間は廃人になり、程なくして死んでしまうからだ。これは人間が魔法を使いすぎないようにするための鎖のようなものだった。</p><p>　しかし、そんな限られた精霊の力でも、人類にとってはすばらしいものだった。</p><p>　火をおこすにも、火の精霊と契約した者がいれば瞬く間に火をおこし。</p><p>　飲み水を確保するにも、水の精霊と契約した者がいれば、海水を飲み水に変えることができる。精霊の力は人間の生活を豊かにしていったのだった。</p><p>　今日のエクシリアの祭りは、魔法による全ての恵みを精霊に感謝するためのものである。</p><p>　祭りのメインは夕刻に行われる精霊の体を具現化するため〝精霊召喚〟と呼ばれるものである。それを一目見ようと、昼からこのエクシリアの街に来るものも多い。人が多ければ物も売れる、と街商人は決まってこの日に物価を安くする。さらに、同じような考えの行商人も少なくないので、エクシリアには様々な商人で溢れかえる。祭りの日の大街道はいつもの何倍も賑やかになるのだ。</p><p>　そんな大賑わいのエクシリアの大街道に向かって、子供なら一人入れる程の大きな篭を一人の少年が持って走っている。</p><p>　見た目、十代前半の幼い顔つきに、きれいな薄翠色の肩までかかるくらいの少し長めの髪、その下には髪と同じ色をした瞳が爛々と輝いている。</p><p>　少年が向かっている大街道にはわずかな隙間しかない。少年は小さい体を生かして、買い物終わりの婦人達の間を抜けていく。手荷物の篭が潰れないように手を頭上高く上げながら。</p><p>　行列の中に潜り込んでもわずかな隙間を見つけ、さらに潜り込む。時折、篭が背の高い男にぶつかるが、この行列で見つかる可能性は薄いと考え、少年は気にせず進んでいく。</p><p>　しばらく進むと、ある店に目が付き、その天蓋に入っていく。</p><p>　その店では色とりどりの野菜が売られていて値段も安い。たまに見たことのない物もあり、それに目を奪われていると、</p><p>「それに興味があるのか？」</p><p>　不意に声を掛けられ、少年は顔を上げる。</p><p>　そこには、店の亭主と思われる大柄な男が、腰に手を当てて立っていた。</p><p>「それは、この地域じゃあんまり採れない物でな、〝リンゴ〟っていう新種の果物だ。丁度、ここより、北の地域にあるギプロウってとこで盛んに栽培されているらしい。なんでも、齧った時に広がる甘味と香りがたまらない･･･らしい」</p><p>「らしい･･････って食べたことないの？」</p><p>「生憎な。ウチで食う分は、嫁と娘に全部取られちまった。･･････で、なんか買い物か？　今時おつかいなんて偉いな、坊主」</p><p>「うん、･･････じゃあ･･････ダイコン、ニンジンを六本ずつと、ジャガイモを十個、ネギを三本と、塩の入った瓶を一つ･･････じゃあ、その〝リンゴ〟も一つ」</p><p>「はいよ、リンゴは一つおまけしてやるよ。全部、その篭に入れればいいのか？」</p><p>「うん、ありがとう」</p><p>　少年が代金を渡すと、亭主が受け取り間際に聞いてきた。</p><p>「ところで、この辺じゃあ見かけない顔だが･･････坊主の名はなんていうんだ？」</p><p>「えっ！」</p><p>　すると、少年は誤魔化すように辺りに視線を散らすが、亭主が不思議そうな顔で見つめているため、小声で呟いた。</p><p>「･･････ジーク･･････」</p><p>「そうか、ジークか。いい名じゃねぇか、恥ずかしがることもないだろう」</p><p>「･･････うん」</p><p>　亭主がそう言うと少年は小さな声で答えた、がその顔には羞恥という感情は欠片も感じない。むしろ、何かに怯えるように辺りをキョロキョロと見渡す。</p><p>「ほらよ、最近はスリが多いから気ぃつけてな」</p><p>「あ、ありがと」</p><p>　少年は亭主から篭を受け取ると、スリ対策に篭の上から布をかけた。</p><p>　そして、すぐに人ごみの中に入っていった。</p><br><br><p>　少年の名はジーク・ケルディオル。先月、十の年を迎えたばかりでまだまだ子供の身だったが、家のために、毎回買い物を請け負っている。</p><p>　彼の両親はとある事情により、外出ができないでいた。同じ理由で自分の名前も、特にファミリーネームは絶対に名乗ってはいけない、と言われていた。肝心なその事情も彼には知らされていない。もうしばらく経った後に教えると言われていたが、彼はあまり気にしていない。</p><p>　ジークの家はエクシリアの街から少し離れた薄暗い森の中にあった。その森はノースカルダの森と呼ばれ、昼間でも薄暗いために街に来る人は大抵近寄らない。</p><p>　ジークはノースカルダの森に入る前にある、丘で一休みするつもりだった。その丘というのも、樹齢何百年となる大木が一本生えているだけの少し寂しい丘。そんな場所でも、ジークはこの丘が好きだった。阻むものがないため風が心地良いからだ。</p><p>　しかし、いつも寂しい丘に先客が一人座っていた。</p><p>　今日は街で祭りがあるから、尚更ここに立ち寄る人は少ないはずなのに、とジークは少し怪訝な表情をしていたが近づくにつれ、それが自分と同じくらいの歳の少女だと気付く。</p><p>　肩まで伸びた金髪は風になびかれ、透き通るような青い瞳に長いまつ毛が被る。全体的に顔立ちが整っていて、そのきれいな顔は少し不安そうな表情でジークを見つめていた。</p><p>　彼女は、真っ白なワンピースに少しばかり宝石が散りばめられた高価な服を着ていた。ジークは始めどこかの貴族かと思ったが、今日が祭りの日だということを思い出した。</p><p>　というのも、今日の祭りの本質は精霊を召喚することにある。そのために普段はなかなか姿を見せない、エクシリア家の当主ジャーク・バル・エクシリア公爵が街に下りてくる。街を一つ持っているだけの資産家だけに、その目に留まろうと盛大におめかしをする者も少なくないからだ。</p><p>　おそらくこの少女も、そういう親にこの服を着せられたのだろう。それにこの少女は顔立ちが綺麗に整っていて高貴な雰囲気も出ている。</p><p>　もしかしたらエクシリア公爵の目に留まるかもしれない、とジークは思いながら、何故か少し怯えている少女に穏やかな笑みを浮かべて話しかけた。</p><p>「隣に座ってもいい？」</p><p>　ジークの笑みに少し安心したのか、少女はわずかに頷いた。だが、まだ完全に警戒心を解いていない様子が見受けられる。</p><p>　ジークは少女のそんな様子にも構わず、街の大街道で買ってきた〝リンゴ〟を取り出した。</p><p>　そして、その一つを少女に差し出す。</p><p>「上げるよ」</p><p>「･････････これは？」</p><p>　少女はジークの差し出したリンゴをすぐには取ろうとせず、じっと見つめて警戒している。</p><p>「〝リンゴ〟っていう果物らしいよ。ぼくもさっき初めて見たんだけど、おいしそうだったから」</p><p>　すると、少女はリンゴから目を離し、ジークをその瞳で見つめた。</p><p>「･････････いいの？」</p><p>「もちろん、もともと買う予定なかったから、母さんになんて言われるかわからないし、それに一個おまけしてくれたから」</p><p>「･･････ありがとう･･････」</p><p>　少女は小さな声で呟き、ジークの手からリンゴを受け取った。</p><p>　ジークはリンゴの食べ方を知らなかったが、この場には刃物もないし、と思い切り噛り付いた。</p><p>　赤い皮から薄黄色い実が出てきたことにも驚いたが、初めに感じたのは口に広がる甘味だった。</p><p>「んん～おいしい〝リンゴ〟ってこんなに甘いのかぁ」</p><p>　となりで見ていた少女もジークの感嘆の声を聞き、おずおずと警戒しながら噛り付く。</p><p>　すぐにリンゴの甘味に驚いて目を見開き、ジークに視線を送った。</p><p>　ジークはその視線に答えるかのように、にっこりと笑い、またリンゴに噛り付いた。</p><p>　しばらく、二人でリンゴを食べていると、</p><p>「あ痛っ！」</p><p>　ジークがリンゴの芯に噛り付き、その硬さにほんの少し悲鳴をあげた。</p><p>「･･････大丈夫？」</p><p>　少女はジークを心底心配そうな表情で尋ねた。</p><p>「うん･･････どうやら、この〝リンゴ〟にも食べられないところがあるんだね」</p><p>　ジークはリンゴの芯を大木の側に置いた。</p><p>　少女もすぐに食べ終わり、その芯をジークのそれの隣に置いた。</p><p>「きみはこの街に住んでいるの？　それとも違う街からやって来たの？」</p><p>　ジークは食後で一息ついているサーシャにその場あわせの質問をした。</p><p>「･･････どちらでもない･･････」</p><p>「え？　どういうこと？」</p><p>　予想外の答えにジークは思わず聞き返してしまった。</p><p>「･････････」</p><p>　すぐに、ジークは少女が俯いて黙り込んでいるのに気付き、慌てて言い足した。</p><p>「ああ、言えないなら無理して言わなくてもいいよ。ぼくにも言えない事、あるし」</p><p>「･･････ごめん･･････」</p><p>「いいよ･･････。ところで、君の名前はなんて言うの？｝</p><p>「･･･サーシャ」</p><p>「ふ～ん、ぼくはジークって言うんだ。よろしくね」</p><p>「･･････うん」</p><p>　ジークがそう言った時、視界に一つ行商人のキャラバンがエクシリアの街に入っていくのが見えた。</p><p>「･･････サーシャも今日の祭りを見に来たんだよね？」</p><p>　ジークはその馬車を遠い目で見つめながら聞いた。</p><p>「うん･･････でも、わたしこの祭りは好きじゃないの」</p><p>「なんで？」</p><p>「人込みは苦手なの･･････それに、精霊自体も好きじゃない･･････」</p><p>　サーシャはそういうと、また悲しそうに俯いた。</p><p>「･･････ジークは･･････〝呪われた精霊〟を知ってる？」</p><p>「呪われた精霊？　･･････聞いたことないけど･･････」</p><p>　呪いを使う精霊なら彼は知っている。〝呪い〟も一つの理であり、多くの精霊がその理を持っている。だが、その呪いで精霊を呪うことはできない。故に〝呪われた精霊〟という名はあまりにおかしい。</p><p>「呪われた精霊っていうのはね･･････普通の精霊が持っていないような理を持っている精霊のことを言うの。もちろん、普通の精霊が持っていないような理を持っているからって、全てが呪われているわけじゃないの。･･････そもそも〝呪われている〟っていうことは言葉通りの意味ではなくて、心が呪われているのよ」</p><p>「？　心が？」</p><p>「うん、しかも呪われた心を持っているのは、精霊じゃなくて･･････人間なの」</p><p>「？？？　どういうこと？　じゃあどうして〝呪われた精霊〟なんて言われているの？」</p><p>　ジークがそう言うと、サーシャは一つ息をついて答えた。</p><p>「わたしもついこの前聞いた話なんだけど･･････昔、まだ人間が精霊の理を使って争いをしていた頃、それでも、人間が一つにまとまり始めた頃よ。その頃の人々は精霊の理の特性を教えあい、対策を練り、争いをなくそうと努力し、国も創り始めたの。各地でそのような改革が起こり、まだ自分達がどの国にも属していない民族は焦り、さらに争いを激しくした。･･････大抵の民族は理に対策を練られているから、すぐに敗れて国に取り込まれるけど、普通の精霊が持っていない理を持っている精霊と契約した民族は、対策がない分強かった。国相手に互角の戦いをしていたの。･･････でも、それも人数の差で負けた」</p><p>　すると、サーシャは悲しそうな目でジークを見つめた。</p><p>「その負けた民族はどうなると思う？」</p><p>　サーシャの問いに、ジークは無言で首を横に振った。</p><p>「民族の民を全員、火あぶりにされるのよ」</p><p>　それを聞いたジークはすぐにサーシャを見つめた。</p><p>　サーシャはエクシリアの街を遠い目で見つめていた。しかし、その目は確かに悲しみを抱いている。</p><p>「そんなことをしたのも精霊の理よ。･･････だから、呪われた精霊なんて呼ばれている、わたしが精霊を嫌う理由も同じよ･･････」</p><p>　暗い表情もサーシャに、ジークは何と言えばいいのかわからなかった。</p><br><br><p>　しばらく経った後、サーシャは徐に立ち上がり、ジークに向き直った。</p><p>「もうそろそろ街に戻らなきゃ。･･････リンゴ、ありがとね」</p><p>　サーシャはそう言い、この時初めてジークに笑顔を見せた。</p><p>「うん･････････また、会えるよね？」</p><p>　ジークはサーシャの笑顔に少しどぎまぎしながら、そう聞いた。</p><p>　すると、サーシャはわずかに表情を曇らせて、</p><p>「うん･･････また･･･きっと･･････」</p><p>　と言い、街へ走っていった。</p><p>　ジークはその後ろ姿を、何度も手を振りながら見送った。</p><p>　空は夕暮れを示していた。</p><br><br><br><p>　ノースカルダの森は、いつもより静けさが増していた。</p><p>　普段は森に住むリスや狐、鳥などの動物達の鳴き声が交差して、比較的にぎやかな森なのだが、今日は祭りがあるからか、いつものにぎやかさがない。</p><p>　ジークはそんな森の中を、軽やかな足取りで駆けていく。その右手にはしっかりと買い物篭が握られていた。</p><p>　しばらく森を進んでいくと、一つの小屋がうっすらと見えてきた。</p><p>　その小屋の周辺は少し木が切られているだけで、近くまで来なければ小屋があることに気付けないようになっている。それだけに日の光はその小屋に届いていない。それがわかっているのか、その小屋には窓が一つもついていない造りになっていた。</p><p>　ジークはその小屋に近づき、何もない壁に三回ほどノックをする。</p><p>　すると、壁だと思われた一部がわずかに開き、ジークはそこから小屋の中に入っていった。</p><p>　小屋の中には、白髪碧眼の男が険しい顔で立っていた。</p><p>「鳥は命の炎を燃やして羽ばたく」</p><p>　ジークがそう言うと、険しかった男の表情が笑顔に変わった。</p><p>「おかえり、ジーク」</p><p>「ただいま、父さん」</p><p>　ジークは買い物篭を持ち、家の中に入っていった。</p><p>　一つ廊下を抜けると、少し広い部屋に出てきた。そこには白髪碧眼の女が優しい笑顔で待っていた。</p><p>「おかえり、ジーク。遅かったわね」</p><p>「うん･･････市場が混んでたから･･････」</p><p>「そうね、今日はお祭りの日だからね」</p><p>　女性はジークから買い物籠を受け取り、中身を取り出し始めた。</p><p>　彼女の名前はメイ・ケルディオル、ジークの母親にあたる人物で、先程の男が父親のグエン・ケルディオルである。</p><p>　ジークの両親はどちらも髪が白く、何も映らないような碧眼をしていた。二人ともまだ若いため、歳から来る白髪でないころがわかる。メイはその長く綺麗に手入れされた白髪を後ろで束ね、グエンのそれは常に目にかからない長さで整えられている。</p><p>　両親が二人とも白髪碧眼のため、自分の持つ薄翠色の髪と瞳は誰から受け継いだのか、ジークはよくそれを考える。もしかしたら、自分は違う親から生まれてきて、目の前にいる両親は本当の親ではないのかもしれない、と最近は考え始めた。しかし、ジークはそこで思考を止めている。もし、本当にそうであっても、目の前にいる二人が自分にとって親であることには変わりない、とも考えていたからだ。</p><p>「あの･･････母さん」</p><p>　ジークは少しおどおどした様子で、メイに話しかけた。</p><p>「なに？」</p><p>「その･･････ぼく･･････お祭りに行ってみたい･･････」</p><p>　すると、メイは少し考えるように頭を捻ってから、グエンの元へと視線を移した。</p><p>　グエンはその視線に答えるかのように笑顔で頷いた。</p><p>「いいわよ。いつもジークはがんばってくれてるし、精霊も見てみたいだろうし。今日はご褒美としてお小遣いも少しあげるね」</p><p>　それを聞いたジークはうれしそうに目を大きく見開いた。</p><p>「本当に！　ありがとう、母さん、父さん」</p><p>「いいのよ」</p><p>　メイはやわらかい笑顔で答え、ジークに銀貨を一枚渡した。</p><p>「あんまり遅くなっちゃ駄目よ。それと、あやしい大人には気をつけてね」</p><p>「うん」</p><p>　ジークはそう言うと、入り口とは違う扉に向かっていき、「いってきます」と短く声を発し、外に飛び出して行った。</p><br><br><br><p>　一つの影が森を風のような速度で駆け抜ける。</p><p>　ジークの気分は最高潮に達していた。</p><p>　先程、メイには祭りに行きたいと言って外を出てきたが、彼は別に祭りに興味があるわけではない。かといって精霊に興味があるわけでもない。ただ、街に行けばまたサーシャに会えると思っていたのだ。</p><p>　それをメイとグエンに言わなかった理由は、《友達を作ってはいけない》という規則があるからではない。実際にそのような規則はつくられていない。だが、サーシャのことを言ってしまうと、自分の名前を相手に教えたことが必然的にバレてしまう。いくらファミリーネームを教えていないとはいっても、よほどのことがない限り名前を名乗るな、と言われてきたため、それが言い出せないでいたのだ。故にジークはそのような嘘をついた。</p><p>　嘘をつくのは気分が良くなることではないな、とジークは感じ、これからは嘘をつくのをやめることを心の中で誓った。</p><p>　森の中を走っている間もジークはサーシャのことを考えていた。</p><p>　精霊が好きではない、と言っていたサーシャは、おそらくエクシリア公爵の目に留まるために親が連れてきたのだろう。もしかしたら、サーシャは公爵の目に留まってしまうかもしれない、そうなるともう会えなくなる可能性は非常に高い。その前にジークはもう一目でいいから彼女に会っておきたかった。</p><p>　森を抜けると、すでに、街は精霊召喚の儀式の準備に入っていた。街は至るところに松明が置かれ、全体的に明るくなっている。</p><p>　ジークはさらにスピードを上げて街に近づいていった。全てはサーシャに会うため。</p><br><br><p>　精霊は五つの属性に分けられる。火、水、土、風、雷。そして、それぞれが三種の理を持っている。</p><p>　呪われた精霊のように、普通の精霊が持っていないような理を持つ精霊も、やはり五つどれかの属性にわけられ、その属性の三種類の理を持っている。それに加えて特別な理を持つので、四つの理を持っているということになる。</p><p>　また国や地域によって崇めている精霊の属性は違うが、この地エクシリアは火の属性を持つ精霊、すなわち火の精霊を崇めていた。</p><p>　ジークは昔、母親のメイに五つの属性、三種類の理を全て教わっていた。</p><p>　火の精霊は、炎、熱、爆発の理を司り。</p><p>　水の精霊は、水、天気、回復の理を司り。</p><p>　土の精霊は、大地、自然、呪いの理を司り。</p><p>　風の精霊は、風、空気、移動の理を司り。</p><p>　雷の精霊は、雷、電気、召喚の理を司る。</p><p>　魔法を使う時は、まずこれから行うことを頭に描き、理を操るための呪文にあたる〝言霊〟を詠唱する。詠唱が終わると理が歪む形で頭に描いたことが現実となる。また、詠唱する言霊の長さは、頭に描いた幻想が現実になるときに歪む理の種類や大きさによって変わる。</p><p>　また、心を失うのは頭で描いた幻想が現実となる瞬間で、その魔法が理を大きく歪ませる程、多く消費する。</p><p>　そこまでは母親に教えてもらっていたジークだが、魔法が目の前で見たことは一度もなかった。</p><p>　その彼は現在、街の中心部である大街道の中央広場に向かっていた。</p><p>　その場では、毎年精霊の召喚が行われる。また、サーシャのようにエクシリア公爵の目に留まるために訪れた人は必ずその場に集まる。</p><p>　そうなると、ただ精霊を見たいだけの見物人は場所がなくなるため、自然とその近くの建物から見ることになる。</p><p>　そうしてくると、精霊を召喚する広場は、高価な衣装を着た婦人や女児の姿しか見えなくなり、屋外のダンスパーティーのように見えてくる。</p><p>　だが、今日の様子は違った。</p><p>　高価な衣装に身を包んだ婦人や女児の姿は見えず、ただの見物人が群がっていた。</p><p>　ジークはその原因を探るべく、また小さな体を利用して群集の中に潜って行った。</p><p>　群集を抜けると、その先ではいつものように精霊召喚の儀式が行われていた。</p><p>　半径５ｍほどの円の魔方陣が地面に描かれており、その円の弧に均一な間隔で火の点いた松明を置かれ、また魔方陣の中心には精霊使いだと思われる男が、膝をついて言霊を詠唱していた。精霊を召喚するにも、言霊を詠唱する必要があるのだ。</p><p>　ジークは精霊を召喚する光景を見るのも初めてだったため、その無邪気な好奇心から、思わず目を奪われ、呆けてしまう。</p><p>　だが、本来エクシリア公爵の仕事である精霊の召喚が、別の精霊使いによって行われている事に遅かれ気付いた。</p><p>　エクシリア公爵がいないのならばサーシャがここにいることもない、とジークは思想を巡らし、わずかに肩を窄めてその場を去ろうとした。</p><p>　その時―――</p><br><p>　―――巨大な爆発音が街に響き渡った。</p><br><p>　瞬時に見物人がざわつき始め、辺りから沈黙という文字が消えうせる。</p><p>　ジークはすぐに群集から抜け出し、すばやい足取りで近くの民家の屋根に上る。</p><p>　街を見回しても煙が上がっている所が見えない。</p><p>　煙が見当たらないから爆発は街の外で起きた、という思想には至っていない。だが、本能のようなものが働き、彼は再び辺りを見回した。</p><p>　すると、彼の両親がいるノースカルダの森から煙が上がっているのが見えた。</p><p>　瞬間、ジークの体から嫌な汗が滲み出てきた。</p><p>　ノースカルダの森は広く、煙が上がっている場所は彼の家がある場所から近くはないのだが、どうにも悪寒のような寒気が止まらない。</p><p>　ジークはサーシャを探すこともやめ、突風を思わす速さで街を出て行った。</p><br><br><br><p>　巨大な爆発音が街中に響き渡り、文字通りのパニックが街を騒がしている頃、二頭の馬が引っ張る馬車の中に、サーシャはいた。</p><p>　本来この街で行われる年に一度の祭りのメインイベントに用事があったサーシャなのだが、どうも何らかの事情によりこの街に留まる必要がなくなったのだ。</p><p>　元々人込みが好きではないサーシャは、心残りがあるも、さっさと引き返すべく馬車に乗り込んだのだが、その後すぐに耳鳴りを起こすほどの爆発音が街中に響き渡ったのだ。</p><p>　大騒ぎになる前に街を出ようと専属の馬車引きが馬を走らせたのだが、時すでに遅く、大勢の人で道が埋まってしまった。</p><p>　進もうにも進めなくなってしまった馬車の中で、サーシャは街を見回した。</p><p>　多くの人が盗賊の来襲だと思い込んだのか、我先にと家に急ぐ者や、自分の持つ馬車へと引き返す者が溢れ、安逸な雰囲気が消えうせている。</p><p>　サーシャはそんな光景を不安に駆られながら見守っていると、見覚えのある一人の少年を見つけた。</p><p>　綺麗な薄翠色の髪が象徴のジークは、パニックに陥っている群集と同じ様子で駆けていたが、どうも進む方向が他の人とは違い、街の外へ逃げているように見える。</p><p>　サーシャはそんなことを思いながらもジークに声を掛けようと立ち上がったが、すぐに思いとどまる。</p><p>　よりにもよってこんな混乱時に呼び止めたら彼も困るし、道行く人の邪魔にもなる。それに今の自分は専用の馬車に乗っている。こんな姿を見られたら、ジークに自分の秘密がバレてしまう。</p><p>　彼だけには知られてほしくない、とサーシャは表情を暗くして思い込んだ。</p><p>　ふと、再び顔を上げ、心残りでもある少年を探す。</p><p>　だが、すでにその姿はサーシャの視界から見えなくなっていた。<br><br><br></p><p>　街を抜けたジークは真っ直ぐ森へ向かわずに、少し道を外してからノースカルダの森へ向かった。街を出てすぐに乗り捨てられた馬を見つけたからだ。</p><p>　ジークが両親に言われていた規則に、《森に入るところを人に見られてはいけない》というのがあった。やはり事情は知らないが、おそらく家の場所を他人に知られてはいけないのだろう。乗り捨てられた馬があるという事は、それに乗っていた人間が近くにいるという事。幼い彼はそれに気付いていた。</p><p>　しかし、それと先程の爆発はどうにも繋がらない。いや、繋げられない。だが、嫌な予感だけはしっかりと感じ取っている。</p><p>　ジークはいつもと違う道から家へ向かうのは初めてだったが、この森のことはある程度知っているつもしだった。</p><p>　しばらく進んでいると、ようやく彼の両親がいる家に辿り着いた。これで何事もなければ、ただの杞憂でことは済む。</p><p>　ジークはそれを願って、家の入り口である壁に三回ほどノックをする。</p><p>　これも両親からの言いつけで、三回ノックをし、少しとが開いたら月ごとに変わる合言葉を言って家に入る、というものだった。少し前に合言葉を忘れたために家に入らせてもらえない経験をジークはした。それ以降、彼は月ごとに変わる合言葉をしっかりと胸に刻んでから家を出ることにしていた。</p><p>　だが、いつもの合図がない。</p><p>　ジークは不安に耐えられなくなり、その壁から家の中に飛び込んだ。</p><p>　木と木に阻まれた廊下を勢いよく駆け抜け、父と母の待つ部屋に向かうと、</p><br><p>　ピチャ</p><br><p>　足元に水溜りが広がっていた。赤い、紅い血の溜りが。</p><p>　そして、その赤の先には真っ白な白髪が沈んでいた。</p><p>「そんなっ！　母さん！　どうして･･････どうして！」</p><p>　倒れていたのは蒼白な顔色のメイだった。見ると、彼女の腹部から紅いシミが広がっている。そして、それはまだ収まっていない。</p><p>　メイは苦痛に顔を歪ませているも、しっかりと息をしていた。</p><p>　だが、ジークはまだ気付いていなかった。前方に見知らぬ男がいるということに。</p><p>　男はジークを見て、驚きに目を見開き、絶句したまま立ち尽くした。</p><p>「･･････バカなっ！　･･････悪魔の一族が他にもいたのか･･････」</p><p>　その言葉で、ようやくジークも男の存在に気がついた。</p><p>　あんたが母さんをこんな目に合わせたの、とは聞かない。男が持っている血のりつきの剣(つるぎ)を見れば、そんなことは嫌でもわかってくる。</p><p>　ただ、ジークは男の顔には見覚えがあった。深く掘り下げられた眼球に、とても形のいいとはいえない鼻や唇。どこにでもいるような平凡な顔立ちだが、街に住む者で知らない者はいない人物、すなわちエクシリア公爵その人であった。</p><p>　今日の祭りの精霊召喚のために街を訪れなかったのは、ここに来る必要があったから。</p><p>　しかし、その理由をジークが知っているはずもない。</p><p>　ジークは何がなんだかわからなくなり、言葉を発するのも忘れ、ただ震えていた。</p><p>「まさか･･････子孫を増やしていたのか･･････」</p><p>　公爵の言葉もジークの耳には入っていない。ただ、考えていることは先程の公爵の発言。</p><p>「･･････悪魔の･･･一族？」</p><p>　ぼそりとジークは呟いた。</p><p>　その言葉自体に聞き覚えなどない。だが、似たような言葉なら少し前にサーシャから聞いていた。</p><p>(もしかして･････････〝呪われた精霊の〟―――)</p><p>　ジークの思想はそこで止まった。目の前の男が剣を振りかざしたために。</p><br><br><p>「･･････しかたない･･････しかたないのだっ！」</p><p>　エクシリア公爵はきりきりと痛む腹部に力を入れ、震える声に構わず叫んだ。</p><p>　元々、公爵家の仕事に人を殺すことなど皆無だった。ないわけではない。直接はその手を汚さない。故にジャーク・バル・エクシリア、すなわちエクシリア公爵は今までの生涯に一度も人を殺したことがなかった。</p><p>　だからか、エクシリア公爵は罪悪感を抱いていた。けっして目の前の子供に対しての恐れを抱いていたわけてはない。ただの罪悪感。人を殺めることに対するどうにも収まりつかない抵抗、目をつぶる事の許されない罪。</p><p>　エクシリア公爵の剣を持つ手に力が入る。</p><p>　今にも崩れそうな覚悟を胸に、男は剣を振るう。</p><br><p>　肉の潰れた音が響き、驚いた。</p><br><p>　ただし、驚いたのはジークだけではない。剣を振るった本人でもあるエクシリア公爵も驚いていた。</p><p>　剣はジークには触れず、彼の側に倒れていたメイの胸に突き刺さっていた。</p><p>　だが、エクシリア公爵はこれを狙っていたわけではない。</p><p>　自らの罪悪感に負け、止められなくなった剣の軌道を目の前の子供から逸らそうとしただけだった。外した後は、どうにかして子供を逃がすつもりだった。</p><p>　それが、悪魔といわれていた一族の虫の息だった女に突き刺さったのだ。もちろん、エクシリア公爵に弱っている女に止めを刺すようなサディスティックな趣味はない。ただの事故だった。</p><p>　だが、目の前の子供にしてみればどうなるか。エクシリア公爵は混乱する頭で思想を巡らした。</p><p>　自分を生かすためなどとは到底思わない。ただ目の前で自分の母親が殺されたのと同じになる。</p><p>　次の瞬間、ジークの中の何かが壊れた。</p><p>　感情という感情が渦を巻き、耐えられないほどの喪失感と悲しみが彼に襲い掛かる。</p><p>　無意識のうちにジークは叫び声を上げていた。うなり声とも言える叫び声を。</p><p>　それと同時に涙も溢れた。</p><p>　エクシリア公爵はジークのそんな姿を見て、罪悪感だけでなく恐れも抱いてしまった。</p><p>　この子供を生かしておけば必ず復讐してくる、そんな恐れが彼の体を振るわせた。</p><p>　だが、彼は剣を振るうことができなかった。</p><p>　剣を握る手には力すら入らない。冷や汗は枯れるほど出ている。</p><p>　それでも彼は目の前の子供に剣を振るうことができなかった。</p><p>　それを悟ったエクシリア公爵はすぐに家を飛び出した。けっして逃げたわけではない、ただ覚悟を決めたのだ。そして断念したのだ。剣で子供を殺すという方法に。</p><p>　家を飛び出したエクシリア公爵はすでに言霊を詠唱していた。</p><p>　口から流れるように言葉が出ていき、ただ吐くだけの呼吸に胸を苦しませながら、脳内にある幻想を描く。</p><p>「炎よぉぉおおおおおおおおおおおお」</p><p>　刹那、ジークのいる家を囲むように炎が燃え上がった。</p><p>　けっして爆発が起きたのではない。じっくりと火が起きたのでもない。唐突に炎が燃え出したのだ。</p><p>　エクシリア公爵は窓一つない家を完全に包むまで、息を荒くしながら見続けていた。</p><br><br><br><p>　―――どのくらい時間が経ったのだろうか。</p><p>　ジークは目を虚ろにしながら、思いふけっていた。</p><p>　涙は枯れてしまった。悲しいかどうかもわからない。</p><p>　いつしか、心にぽっかりと空いていた喪失感は、怒りと憎しみによって埋まっていた。</p><p>　ふと、ジークは顔を上げる。</p><p>　丁度、朝日が昇ってきたのか、空が明るくなり始めていた。</p><p>　見ると、家は跡形もなく燃えてしまい、見渡す限り真っ黒な炭しか残っていない。だが、自分自身は燃えていない。それどころか、家が燃えている間は熱すら感じていなかった。</p><p>　少し視線を下に向けると、やはり自分の周りだけ燃えずにちゃんと残っていた。ちょうど半径２ｍの円の結界があったように。</p><p>　だが、ジークの思想は働かない。考える気力すらなくなっていたのだ。</p><p>　そこへ、</p><p>『われが火の精霊ということを忘れていたのか、それともわざとか』</p><p>　声のようで、声でないような〝音〟がジークの耳に聞こえてきた。</p><p>　すると、ジークの目の前が急に輝きだし、火が吹き出てきた。</p><p>　だが、ジークは感嘆の声を上げない。そもそも驚くという感情すら持っていないように見える。</p><p>　炎は形を変えていき、次第に一人の男の姿に変化した。だが、それは火が変化したようには見えず、半透明になった赤色の炎もだんだん朱色に近づいている。</p><p>『こうして、向かい合って離すのは初めてだな、ジーク』</p><p>　炎が話しかけても、ジークは反応せず、ただ呆然と座っていた。</p><p>『メイは･･････死んでしまったか･･････優しい子だったのに･･････』</p><p>　ジークはその言葉にほんの少しの苛立ちを感じた。メイは彼の目の前で命を絶たれたのだから。</p><p>『･･････ちなみにグエンも死んでしまった。彼はわざと爆発の理を暴走させ、己の命もろとも敵を吹き飛ばした。聞いていただろう、大きな爆発音を』</p><p>　その言葉にジークは再び涙を流した。涙が枯れても、まだ彼には悲しむ心があったのだ。</p><p>「･･････な、なんで･･･どうさんが･･･かあざんが･･････死ななぎゃいげないんだっ！」</p><p>　ジークは泣きながら訴えた。その声は枯れており、水分が足りずに咳を繰り返した。</p><p>『･･････われの責任でもある･･････われが俗にいう〝呪われた精霊〟なるものだからだ』</p><p>「ゲホッ･･････呪われた･･･ガホッ･･････精霊？」</p><p>　もちろん、ジークはその言葉の意味が知りたくて聞いたのではない。それを確かめたくて聞いたのだ。</p><p>　精霊は小さく頷き、答えた。</p><p>『われは･･････火の精霊だ。そして〝怒りと憎しみ〟の理も持っている。･･････この理は契約時に、その者が怒りと憎しみ･･･すなわち復讐心を持っていればその意味を果たす。炎や爆発が暗黒に染まり、その元火は対象を燃やし尽くさない限り消えない。また爆発の規模や威力も上がり、言霊の詠唱も省くことができる。･･････故に一昔前に起きた争いでは、多くの人を死に至らしめた。それにより、われは追放され、契約者も殺された』</p><p>　精霊は一息ついて続けた。</p><p>『だが、当時の人間達は知ってしまった。･･････われがケルディオルの血を引くものとしか契約できないことを！　･･････故にケルディオル一族は皆殺しになった。･･････その子孫に過ぎないグエンやメイもこの有様だ！』</p><p>　その言葉を聞いたジークは、壊れかけていた心にある感情が溢れるのを感じた。</p><p>「･･････そんな･･････そんな理由で、父さんと母さんは･･････殺されたのか･･････」</p><p>　過去の出来事に対する怒りとそれに引きずられる殺人者に対する憎しみ。</p><p>「･･････父さんと母さんは･･････関係ないのに･･････」</p><p>　もう彼の目から涙は止まっていた。代わりにその目には復讐心が宿っていた。</p><p>『･･････われと契約できるのはケルディオルの血を持つもの、すなわちお主しかいない。･･･だが、お主は選べるのだ。われと契約するか、他の精霊と契約するか、はたまたどの精霊とも契約しないか。グエンは最後の選択肢を選ばせたかったようだ。･･････もちろん、われもお主の事を思うとそれが一番かもしれん･･････だが―――』</p><p>「うん、あんたと契約するよ。もちろん復讐のために。･･････もう全てを失った。残ったものなんて何もない」</p><p>　ジークはその言葉と共に立ち上がり、精霊と向かい合った。</p><p>「契約だ。復讐するために･･････そして、全てを取り戻すために･･････」</p><p>　精霊は静かにジークを見つめた。</p><p>　精霊にはわかっていた。復讐の末路には何もないことに。だが精霊は止めない。</p><p>　止めたところでジークは復讐を止めないことに気づいているからだ。だが、精霊は信じていた。ジークは他の復讐者とはどこか違うものがあるということに。</p><p>　そして、精霊は最後の契約者に告げた。</p><p>『怒りと憎しみの理が発動すれば、お主の髪と瞳の色素はなくなる。理を操る力が感情と一緒に吸い取るからな。･･････故にケルディオルは〝白い悪魔〟とも呼ばれていた。・・・・・・だから、グエンもメイも外に出歩けなかった。･･････それでもいいのか？』</p><p>「･･････もちろん、そんな事でぼくは復讐を止めない」</p><p>『･････････』</p><p>　少しの間、沈黙が広がった。</p><p>　その間も精霊はジークを見定めるように見つめ続けた。</p><p>『･･････いいだろう。契約を始める―――』</p><br><br><br><p>　そして、新たな復讐者は生まれた。白い悪魔の異名を背負った一族の末裔は、きれいな薄翠色の髪と瞳を捨てた。</p><p>　代わりに、彼は復讐心と呪われた力を手に入れた。</p><br><br><br><p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　後半へ続く</p>
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<link>https://ameblo.jp/zyobairo510/entry-10844194865.html</link>
<pubDate>Mon, 28 Mar 2011 21:25:52 +0900</pubDate>
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